特許第6143302号(P6143302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143302テールゲートにおける落下防止ストッパの安全装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143302
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】テールゲートにおける落下防止ストッパの安全装置
(51)【国際特許分類】
   B60P 1/44 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   B60P1/44 C
   B60P1/44 J
   B60P1/44 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-130494(P2014-130494)
(22)【出願日】2014年6月25日
(65)【公開番号】特開2016-7974(P2016-7974A)
(43)【公開日】2016年1月18日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(72)【発明者】
【氏名】石田 隆大
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−238571(JP,A)
【文献】 特開2011−000916(JP,A)
【文献】 特開2011−213168(JP,A)
【文献】 特開2008−286306(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0104775(US,A1)
【文献】 特許第3886308(JP,B2)
【文献】 特開2012−106675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台を有する車両に装備され、昇降装置により地上面と前記荷台床面との間で昇降される貨物積載用のフロアプレートの先端に設置される落下防止ストッパであって、
前記昇降装置は、前記フロアプレートを水平状態に保ちながら昇降させる平行リンク機構を備え、前記平行リンク機構が、前記フロアプレートに連結されるアーム部材を有し、
前記落下防止ストッパは、起立位置と平坦位置とに切り換え得るように構成されており、さらに、
電気的なアクチュエータにより作動され、前記落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止する阻止部材が設けられるとともに、前記平行リンク機構のアーム部材の位置を検知する検知手段が設けられており、
前記アクチュエータは、前記フロアプレートが所定高さ以上のときは前記落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止するよう、前記検知手段の出力に応じて制御されることを特徴とする落下防止ストッパ。
【請求項2】
前記落下防止ストッパは、前記フロアプレートの先端に形成された凹部内に枢着され、起立ばねにより起立位置に付勢されるとともに、平坦位置では前記凹部内に収容されるよう構成されており、
前記落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止するときは、前記阻止部材が前記凹部内に挿入される請求項1に記載の落下防止ストッパ。
【請求項3】
前記検知手段が、前記平行リンク機構のアーム部材の位置を磁気的に検出する近接センサである請求項1又は請求項2に記載の落下防止ストッパ。
【請求項4】
前記フロアプレートは、前記平行リンク機構のアーム部材に回動可能に枢着されており、不使用時には、前記荷台の後端に立て掛けて格納される請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の落下防止ストッパ。
【請求項5】
前記昇降装置には、前記平行リンク機構のアーム部材に回動可能に枢着された前記フロアプレートが、前記荷台床面の近傍位置において傾斜するよう切り換える止め部材が設置されており、
前記止め部材が前記フロアプレートの傾斜する位置に切り換えられたときは、前記阻止部材の作動を解除する請求項4に記載の落下防止ストッパ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の荷台に貨物の積み降ろしを行うため、トラック等の後部又は側部に装備されるテールゲート(荷受け台昇降装置)において、貨物を載置するフロアプレート(荷受け台)に設けられる落下防止ストッパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
貨物輸送用の車両であるトラックの荷台は、トラックの全長に亘って延びるシャシフレーム上に架装され、荷台床面と地上面との間には相当の高低差が存在する。これが貨物の積み降ろしに際して支障となるため、フロアプレートに貨物を載せ、油圧等の動力を用いて地上面と荷台床面との間で昇降させるテールゲートが良く知られている。テールゲートは、トラックの後端部分に装着されていて、フロアプレート上の貨物等の落下を防止するよう、フロアプレートを水平状態に保ちつつ昇降させる平行リンク機構を備えている。テールゲートを車両の側面に設置する場合もあり、また、フロアプレートを垂直な支柱にスライド可能に支持し、地面と荷台床面との間で水平のまま上下させる昇降装置もある。
【0003】
テールゲートにより荷台の貨物の積み降ろしを行う場合は、車輪(キャスタ)付きカーゴ台車を使用し、これをフロアプレートに載せて貨物の荷役作業を行うことが多い。テールゲートのフロアプレートの先端部分には、昇降するフロアプレート上に載せた車輪付きカーゴ台車の車輪止めとなるような落下防止ストッパが装着されており、ロールストッパ(又はキャスタストッパ)と呼ばれている。
【0004】
フロアプレートを有するテールゲート及びフロアプレートの先端部分に設置される落下防止ストッパについて図8図9により説明する。
テールゲートとしては、不使用時に、フロアプレートを荷台の後端に立て掛けた状態で格納するものと、フロアプレートを折り畳んだ状態で荷台の後方部分の床下に格納するものとが広く用いられている。図8のテールゲートは、車両の床下に格納されるテールゲートであって、折り畳み式のフロアプレート1は、ダブルヒンジで結合されたメインプレート11とサブプレート12とを有し、メインプレート11の根元側の端部が平行リンク機構2に連結される。フロアプレート1及び平行リンク機構2は、支持基部3により車体への取り付け部4に装着される。このテールゲートの場合、取り付け部4はガイドレールであり、支持基部3は、格納時には前方向にスライド可能である。
【0005】
貨物の積み降ろしのためテールゲートを使用するときは、図8(a)に示すように、フロアプレート1を展開してメインプレート11とサブプレート12の上面とが連続した平面をなすようにする。ここで、平行リンク機構2に装備された図示しない昇降用油圧シリンダを伸縮させると、フロアプレート1は、着地した位置(図8(a)の実線)から荷台の床面に等高となる位置(図8(a)の2点鎖線)まで、水平状態を保ちながら昇降することとなる。また、着地した位置では、メインプレート11を回動傾斜(チルト)して、図8(b)に示すように、サブプレート12の先端を接地することができる。
【0006】
車輪付きカーゴ台車を用いて貨物を荷台に積み込むには、サブプレート12の先端を接地した状態で、カーゴ台車DLをフロアプレート1に載せる。サブプレート12の先端部には、起立位置と平坦位置との切り換えが可能な落下防止ストッパ5が装着されており、カーゴ台車DLを載置したときは、図のように落下防止ストッパ5を起立位置として、カーゴ台車DLの車輪に突き当てる。そして、昇降用油圧シリンダにより平行リンク機構2を作動して荷台の床面の高さに上昇させる。この間、落下防止ストッパ5は起立位置を保ち、カーゴ台車DLの移動や落下を防止する。
逆に、車両の荷台から貨物を降ろすときには、起立位置の落下防止ストッパ5にカーゴ台車DLの車輪を当接した状態で、フロアプレート1を下降して接地させる。次いで、フロアプレート1をチルトして図8(b)の状態となると、落下防止ストッパ5を足で踏むことにより、平坦位置に切り換えてカーゴ台車DLを地上に移動する。安全が確保される場合には、フロアプレート1が十分に下降して接地した時点(図8(a)の実線位置)で、落下防止ストッパ5を平坦位置に切り換えてもよい。なお、特許第3886308号公報には、フロアプレートを垂直な支柱に支持する昇降装置において、フロアプレートの接地まで落下防止ストッパを起立位置に保持する機械的な安全装置が示されている。
【0007】
テールゲート用の落下防止ストッパの一例を図9により説明する。図9(a)は、メインプレート11とサブプレート12を展開した状態の斜視図であり、図9(b)(c)は、落下防止ストッパの位置を切り換えた状態のA−A断面図である。
サブプレート12の先端部には、横方向に略全幅に亘って延びる落下防止ストッパ5が設置してあり、荷役作業の障害とならないような両側端部には、落下防止ストッパ5を平坦位置と起立位置とに切り換える切り換え機構5Cが置かれている。落下防止ストッパ5は、図9(b)に示す平坦位置では、サブプレート12の先端の凹部5Rに収容され、その表面がサブプレート12の上面と平坦な面を形成する。また、落下防止ストッパ5は、5Oを中心として回動可能となるよう凹部5Rの端部に枢着されるとともに、線形ばねである起立ばね5Sにより図9(c)に示す起立位置に向けて付勢されている。
【0008】
落下防止ストッパ5の表面には係止部材5Xが固着されており、その後端部と対向する位置に、ベース部5Bに枢着されたロック部材5Yが設けられる。ロック部材5Yの先端を上方に回動すると、係止部材5Xの後端との当接が外れ、落下防止ストッパ5が起立ばね5Sにより起立位置となって車輪止めの機能が生じる。ロック部材5Yを予め前方に倒して落下防止ストッパ5を踏み込むと、図9(c)の2点鎖線に示すように、落下防止ストッパ5の係止部材5Xにロック部材5Yが自動的に当接し、落下防止ストッパ5が平坦位置にロックされる。こうした落下防止ストッパは、例えば、本出願人の先行発明に係る特開2012−106675号公報に開示されている。
【0009】
図9の落下防止ストッパは、床下格納式のテールゲートにおける折り畳み式フロアプレートの先端に設置されたものであるが、同様な落下防止ストッパは、フロアプレートを荷台の後端に立て掛けた状態で格納する立て掛け式のテールゲートにも用いられる。ただ、立て掛け式のテールゲートのフロアプレートは一般的に1枚の板であって、格納時には、平行リンク機構の上側の連結点を中心に回動可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3886308号公報
【特許文献2】特開2012−106675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
テールゲートに設置される落下防止ストッパは、貨物の積み降ろしを行う際に、作業者により操作されて起立位置と平坦位置とが切り換えられる。作業者は、通常、カーゴ台車を手で支えながら、落下防止ストッパの位置を足により操作するけれども、フロアプレートが未だ高い位置にある状態で誤って落下防止ストッパを踏み込むと、落下防止ストッパが平坦位置となってカーゴ台車が落下し、台車中の貨物の損壊や周囲の設備等の損傷を引き起こす恐れがある。ことに、作業者が無意識に落下防止ストッパを踏み込み、これが平坦位置でロックされたことに気付かないようなときは、より危険性が増すこととなる。
【0012】
特許文献1には、垂直な支柱に支持されるフロアプレートを備えた昇降装置において、フロアプレートが着地するまでは、落下防止ストッパを踏み込んでも平坦位置に切り換えられないように保持する機械的な安全装置が記載されている。しかし、この安全装置は、フロアプレートの着地をレバーにより機械的に検出して落下防止ストッパの解除を可能とするもので、フロアプレートが十分に低い位置に到達したとしても、未だ接地しない状態では落下防止ストッパを解除してカーゴ台車を通過させることができない。そのため、例えば、地上面に対して少し高い個所にフロアプレートを掛け渡して貨物の積み降ろしを行うような場合には、カーゴ台車の使用が不可能となる。
本発明の課題は、フロアプレートの地上高が高いときには落下防止ストッパを解除(平坦位置へ切り換え)させない安全装置を設けて、カーゴ台車の落下による危険を防止し、しかも、落下防止ストッパを解除できる高さを容易に調整可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題に鑑み、本発明は、平行リンク機構を備えた昇降装置により昇降されるフロアプレートにおいて、その先端に設置した落下防止ストッパが解除されるのを防止する阻止手段を設けて電気的アクチュエータに連結し、これを平行リンク機構に取り付けた検知手段により制御するようにしたものである。すなわち、本発明は、
「荷台を有する車両に装備され、昇降装置により地上面と前記荷台床面との間で昇降される貨物積載用のフロアプレートの先端に設置される落下防止ストッパであって、
前記昇降装置は、前記フロアプレートを水平状態に保ちながら昇降させる平行リンク機構を備え、前記平行リンク機構が、前記フロアプレートに連結されるアーム部材を有し、
前記落下防止ストッパは、起立位置と平坦位置とに切り換え得るように構成されており、さらに、
電気的なアクチュエータにより作動され、前記落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止する阻止部材が設けられるとともに、前記平行リンク機構のアーム部材の位置を検知する検知手段が設けられており、
前記アクチュエータは、前記フロアプレートが所定高さ以上のときは前記落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止するよう、前記検知手段の出力に応じて制御される」
ことを特徴とする落下防止ストッパとなっている。
【0014】
請求項2に記載のように、前記落下防止ストッパを、前記フロアプレートの先端に形成された凹部内に枢着して、起立ばねにより起立位置に付勢するとともに、平坦位置では前記凹部内に収容する構造とし、前記落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止するときは、前記阻止部材を前記凹部内に挿入するようにすることが好ましい。
【0015】
請求項3に記載のように、前記検知手段を、前記平行リンク機構のアーム部材の位置を磁気的に検出する近接センサとすることが好ましい。
【0016】
請求項4に記載のように、前記フロアプレートは、前記平行リンク機構のアーム部材に回動可能に枢着されており、不使用時には、前記荷台の後端に立て掛けて格納されるものであってもよい。立て掛けて格納されるものでは、前記フロアプレートが前記荷台床面の近傍位置において傾斜するよう切り換える止め部材が設置されていることが多いが、この場合には、請求項5に記載のように、前記止め部材が前記フロアプレートの傾斜する位置に切り換えられたときに、前記阻止部材の作動を解除することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の適用される落下防止ストッパは、平行リンク機構により水平状態に保ちながら昇降するフロアプレートの先端に設置されるものである。落下防止ストッパは、起立位置と平坦位置とに切り換え得るように構成されており、起立位置においては、カーゴ台車のキャスタの通過を妨げてその落下による危険を回避する。
本発明の落下防止ストッパには、起立位置から平坦位置となるのを阻止する阻止部材が設けられ、フロアプレートが所定高さ以上のときは、阻止部材によって起立位置に保持される。この阻止部材は、フロアプレートが未だ高い位置にあるときは、作業者が誤って落下防止ストッパを踏み込んでも起立位置から切り換らない安全装置として機能し、カーゴ台車の落下を防止する。
【0018】
そして、本発明の落下防止ストッパでは、切り換わりを阻止する阻止部材が電気的なアクチュエータにより作動され、そのアクチュエータは、平行リンク機構のアーム部材の位置を検知する検知手段によって制御される。フロアプレートの高さは、床下に格納するものにせよ立て掛けて格納するものにせよ、平行リンク機構のアーム部材の位置に応じて一義的に決定される。そのため、平行リンク機構のアーム部材の、固定部分(図8の支持基部等)に対する相対的位置を、近接センサやマイクロスイッチを用いて検出することにより、容易にフロアプレートの高さを検知できる。
このように、本発明の落下防止ストッパでは、フロアプレートの高さの信号に応じ電気的なアクチュエータを用いて阻止部材を制御するので、落下防止ストッパが平坦位置となるのを許容(安全装置を解除)するフロアプレートの高さを自由に設定できる。例えば、フロアプレートが接地していなくとも、低い位置に達したときにはカーゴ台車が通過できるような設定が可能である。
【0019】
請求項2の発明は、落下防止ストッパを、フロアプレートの先端に形成された凹部内に枢着して、起立ばねにより起立位置に付勢するとともに、平坦位置では前記凹部内に収容する構造とし、落下防止ストッパが平坦位置となるのを阻止するときは、阻止部材を凹部内に挿入するようにするものである。凹部内に収容され、起立ばねにより起立位置に付勢される落下防止ストッパは、いわば慣用的に用いられるものであるから、請求項2の落下防止ストッパは、作動が確実であると同時に、既存の落下防止ストッパの阻止部材を付加する場合に都合がよい構造となっている。
【0020】
請求項3の発明のように、平行リンク機構のアーム部材の位置を検出する検知手段として磁気的な検出を行う近接センサを採用したときは、非接触な状態でアーム部材の位置の検出が可能であるので、信頼性、耐久性等の面で優れたものとなる。
【0021】
請求項4の発明は、荷台の後端に立て掛けて格納されるフロアプレートの落下防止ストッパに本発明を適用したものであり、この場合のフロアプレートは、平行リンク機構のアーム部材に回動可能に枢着され、格納するときは、油圧シリンダ又は手動により垂直状態に起立されて荷台の後端に立て掛けられる。
【0022】
ところで、立て掛けて格納されるフロアプレートは、折り畳み式ではなく、一般的には1枚のプレートで構成されており、フロアプレートが高い位置となる荷台床面の近傍位置において、先端を下げて傾斜することを可能とするものが多い。これは、貨物の集荷場である物流センターや倉庫などに備えられたプラットフォーム(倉庫等の床面まで高められた貨物積み出し口)に、フロアプレートを橋渡ししてカーゴ台車により貨物の積み降ろしを行うためであり、渡し板機構と呼ばれる。立て掛け格納式のフロアプレートでは、アーム部材に回動可能に枢着されたフロアプレートの根元側下部に当接する、スイングダンパと称する止め部材が設置されており、この止め部材の位置を調節することにより、フロアプレートが水平な状態と、渡し板機構のための傾斜した状態とが切り換えられる(後述の図4参照)。
請求項5の発明は、この止め部材がフロアプレートの傾斜する位置に切り換えられたとき、つまり、フロアプレートを渡し板機構として使用するときに、阻止部材の作動を解除するものである。これにより、フロアプレートが高い位置にあるにもかかわらず、落下防止ストッパが平坦位置となり、プラットフォームと車両の荷台との間でカーゴ台車による貨物の積み降ろしが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の落下防止ストッパを有するテールゲートの概要を示す図である。
図2図1のテールゲートの斜視図である。
図3】フロアプレートの作動を説明する図である。
図4】渡し板機構を行うフロアプレートの作動図である。
図5】本発明の落下防止ストッパの阻止部材を示す斜視図である。
図6】本発明の落下防止ストッパの阻止部材の断面図及び作動図である。
図7】本発明の落下防止ストッパの阻止部材の作動詳細図である。
図8】従来のテールゲート及び落下防止ストッパの概要を示す図である。
図9】従来の落下防止ストッパの詳細を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づいて、本発明の落下防止ストッパの安全装置について説明する。ここで説明する実施例のテールゲートは立て掛け格納式のフロアプレートであって、フロアプレートは1枚板のものであるが、平行リンク機構を備えた昇降装置の基本的な作動及び落下防止ストッパの基本的な構造等は、図8の床下格納式のテールゲートと変わるものではなく、本発明の説明では、図8等の構造の部品等と対応するものについては同一の符号を付している。
【0025】
テールゲートの作動概要図である図1に示すように、この実施例のテールゲートでは、1枚のプレートからなるフロアプレート1が平行リンク機構2に連結され、平行リンク機構2の他端側は支持基部3に枢着されている。図1のテールゲートは立て掛け格納式であるので、支持基部3は、取り付けブラケットによって車体の取り付け部4(シャシフレーム)に直接固定される(図2も参照)。
平行リンク機構2は、アーム部材として上部アーム2Uと下部アーム2Lとを備え、また、昇降用油圧シリンダOCを備えている。昇降用油圧シリンダOCを伸縮させると、図8のテールゲートと同様に、フロアプレート1は、着地した位置から荷台の床面に等高となる位置まで、水平状態を保ちながら昇降することとなる。着地した位置では、フロアプレート1を傾斜して先端を接地することができる。そして、図1のテールゲートには、図1(a)の2点鎖線で表されるように、荷台床面の近傍位置においてフロアプレート1を傾斜させ、プラットフォームPLにフロアプレート1を橋渡しする渡し板機構(詳細は後述)が付加されている。
【0026】
また、図1のテールゲートには、他の車両が後方から追突したときに床下への潜り込みを防止するバンパBPが設けてある。図2に示すとおり、バンパBPは3分割されて、それぞれの分割片が車体の前後方向に延びる棒状部材によりテールゲートの支持基部3に固着されており、分割片の間隙を、平行リンク機構2のアーム部材2U、2Lが通過するよう構成されている。支持基部3には、昇降用油圧シリンダOC等を作動させる油圧ポンプや制御装置を収めたパワーユニットPUが取り付けられる。
【0027】
フロアプレート1の先端部には、起立位置と平坦位置との切り換えが可能な落下防止ストッパ5が装着されている(図2も参照)。図1(a)に示すとおり、フロアプレート1が高い位置にあるときは、落下防止ストッパ5を起立位置としてカーゴ台車DLの車輪に突き当て、カーゴ台車DLの移動や落下を防止する。図示は省略するが、落下防止ストッパ5をロックする、図9のものと同様なロック部材も設置されている。
【0028】
本発明の実施例である図1の落下防止ストッパ5には、詳細な構造については後述するが、落下防止ストッパ5の下側に入り込んで、それが起立位置から平坦位置となるのを阻止する阻止部材6(図5参照)が設けられる。阻止部材6は、電気的なアクチュエータにより作動されて落下防止ストッパ5に下に入りこみ、フロアプレート1が十分に低い位置に達するまでは、作業者が誤って落下防止ストッパ5を踏み込んだとしても、それが平坦位置となるのを妨げる。平坦位置となるのを許容する所定高さは、電気的なアクチュエータの設定により任意の位置とすることが可能で、フロアプレート1が着地した位置に限らず、図1(b)のHのように、未だ着地していない位置とすることもできる。
【0029】
阻止部材6を作動する電気的なアクチュエータは、フロアプレート1に連結される平行リンク機構2のアーム部材の位置に応じて制御される。図2に示すように、バンパBPを固着するための棒状部材には、物体の接近を磁気的に検出する近接スイッチSWが取り付けられており、近接スイッチSWは、バンパBPの間隙を通過する上部アーム2Uの接近を検知し、上部アーム2Uが接近したときは、平坦位置となるのを許容するよう電気的なアクチュエータに信号を出力する。近接スイッチSWの位置を変更することにより、解除位置となるフロアプレート1の高さを調整できる。
図2のテールゲートでは、棒状部材に近接スイッチSWを取り付けて直接アーム部材の位置を検知しているけれども、場合によっては、ブラケットに取り付けた検知用の磁性体をアーム部材に設けてもよい。
【0030】
図1に示す実施例においては、フロアプレート1を傾斜させてプラットフォームPLに橋渡しする渡し板機構が備えられ、渡し板機構を使用するときは、落下防止ストッパ5の阻止部材6を解除している。これについて、図3、4により詳述する。
図3は、テールゲートの不使用時に、フロアプレート1を荷台の後端に立て掛けて格納した状態を表すものである。フロアプレート1と平行リンク機構2との連結部の拡大図に示すように、フロアプレート1は、上部アーム2Uの連結点CUに枢着されこれを中心に回動可能であって、格納時には、起立シリンダTCを作動することにより、フロアプレート1が起立状態となる。また、フロアプレート1を平行リンク機構に連結するブラケットには、フロアプレート1の回動ストッパとなる止め部材(スイングダンパ)SDが設けてあり、これは横位置(図3の拡大図の実線)と縦位置(図3の拡大図の2点鎖線)とに切り換え可能である。止め部材SDが縦位置となったことを検知するよう、その状態の止め部材SDの近傍には第2の近接スイッチSW´が置かれている。
【0031】
止め部材SDは、フロアプレート1が昇降する通常の貨物積み降ろし時には、図4の(a)に示すように、横位置に設定される。フロアプレート1の内部にはプレート側ストッパ1Sが固定してあり、プレート側ストッパ1Sは、フロアプレート1が回動したときに、横位置となった止め部材SDの端面と当接する。図4(a)の2点鎖線に表わされるように、この状態では、フロアプレート1は水平となる。
渡し板機構を使用するときは、図4の(b)に示すように、止め部材SDを縦位置に設定する。これにより、フロアプレート1は、プレート側ストッパ1Sが止め部材SDのいわば横面と当接するまで回動可能となって、先端が下方に向け傾斜できるようになり、図1の(a)の2点鎖線のように、荷台とプラットフォームPLとの間にフロアプレート1を橋渡しすることができる。
【0032】
本発明のテールゲートでは、図3及び図4に示すように、縦位置となった止め部材SDを検知する第2の近接スイッチSW´が置かれており、これによっても、落下防止ストッパ5の阻止部材6を解除する。したがって、渡し板機構を使用するときは、フロアプレート1が荷台付近の高い位置にあるにもかかわらず、落下防止ストッパ5を平坦位置に切り換え、荷台とプラットフォームPLとの間でカーゴ台車DLを用いた貨物の荷役作業が可能となる。
【0033】
次いで、本発明の落下防止ストッパ5に設けた阻止部材6の構造について説明する。
図5は、本発明の阻止部材6の概要が分かるように、落下防止ストッパ5が起立位置にある状態で、落下防止ストッパ5を取り付けた凹部5Rを見た斜視図である。そして、図6は、落下防止ストッパ5の断面図(a)と作動状態を示す平面図(b1、b2)であり、図6(a)では、起立位置にある落下防止ストッパ5を2点鎖線で示している。
【0034】
これらの図面に示すとおり、落下防止ストッパ5は、ヒンジ5Hによってフロアプレート1の先端の凹部5R内に枢着されている。ヒンジ5Hは、一方のヒンジ片5H1が落下防止ストッパ5の裏面に固着され、他方のヒンジ片5H2が凹部5Rの底面に固着されたものであって、かつ、両方のヒンジ片は、互いに離反するような方向に図示しない内部ばねによって捩り力が付与されている。そのため、落下防止ストッパ5は、図9のストッパと同様に、自由状態では起立位置となるようばねで付勢されている。
ヒンジ5Hに隣接して、落下防止ストッパ5の端部の裏面には、直方体形状のブロック体5Bが固着してある。ブロック体5Bは、落下防止ストッパ5を足で踏み込んで平坦位置としたときには、凹部5R内に丁度収容される厚さを有している。
【0035】
そして、ブロック体5Bよりもさらに端部側には、阻止部材6を備えたロック装置60が置かれている。阻止部材6は、ケーシング61に収納されて、この中をブロック体5Bの方向にスライド可能である。阻止部材6をスライドするため、長穴を形成したレバー62が設けられ、レバー62は、ロッド63により電気的アクチュエータ64の出力レバーに連結される。これらの部品からなるロック装置60は、図2に示すフロアプレート1の2個所のL部に配置されている。
【0036】
ここで、本発明の落下防止ストッパ5に設けた阻止部材6及びロック装置60の作動について述べる。
テールゲートを使用する貨物の積み降ろし作業において、フロアプレート1が高い位置にあるときは、図6(b1)に示すとおり、電気的なアクチュエータ64の作動により阻止部材6がブロック体5Bの下側に入り込み、落下防止ストッパ5が踏まれたとしても、平坦位置となることはない。フロアプレート1が、図1(b)のような十分に低い位置、つまり、所定高さHに達したとき(あるいは渡し板機構が使用されるとき)には、近接スイッチSW(又はSW´)がこれを検知し、電気的なアクチュエータ64がレバー62を回転させ、図6(b2)に示すとおり、阻止部材6をブロック体5Bと干渉しない位置に移動させる。これによって、落下防止ストッパ5が凹部5Rに収容されて平坦位置となることができ、カーゴ台車DLの通過が可能となる。
なお、凹部5R内にLEDなどの警告灯を置き、落下防止ストッパ5が起立位置にあるときはこれを点灯する等の手段で、作業者に状況の認識を促すこともできる。警告灯に代え、音声による警報装置を設けてもよい。
【0037】
図7には、阻止部材6をスライドするための機構を示す。この図は、ケーシング61に収納された阻止部材6を下方から見た底面図となっている。
ケーシング61内には、阻止部材6を突出方向(阻止位置)に向けて付勢する押圧ばね65が設置されている。阻止部材6の裏面には、阻止部材6の摺動方向と直交する壁面6Aと、これと対向する保持壁面6Bとが形成され、これらの壁面には、長穴を形成したレバー62の回動軸の下部に固着したピン66が当接する。
レバー62が図7(a)の位置(図6(b1)の位置に相当)にあるときは、阻止部材6は押圧ばね65に押されてブロック体5Bの下側に突出する。電気的なアクチュエータ64によりレバー62が矢印方向に回動すると、ピン66が壁面6Aを押すこととなる。そのため、途中で図7(b)の状態を経由し、レバー62が図7(c)の位置(図6(b2)の位置に相当)となったときは、阻止部材6は、阻止作用が解除される位置となり、落下防止ストッパ5を平坦位置とすることができる。
【0038】
以上詳述したように、本発明は、平行リンク機構を備えた昇降装置により昇降されるフロアプレートにおいて、その先端に設置した落下防止ストッパが、フロアプレートが高い位置にあるときは解除されるのを防止する阻止部材を設け、これを平行リンク機構に取り付けた検知手段により制御するようにしたものである。上記の実施例では、阻止部材を作動するアクチュエータとして回転式のものを用いているが、例えば、電磁ソレノイドにより往復動するアクチュエータを使用することもできる。また、阻止部材として、落下防止ストッパの下側に、縦位置(高さが高い)と横位置(高さが低い)に姿勢を変更する板部材を置くなど、実施例に対し種々の変形が可能であることは明らかである。
【符号の説明】
【0039】
1 フロアプレート
2 平行リンク機構
2U 上部アーム部材
2L 下部アーム部材
3 支持基部
5 落下防止ストッパ
5B ブロック体
6 阻止部材
64 電気的アクチュエータ
SW、SW´ 近接センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9