(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143275
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】トルク及び角度を結合表示する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01M 13/02 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
G01M13/02
【請求項の数】18
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-518857(P2015-518857)
(86)(22)【出願日】2012年6月26日
(65)【公表番号】特表2015-521742(P2015-521742A)
(43)【公表日】2015年7月30日
(86)【国際出願番号】EP2012062340
(87)【国際公開番号】WO2014000772
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】502212604
【氏名又は名称】アトラス・コプコ・インダストリアル・テクニーク・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100064388
【弁理士】
【氏名又は名称】浜野 孝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【弁理士】
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】ブランドストレム,ウルフ ローランド
(72)【発明者】
【氏名】フォルスベリ,ペル インゲマール
(72)【発明者】
【氏名】レディン,フレドリック
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−151537(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/104433(WO,A1)
【文献】
特開昭54−118882(JP,A)
【文献】
特開平02−240536(JP,A)
【文献】
特開2008−284618(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0073364(US,A1)
【文献】
欧州特許第2864750(EP,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/177098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00 − 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルク伝達装置(10)で噛合ギアの状態を判定するための装置(1)であって、かかるトルク伝達装置が、
‐ 少なくとも2つの噛合ギア(14、15;22、23、24)と、
‐ トルク伝達装置(10)で伝達されたトルク(τtr)を監視するためのトルク計(19)と、さらに、
‐ 少なくとも1つの角度間隔(αint)にわたる噛合ギア(14、15;22、23、24)の少なくとも1つの角度位置(α)を監視するために配置された角度計(18)と、を備えている装置(1)において、
前記装置(1)が、
‐ 伝達トルク(τtr)を監視された角度位置(α)にマッピングし且つ少なくとも1つの角度間隔(αint)にわたって伝達されるトルク(τtr)の表示を作成し、
‐ 少なくとも2つの個々の角度間隔(αint)にわたって伝達されるトルク(τtr)の少なくとも2つの個々の表示を追加し、個々の表示それぞれが少なくとも1つの一致する監視された角度間隔(αint)にわたって伝達されるトルク(τtr)を少なくとも1つ含み、
‐ 少なくとも2つの個々の表示の追加から互いに組合わさった表示を形成し、さらに、
‐ トルク伝達装置(10)の少なくとも2つの噛合ギア(14、15;22、23、24)のうちの少なくとも一方のギア状態を判定するために、前記互いに組合わさった表示を分析する
ように構成したプロセッサ(21)を有し、
前記プロセッサ(21)が、特定の一定トルクのまわりに中心決めされる振幅をもつトレンドの外された表示を判定するために、個々の表示を追加する前に、個々の表示からトレンドを外すようにされ、前記プロセッサ(21)によって実行されるトレンド外しが、個々のシステム動作中に変化する伝達トルク(τtr)に対する個々の表示のそれぞれを補整するよう構成され、さらに前記角度間隔(αint)にわたる前記伝達トルク(τtr)の少なくとも2つの個々の表示の組合わさった表示が、補整された表示に基づいていること
を特徴とする装置。
【請求項2】
前記プロセッサ(21)が、前記噛合ギア(14、15;22、23、24)のうちの一方で偏差の原因を特定するために、前記偏差の発生する角度周期性を解析するようにされていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記プロセッサ(21)が、予想されるトルク振幅から偏差を認識するために、伝達トルク(τtr)の振幅を解析するようにされていることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記プロセッサ(21)が、前記少なくとも2つの噛合ギア(14、15;22、23、24)のうちの少なくとも一方の完全な回転に一致する角度間隔(αint)にわたって伝達されるトルク(τtr)の情報を含む互いに組合わさった表示を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記プロセッサ(21)が、トルク伝達装置(10)と通信するようにされた別個の制御ユニット(20)に配置され、トルク伝達装置(10)が噛合ギア(14、15;22、23、24)の前記伝達トルク(τtr)及び角度間隔(αint)を制御ユニット(20)に通信するための通信ユニットを備えていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置(1)が、前記少なくとも2つの噛合ギア(14、15;22、23、24)のうちの少なくとも一方の劣化を信号化して操縦者に送るための信号化装置を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記トルク伝達装置がナットランナーであり、前記角度間隔(αint)にわたる前記伝達トルク(τtr)の前記個々の表示が、個々のナットを緊締する或いはナットを遊嵌することであることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
少なくとも2つの噛合ギア(14、15;22、23、24)と、伝達トルク(τtr)を監視するトルク計(19)と、少なくとも1つの角度間隔(αint)にわたり噛合ギア(14、15;22、23、24)のうちの少なくとも一方の角度位置(α)を連続して監視するために配置された角度計(18)とを備えるトルク伝達装置(10)における噛合ギアのギア状態を判定する方法において、
かかる方法が、
‐ 前記角度間隔(αint)にわたる前記伝達トルク(τtr)の表示を形成するために監視された噛合ギア(14、15;22、23、24)の角度位置(α)に監視されたトルク(τtr)をマッピングするステップと、
‐ 少なくとも2つの角度間隔(αint)にわたり前記伝達トルク(τtr)の少なくとも2つの表示を追加し、個々の表示がそれぞれ個々のシステム動作の角度間隔(αint)にわたる伝達トルク(τtr)を包含するステップと、
‐ 少なくとも2つの個々の表示の組合せによって1つの互いに組合わさった表示を提供するステップと、さらに、
‐ 前記少なくとも2つの噛合ギア(14、15;22、23、24)のうちの少なくとも一方の劣化を認識するために前記組合わさった表示を解析するステップと、
を含み、
特定の一定トルクのまわりに中心決めされる振幅をもつトレンドの外された表示を判定するために、前記少なくとも2つの個々の表示のマッピングが前記少なくとも2つの個々の表示のそれぞれからトレンドを外すことを含んでいること
を特徴とする方法。
【請求項9】
前記方法がさらに、
‐ 予想されたトルク振幅から偏差を認識するために伝達トルク(τtr)の振幅を解析するステップを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
絶対角度(αabs)が2つの角度的に異なる個々の表示間の角度関係を判定するために利用され、前記2つの角度的に異なる個々の表示を正しい角度位置(α)で互いに組合わされることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
トレンドの外された個々の表示の振幅の大きさが、振幅のトレンドに対してさらに補整されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記追加した表示が、前記少なくとも2つの噛合ギアのすべての完全な回転に一致する角度間隔にわたる伝達トルク(τtr)の情報を備えることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記解析ステップが、前記追加した表示の時間領域信号を前記追加した表示の周波数領域信号への変換することを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
等間隔再サンプリングが、前記変換の前に、前記追加した表示の前記時間領域信号で或いは前記少なくとも2つの個々の表示の少なくとも2つの時間領域信号でそれぞれ実行されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記劣化が、前記組み合わせた表示の前記周波数領域信号の振幅を少なくとも1つの振幅閾値と比較することによって認識されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記方法が、トルク伝達装置の実際の動作で実行されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項17】
コンピュータを作動させる際に請求項8〜請求項16の何れか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる符号化手段を特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項18】
コンピュータ読み込み可能媒体と、請求項17に記載のコンピュータプログラムとを有し、前記コンピュータプログラムがコンピュータ読み込み可能媒体に包含されることを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも二つの噛合ギアと、伝達されたトルクを監視するトルク計と、少なくとも一つの角度間隔にわたる噛合ギアの少なくとも一つの角度位置を監視するように設けられた角度計とを有するトルク伝達装置における噛合ギアの状態を判定するための装置に関するものである。
【0002】
また、本発明は、少なくとも二つの噛合ギアと、伝達されたトルクを監視するトルク計と、少なくとも一つの角度間隔にわたる噛合ギアの少なくとも一つの角度位置を監視するように設けられた角度計とを有するトルク伝達装置における噛合ギアの状態を判定するための方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、本発明の方法を実行するコンピュータプログラム及びコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0004】
トルク伝達装置を含むトルク伝達システムでは、トルク伝達装置の状態を判定することができることは重要である。トルク伝達装置は、例えばナットランナーなどの動力工具或いはギアボックスなどの変速装置であることができる。例えば、トルク伝達装置を含んだ噛合ギアの状態を判定することができることは重要である。そのような噛合ギアは、クラウンギア及びピ二オンギアから成る曲がり歯傘歯車、固定リングギア、太陽ギア、遊星ギア、及び本質的にはシステムを介してトルクを伝達するために使用されるその他のあらゆるギアを包含する。
【0005】
本明細書では、ナットランナーなどの工具に実施した場合について本発明を説明する。しかし、本発明は、基本的に他のどのトルク伝達システムにも一般的に適用可能である。
【0006】
ナットランナーは、ナットを締めたり緩めたりするためにナットにトルクを供給する。ナットランナーは噛合ギアを備えている。これらのギアの目的は、主にナットランナーによってナットに供給され得るトルクを増大することにあり、これは、前記ギアによってナットランナーの回転モーターをシフトダウンすることによって達成される。また、ギアはトルクの回転軸を変えるための角度ギアとしても役立つことができる。ナットランナーのモーターによって供給される角度回転速度は、噛合ギアの歯数との関係に対応する程度まで噛合ギアによってシフトダウンされ、回転速度が同程度に減速するのと同時にナットに適用されるトルクは一致した程度まで増大される。
【0007】
従って、噛合ギアはそのようなトルク伝達装置の核心部分であり、それらの状態が良いことは重要である。
【0008】
工具などのトルク伝達装置は、例えば製造及び修理の工程で幅広く使用されている。そのような製造や修理の工程は、連続した製造又は修理を確保するため、工具の優れた機能に依存している。製造業者又は修理業者には迷惑で且つ経費の嵩む製造や修理の一時的な停止を回避するために、製造や修理の工程で使用される工具の状態を認識しておくことが重要である。
【0009】
この課題の既知の解決策では、例えば工具が使用不能になって製造や修理の工程から外され、外部解析装置の制御された条件下で工具状態判定のために分析される。このように、外部装置はこの分析を実行するために必要とされており、当然ながら製造や修理コストが嵩んでしまう。
【0010】
さらに、分析される場合に、工具は取り外さなければならないので、分析中製造や修理の工程は停止を余儀なくされ、分析実行中代替工具を用いて作業できるように製造や修理の場面に豊富な工具を備えなければならない。
【0011】
製造又は修理を停止することと代替工具を購入することは、製造及び修理されることになる項目に対して製造或いは維持コストを増やしてしまう。コストは、製造や修理の工程において重要な競争因子であるので、工具の状態を制御するためにかかるコストを最小限に抑えることが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、トルク伝達装置の通常動作中、トルク伝達装置の状態を判定することを可能にすることによって前記問題点を解決する方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の特徴によれば、かかる目的は、トルク伝達装置における噛合ギアのギア状態を判定する装置によって達成される。トルク伝達装置は、少なくとも二つの噛合ギアと、トルク伝達装置に伝達されるトルクτtrを監視するトルク計と、少なくとも一つの角度間隔αintにわたる噛合ギアの少なくとも一つの角度位置αを監視するように構成した角度計とを備えている。さらに、装置はプロセッサを備え、このプロセッサは、監視された回転角αに伝達トルクτtrをマッピングし、 前記角度間隔αintにわたって伝達されるトルクτtrの表示を作成し、予想される表示からの偏差を識別するために前記表示を解析し、さらに前記解析に基づいてトルク伝達装置の少なくとも二つの噛合ギアのうちの少なくとも一方のギアの状態を判定するように構成されている。
【0014】
本発明の特定の実施形態では、プロセッサは、前記噛合ギアの一方に偏差の原因を特定するために偏差が起こる角度周期性を解析するようにされる。
【0015】
別の実施形態では、プロセッサは、予想されるトルク振幅からの偏差を識別するために伝達トルクτtrの振幅を解析するようにされる。
【0016】
さらに別の実施形態では、プロセッサは、少なくとも二つの監視された角度間隔αintにわたって伝達されるトルクτtrの少なくとも二つの個々の表示を結合し、個々の表示が少なくとも一つの一致する監視された角度間隔αintにわたって伝達される少なくとも一つのトルクτtrを包含し、また少なくとも二つの独立した表示の結合から結合表示を作成し、さらに前記二つの噛合ギアのうちの少なくとも一方のギア状態を判定するために前記結合表示を解析するようにされている。
【0017】
プロセッサは、前記少なくとも二つの噛合ギアのうちの少なくとも一方に完全な回転と一致する角度間隔αintにわたって伝達されるトルクτtrの情報を包含する結合表示を作成するようにされてもよい。
【0018】
さらに、プロセッサは、特定の一定トルクの周囲に集中する振幅を有するトレンド(傾向変動)除去された表示を判定するために、それぞれ個々の表示を結合する前に、それら個々の表示からトレンドを除去するようにされてもよい。プロセッサによって実行されるトレンドの除去は、前記個々のシステム動作中変化しながら伝達されるトルクτtrのためのそれぞれ個々の表示を補償するようにされ、前記回転角αにわたって前記伝達されたトルクτtrの少なくとも二つの個々の表示の結合表示は、補償した表示に基づいている。
【0019】
プロセッサは、トルク伝達装置と通信するよう構成された別個の制御ユニットに設けられてもよい。トルク伝達装置は、制御ユニットに噛合ギアの前記伝達トルクτtr及び角度間隔αintを送信するための通信ユニットを備えている。
【0020】
さらに、作業者が必要な措置を講ずることができるように、装置は前記少なくとも二つの噛合ギアのうちの少なくとも一方の劣化を作業者に合図するための信号発生装置を備えてもよい。
【0021】
特に、トルク伝達装置はナットランナーであり得、前記角度間隔αintにわたって前記伝達されるトルクτtrの前記個々の表示は、個々のナットを締付けることやナットを緩めることであり得る。
【0022】
本発明の第二の特徴によれば、本発明の目的は、少なくとも二つの噛合ギアと、伝達されるトルクτtrを監視するためのトルク計と、少なくとも一つの角度間隔αintにわたって噛合ギアのうちの少なくとも一方の角度位置αを連続して監視するために設けられた角度計とを有するトルク伝達装置における噛合ギアのギア状態を判定する方法によって達成される。かかる方法は、以下のステップ:すなわち前記角度間隔αintにわたって伝達されるトルクτtrの表示を作成するために噛合ギアの監視された角度位置に監視されたトルクτtrをマッピングするステップ、及び前記少なくとも二つの噛合ギアのうちの少なくとも一方の劣化を特定するために前記表示を解析するステップを含む。
【0023】
特定の実施形態では、かかる方法は、さらに、予想されるトルク振幅からの偏差を特定するために伝達されるトルクτtrの振幅を分析するステップを含む。
【0024】
別の実施形態では、かかる方法は、さらに、少なくとも二つの角度間隔αintにわたって前記伝達されるトルクτtrの少なくとも二つの個々の表示を結合し、各個々の表示が個々のシステム動作の角度間隔αintにわたって伝達されるトルクτtrを包含しているステップ、及び少なくとも二つの個々の表示の結合から結合表示を行うステップ提供すること、さらに前記少なくとも二つの噛合ギアのうちの少なくとも一方の劣化を特定するために前記結合表示を分析するステップを含む。
【0025】
さらに別の実施形態では、絶対角度αabsが二つの個々の異なる角度表示間の角度関係を判定するために利用され、それによって二つの個々の異なる角度表示を正しい角度位置αで一体に結合することができる。
【0026】
前記少なくとも二つの個々の表示のマッピングには、特定の一定トルクの周囲に集中する振幅を有するトレンド除去された個々の表示を判定するために、前記少なくとも二つの個々の表示のそれぞれからトレンドを除去することが含まれてもよい。トレンドを除去された個々の表示の振幅の大きさは、振幅のトレンドに対してさらに補償がなされてもよい。
【0027】
特定の実施形態では、結合表示は、前記少なくとも二つの噛合ギアのすべてに対して完全な回転と一致する角度間隔にわたって伝達されるトルクτtrの情報を包含する。
【0028】
特定の実施形態では、前記分析ステップは、前記結合表示の周波数領域(ドメイン)信号への前記結合表示の時間領域信号の変換を包含する。
【0029】
さらなる実施形態では、前記結合表示の前記時間領域信号で又は前記少なくとも二つの個々の表示の少なくとも二つの時間領域信号で前記変換前にそれぞれ等間隔再サンプリングが実行される。
【0030】
前記劣化は、前記結合表示の前記周波数領域信号の振幅を少なくとも一つの振幅閾値と比較することによって特定されてもよい。
【0031】
かかる方法は、トルク伝達装置の実際の動作において実行することができる。
【0032】
さらに、かかる目的は、本発明の方法を実施するコンピュータプログラム及びコンピュータプログラム製品によって達成される。
【0033】
前記の記載及び/又は特許請求の範囲に記載した発明性のある方法で実施されるステップは、前記に記載され及び/又は特許請求の範囲に記載した装置で実施することができる。特に、前記プロセッサで実施されようとする装置のプロセッサの動作によって実施することができる。
【0034】
本発明による方法及び装置の詳細な実施形態及び利点は、いくつかの好ましい実施形態を示す添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1a】本発明の一実施形態による装置の概略図を示す。
【
図1b】第一の実施形態による噛合ギアの概略図を示す。
【
図1c】第二の実施形態による噛合ギアの概略図を示す。
【
図2】絶対回転角の増加に伴って大きくなる振幅の変化を示す。
【
図5】トレンドを除去された補償後の個々の表示を示す。
【
図6】複数の個々の表示を結合させた結合表示を示す。
【
図7】結合表示による健全なギアの周波数領域信号を示す。
【
図8】結合表示による不具合のあるギアの周波数領域信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明は、リアルタイムでギア状態の情報すなわちトルク伝達装置の通常動作中ギア状態の情報を提供することを可能にする装置及び方法を提供する。ギア状態の情報を判定することを可能にするためには、トルク伝達装置に伝達されるトルクτtr及び回転角αの表示が必要である。そのような表示は、さらに追跡(トレース)を表示することができ、一つ以上の回転角αで一つ以上の伝達されるトルクτtr値を含んでいる。この表示からトルク伝達装置の噛合ギアのギア状態を判定することができる。
【0037】
本発明による典型的な装置は、
図1aに示されている。図示された装置1は、トルク伝達装置10及び制御ユニット20を備えている。トルク伝達装置10は、モーター11、遊星ギアユニット13、及び傘ギア14、15を備え、傘ギア14、15は、ナット、ネジ、ボルト等に接続するためソケット12に接続されている。遊星ギアユニット13は、一つ以上の遊星ギアを包含し、各遊星ギアは少なくとも二つの遊星ホイールの内側に軸方向に配置された太陽ギア及びリングホイールを備えている。遊星ギアユニットは、速度を低くして回転動作のトルクを増大させるように構成されている。一般的に、トルク伝達装置においては、遊星ギアユニットのギア比は、およそ20対1以上である。
【0038】
角度計18は、モーター11の回転子の角度位置αを登録するためにモーター11に配置されている。トルク計19は、伝達されるトルクτtrを監視するために、モーター11を遊星ギアユニット13に接続するモーター出力軸に接続して配置されている。これらは角度計18及びトルク計19の典型的な配置にすぎない。角度計18及びトルク計19はモーターからソケットまで駆動軸に沿ってどこに配置されてもよい。角度計18及びトルク計19で監視された回転速度及びトルクに基づいて実行される任意の計算は、それぞれ、当然ながら駆動軸に沿ったそれらの実際の位置にギア比に基づいて適用されなければならない。
【0039】
傘ギアは、ピ二オン軸の端部に配置されるピ二オンギア14と、クラウンギア15とで構成される。ギア14、15は、相互に直角で配置されている。ピニオン軸25とクラウンギア15の軸は、軸受16及び17にそれぞれ取り付けられている。特定の実施形態では、ピ二オンギア14は11枚の歯を備え、クラウンギア15は17枚の歯を備えている(概略図には非表示)。従って、ピ二オンギア14の回転を完了する間、クラウンギア15は一回転11対17で回転することになる。言い換えれば、ピ二オンギア14が17回の完全な回転を完了するまでにクラウンギア15は11回の完全な回転を完了することになる。
【0040】
図1bには、典型的な傘ギアがピ二オンギア14の軸に沿った別の角度で示されている。典型的な実施形態では、角度計18は、ピ二オンギア14の角度位置αを連続して登録するために配置されている。一般的には、トルク計19によって連続して登録される伝達トルクτtrは、初期角度αゼロから現角度αまでのピ二オンギア14の回転に一致する角度間隔αintにわたってマッピングされることになる。この角度間隔αintで、ピ二オンギア14の歯数は、等しい歯数のクラウンギア15と相互作用することになる。この角度間隔αintの長さは、ピニオンギア14の一回転の一部またはその一回転或いは複数回転と一致させてもよい。
【0041】
図2bでは、遊星ギア13の典型的な実施形態が示されている。遊星ギア13は、モーター11のモーター出力軸に直接接続され得る太陽ホイール22を包含している。さらに、典型的な遊星ギア13は複数の遊星ホイール23及びリングホイール24を包含している。リングホイール24は、太陽ホイール22がモーター11の作用で回転することへの反応として、遊星ホイール23が太陽ホイール22とリングホイール24との間で回転するよう固定されてもよい。遊星ホイール23は出力軸に接続されている、かかる出力軸は、例えばさらなる遊星ギアの太陽ホイール或いは
図1aで示されたようにピ二オン軸25であってもよい。示された実施形態では、角度計18は太陽ホイール22の角度位置αを連続して登録するために配置されている。伝達トルクτtrは、この実施形態で、初期角度αゼロから現角度αまでの太陽ホイール22の回転に一致する角度間隔αintにわたってマッピングされることになる。遊星ギア13で達成されるシフトダウンによって、太陽ホイール22は一般的にピ二オン軸25よりもおよそ20倍速く回転することになる。従って、通常、太陽ホイール22は、その一回転或いは複数回転と一致する角度間隔αintにわたって典型的に回転することになる。
【0042】
本発明は、例えば遊星ギア或いは傘ギアの傷んだギア歯が、動力伝達時に効果を減少させる不具合のある噛合プロファイルをもたらすという概念に基づいている。このことから、傷んだ歯を通ってギアを回転させるには、より高いトルクがかかることになる。
【0043】
装置1は、直接的にトルク伝達装置10に、或いは例えばナットランナーの内部のトルク伝達装置に配置された制御ユニットに、或いはトルク伝達装置から切り離され例えば無線やケーブルを介してトルク伝達装置と接触するコンピュータなどの据置型或いは携帯型の制御ユニット20に、実装されてもよい。従って、プロセッサ21は、トルク伝達装置10に或いはトルク伝達装置10と通信する遠隔制御ユニット20の何れに実装されてもよい。
【0044】
本発明は、方法及び装置1の両方に関わる。しかしながら、本発明の方法で実行されるよう示される一連のステップは、全く同様に装置1のプロセッサによって実行されるよう実施することができる。また、プロセッサによって実行されるよう示される幾つかのステップを本発明の方法における一ステップとして実施されてもよい。
【0045】
最も一般的な態様において、本発明は、監視された角度位置αにわたって監視されたトルクτtrの表示の解析に関するものであり、その解析から、ギア状態を識別するために、予想される表示からの偏差を識別してもよい。
【0046】
トルク偏差は、典型的には、監視されたトルクのレベル或いは振幅に関わる。特定の角度位置αで監視されたトルクの局所的なピークは、傷んだギア歯の存在を示すことができる。
【0047】
従って、本発明は、時間の経過を伴ったトルク変化の表示を用いて或いは噛合ギアの少なくとも一方の角度位置αの関数としてギア状態を判定することができるという概念に基づいている。
【0048】
本発明の特定の実施形態では、監視された角度位置αと比較する参照角度位置は存在しない。そのような実施形態では、トルク/角度の偏差が生じる周期性を検討する必要がある。
【0049】
そのため、特定の例証では、偏差が起こっている周期性は監視される。監視された周期性から、その後どのギアが劣化した歯を含むかを結論付けることができる。この場合、当然ながら特定のギアでどの歯が劣化しているかを結論付けることはできない。しかもそのような情報は不要である。すなわち劣化したギアを認識することが可能である限り適切な措置を講ずることができる。例えば劣化したギアを修理或いは交換できるよう操作から工具を取り外すことができる。場合によっては、均等に分布されたギアの摩耗を意味する全体的な振幅の増大を注意するのに十分であり得る。そのような場合、単一の劣化した歯を特定することはできない。一方、全体的な摩耗は、ギアを交換する必要があることを示すレベルまで達しているかもしれない。
【0050】
さらに、幾つかの状況下で、例えばさらなる解析のために工具が操作から取り外されるべきであることを判定するために、それがどれであっても数あるギアのうちの1つで誤作動を起こしていることを知るには、十分である。
【0051】
しかも、誤作動がどのギアに関わっているかは重要でない場合でさえ、無作為の障害にではなく偏差は実際のギア状態に依存することを判定するために、トルク偏差の発生の周期性を研究することは興味深いことで有り得る。言い換えれば、特定の偏差が任意のギアに一致する周期性で繰り返すことがないならば、その特定の偏差はギア状態の判定から除外されてもよい。
【0052】
トルク伝達装置の通常操作中にギア状態の解析に関わる問題点は、多くの場合、ギア状態に関する普通の情報を提供するにはトルク伝達装置10で実行される緊締或いは遊嵌する動作の個々がそれぞれ余りにも短いということにある。
【0053】
この問題点は、複数の独立した表示が詳細な情報を提供する結合表示に組み合わされ得る点で、本発明の実施形態で解決される。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、プロセッサ21は、例えば傘ギア14、15の二つのギア及び/または遊星ギアユニット13のすべての独立したギアの結合表示で、興味深い噛合ギアの完全な回転に一致する角度間隔にわたって伝達されるトルクτtrの情報を含むように構成されている。そのため、プロセッサ21は、システムの噛合ギアの完全な回転に一致する情報を作成するために十分な個々の表示を多数組み合わせることができる。言い換えれば、結合表示が完全な回転をカバーする長さを有することができるよう個々の独立した表示を追加することによって個々の表示は一体で結合される。
【0055】
例えば、示された実施形態では、クラウンギアは17枚の歯を有し、ピ二オンギアは11枚の歯を有する。示された実施形態の噛合ギアの完全な回転のためには、ソケット及びクラウンギアは11回転しなければならない。クラウンギアの11回転は、ピ二オンギアの17回転と一致し、よって両ギアは元の位置に戻る。結合表示は、従って、11回転×360度=3960度の角度まで追加するのに十分な個々の表示を含むべきである。絶対角度αabsは、完全な回転のすべての角度αをカバーするために、完全な回転のための結合表示のどこに個々の表示を挿入すべきかを追跡するために利用することができる。
【0056】
通常、続く2回の動作は、二つの角度範囲が重なっているか或いは相互に近接して位置しているのでトルク角度関係を提供しないことになる点は注視に値する。これは、動作の初期部分及び/または最終部分が表示に含まれることがないよう緊締或いは遊嵌する動作に関与する回転全体に対して表示の有効部分が短い場合があるという事実に起因する。これは、伝達トルクが特定の閾値を越える表示部分だけが有効であるという事実によるものである。
図4を参照して以下に詳細に説明する。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、トルク伝達装置に伝達されるトルクτtr及び回転角度αの結合表示は、少なくとも二つの独立したシステム動作からの情報を結合することによって形成される。特に、それぞれ独立したシステム動作に対して、伝達トルクτtr及び回転角度αの一つの個々の表示が判定される。そのような個々の表示のそれぞれは、独立したシステム動作の少なくとも一つの伝達トルクτtr及び少なくとも一つの一致する回転角度αを備え、そこから情報を抽出することができる。
【0058】
緊締する動作では、動作中トルクは増大する。個々の表示は、そのような動作において、独立したシステム動作中に増大する伝達トルクτtrを関連するところまで補正することができる。一方、遊嵌する動作では、動作中トルクは減少する。従って、そのような動作において、個々の表示は、減少する伝達トルクτtrを補正することができる。
【0059】
その後、トルク伝達装置に伝達されるトルクτtr及び回転角度αの結合表示は、少なくとも二つの補正された個々の表示を組み合わせて作成することができ、組み合せることで結合された表示(結合表示)をもたらし、よってギア条件を判定するために利用するのに十分に長い長さを有する。従って、個々の表示は、結合表示を作成するために、場合によっては幾つもの完全な回転について適切に一体で結合される。結合表示は、緊締及び遊嵌する動作の両方に一致する表示を含むべきではない、なぜなら歯の逆側はそれらの動作中使用されているものであり同じ程度まで劣化していない場合がある。
【0060】
従って、本発明の一実施形態によれば、トルク伝達装置に伝達されるトルクτtr及び回転角度αの結合表示は、多数の独立したシステム動作に関わる多数の独立した表示を結合することによって形成される。それによって、個々の表示のそれぞれは、それ自体ギア状態の判定に役立てるには情報があまりに少ないが、独立した表示を複数利用することが可能である。むしろ、ギア状態を判定するのに十分な情報を含む結合表示を提供することができる。本発明によれば、それらの個々の表示を結合するのを可能にするために且つトルク伝達装置のシグナチャを一定に保つために、個々の表示それぞれが、独立したシステム動作中トルクの増加(或いは減少)で引き起こされるトルク振幅の変化を補正する。このように、個々の負荷レベルの影響が取り除かれるので補正された個々の表示は結合することができる。
【0061】
ナットランナーの形態によるトルク伝達装置への負荷の増加に関わる問題点は、
図2に示されている。
図2に示されるように、トルク変更の振幅はトルクレベルの増大とともに増加する。独立したそれぞれのシステム動作はトルク変更の振幅と一致する増加を有しており、伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示を補正せずに結合すると次の解析ステップでエラーを引き起こす。この問題点は、独立したそれぞれのシステム動作中変化する伝達トルクτtrを補正することによって解決される。補正は、独立したシステム動作中変化するトルクに影響を受けないピークの振幅を有する独立したシステム動作のそれぞれに、伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示をもたらす。すなわち独立したシステム動作中基本的に一定の伝達トルクτtrをシミュレーションする。
【0062】
伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示は、独立したシステム動作中のトルク変化が補正されるので、伝達トルクτtr及び回転角度αの結合表示に結合することができる。
【0063】
これにより、伝達トルクτtr及び回転角度αの結合表示は、多数の独立したシステム動作から形成することができ、よってその通常使用からこの結合表示を判定するためにトルク伝達装置を取り外す必要がない。このように、一実施形態によれば、本発明は個々の表示それ自体はそのような判定には短過ぎるが、伝達トルクτtr及び回転角度αの結合表示を提供してリアルタイムでの状態判定に役立てることができる。
【0064】
本発明の一実施形態によれば、伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示の補正は、窓関数Wを個々の表示に適用することによって達成される。前記窓関数Wの一例証は
図3に示されている。
図3に見ることができるように、窓関数Wは、サンプル数が増加するに従って振幅が減少する。この減少は、本質的に個々の表示の増加した変化振幅ピークの増加を引き起こすトルクの増加に基本的に一致する。一実施形態によれば、窓関数Wは、個々の表示の開始及び終了地点の振幅レベルの差に依存する開始振幅値から終了振幅値、例えば1(壱)まで直線的に増減する。より一般的には、窓関数はそれが線形であるかどうかに関係なく個々の表示の平均値に反比例することができる。
【0065】
このように、個々の表示は、個々の表示にこの窓関数を適用する場合、補正された個々の表示が個々のシステム動作中本質的に一定の伝達トルクτtrをシミュレートするよう変化するトルクを補正する。さらに、窓関数のアプリケーションは個々の表示の振幅正常化と見なすこともでき、個々のシステム動作について本質的に一定の伝達トルクτtrをシミュレートする正常化された個々の表示をもたらす。窓関数は順応性があり、即ち固定ではない。窓関数は個々の表示のそれぞれに対して独立していて、個々のシステムのそれぞれが動作中の負荷及び正常化が成された周囲のトルクに応じて変化することになる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、個々の表示のそれぞれに回転角度α及び一致する伝達トルクτtrは、回転角度αと個々のシステム動作の一致する伝達トルクτtrとの間の関係として噛合ギア歯の影響を示すように選ばれる。このように、クロッピングされたデータは個々のシステム動作のそれぞれに噛合ギア歯の影響の価値ある情報を含んでいる。
【0067】
多くの場合、個々のシステム動作のセグメントは、回転角度間隔αintにわたって伝達されるトルクτtrにほぼ直線的に増加する値を含んでいる。これらのほぼ直線的に増加する値は、通常、噛合ギア歯の影響の価値ある情報を含んでいる。例えば電気ナットランナーでは、連結部がこのセグメントを通して回転角度αに関わって直線的に機能するのでこのセグメントは直線的に増加する。
【0068】
図4は、ナットランナーのための個々のシステム動作のトルク及び絶対角度の一例証を示している。そこで個々のシステム動作は、緊締中のナットを1つ包含する。個々のシステム動作の価値ある情報を含む興味深い部分は、
図4に示された円形の目印の間にある。左側の目印は、個々のシステム動作の興味深い部分の開始角度α1を示し、右側の目印は興味深い部分の終了角度α2を示す。
【0069】
一実施形態によれば、開始角度α1は、選択された興味深い部分が装置1の雑音レベルへの信号(SNR)を上回る伝達トルクτtrと一致するように選ばれる。終了角度α2は、それが目標トルクτtargetに近い伝達トルクτtrと一致するように選ばれる。そのような目標は、通常、トルク伝達装置で使用され、このように噛合ギア歯の影響の価値ある情報を含む興味深い領域の識別に利用可能である。この実施形態によれば、興味深い部分は、個々のシステム動作から抽出され、伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示を判定するために使用される。これはさらに、その興味深い部分に個々のシステム動作データをクロッピングすると見なすことができる。従って、
図2に示された個々の表示は、
図4に示された個々のシステム動作の興味深い領域と一致する。
【0070】
本発明の実施形態によれば、個々の表示の判定は、個々の表示のそれぞれからトレンドを取除くことを含んでいる。トレンド除去は、トレンド除去された個々の表示のそれぞれに、特定のトルクの周囲に集中する平均トルクを有する例えばゼロNmで振幅を持たせる。それぞれトレンド除去された個々の表示のゼロ平均特性のお蔭で、多数の表示は特定のトルクの周囲に集中する結合表示に結合できる。
【0071】
本発明の実施形態によれば、このトレンド除去は、ほぼゼロNmすなわちゼロに近い平均値を有するトルクτtrの周囲に集中するトレンド除去された個々の表示を取得することによって、伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示から平均トルク値に一致するトレンドを差し引くことによって実行される。
【0072】
図5は、前記
図4の個々のシステム動作に一致し、補正され且つトレンド除去された個々の表示の例証を示している。
図5で見ることができるように、このトレンド除去された個々の表示は、ほぼゼロに近い平均値を有し、個々のシステム動作中本質的に一定の伝達トルクτtrからエラー信号をシミュレートする、すなわちトレンド除去された個々の表示は、噛合ギアの影響をシミュレートするためだけにゼロNmの伝達トルクτtrの周囲に集中される。それに比べ、トルク伝達装置に負荷が存在しない場合、噛合ギア歯のシグナチャを得ることは不可能ではないが困難である。
【0073】
トレンドが除去された個々の表示は、
図5に示された一例証のように、トルク伝達装置のギア状態の判定に利用することができる。さらに、2つ以上のこのようなトレンド除去された個々の表示は結合表示を提供するために一体で結合することができ、トルク伝達装置のギア状態の判定に利用することができる。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、絶対角度αabsは、結合される連続した二つの個々の角度表示の角度関係を判定するのに利用される。この場合、伝達トルクτtr及び回転角度αの個々の表示のそれぞれに使用される回転角度αは、絶対不変のすなわち非相対的な角度αabsである。これは、高品質の結合表示を提供するために二つの連続した個々の角度表示を正確な回転角度αで一体結合させることを可能にする。
【0075】
このように、絶対角度αabsの使用は、非常に正確なギア状態の判定を可能にする。二つの連続した個々の角度表示は、時間の経過と共に順次実行される二つの個々のシステム動作に関連付けられる必要がない。従って、絶対角度αabsの使用はさらに、以下に説明するように、場合によってはシステム輪番の完全な期間にわたって完全に結合された表示を生成するために特定の個々の表示を結合表示のどこに挿入するか追跡することを可能にする。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、回転角度間隔αintにわたる伝達トルクτtrの望ましい結合表示は、トルク伝達装置のすべての噛合ギアの完全な回転と一致する角度間隔にわたる伝達トルクτtrの情報を含んでいる。従って、角度間隔αintをカバーする独立した表示のそれぞれが結果としてもたらされ、多数の個々のシステム動作が作られる。
【0077】
噛合ギアの完全な回転を共にカバーする多数の角度間隔αを生成するために十分な個々のシステム動作が実行される場合、伝達トルクτtr及び回転角度αの結合表示は、完全な回転の情報を含む完全な回転の表示である。このように、伝達トルクτtr及び回転角度αの完全な回転の表示は、トルク伝達装置の噛合ギアのすべてから可能な噛合せ歯の事象のすべての状態を判定するために使用可能である。
【0078】
個々の表示の正確な角度を追跡できることは、正確に個々の表示を結合するためには重要である。個々の表示のそれぞれは、ギア歯に忠実である結合表示をもたらすために正確に適切な位置で結合表示に嵌合されなければならない。絶対角度αabsは、個々の表示を結合表示に挿入する正確な位置を追跡するために利用することができる。時間の経過とともに噛合ギアの完全な回転のすべての角度は、完全な結合表示に示されることになる。
【0079】
図6は、噛合ギア歯のこのような結合表示の一例証を多数の角度にわたって示し、多数の個々の表示に伝達トルクτtr及び絶対回転角度αabsを結合している。図中、円形は連結地点を示している。さらなる個々のシステム動作が実行され且つ一致する個々の表示がナットランナーの回転周期に関わって属する場所に正確に置かれる角度値で追加される場合、結果として結合表示はナットランナーの噛合ギアの完全な回転のすべての角度からの情報を提供することができる。このように、ナットランナーの噛合ギアのすべての状態を判定するために結合表示を利用することができる。
【0080】
それは、角度位置αの関数として伝達トルクτtrの登録のきっかけとなることは可能である。このような場合、表示は角度位置αの関数として直接的に伝達トルクτtrの形状になる。しかし、本発明の別の実施形態では、角度位置α及び伝達トルクτtrは所定の時間周期で、例えば千分の一秒毎或いは百分の一秒毎に監視され登録される。
【0081】
本発明の後者の実施形態によれば、結合表示の解析は、結合表示の時間領域信号を結合表示の周波数領域信号へ変換することを含むことができる。変換は、例えば高速フーリエ変換(FFТ)などのフーリエ変換の使用で実行することができる。この周波数領域信号から、以下により詳細に説明するように、ギア状態を容易且つ確実に判定することができる。結合表示の長さのお蔭で、すなわち十分な長さの結合表示に多数の個々の表示を結合することによって、変換は高い精度で成され、結果として低い雑音レベルの結合表示の周波数領域信号をもたらす。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、それが周波数領域に変換される前に、等間隔再サンプリングが結合表示の時間領域信号で実行される。等間隔再サンプリングは、結合表示に連結される前の個々の表示の時間領域で実行することができる。等間隔再サンプリングは、動作のシミュレーション速度及び結合表示のサンプル間の一定の角度距離を実現し、個々のシステム動作中に変化する速度の効果を除去することによって、周波数領域に結合表示の情報を表示することを可能にする。
【0083】
変換後、噛合ギアの状態は、周波数領域における結合表示の振幅解析によって判定することができる。
図7は、健全な傘ギアの周波数領域における結合表示信号の一例証を示し、
図8は劣化した傘ギアの周波数領域における結合表示信号の一例証を示している。
図7及び8の解析から劣化した傘ギアは、周波数領域信号における健全な傘ギアのよりも高い振幅の歯車噛合い周波数を生成することが明らかである。これは、トルク伝達装置の噛合ギアの状態を識別するために、本発明の特定の実施形態で利用されている。しかしながら、結合表示から正常性の状況の判定は多数の異なる方法で得ることができる。振幅比較はそのような解析方法の1つである。周波数領域における結合表示の詳細な正確さ及びレベルは結合表示の長さに依存している。本発明による結合表示は、相当な長さを有するよう多数の個々の表示を含むことができるので、周波数領域における結合表示信号の特性は非常に特異なものである。従って、噛合ギアの劣化は容易に検知できる。
【0084】
本発明の別の実施形態によれば、結合表示の時間領域信号はギア状態の判定に利用されている。周波数領域状態判定に関して、時間領域信号の振幅解析は劣化したギアを識別するのに使用することができる。ギア状態を追及するために、このような解析、振幅値、及び特に振幅値における変化を監視することができる。
【0085】
前記本発明の方法の種々のステップは、任意の適当な順位で結合或いは実行することができる。当然ながらこのための条件は、本発明の方法の別のステップとの組み合わせで使用するために、そのような個々の表示或いは結合表示で例えば得られる情報の観点からステップの諸要件が満たされなければならないという点にある。
【0086】
本発明の前記の方法及び実施形態は、コンピュータを走らせると前記方法のステップをコンピュータに実行させる符号化手段を有するコンピュータプログラムによって実現することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータプログラム製品のコンピュータで読み込み可能な媒体に含まれている。コンピュータで読み取り可能な媒体は、ROM(読取り専用メモリ)、PROM(書き込み可能なROM)、EPROM(書き込み・消去可能なROM)、フラッシュメモリ、EEPROM(電気的に書き込み・消去可能なROM)またはハード・ディスク・ドライブなど本質的に任意のメモリで構成することができる。
【0087】
本発明による方法及び装置1は、上述の実施形態に比較して当事者によって変更することができる。
【0088】
当事者には明らかなように、前記例示的な実施形態にその他多数の実施例、変更、変形例及び/または追加が可能である。本発明は、特許請求の範囲内でそのような他の実施例、変更、変形例及び/または追加を含むことが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0089】
1 装置
10 トルク伝達装置
11 モーター
12 ソケット
13 遊星ギアユニット
14;15 傘ギア(14:ピ二オンギア;15:クラウンギア)
16;17 軸受
18 角度計
19 トルク計
20 制御ユニット
21 プロセッサ
22 太陽ホイール
23 遊星ホイール
24 リングホイール
25 ピ二オン軸
α 角度
α1 開始角度
α2 終了角度
αabs 絶対角度
αint 角度間隔
τtr 伝達トルク
τtarget 目標トルク
W 窓関数