(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143288
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】煮込みソースの製造方法、煮込みソース、レトルト煮込みソース用風味改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/20 20160101AFI20170529BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20170529BHJP
【FI】
A23L27/20 G
A23L23/00
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-136997(P2013-136997)
(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公開番号】特開2015-8687(P2015-8687A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086689
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100157772
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 武孝
(74)【代理人】
【識別番号】100182040
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 英世
(72)【発明者】
【氏名】大野 英理子
(72)【発明者】
【氏名】吉鷹 加納
(72)【発明者】
【氏名】井出 勝敏
【審査官】
西 賢二
(56)【参考文献】
【文献】
ゲンチオオリゴ糖(3),食品と科学 41巻3号,岸 真之輔 株式会社食品と科学社,第41巻
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 23/00−25/00;35/00
A23L 27/00−27/40;27/60
A23L 5/00− 5/30;29/00−29/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/WPIDS/AGRICOLA/CROPU(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲンチオオリゴ糖を有効成分とする煮込みソース用のオニオンソテー代替剤。
【請求項2】
煮込みソースが、カレー、ホワイトシチュー、ビーフシチュー、ハヤシソース、ミートソース、トマトソースから選ばれる1種である請求項1記載のオニオンソテー代替剤。
【請求項3】
カレー、ホワイトシチュー、ビーフシチュー、ハヤシソース、ミートソース、トマトソースから選ばれる1種の煮込みソースに、ゲンチオオリゴ糖を煮込みソースの質量に対して0.001〜0.15質量%添加することを特徴とする煮込みソースの製造方法。
【請求項4】
煮込みソースに、ゲンチオオリゴ糖を煮込みソースの質量に対して0.001〜0.15質量%添加し、更に、レトルト処理を行う煮込みソースの製造方法。
【請求項5】
ゲンチオオリゴ糖を含有することを特徴とするレトルト煮込みソース用風味改善剤。
【請求項6】
前記ゲンチオオリゴ糖が、ゲンチオビオースである請求項5記載のレトルト煮込みソース用風味改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煮込みソースの製造方法、煮込みソース、及びレトルト煮込みソース用風味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
カレーやシチューに代表される「煮込みソース」は、玉ねぎ・ニンジン等の野菜、肉類等の具材を必要に応じて炒め、小麦粉等の穀粉、油脂、調味料などと混合し、長時間の煮込みなど、十分な加熱調理を行うことにより製造される。
【0003】
また、煮込みソースの製造工程において、スライス又はみじん切りした玉ねぎを飴色になるまで焙煎することにより得られるオニオンソテーを添加して、独特のコク味を付与し、厚みのある好ましい風味を有した煮込みソースを製造することが行われている。
【0004】
しかしながら、オニオンソテーは、変質しやすいため保存安定性が非常に悪いという問題があった。このため、レトルト食品等に添加した場合、風味が経時的に損なわれ易く、風味の安定性が課題となっていた。さらに、オニオンソテーの製造には、時間や手間を要する問題があった。
【0005】
一方、カレーやシチュー等の煮込みソースに、各種オリゴ糖を添加する技術が開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ニゲロオリゴ糖を有効成分として含有してなる食品の煮崩れ防止剤の存在下で、煮崩れの顕著な食品を加熱または加圧熱処理することで、肉やジャガイモなどの煮崩れがほとんどなく、弾力に富んだ歯こたえのある食感を有するレトルトカレーなどを製造できることが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、マッシュポテトを5〜20重量%と、焙煎小麦粉を5〜25重量%と、トレハロースとを含有する即席食品用粉末が開示されている。この即席食品用粉末は、喫食者がお湯を注ぎ、攪拌混合するだけで、手作りでカレー等の調理食品類を煮込んで調製したときと同様の食感(粘度、舌へのザラツキ等)が得られると共に、油脂含有量が低い場合であっても濃厚感が充実し、かつスパイス等の原料本来の香り立ち等の風味が良好であり、更にはダマにならず分散・溶解性にも優れたカレー等の調理食品類を簡単に得ることができると記載されている。
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に開示された方法であっても、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を煮込みソースに付与することはできなかった。
【0009】
また、特許文献3には、β−グルコオリゴ糖を含有させることを特徴とする飲食品の製造方法が開示されている。飲食品の一例として、カレールウ、シチューの素等が挙げられている。
【0010】
しかしながら、特許文献3は、β−グルコオリゴ糖を含有させる飲食品として、カレールウ、シチューの素以外にも種々の飲食品が挙げられており、カレールウ、シチューの素は、飲食品の一例として例示されているにすぎない。また、カレールウやシチューの素にβ−グルコオリゴ糖を添加した実施例はなく、カレールウやシチューの素にβ−グルコオリゴ糖を添加することで、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を付与することができることについての記載や示唆は無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平11−178514号公報
【特許文献2】特開2003−250502号公報
【特許文献3】特開平3−83557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
よって、本発明の目的は、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を有する煮込みソースの製造方法、煮込みソース、レトルト煮込みソース用風味改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
鋭意検討を重ねた結果、カレーやシチュー等の煮込みソースに、ゲンチオオリゴ糖を添加することで、オニオンソテー特有の複雑な味(甘味・旨み・コク・苦味)を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の煮込みソースの製造方法は、煮込みソースに、ゲンチオオリゴ糖を煮込みソースの質量に対して0.001〜0.15質量%添加することを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記ゲンチオオリゴ糖が、ゲンチオビオースであることが好ましい。
【0016】
本発明において、煮込みソースが、カレー、ホワイトシチュー、ビーフシチュー、ハヤシソース、ミートソース、トマトソースから選ばれる1種であることが好ましい。
【0017】
本発明において、更に、レトルト処理を行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明の煮込みソースは、上記方法で製造されたものである。
【0019】
また、本発明のレトルト煮込みソース用風味改善剤は、ゲンチオオリゴ糖を含有することを特徴とする。前記ゲンチオオリゴ糖は、ゲンチオビオースであることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の煮込みソースの製造方法によれば、煮込みソースに、ゲンチオオリゴ糖を煮込みソースの質量に対して0.001〜0.15質量%添加することで、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を有する煮込みソースを得ることができる。
【0021】
また、オニオンソテーは保存安定性が悪く、オニオンソテーを添加した煮込みソースをレトルト処理し、長期間保管すると、オニオンソテーの風味が損なわれ易かったが、ゲンチオオリゴ糖は保存安定性に優れ、長期間保管しても風味が劣化し難いので、煮込みソースに対してレトルト処理を施したり、レトルト処理を施した煮込みソースを長期間保管した後も、煮込みソースは、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を有している。
【0022】
また、本発明のレトルト煮込みソース用風味改善剤は、ゲンチオオリゴ糖を含有するので、保存性に優れ、風味の劣化し難い煮込みソースを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明において、煮込みソースとは、穀粉類、油脂、具材、調味料等のその他原料を混合し、煮込むことで得られる粘性を有した食品のことである。穀粉類としては、小麦粉、澱粉等が挙げられる。油脂としては、特に限定は無く、食用に用いられている液体油脂、固形油脂、半固形油脂を用いることができる。具材としては、畜肉、家禽肉、魚肉、魚介類、野菜、きのこ、果実等が挙げられる。畜肉、家禽肉、野菜等は、油脂で炒めたものを用いても良い。その他としては、調味料、香辛料、乳製品、糖質、乳化剤、酵素類、蛋白質、ポリペプチド、アミノ酸、有機酸類、甘味料、増粘多糖類、食物繊維、無機塩類、酸化剤、還元剤、保存料、着色料、香料等が挙げられる。煮込みソースの具体例としては、カレー、ホワイトシチュー、ビーフシチュー、ハヤシソース、ミートソース、トマトソースが挙げられる。なかでも、風味改善効果が顕著であることから、カレー、ホワイトシチューが好ましく、カレーが特に好ましい。
【0024】
本発明の煮込みソースの製造方法は、煮込みソースに、ゲンチオオリゴ糖を煮込みソースの質量に対して0.001〜0.15質量%添加することを特徴とする。以下、ゲンチオオリゴ糖を含有させる前の煮込みソースを「原料煮込みソース」という。
【0025】
本発明において、原料煮込みソースの様態には特に制限は無い。例えば、固形状、粒状、粉末状、ペースト状、液状等のルウ形態のものや、調理済みのレトルト形態、缶詰め形態、チルド形態、冷凍形態のものでも良い。
【0026】
ゲンチオオリゴ糖は、グルコースがβ−1,6−グルコシド結合したβ−グルコオリゴ糖であり、例えば重合度2のゲンチオビオース、重合度3のゲンチオトリオース、重合度4のゲンチオテトラオース等が挙げられる。ゲンチオオリゴ糖の中でもゲンチオビオースが特に有効である。
【0027】
ゲンチオオリゴ糖は、特開平1−222779号や、特開平2−219584号等に記載された酵素法や、ゲンチアノースの酸分解、プスツランやラミナランなどの加水分解物から調製する方法などにより製造できる。製造効率及びコストの観点から、高濃度グルコース溶液に、微生物起源のβ−グルコシダーゼを作用させることで製造するのが好ましい。ゲンチオオリゴ糖は、純品でもよく、その他糖質との混合物であるゲンチオオリゴ糖含有糖質であってもよい。市販のゲンチオオリゴ糖を使用してもよい。例えば、ゲンチオオリゴ糖を含有するシラップ状のゲンチオオリゴ糖含有糖質として、「日食ゲントース#45(商品名)」が日本食品化工株式会社より販売されており、本発明において好適に使用できる。
【0028】
本発明において、原料煮込みソースへのゲンチオオリゴ糖の添加量は、原料煮込みソースの質量に対し0.001〜0.15質量%であり、0.002〜0.1質量%が好ましく、0.01〜0.06質量%がより好ましく、0.02〜0.045質量%が特に好ましい。最も好ましくは、ゲンチオビオースを上記範囲で添加することである。ゲンチオオリゴ糖を原料煮込みソースに添加することにより、原料煮込みソースの風味を改善することができる。より詳しくは、コク味や厚み、旨みを増強することで風味を改善することができる。また、オニオンソテー独特のコク・旨味・苦味に類似した風味を付与できるため、オニオンソテーの代替として使用でき、オニオンソテーの一部または全部と置換して、オニオンソテーの使用量を削減することができる。さらに、煮込みソースがカレーの場合においては、スパイシー感やフルーツ感を向上させることもできる。また、煮込みソースがシチューの場合においては、化学調味料の嫌味を低減することで風味を向上させることもできる。そして、ゲンチオオリゴ糖の添加量を0.001質量%以上とすることで風味改善効果をより顕著に得ることができる。ゲンチオオリゴ糖の添加量を0.15質量%以下とすることでゲンチオオリゴ糖由来の苦味の悪影響を最小限に抑えより顕著に風味改善効果を得る事ができる。
【0029】
本発明の煮込みソースの製造方法は、原料煮込みソースにゲンチオオリゴ糖を添加する以外は特に制限は無く、常法により製造することができる。食品工場や厨房・家庭で一般的に用いられている製造方法であれば特に制限は無く、各種食材を炒めた後に煮込んでも良く、各種食材を炒めずに直接煮込んでも良い。煮込む手段も特に制限は無く、鍋や釜で加熱することで煮込んでも良く、レトルト処理時に加熱することで煮込んでも良い。また、ゲンチオオリゴ糖の添加時期は、特に限定は無い。原料煮込みソースの製造時に添加しても良く、原料煮込みソースを製造した後、添加しても良い。
【0030】
本発明の煮込みソースの製造方法は、原料煮込みソースにゲンチオオリゴ糖を添加した後、更にレトルト処理を行っても良い。レトルト処理を行うことで、保存性を高めることができる。また、オニオンソテーは保存安定性が悪く、オニオンソテーを添加した煮込みソースをレトルト処理し、長期間保管すると、オニオンソテーの風味が損なわれ易かったが、ゲンチオオリゴ糖は保存安定性に優れ、長期間保管しても風味が劣化し難いので、レトルト処理した煮込みソースを、長期間保管した後も、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を有している。このため、レトルト処理することで、風味が良く、保存性に優れた煮込みソースを得ることができる。
【0031】
なお、本発明において、レトルト処理とは、密閉容器に封入し、110〜150℃で、1秒〜120分間加熱処理を行うことを意味する。
【0032】
次に、本発明のレトルト煮込みソース用風味改善剤について説明する。
【0033】
本発明のレトルト煮込みソース用風味改善剤は、ゲンチオオリゴ糖を含有する。ゲンチオオリゴ糖の含有量は、0.1〜100質量%が好ましく、10〜100質量%がより好ましい。また、ゲンチオオリゴ糖は、ゲンチオビオースを含有するものが好ましく、ゲンチオビオースを、0.01〜100質量%含有することがより好ましく、1〜100質量%含有するものが特に好ましい。上述したように、ゲンチオオリゴ糖を煮込みソースに添加することで、オニオンソテーを添加した場合のような、独特のコク味を有する煮込みソースを得ることができる。そして、ゲンチオオリゴ糖は保存安定性に優れ、長期間保管しても風味が劣化し難いので、風味が良く、保存性に優れたレトルト煮込みソースを得ることができる。
【0034】
なお、本発明において、レトルト煮込みソースとは、レトルト処理が施される煮込みソースのことを意味する。
【0035】
本発明のレトルト煮込みソース用風味改善剤は、更に、オニオンソテーを0.1〜99質量%含有することが好ましく、0.3〜20質量%含有することがより好ましい。オニオンソテーを更に含有することで、煮込みソースの風味をより良好にできる。なお、本発明において、オニオンソテーとは、スライス又はみじん切りした玉ねぎを油脂で炒めて得られるもののことを意味する。
【実施例】
【0036】
(試験例1) <カレーの風味改善>
市販のレトルトカレー(中辛)に、ゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を、ゲンチオビオース添加量が表1の通りとなるよう添加した後、缶に真空包装し、レトルト処理(オートクレーブにて124℃20分間の加熱殺菌処理)を行うことで実施例1−1〜実施例1−5を調製した。また、市販のレトルトカレーそのものを比較例1−1とした。また、ゲンチオオリゴ糖含有糖質の代わりに、オニオンソテー(商品名「カレー屋さんのかくし味 炒め玉ねぎ」、エスビー食品社製)を表1の通り添加した以外は、実施例と同様にして、比較例1−2を調製した。なお、使用したレトルトカレーはオニオンソテー未添加のものであった。
【0037】
得られたレトルトカレーに関し、「コク・味の厚み」および「スパイス感」を、比較例1−1を0として、7名のパネラーにより、−10点〜10点の21段階で官能評価し、その平均値を求めた。結果を表1に纏めて記す。なお、「コク・味の厚み」「スパイス感」共に、点数が高い程良好な評価となる。
【0038】
【表1】
【0039】
表1に示した通り、カレーにゲンチオオリゴ糖を添加することでオニオンソテー様のコク・味の厚みやスパイス感を付与して風味を改善できることがわかった。また、ゲンチオオリゴ糖を添加した実施例1−1〜実施例1−5は、ゲンチオオリゴ糖及びオニオンソテーを添加していない比較例1−1と比べてフルーツ感が強く、ゲンチオオリゴ糖の添加によりカレーにフルーツ感を付与できることもわかった。そして、ゲンチオオリゴ糖を添加した試料の中でも、実施例1−1〜実施例1−4がコク・味の厚みとスパイス感共に改善効果が顕著であり、特に実施例1−2〜実施例1−3がコク・味の厚みとスパイス感共に格別顕著で最も風味に優れたカレーであった。
【0040】
(試験例2) <カレーの風味改善>
表2の配合1(玉ねぎ無し)又は配合2(玉ねぎ有り)で常法に沿ってビーフカレーを作り、表3に示した通り各糖類を添加混合した試料をそれぞれ官能評価した。なお、実施例2−1および実施例2−2は、ゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を、ゲンチオビオースの添加量が0.021質量%となるよう添加した。比較例2−2〜比較例2−5は、添加糖類の固形分量が、実施例2−1および実施例2−2と一致するようにそれぞれの糖類を添加した。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
得られたカレーの官能評価は次の通りであった。比較例2−1はスパイス感が少し有った。実施例2−1は比較例2−1と比べてスパイシー感が良好で旨みもあった。比較例2−2は少し甘味があり比較例2−1よりスパイス感に劣った。比較例2−3は少し甘味があり比較例2−1と同等のスパイス感であった。比較例2−4はピリピリした感じが舌に残った。比較例2−5は味が丸くなりスパイス感は低かった。比較例2−6は玉ねぎの甘味が出ていた。実施例2−2は比較例2−6のカレーにさらにコク味と旨みが付与されていた。
【0044】
また、上記各試料を121℃15分のレトルト処理を行ったものをそれぞれ官能評価した。その結果は以下の通りであった。比較例2−1は、レトルト処理前よりもスパイス感が弱まっていた。実施例2−1は旨みがあり、スパイス感が残っており美味しかった。比較例2−2はスパイス感が無く角が立つ味であった。比較例2−3は少し甘味が出るがスパイス感は無かった。比較例2−4はレトルト前に比べピリピリ感は弱まるがスパイス感は無かった。比較例2−5は味が丸くスパイス感は無かった。比較例2−6は玉ねぎの甘味とコク味が出ていた。実施例2−2は比較例2−6と比べ玉ねぎの甘味と旨みが更に強まっており美味しかった。
【0045】
更に、レトルト処理した上記各試料を冷蔵庫で一日保存したものをそれぞれ官能評価した。その結果は以下の通りであった。比較例2−1はスパイス感が弱かった。実施例2−1はコク味とスパイス感共にあり、良好な味だった。比較例2−2はあっさりしていて味に深みが無かった。比較例2−3はあまりピンとくる味が無かった。比較例2−4は味が丸くなるが焦げた味がした。比較例2−5は味が丸くなり、スパイス感はあまり感じられなかった。比較例2−6は玉ねぎの甘味が出ていた。実施例2−2は比較例2−6に旨みが追加され、スパイス感も残っており美味しかった。
【0046】
以上の試験結果より、玉ねぎ(オニオンソテー)を添加しない配合1のカレーにおいて、ゲンチオオリゴ糖を添加することにより、オニオンソテー様のコク味・旨み・スパイス感を付与し、風味改善効果を得られること、及び、レトルト処理や冷蔵保存しても風味改善効果が維持されることが確認された。
また、玉ねぎ(オニオンソテー)を添加した配合2のカレーにおいては、ゲンチオオリゴ糖を添加することにより、オニオンソテー様のコク味・旨み・スパイス感をより強化できることが確認された。
【0047】
(試験例3) <ホワイトシチューの風味改善>
市販のレトルトホワイトシチューにゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を、ゲンチオビオース添加量が表4の通りとなるよう添加混合した後、冷蔵保存し、翌日缶に150gずつ充填しレトルト処理(オートクレーブにて124℃20分間の加熱殺菌処理)を行うことで実施例3−1〜実施例3−4を調製した。また、市販のレトルトホワイトシチューそのものを比較例3−1とした。また、ゲンチオオリゴ糖含有糖質の代わりに、オニオンソテー(商品名「カレー屋さんのかくし味 炒め玉ねぎ」、エスビー食品社製)を表4の通り添加した以外は、実施例と同様にして、比較例3−2を調製した。なお、使用したレトルトホワイトシチューはオニオンソテー未添加のものであった。得られたレトルトホワイトシチューに関し、「コク・ボディ感」および「化学調味料の嫌味の強さ」を、比較例3−1を0として7名のパネラーにより−10点〜10点の21段階で官能評価し、その平均値を表4に纏めた。なお、「コク・味の厚み」は点数が高い程良好な評価であり、「化学調味料の嫌味の強さ」は点数が低い程良好な評価となる。
【0048】
【表4】
【0049】
表4に示した通り、ホワイトシチューにゲンチオオリゴ糖を添加することでオニオンソテー様のコク味・ボディ感を付与して風味を改善できることがわかった。また、ゲンチオオリゴ糖を添加した実施例3−1〜実施例3−4は、ゲンチオオリゴ糖及びオニオンソテーを添加していない比較例3−1、オニオンソテーを添加した比較例3−2と比べて化学調味料の嫌味が弱く、ゲンチオオリゴ糖の添加によりホワイトシチューにコク味・ボディ感を付与できるだけでなく化学調味料の嫌味を低減できることもわかった。ゲンチオオリゴ糖を添加した試料の中でも実施例3−2〜実施例3−3がコク味・ボディ感の付与効果および化学調味料の嫌味低減効果が顕著であり最も風味に優れたホワイトシチューであった。一方で、オニオンソテーを添加した比較例3−2は、オニオンソテー未添加の比較例3−1と比べ化学調味料の嫌味が強かった。
【0050】
(試験例4) <ビーフシチューの風味改善>
市販のレトルトビーフシチューにゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名:「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を、ゲンチオビオース添加量が表5の通りとなるよう添加混合した後冷蔵保存し、翌日缶に150gずつ充填しレトルト処理(オートクレーブにて124℃20分間の加熱殺菌処理)を行うことで実施例4−1〜実施例4−5を調製した。また、市販のレトルトビーフシチューそのものを比較例4−1とした。また、ゲンチオオリゴ糖含有糖質の代わりに、オニオンソテー(商品名「カレー屋さんのかくし味 炒め玉ねぎ」、エスビー食品社製)を表5の通り添加した以外は、実施例と同様にして、比較例4−2を調製した。得られたレトルトビーフシチューに関し、「味の厚み」を、比較区4−1を0として、2名のパネラーにより−10点〜10点の21段階で官能評価し、その平均値を表5に纏めた。
【0051】
【表5】
【0052】
表5に示した通り、ビーフシチューにゲンチオオリゴ糖を添加することで味の厚みを付与して風味を改善できることがわかった。また、実施例4−1〜実施例4−5は、味の厚みと共にコクも付与されていた。なお、ゲンチオオリゴ糖を添加した試料の中で、実施例4−3〜実施例4−5が味の厚みの付与効果が顕著であったが、実施例4−4および実施例4−5はコク味の付与効果が他の実施例に比べ劣っていた。実施例4−2および実施例4−3は、厚み及びコク味のバランスが良く、最も評価の高いビーフシチューであった。
【0053】
(試験例5) <トマトソースの風味改善>
市販のトマトソースにゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名:「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を、ゲンチオビオース含量がそれぞれ0.021質量%および0.042%となるように添加混合することで実施例5−1および実施例5−2を調製した。また、市販のトマトソースそのものを比較例5−1とした。ゲンチオオリゴ糖を添加した実施例5−1,5−2のトマトソースは、ゲンチオオリゴ糖非添加区の比較例5−1と比べて、コク・旨みが増しており、良好な風味を有していた。
【0054】
(試験例6) <ハヤシソースの風味改善>
市販のハヤシソースにゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名:「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)を、ゲンチオビオース含量がそれぞれ0.021質量%および0.042%となるように添加混合することで実施例6−1および実施例6−2を調製した。また、市販のハヤシソースそのものを比較例6−1とした。ゲンチオオリゴ糖を添加した実施例6−1,6−2のハヤシソースは、ゲンチオオリゴ糖非添加区の比較例6−1と比べて、コクや味の厚みが増し、塩味も増しており、良好な風味を有していた。
【0055】
(試験例7) <カレーの風味改善>
市販のレトルトカレー(中辛、オニオンソテー未添加)に、ゲンチオビオース(結晶)をそれぞれ0.021質量%および0.042%となるように添加混合することで実施例7−1および実施例7−2を調製した。また、市販のレトルトカレーそのものを比較例7−1とした。さらに、ゲンチオビオース(結晶)を0.021質量%およびグルコースを0.175質量%添加混合することで実施例7−3を調製した。なお、ゲンチオビオース(結晶)は、ゲンチオオリゴ糖含有糖質(商品名「日食ゲントース#45」、日本食品化工社製)の二糖画分を分画し、結晶化させることで調製した。
【0056】
ゲンチオビオースを添加した実施例7−1、7−2のレトルトカレーは、ゲンチオビオース非添加区の比較例7−1と比べて先味の厚みが向上しており、さらにスパイス感も強まっていた。また、ゲンチオビオースおよびグルコースを添加した実施例7−3のレトルトカレーは、実施例7−1、7−2と比べて甘味が向上するとともに、味にまとまりが出てバランスが良くなっていた。