特許第6143232号(P6143232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6143232-航空機用タイヤのクラウン 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143232
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】航空機用タイヤのクラウン
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/08 20060101AFI20170529BHJP
   B60C 9/18 20060101ALI20170529BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20170529BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B60C9/08 D
   B60C9/08 N
   B60C9/18 H
   B60C9/18 K
   B60C9/00 C
   B60C9/00 D
   B60C9/22 G
【請求項の数】11
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-542792(P2014-542792)
(86)(22)【出願日】2012年11月20日
(65)【公表番号】特表2015-501753(P2015-501753A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2012073033
(87)【国際公開番号】WO2013079351
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年9月25日
(31)【優先権主張番号】1160892
(32)【優先日】2011年11月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(73)【特許権者】
【識別番号】508032479
【氏名又は名称】ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】エステーヌ ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】サフォウ シャルロット
【審査官】 細井 龍史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−158967(JP,A)
【文献】 特表2011−526555(JP,A)
【文献】 特開平03−099902(JP,A)
【文献】 特開平09−323506(JP,A)
【文献】 特開2011−195046(JP,A)
【文献】 特開平07−025203(JP,A)
【文献】 特開平01−156103(JP,A)
【文献】 米国特許第03735791(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/00−9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機用タイヤであって、
‐トレッド(1)を有し、
‐前記トレッド(1)の半径方向内側に位置したクラウン補強材(2)を有し、前記クラウン補強材は、少なくとも1つのクラウン層を有し、
‐半径方向内方のクラウン層(21)は、前記タイヤの最大軸方向幅(L1)の2/3以上の軸方向幅(L2)を有し、かつ、前記クラウン層(21)は、凹状部分を有し、前記凹状部分の軸方向限界(M2,M′2)は、赤道面(XZ)の各側で、前記クラウン層(21)の半径方向外方の箇所であり、
‐前記クラウン補強材(2)の半径方向内側に位置し、少なくとも1つのカーカス層を有するカーカス補強材(3)を有し、
‐半径方向外方のカーカス層(31)は、凹状部分を有し、前記凹状部分の軸方向限界(M3,M′3)は、赤道面(XZ)の各側で、前記カーカス層(31)の半径方向外方の箇所である、航空機用タイヤにおいて、
前記半径方向内方のクラウン層(21)の前記凹状部分と前記半径方向外方のカーカス層(31)の前記凹状部分との間の半径方向距離(d)は、前記赤道面(XZ)内で最大の状態にあり、そして前記赤道面(XZ)から前記赤道面(XZ)に軸方向最も近いところに位置する前記凹状部分の前記軸方向限界(M2,M′2)まで連続的に減少し、前記半径方向距離(d)は、前記軸方向限界のところで最小値(dM)に達する、航空機用タイヤ。
【請求項2】
前記凹状部分相互間の前記最大半径方向距離(dC)は、前記凹状部分相互間の前記最小軸方向距離(dM1.75倍以上であり、好ましくは2.5倍以上である、請求項1記載の航空機用タイヤ。
【請求項3】
前記凹状部分の前記最大半径方向距離(dC)は、2.3mm以上であり、好ましくは3.3mm以上である、請求項1又は2記載の航空機用タイヤ。
【請求項4】
前記凹状部分相互間の前記最小半径方向距離(dM)は、1.3mm以上であり且つ2.5mm以下である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ。
【請求項5】
前記赤道面(XZ)内に位置した箇所(C2)と前記凹状部分の前記軸方向限界(M2,M′2)のうちの一方との間の半径方向距離として定められた前記半径方向内方クラウン層(21)の凹みの振幅(a2)は、1mm以上である、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ。
【請求項6】
前記赤道面(XZ)内に位置した箇所(C3)と前記凹状部分の前記軸方向限界(M3,M′3)のうちの一方との間の半径方向距離として定められた前記半径方向外方カーカス層(31)の凹みの振幅(a3)は、1mm以上である、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ。
【請求項7】
少なくとも1つのたが掛け層を含むたが掛け補強材(4)を有し、前記たが掛け層は、前記タイヤの前記最大軸方向幅(L1)の半分以下の軸方向幅(L4)を有し、前記たが掛け層は、互いに平行であり且つ円周方向(XX′)に対して+10°〜−10°の角度だけ傾けられた補強要素を有し、前記たが掛け補強材(4)は、前記半径方向内方クラウン層(21)の前記凹状部分の半径方向内側に位置すると共に前記半径方向外方カーカス層(31)の前記凹状部分の半径方向外側に位置している、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ。
【請求項8】
前記たが掛け補強材(4)は、2つのたが掛け層を含む、請求項7記載の航空機用タイヤ。
【請求項9】
たが掛け層の前記補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られている、請求項7又は8記載の航空機用タイヤ。
【請求項10】
互いに平行であり且つ円周方向(XX′)に対して+20°〜−20°の角度だけ傾けられた補強要素を有するクラウン層を有し、クラウン層の前記補強材は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られている、請求項1〜9のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ。
【請求項11】
互いに平行であり且つ円周方向(XX′)に垂直である補強要素を有するカーカス層を有し、カーカス層の前記補強材は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られている、請求項1〜10のうちいずれか一に記載の航空機用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機用のタイヤ、特に航空機用タイヤのクラウンに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、トレッド表面(踏み面)を介して路面に接触するようになったトレッドを含むクラウンと、リムに接触するようになった2つのビードと、クラウンをビードに連結する2つのサイドウォールとを有する。一般に航空機用に用いられているラジアルタイヤは、特に、ラジアルカーカス補強材及びクラウン補強材を有し、これら補強材は両方とも、例えば欧州特許第138152号明細書に記載されている。
【0003】
タイヤは、回転軸線に関して回転対称を呈する幾何学的形状を有するので、タイヤの幾何学的形状は、一般に、タイヤの回転軸線を含む子午面内に描かれる。所与の子午面の場合、半径方向、軸方向及び円周方向は、それぞれ、タイヤの回転軸線に垂直な方向、タイヤの回転軸線に平行な方向及び子午面に垂直な方向を示している。
【0004】
以下において、「〜の半径方向内側」及び「〜の半径方向内方」という表現は、それぞれ、「〜よりも半径方向においてタイヤの回転軸線の近くに位置する」こと及び「半径方向においてタイヤの回転軸線の最も近くに位置する」ことを意味している。「〜の半径方向外側」及び「〜の半径方向外方」という表現は、それぞれ、「〜よりも半径方向においてタイヤの回転軸線から離れて位置する」こと及び「半径方向においてタイヤの回転軸線から見て最も遠くに位置する」ことを意味している。「〜の軸方向内側」及び「〜の軸方向内方」という表現は、それぞれ、「〜よりも軸方向においてタイヤの回転軸線の近くに位置する」こと及び「軸方向においてタイヤの回転軸線の最も近くに位置する」ことを意味しており、赤道面は、タイヤの回転軸線に垂直であり且つ大夫のトレッド表面の中間を通る平面である。同様に、「〜の軸方向外側」及び「〜の軸方向外方」という表現は、それぞれ、「〜よりも軸方向においてタイヤの回転軸線から離れて位置する」こと及び「軸方向においてタイヤの回転軸線から見て最も遠くに位置する」ことを意味している。「半径方向距離」は、タイヤの回転軸線に対する距離であり、「軸方向距離」は、タイヤの赤道面に対する距離である。「半径方向厚さ」は、半径方向に測定され、「軸方向幅」は、軸方向に測定される。
【0005】
半径方向カーカス補強材は、タイヤの2つのビードを互いに連結するタイヤ補強構造体である。航空機用タイヤの半径方向カーカス補強材は、一般に、カーカス層と呼ばれる少なくとも1つのカーカス補強層を有し、各カーカス層は、ポリマー材料で被覆され、互いに平行であり且つ円周方向と80°〜100°の角度をなす補強要素で構成されている。各カーカス層は、個別的であり、即ち、その厚みの中にたった1つの補強要素を有する。
【0006】
クラウン補強材は、トレッドの半径方向内側に位置すると共に通常半径方向カーカス補強材の半径方向外側に位置したタイヤ補強構造体である。航空機のタイヤのためのクラウン補強材は、一般に、クラウン層と呼ばれている少なくとも1つのクラウン補強層を有する。各クラウン層は、ポリマー材料で被覆され、互いに平行であり、しかも円周方向と+20°〜−20°の角度をなす補強要素で構成されている。各クラウン層は、個別的であり、即ち、その厚みの中にたった1つの補強要素を有する。
【0007】
クラウン層のうちで、通常、繊維補強要素で構成された実働補強材を構成する実働層と保護補強材層を構成すると共に金属又は繊維補強要素で作られていて実働補強材の半径方向外側に配置された保護層とは区別される。実働層は、クラウンの機械的挙動を定める。保護層は、本質的に、トレッドを通ってタイヤの内側に向かって半径方向に広がる可能性のある攻撃から実働層を保護する。クラウン層、特に実働層は、軸方向に幅の広い層、即ち、例えばタイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を有する層である場合が多い。タイヤの最大軸方向幅は、タイヤがそのリムに取り付けられると共に僅かにインフレートされ、即ち、例えばタイヤ・リム協会、即ちTRAによって推奨される公称圧力の10%に等しい圧力までインフレートされた状態で、サイドウォールのところで測定される。
【0008】
タイヤは、クラウン補強材の半径方向内側又は半径方向外側に位置し、或いはそれどころか2つのクラウン層相互間に挿入されたたが掛け補強材を更に有する場合がある。航空機用タイヤのたが掛け補強材は、一般に、たが掛け層と呼ばれるたが掛け補強材の少なくとも1つの層を含む。各たが掛け層は、ポリマー材料で被覆され、互いに平行であり、しかも円周方向と+10°〜−10°の角度をなす補強要素で構成されている。たが掛け層は、通常、軸方向に幅の狭い実働層、即ちクラウン層の軸方向幅よりもかなり小さく、しかも例えば、タイヤの最大軸方向幅の半分以下の軸方向幅を有する層である。
【0009】
航空機用タイヤのためのカーカス層の補強要素、実働補層の補強要素及びたが掛け層の補強要素は、通常、好ましくは脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミドで作られた延伸又はスパン繊維フィラメントで構成されたコードである。保護層の補強要素は、金属細線から成るコードか延伸又はスパン繊維フィラメントで構成されたコードかのいずれかであるのが良い。
【0010】
繊維補強要素に関する限り、繊維補強要素の引張り特性(弾性率、伸び率及び破断力)は、事前状態調節後に測定される。「事前状態調節」という用語は、繊維補強要素が測定に先立って欧州規DIN EN20139(20±2℃の温度、65±2%の相対湿度)に準拠した標準雰囲気内で少なくとも24時間にわたって貯蔵されることを意味している。測定は、ツヴィック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュテンクテル・ハフツング・ウント・カンパニー(ZWICK GmbH & Co )(独国)製のタイプ1435又はタイプ1445の引張り試験機を用いて公知の仕方で実施される。繊維補強要素は、200mm/分の公称速度で400mmの初期長さに関して張力試験を受ける。結果は全て、10個の測定値にわたって平均される。
【0011】
航空機用タイヤは、タイヤの種々の使用段階、即ち、離陸、地上走行及び着陸中にこれらに関する要求の結果として、不均一摩耗と呼ばれる非一様なトレッド摩耗を生じる場合が多い。中間部分と中間部分の軸方向外側に位置するトレッドの2つの側方部分との間にはトレッド摩耗差が存在することが実証されている。通常、中間部分の摩耗が最も大きく、タイヤの寿命を決めることが望ましい。場合によっては、上述の摩耗差はトレッドの側方部分の摩耗を悪化させてしまい、これは、中間部分の摩耗を凌駕し、それにより使用状態から時期尚早な使用停止が生じ、これは経済的な損失となる。
【0012】
当業者には知られているように、タイヤトレッド摩耗は、タイヤの使用の仕方及び設計に関連した種々の要因で決まる。摩耗は、特に、路面へのタイヤトレッドの接触パッチの幾何学的形状及びこの接触パッチ内における機械的応力の分布状態で決まる。これら2つのパラメータは、トレッド表面のインフレート状態における子午線輪郭形状で決まる。トレッド表面のインフレート状態における子午線方向輪郭形状は、タイヤをその定格圧力でインフレートさせて無負荷状態にした場合、子午面上におけるトレッド表面の断面である。
【0013】
トレッドの中間部分の摩耗差に対してタイヤの寿命を延ばすため、当業者は、トレッド表面のインフレート状態子午線方向輪郭の幾何学的形状を最適化しようと努力した。
【0014】
欧州特許第1163120号明細書は、タイヤをその定格圧力にインフレートさせているときの半径方向変形を制限しようとした航空機用タイヤのクラウン補強材を開示しており、それによりトレッド表面のインフレート状態子午線方向輪郭の半径方向変形を制限することができる。タイヤをその定格圧力にインフレートさせているときのクラウン補強材の半径方向変形は、クラウン層の円周方向引張り剛性を増大させることによって首尾よく制限され、これは、通常、脂肪族ポリアミドで作られたクラウン層の補強材に代えて芳香族ポリアミドで作られた補強要素を用いることによって得られる。芳香族ポリアミドで作られた補強要素の弾性率は、脂肪族ポリアミドで作られた補強要素の弾性率よりも高く、前者の伸び率は、引張り応力が所与である場合、後者の伸び率よりも小さい。
【0015】
上述の欧州特許第1381525号明細書は、クラウン層及び/又はカーカス層の補強材層の引張り剛性を変えることによりトレッド表面のインフレート状態子午線方向輪郭の幾何学的形状を改造するという一方式を提案している。この特許文献は、脂肪族ポリアミドの通常の補強要素に代えてハイブリッド補強要素、即ち、脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの両方で作られた補強要素を使用することを教示している。これらハイブリッド補強要素の弾性率は、脂肪族ポリアミドで作られた補強要素の弾性率よりも高く、従って、ハイブリッド補強要素の伸び率は、引張り応力が所与である場合、小さい。ハイブリッド補強要素は、円周方向引張り剛性を増大させるためにクラウン層中に用いられると共に/或いは子午面における引張り剛性を増大させるためにカーカス層中に用いられる。
【0016】
欧州特許第1477333号明細書は、クラウン補強材の軸方向最も外側の部分の全体的円周方向引張り剛性とクラウン補強材の中間部分の全体的円周方向引張り剛性の比が規定された範囲内にあるようにクラウン補強材の全体的円周方向引張り剛性を軸方向に変えることによってトレッド表面のインフレート状態子午線方向輪郭の幾何学的形状を改造するという別の方式を提案している。クラウン補強材の全体的円周方向引張り剛性は、クラウン層の円周方向引張り剛性の組み合わせの結果である。クラウン補強材の全体的円周方向引張り剛性は、重ね合わされたクラウン層の数の変化に応じて軸方向にばらつきがある。提案された解決策は、クラウン補強材の中間部分と軸方向最も外側の部分との間の全体的円周方向引張り剛性の軸方向分布に基づいており、中間部分は、クラウン補強材の軸方向最も外側の部分よりも剛性が高い。クラウン層又はカーカス層中に用いられている補強要素は、脂肪族ポリアミド又は芳香族ポリアミドで作られ或いはハイブリッドである。
【0017】
しかしながら、上述の3つの先行技術文献に記載された解決策は、高い要求が課される民間航空機に装着されるタイヤのトレッドの不均一摩耗を減少させる上では依然として不適当である。
【0018】
国際公開第2010/000747号パンフレットは、公称圧力が9barよりも高く、公称荷重を受けた撓みが30%を超える航空機用タイヤを記載しており、この航空機用タイヤは、トレッド表面を備えたトレッドと、少なくとも1つのクラウン層を含むクラウン補強材と、少なくとも1つのカーカス層を含むカーカス補強材とを有し、トレッド表面、クラウン補強材及びカーカス補強材は、それぞれ、初期子午線プロフィールによって幾何学的に定められる。本発明によれば、クラウン補強材の初期子午線プロフィールは、クラウン補強材の軸方向幅の0.25倍以上である軸方向幅の中間部分にわたって局所的に凹状である。
【0019】
国際公開第2010/000747号パンフレットに記載された技術的解決策は、中間部分とこの中間部分の軸方向外側に位置した側方部分との間のトレッドの摩耗差を制限することによって航空機用タイヤの耐摩耗寿命を増大させることができる。
タイヤは、トレッドの幅の端から端までの摩耗が均一なので長持ちするが、その耐久性は、この良好な摩耗パターンによりその長い寿命全体を通じて保証される必要がある。特に、タイヤのクラウンの耐久性、即ちタイヤに加わる過酷な機械的要求に経時的に耐えることができるその能力を向上させる必要がある。過酷な機械的要求は、例えば、非限定的な例として、民間航空機用タイヤの場合、15barを超える公称圧力、20トンを超える公称荷重及び360km/hの最大速度を意味している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許第138152号明細書
【特許文献2】欧州特許第1163120号明細書
【特許文献3】欧州特許第1477333号明細書
【特許文献4】国際公開第2010/000747号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者は、航空機用タイヤの寿命をトレッドの耐摩耗性の向上の結果として延ばす場合に航空機用タイヤのクラウンの耐久性を向上させる目的に取り組んだ。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、本発明によれば、航空機用タイヤであって、
‐トレッドを有し、
‐トレッドの半径方向内側に位置したクラウン補強材を有し、クラウン補強材は、少なくとも1つのクラウン層を有し、
‐半径方向内方のクラウン層は、タイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を有し、クラウン層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、クラウン層の半径方向外方の箇所であり、
‐クラウン補強材の半径方向内側に位置したカーカス補強材を有し、カーカス補強材は、少なくとも1つのカーカス層を有し、
‐半径方向外方のカーカス層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、カーカス層の半径方向外方の箇所である、航空機用タイヤにおいて、
半径方向内方のクラウン層の凹状部分と半径方向外方のカーカス層の凹状部分との間の半径方向距離は、赤道面内で最大の状態にあり、そして赤道面から赤道面に軸方向最も近いところに位置する凹状部分の軸方向限界まで連続的に減少し、半径方向距離は、軸方向限界のところで最小値に達することを特徴とする航空機用タイヤによって達成された。
【0023】
タイヤのクラウン補強材は、一般に、タイヤの子午面内においてクラウン層の軸方向端部を互い違いにするよう一般に1つの層と別の層とでは異なる軸方向幅を有する複数個の半径方向に重ね合わされたクラウン層で構成されている。クラウン補強材は、一般に、幅広(ワイド)と呼ばれ、即ち、タイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を備えた少なくとも1つのクラウン層を有する。タイヤの最大軸方向幅は、タイヤがそのリムに取り付けられると共に僅かにインフレートされ、即ち、推奨公称圧力の10%に等しい圧力までインフレートされた状態で、サイドウォールのところで測定される。
【0024】
クラウン層の軸方向幅は、クラウン層の端点相互間の軸方向距離である。この軸方向距離は、通常、タイヤを2つの子午面で切断することによって得られたタイヤの子午線断面について測定される。一例を挙げると、タイヤの子午線断面は、トレッドのところで円周方向に約60mmの厚さを有する。
【0025】
本発明のタイヤでは、半径方向内方のクラウン層、即ち、全てのクラウン層のうちで半径方向最も内側よりのクラウン層は、タイヤの最大軸方向幅の2/3以上である軸方向幅を有し、従って、これは、幅広クラウン層である。
【0026】
さらに、半径方向内方クラウン層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、クラウン層の半径方向外方の箇所である。これら軸方向限界は、一般に、赤道面から実質的に等距離のところに位置し、即ち、赤道面に関して実質的に対称であり、製造公差を与え又は吸収するが、赤道面の各側の距離の差があることか排除されるわけではない。相当な軸方向幅の凹状部分を有するために幅広クラウン層が必要である。
【0027】
凹状部分は、子午面内において、赤道面内に半径方向内方の箇所及び赤道面の各側に1つずつ設けられた2つの半径方向外方箇所を有し、これらの箇所は、凹状部分の軸方向限界である。したがって、凹状部分の箇所の全ては、赤道面内に位置する箇所の半径方向外側に且つ凹状部分の軸方向限界である箇所の半径方向内側に位置する。
【0028】
本発明の意味における凹状部分は、この用語の数学的な意味における凹状部分ではない。事実、凹状部分は、数学的な意味で凹状である中央部分を有し、凹状中央部分上のあらゆる箇所において、凹状中央部分の半径方向外側に位置する曲率中心及び凹状中央部分の各側に、数学的な意味で凸状の側方部分を有し、この凸状側方部分のあらゆる箇所において、この凸状側方部分の半径方向内側に位置した曲率中心を有する。凹状中央部分は、赤道面の各側に1つずつ設けられた2つの変曲点によって軸方向に画定される。各凸状側方部分は、軸方向内側が変曲点によって画定されると共に軸方向外側が凹状部分の軸方向限界によって画定されている。
【0029】
凹状部分を設けることは、この凹状部分の軸方向外側に2つの凸状部分を設けることを必然的に伴う。これら凸状部分は、軸方向外側が実働層の端部によって制限される。
【0030】
内方クラウン層の半径方向外側に位置した他のクラウン層は、半径方向内方クラウン層の凹状部分の軸方向幅に実質的に等しい軸方向幅の凹状部分を有する場合が多い。これは、特に、クラウン層が2つずつ隣り合うと共に例えばエラストマー材料で作られた層間要素によって隔てられていない場合に起こる。この場合、クラウン層のそれぞれの子午線プロフィールは、一対ずつ互いに平行であり、即ち、これらのそれぞれの軸方向幅全体にわたって等距離である。
【0031】
また、本発明によれば、半径方向外方のカーカス層は、凹状部分を有し、凹状部分の軸方向限界は、赤道面の各側で、カーカス層の半径方向外方の箇所である。
【0032】
カーカス補強材は、一般に、カーカス層の重ね合わせで構成され、これらカーカス層の各々は、一般に金属で作られていて、ビードワイヤと呼ばれる円周方向補強要素に巻き付けられることによってタイヤの各ビード内に繋留されている。クラウン補強材の半径方向内側に位置するクラウン領域では、半径方向外方のカーカス層、即ちカーカス層のうちで半径方向最も外側に位置するカーカス層は、かくして、凹状部分を有し、この凹状部分の軸方向限界は、子午面の各側で、カーカス層の半径方向外方の箇所である。これら軸方向限界は、一般に、赤道面からほぼ等距離であり、即ち、即ち、赤道面に関して実質的に対称であり、製造公差を与え又は吸収するが、赤道面の各側の距離の差があることが排除されるわけではない。
【0033】
さらに、半径方向外方カーカス層の凹状部分の軸方向限界は、半径方向内方クラウン層の凹状部分の軸方向限界として赤道面に対して必ずしも同一軸方向距離のところに位置してはいない。換言すると、半径方向外方カーカス層の凹状部分と半径方向内方クラウン層の凹状部分は、必ずしも同一軸方向幅を備えていない。
【0034】
半径方向内方クラウン層に類似したやり方で、半径方向外方カーカス層の凹状部分は、用語の数学的な意味において凹状である部分ではなく、2つの凸状側方部分相互間に軸方向に位置した凹状中央部分を有する。
【0035】
その結果、半径方向外方カーカス層の半径方向内側に位置したカーカス層は、これらが2つずつ隣り合っているので、これ又、半径方向外方カーカス層の凹状部分の軸方向幅に実質的に等しい軸方向幅の凹状部分を有する。
【0036】
本発明の本質的な特徴は、半径方向内方のクラウン層の凹状部分と半径方向外方のカーカス層の凹状部分との間の半径方向距離が赤道面内で最大の状態にあり、そして赤道面から赤道面に軸方向最も近いところに位置する凹状部分の軸方向限界まで連続的に減少し、半径方向距離が軸方向限界のところで最小値に達することにある。
【0037】
換言すると、半径方向内方クラウン層の凹状部分と半径方向外方カーカス層の凹状部分は、互いに平行ではなく、即ち、これら凹状部分相互間の半径方向距離は、一定ではない。
【0038】
この半径方向距離は、赤道面内において最大であり、それにより、少なくとも1つのたが掛け層から成るたが掛け補強材の潜在的な挿入のための空間の実現を赤道面のところに保証することができる。この中央領域に配置されたかかるたが掛け補強材は、タイヤをインフレートさせたときの中央のところにおけるカーカス補強材の半径方向運動を制限する目的、かくして、トレッド表面の軸方向幅全体にわたって実質的に一定の振幅のものであるトレッド表面の半径方向運動を得る目的を有し、このことは、トレッド表面の軸方向幅全体にわたって均一の摩耗を促進する。
【0039】
この距離は、赤道面から赤道面に軸方向最も近いところに位置する凹状部分の軸方向限界まで連続的に減少し、半径方向距離は、軸方向限界のところで最小値に達する。赤道面に対して軸方向最も近くに位置する凹状部分の軸方向限界は、幅の最も狭い凹状部分の軸方向限界であることを意味する。具体的に言えば、半径方向外方カーカス層の凹状部分の軸方向幅と半径方向内方クラウン層の凹状部分の軸方向幅は、必ずしも等しくはなく、従って、幅の最も狭い凹状部分の軸方向限界に合わせて凹状部分相互間の距離が考慮に入れられる。
【0040】
幅の最も狭い凹状部分の軸方向限界のところで達した最小距離は、カーカス補強材とクラウン補強材をクラウンのショルダ領域においてできるだけ近づけることができるということを意味している。この最小距離の第1の技術的作用効果は、このショルダ領域内におけるクラウンの半径方向厚さ全体を最小限に抑えるという作用効果であり、このショルダ領域は、最も高い熱応力を受ける領域である。ショルダ領域の半径方向厚さを減少させることにより、この領域の温度を下げ、従ってタイヤのクラウンの耐久性を向上させることができる。この最小距離の第2の技術的作用効果は、カーカス補強材とクラウン補強材をショルダ領域内において機械的に再結合できるということにある。機械的再結合という用語は、半径方向内方クラウン層の補強要素及び半径方向外方カーカス層の補強要素が反作用する張力の一様な分布を意味している。これにより、これら層のそれぞれの補強要素の潜在的な機械的強度の使用を最適化することができる。加うるに、半径方向内方クラウン層に関する限り、この層の補強要素による張力の機械的反作用は、中央部分と側方部分との間で再び均等化される。別の利点は、ショルダのところのクラウンの厚さの減少により基準タイヤと比較して重量が節約されることであり、かかる重量の節約は、航空分野において非常に重要である。
【0041】
凹状部分相互間の最大半径方向距離は、有利には、凹状部分相互間の最小半径方向距離の1.75倍以上であり、好ましくは2.5倍以上である。1.75という最小比により、単一のたが掛け層で構成されたたが掛け補強材を挿入する可能性の実現が得られる。2.5という最小比により、2つのたが掛け層で構成されたたが掛け補強材の潜在的な挿入が可能である。
【0042】
凹状部分の最大半径方向距離は、2.3mm以上であり、好ましくは3.3mm以上であることが特に有利である。
【0043】
2つの層相互間の半径方向距離は、これら層の中立軸線相互間で測定される。層という用語は、個別的な層であり、即ち、その厚みの中に単一の補強要素を有する層である。個別的な層の中立軸線は、補強要素の中心を通り、その断面は、円形であるとみなされる。従来のタイヤ設計では、クラウン、たが掛け層又はカーカス層は、最小厚さが1mmである。赤道面のところにおいてそれぞれの厚さが1mmである半径方向内方クラウン層と半径方向外方カーカス層が厚さが1mmの単一のたが掛け層及び最小厚さが0.3mmのポリマー材料の層によって構成されたたが掛け補強材によって隔てられているという通常の前提条件では、この場合、半径方向内方クラウン層の中立軸線と半径方向外方カーカス層の中立軸線との間で測定された半径方向距離は、2.3mm以上である。たが掛け補強材が少なくとも2つのたが掛け層で構成されているという前提条件では、上述の半径方向距離は、3.3mm以上であることが必要である。したがって、2.3mm及び3.3mmという値は、1つのたが掛け層又は2つのたが掛け層を含むというたが掛け補強材のそれぞれの前提条件下においては技術的に最小値に対応している。
【0044】
また、凹状部分相互間の最小半径方向距離は、1.3mm以上であり且つ2.5mm以下であることが特に有利である。
【0045】
凹状部分の軸方向限界のところでは、それぞれの厚さが1mmである半径方向内方クラウン層と半径方向外方カーカス層は、一般に、最小厚さが0.3mmのポリマー材料層によって隔てられている。この前提条件下において、半径方向内方クラウン層の中立軸線と半径方向外方カーカス層の中立軸線との間で測定された最小半径方向距離は、その少なくとも1.3mmである。本発明者が半径方向内方クラウン層と半径方向外方カーカス層との効果的な再結合を模索していると、この最小半径方向距離は、2.5mmを超えてはならない。
【0046】
本発明の有利な一実施形態によれば、赤道面内に位置した箇所と凹状部分の軸方向限界のうちの一方との間の半径方向距離として定められた半径方向内方クラウン層の凹みの振幅は、1mm以上である。
【0047】
本発明の別の有利な実施形態によれば、赤道面内に位置した箇所と凹状部分の軸方向限界のうちの一方との間の半径方向距離として定められた半径方向外方カーカス層の凹みの振幅は、1mm以上である。
【0048】
所与の層の凹みの振幅は、層のインフレート後の子午線プロフィール、即ち、タイヤをその推奨公称圧力までインフレートさせた後に得られるプロフィールは、実質的に平らであるように定められる。
【0049】
かくして、定められる凹みの振幅は、関連の層の補強要素の構成材料の性状、特にかかる材料の弾性率で決まる。弾性率が高ければ高いほど、凹みの振幅はそれだけ一層小さくなる。というのは、インフレーション時、凹状部分の半径方向運動が比較的僅かだからである。70GPaオーダの高い弾性率を有する芳香族ポリマー、例えばアラミドの場合、インフレーション時の子午線プロフィールの中央部分の半径方向運動を制限するには約2mmの凹みの振幅で十分である。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態によれば、航空機用タイヤは、少なくとも1つのたが掛け層を含むたが掛け補強材を有し、たが掛け層は、タイヤの最大軸方向幅の半分以下である軸方向幅を有し、たが掛け層は、互いに平行であり且つ円周方向に対して+10°〜−10°の角度だけ傾けられた補強要素を有し、たが掛け補強材は、半径方向内方クラウン層の凹状部分の半径方向内側に位置すると共に半径方向外方カーカス層の凹状部分の半径方向外側に位置している。
【0051】
上述したように、中央のたが掛け補強材は、たが掛け補強材なしのクラウン補強材とカーカス補強材の凹状部分を備えた設計と比較して、トレッド表面の中央部と縁部との間の摩耗の均一性を一段と向上させ、更に、タイヤをインフレートさせたときのトレッド表面の半径方向運動相互間の差を一段と制限する。
【0052】
この好ましい実施形態の好ましい変形形態によれば、たが掛け補強材は、2つのたが掛け層を含む。
【0053】
有利には、たが掛け層の補強要素は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られる。換言すると、たが掛け層の補強要素の構成材料は、一般に、ナイロン又はアラミドである。補強要素は、単一の材料で構成されても良く、互いに異なる材料を組み合わせても良い。例えば、これら補強要素は、ハイブリッドと呼ばれる補強材を構成するためにナイロンとアラミドの延伸又はスパンフィラメントを組み合わせても良い。これらハイブリッド補強材は、有利には、ナイロンの延び特性とアラミドの延び特性を組み合わせて有する。この種の材料は、有利には、密度が低いので航空機用タイヤの分野で用いられ、かくして航空分野においては重要である重量の節約、即ち軽量化が可能である。
【0054】
また、クラウン層の補強材は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られることが有利であり、クラウン層は、互いに平行であり且つ円周方向に対して+20°〜−20°の角度だけ傾けられた補強要素を有する。
【0055】
最後に、カーカス層の補強材は、脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド又は脂肪族ポリアミドと芳香族ポリアミドの組み合わせで作られることが有利であり、カーカス層は、互いに平行であり且つ円周方向に垂直である補強要素を有する。
【0056】
もう一度説明すると、クラウン又はカーカス層の補強要素の構成材料であるナイロン又はアラミドは、航空機用タイヤの分野ではありふれていて、軽量化という利点をもたらす材料である。
【0057】
本発明の特徴及び他の利点は、図1の記載から良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】本発明の好ましい実施形態としてのタイヤのクラウンの子午線断面図であり、たが掛け補強材が半径方向内方クラウン層の凹状部分と半径方向外方カーカス層の凹状部分との間に介在して位置している状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明を理解しやすくするため、図1は、単純化された形態で示されており、縮尺通りには描かれていない。
【0060】
図1は、本発明のタイヤのクラウンの子午線断面、即ち、子午面の断面を示しており、このタイヤは、トレッド1、トレッド1の半径方向内側に位置したクラウン補強材2、クラウン補強材2の半径方向内側に位置した半径方向カーカス補強材3及びクラウン補強材2と半径方向カーカス補強材3との間に半径方向に配置されたたが掛け補強材を有する。
【0061】
半径方向、軸方向及び円周方向は、それぞれ、方向ZZ′、YY′及びXX′である。赤道面XZは、半径方向及び円周方向によって定められている。
【0062】
クラウン補強材2は、数個のクラウン層で構成され、これらのうちの半径方向最も内側のクラウン層は、半径方向内方クラウン層21である。半径方向内方クラウン層21の軸方向幅L2は、その軸方向端E2,E′2相互間の軸方向距離であり、タイヤの最大軸方向幅L1の2/3以上である。タイヤの最大軸方向幅L1は、タイヤがそのリムに取り付けられると共に僅かにインフレートされ、即ち、推奨公称圧力の10%に等しい圧力までインフレートされた状態で、サイドウォールのところで測定される。
【0063】
半径方向内方クラウン層21は、凹状部分を有し、この凹状部分の軸方向限界M2,M′2は、赤道面XZの各側において、半径方向距離R2のところに配置されたクラウン層の半径方向外方箇所である。半径方向内方クラウン層21は、凹状部分の軸方向外側に位置した2つの凸状部分を更に有する。これら凸状部分は、それぞれ、軸方向内側が凹状部分の軸方向限界M2,M′2によって画定されると共に軸方向外側がクラウン層の端E2,E′2によって画定されている。
【0064】
半径方向内方クラウン層21の凹状部分は、数学的な意味において凹状であり、変曲点I2,I′2によって軸方向に画定された部分及び凹状部分の各側において数学的な意味で凸状であり、この凹状部分の軸方向限界M2又はM′2によって軸方向外側が画定された部分を有する。凹状部分の軸方向幅b2は、凹状部分の軸方向限界M2,M′2相互間の軸方向距離である。凹みの振幅a2は、軸方向限界M2,M′2の半径方向距離R2と赤道面XZ内に位置した箇所C2の半径方向距離r2との差である。
【0065】
カーカス補強材3は、数個のカーカス層で構成され、これらカーカス層のうちで半径方向最も外側の層は、半径方向外方カーカス層31である。クラウン補強材2の半径方向内側に位置したクラウン領域では、半径方向外方カーカス層31は、凹状部分を有し、この凹状部分の軸方向限界M3,M′3は、赤道面XZの各側において、半径方向距離R3のところに配置されたカーカス層の半径方向外方箇所である。
【0066】
半径方向外方カーカス層31の凹状部分は、数学的な意味において凹状であり、変曲点I3,I′3によって軸方向に画定された部分及び凹状部分の各側において数学的な意味で凸状であり、この凹状部分の軸方向限界M3又はM′3によって軸方向外側が画定された部分を有する。凹状部分の軸方向幅b3は、凹状部分の軸方向限界M3,M′3相互間の軸方向距離であり、この軸方向距離は、図1に示されている例では、半径方向内方クラウン層21の凹状部分の軸方向幅b2よりも大きい。凹みの振幅a3は、軸方向限界M3,M′3の半径方向距離R3と赤道面XZ内に位置した箇所C3の半径方向距離r3との差である。
【0067】
半径方向内方クラウン層21の凹状部分及び半径方向外方クラウン層31の凹状部分の半径方向内方箇所(C2,C3)相互間の半径方向距離dCは、C2及びC3のそれぞれの半径方向距離R2,R3相互間の差である。
【0068】
さらに、図1は、たが掛け補強材4が半径方向内方クラウン層21と半径方向外方カーカス層31との間に半径方向に配置された本発明の好ましい実施形態を示している。このたが掛け補強材は、狭い軸方向幅L4、即ち、タイヤの最大軸方向幅L1の半分以下である幅によって特徴付けられている。
【0069】
本発明者は、サイズ46×17R20の航空機用タイヤについてたが掛け補強材を備えた状態で好ましい実施形態としての本発明を実施し、この航空機用タイヤの使用は、15.9barの公称圧力、20473daNの公称静荷重及び225km/hの最大基準速度を特徴としている。
【0070】
検討対象のタイヤでは、クラウン補強材は、7つのクラウン層で構成され、これらクラウン層の補強要素は、ハイブリッド型のものである。半径方向内方クラウン層は、300mmの軸方向幅、即ち、タイヤの最大軸方向幅の0.83倍の軸方向幅を有する。半径方向内方クラウン層の凹みの幅は、160mmであり、凹みの振幅は、7.3mmである。
【0071】
カーカス補強材は、5つのカーカス層で構成され、かかるカーカス層の補強要素は、ナイロンで作られている。半径方向外方カーカス層は、160mmの凹みの幅及び10mmの凹みの振幅を有する。
【0072】
たが掛け補強材は、2つのたが掛け層で構成され、これらたが掛け層の補強要素は、ハイブリッド型のものである。たが掛け補強材の軸方向幅は、56mm、即ち、タイヤの最大軸方向幅の0.15倍である。
【0073】
本発明者は、20.5トンの公称静荷重及び15.9barの公称圧力下で10km/hの定常速度で走行しているタイヤについて行った有限要素数値シミュレーションを利用することにより、クラウン補強材の端部のところの端のところに位置したショルダのところで測定された最も高い温度が、このショルダ領域のクラウンの厚さが2mmだけ減少すると、少なくとも2°減少することを実証した。換言すると、このショルダ領域における熱に関する節約分は、ショルダ領域の厚さを2mmだけ減少させると、少なくとも2℃である。タイヤの重量は、これに対応して、約1.7kg、即ちタイヤの重量の2.25%だけ軽減される。
図1