【実施例1】
【0023】
図1は、イヤホンの構成を示す図である。イヤホン1は、2つの筐体11a、11b、結合材12、プラグ13を備える。
【0024】
筐体11a(11b)と結合材12との間は、主コード2a(2b)で接続され、結合材12において主コード2a、2bが結合されて1本の主コード2となり、主コード2がプラグ13に接続されている。
【0025】
結合材12とプラグ13との間は、主コード2で接続されている。
【0026】
図2は、筐体の構成を示す図である。筐体11aは左耳用のものであり、筐体11bは右耳用のものである。図は筐体11aを示すが、筐体11bについても同様である。
【0027】
筐体11aは、内部に、ツイータ5a及びウーハ6aを備えている。ツイータ5aは、振動板51aに圧電素子52aを付設して圧電方式のものである。ウーハ6aは電磁方式のものである。ツイータ5aとウーハ6aとは、電気的に並列に接続されている。
【0028】
図3は、イヤホンの回路を示す図である。主コード2は、アースコード3e、左チャネル信号コード3a、右チャネル信号コード3bを有している。音響機器に接続されたプラグ13から、左チャネル信号コード3a及び右チャネル信号コード3bに音響信号が伝送される。
【0029】
結合材12において、アースコード3eは、主コード2a、2bの両方に接続される。左チャネル信号コード3aは主コード2aに、右チャネル信号コード3bは主コード2aに、それぞれ接続される。
【0030】
筐体11aには、主コード2a、すなわち左チャネル信号コード3a及びアースコード3eが接続される。筐体11bには、主コード2b、すなわち右チャネル信号コード3b及びアースコード3eが接続される。
【0031】
筐体11a内において、左チャネル信号コード3aとアースコード3eとの間で、ツイータコード3taを介したツイータ5aと、ウーハコード3waを介したウーハ6とが、並列に接続されている。
【0032】
左チャネル信号コード3aには、保護抵抗4xが設けられている。
【0033】
筐体11bについても、筐体11aと同様である。
【0034】
以下、イヤホン1の抵抗値について検討する。
【0035】
プラグ13から、筐体11a内のツイータコード3taとウーハコード3waとの分岐点までの主コード2、2aの抵抗をRcとする。ツイータ5a(ツイータコード3taを含むものとするが、実質的にツイータ5aのみ)の抵抗(インピーダンス)をRtとする。ウーハ6a(ウーハコード3waを含むものとするが、実質的にウーハ6aのみ)の抵抗(インピーダンス)をRwとする。また保護抵抗4xの抵抗値をRpとする。
【0036】
プラグ13を介してイヤホン1に接続されるアンプから見たイヤホン1の抵抗値R
1は、
【数1】
である。圧電ツイータ5aは、実質的にはコンデンサであり、抵抗値Rtは大きい。RtがRwに対して十分に大きいものとすれば、抵抗値R
1は以下のように近似される。
【数2】
【0037】
ツイータ5aが故障し、短絡した場合に、アンプから見たイヤホン1の抵抗値R
2は、数1においてRt=0とし、
【数3】
である。
【0038】
ここで、アンプは4Ωのインピーダンスのスピーカを駆動できるものとし、アンプに過電流が流れないためには、R
2≧4Ωであればよい。多くのイヤホンにおいてRc=2Ωであるので、Rp≧2Ωとなる保護抵抗を用いることで、R
2≧4Ωとすることができる。
【0039】
ツイータ5a及びウーハ6aへの与電圧V
1は、アンプの出力電圧をVとして、
【数4】
である。保護抵抗4xがない場合のツイータ5a及びウーハ6aへの与電圧V
0は、アンプの出力電圧をVとして、
【数5】
である。
【0040】
保護抵抗による音圧低下が3dB以下となり、保護抵抗を付することによる音質の劣化が抑制されるためには、V
1/V
0≧(1/2)となることが必要である。数4、数5より、
【数6】
であり、RtがRwに対して十分に大きいものとすれば、V
1/V
0は以下のように近似される。
【数7】
【0041】
Rp≦Rc+Rwとなる保護抵抗を用いることで、V
1/V
0≧(1/2)とすることができる。多くのイヤホンにおいてRc=2Ωであるので、ウーハのインピーダンスRwが広く用いられるRw=8Ωであるとすると、Rp≦10Ωとなる保護抵抗を用いることで、V
1/V
0≧(1/2)とすることができる。
【0042】
2Ω≦Rp≦10Ωとなる保護抵抗4xを用いることで、保護抵抗4xによってアンプに過電流が流れず、かつ、保護抵抗4xを付することによる音質の劣化が抑制されたイヤホンとなる。
【0043】
以上詳細に説明したように、本実施例のイヤホン1によれば、保護抵抗4xによってアンプに過電流が流れることを防止する。また、保護抵抗4xを付することによる音質の劣化が3dB以下とできる。圧電ツイータが故障した場合にもアンプに過電流が流れることのない、音質の良いイヤホンが提供される。
【0044】
また、保護抵抗4xが筐体11a、11b内に設けられているので、イヤホン使用時の主コード2,2a,2bの移動、湾曲が妨げられることがない。
【0045】
なお、主コード2においてアースコード3eを1本とし、結合具12において分岐したが、分岐をなくして主コード2でも2本のアースコード3eを用いてもよい。
【0046】
また、筐体11a、11bの2つでなく、いずれか1つのみを備えたモノラルイヤホンとしてもよい。
【実施例2】
【0047】
本実施例は、保護抵抗を設ける位置が実施例1と相違するものである。他の点は実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0048】
図4は、筐体の構成を示す図である。実施例1において左チャネル信号コード3aに設けられた保護抵抗4xに替えて、ツイータコード3taに保護抵抗4yが設けられている。
【0049】
図5は、イヤホンの回路を示す図である。この図に基づいてイヤホン1の抵抗値を求める。
【0050】
プラグ13を介してイヤホン1に接続されるアンプから見たイヤホン1の抵抗値R
1は、
【数8】
である。
【0051】
ツイータ5aが故障し、短絡した場合に、アンプから見たイヤホン1の抵抗値R
2は、数8においてRt=0とし、
【数9】
である。
【0052】
アンプに過電流が流れないためには、R
2≧4Ωであればよい。多くのイヤホンにおいてRc=2Ωであるので、ウーハのインピーダンスRwが広く用いられるRw=8Ωであるとすると、Rp≧(8/3)Ω≒2.7Ωとなる保護抵抗を用いることで、R
2≧4Ωとすることができる。
【0053】
保護抵抗4y、ツイータ5a、ウーハ6aの合成抵抗は、保護抵抗4yの抵抗値Rpが大きいほど大きな値となる。すなわち、Rpが大きくなると、ウーハ6aへの与電圧は大きくなる。ツイータ5aへの与電圧はウーハ6aへの与電圧の値をRtとRpで按分した際のRtの側に相当する値となるが、Rtが大きな値であるので、ツイータ5aへの与電圧が大きく減少することはない。すなわち、Rpを大きくしても、保護抵抗による音圧低下が問題となることはない。
【0054】
Rp≧(8/3A)Ωとなる保護抵抗4yを用いることで、保護抵抗4yによってアンプに過電流が流れず、かつ、保護抵抗4yを付することによる音質の劣化のないイヤホンとなる。Rpの値を実施例1よりも大きくすることが可能である。ただし、ツイータ5aの音質に鑑み、過大な値としないことが好ましい。
【0055】
以上詳細に説明したように、本実施例のイヤホン1によっても、保護抵抗4yによってアンプに過電流が流れることを防止し、保護抵抗4yを付することによる音質の劣化が小さく、イヤホン使用時の主コード2,2a,2bの移動、湾曲が妨げられることがない、音質の良いイヤホンが提供される。
【実施例3】
【0056】
本実施例は、保護抵抗を設ける位置が実施例1と相違するものである。他の点は実施例1と同様であり、詳細な説明を省略する。
【0057】
図6は、イヤホンの回路を示す図である。実施例1における保護抵抗4xに替えて、保護抵抗4zが、プラグ13内部に設けられている。
【0058】
図7は、イヤホンの回路を示す図である。実施例1における保護抵抗4xに替えて、保護抵抗4zが、結合材12内部に設けられている。
【0059】
図6、
図7のいずれにおいても、保護抵抗4zによってイヤホン使用時の主コード2,2a,2bの移動、湾曲が妨げられることがない。また、イヤホン1の抵抗の計算は実施例1と同一である。
【0060】
以上詳細に説明したように、本実施例のイヤホン1によっても、保護抵抗4zによってアンプに過電流が流れることを防止し、保護抵抗4zを付することによる音質の劣化が小さく、イヤホン使用時の主コード2,2a,2bの移動、湾曲が妨げられることがない、音質の良いイヤホンが提供される。
【0061】
以上、実施例1〜3において、イヤホンについて説明した。圧電ツイータを利用する場合に音響信号を伝達する電気回路上に保護抵抗を設けることは、イヤホンに限らず、ヘッドホンにおいても可能である。本発明は、ヘッドホンにも適用可能である。