特許第6143287号(P6143287)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143287
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/12 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   G01R15/12
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-107941(P2013-107941)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-228381(P2014-228381A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】永井 健司
(72)【発明者】
【氏名】平尾 貴志
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平5−249142(JP,A)
【文献】 特開2012−173182(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031291(WO,A1)
【文献】 特開平4−323568(JP,A)
【文献】 特開2000−338141(JP,A)
【文献】 特開2012−220330(JP,A)
【文献】 米国特許第6735535(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/12
G01R 35/00
G01R 19/00
G01R 27/00
G01R 13/00
G01R 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の測定モードのうちから指定された測定モードで測定対象の電気的パラメータを測定して第1の測定データを出力する測定処理を実行する測定部と、
前記各測定モードのうちからいずれかの当該測定モードを選択する第1の操作、および前記第1の測定データを補正するための補正データの生成処理の開始を指示する第2の操作が可能に構成された操作部と、
前記各測定モード毎の補正データをそれぞれ記憶する記憶部と、
前記第1の操作による前記測定モードの選択に応じて前記測定部を制御して前記測定処理を実行させ、かつ当該測定部から出力される前記第1の測定データを前記補正データに基づいて補正して第2の測定データを生成すると共に、前記第2の操作が行われたときに前記生成処理を実行して前記補正データを生成し、生成した当該補正データを前記記憶部に記憶させる処理部とを備えて構成された測定装置であって、
前記処理部は、対応する前記補正データの前記生成処理が完了している前記測定モードと、対応する前記補正データの前記生成処理が完了していない前記測定モードとを区別可能に報知する報知処理を実行可能に構成されると共に、前記生成処理において、前記第1の操作によって選択された前記測定モードを特定し、かつ特定した当該測定モードで測定される前記第1の測定データを補正するための当該補正データを生成して前記記憶部に記憶させる測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記生成処理において、前記第1の操作によって選択された前記測定モードを特定したときに、特定した当該測定モードに対応する前記補正データの前記生成処理が完了しているか否かを前記報知処理によって報知する請求項記載の測定装置。
【請求項3】
前記記憶部は、少なくとも2つの補正データ記憶領域を備えて前記各測定モード毎に少なくとも2種類の前記補正データを記憶可能に構成されている請求項1または2記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の測定モードのうちから指定された測定モードで測定対象の電気的パラメータを測定可能に構成された測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の測定装置として、電圧値、電流値および抵抗値等の電気的パラメータを測定可能に構成されたデジタルテスタが特開平5−249142号公報に開示されている。このデジタルテスタは、テスタ本体、およびプローブケーブルを介してテスタ本体に接続された一対の測定プローブを備えて構成されている。また、テスタ本体には、測定結果を表示するためのデジタル表示面と、測定モードを切り換えるための測定切替スイッチとが配設されている。さらに、このデジタルテスタでは、表示駆動ケーブルを介してテスタ本体にデジタル表示器を接続可能に構成され、上記のデジタル表示面およびデジタル表示器の双方に測定結果を表示させることができるように構成されている。
【0003】
このデジタルテスタを使用して測定対象についての電気的パラメータを測定する際には、まず、測定切替スイッチを操作して所望の測定モード(例えば、抵抗値を測定する測定モード)に切り換える。次いで、両測定プローブを測定対象に接触させる。この際には、テスタ本体内の測定部によって両測定プローブ間の抵抗値が測定され、その測定結果がテスタ本体のデジタル表示面およびデジタル表示器の双方に表示される。これにより、測定対象の抵抗値を把握することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−249142号公報(第2頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のデジタルテスタには、以下の解決すべき問題点が存在する。すなわち、従来のデジタルテスタでは、電圧値の測定モード、電流値の測定モード、および抵抗値の測定モード(以下、「電圧測定モード」、「電流測定モード」および「抵抗測定モード」ともいう)などの複数種類の測定モードを有し、これらの測定モードのうちから測定切替スイッチの操作によって所望の測定モードを選択して測定処理を実行させる構成が採用されている。この場合、この種の測定装置では、予め規定された測定確度範囲内の確度で測定値を測定(表示)できるように、製品出荷前(例えば、製造時)に各測定モード毎の測定値の誤差を補正するための補正値(校正値)を記憶させておき、測定処理に際しては、記憶されている補正値を用いて測定値を補正する構成が採用されている。
【0006】
また、この種の測定装置のなかには、利用者が補正値の生成処理(キャリブレーション処理)を任意のタイミングで実行させることができるように構成された装置が存在する。このような構成を採用した測定装置によれば、測定環境毎に生じる誤差や、測定装置の経年変化に起因する誤差を補正して所定の測定確度を維持することができる。しかしながら、補正値の生成処理を任意のタイミングで実行可能な測定装置では、生成処理の開始を指示したときに、複数種類の測定モードのすべてを対象として補正値を順次取得する処理が実行される構成が採用されている。
【0007】
この場合、例えば、電流測定モード用の補正値を生成する際には、予め規定された電流値の校正用信号を測定装置に供給するために測定装置を校正器(定電流源)に接続する必要がある。また、電圧測定モード用の補正値を生成する際には、予め規定された電圧値の校正用信号を測定装置に供給するために測定装置を校正器(定電圧源)に接続する必要がある。さらに、抵抗測定モード用の補正値を生成する際には、測定装置を基準抵抗器に接続する必要がある。加えて、各測定モード毎に複数の測定レンジが存在する場合には、校正器(定電流源や定電圧源)から供給する校正用信号の電流値や電圧値を変更したり、複数種類の基準抵抗器を順次接続したりする作業も必要となる。
【0008】
したがって、例えば、抵抗測定モードしか使用しない利用者が抵抗測定モードの測定確度を維持するために抵抗測定モード用の補正値の生成処理を実行させたいときであっても、各測定モード毎の補正値を順次生成するために上記の各種作業を順次実行する必要がある。このため、所望の補正値(この例では、抵抗測定モード用の補正値)を得るのに長時間を要すると共に、利用者にかかる負担が大きいという問題点がある。また、バッテリー駆動型の測定装置においては、一連の補正値生成処理を完了する以前にバッテリー残量が不足する状態となってしまうことがある。かかる場合には、充電処理、または、十分な残量のバッテリーに交換した後に、一連の生成処理を最初から実行する必要があるため、所望の補正値を得るのにさらに長時間を要すると共に、利用者にかかる負担が非常に大きいという問題点がある。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、任意の測定モード用の補正値を短時間で容易に取得し得る測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の測定装置は、複数種類の測定モードのうちから指定された測定モードで測定対象の電気的パラメータを測定して第1の測定データを出力する測定処理を実行する測定部と、前記各測定モードのうちからいずれかの当該測定モードを選択する第1の操作、および前記第1の測定データを補正するための補正データの生成処理の開始を指示する第2の操作が可能に構成された操作部と、前記各測定モード毎の補正データをそれぞれ記憶する記憶部と、前記第1の操作による前記測定モードの選択に応じて前記測定部を制御して前記測定処理を実行させ、かつ当該測定部から出力される前記第1の測定データを前記補正データに基づいて補正して第2の測定データを生成すると共に、前記第2の操作が行われたときに前記生成処理を実行して前記補正データを生成し、生成した当該補正データを前記記憶部に記憶させる処理部とを備えて構成された測定装置であって、前記処理部は、対応する前記補正データの前記生成処理が完了している前記測定モードと、対応する前記補正データの前記生成処理が完了していない前記測定モードとを区別可能に報知する報知処理を実行可能に構成されると共に、前記生成処理において、前記第1の操作によって選択された前記測定モードを特定し、かつ特定した当該測定モードで測定される前記第1の測定データを補正するための当該補正データを生成して前記記憶部に記憶させる。
【0012】
さらに、請求項記載の測定装置は、請求項記載の測定装置において、前記処理部は、前記生成処理において、前記第1の操作によって選択された前記測定モードを特定したときに、特定した当該測定モードに対応する前記補正データの前記生成処理が完了しているか否かを前記報知処理によって報知する。
【0013】
また、請求項記載の測定装置は、請求項1または2記載の測定装置において、前記記憶部は、少なくとも2つの補正データ記憶領域を備えて前記各測定モード毎に少なくとも2種類の前記補正データを記憶可能に構成されている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の測定装置によれば、処理部が、生成処理において、第1の操作によって選択された測定モードを特定すると共に、特定した測定モードで測定される第1の測定データを補正するための補正データを生成して記憶部に記憶させることにより、補正値の生成処理の開始を指示したときに各測定モード毎の補正値のすべてを順次生成する必要がある従来の測定装置とは異なり、補正データの生成を希望する測定モードを指定して、その測定モード用の補正データだけを選択的に生成して記憶部に記憶させることができる。これにより、測定確度の向上を所望する測定モード以外の測定モード用の補正データを生成しない分だけ、所望する測定モード用の補正データを短時間で容易に取得することができる。また、所望の補正データの生成に要する時間が充分に短いため、例えばバッテリー残量の不足に起因して補正データの生成処理を再び実行する必要が生じる事態を好適に回避することができる。
【0015】
た、処理部が、報知処理を実行して、対応する補正データの生成処理が完了している測定モードと、対応する補正データの生成処理が完了していない測定モードとを区別可能に報知することにより、この種の装置の操作に不慣れな利用者であっても、選択した測定モード用の補正データの生成処理を完了しているか否かを確実かつ容易に認識することができるため、補正データの生成処理を既に完了している測定モードについての不要な生成処理が実行される事態を回避することができる。
【0016】
さらに、請求項記載の測定装置によれば、処理部が、生成処理において、第1の操作によって選択された測定モードを特定したときに、特定した測定モードに対応する補正データの生成処理が完了しているか否かを報知処理によって報知することにより、補正データの生成処理を開始させた状態において任意の測定モードを選択する操作を行うだけで、選択された測定モード用の補正データの生成処理を既に完了しているか否かを容易に認識することができる。
【0017】
また、請求項記載の測定装置によれば、少なくとも2つの補正データ記憶領域を備えて各測定モード毎に少なくとも2種類の補正データを記憶可能に記憶部を構成したことにより、例えば、2つの補正データ記憶領域の一方に工場出荷時に生成した補正データを記憶させておき、他の補正データ記憶領域に利用者が任意のタイミングで生成させた補正データを記憶させておくことで、利用者による補正データの生成が完了している測定モードについても、工場出荷時の補正データによって第1の測定データを補正する状態(工場出荷状態)に容易に復元させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】測定装置1の構成を示す構成図である。
図2】測定モードの一例について説明するための説明図である。
図3】利用者による補正データD0uの生成処理が完了していない状態(工場出荷時の補正データD0fだけしか記憶されていない状態)を報知する補正値取得状態特定用メッセージMb0の一例を示す表示画面図である。
図4】利用者による補正データD0uの生成処理が完了している状態を報知する補正値取得状態特定用メッセージMb1の一例を示す表示画面図である。
図5】利用者による補正データD0uの生成処理が完了している状態を報知する補正値取得状態特定用メッセージMb1の他の一例を示す表示画面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、測定装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示す測定装置1は、「測定装置」の一例であるデジタルマルチメータであって、測定部2、操作部3、表示部4、記憶部5,6および処理部7を備えて構成されている。
【0021】
測定部2は、「測定部」の一例であって、脱着自在な一対のテストリードを介して測定対象に接続可能に構成されると共に、処理部7の制御に従い、測定対象についての各種電気的パラメータ(一例として、直流電流値、交流電流値、直流電圧値、交流電圧値、抵抗値、および静電容量値など)を測定可能に構成されている。具体的には、図2に示すように、測定部2は、直流電流測定モード、交流電流測定モード、直流電圧測定モード、交流電圧測定モード、抵抗測定モード、および静電容量測定モードなどの複数種類の測定モードを有し、各測定モードのうちから指定された測定モードで入力信号Siをデジタル変換して測定データD1a(「第1の測定データ」の一例)を生成し、生成した測定データD1aを処理部7に出力する「測定処理」を実行する。
【0022】
この場合、本例の測定装置1では、各測定モード毎に複数の測定レンジが用意されており、一例として、利用者によって選択された測定モードでの測定処理時に、処理部7によって各測定レンジのうちから最適な測定レンジが自動的に選択されて切り換えられる構成が採用されている。具体的には、一例として、抵抗測定モードでは、Ωレンジ、kΩレンジ、10kΩレンジ、100kΩレンジ、MΩレンジおよび10MΩレンジの6つの測定レンジのなかから最適な測定レンジが選択されて切り換えられる。なお、実際の測定装置1では、上記の6種類の測定モード以外の測定モードが存在すると共に、抵抗測定モード以外の測定モードにおいても複数の測定レンジが用意されているが、測定装置1の動作に関する理解を容易とするために、上記の各測定モード以外の測定モードや、抵抗測定モード以外の測定モードにおける測定レンジについての説明を省略する。
【0023】
操作部3は、「操作部」の一例であって、測定モードを切り換えるための測定モード切換えスイッチや、測定レンジの切換え開始を指示するためのRANGEスイッチ等の各種操作スイッチを備え(図示せず)、スイッチ操作に応じた操作信号を処理部7に出力する。この場合、本例の測定装置1では、測定モード切換えスイッチの操作(切換え操作)が「第1の操作」に相当し、この測定モード切換えスイッチを操作することにより、上記の各測定モードのうちからいずれかの測定モードを選択して切り換えることができるように構成されている。また、本例の測定装置1では、一例として、RANGEスイッチを押圧しながら図示しない電源スイッチによって電源を投入する操作が「第2の操作」に相当し、このような操作を行うことにより、後述するように、測定部2から出力される測定データD1aを補正するための補正データD0u(「補正データ」の一例)を生成する生成処理が開始される構成が採用されている。
【0024】
表示部4は、後述するように処理部7が測定データD1aおよび補正データD0u(または、補正データD0f(「補正データ」の他の一例))に基づいて生成する測定データD1b(「第2の測定データ」の一例)の値(すなわち、測定装置1による測定結果)や、補正データD0uの生成が完了しているか否かを特定可能に報知する各種のメッセージ(一例として、図3〜5に示す測定モード特定用表示Maや補正値取得状態特定用メッセージMb0,Mb1等)などを表示する。なお、測定結果やメッセージ等を表示する表示部を一体的に備えた測定装置1を例に挙げて説明するが、「測定装置」の構成はこれに限定されず、外部装置としての表示装置に測定結果やメッセージ等を表示する構成を採用することもできる。
【0025】
記憶部5は、「記憶部」の一例であって、図1に示すように、一例として、補正データ記憶領域5a,5bの2つの記憶領域(「少なくとも2つの補正データ記憶領域」の一例)を備え、各測定モード毎にそれぞれ2種類の「補正データ」を記憶することができるように構成されている。この場合、本例の測定装置1では、予め規定された測定確度範囲内の確度で測定値を表示できるように、一例として、製造者が製品出荷前(例えば、製造時)に各測定モード毎に各測定レンジ毎の補正値を記録して補正データD0fを生成し、この補正データD0fを補正データ記憶領域5aに記憶させた状態で出荷することにより、補正データ記憶領域5aに補正データD0fが記憶された状態で利用者に供給される販売形態が採用されている。また、本例の測定装置1では、補正データ記憶領域5aに記憶されている補正データD0fの消去や上書きが規制されており、これにより、測定装置1を工場出荷時の状態(測定データD1bの生成に際して、補正データ記憶領域5a内の補正データD0fに基づいて測定データD1aを補正する状態)に復元することができるように構成されている。
【0026】
さらに、本例の測定装置1では、後述するように、例えば測定装置1の利用者が任意の測定モード用の補正データD0uを任意のタイミングで生成させて補正データ記憶領域5bに記憶させることができるように構成されている。この場合、本例の測定装置1では、測定データD1bの生成に際して、補正データ記憶領域5bに補正データD0uが記憶されていない測定モードの各測定レンジでの測定処理に際しては、補正データ記憶領域5aに記憶されている補正データD0fの値を用いて測定データD1aを補正し、補正データ記憶領域5bに補正データD0uが記憶されている測定モードの各測定レンジでの測定処理に際しては、補正データ記憶領域5bに記憶されている補正データD0uの値を用いて測定データD1aを補正する構成が採用されている。記憶部6は、処理部7の制御下で測定データD1bを記憶する。なお、測定データD1bを記憶する記憶部6については、測定装置1に内蔵の記憶素子で構成された「記憶部」に限定されず、各種のリムーバブルメディアを採用して構成することもできる。
【0027】
処理部7は、「処理部」の一例であって、測定装置1を総括的に制御する。具体的には、処理部7は、操作部3の測定モード切換えスイッチの操作状態に応じて測定部を制御し、利用者によって選択された測定モードでの測定処理を実行させる。この場合、本例の測定装置1では、前述したように、各測定モードでの測定処理時に複数の測定レンジのうちから最適な測定レンジが選択されて自動的に切り換えられる構成が採用されているが、この測定レンジの切換え処理(オートレンジ処理)についての説明を省略する。また、処理部7は、測定部2から出力される測定データD1aを補正データD0fまたは、補正データD0uに基づいて補正して測定データD1bを生成し、生成した測定データD1bを記憶部6に記憶させる。
【0028】
さらに、処理部7は、RANGEスイッチが押圧された状態において電源スイッチの操作によって電源が投入されたときに、補正データD0uの生成処理を開始する。この場合、処理部7は、生成処理の開始時点において測定モード切換えスイッチによって選択されている測定モードについての補正データD0uが存在しないとき(すなわち、選択されている測定モードについての補正データD0uの生成処理が完了しておらず、補正データD0fだけしか存在しないとき)に、一例として、図3に示すように、「AdJ FACt」との補正値取得状態特定用メッセージMb0と、選択されている測定モードを示す測定モード特定用表示Ma(この例では、抵抗測定モードを示す「Ω」との記号)とを表示部4に表示させることにより、その測定モードに対応する補正データD0uの生成処理が完了していない旨を報知する(「報知処理」の一例)。
【0029】
また、処理部7は、生成処理の開始時点において測定モード切換えスイッチによって選択されている測定モードについての補正データD0uが存在するとき(すなわち、選択されている測定モードについての補正データD0uの生成処理が完了しているとき)に、一例として、図4に示すように、「AdJ USEr」との補正値取得状態特定用メッセージMb1と、選択されている測定モードを示す測定モード特定用表示Ma(この例では、抵抗測定モードを示す「Ω」との記号)とを表示部4に表示させることにより、その測定モードに対応する補正データD0uの生成処理が完了している旨を報知する(「報知処理」の他の一例)。
【0030】
さらに、処理部7は、一例として、生成処理の開始時点において押圧されているRANGEスイッチの押圧が解除されることなく(押圧された状態が維持されたまま)、測定モード切換えスイッチが操作されて他の測定モードが選択された際に、新たに選択された測定モードについての補正データD0uが存在しないときには、「AdJ FACt」との補正値取得状態特定用メッセージMb0と、選択されている測定モードを示す測定モード特定用表示Maとを表示部4に表示させ(図示せず)、新たに選択された測定モードについての補正データD0uが存在するときには、一例として、図5に示すように、「AdJ USEr」との補正値取得状態特定用メッセージMb1と、選択されている測定モードを示す測定モード特定用表示Ma(この例では、交流電圧測定モードを示す「〜」および「V」との記号)とを表示部4に表示させることにより、その測定モードに対応する補正データD0uの生成処理が完了しているか否かを報知する(「報知処理」のさらに他の一例)。
【0031】
また、処理部7は、生成処理の開始時点において押圧されているRANGEスイッチの押圧が解除されたときに、その時点において測定モード切換えスイッチによって選択されている測定モードについての補正データD0uを生成する処理を実行し、生成した補正データD0uを記憶部5の補正データ記憶領域5bに記憶させる。この場合、補正データ記憶領域5bに補正データD0uが既に記憶されているときには、処理部7は、その補正データD0uを新たに生成した補正データD0uで上書きする。
【0032】
この測定装置1によって入力信号Siについての測定処理を実行する際には、まず、操作部3の測定モード切換えスイッチを操作して任意の測定モードを選択する。この際には、一例として、抵抗測定モードを選択する。次いで、図示しない電源スイッチを操作して電源を投入した後に、両テストリードを測定対象に接触させる。この際に、測定部2は、処理部7の制御に従って抵抗測定処理を実行し、図示しない定電流源から処理部7の制御下で切り換えられた電流値の測定用定電流を測定対象に供給すると共に、一例として、両テストリードの間の電圧値を示す測定データD1aを生成して処理部7に出力する。
【0033】
一方、処理部7は、測定部2から出力される測定データD1aの値(この例では、電圧値)を補正する。この際に、処理部7は、抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されているときには、この補正データD0uに基づいて測定データD1aの値を補正する。また、処理部7は、抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されていないときには、記憶部5(補正データ記憶領域5a)に記憶されている補正データD0fに基づいて測定データD1aの値を補正する。次いで、処理部7は、補正後の値と、測定部2から測定対象に供給させている測定用定電流の電流値とに基づいて測定対象の抵抗値を演算し、演算結果(抵抗値)を示す測定データD1bを生成して記憶部6に記憶させると共に、測定データD1bの値(抵抗値)を示す数値および記号を表示部4に表示させる(図示せず)。これにより、測定対象の抵抗値の測定が完了し、表示部4の表示を見た利用者が、測定対象の抵抗値を把握することが可能となる。
【0034】
この場合、この種の「測定装置」では、測定環境毎の測定誤差(例えば、測定場所が高温または低温であることで生じる測定誤差)や、装置の経年変化に起因する測定誤差に起因して、利用者が所望する測定確度範囲内の確度で測定結果を得るのが困難となることがある。したがって、測定環境の相違や、装置の経年変化に起因する確度の低下を回避する必要があるときには、工場出荷時に記憶部5(補正データ記憶領域5a)に記憶させられた汎用の補正データD0fに代えて、測定環境の相違や、装置の経年変化に応じた補正が可能な補正データD0uを用いて測定データD1aを補正するのが好ましい。
【0035】
具体的には、電源を遮断した状態から、RANGEスイッチを押圧したまま電源を投入する。この際に、処理部7は、補正データD0uの生成を開始する旨の「第2の操作」が行われたと判別し、動作プログラムの記述に従って、生成処理を開始する。具体的には、処理部7は、まず、測定モード切換えスイッチの操作によって選択されている測定モードを特定する。この際に、一例として、測定モード切換えスイッチによって抵抗測定モードが選択されているときに、処理部7は、抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されているか否かを判別し、判別結果に応じて補正値取得状態特定用メッセージMb0,Mb1のいずれかと、特定した測定モードを示す測定モード特定用表示Maとを表示部4に表示させる。
【0036】
具体的には、測定モード切換えスイッチによって抵抗測定モードが選択されている本例において、この抵抗測定モード用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されていないときに、処理部7は、対応する補正データD0uの生成処理が完了していないと判別し、図3に示すように、工場出荷時の補正データD0fだけが記憶されている旨を示す補正値取得状態特定用メッセージMb0と、現時点において選択されている測定モードを示す測定モード特定用表示Maとを表示部4に表示させる。これにより、補正値取得状態特定用メッセージMb0および測定モード特定用表示Maを見た利用者は、抵抗測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了していない旨を認識する。
【0037】
したがって、抵抗測定モード用の補正データD0uの生成を所望するときには、操作部3のRANGEスイッチの押圧を解除する(RANGEスイッチから手を離す)。この際に、処理部7は、動作プログラムの記述に従い、抵抗測定モードの6つの測定レンジの各々に関し、一例として、Ωレンジから、kΩレンジ、10kΩレンジ、100kΩレンジ、MΩレンジおよび10MΩレンジの順で測定環境や測定装置1の経年変化に応じた補正値を取得し、取得した補正値を、抵抗測定モードの各測定レンジ用の補正データD0uとして記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶させる。これにより、抵抗測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了する。
【0038】
一方、上記の「第2の操作」が行われた時点において測定モード切換えスイッチの操作によって選択されている測定モード(この例では、抵抗測定モード)用の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されているとき、すなわち、その測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了しているときに、処理部7は、図4に示すように、補正データD0uの生成処理が完了して、対応する補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されている旨を示す補正値取得状態特定用メッセージMb1と、現時点において選択されている測定モードを示す測定モード特定用表示Maとを表示部4に表示させる。これにより、補正値取得状態特定用メッセージMb1および測定モード特定用表示Maを見た利用者は、抵抗測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了している旨を認識する。
【0039】
この際に、既に生成されている補正データD0uに代えて、新たに補正データD0uを生成して記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶させることを希望する場合には、図4に示す補正値取得状態特定用メッセージMb1および測定モード特定用表示Maが表示部4に表示されている状態のまま、操作部3のRANGEスイッチの押圧を解除する(RANGEスイッチから手を離す)。この際に、処理部7は、前述した補正データD0uの生成処理時と同様にして抵抗測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uを生成して記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶させる(補正データD0uを上書きする)。これにより、抵抗測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了する。なお、上記の例において、図4の表示を見た利用者が、抵抗測定モード用の新たな補正データD0uの生成を希望しないときには、一例として、RANGEスイッチの押圧を維持したまま電源スイッチを操作して電源を遮断する。
【0040】
また、図4の表示を見て、抵抗測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了している旨を認識した利用者が、他の測定モード用の補正データD0uの生成を希望するときには、RANGEスイッチの押圧を維持したまま測定モード切換えスイッチを操作する。この際に、一例として、測定モード切換えスイッチの操作によって交流電圧測定モードが選択され、この交流電圧測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了しているとき(交流電圧測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されているとき)に、処理部7は、図5に示すように、交流電圧測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了して、対応する補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されている旨を示す補正値取得状態特定用メッセージMb1と、選択されている交流電圧測定モードを示す測定モード特定用表示Maとを表示部4に表示させる。
【0041】
さらに、図5の表示を見て、交流電圧測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了している旨を認識し、新たな補正データD0uの生成を必要としないと判断した利用者が、他の測定モード用の補正データD0uの生成を希望するときには、RANGEスイッチの押圧を維持したまま測定モード切換えスイッチを再び操作する。この際に、一例として、測定モード切換えスイッチの操作によって直流電圧測定モードが選択され、この直流電圧測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了していないとき(直流電圧測定モードの各測定レンジ毎の補正データD0uが記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶されていないとき)に、処理部7は、直流電圧測定モード用の補正データD0uの生成処理が完了しておらず、工場出荷時の補正データD0fだけが記憶部5(補正データ記憶領域5a)に記憶されている旨を示す補正値取得状態特定用メッセージMb0と、選択されている直流電圧測定モードを示す測定モード特定用表示Ma(図示せず)とを表示部4に表示させる。
【0042】
また、この直流電圧測定モードを含む他の測定モード用の補正データD0uの生成処理を不要と判断したときには、一例として、RANGEスイッチの押圧を維持したまま電源スイッチを操作して電源を遮断する。これにより、利用者が必要とする測定モードについての補正データD0uの生成処理だけが実行されて、その後に電源スイッチの操作によって再び電源が投入されたときに、補正データ記憶領域5bに記憶されている補正データD0uに基づいて測定データD1aを補正して測定データD1bを生成することが可能となる。
【0043】
このように、この測定装置1によれば、処理部7が、生成処理において、測定モード切換えスイッチの操作によって選択された測定モードを特定すると共に、特定した測定モードで測定される測定データD1aを補正するための補正データD0uを生成して記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶させることにより、補正値の生成処理の開始を指示したときに各測定モード毎の補正値のすべてを順次生成する必要がある従来の測定装置とは異なり、補正データD0uの生成を希望する測定モードを指定して、その測定モード用の補正データD0uだけを選択的に生成して記憶部5(補正データ記憶領域5b)に記憶させることができる。これにより、測定確度の向上を所望する測定モード以外の測定モード用の補正データD0uを生成しない分だけ、所望する測定モード用の補正データD0uを短時間で容易に取得することができる。また、所望の補正データD0uの生成に要する時間が充分に短いため、例えばバッテリー残量の不足に起因して補正データD0uの生成処理を再び実行する必要が生じる事態を好適に回避することができる。
【0044】
また、この測定装置1によれば、処理部7が、「報知処理」を実行して、対応する補正データD0uの生成処理が完了している測定モードと、対応する補正データD0uの生成処理が完了していない測定モードとを区別可能に補正値取得状態特定用メッセージMb0,Mb1を表示部4に表示して報知することにより、この種の装置の操作に不慣れな利用者であっても、選択した測定モード用の補正データD0uの生成処理を完了しているか否かを確実かつ容易に認識することができるため、補正データD0uの生成処理を既に完了している測定モードについての不要な生成処理が実行される事態を回避することができる。
【0045】
さらに、この測定装置1によれば、処理部7が、補正データD0uの生成処理において、測定モード切換えスイッチの操作によって選択された測定モードを特定したときに、特定した測定モードに対応する補正データD0uの生成処理が完了しているか否かを「報知処理」によって報知することにより、補正データD0uの生成処理を開始させた状態において任意の測定モードを選択する操作を行うだけで、選択された測定モード用の補正データD0uの生成処理を既に完了しているか否かを容易に認識することができる。
【0046】
また、この測定装置1によれば、2つの補正データ記憶領域5a,5bを備えて各測定モード毎に2種類の補正データD0f,D0uをそれぞれ記憶可能に記憶部5を構成したことにより、例えば、2つの「補正データ記憶領域」の一方(本例では、補正データ記憶領域5a)に工場出荷時の補正データD0fを記憶させておき、他の「補正データ記憶領域」(本例では、補正データ記憶領域5b)に利用者が任意のタイミングで生成させた補正データD0uを記憶させておくことで、利用者による補正データD0uの生成が完了している測定モードについても、工場出荷時の補正データD0fによって測定データD1aを補正する状態(工場出荷状態)に容易に復元させることができる。
【0047】
なお、「測定装置」の構成は、上記の測定装置1の構成に限定されない。例えば、「2つ以上の補正データ記憶領域」の一例として、補正データ記憶領域5a,5bの2つを記憶部5内に設けた構成を例に挙げて説明したが、「3つ以上の補正データ記憶領域」を記憶部5内に設けることもできる。この場合、例えば「3つの補正データ記憶領域」を記憶部5内に設けたときには、その1つに工場出荷時の補正データD0fを記憶させておき、他の2つの「補正データ記憶領域」に、利用者が任意のタイミングで生成させた補正データD0uをそれぞれ記憶させることで、測定環境等に応じて2種類の補正データD0uを使い分けることができると共に、工場出荷状態に復元させることもできる。
【0048】
また、「報知処理」の一例として、補正値取得状態特定用メッセージMb0,Mb1を測定モード特定用表示Maと共に表示部4に表示させる構成を例に挙げて説明したが、補正データD0uの生成処理が完了していないときには、補正値取得状態特定用メッセージMb0を測定モード特定用表示Maと共に表示部4に表示させ、補正データD0uの生成処理が完了しているときには、補正値取得状態特定用メッセージMb1を表示させることなく測定モード特定用表示Maだけを表示部4に表示させる構成や、補正データD0uの生成処理が完了していないときには、補正値取得状態特定用メッセージMb0を表示させることなく測定モード特定用表示Maだけを表示部4に表示させ、補正データD0uの生成処理が完了しているときには、補正値取得状態特定用メッセージMb1を測定モード特定用表示Maと共に表示部4に表示させる構成を採用することもできる(「報知処理」の他の一例)。
【0049】
さらに、「報知処理」の具体的な方法についても、上記の例のようなメッセージの表示に限定されず、補正データD0uの生成が完了しているか否かを示す専用のインジケータを設け、インジケータの点灯状態によって、補正データD0uの生成が完了しているか否かを特定可能に報知する構成や、ブザー音や音声メッセージの出力によって補正データD0uの生成が完了しているか否かを特定可能に報知する構成を採用することもできる。また、「生成処理」が開始された時点において選択されている測定モードについての補正値取得状態特定用メッセージMb0,Mb1が表示される例について説明したが、「報知処理」については、「生成処理」の一部として実行する形態に限定されず、例えば、動作条件の設定画面を表示させたときに補正データD0uの生成を完了している測定モードを特定可能な情報を表示する構成や、測定結果の表示画面の一部に補正データD0uの生成が完了している測定モード(または、補正データD0uの生成が完了していない測定モード)が選択されている旨を示す記号等を表示させる構成を採用することもできる。
【0050】
また、第2の操作についても、上記した例に限らず、専用に設けた操作スイッチの操作、他の操作スイッチの任意の組み合わせによる操作、および複数の操作スイッチの予め決められた順序での操作などで行うこともできる。
【符号の説明】
【0051】
1 測定装置
2 測定部
3 操作部
4 表示部
5,6 記憶部
5a,5b 補正データ記憶領域
7 処理部
D0f,D0u 補正データ
D1a,D1b 測定データ
Ma 測定モード特定用表示
Mb0,Mb1 補正値取得状態特定用メッセージ
Si 入力信号
図1
図2
図3
図4
図5