特許第6143241号(P6143241)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143241
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20170529BHJP
   F03D 3/04 20060101ALI20170529BHJP
   F03D 3/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F03D80/00
   F03D3/04 A
   F03D3/06 G
   F03D3/04 B
   F03D3/06 C
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-514762(P2015-514762)
(86)(22)【出願日】2014年2月10日
(86)【国際出願番号】JP2014053062
(87)【国際公開番号】WO2014178210
(87)【国際公開日】20141106
【審査請求日】2016年1月15日
(31)【優先権主張番号】特願2013-97165(P2013-97165)
(32)【優先日】2013年5月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392000486
【氏名又は名称】株式会社エルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮原 隆和
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−197643(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02966094(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 3/04
F03D 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 垂直軸型風車と、
b) 該垂直軸型風車の周囲を囲むように、該垂直軸型風車の回転軸の回りに設けられた複数の案内翼と、
c) 前記複数の案内翼のそれぞれに設けられた回動駆動機構と、
d) 風向及び風の強さを測定する風向・風力検出手段と、
e) 測定された風向及び風の強さに基づき、前記各回動駆動機構を制御して各案内翼の開度を独立に調整する制御部と
を備えることを特徴とする垂直軸型風力発電装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記風向及び風の強さの他に、前記垂直軸型風車の回転速度も勘案して各案内翼の開度を調節することを特徴とする請求項1に記載の垂直軸型風力発電装置。
【請求項3】
前記制御部は、測定された風の強さが所定値以上の時は、全ての案内翼を閉鎖する制御を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直軸型風力発電装置。
【請求項4】
前記案内翼を閉鎖状態で固定する機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の垂直軸型風力発電装置。
【請求項5】
前記閉鎖状態で固定する機構が、外部からの指令により作動するものであることを特徴とする請求項4に記載の垂直軸型風力発電装置。
【請求項6】
前記閉鎖状態で固定する機構が、手動で解除可能となっている請求項4又は5に記載の垂直軸型風力発電装置。
【請求項7】
任意の案内翼が、手動操作で独立に開閉可能となっている請求項1〜6のいずれかに記載の垂直軸型風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力発電装置に関し、特に、垂直軸型風車を用いた風力発電装置に関する。なお、ここでいう「垂直軸型風車」とは、風向に対して回転軸が垂直となっている状態で回転する風車のことをいい、該回転軸自体は地面に対して垂直(すなわち、鉛直)である場合の他、地面に対して平行に(例えば、壁面から横方向に突出するように)設置される場合もある(もちろん、斜めであってもよい)。
【背景技術】
【0002】
現在、東日本大震災に伴う原子力発電の停止を補い、また地球温暖化を防止する為に、再生可能エネルギーの割合を高める必要があり、その普及を速めるために電力全量買い取り制度が発足し、メガソーラー等の大掛かりな太陽光発電施設の建設が進んでいる。しかし、それ以前の再生可能エネルギーの主役であった風力発電は、音や振動を生じることから、特に大型設備については設置環境を選ぶ必要があり、その普及は減速傾向にある。
【0003】
一方、中型あるいは小型設備については、都市部やビルの屋上など、設置に向いた場所或いは設置を希望される場所は数多くあるが、既存の設備は、十分な発電量を得ようとすると前述したように騒音と振動を伴うため、設置が困難であるという問題がある。
【0004】
このため、騒音や振動が少なく、中小型であって都市部やビルの屋上等に容易に設置でき、更に、台風等で壊れない十分な強度を持つ風力発電装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-197643号公報
【特許文献2】実開昭61-097590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
垂直軸型の風車を用いた風力発電装置は、風向きに無関係に回転するため方位制御機構を必要とせず、また、周速を低く抑えることができ、騒音や振動の発生を防ぎやすいことから、特に小型設備に適している。
しかし、台風や強風の際には回転が高速となりすぎて発電機のコイルが損傷したり、大きな負荷により風車が損傷することもある。
【0007】
そこで、特許文献1では、風車の外周部に複数枚の案内板を設け、これら案内板に風車のブレードに対する風の迎え角の調整およびブレードへの風を閉鎖可能とする開閉調整機構を設けた垂直軸型風車装置を提案している。また、特許文献2には、垂直軸型風車ではなく水平軸型風車に対するものであるが、同様に風車の周囲に多数枚の開閉用板を立設し、各開閉用板の開閉を制御用モータで制御する風力発電装置が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の垂直軸型風車装置では、風車の周囲の案内板(14)を制御する機構としては、その図3に示されるような上下の固定円板(15)の内周面に沿って設けた回動板(22)を用いているため、全ての案内板(14)を一挙に開閉することしかできない([0026])。また、特許文献2に記載の風力発電装置では、水平軸型風車を対象としているため、弱風または通常の風力時には全開閉用板を風向きと平行にしているが、これは垂直軸型風車の場合には必ずしも最適な開閉制御ではない。
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、垂直軸型風車において、風力を最大限に利用することができ、しかも強風による破損の防止、或いは、メンテナンスの容易さ等の様々な目的に適合した制御を行うことのできる風力発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために成された本発明に係る垂直軸型風力発電装置は、
a) 垂直軸型風車と、
b) 該垂直軸型風車の周囲を囲むように、該垂直軸型風車の回転軸の回りに設けられた複数の案内翼と、
c) 前記複数の案内翼のそれぞれに設けられた回動駆動機構と、
d) 風向及び風の強さを測定する風向・風力検出手段と、
e) 測定された風向及び風の強さに基づき、前記各回動駆動機構を制御して各案内翼の開度を独立に調整する制御部と
を備えることを特徴とする。
【0011】
風向・風力検出手段が検出する風の強さは、風速であってもよいし(この場合、風向・風力検出手段は通常の風向・風速計となる。)、風圧であってもよい。上記制御部は、例えば、微風時や通常風速時は、前記垂直軸型風車の特性に従い、その垂直軸型風車が最大速度で回転するように各案内翼の開度を独立に調整する。垂直軸型風車では、多くの場合、風の吹いてくる方向からみて、その回転軸に関して左及び右のうちの一方の側(これを受け側と呼ぶ)の風を大きく受け、他方の側(これを逃げ側と呼ぶ)の風は流すように羽根が設定されている。そこで本発明に係る垂直軸型風力発電装置の制御部は、風向・風力検出手段の測定結果に基づき、微風時や通常風速時は受け側の案内翼を開いてより多くの風を風車に供給するようにし、一方、逃げ側の案内翼を閉鎖して風車の回転に対する抵抗力を低減するように制御する。これにより、風力を最大限に利用することができる。
【0012】
一方、非常に強い風が吹く時は、制御部は全ての案内翼を閉鎖することにより、風車の破損を防止する。
【0013】
その中間の強風時には、各案内翼の開度をそれらの中間程度に調整することにより、風車及び発電装置の損傷を防止しつつ、風力発電を継続する。この際、風車の回転速度を検出し、それに基づいて制御を行うことが望ましい。
【0014】
これにより、通常の垂直軸型風力発電装置では必須である電気的過回転防止機構を不要とし、装置を小型化することができる。
【0015】
複数の案内翼は、垂直型風車の回転軸の回りに軸対称に設けるのが一般的であるが、設置状況等によっては非対称であっても構わない。
また、各案内翼の回転軸の反対側である可動端部に、ネジやラッチ等の、各案内翼を閉鎖した状態で固定する固定機構を設けておいてもよい。この固定機構は本体側にあってもよく、本体側に設けた回動金具等で閉鎖した後の案内翼を固定するようにしてもよい。台風等の猛烈な風が吹く時には、回動駆動機構で全案内翼を閉鎖した上に、各案内翼の可動端部等をネジやラッチで固定することにより、案内翼の開度調整機構の最大耐風強度を大幅に低くすることが可能になり、この結果コストを低減しやすくなる。なお、この固定機構は、案内翼側に設けるものであれ本体側に設けるものであれ、ソレノイド等を用いた電動式とし、所定以上の風速時には自動的に作動するようにしておくことが望ましい。
【0016】
なお、垂直軸型風車の保守(メンテナンス)をする際に、風があると風車が回転するため、固定するなどの措置が必要であるが、案内翼を全閉すれば風車の回転を止めることができるので、強風時においても保守が容易になる。その際には、風下側の任意の案内翼を手動操作して案内翼を開けるようにすると、同開部から内部に出入りしたり、部品等の交換をしたりすることが可能になるので、保守がしやすくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る垂直軸型風力発電装置は、従来の垂直軸型風力発電装置の外周に複数枚の開閉可能な案内翼を設け、それらの開度を風向・風の強さに応じて制御するようにしたため、従来の垂直軸型風力発電装置では発電できなかった微弱風から回転を停止せざるを得なかった強風時まで広範な風速領域において安定した発電を可能にする。
【0018】
例えば、タービンの定格最大風速を風速20 m/秒とすると、同風速に達するまで案内翼は風を最大限取り込むように制御されるが、風速が20 m/秒を超えると、案内翼は風の取り込みを抑えるように開口を減らすように制御され、例えば風が風速40 m/秒に達すると、案内翼は略閉じた状態になり、僅かな風しかタービンには到達しないことになる。この結果、従来のタービンでは台風襲来時に破損しないために回転を止めて風速60 m/秒とか風速70 m/秒に耐える機械的強度を持たす必要があったが、本発明に係るタービンには実質的に風速20 m/秒を超える風は当たらないことになるため、過剰な耐風強度を持たす必要が無いので軽量化し易く、価格も低く抑えやすい。
【0019】
なお、垂直軸型風力発電装置には、ウィンドミル型、サボニウス型、クロスフロー型、ストレートダリウス型等の各種形態やその変形体等数多くの種類があるが、本発明は何れの種類のものにも、制御部におけるアルゴリズムの変更により適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施例である垂直軸型風力発電装置の平面図(a)及び側面図(b)。
図2】前記実施例の垂直軸型風力発電装置において、弱風時に最も効率よく風車が回転するように案内翼の開度を調節した状態を示す模式図。
図3】前記実施例の垂直軸型風力発電装置において、強風時に案内翼を固定した状態を示す平面図(a)及び側面図(b)。
図4】本発明の別の実施例である、円弧状の案内翼を4枚用いた垂直軸型風力発電装置の平面図。
図5】本発明の別の実施例である、平面状の案内翼を4枚用いた垂直軸型風力発電装置の平面図。
図6】前記実施例の垂直軸型風力発電装置において、1枚の案内翼に垂直な方向から弱風が吹いている場合(a)、及び、案内翼に対して斜め方向から弱風が吹いている場合(b)に、それらの風を最大限取り込むように4枚の案内翼の各々の開度を調節した状態の平面図。
図7】本発明の別の実施例である、24枚の内凸型円弧状案内翼を使用する垂直軸型風力発電装置の平面図であって、ストレートダリウス型風車を用いたもの(a)及び抗力型風車を用いたもの(b)の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る垂直軸型風力発電装置の第1の実施例を図1図3を用いて説明する。本実施例は、8枚の回転翼1を持つストレートダリウス型風力発電装置の周囲に6枚の案内翼10を設けた風力発電装置であり、図1は、弱風が図において左から右に向かって吹いている際に効率よくタービン2を回転させるように、それぞれの案内翼10a〜10fを個別に開閉した状態を示す模式図である。なお、平面図(a)においては理解を容易にするために骨格構造体等の作用に直接影響を及ぼさない構造体は省略してある。
【0022】
本実施例では、案内翼10の数を6枚としたので、その支点を兼ねて縦構造体4を6本設けている。6本の縦構造体4はフレーム9に固定され、そのフレーム9の中心部では、中心軸受5によりタービン2の中心軸3を支えている。タービン2の中心軸3の下端には発電機6が設けられており、タービン2が回転することにより、発電が行われる。
【0023】
案内翼10の固定側の端部には案内翼回転ヒンジ17があり、円柱状の縦構造体4の周囲を回転運動できるようになっている。案内翼10の中央部上下にはそれぞれ案内翼駆動軸11が突出しており、案内翼駆動リンク12を経由して、同様にそれぞれ上下に設けられた案内翼駆動体13と回転自在に接続されている。
【0024】
上下1対の案内翼駆動体13はタービン2を挟むようにその上下に設けられおり、両案内翼駆動体13は、タービン2の回転軌跡の外側を上下に立設された案内翼駆動棒15で繋がれている。各案内翼駆動棒15の下端には、ウォームギヤ等の非通電時にブレーキ機能を有するギヤを利用した減速機を持つ案内翼駆動用ギヤモータ18が接続されている。それぞれの案内翼駆動用ギヤモータ18を回転させることにより、6枚の案内翼10a〜10fを独立に回動することができるようになっている。
【0025】
タービン2の下方には風向・風速計7と、制御装置8が設けられている。制御装置8は、風向・風速計7で測定される風向及び風速のデータを基に、所定のプログラムで演算を行い、6枚の案内翼10a〜10fの開度を次のように調整する。
【0026】
図1(a)は西(左)から東(右)に弱い風が吹いている場合を想定した、案内翼10の開閉状態を示すもので、風上側にある案内翼10a、10bを全開状態まで開き、風下側ではあるがタービン2を回転させる上で有効な風を得ることのできる案内翼10cも全開し、それらの案内翼10a〜10cによって導入された風の排出口として案内翼10dを全開に、案内翼10eを半開程度に開き、タービン2の回転を妨げる風の流入する側にあたる案内翼10fは全閉している。
【0027】
この際の風の流れを図2に示すが、案内翼10が無い旧来の垂直軸型風車の場合は左側の点線で示す領域の風がタービン2に当たり、その中の下半分の領域B2を通る風はタービン2の回転を妨げており、上半分の領域B1を通る風しか有効利用できていなかったが、本発明による案内翼10を設けることにより、受風領域が一点鎖線Aの範囲に広がり、更に、案内翼10f、10aがタービン2の回転を妨げる風の流入を防ぐか和らげることができるため、有効な受風面積が3倍近くまで広がることになり、弱風時においても、効率的な発電が可能になる。
【0028】
なお、風力発電機の出力Pは、風速をv、受風面積をA、係数(効率)をnとすると、
P=A×n×v3
と計算されるから、風速が半分になると出力は1/8に低下するが、有効受風面積が3倍になることにより、出力は通常時発電量の3/8に低下するに止まり、弱風時においても相当量の発電が可能になる。
【0029】
図2はあくまでも、風の流れを単純に模式化したものであるため、タービン翼の影響や、その回転の影響などは無視しているが、案内翼10により風が集められ、また、流体中に置かれた障害物により生じるベンチュリー効果などを有効に利用することにより、できるだけ多くのタービン2を回転させる力を持つ風を生み出し、逆に風上に向かって回転するタービン2に吹き付けその回転を阻止しようとする風を防ぐか弱めることが可能である。
【0030】
上記例では、タービン2が風力により回転している状態の説明を行ったが、風が弱く、タービン2が未だ回転するに至らない場合や、逆に、その回転速度(単位時間当たりの回転数)が過大となった場合も考慮して、制御装置8は次のような制御を行うことが望ましい。なお、タービン2の回転速度は、その軸に取り付けた回転センサで測定することもできるし、発電機6の出力により測定することもできる。
1.風速が弱くタービン2が回転していない時は、タービン2を起動するために最適な風の流れができるように各案内翼10a〜10fを開閉する。タービン2の形式に依って、起動時の最適な流れと回転開始後の最適な風の流れは異なるため、各案内翼10a〜10fの具体的な開閉の具合はタービン2の形式に応じて予め設定しておく。
2.タービン2が回転を始めたら、前記のとおり、案内翼10がタービン2より広い面積の風をタービン2に導き、風向や風速に応じて発電量が最も高くなるように、それぞれの案内翼10a〜10fの開度を調整する。
3.風向・風速計7により測定される風速が10 m/秒を超えると、タービン2に当たる風の強さは20 m/秒に近づくので、開いている案内翼10を徐々に閉じ、タービン2の回転速度を所定の最大値以下になるように調整する。
4.風速が所定の限界値を超えると、案内翼10やタービン2、或いは装置全体に被害が及ぶおそれが出てくるので、風の影響を最も受けにくい、突起物の無い状態、すなわち案内翼10a〜10fを全閉した状態にする。
【0031】
上記実施例では6枚の案内翼10を持つ例を示したが、案内翼の数は、円弧状の場合は、原理的に2以上であれば機能を発揮することができる。ただし、周囲360度のあらゆる角度から吹く風に対応するには4枚以上が良い。微弱風時に受風面積を拡張する風レンズ効果を高めるには1枚の案内翼の面積が広い方が良いので、小型風車であれば4枚程度、中型風車では8枚程度が好ましく、4枚以上であれば案内翼は平板でも機能する。
【0032】
図3は、案内翼10を完全に閉鎖した上に、案内翼10の可動端に設けた穴19(図3(b)に示すように複数であることが望ましい。)にボルト20を挿入することにより縦構造体4に案内翼10を固定する例を示す。これにより、台風等の異常な強風時においても、確実に破損を免れることができる。この事例では案内翼10をボルト20で固定する案を示したが、留め金具(ファスナー)を利用することもでき、更に遠隔操作可能なように、モータや電磁石(ソレノイド)等を利用する方法もある。
【0033】
保守作業(メンテナンス)時は、各案内翼駆動用ギヤモータ18を用いて(又は手動で)、タービン2が風で回転しないように風上側の案内翼10を閉鎖し、風下側の案内翼10のみを開くことにより、その開部から内部に出入りしたり部品等を取り外したりすることが可能になる。
【0034】
図4は本発明に係る垂直軸型風力発電装置の他の実施例で、円弧状の案内翼40を4枚利用した例を示す。この図で分かるように、特に小型の垂直軸型風力発電装置の場合は、4枚でも案内翼40の面積は大きくならないので製造が容易になるなどメリットが大きい。
図5は同様に4枚の案内翼を用いる垂直軸型風力発電装置の実施例であるが、円弧状ではなく直線状の案内翼50を使うものである。
【0035】
図6は、図5の垂直軸型風力発電装置において、案内翼50をアクティブに動かして風をタービン2に導く例を示すもので、図6(a)は西(左)から風が吹いた場合の案内翼50の状態を、図6(b)は北西(左下)の風が吹いた場合の案内翼50の状態を示す平面図である。これらの図のように、タービン2の回転にプラスになる側の風を最大限取り入れ、回転を妨げる側の風を遮ることにより、垂直軸型風力発電装置の効率を飛躍的に高めることができ、また、先の事例に示したように、風が必要以上に強くなった場合は、案内翼50の開度を狭める機構と組み合わせることにより、風速の広い範囲において効率の高い垂直軸型風力発電装置を提供できることになる。
【0036】
なお、図6の説明は、平面状の案内翼を4枚用いた例を示すが、円弧状の案内翼(図4の例)でも同様な効果を期待でき、更に、案内翼の数も4枚に限定されることはない。
【0037】
上記各実施例の案内翼は、案内翼端部に支点を設けた例を示したが、支点の位置は案内翼端部である必要はなく、作用中心軸に設けることにより、回転に必要なトルクを最小限にすることができる。
【0038】
受風面積の拡大効果を期待しない場合は、案内翼の数を更に多くして、風の流れを回転翼が回転しやすい旋回流に変えたり、強風時に開口面積を狭めることによりタービン2の回転数を制御する目的に使用することもできる。図7(a)及び(b)は共に、案内翼70の枚数を24枚として、それぞれの案内翼70を小さくして内凸型としたものである。これにより、風の流れのより精密な制御が可能となり、タービン2により効率的に風を送ることができるようになる。
【符号の説明】
【0039】
1…回転翼
2…タービン
3…タービンの中心軸
4…縦構造体
5…タービンの中心軸受
6…発電機
7…風向・風速計
8…制御装置
9…フレーム
10、10a〜10f、40、50、70…案内翼
11…案内翼駆動軸
12…案内翼駆動リンク
13…案内翼駆動体
15…案内翼駆動棒
17…案内翼回転ヒンジ
18…案内翼駆動用ギヤモータ
19…穴
20…ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7