特許第6143310号(P6143310)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143310
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/12 20060101AFI20170529BHJP
   F21S 8/10 20060101ALI20170529BHJP
   F21W 101/10 20060101ALN20170529BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170529BHJP
【FI】
   F21S8/12 123
   F21S8/12 269
   F21S8/10 180
   F21S8/12 253
   F21S8/12 263
   F21W101:10
   F21Y115:10
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-63155(P2016-63155)
(22)【出願日】2016年3月28日
(62)【分割の表示】特願2012-143307(P2012-143307)の分割
【原出願日】2012年6月26日
(65)【公開番号】特開2016-139617(P2016-139617A)
(43)【公開日】2016年8月4日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087826
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀人
(72)【発明者】
【氏名】杉山 浩之
【審査官】 鈴木 重幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−118241(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/045103(WO,A1)
【文献】 特開平11−329009(JP,A)
【文献】 特開2009−087734(JP,A)
【文献】 特開2010−182486(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S8/10−8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
灯室内に、
光源である発光素子と、前記発光素子を搭載したプリント配線基板と、前記発光素子の発光を灯室前方に向けて反射するリフレクターとをそれぞれ備えた複数の灯具ユニットが車幅方向一列に配置された車両用灯具において、
前記各灯具ユニットを構成する各リフレクターがリフレクターユニットとして一体化されるとともに、前記各リフレクターには、その表面に光拡散処理を施したエクステンションがそれぞれ一体的に形成され
前記リフレクターユニットには、対応する前記リフレクターに向って突出するシェード本体を設けたシェード構成部材が取着され、
前記各リフレクターの有効反射面の前縁が円弧形状に形成されるとともに、
前記シェード本体の先端は、対応する前記リフレクターの有効反射面の前縁の円弧形状に倣う円弧形状に形成されたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記シェード構成部材は、前記複数の灯具ユニット間に跨る1枚のプレート状に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記シェード構成部材は、熱伝達性に優れた金属で構成されたことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記リフレクターユニットを介して一体化された前記複数の灯具ユニットは、共通のエイミング機構によって支持されて、前記複数の灯具ユニットの共通の光軸を傾動調整できることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記複数の灯具ユニットは、ロービーム形成用の灯具ユニットとハイビーム形成用の灯具ユニットで構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、光源である発光素子の発光をリフレクターで反射して所定の配光を形成する車両用灯具に係り、特に、灯室内に、発光素子およびリフレクターをそれぞれ備えた複数の灯具ユニットを車幅方向に一列に配置した車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用の前照灯では、光源として発光素子を用いる傾向があり、自動二輪車用の前照灯においても同様の傾向が見られ、その従来技術としては、下記特許文献1(二輪車用前照灯)が知られている。
【0003】
特許文献1には、灯具ボディと前面カバーで画成された灯室内に配設された左右に長い金属製ブラケットの前面側に、光源である発光素子と該発光素子に対応するリフレクターとを左右方向に隣接するように取着することで、発光素子とリフレクターでそれぞれ構成した複数の灯具ユニットが灯室内左右に隣接配置された多灯式の二輪車用前照灯が記載されている。
【0004】
また、発光素子は、電気を光に変換する際に大量の熱を発生する。この発熱により電気から光への変換効率が下がり、さらに熱を発生させるという悪循環に陥るため、発光素子の高輝度化のためには、発生した熱を拡散させる必要がある。
【0005】
このため、金属製ブラケットの背面側には、発光素子点灯の際に発生する熱を灯室内に放熱するためのヒートシンクが密着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008-222178号公報(段落0025〜0032、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1では、各灯具ユニットを構成する各リフレクターを固定支持するための金属製のブラケットが不可欠であり、それだけ構成部品点数が増えるし、灯室内に配置する複数の灯具ユニットの収容スペースも大きくなる、という第1の問題があった。
【0008】
また、各灯具ユニットの前方近傍には、各灯具ユニットを囲むエクステンション部材が配置されているが、エクステンション部材と各リフレクターとの間の隙間全体を確実に隠すことは困難で、それだけ灯室内の見栄えが悪い、という第2の問題もあった。
【0009】
本願発明は、前記した課題を解消するためになされたものであって、その目的は、各灯具ユニットを構成する各リフレクターをリフレクターユニットとして一体化することで、灯室内に配置する複数の灯具ユニットの収容スペースを小さくできるとともに、灯室内の見栄えが良好で、しかも各灯具ユニットによって形成される配光がグレアとならない車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明(請求項1)においては、
灯室内に、
光源である発光素子と、前記発光素子を搭載したプリント配線基板と、前記発光素子の発光を灯室前方に向けて反射するリフレクターとをそれぞれ備えた複数の灯具ユニットが車幅方向一列に配置された車両用灯具において、
前記各灯具ユニットを構成する各リフレクターをリフレクターユニットとして一体化するとともに、前記各リフレクターには、その表面に光拡散処理を施したエクステンションをそれぞれ一体的に形成した。
【0011】
(作用)複数の灯具ユニットがリフレクターユニットを介して一体化されることで、従来、各リフレクターを固定支持するために不可欠であった金属製ブラケットが省かれる分、各灯具ユニットの構成が簡潔となるとともに、灯室内における灯具ユニットの収容スペースが小さくなる。
【0012】
また、各リフレクターに形成されているエクステンションが灯具ユニットと前面カバーとの隙間を隠すべく作用する。
【0013】
さらには、エクステンションの表面には光拡散処理が施されているので、エクステンションで反射される光は、拡散光となる。
【0014】
請求項2においては、請求項1記載の車両用灯具において、
前記リフレクターユニットに、前記プリント配線基板に密着するプレート状に形成されたシェード構成部材を取着し、該シェード構成部材の側縁部には、前記リフレクターに向って突出するシェード本体を設けるように構成した。
【0015】
(作用)発光素子の発光がリフレクターの有効反射面で灯室前方に反射されることで所定の配光が形成される。そして、シェード本体は、発光素子の発光のうち、リフレクターの有効反射面以外に向かう光を遮光して、グレアの発生を防止する。
【0016】
また、発光素子は、点灯の際に大量の熱を発生するが、この発熱により電気から光への変換効率が下がり、さらに熱を発生させるという悪循環に陥ることで、輝度が低下するなどその寿命が低下するおそれがある。
【0017】
一方、プリント配線基板に設けられた導電パターン(銅等の導電率に優れた金属層)には、発光素子の点灯を制御する制御回路を構成する種々の電子部品が搭載されているが、導電パターンが熱伝達性に優れるため、プリント配線基板自体に灯室空間への放熱作用がある。このため、発光素子点灯の際に発生する熱は、プリント配線基板および該プリント配線基板に密着するシェード構成部材を介して灯室空間に放熱されることで、発光素子は点灯の際に発生する熱の影響を受けることはない。なお、プリント配線基板の放熱作用を促進するには、プリント配線基板を複数の灯具ユニット間に跨る1枚のプレート状に形成することが、望ましい。
【0018】
請求項3においては、請求項2に記載の車両用灯具において、
前記シェード構成部材を、前記複数の灯具ユニット間に跨る1枚のプレート状に形成した。
【0019】
(作用)灯具ユニット毎にシェード構成部材を設ける場合は、複数のシェード構成部材が必要となるが、複数の灯具ユニット間に跨るように1枚のプレート状のシェード構成部材を設けたので、各灯具ユニットの構成が簡潔となるとともに、灯室内における灯具ユニットの収容スペースも小さくなる。
【0020】
また、シェード構成部材は、プリント配線基板と協働して、発光素子点灯の際に発生する熱を灯室空間に放熱する作用があるが、シェード構成部材の表面積が大きい分、放熱作用が促進される。
【0021】
請求項4においては、請求項2または3に記載の車両用灯具において、
前記シェード構成部材を、熱伝達性に優れた金属で構成した。
【0022】
(作用)シェード構成部材は、熱伝達性に優れる分、シェード構成部材の放熱作用が促進される。即ち、シェード構成部材がヒートシンクとして積極的に機能する。
【0023】
請求項5においては、請求項1〜4のいずれかに記載の車両用灯具において、
前記リフレクターユニットを介して一体化された前記複数の灯具ユニットは、共通のエイミング機構によって支持されて、前記複数の灯具ユニットの共通の光軸を(上下方向に)傾動調整できるように構成した。
【0024】
(作用)単一のエイミング機構によって複数の灯具ユニットの共通の光軸を調整できるので、車両用灯具の光軸調整が容易である。
【0025】
請求項6においては、請求項1〜5のいずれかに記載の車両用灯具において、
前記複数の灯具ユニットを、ロービーム形成用の灯具ユニットとハイビーム形成用の灯具ユニットで構成した。
【0026】
(作用)ロービーム形成用の灯具ユニットが形成する配光パターンと、ハイビーム形成用の灯具ユニットが形成する配光パターンが適宜合成することで、ロービームの配光とハイビームの配光を形成できる。
【0027】
請求項7においては、請求項1〜6のいずれかに記載の車両用灯具において、
前記各リフレクターの有効反射面の前縁を円弧形状に形成した。
【0028】
(作用)各リフレクターが容器状になることで、各リフレクターの剛性強度が上がる分、リフレクターおよびリフレクターユニットの耐久性が改善される。
【0029】
請求項8においては、請求項7に記載の車両用灯具において、
前記シェード本体の先端を、対応する前記リフレクターの有効反射面の前縁の円弧形状に倣う円弧形状に形成した。
(作用)リフレクターの有効反射面の前縁までの領域が、灯具ユニットの所定の配光の形成に寄与するので、リフレクターの有効反射面を無駄なく有効に利用できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明(請求項1)によれば、各灯具ユニットの構成が簡潔となるとともに、灯室内における灯具ユニットの収容スペースが小さくなるので、灯具をコンパクト化できる。
また、各リフレクターに形成されているエクステンションが灯具ユニットと前面カバーとの隙間を隠すべく作用するので、灯室内の見栄えが良好となる。
エクステンションで反射された光は拡散光となるため、灯具ユニットで形成される配光がグレアとならない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1の実施例である自動二輪車用前照灯の正面図である。
図2】同前照灯の縦断面図(図1の線II−IIに沿う断面図)である。
図3】同前照灯の縦断面図(図1の線III−IIIに沿う断面図)である。
図4】同前照灯の要部であるリフレクター,プリント配線基板およびシェードの分解斜視図である。
図5】プリント配線基板とシェードの接合部を示す拡大縦断面図である。
図6】本発明の第2の実施例である自動二輪車用前照灯の縦断面図(図2に対応する断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本願発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。図1〜5は、本願発明を自動二輪車用前照灯に適用した第1の実施例を示す。
【0033】
これらの図、特に図1,2,3において、自動二輪車用前照灯10は、ランプボディ12と、このランプボディ12の前端開口部に取り付けられた素通し状の前面カバー14とで形成される灯室S内に、ロービーム形成用の4つの灯具ユニット30R1、30R2、30L1、30L2と、ハイビーム形成用の2つの灯具ユニット40R、40Lとが、車幅方向一列に配置された状態で収容されて構成されている。
【0034】
詳しくは、ロービーム形成用の4つの灯具ユニット30R1、30R2、30L1、30L2のうちの灯具ユニット30R1、30L1が灯室Sの車幅方向中央に配置され、灯室Sの車幅方向端部側に灯具ユニット30R2、30L2が配置され、ロービーム形成用の灯具ユニット30R1、30R2(30L1、30L2)の間にハイビーム形成用の灯具ユニット40R(40L)が配置されている。
【0035】
そして、ロービーム形成用の灯具ユニット30R1、30R2、30L1、30L2がそれぞれ形成する配光パターンが合成されることで、ロービームの配光が形成され、ロービーム形成用の灯具ユニット30R1、30R2、30L1、30L2がそれぞれ形成する配光パターンにハイビーム形成用の灯具ユニット40R、40Lがそれぞれ形成する配光パターンが合成されることで、ハイビームの配光が形成される。
【0036】
また、ロービーム形成用の灯具ユニット30R1、30L1、30R2、30L2は、何れも、光源である発光素子32,発光素子32の発光を灯室S前方に向けて反射するリフレクター34R1、34L1、34R2、34L2および発光素子32の近傍に配置されたグレア防止用シェード(本体)52を備えている。
【0037】
一方、ハイビーム形成用の灯具ユニット40R、40Lは、何れも光源である発光素子32,発光素子32の発光を灯室S前方に向けて反射するリフレクター44R、44Lを備えているが、グレア防止用シェード52を備えていない。
【0038】
リフレクター34R1、34L1、44R、44L、34R2、34L2は、図4に示すように、リフレクターユニット16として一体化されており、即ち、灯具ユニット30R1、30R2、40R、40L、30L1、30L2は、リフレクターユニット16によって一体化されており、ランプボディ12の背面壁とリフレクターユニット16間に介装されたエイミング機構(図示せず)によって片持ち支持されている。
【0039】
詳しくは、エイミング機構は、ランプボディ背面壁から灯室S内前方に延出する左右一対のピボットと、リフレクターユニット16の背面側にそれぞれ取着されて、該ピボットにそれぞれ係合する左右一対のピボット受け部と、左右一対のピボット位置より下方のランプボディ背面壁に回転可能に支承されて灯室S内前方に延出するエイミングスクリューと、リフレクターユニット16の背面側に取着されて、該エイミングスクリューに係合するナット部材で構成されており、エイミングスクリューを回動操作することで、ピボットとピボット受け部で構成された左右一対の傾動支点を通る水平傾動軸周りに、リフレクターユニット16が上下方向に傾動して、前照灯10の光軸(6つの灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2の共通の光軸)を上下方向に傾動調整できる。
【0040】
リフレクターユニット16の平坦なプレート状の後方延出部17の上面には、図2,3、4に示すように、白色発光ダイオードで構成した発光素子32を下面側に、点灯制御回路68を上面側にそれぞれ搭載したプリント配線基板60が、タッピングスクリュー66によって固定一体化されている。そして、プリント配線基板60の下面側に搭載されている6個の発光素子32は、図2,3に示すように、リフレクター34R1、34L1、44R、44L、34R2、34L2の概略放物面形状の有効反射面35R1、35L1、45R、45L、35R2、35L2のそれぞれの焦点に対応する位置に下向きに配置されている。図2,3において、符号18は、車体である。
【0041】
有効反射面35R1、35L1、45R、45L、35R2、35L2は、何れも複数のステップ反射面(図1,4参照)で構成されており、発光素子32の発光が有効反射面35R1、35L1、45R、45L、35R2、35L2で前方所定方向に反射されることで、所望の配光パターンが形成される。
【0042】
また、水平に配置されたプリント配線基板60の下面側には、図2,3に示すように、熱伝達性に優れた金属製のシェード構成部材50が所定の固定手段(タッピングスクリュー,ランス締結、接着等)によって密着するように一体化されている。
【0043】
シェード構成部材50は、プリント配線基板60と左右方向の長さが同一の矩形プレート状に形成され、シェード構成部材50の後方側縁部におけるロービーム形成用のリフレクター34R1、34L1、34R2、34L2に対応する所定位置には、発光素子32の近傍に配置される縦断面L字型のシェード本体52(52R1、52L1、52R2、52L2)がそれぞれ突出形成されている。
【0044】
シェード本体52R1、52L1、52R2、52L2の先端53R1、53L1、53R2、53L2は、リフレクター34R1、34L1、34R2、34L2の有効反射面35R1、35L1、35R2、35L2の前縁36R1、36L1、36R2、36L2の円弧形状に倣う円弧形状に形成されており、図2、5に示すように、発光素子32の発光中心Oとシェード本体先端53R1(53L1、53R2、53L2)とを結ぶ延長線L上に、リフレクターの有効反射面35R1(35L1、35R2、35L2)の前縁36R1(36L1、36R2、36L2)が位置している。
【0045】
このため、リフレクターの有効反射面35R1(35L1、35R2、35L2)の前縁36R1(36L1、36R2、36L2)までの領域が、灯具ユニット30R1(30L1、30R2、30L2)の所定の配光の形成に寄与するので、リフレクターの有効反射面35R1(35L1、35R2、35L2)が最大限無駄なく有効に利用されている。
【0046】
灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2の前方には、図2,3に示すように、これら各灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2を囲むエクステンション部材20が、例えば前面カバー14にねじ固定されることで配置されている。
【0047】
また、リフレクター34R1、34L1、44R、44L、34R2、34L2の有効反射面35R1、35L1、45R、45L、35R2、35L2の前縁部には、図2,3,4に示すように、リフレクター34R1、34L1、44R、44L、34R2、34L2に一体的に形成されたエクステンション37R1、37L1、47R、47L、37R2、37L2が前方に延出して、灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2の前方に配置されたエクステンション部材20と協働して、灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2と前面カバー14との隙間を隠すようになっている。
【0048】
特に、ロービーム形成用の灯具ユニット30R1(30L1、30R2、30L2)では、発光素子32から出射してリフレクターの有効反射面の前縁36R1(36L1、36R2、36L2)より前方に向かう光は、シェード本体52R1(52L1、52R2、52L2)によって確実に遮光されるので、エクステンション37R1(37L1、37R2、37L2)の反射光によってグレアが発生することはない。特に、エクステンション37R1(37L1、37R2、37L2)の表面には、シボ加工などの光拡散処理が施されているので、たとえエクステンション37R1(37L1、37R2、37L2)で上向きに光が反射されたとしても、グレアとなることはない。
【0049】
また、灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2では、プリント配線基板60およびシェード構成部材50をヒートシンクとして利用することで、発光素子32の熱対策がとられている。
【0050】
即ち、発光素子32は、点灯の際に大量の熱を発生するが、この発熱により電気から光への変換効率が下がり、さらに熱を発生させるという悪循環に陥ることで、輝度が低下するなどその寿命が低下するおそれがある。
【0051】
しかし、発光素子32点灯の際に発生する熱は、プリント配線基板60およびシェード構成部材50を介して灯室S空間に放熱されるので、発光素子32が点灯の際に発生する熱の影響を受けることはない。
【0052】
詳しくは、プリント配線基板60は、図5に拡大して示すように、発光素子32などへの通電路として機能する導電パターン62が樹脂などで構成された絶縁性ベース61の表裏両面に沿って配設されて、熱伝達性に優れているため、プリント配線基板60自体に灯室S空間への放熱作用がある。また、金属で構成されたシェード構成部材50も熱伝達性に優れ、灯室S空間への放熱作用がある。
【0053】
特に、シェード構成部材50が樹脂製の絶縁薄膜63を介してプリント配線基板60の導電パターン62と密着することで、プリント配線基板60における主たる熱伝達経路である導電パターン62側の熱が絶縁薄膜63を介してシェード構成部材50にスムーズに伝達されるため、プリント配線基板60およびシェード構成部材50を介した灯室S空間への放熱作用が促進される。なお、図5において、符号64は、プリント配線基板60の上面側の導電パターン62と下面側の導電パターン62を接続する導電路で、プリント配線基板60に設けられたスルーホールH内に配設されている。
【0054】
また、シェード構成部材50の下面側は、サンドブラスト処理された凹凸面51で構成されて、灯室S空間に対するシェード構成部材50における放熱面積が増加して、シェード構成部材50を介した灯室S空間への放熱量が増加するようになっている。
【0055】
さらに、シェード構成部材50は、図2,3,4に示すように、前面カバー14の近傍まで延びており、発光素子32に発生した熱がシェード構成部材50を介して灯室S内の前面カバー14近傍に放熱されることで、前面カバー14に付着した雪を溶かす上で有効である。
【0056】
即ち、発光素子32の発光には赤外線が含まれないため、積雪の多い寒冷地では、前面カバー14に付着した雪が凍結して前照灯本来の配光が得られないおそれがあるが、本実施例では、前面カバー14の近傍まで延出するシェード構成部材50の放熱作用による融雪効果が期待できる。
【0057】
また、本実施例では、略水平に配置されたプリント配線基板60の下面側に発光素子32が下向きに配置されているので、以下のような効果が奏される。
【0058】
第1には、灯室S内の発光素子32が前面カバー14を介して対向車のドライバーや歩行者から直視されにくく、それだけ灯室S内の見栄えがよい。
【0059】
第2には、対向車のドライバーや歩行者に対しグレアとなる上向きの直射光が発生しないので、プリント配線基板60の下面側に突出するシェード本体52はコンパクトでよく、灯室S内の見栄えを低下させることもない。
【0060】
図6は、本発明の第2の実施例に係る自動二輪車用前照灯を示し、第1の実施例の前照灯の縦断面を示す図2に対応する図である。
【0061】
前記した第1実施例の前照灯10では、プリント配線基板60およびシェード構成部材50にヒートシンクの機能をもたせることで、灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2にヒートシンクを設けない構造であるが、この第2の実施例の前照灯10Aでは、シェード構成部材50の下面側にヒートシンク58を設けた構造となっている。
【0062】
発光素子32の点灯の際に発生する熱は、シェード構成部材50のヒートシンク58からも灯室S空間に放熱されるので、第1の実施例よりも、発光素子32は点灯の際に発生する熱の影響をいっそう受けにくい。
【0063】
また、ヒートシンク58は、シェード構成部材50の下面側に設けられて、先行特許文献1に見られるように、灯具ユニットの後方に突出しないことから、灯室Sの奥行きを拡大する必要もない。
【0064】
また、前記した第1実施例では、リフレクター34R1、34L1、44R、44L、34R2、34L2と別体のエクステンション部材20が前面カバー14に固定されることで、灯具ユニット30R1、30L1、40R、40L、30R2、30L2の前方にエクステンション部材20が配置されていたが、この第2の実施例では、エクステンション部材20Aがエクステンション37R1(37L1、37R2、37L2)とともにリフレクター34R1(34L1、44R、44L、34R2、34L2)に一体的に形成されている。
【0065】
即ち、リフレクターユニット16とエクステンション部材20Aを一体的に形成したので、それだけ前照灯10Aを構成する部品点数が減り、前照灯10Aの構成が簡潔化されている。
【0066】
その他は、第1の実施例と同一であるので、同一の符号を付すことで、その重複した説明は省略する。
【0067】
また、前記した第1,第2の実施例では、シェード構成部材50が、熱伝導性に優れた金属で構成されているが、金属に限るものではなく、熱伝導性に優れたセラミック等で構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
10,10A 自動二輪車用前照灯
12 ランプボディ
14 前面カバー
16 リフレクターユニット
S 灯室
30R1,30L1,30R2,30L2 ロービーム形成用の灯具ユニット
32 光源である発光素子
O 発光中心
34R1、34L1、44R、44L、34R2、34L2 リフレクター
35R1、35L1、45R,45L、35R2、35L2 リフレクターの有効反射面
35R1、35L1、35R2、35L2 有効反射面の前縁
37R1、37L1、47R,47L、37R2、37L2 エクステンション
40R,40L ハイビーム形成用の灯具ユニット
50 シェード構成部材
51 放熱面積を増やす凹凸面
52(52R1、52L1、52R2、52L2) シェード本体
53R1、53L1、53R2、53L2 シェード本体先端
L 発光中心とシェード本体先端とを結ぶ延長線
58 ヒートシンク
60 プリント配線基板
61 絶縁性ベース
62 導電パターン
63 絶縁薄膜
68 点灯制御回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6