【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、本発明によれば、航空機用タイヤであって、
‐トレッドを有し、
‐トレッドの半径方向内側に位置したクラウン補強材を有し、クラウン補強材は、少なくとも1つのクラウン層を有し、
‐半径方向内方のクラウン層は、タイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を有し、クラウン層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、クラウン層の半径方向外方の箇所であり、
‐クラウン補強材の半径方向内側に位置したカーカス補強材を有し、カーカス補強材は、少なくとも1つのカーカス層を有し、
‐半径方向外方のカーカス層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、カーカス層の半径方向外方の箇所である、航空機用タイヤにおいて、
半径方向内方のクラウン層の凹状部分と半径方向外方のカーカス層の凹状部分との間の半径方向距離は、赤道面内で最大の状態にあり、そして赤道面から赤道面に軸方向最も近いところに位置する凹状部分の軸方向限界まで連続的に減少し、半径方向距離は、軸方向限界のところで最小値に達することを特徴とする航空機用タイヤによって達成された。
【0023】
タイヤのクラウン補強材は、一般に、タイヤの子午面内においてクラウン層の軸方向端部を互い違いにするよう一般に1つの層と別の層とでは異なる軸方向幅を有する複数個の半径方向に重ね合わされたクラウン層で構成されている。クラウン補強材は、一般に、幅広(ワイド)と呼ばれ、即ち、タイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を備えた少なくとも1つのクラウン層を有する。タイヤの最大軸方向幅は、タイヤがそのリムに取り付けられると共に僅かにインフレートされ、即ち、推奨公称圧力の10%に等しい圧力までインフレートされた状態で、サイドウォールのところで測定される。
【0024】
クラウン層の軸方向幅は、クラウン層の端点相互間の軸方向距離である。この軸方向距離は、通常、タイヤを2つの子午面で切断することによって得られたタイヤの子午線断面について測定される。一例を挙げると、タイヤの子午線断面は、トレッドのところで円周方向に約60mmの厚さを有する。
【0025】
本発明のタイヤでは、半径方向内方のクラウン層、即ち、全てのクラウン層のうちで半径方向最も内側よりのクラウン層は、タイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を有し、従って、これは、幅広クラウン層である。
【0026】
さらに、半径方向内方クラウン層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、クラウン層の半径方向外方の箇所である。これら軸方向限界は、一般に、赤道面から実質的に等距離のところに位置し、即ち、赤道面に関して実質的に対称であり、製造公差を与え又は吸収するが、赤道面の各側の距離の差があることか排除されるわけではない。相当な軸方向幅の凹状部分を有するために幅広クラウン層が必要である。
【0027】
凹状部分は、子午面内において、赤道面内に半径方向内方の箇所及び赤道面の各側に1つずつ設けられた2つの半径方向外方箇所を有し、これらの箇所は、凹状部分の軸方向限界である。したがって、凹状部分の箇所の全ては、赤道面内に位置する箇所の半径方向外側に且つ凹状部分の軸方向限界である箇所の半径方向内側に位置する。
【0028】
本発明の意味における凹状部分は、この用語の数学的な意味における凹状部分ではない。事実、凹状部分は、数学的な意味で凹状である中央部分を有し、凹状中央部分上のあらゆる箇所において、凹状中央部分の半径方向外側に位置する曲率中心及び凹状中央部分の各側に、数学的な意味で凸状の側方部分を有し、この凸状側方部分のあらゆる箇所において、この凸状側方部分の半径方向内側に位置した曲率中心を有する。凹状中央部分は、赤道面の各側に1つずつ設けられた2つの変曲点によって軸方向に画定される。各凸状側方部分は、軸方向内側が変曲点によって画定されると共に軸方向外側が凹状部分の軸方向限界によって画定されている。
【0029】
凹状部分を設けることは、この凹状部分の軸方向外側に2つの凸状部分を設けることを必然的に伴う。これら凸状部分は、軸方向外側が実働層の端部によって制限される。
【0030】
内方クラウン層の半径方向外側に位置した他のクラウン層は、半径方向内方クラウン層の凹状部分の軸方向幅に実質的に等しい軸方向幅の凹状部分を有する場合が多い。これは、特に、クラウン層が2つずつ隣り合うと共に例えばエラストマー材料で作られた層間要素によって隔てられていない場合に起こる。この場合、クラウン層のそれぞれの子午線プロフィールは、一対ずつ互いに平行であり、即ち、これらのそれぞれの軸方向幅全体にわたって等距離である。
【0031】
また、本発明によれば、半径方向外方のカーカス層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、カーカス層の半径方向外方の箇所である。
【0032】
カーカス補強材は、一般に、カーカス層の重ね合わせで構成され、これらカーカス層の各々は、一般に金属で作られていて、ビードワイヤと呼ばれる円周方向補強要素に巻き付けられることによってタイヤの各ビード内に繋留されている。クラウン補強材の半径方向内側に位置するクラウン領域では、半径方向外方のカーカス層、即ちカーカス層のうちで半径方向最も外側に位置するカーカス層は、かくして、凹状部分を有し、この凹状部分の軸方向限界は、子午面の各側で、カーカス層の半径方向外方の箇所である。これら軸方向限界は、一般に、赤道面からほぼ等距離であり、即ち、即ち、赤道面に関して実質的に対称であり、製造公差を与え又は吸収するが、赤道面の各側の距離の差があることが排除されるわけではない。
【0033】
さらに、半径方向外方カーカス層の凹状部分の軸方向限界は、半径方向内方クラウン層の凹状部分の軸方向限界として赤道面に対して必ずしも同一軸方向距離のところに位置してはいない。換言すると、半径方向外方カーカス層の凹状部分と半径方向内方クラウン層の凹状部分は、必ずしも同一軸方向幅を備えていない。
【0034】
半径方向内方クラウン層に類似したやり方で、半径方向外方カーカス層の凹状部分は、用語の数学的な意味において凹状である部分ではなく、2つの凸状側方部分相互間に軸方向に位置した凹状中央部分を有する。
【0035】
その結果、半径方向外方カーカス層の半径方向内側に位置したカーカス層は、これらが2つずつ隣り合っているので、これ又、半径方向外方カーカス層の凹状部分の軸方向幅に実質的に等しい軸方向幅の凹状部分を有する。
【0036】
本発明の本質的な特徴は、半径方向内方のクラウン層の凹状部分と半径方向外方のカーカス層の凹状部分との間の半径方向距離が赤道面内で最大の状態にあり、そして赤道面から赤道面に軸方向最も近いところに位置する凹状部分の軸方向限界まで連続的に減少し、半径方向距離が軸方向限界のところで最小値に達することにある。
【0037】
換言すると、半径方向内方クラウン層の凹状部分と半径方向外方カーカス層の凹状部分は、互いに平行ではなく、即ち、これら凹状部分相互間の半径方向距離は、一定ではない。
【0038】
この半径方向距離は、赤道面内において最大であり、それにより、少なくとも1つのたが掛け層から成るたが掛け補強材の潜在的な挿入のための空間の実現を赤道面のところに保証することができる。この中央領域に配置されたかかるたが掛け補強材は、タイヤをインフレートさせたときの中央のところにおけるカーカス補強材の半径方向運動を制限する目的、かくして、トレッド表面の軸方向幅全体にわたって実質的に一定の振幅のものであるトレッド表面の半径方向運動を得る目的を有し、このことは、トレッド表面の軸方向幅全体にわたって均一の摩耗を促進する。
【0039】
この距離は、赤道面から赤道面に軸方向最も近いところに位置する凹状部分の軸方向限界まで連続的に減少し、半径方向距離は、軸方向限界のところで最小値に達する。赤道面に対して軸方向最も近くに位置する凹状部分の軸方向限界は、幅の最も狭い凹状部分の軸方向限界であることを意味する。具体的に言えば、半径方向外方カーカス層の凹状部分の軸方向幅と半径方向内方クラウン層の凹状部分の軸方向幅は、必ずしも等しくはなく、従って、幅の最も狭い凹状部分の軸方向限界に合わせて凹状部分相互間の距離が考慮に入れられる。
【0040】
幅の最も狭い凹状部分の軸方向限界のところで達した最小距離は、カーカス補強材とクラウン補強材をクラウンのショルダ領域においてできるだけ近づけることができるということを意味している。この最小距離の第1の技術的作用効果は、このショルダ領域内におけるクラウンの半径方向厚さ全体を最小限に抑えるという作用効果であり、このショルダ領域は、最も高い熱応力を受ける領域である。ショルダ領域の半径方向厚さを減少させることにより、この領域の温度を下げ、従ってタイヤのクラウンの耐久性を向上させることができる。この最小距離の第2の技術的作用効果は、カーカス補強材とクラウン補強材をショルダ領域内において機械的に再結合できるということにある。機械的再結合という用語は、半径方向内方クラウン層の補強要素及び半径方向外方カーカス層の補強要素が反作用する張力の一様な分布を意味している。これにより、これら層のそれぞれの補強要素の潜在的な機械的強度の使用を最適化することができる。加うるに、半径方向内方クラウン層に関する限り、この層の補強要素による張力の機械的反作用は、中央部分と側方部分との間で再び均等化される。別の利点は、ショルダのところのクラウンの厚さの減少により基準タイヤと比較して重量が節約されることであり、かかる重量の節約は、航空分野において非常に重要である。
【0041】
凹状部分相互間の最大半径方向距離は、有利には、凹状部分相互間の最小半径方向距離の1.75倍以上であり、好ましくは2.5倍以上である。1.75という最小比により、単一のたが掛け層で構成されたたが掛け補強材を挿入する可能性の実現が得られる。2.5という最小比により、2つのたが掛け層で構成されたたが掛け補強材の潜在的な挿入が可能である。
【0042】
凹状部分の最大半径方向距離は、2.3mm以上であり、好ましくは3.3mm以上であることが特に有利である。
【0043】
2つの層相互間の半径方向距離は、これら層の中立軸線相互間で測定される。層という用語は、個別的な層であり、即ち、その厚みの中に単一の補強要素を有する層である。個別的な層の中立軸線は、補強要素の中心を通り、その断面は、円形であるとみなされる。従来のタイヤ設計では、クラウン、たが掛け層又はカーカス層は、最小厚さが1mmである。赤道面のところにおいてそれぞれの厚さが1mmである半径方向内方クラウン層と半径方向外方カーカス層が厚さが1mmの単一のたが掛け層及び最小厚さが0.3mmのポリマー材料の層によって構成されたたが掛け補強材によって隔てられているという通常の前提条件では、この場合、半径方向内方クラウン層の中立軸線と半径方向外方カーカス層の中立軸線との間で測定された半径方向距離は、2.3mm以上である。たが掛け補強材が少なくとも2つのたが掛け層で構成されているという前提条件では、上述の半径方向距離は、3.3mm以上であることが必要である。したがって、2.3mm及び3.3mmという値は、1つのたが掛け層又は2つのたが掛け層を含むというたが掛け補強材のそれぞれの前提条件下においては技術的に最小値に対応している。
【0044】
また、凹状部分相互間の最小半径方向距離は、1.3mm以上であり且つ2.5mm以下であることが特に有利である。
【0045】
凹状部分の軸方向限界のところでは、それぞれの厚さが1mmである半径方向内方クラウン層と半径方向外方カーカス層は、一般に、最小厚さが0.3mmのポリマー材料層によって隔てられている。この前提条件下において、半径方向内方クラウン層の中立軸線と半径方向外方カーカス層の中立軸線との間で測定された最小半径方向距離は、その少なくとも1.3mmである。本発明者が半径方向内方クラウン層と半径方向外方カーカス層との効果的な再結合を模索していると、この最小半径方向距離は、2.5mmを超えてはならない。
【0046】
本発明の有利な一実施形態によれば、赤道面内に位置した箇所と凹状部分の軸方向限界のうちの一方との間の半径方向距離として定められた半径方向内方クラウン層の凹みの振幅は、1mm以上である。
【0047】
本発明の別の有利な実施形態によれば、赤道面内に位置した箇所と凹状部分の軸方向限界のうちの一方との間の半径方向距離として定められた半径方向外方カーカス層の凹みの振幅は、1mm以上である。
【0048】
所与の層の凹みの振幅は、層のインフレート後の子午線プロフィール、即ち、タイヤをその推奨公称圧力までインフレートさせた後に得られるプロフィールは、実質的に平らであるように定められる。
【0049】
かくして、定められる凹みの振幅は、関連の層の補強要素の構成材料の性状、特にかかる材料の弾性率で決まる。弾性率が高ければ高いほど、凹みの振幅はそれだけ一層小さくなる。というのは、インフレーション時、凹状部分の半径方向運動が比較的僅かだからである。70GPaオーダの高い弾性率を有する芳香族ポリマー、例えばアラミドの場合、インフレーション時の子午線プロフィールの中央部分の半径方向運動を制限するには約2mmの凹みの振幅で十分である。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態によれば、航空機用タイヤは、少なくとも1つのたが掛け層を含むたが掛け補強材を有し、たが掛け層は、タイヤの最大軸方向幅の半分以下である軸方向幅を有し、たが掛け層は、互いに平行であり且つ円周方向に対して+10°〜−10°の角度だけ傾けられた補強要素を有し、たが掛け補強材は、半径方向内方クラウン層の凹状部分の半径方向内側に位置すると共に半径方向外方カーカス層の凹状部分の半径方向外側に位置している。
【0051】
上述したように、中央のたが掛け補強材は、たが掛け補強材なしのクラウン補強材とカーカス補強材の凹状部分を備えた設計と比較して、トレッド表面の中央部と縁部との間の摩耗の均一性を一段と向上させ、更に、タイヤをインフレートさせたときのトレッド表面の半径方向運動相互間の差を一段と制限する。
【0052】
この好ましい実施形態の好ましい変形形態によれば、たが掛け補強材は、2つのたが掛け層を含む。
【0053】
有利には、たが掛け層の補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られる。換言すると、たが掛け層の補強要素の構成材料は、一般に、ナイロン又はアラミドである。補強要素は、単一の材料で構成されても良く、互いに異なる材料を組み合わせても良い。例えば、これら補強要素は、ハイブリッドと呼ばれる補強材を構成するためにナイロンとアラミドの延伸又はスパンフィラメントを組み合わせても良い。これらハイブリッド補強材は、有利には、ナイロンの延び特性とアラミドの延び特性を組み合わせて有する。この種の材料は、有利には、密度が低いので航空機用タイヤの分野で用いられ、かくして航空分野においては重要である重量の節約、即ち軽量化が可能である。
【0054】
また、クラウン層の補強材は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られることが有利であり、クラウン層は、互いに平行であり且つ円周方向に対して+20°〜−20°の角度だけ傾けられた補強要素を有する。
【0055】
最後に、カーカス層の補強材は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られることが有利であり、カーカス層は、互いに平行であり且つ円周方向に垂直である補強要素を有する。
【0056】
もう一度説明すると、クラウン又はカーカス層の補強要素の構成材料であるナイロン又はアラミドは、航空機用タイヤの分野ではありふれていて、軽量化という利点をもたらす材料である。
【0057】
本発明の特徴及び他の利点は、
図1の記載から良好に理解される。