特許第6143246号(P6143246)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143246冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143246
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   A01K67/033 502
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-557178(P2016-557178)
(86)(22)【出願日】2014年12月2日
(65)【公表番号】特表2017-504353(P2017-504353A)
(43)【公表日】2017年2月9日
(86)【国際出願番号】CN2014092751
(87)【国際公開番号】WO2016026237
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2016年6月7日
(31)【優先権主張番号】201410413333.7
(32)【優先日】2014年8月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516168849
【氏名又は名称】広東省生物資源応用研究所
【氏名又は名称原語表記】GUANGDONG INSTITUTE OF APPLIED BIOLOGICAL RESOURCES
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100109449
【弁理士】
【氏名又は名称】毛受 隆典
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】曹 莉
(72)【発明者】
【氏名】韓 日畴
【審査官】 門 良成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−272267(JP,A)
【文献】 特開平8−51891(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3012117(JP,U)
【文献】 特開2003−79271(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第102835358(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 67/033
A01K 67/04
A61K 36/068
C12N 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法であって、
(a)卵期管理:コウモリガ科蛾の成虫に産まれた卵を取り、細菌を消滅かつ真菌をコントロールするように、体表消毒を行って、その後に、消毒した卵を無菌の腐植土に入れることと、
(b)幼虫期管理:ニンジンをコウモリガ科蛾幼虫の餌材料とし、摂食したニンジンがコウモリガ科蛾幼虫に対して無害であることを確保するように、ニンジンに対する消毒および給餌検出を行って、雄と雌の蛹を得ることと、
(c)蛹期管理:コウモリガ科蛾の雌蛹と雄蛹を鑑別し、雄蛹の成長を遅らせ、雌蛹の成長と同期させるために、雌蛹と雄蛹を異なる培養温度において培養し、雄蛹の培養温度は、雌蛹のより低く、温度差は2−6℃であり、同期羽化した雌と雄の成虫を得ることと、
(d)成虫期管理:羽化した雌の雄の成虫を、成虫の交配と停留のために模擬植物が設置された成虫籠に入れて、湿度80%以上に保持し、成虫の活動と交配を促進するために50−100Luxの微光を与え、成虫が交配し卵を産まれたら、卵を収集することと、
を含む、
ことを特徴とする冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)中の体表消毒として、卵を滅菌水で数回洗浄した後、消毒液で3〜6分間消毒して、次いで、再び滅菌水で数回洗浄し、
前記消毒液は、1000mlの滅菌水に150ml、4molのNaOH溶液と、50mlの次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素含有量≧7.5%)を添加してなるものであり、
前記腐植土の含水量は、35−45%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の冬虫夏草の宿主昆虫のコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法。
【請求項3】
前記ステップ(b)に記載のニンジンに対する消毒および給餌検出として、滅菌水洗浄、および体積濃度75%のエタノール溶液で洗浄したニンジンをカットしサンプリングし、コウモリガ科蛾の幼虫に少なくとも2日間給餌し、ニンジンが幼虫に致死作用を有するかどうかを確認し、残ったニンジンを低温で保存し、
サンプリングしたニンジンが、幼虫に対して有害をもたらしていなければ、低温保存のニンジンを幼虫に給餌することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載の冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法。
【請求項4】
前記模擬植物は、植物状プラスチック製品である、
ことを特徴とする請求項1に記載の冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昆虫の飼育分野に関し、特に、冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
冬虫夏草(Ophiocordyceps sinensis、別称:Cordyceps sinensis)は、我が国のもっとも特別な生物資源であり、子嚢菌門(Ascomycota)、フンタマカビ綱(Sordariomycetes)、ニクザキン目(Hypocreales)、オフィオコルディセプス科(Ophiocordycipitaceae)、オフィオコルディセプス属(Ophiocordyceps)に属し、中国では、主にチベット、青海、雲南、四川、甘粛等海抜3000メートル以上の雪山である高寒山区に生息している。本物の薬用冬虫夏草は、中国のトウチュウカソウ(Ophiocordyceps sinensis)真菌によってホスト昆虫であるコウモリガ科を真菌感染し菌核化させ、適切な条件下において、真菌感染した菌核化した幼虫を成長させ、虫(菌核化した宿主昆虫)草(真菌の子実体)の複合形態を形成したものである。
【0003】
冬虫夏草は、我が国において、薬膳同源の珍重的な食材であり、健肺、健腎、強精強壮効果、各種脱力感を回復する効果などたくさんの効果がある。現代医学では、冬虫夏草は天然免疫調節剤と視され、人体健康を守る“天然の調合物”である。冬虫夏草によって、多種の抗菌、抗ウイルス、抗腫瘍、抗放射線、免疫調節機能を有する生理活性物質を生み出すことができ、医薬、食品、および現代生物技術などの面で広く応用され、特に、我が国の伝統的な栄養剤市場において重要な地位をしめていって、国民に推薦と信頼されつつ、そして、日本、韓国、東南アジア、および米国など国際市場においてくよく販売されている。
【0004】
資源の枯渇、需要の伸び、および政策保護の原因で、市場価格が高騰してきている。野生の冬虫夏草は、すでに国家二級保護物種と指定された。チベット高原の生態環境や、虫草資源を保護するとともに、冬虫夏草を人類の健康によりよく貢献するための、唯一の選択として、人工培養がある。
【0005】
冬虫夏草の真菌の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾(鱗翅目コウモリガ科蛾科Hepialidae)の人工繁殖は、冬虫夏草の人工培養の重要な一環である。報道によれば、コウモリガ科蛾の昆虫は60種以上あり、分布于雲南、チベット、四川、青海および甘粛に見られている。コウモリガ科蛾は、完全変態の昆虫であり、生命期間は、卵、幼虫、蛹および成虫段階を含む。最も適切な成長土壌は、高山草原土壌や高山低木土壌である。地域によってコウモリガ科蛾の生活史が異なるが、全体的に規則性がある。毎年6−8月において、蛹が成虫に羽化し、そして、雌と雄虫が交配した後、雌虫がその近くの草原や、低木の植物に卵を散々に産んで、通常、1頭の雌蛾が200−800粒の卵を産む。コウモリガ科蛾の幼虫は、自然土壤においてトンネルを掘って暮らし、雑食性であり、主に植物の若い根を食料とする。幼虫期が長くて、通常900−1300日、7−9齢の成長発育を経ってから蛹化し、また、明らかに世代交代の現象がある。毎年10月から来年の4月までの凍土期に、コウモリガ科蛾の幼虫が土壤中において休眠状態となる。毎年5月下旬に、コウモリガ科蛾の幼虫は蛹になり、蛹期で1−3ヶ月を経ってから成虫に羽化する。自然環境中に、コウモリガ科蛾の昆虫が、全世代周期を終えるために、地理的分布、食料、植生、土壌構造、温度、湿度、および天敵など多種の生態学要因に総合的に影響される。
【0006】
コウモリガ科蛾の昆虫の人工培養過程中において、餌材料の品質、病原体の汚染、幼虫の低生存率、雌と雄蛹の成長期不同一、成虫の低交配機会は、重要な制限要素となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法は、下記のステップを含むことを特徴とする:
【0009】
(a)卵期管理:コウモリガ科蛾の成虫から産まれた卵を取り、細菌を消滅かつ真菌をコントロールするように、体表消毒を行って、その後に、消毒した卵を無菌の腐植土に入れること。
【0010】
卵期管理において、最も重要なステップは、成虫から産まれた卵について、体表消毒することである。適切な消毒液によって、卵表面の有害微生物を取り除き、孵化した幼虫の生存率を向上させることができる。好ましい方法として、卵を滅菌水で数回洗浄した後、消毒剤で3〜6分間消毒して、次いで、再び滅菌水で数回洗浄する。前記消毒液は、1000mlの滅菌水に150ml、4molのNaOH溶液と、50mlの次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素含有量≧7.5%)を添加してなる。本滅菌方法によれば、細菌を消滅させるとともに、真菌をコントロールすることもできる。
【0011】
本発明において用いられる昆虫培地は、市販の腐植土である。腐植土は、重金属汚染を有さず、優れた保湿効果を持つだけではなく、また空腹の幼虫の餌材料にもなる。腐植土の含水量は、通常40%であり、本発明に用いられる腐植土の含水量は、35−45%であることが好ましい。腐植土を培養容器中(ペットボトル、ガラスびんなど)に入れて、高圧消毒(121℃、30−60分間)を行ったらコウモリガ科蛾昆虫の培養に用いることができる。消毒液で消毒した卵を上記腐植土中に入れる。培養容器の体積に応じて、異なる量の腐植土と昆虫卵を入れ、通常、腐植土1グラムあたり、1個の卵を入れる。
【0012】
(b)幼虫期管理:ニンジンをコウモリガ科蛾幼虫の餌材料とし、摂食したニンジンがコウモリガ科蛾幼虫に対して無害であることを確保するように、ニンジンについて消毒および給餌検出を行って、雄と雌の蛹を得ること。
【0013】
ニンジンにおいて、幼虫に有害物は、主に生産過程の残留農薬や、また生産および運送過程中にもたらされた病原微生物、例えば白きょう病菌(Beauveria bassiana)、メタリジウム菌( Metarhizium anisopliae)、ペニシリウム・エクスパンサム(Penicillium expansum)、コナサナギタケ(Isaria farinosa)、シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.)などに起因する。農薬残留や、病原微生物の検出に、好ましい方法として、滅菌水洗浄、および体積濃度75%のエタノール溶液で消毒したニンジンをカットし、各本(またはパッチ)についてサンプリングしコウモリガ科蛾の幼虫に少なくとも2日間給餌して、ニンジンが幼虫に致死作用を有するかどうかを確認し、残ったニンジンを低温で保存する。サンプリングしたニンジンが、幼虫に対して有害をもたらしていなければ、低温保存のニンジンを幼虫に給餌することができる。75%のエタノール溶液によりニンジンを体表消毒することで、ある程度病原体、特に、細菌の数を減少させることができる。給餌検出方法を用いることで、有害ニンジンによるコウモリガ科蛾幼虫の被害を避けられ、幼虫の生存率を向上させることができる。
【0014】
(c)蛹期管理:コウモリガ科蛾の雌蛹と雄蛹を鑑別し、雄蛹の成長を遅らせ、雌蛹の成長と同期させるために、雌蛹と雄蛹を異なる培養温度において培養し、雄蛹の培養温度は、雌蛹においてより低く、温度差は2−6℃であり、同期羽化した雌と雄の成虫を得ること。
【0015】
雄と雌の蛹の同期羽化を確保するために、蛹期管理は最も重要である。同期羽化する雄と雌の虫が、成功的に交配する前提条件である。同期に蛹期に入る雄蛹と雌蛹は、羽化が異なり、通常、雄蛹の羽化時期は、雌蛹のより早い。本発明の方法によれば、コウモリガ科蛾の雌蛹と雄蛹を正しく鑑別する上、雌蛹と雄蛹を異なる培養温度で培養し、すなわち、雄蛹の培養温度は雌蛹のより低くして、雄蛹の成長を遅らせ、雌蛹の成長と同期させる。コウモリガ科蛾の種類によって雄と雌の蛹の培養温度差が異なり、通常2−6℃である。
【0016】
(d)成虫期管理:羽化した雌と雄の成虫を、成虫の交配と停留のために模倣植物が設置された成虫籠に入れて、湿度80%以上に保持し、成虫の活動と交配を促進するために50−100Luxの微光を与え、成虫が交配し卵を産まれたら、卵を収集すること。
【0017】
成虫期管理の最も重要なことは、雌と雄の虫の交配を促進し、雌虫を順調に産卵させることである。本発明において用いられる手段は、植物状のプラスチック製品を利用するとともに、微光(50−100Lux)を与えて、成虫の活動と交配を促進する。
【0018】
本発明によって提供された冬虫夏草の宿主昆虫であるコウモリガ科蛾の人工低海抜培養方法は、従来のコウモリガ科蛾低海抜人工培養過程にある汚染、幼虫の低生存率、雌と雄の蛹の成長時期不同一、成虫の低交配機会などの問題を有効に克服でき、冬虫夏草の規模化生産に有効な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1(a)は、雄蛹の腹節末端の特徴を表す図であり、図1(b)は、雌蛹の腹節末端の特徴を表す図であり、図1(c)は、雌と雄蛹の個体のサイズ比較図である。
図2】雌と雄蛹の模式説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
具体的な実施態様:
下記実施例は、本発明に対する説明であり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0021】
実施例1:
本発明に用いられたコウモリガ科蛾は、雲南剣川に生まれた无釣蝠蛾(Thitarodes jianchuanensis)、四川貢嗄に生まれた蝠蛾(Thitarodes gongganisis)、チベットおよび青海に生まれた虫草釣蝠蛾(Thitarodes armoricanus)である。
【0022】
(1)卵期管理
【0023】
50mlのガラス瓶に、10gの含水率約35−45%である市販の腐植土(特利夫会社製の育種用基質、白い炭素泥705;matrix for sowing, white peat 705,Tref company)を入れて、高圧消毒(121℃、60分間)を行ってから、9−16℃下で冷却した。
【0024】
低温(9−16℃)下に、コウモリガ科蛾の成虫が室内で産んだ卵を、無菌プラスチック遠心分離管(50ml)に収集して、各管には、約2万粒の卵を有する。そして、卵を無菌の100メッシュのガーゼ中にいれて、滅菌水でソフトに卵を少なくとも3回すすぎ、そして、卵が入っているガーゼを200mlの消毒液において3−6分間(コウモリガ科蛾の種類によって異なる)消毒して、次にガーゼを消毒液から取り出して滅菌水で卵をさらに少なくとも3回すすいだ。消毒卵を、瓶ごとに10粒の量で腐植土を充填した培養瓶に入れて、培養容器の体積に応じて、異なる量の腐植土と昆虫卵を入れ、通常、腐植土1グラム(含水量:35−45%)あたり、1個の卵を入れる。9−16℃下において卵の孵化を観測した。35−40日後に、卵が孵化して、幼虫が腐植土の表面、またはその中で活動した。前記消毒液は、15ml、4MのNaOH溶液と5mlの次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素含有量≧7.5%)を100mlの滅菌水に添加し均一に混合してなるものである。
【0025】
サンプリング(約30粒の卵)して、LB(トリプトン10g、酵母粉5g、NaClの5g、寒天18g、pH=7.2、1000mLとなるように水を添加し)とPPDA(グルコース20g、ポテト200g、ペプトン10g、KHPO 3g、MgSO・7HO 1.5g、VB 0.02g、寒天15g、HO 1000mL、自然のpH)の培地に置いて、15℃と25℃でそれぞれ25日培養したら、消毒効果を検査した。それと同時に、虫卵を滅菌した9cm培養皿中(虫卵に応じて、滅菌水を添加したろ紙で保湿)において16℃で孵化させ、30−45日経ったら孵化率を計算した。結果によれば、本発明に用いられた消毒液が卵の体表の微生物を有効に消滅することができ、LBとPPDAの培地上、15℃と25℃でそれぞれ45日培養したら、何れも微生物の成長が見られなかった。また、卵の体表消毒は、卵の孵化率に影響せず、消毒した卵と未消毒の卵の孵化率に有意な差はなかった。
【0026】
(2)幼虫期管理
【0027】
コウモリガ科蛾が幼虫期に入ったら、幼虫の餌材料として、腐植土上新鮮なニンジンを添加した。通常、四週に一回餌を添加する。幼虫の齢期と成長状況に応じて、各培養瓶に毎回約1−10gの新鮮ニンジンを添加した。
【0028】
給餌過程において、幼虫によくニンジンが持っている病原体が感染し、または残留の化学農薬によって中毒となる。よって、用いられているニンジンが、農薬の残留が無く、かつ幼虫に有害な病原微生物も持っていないことが必要である。
【0029】
ニンジンの品質を確保するために、本発明において、使用するニンジンを滅菌水で洗浄して、体積濃度75%のエタノール溶液で消毒した以外に、最も重要な方法として、上記滅菌水で洗浄、および体積濃度75%のエタノール溶液で消毒したニンジンをカットし、各本(またはパッチ)についてサンプリングし、コウモリガ科蛾の幼虫に少なくとも2日間給餌して、ニンジンが幼虫に致死作用を有するかどうかを確認し、残ったニンジンを4℃の冷蔵庫に保存した。サンプリングしたニンジンが、幼虫に対して有害をもたらしていなければ、4℃の冷蔵庫に保存したニンジンを幼虫に給餌することができる。検測していないニンジンを使用することと比較して、当工程によって、ニンジンの品質を有効に検測し、農薬残留および有害微生物による幼虫の死亡率を顕著に下げることができ、幼虫の生存率を30%向上させることができる。
【0030】
(3)蛹期管理
【0031】
幼虫は9−13℃下において、雲南蝠蛾では136−263日、四川では256−545日、青海蝠蛾では214−660日を経て、7−9齢後に蛹期に入る。雄蛹は、通常小さく、雌蛹のサイズにはバラつきがある。雌と雄蛹を区別する特徴として、蛹の腹節末端の割れや突起がある。肉眼で蛹の腹節末端を見れば、腹節末端の中心線の両側に二条の暗色の弧線があることが確認でき、図1(a)、図1(b)、および図1(c)に示すように、雄蛹では、肛門と弧線の間に2つの目立つ黒い斑点を持っていて、雌蛹では、弧線の間に垂直の割れ線がある。その中で、図1(a)は、雄蛹の腹節末端の特徴であり、図1(b)は、雌蛹の腹節末端の特徴であり、図1(c)は、雌と雄蛹の個体のサイズ比較図であり、手で作成した模式説明図は、図2に示す。
【0032】
雄蛹の羽化時期は、通常、雌蛹より早い。雌と雄蛹を同期に羽化させ、雌と雄虫を成功的に交配させるために、蛹化したばかりの雄蛹を10℃、雌蛹を13℃の環境中に培養する。雌と雄蛹は、基本的に同期に羽化した。9−13℃において、雲南蝠蛾の蛹期は通常34−42日、四川蝠蛾は通常35−45日、青海蝠蛾は通常38−50日である。
【0033】
(4)成虫期管理
【0034】
成虫籠の準備:市販の子ども用蚊屋(体積=104cm×50cm×50cm)を洗浄し乾燥させ、産まれた虫卵を収集しやすくために、成虫籠の底部に滅菌綿布を置いた。
【0035】
9−13℃下で、蛹が成虫に羽化したら、まず、雌と雄の虫を鑑定して、そして、雌対雄の比1:1となるように、成虫籠に入れて、各成虫籠に100−200頭を入れた。成虫籠の中に、成虫の交配と停留のために、紫外線を一晩かけて照射されたプラスチックの花を設置した。必要に応じて、加湿器で湿度を80%以上に保持した。また、成虫の飛び、翼展開、および交配を促進するために、15wのライト(光強度50−100Lux)を与えた。成虫の交配機会の向上に起因させることが可能で、雌虫の卵の受精機会も増やされ、よって、卵の孵化率も従来に比べて、30〜50%向上した。
【0036】
成虫の交配後に、雌虫が産卵し始めた。卵をライムに収集して(最初は、クリーム色であったが、3−5時間後に黒色に変わった)。卵を収集する時間として、最も良いのは、生まれてから8−10時間後である。収集した卵を、適切な湿度の滅菌ろ紙を含有する培養皿(直径=9cm)に入れた。異なる種類のコウモリガ科蛾の雌虫の産卵量は異なり、通常、1個の雌虫は200−800粒の卵を産卵する。
図1
図2