特許第6143247号(P6143247)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6143247
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】自転車トレーナーの傾斜調整装置
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/16 20060101AFI20170529BHJP
   A63B 22/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A63B69/16
   A63B22/06 G
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-15215(P2017-15215)
(22)【出願日】2017年1月31日
【審査請求日】2017年1月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】314013327
【氏名又は名称】株式会社グロータック
(74)【代理人】
【識別番号】100155158
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 仁
(72)【発明者】
【氏名】木村 将行
【審査官】 藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−172775(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/83341(WO,A1)
【文献】 特表2009−514739(JP,A)
【文献】 特開2007−330732(JP,A)
【文献】 特開平9−249174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 22/06
A63B 69/16
B62H 1/10
B62H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車のフロントフォーク若しくは前輪又はリアフォーク若しくは後輪を支持する支軸を備える自転車トレーナーに適用される傾斜調整装置であって、
前記支軸を径方向に固定する第1弾性体と、
前記支軸を径方向に固定する第2弾性体と、
前記第1弾性体と前記第2弾性体との前記支軸の軸方向の間隔を調整する調整手段とを備えることを特徴とする自転車トレーナーの傾斜調整装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記調整手段は、
前記第1弾性体から離隔する離隔方向に前記第2弾性体を付勢する付勢手段と、
軸方向に沿って前記支軸に形成されたねじ溝に螺合し、前記第2弾性体の前記第1弾性体とは反対の側に設けられたねじ部とを有することを特徴とする自転車トレーナーの傾斜調整装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記調整手段は、
前記第1弾性体を前記支軸の軸上にスライドするスライダーを有することを特徴とする自転車トレーナーの傾斜調整装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記支軸は、前記自転車のフロントフォーク若しくは前輪又はリアフォーク若しくは後輪を前記支軸の軸方向に支持することを特徴とする自転車トレーナーの傾斜調整装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記支軸は、前記自転車のフロントフォーク若しくは前輪又はリアフォーク若しくは後輪を前記支軸の径方向に支持することを特徴とする自転車トレーナーの傾斜調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車トレーナーにおける自転車の傾斜を調整する装置に係り、特に、実走に近い運転感覚を実現するのに好適な自転車トレーナーの傾斜調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の自転車トレーナーとしては、例えば、特許文献1記載の技術が知られている。
特許文献1記載の自転車トレーナーは、床に載置される本体部と、一端が本体部に遊挿され、他端が自転車のフォークエンド部を支持するフォークエンド支持手段に固着された支軸と、支軸の長手方向中央から他端側の少なくとも一部を囲んで配置された弾性部とを備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−172775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載の自転車トレーナーは、支軸がフォークエンド部から与えられる力によって弾性変形することで自転車が前後移動し左右傾斜するものであるが、理想的には、使用者がペダルを踏み込んだときは、使用者の体重や伸長にかかわらず実走と同程度の傾斜角度が得られることである。しかしながら、特許文献1記載の自転車トレーナーにあっては、弾性体の弾性力が一定であることから、使用者の体重等によって弾性体にかかる荷重が異なり、この結果、同じ運転状態でも使用者の体重等によって傾斜角度が異なってしまう。したがって、実走に近い運転感覚が得にくいという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、実走に近い運転感覚を実現するのに好適な自転車トレーナーの傾斜調整装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔発明1〕 上記目的を達成するために、発明1の自転車トレーナーの傾斜調整装置は、自転車のフロントフォーク若しくは前輪又はリアフォーク若しくは後輪を支持する支軸を備える自転車トレーナーに適用される傾斜調整装置であって、前記支軸を径方向に固定する第1弾性体と、前記支軸を径方向に固定する第2弾性体と、前記第1弾性体と前記第2弾性体との前記支軸の軸方向の間隔を調整する調整手段とを備える。
【0007】
このような構成であれば、第1弾性体と第2弾性体の間隔が小さくなると、支軸が荷重方向に変動する度合いが大きくなり、自転車が傾斜しやすくなるので、使用者の体重等が小さい場合は、調整手段により第1弾性体と第2弾性体の間隔を小さくすればよい。
【0008】
これに対し、第1弾性体と第2弾性体の間隔が大きくなると、支軸が荷重方向に変動する度合いが小さくなり、自転車が傾斜しにくくなるので、使用者の体重等が大きい場合は、調整手段により第1弾性体と第2弾性体の間隔を大きくすればよい。
【0009】
〔発明2〕 さらに、発明2の自転車トレーナーの傾斜調整装置は、発明1の自転車トレーナーの傾斜調整装置において、前記調整手段は、前記第1弾性体から離隔する離隔方向に前記第2弾性体を付勢する付勢手段と、軸方向に沿って前記支軸に形成されたねじ溝に螺合し、前記第2弾性体の前記第1弾性体とは反対の側に設けられたねじ部とを有する。
【0010】
このような構成であれば、ねじ部を正方向に回動すると、第2弾性体がねじ部により第1弾性体に接近する接近方向に押動されるので、第1弾性体と第2弾性体の間隔が小さくなる。これに対し、ねじ部を逆方向に回動すると、付勢手段により付勢された第2弾性体がねじ部とともに離隔方向に移動するので、第1弾性体と第2弾性体の間隔が大きくなる。
【0011】
〔発明3〕 さらに、発明3の自転車トレーナーの傾斜調整装置は、発明1の自転車トレーナーの傾斜調整装置において、前記調整手段は、前記第1弾性体を前記支軸の軸上にスライドするスライダーを有する。
【0012】
このような構成であれば、スライダーを接近方向にスライドすると、第1弾性体と第2弾性体の間隔が小さくなる。これに対し、スライダーを離隔方向にスライドすると、第1弾性体と第2弾性体の間隔が大きくなる。
【0013】
〔発明4〕 さらに、発明4の自転車トレーナーの傾斜調整装置は、発明1乃至3のいずれか1の自転車トレーナーの傾斜調整装置において、前記支軸は、前記自転車のフロントフォーク若しくは前輪又はリアフォーク若しくは後輪を前記支軸の軸方向に支持する。
【0014】
〔発明5〕 さらに、発明5の自転車トレーナーの傾斜調整装置は、発明1乃至3のいずれか1の自転車トレーナーの傾斜調整装置において、前記支軸は、前記自転車のフロントフォーク若しくは前輪又はリアフォーク若しくは後輪を前記支軸の径方向に支持する。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、発明1の自転車トレーナーの傾斜調整装置によれば、使用者がペダルを踏み込んだときに実走と同程度の傾斜角度となるように使用者の体重等に応じて調整手段を調整すれば実走に近い運転感覚を実現することができる。また、調整のために弾性体を交換する必要がなく調整手段を調整すればよいので調整が容易である。さらに、特許文献1記載の自転車トレーナーのように支軸の一端を本体部に固定する必要がなくなるので、支軸の設置位置や設置方向に制約が少なくなり、また小型化することもできる。
【0016】
さらに、発明2の自転車トレーナーの傾斜調整装置によれば、調整手段が付勢手段とねじ部で構成されるので構造を簡素化することができる。
【0017】
さらに、発明3の自転車トレーナーの傾斜調整装置によれば、調整手段がスライダーで構成されるので構造を簡素化することができる。
【0018】
さらに、発明4の自転車トレーナーの傾斜調整装置によれば、支軸を縦方向に設置する縦型設置の構造を採用することができる。
【0019】
さらに、発明5の自転車トレーナーの傾斜調整装置によれば、支軸を横方向に設置する横型設置の構造を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】自転車トレーナー100の斜視図である。
図2】自転車トレーナー100の上面図である。
図3図2のA−A線からみた自転車トレーナー100の正面図である。
図4図2のB−B線に沿ったフロントフォーク取付部16及びモーションコントローラ18の断面図である。
図5】使用者の運転状態に応じた自転車90の挙動を示す図である。
図6】自転車トレーナー100の斜視図である。
図7】モーションコントローラ18aの断面図である。
図8】モーションコントローラ18の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔第1の実施の形態〕
以下、本発明の第1の実施の形態を説明する。図1乃至図5は、第1の実施の形態を示す図である。
【0022】
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図1は、自転車トレーナー100の斜視図である。
【0023】
図2は、自転車トレーナー100の上面図である。
図3は、図2のA−A線からみた自転車トレーナー100の正面図である。
【0024】
自転車トレーナー100は、図1乃至図3に示すように、自転車90のフロントフォーク92を支持する三脚型フロントフォーク支持部10と、自転車90の後輪94を支持する後輪支持部20と、三脚型フロントフォーク支持部10及び後輪支持部20を連結する連結フレーム30とを有して構成されている。
【0025】
三脚型フロントフォーク支持部10は、台座12と、台座12の外周下部に等角度で開脚した3つの脚14a、14b、14cと、脚14a、14bを開脚状態で固定するヒンジ式のリンク15とを有して構成されている。
【0026】
台座12は、フロントフォーク92を支持するフロントフォーク取付部16と、フロントフォーク92の荷重の変化に応じてフロントフォーク92の傾斜を制御するモーションコントローラ18とを有して構成されている。
【0027】
後輪支持部20は、後輪94を支持する一対の後輪ローラー22、24と、後輪ローラー22、24を設置する後輪フレーム26と、後輪ローラー22に慣性力を付与するフライホイール28とを有して構成されている。
【0028】
フライホイール28は、2個の永久磁石を磁気回路で結合させて負荷を発生させ、これを後輪ローラー22に付与する。負荷は、例えば、若干向かい風の平地を30[km/h]で走行した状態を想定し設定されている。負荷は、フライホイール28の回転速度に応じて変化する。フライホイール28の回転速度が遅い場合は、登り坂のように自転車90のペダル96を止めるとすぐに後輪94も止まり、ペダル96に360度力を入力し続けることが要求される。これに対し、フライホイール28の回転速度が速くなる程に後輪94は進行方向に回り続ける特性が強くなる。
【0029】
次に、フロントフォーク取付部16及びモーションコントローラ18の構成を説明する。
【0030】
図4は、図2のB−B線に沿ったフロントフォーク取付部16及びモーションコントローラ18の断面図である。
【0031】
フロントフォーク取付部16は、図4に示すように、フロントフォーク92のフロントエンドが両端に取り付けられる水平支軸40と、水平支軸40を水平方向に内嵌し固定する本体42と、本体42の下部に取り付けられた垂直支軸44とを有して構成されている。
【0032】
本体42の下部中央には、上下方向に伸長する孔42aが形成されている。垂直支軸44の上端は孔42aに嵌合されている。垂直支軸44の下部には、垂直支軸44の軸方向に沿ってねじ溝44aが形成されている。
【0033】
モーションコントローラ18は、弾性体60、62と、弾性体60を収容する弾性体収容部64と、弾性体62を収容する弾性体収容部66とを有して構成されている。
【0034】
弾性体60、62は、例えば、ゴム状の弾力性を有する工業用材料であるエラストマー(elastomer)からなり、円盤状に形成されている。弾性体60、62の中心部には、垂直支軸44を垂直方向に貫通するための貫通孔60a、62aがそれぞれ形成されている。貫通孔60a、62aの径は、垂直支軸44の径とほぼ同一又はこれよりもやや小径に設定されているので、弾性体60、62は垂直支軸44に密着して取り付けられている。
【0035】
弾性体収容部64は、上面が開口し弾性体60を収容するための断面コの字状の収容領域が形成されている。弾性体収容部64の内径は、弾性体60の外径とほぼ同一又はこれよりもやや小径に設定されているので、弾性体60は弾性体収容部64内に密着して収容されている。弾性体60の上面にはフロントフォーク取付部16の本体42の下面が当接し、弾性体60の移動を規制してる。また、弾性体収容部64の下部中央には、垂直支軸44を垂直方向に貫通するための貫通孔64aが形成されている。貫通孔64aの径は、所定のクリアランスを設けて垂直支軸44の径よりも大径に設定されている。このクリアランスは、垂直支軸44が前後方向及び左右方向に揺れる範囲を規定するものであり、垂直支軸44の揺れる範囲は貫通孔64aの内部に制限される。
【0036】
弾性体収容部64の側面には、脚14a、14b、14cの上端が回動可能にそれぞれ取り付けられている。
【0037】
弾性体収容部66は、弾性体収容部64の下部に取り付けられ、上面及び下面が開口し弾性体62を収容するための筒状の収容領域が形成されている。弾性体収容部66の内径は、弾性体62の外径とほぼ同一又はこれよりもやや小径に設定されているので、弾性体62は弾性体収容部66内に密着して収容されている。
【0038】
弾性体収容部66内には、一端が弾性体収容部64の下面に当接し、他端が弾性体62の上面に当接するようにコイルスプリング66aが設けられている。コイルスプリング66aは、弾性体60から離隔する方向(以下「離隔方向」という。)に弾性体62を付勢する。
【0039】
弾性体62の下部には、ねじ部68が設けられている。ねじ部68の中心部には、垂直支軸44を垂直方向に貫通するための貫通孔68aが形成されている。貫通孔68aの内周面には、垂直支軸44のねじ溝44aに対応するねじ溝が形成されている。そして、ねじ部68は、垂直支軸44のねじ溝44aに螺合し、弾性体60に接近する方向(以下「接近方向」という。)に弾性体62を押動する。
【0040】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
自転車トレーナー100は、前輪が外された自転車90を装着し、ペダル96を回動することによってトレーニングを行うものである。自転車トレーナー100を設置する場合は、脚14a、14b、14cを開脚してリンク15で固定し、脚14a、14b、14cの下端、連結フレーム30及び後輪フレーム26を床面に接地させることにより、例えば屋内の床面に安定して設置される。
【0041】
自転車トレーナー100に自転車90を装着する場合は、まず、自転車90の前輪を車軸(ハブ)ごとフロントフォーク92から取り外し、フロントフォーク92のフロントエンドをフロントフォーク取付部16の水平支軸40に取り付ける。次に、後輪ローラー22、24の上に後輪94を設置する。
【0042】
使用者が自転車90に乗ってペダル96を踏み込むと、後輪94が回転し、後輪ローラー22、24が後輪94から摩擦力を受けて回転する。また、後輪ローラー22には、フライホイール28によって後輪94の回転速度に応じた負荷が与えられる。これにより、実際に自転車90に乗って運転しているかのような負荷がペダル96に対して与えられる。
【0043】
使用者がペダル96を踏み込むと、後輪94が後輪ローラー22、24から摩擦力を受けるのでフロントフォーク92には前方に向かう力が発生する。この力は垂直支軸44を前方に押し曲げる力となるが、垂直支軸44が、弾性体収容部64、66内に固定された弾性体60、62に囲まれているので、垂直支軸44を曲げる力は制限される。この制限された力によって垂直支軸44は一定程度撓んで自転車90は適度に前傾する。
【0044】
また、使用者が左のペダル96を踏み込むときは、左のペダル96に体重を載せるために体を右に傾けることから、垂直支軸44は同様に右方向の力で一定程度撓んで自転車90は適度に右に傾く。逆に、使用者が右のペダル96を踏み込むときは、右のペダル96に体重を載せるために体を左に傾けることから、垂直支軸44は同様に左方向の力で一定程度撓んで自転車90は適度に左に傾く。
【0045】
このように、自転車トレーナー100では、使用者が自転車90を前後左右へ動かそうとすると、屋外で実際にトレーニングしているように、自転車90も前後移動又は左右傾斜して揺動することが可能になる。そして、この揺動する角度は、実際に自転車90を屋外で直進運転するときの最大傾斜角度(例えば、床面に垂直な線に対して5度)以下となるように弾性体60、62を構成する弾性材料の弾性率(弾性係数又はヤング率)、弾性体60、62の大きさ、又はその取り付けられる垂直支軸44の位置によって調整することができる。
【0046】
次に、自転車90の挙動について説明する。
図5は、使用者の運転状態に応じた自転車90の挙動を示す図である。
【0047】
以下、自転車トレーナー100の挙動について、3本ローラー型自転車トレーナー及び後輪支持型自転車トレーナーと対比して説明する。
【0048】
3本ローラー型自転車トレーナーは、自転車90の前輪を支持する1本の前輪ローラーと、自転車90の後輪94を支持する1対の後輪ローラーとを備えるものである。例えば、実公開平2−77060号公報の技術が知られている。3本ローラー型自転車トレーナーは、使用者が右に体を傾けると、図5(a)に示すように、重心変化に対応してバランスをとるため、車輪接地位置が体の重心位置の真下に位置するように左に移動する。これは、実走に近い車輪接地位置となるので実走に近い運転感覚が得られる。
【0049】
これに対し、後輪支持型自転車トレーナーは、自転車90の後輪を支持する後輪スタンドと、自転車90の後輪94を支持する後輪ローラーと、自転車90の前輪を係留する前輪台座とを備えるものである。例えば、箕浦社製の自転車トレーナー「LiveRide LR961」が知られている。後輪支持型自転車トレーナーは、使用者が右に体を傾けると、図5(c)に示すように、車輪接地位置が前輪台座に固定されているので、車輪接地位置ではなく使用者の方が右に移動することとなってしまう。これは、不自然な回転中心となるため実走に近い運転感覚が得られない。
【0050】
したがって、左右方向に傾斜する場合は、車輪接地位置の方が移動することが理想である。この点、自転車トレーナー100は、使用者が右に体を傾けると、図5(b)に示すように、モーションコントローラ18により仮想的な回転中心が設定されるので、車輪接地位置に相当する位置が体の重心位置の真下に位置するように左に移動する。これにより、3本ローラー型自転車トレーナーと同様に実走に近い運転感覚が得られる。
【0051】
次に、垂直支軸44の剛性を調整する場合を説明する。
ねじ部68を正方向に回動すると、弾性体62がねじ部68により接近方向に押動されるので、弾性体60と弾性体62の間隔が小さくなる。間隔が小さくなると、垂直支軸44が荷重方向に変動する度合いが大きくなり、自転車90が傾斜しやすくなるので、使用者の体重等(体重、伸長、バランス感覚を含む。)が小さい場合は、ねじ部68により弾性体60と弾性体62の間隔を小さくすればよい。
【0052】
これに対し、ねじ部を逆方向に回動すると、コイルスプリング66aにより付勢された弾性体62がねじ部68とともに離隔方向に移動するので、弾性体60と弾性体62の間隔が大きくなる。間隔が大きくなると、垂直支軸44が荷重方向に変動する度合いが小さくなり、自転車90が傾斜しにくくなるので、使用者の体重等が大きい場合は、ねじ部68により弾性体60と弾性体62の間隔を大きくすればよい。
【0053】
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、自転車トレーナー100は、垂直支軸44を径方向に固定する弾性体60と、垂直支軸44を径方向に固定する弾性体62と、弾性体62を離隔方向に付勢するコイルスプリング66aと、垂直支軸44のねじ溝44aに螺合し弾性体62を接近方向に押動するねじ部68とを備え、ねじ部68により弾性体60と弾性体62の間隔を調整する。
【0054】
これにより、使用者がペダル96を踏み込んだときに実走と同程度の傾斜角度となるように使用者の体重等に応じてねじ部68を調整すれば実走に近い運転感覚を実現することができる。また、調整のために弾性体60、62を交換する必要がなくねじ部68により間隔を調整すればよいので調整が容易である。さらに、特許文献1記載の自転車トレーナーのように垂直支軸44の一端を本体部に固定する必要がなくなるので、垂直支軸44の設置位置や設置方向に制約が少なくなり、また小型化することもできる。さらに、調整機構がコイルスプリング66aとねじ部68で構成されるので構造を簡素化することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態では、支軸44は、フロントフォーク92を垂直方向に支持する。
【0056】
これにより、支軸44を縦方向に設置する縦型設置の構造を採用することができる。
本実施の形態において、垂直支軸44は、発明1、2又は4の支軸に対応し、弾性体60は、発明1又は2の第1弾性体に対応し、弾性体62は、発明1又は2の第2弾性体に対応し、コイルスプリング66a及びねじ部68は、発明1又は2の調整手段に対応している。また、コイルスプリング66aは、発明2の付勢手段に対応している。
【0057】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態を説明する。図6及び図7は、第2の実施の形態を示す図である。なお、以下、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図6は、自転車トレーナー100の斜視図である。
【0059】
図7は、モーションコントローラ18aの断面図である。
本実施の形態に係る自転車トレーナー100は、図6及び図7に示すように、台座12において、フロントフォーク取付部16及びモーションコントローラ18に代えて、ベース16a及びモーションコントローラ18aが設けられている。
【0060】
ベース16aは、平板状に形成されている。ベース16aの側面には、脚14a、14b、14cの上端が回動可能にそれぞれ取り付けられている。
【0061】
モーションコントローラ18aは、水平支軸40と、弾性体60、62と、水平支軸40及び弾性体60、62を収容する支軸収容部70とを有して構成されている。
【0062】
弾性体60、62の中心部には、水平支軸40を水平方向に貫通するための貫通孔60a、62aがそれぞれ形成されている。貫通孔60a、62aの径は、水平支軸40の径とほぼ同一又はこれよりもやや小径に設定されているので、弾性体60、62は水平支軸40に密着して取り付けられている。
【0063】
支軸収容部70は、ベース16aの上部に取り付けられ、左面及び右面が開口し水平支軸40及び弾性体60、62を収容するための筒状の収容領域が形成されている。支軸収容部70の内径は、弾性体60、62の外径とほぼ同一又はこれよりもやや小径に設定されているので、弾性体60、62は支軸収容部70内に密着して収容されている。また、支軸収容部70の内周面には、水平支軸40の軸方向に沿ってねじ溝70aが形成されている。
【0064】
支軸収容部70内には、一端が弾性体60の右面に当接し、他端が弾性体62の左面に当接するようにコイルスプリング66aが設けられている。コイルスプリング66aは、弾性体60、62を離隔方向に付勢する。
【0065】
弾性体60の左部には、ねじ部72が設けられている。ねじ部72の中心部には、水平支軸40を水平方向に貫通するための貫通孔72aが形成されている。貫通孔72aの外周面には、支軸収容部70のねじ溝70aに対応するねじ溝が形成されている。そして、ねじ部72は、支軸収容部70のねじ溝70aに螺合し、弾性体60を接近方向に押動する。
【0066】
弾性体62の右部には、ねじ部74が設けられている。ねじ部74の中心部には、水平支軸40を水平方向に貫通するための貫通孔74aが形成されている。貫通孔72a、74aの径は、所定のクリアランスを設けて水平支軸40の径よりも大径に設定されている。このクリアランスは、水平支軸40が前後方向及び上下方向に揺れる範囲を規定するものであり、水平支軸40の揺れる範囲は貫通孔72a、74aの内部に制限される。また、貫通孔74aの外周面には、支軸収容部70のねじ溝70aに対応するねじ溝が形成されている。そして、ねじ部74は、支軸収容部70のねじ溝70aに螺合し、弾性体62を接近方向に押動する。
【0067】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
使用者がペダル96を踏み込むと、後輪94が後輪ローラー22、24から摩擦力を受けるのでフロントフォーク92には前方に向かう力が発生する。この力は水平支軸40を前方に押し曲げる力となるが、水平支軸40が、支軸収容部70内に固定された弾性体60、62に囲まれているので、水平支軸40を曲げる力は制限される。この制限された力によって水平支軸40は一定程度撓んで自転車90は適度に前傾する。
【0068】
また、使用者が右に体を傾けると、水平支軸40は同様に上下方向の力で一定程度撓んで自転車90は適度に右に傾く。逆に、使用者が左に体を傾けると、水平支軸40は同様に上下方向の力で一定程度撓んで自転車90は適度に左に傾く。
【0069】
次に、水平支軸40の剛性を調整する場合を説明する。
ねじ部74を正方向に回動すると、弾性体62がねじ部74により接近方向に押動されるので、弾性体60と弾性体62の間隔が小さくなる。間隔が小さくなると、水平支軸40が荷重方向に変動する度合いが大きくなり、自転車90が傾斜しやすくなるので、使用者の体重等が小さい場合は、ねじ部74により弾性体60と弾性体62の間隔を小さくすればよい。
【0070】
これに対し、ねじ部を逆方向に回動すると、コイルスプリング66aにより付勢された弾性体62がねじ部74とともに離隔方向に移動するので、弾性体60と弾性体62の間隔が大きくなる。間隔が大きくなると、水平支軸40が荷重方向に変動する度合いが小さくなり、自転車90が傾斜しにくくなるので、使用者の体重等が大きい場合は、ねじ部74により弾性体60と弾性体62の間隔を大きくすればよい。
【0071】
なお、ねじ部74に代えてねじ部72を回動して調整してもよいし、ねじ部72、74の両方を回動して調整してもよい。
【0072】
次に、本実施の形態の効果を説明する。
本実施の形態では、支軸40は、フロントフォーク92を水平方向に支持する。
【0073】
これにより、支軸40を横方向に設置する横型設置の構造を採用することができる。
本実施の形態において、水平支軸40は、発明1、2又は5の支軸に対応し、コイルスプリング66a及びねじ部72、74は、発明1又は2の調整手段に対応している。
【0074】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態を説明する。図8は、第3の実施の形態を示す図である。なお、以下、第1の実施の形態と異なる部分についてのみ説明し、重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
まず、本実施の形態の構成を説明する。
図8は、モーションコントローラ18の断面図である。
【0076】
弾性体収容部66内には、図8に示すように、スライダー76が設けられている。スライダー76は、弾性体60、62と同様の材質で円盤状に形成された弾性体78を内部に収容している。スライダー76及び弾性体78の中心部には、垂直支軸44を垂直方向に貫通するための貫通孔76a、78aがそれぞれ形成されている。貫通孔78aの径は、垂直支軸44の径とほぼ同一又はこれよりもやや小径に設定されているので、弾性体78は垂直支軸44に密着して取り付けられている。
【0077】
弾性体収容部66の側面には、スライド窓66bが形成されている。スライダー76の右部は、スライド窓66bから突出し、突出した部分をつまみとしてスライダー76を垂直支軸44の軸上にスライドすることができる。
【0078】
次に、本実施の形態の動作を説明する。
スライダー76を下方向にスライドすると、弾性体78と弾性体62の間隔が小さくなる。間隔が小さくなると、垂直支軸44が荷重方向に変動する度合いが大きくなるとともに作用点に近い弾性体60の単位面積当たりの応力が大きくなる。このため、自転車90が傾斜しやすくなるので、使用者の体重等が小さい場合は、スライダー76により弾性体78と弾性体62の間隔を小さくすればよい。
【0079】
これに対し、スライダー76を上方向にスライドすると、弾性体78と弾性体62の間隔が大きくなる。間隔が大きくなると、垂直支軸44が荷重方向に変動する度合いが小さくなるとともに作用点に近い弾性体60の単位面積当たりの応力が小さくなる。このため、自転車90が傾斜しにくくなるので、使用者の体重等が大きい場合は、スライダー76により弾性体78と弾性体62の間隔を大きくすればよい。
【0080】
本実施の形態において、弾性体78は、発明1又は3の第1弾性体に対応し、弾性体62は、発明1の第2弾性体に対応し、スライダー76は、発明1又は3の調整手段に対応している。
【0081】
〔変形例〕
上記第1の実施の形態においては、弾性体60、62で垂直支軸44の全周を覆ったが、これに限らず、垂直支軸44の周面の一部を覆うように構成することもできる。例えば、弾性体60、62をリングの一部を欠いた形状として構成することができる。上記第2及び第3の実施の形態においても同様の変形例を適用することができる。
【0082】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例においては、2つの弾性体を設けて構成したが、これに限らず、3つ以上の弾性体を設けて構成することもできる。
【0083】
また、上記第1乃至第3の実施の形態及びその変形例においては、フロントフォーク92を支持する支軸40、44の剛性を調整する場合について本発明を適用したが、これに限らず、本発明の主旨を逸脱しない範囲で他の場合にも適用可能である。例えば、(1)自転車90の前輪を支持する構成において、前輪を支持する支軸の剛性を調整する場合、(2)自転車90のリアフォークを支持する構成において、リアフォークを支持する支軸の剛性を調整する場合、又は(3)自転車90の後輪94を支持する構成において、後輪94を支持する支軸の剛性を調整する場合についても本発明を適用することもできる。
【符号の説明】
【0084】
100…自転車トレーナー、 10…三脚型フロントフォーク支持部、 12…台座、 14a、14b、14c…脚、 15…リンク、 16…フロントフォーク取付部、 16a…ベース、 18、18a…モーションコントローラ、 20…後輪支持部、 22、24…後輪ローラー、 26…後輪フレーム、 28…フライホイール、 30…連結フレーム、 40…水平支軸、 40a、44a…ねじ溝、 42…本体、 42a…孔、 44…垂直支軸、 60、62、78…弾性体、 60a、62b、64a、68a、72a、74a、76a、78a…貫通孔、 64、66…弾性体収容部、 66a…コイルスプリング、 66b…スライド窓、 68、72、74…ねじ部、 70…支軸収容部、 76…スライダー、 90…自転車、 92…フロントフォーク、 94…後輪、 96…ペダル
【要約】
【課題】 実走に近い運転感覚を実現するのに好適な自転車トレーナーの傾斜調整装置を提供する。
【解決手段】 自転車トレーナー100は、垂直支軸44を径方向に固定する弾性体60と、垂直支軸44を径方向に固定する弾性体62と、弾性体62を離隔方向に付勢するコイルスプリング66aと、垂直支軸44のねじ溝44aに螺合し弾性体62を接近方向に押動するねじ部68とを備える。そして、ねじ部68により弾性体60と弾性体62の間隔を調整する。これにより、使用者がペダル96を踏み込んだときに実走と同程度の傾斜角度となるように使用者の体重等に応じてねじ部68を調整すれば実走に近い運転感覚を実現することができる。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8