特許第6143329号(P6143329)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143329電気インピーダンスを用いた食物細菌の検出方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143329
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】電気インピーダンスを用いた食物細菌の検出方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/02 20060101AFI20170529BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20170529BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G01N27/02 Z
   C12M1/34 B
   C12Q1/04
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-23915(P2013-23915)
(22)【出願日】2013年2月9日
(65)【公開番号】特開2013-253962(P2013-253962A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年10月29日
(31)【優先権主張番号】特願2012-27552(P2012-27552)
(32)【優先日】2012年2月10日
(33)【優先権主張国】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2012年9月26日、株式会社第一興商のホームページ http://www.dkkaraoke.co.jp/newsrelease/ajaxfiles/load2012.html?file=120926&name=報道資料において公開 「刊行物等」 2012年9月26日付、日本経済新聞社発行「日経MJ(流通新聞)」第9面において公開 「刊行物等」 2012年9月27日付、東洋経済新報社発行「東洋経済ONLINE」において公開 「刊行物等」 2012年10月1日、株式会社第一興商が製品の販売(レンタル)を開始して公開 「刊行物等」 2012年10月3日〜5日、UBMメディア株式会社主催「食品開発展2012」にて公開 「刊行物等」 2013年1月1日、UBMメディア株式会社発行「食品と開発」1月号において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】513305869
【氏名又は名称】株式会社エム・ビー・エス
(73)【特許権者】
【識別番号】390004710
【氏名又は名称】株式会社第一興商
(74)【代理人】
【識別番号】100102015
【弁理士】
【氏名又は名称】大澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】水島 洋
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 肇
(72)【発明者】
【氏名】門田 明正
(72)【発明者】
【氏名】西村 知晃
(72)【発明者】
【氏名】根本 翔太
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−052681(JP,A)
【文献】 特開2005−241622(JP,A)
【文献】 実開昭54−008981(JP,U)
【文献】 特開昭56−127099(JP,A)
【文献】 特開昭50−003695(JP,A)
【文献】 特開昭55−138397(JP,A)
【文献】 特開昭52−001083(JP,A)
【文献】 特表2008−537879(JP,A)
【文献】 特開平09−023875(JP,A)
【文献】 特開平04−147050(JP,A)
【文献】 特表平11−511322(JP,A)
【文献】 米国特許第04321322(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0187388(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−10
14−24
C12Q 1/00−3/00
C12M 1/00−3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌の繁殖に基づく電気インピーダンス変化を測定することにより試料中の細菌を検出する方法において、以下の工程、
a.低塩濃度細菌培養用培地に試料の一部を懸濁した測定液を調製するとともに、細菌の増殖を阻害する濃度以上の抗菌剤を含有する、同じ低塩濃度細菌培養用培地に同じ試料の別の一部を懸濁した参照液を調製する工程、ここで、該試料を懸濁する低塩濃度細菌培養用培地の塩濃度は、測定液及び参照液の塩濃度が0.2%NaCl以下に相当する塩濃度となるように調製されている、
b.4電極からなる棒状電極を用いて、該測定液及び該参照液のそれぞれの電気インピーダンスを測定する工程、ここで該棒状電極は、電気インピーダンス検出部である該電極の先端の2mm〜10mmが培地中で露出するように非導電性物質で覆われている、及び
c.該参照液を用いて培養環境下にて細菌の増幅に起因しないインピーダンス変化を測定するとともに該測定液の電気インピーダンス変化を測定することにより、試料中の細菌を測定する工程、
を含む試料中の細菌を検出する方法。
【請求項2】
前記試料が食品である請求項1に記載の細菌を検出する方法。
【請求項3】
前記測定液の電気インピーダンス値の初期値が少なくとも70オームである請求項1又は2に記載の細菌を検出する方法。
【請求項4】
前記測定液及び前記参照液が、少なくとも10ml以上である、請求項1〜3のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
【請求項5】
前記電極のインピーダンス検出部が、測定液及び参照液のそれぞれの中間部に位置するように配置されている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
【請求項6】
前記電極の直径が1.0mm〜3.0mmである、請求項1〜5のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
【請求項7】
前記細菌が、グラム陰性菌又はグラム陽性菌である、請求項1〜6のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
【請求項8】
前記細菌が、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ぶどう球菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、リステリア菌、ウェルシュ菌、セレウス菌、及びボツリヌス菌からなる群から選ばれる少なくとも一つの菌である請求項7に記載の細菌を検出する方法。
【請求項9】
試料中の細菌を検出するために用いる電極付きセルであって、
試料を含んだ培地を入れるための容器、
該容器の上部に嵌合することができる開口部を有する蓋、
該蓋部の中央から両側面に向かって直線上に配置されて、該蓋から該容器の垂直方向の略中心部へと伸びている四電極を構成する4本の棒状電極、及び
該4本の電極を支持し、該開口部にはめ込むことができる非導電性の電極支持部、ここで、該電極支持部は、インピーダンス検出部である該電極の先端の2mm〜10mmが該容器内の培地中で露出するように該電極を覆っている、
からなる電極付きセル。
【請求項10】
前記容器の形状が円柱状でありかつ容量が少なくとも10mlである請求項9に記載の電極付きセル。
【請求項11】
前記電極直径1.5mm〜3.0mmである、請求項9又は10に記載の電極付きセル。
【請求項12】
前記試料が食品である請求項9〜11のいずれか一つに記載の電極付きセル。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれか一つに記載の電極付きセルを収納するための少なくとも2つの収納部を有する収納構造体、ここで、該収納構造体は、試料を含んだ培地(測定液)が入った測定用電極付きセル、及び試料及び抗菌剤を含んだ培地(参照液)が入った参照用電極付きセルを収納できる、
該電極付きセルの電極に電流を供給するための電流供給部、及び
測定液及び参照液の電気インピーダンスを測定してインピーダンス変化を検出する測定部、
を含む電気インピーダンス変化に基づいて細菌の検出を行う装置。
【請求項14】
さらに、細菌の検出結果に基づいてランプを点灯させるインジケータ部を含む請求項13に記載の装置。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法を用いて試料中の細菌を検出するための、請求項9〜12のいずれか一つに記載の電極付きセル。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれか一つに記載の方法を用いて試料中の細菌を検出するための、請求項13又は14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食物中の細菌を簡便且つ手軽に検出することができる食物細菌の検出方法及び装置に関し、より具体的には、電気インピーダンス計測を用いた食物細菌の検出方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食物の摂取は、ヒトを含む動物において欠かすことができないものである。食品加工や保存技術の進歩にも拘わらず、飲食物の摂取に起因する中毒である「食中毒」は、現在でも完全に防ぐことが困難である。毎年、食中毒に関する事象が頻繁に起こり、食の安全に対する関心は大きい。
【0003】
食中毒は、その原因に基づいて自然毒(フグ毒、キノコ毒等)による食中毒、飲食物の腐敗(飲食物の分解物等)による食中毒、および飲食物への細菌(ブドウ球菌、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ等)の混入ないし繁殖による食中毒の3種類に大別される。これらの食中毒のうち、細菌による食中毒(すなわち細菌性食中毒)は、細菌の食物への混入又は繁殖によって起こるが、通常は不可視的であり、細菌の混入又は繁殖の検出は、専門的な操作や工程を経ないと困難である。
【0004】
食堂、給食センター、スーパー、コンビニエンスストア等の大量の食物を供給する施設において提供される飲食物が原因の食中毒の発生は、嘔吐、下痢、腹痛、高熱等の症状が著しく多人数に対して生じるため、特に重大な問題を生じ易い。また、通常では感染しない一般細菌も、ある数以上を超えると感染性を生じる。また、細菌の繁殖は、ご飯、パン、ケーキ、海草サラダ、魚肉、ミンチ肉、野菜ジュース等、あらゆる食物及び飲料で生じる。
【0005】
微生物の増殖を計測する技術の一つとして、古くからインピーダンス法と呼ばれる手法が知られている。インピーダンスとは交流電流における電気抵抗値のことで、微生物を混ぜた液体培地に電極を差し込んで微弱な電流を流しながら培養すると、微生物の増殖に起因して抵抗値が変化する。この抵抗値の変化を検出することにより、微生物数を測定するという方法である(非特許文献1)。
【0006】
通電電極を測定電極とする二電極法では計測されるインピーダンスの再現性が悪いという問題があり、通電時における溶液の電圧降下を測定する四電極を用いたインピーダンス法が提案されている(非特許文献2及び3)。四電極法を用いた非特許文献2に示された装置は、約1.5ml容量の培養セルと直径が0.7mmの電極を用いてE.coliを測定した例が示されており、細菌培養液は約120オーム-cmの電気抵抗をもち、培養によるインピーダンスの変化は、5〜8時間の培養で約4%であると記載されている。
【0007】
また、被測定液に含まれる菌を定量する技術として、誘電泳動とインピーダンス測定とを組み合わせたDEPIM(Dielectrophoretic Impedance Measurement Method)が知られている。DEPIMは、細菌懸濁液中の電極に所定周波数の交流電圧を印加して、電極ギャップ間に細菌を捕集し、このときの電極間のインピーダンスの変化を測定することで細菌数を定量するものである(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011−200152公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】常岡ら、電気的方法による細菌増殖の自動検出、臨床病理, 27(7), 563-567, 1979
【非特許文献2】木吉ら、細菌培養下における培養液の電気インピーダンス計測、医用電子と生体工学、第19巻、第1号, 35-39(Feb. 1981)
【非特許文献3】三池ら、酵母菌の増殖・発酵過程における電気インピーダンスの変化、電子通信学会論文誌, Vol. J69-C, No. 10, 1134-1340, 1986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
食中毒の予防の手段として、一般的な予防対策(例えば、包丁、マナ板等の調理器具を清潔に保つ、調理に関与する人の手指を清潔に保つ、等)が取られている。しかし、これらの手段は、このようなことを行った場合には、飲食物に細菌が付着することを避けることができるとの経験に基づく間接的な手段であり、実際に飲食物に細菌が混入及び/又は繁殖していることを確認して、細菌が混入及び/又は繁殖していた場合にそれを廃棄又は処理することにより食中毒を予防するという直接的な手段ではない。そしてもし食中毒が発生した場合には保健所の調査(原因と見られる飲食物に付着した細菌の培養等)が必要となり、飲食物の提供を停止した上で、原因菌を検出・確認することが必要になるなど、影響が大きくなる。
【0011】
従って、飲食物に細菌が混入及び/又は繁殖しているかを確認できる手段が求められている。しかしながら、保健所等の検査施設で用いるような装置や方法は、複雑であり、コストが高い。また、インピーダンス法は、微生物の増殖や菌数を計測する方法として従来から研究室等で用いられているが、食堂や給食センター等で簡易に測定できる装置及び方法ではなかった。
食中毒が非常に大きな問題となっている現在、食堂や給食センター等の専門検査施設でない場所で専門家以外の者が簡便な操作で飲食物への細菌の混入を検出及び/又は同定することが可能な方法及び装置が求められていた。
【0012】
本発明の目的は、このような専門検査施設でない場所でも、かつ専門家以外の者でも簡便な操作で細菌を検出することができる方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、所定の大きさの測定容器に検査試料(例えば、食品)を懸濁した低塩濃度の細菌培養用培地を入れて培養するとともに、所定の大きさの参照容器に同じ検査試料を懸濁した抗菌剤を含有する同じ培地を入れて培養して、両溶液での電気インピーダンス変化を測定することにより、検査試料(例えば、食品)中の細菌を検出する方法及びそのための装置である。
本発明はまた、以下の通りである。
(1)細菌の繁殖に基づく電気インピーダンス変化を測定することにより試料中の細菌を検出する方法において、以下の工程、
a.低塩濃度細菌培養用培地に試料を懸濁した測定液を調製するとともに、細菌の増殖を阻害する濃度以上の抗菌剤を含有する、同じ低塩濃度細菌培養用培地に同じ試料を懸濁した参照液を調製する工程、ここで、該試料を懸濁する低塩濃度細菌培養用培地の塩濃度は、測定液及び参照液の塩濃度が0.2%NaCl以下に相当する塩濃度となるように調製されている、
b.4電極からなる電極を用いて、該測定液及び該参照液のそれぞれの電気インピーダンスを測定する工程、及び
c.該参照液を用いて培養環境下にて細菌の増幅に起因しないインピーダンス変化(例えば、培養液の温度変化)を測定するとともに該測定液の電気インピーダンス変化を測定することにより、試料中の細菌を測定する工程、
を含む試料中の細菌を検出する方法。
(2)前記試料が食品である前記(1)に記載の細菌を検出する方法
(3)前記測定液の電気インピーダンス値の初期値が少なくとも70オームである前記(1)又は(2)に記載の細菌を検出する方法。
(4)前記測定液及び前記参照液が、少なくとも10ml以上である、前記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
(5)前記電極のインピーダンス検出部が、測定液及び参照液のそれぞれの中間部(液上層と液下層の中間部)に位置するように配置され、かつ該電極のインピーダンス検出部の長さが10mm以下である、前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
(6)前記電極の直径が1.0mm〜3.0mmである、前記(1)〜(5)のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
(7)前記細菌が、グラム陰性菌又はグラム陽性菌である、前記(1)〜(6)のいずれか一つに記載の細菌を検出する方法。
(8)前記細菌が、大腸菌、サルモネラ菌、黄色ぶどう球菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、リステリア菌、ウェルシュ菌、セレウス菌、及びボツリヌス菌からなる群から選ばれる少なくとも一つの菌である、前記(7)に記載の細菌を検出する方法。
(9)試料中の細菌を検出するために用いる電極付きセルであって、
試料を含んだ培地を入れるための容器5、
該容器の上部に嵌合することができる開口部2を有する蓋1、
該蓋部の中央から両側面に向かって直線上に配置されて、該蓋から該容器の垂直方向の略中心部へと伸びている四電極を構成する4本の電極4、及び
該4本の電極を支持し、該開口部にはめ込むことができる非導電性の電極支持部3、ここで、該電極支持部は、インピーダンスの検出部6である該電極の先端近傍のみが該容器内の培地中で露出するように該電極を覆っている、
からなる電極付きセル。
(10)前記容器の形状が円柱状でありかつ容量が少なくとも10mlである前記(9)に記載の電極付きセル。
(11)前記電極が直径1.5mm〜3.0mmの棒状電極である、前記(9)又は(10)に記載の電極付きセル。
(12)前記試料が食品である、前記(9)〜(11)のいずれか一つに記載の電極付きセル。
(13)前記(9)〜(12)のいずれか一つに記載の電極付きセルを収納するための少なくとも2つの収納部34を有する収納構造体35、ここで、該収納構造体は、試料を含んだ培地(測定液)が入った測定用電極付きセル、及び試料及び抗菌剤を含んだ培地(参照液)が入った参照用電極付きセルを収納できる、
該電極付きセルの電極に電流を供給するための電流供給部、及び
測定液及び参照液の電気インピーダンスを測定してインピーダンス変化を検出する測定部、
を含む電気インピーダンス変化に基づいて細菌の検出を行う装置。
(14)さらに、細菌の検出結果に基づいてランプを点灯させるインジケータ部を含む前記(13)に記載の装置。
(15)前記(1)〜(8)のいずれか一つに記載の方法を用いて試料中の細菌を検出するための、前記(9)〜(12)のいずれか一つに記載の電極付きセル。
(16)前記(1)〜(8)のいずれか一つの方法を用いて食品中の細菌を検出するための、前記(13)又は(14)のいずれか一つに記載の装置。


【発明の効果】
【0014】
本発明の細菌の検出方法を用いることにより、迅速に、例えば、食物の加工中又は調理時間内に食品中の細菌を検出できる。本発明の方法及び装置は、簡便・簡易であるので、食物の加工又は調理現場で用いることができ、検査の専門家でなくても簡単に操作でき、精度良く食品中の細菌を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の方法及び装置に用いる電極付きセルの分解図である。
図2】電極付きセルを検出装置にセットしてインピーダンスを測定する時の状態を示している。
図3】測定液又は参照液を入れて蓋をした状態の電極付きセルの断面図である。
図4】本発明の装置の一態様の斜視図である。
図5図4に示した装置の分解図である。
図6】本発明の一つの装置構成のブロック図を示している。
図7】測定液及び参照液を用いて測定した電気インピーダンス変化を模式的に示している。下段は、差分を示している。
図8】インピーダンスに対する塩濃度の影響を検討した結果である。
図9】インピーダンス検出部の長さの変更を示した図である。
図10】大腸菌を培養してインピーダンス変化を測定した結果である。
図11図10の結果を、初期値補正を行ってプロットし直したグラフである。
図12図4に記載の装置を用いて測定した、測定液及び参照液における電気インピーダンス変化の結果を示している。Aは、それぞれの溶液における電気インピーダンス変化を示しており、Bは、その差を示している。
図13図4に記載の装置を用いて、E. coliの検出を行った結果を示している。
図14図4に記載の装置を用いて、サルモネラ菌の検出を行った結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、「A〜B」と記載した場合は、下限としてAを含み、上限としてBを含み意味で用いられる。
【0017】
本発明の検出方法及び装置は、細菌(又は微生物)を含む対象物であれば特に制限なく用いることができるが、好ましくは食品に用いるものである。本明細書で言う「食品」とは、加工されていない食材、加工された食材、例えば、加工肉や加工魚、加工された食品、例えば、総菜や乳製品、調理された食品、顧客に提供される未調理又は調理された料理、飲料物その他の人が食物として摂取するものを意味する。食品が飲料物の場合はそのまま希釈液である培地で希釈して用いることができる。食品が固形物である場合は、希釈液である培地中に入れ手を用いて砕いて用いることもできるが、より固い固形物の場合は、例えば、希釈液や生理食塩水などを湿らせた拭取りガーゼ、脱脂綿などで食品の表面を拭取るふき取り材料を用いて、又はミキサーやストマッカーで細かく破砕して用いることもできる。
【0018】
本発明で検出できる細菌は、限定されないが、例えば、グラム陰性菌又はグラム陽性菌、特には、サルモネラ菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、リステリア菌、ウェルシュ菌、セレウス菌、ボツリヌス菌等の食中毒菌が本発明の検出対象として好ましい。
【0019】
本発明で用いる低塩濃度細菌培養用培地は、細菌の培養に適した、0.10%NaCl以下に相当する塩濃度の液体培地である。培地は、例えば、ミルクカゼイン、獣肉、心筋、ゼラチン、大豆たんぱくなどを酵素消化したペプトン、肉エキスや酵母エキスなどのエキス類、アミノ酸・ビタミンや血清や組織などの菌が要求する物質、胆汁酸塩およびドデシル硫酸ナトリウムなど、選択的に特定細菌種のみの発育を阻害する物質から構成される。細菌の培養に適した市販の液体培地、例えば、LB培地、肉エキスブイヨン培地、カゼイン・大豆混合ペプトン培地、ハートフュージョン培地、ブレインフュージョン培地、トリプトン培地から塩を減らした又は除いたものであれば特に制限なく用いるこができる。
本発明で用いる低塩濃度細菌培養用培地の塩濃度は、0.10%NaCl以下に相当する塩濃度であるが、好ましくは、0.08%以下である。
本発明においては、低塩濃度細菌培養用培地を用いることにより、測定試料を含んだ測定容器中の培地の塩濃度は、NaCl相当で、0.0045%〜0.2%となり、それにより、測定に適したインピーダンス抵抗値を得ることができる。測定試料を含んだ測定容器中の培地の塩濃度は、好ましくは、0.01〜 0.1%、更に好ましくは0.04〜0.08%NaCl相当である。
【0020】
本発明では、対照として、試料を含んだ抗菌剤含有低塩濃度細菌培養用培地を用いることを特徴とする。対照として用いる試料を含んだ抗菌剤含有低塩濃度細菌培養用培地(本発明では、参照液という)は、細菌の増殖を阻害する濃度以上の抗菌剤を含有する、測定液と同じ低塩濃度細菌培養用培地に測定液と同じ試料を懸濁したものであればよい。このような参照液は、細菌の増殖を阻害する濃度以上の抗菌剤を含有するように、試料を懸濁した低塩濃度細菌培養用培地に抗菌剤を加えて調製しても、また、抗菌剤を含んだ低塩濃度細菌培養用培地に試料を懸濁して調製してもよい。電気インピーダンスの測定における対照として通常は菌が混入していない培地を用いるが、測定対象が食材などの電気インピーダンスに影響を与える試料である場合は、試料(例えば食材)中の様々な成分により電気インピーダンスが影響を受けるため、測定が困難となる場合がある。特に、十分なインピーダンス抵抗値が得られない測定系においては、細胞増殖に伴うインピーダンス値の変化が小さいため測定誤差の影響が大きくなり、適切な細菌の検出ができない。本発明では、対照において、抗菌剤を予め添加し菌が増えない状態で同時測定することにより、試料(例えば食品)自体及び温度変化に起因するインピーダンス値の影響を除くことにより、より正確な検出を行うことができる。
【0021】
本発明で用いる抗菌剤は、測定対象となる細菌の増殖を抑えかつ電気インピーダンスに大きく影響を与えるものでなければ特に制限なく用いることができ、通常の市販の抗菌剤を用いることができる。例えば、ポリヘキサメチレン、ビグアナイド、ハイドロクロライド、アンピシリン、カナマイシン、ノボビオシン、メチルナフトキノン、トリアジン、イソプラチオラン、イプロジオン、サイアベンダゾールをあげることができるがこれらに限定されない。対照容器内の培地に含まれる抗菌剤の濃度は、菌の増殖を阻害する濃度以上であれば特に制限がないが、菌の増殖をほぼ完全に阻害する濃度が好ましい。
【0022】
本発明の測定方法においては、測定液(低塩濃度細菌培養用培地に試料(例えば食品)を懸濁した培地)及び参照液(抗菌剤を含有する低塩濃度細菌培養用培地に試料(例えば食品)を懸濁した培地)は、同じ量が好ましく、試料(例えば食品)中の細菌の検出を短時間で効率よく測定するためには、少なくとも10ml以上、好ましく20ml以上、更に好ましくは30ml以上である。
本発明で用いる測定容器及び参照容器は、同じ材質で同じ容量のものを用いるのが好ましい。容器の容量は、試料(例えば食品)中の細菌の検出を短時間で効率よく測定するためには、10〜40mlの測定液及び参照液を入れることができるものが好ましく、少なくとも10ml以上、好ましく20ml以上、更に好ましくは30ml以上である。容量の上限は特に制限はないが、100ml以下、特には50ml以下であれば装置がコンパクトになり好ましい。
本発明の方法においては、以下に記載するように、適当なインピーダンス抵抗値を発生しかつノイズを低減するためには、電極のインピーダンス検出部を溶液の中間部(溶液の上層部と溶液の下層部の中間)のみに配置することが好ましいので、測定液及び参照液の量にあった容量の測定容器及び参照容器を用いるのがよい。
【0023】
本発明の検出方法においては、試料である測定すべき食品を測定に用いる低塩濃度細菌培養用培地に懸濁し、それを同じ培地を用いて段階的(例えば、10倍ずつに)希釈したものを調製し、それぞれについて細菌の増殖に基づく電気インピーダンス変化を測定し、試料(例えば食品)中の細菌を測定する。また、段階的に希釈したそれぞれの培養液での菌の増殖に基づく電気インピーダンス変化を比較することにより、試料(例えば食品)中に混入した菌数を判定することもできる。
例えば、試料として食品10gを用いて、90mlの培地を希釈液として使用して約100mlの測定培液(初期測定液)を得る。これをそのまま使用して測定できるので、対象となる食品中の細菌のサンプリングロスを低減することができるとともに、細菌採取量を増大することができ、専門家以外の者が行っても判定ミスが生じにくい。更に初期測定液を培地で段階的に希釈、例えば、5mlを採取し45mlの培地を加えて段階的に10倍ずつに希釈して、細菌濃度が段階的に希釈された測定液を作成することができる。初期測定液に加えこれらの段階的に希釈された測定液を同時に測定することにより、食品中に混入した細菌数を判定することもできる。
このように、大量の溶液を用いることにより、1ml以下の少量を扱うピペットなどの器材が不要となり、専門家以外の者が専門施設以外でも容易に測定できる。
【0024】
本発明においては、電気インピーダンスを4電極からなる電極を用いて測定する。電極は棒状電極であることが好ましく、直径は、1.0mm以上、更に1.5mm以上が好ましい。直径が太いと装置の設計及び加工が容易となるがインピーダンス抵抗が低くなるという欠点があるので、電極は、直径1.0mm〜3.0mm、更には1.5〜3.0mm、特には約2mmの棒状電極が好ましい。
細菌培養用培地中に配置される電極のインピーダンス検出部の面積は、測定中のノイズを避けるために大きすぎないことが好ましい。具体的には、培地中に置かれるインピーダンス検出部の電極の長さは、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、更に好ましくは2〜3mmである。
電極は、ステンレス電極、白金線電極、金線電極、炭素棒電極等を用いることができるが、好ましくはステンレス電極である。
【0025】
電気インピーダンスは、液体培地に配置された電極に微弱な電圧をかけながら測定する。基準電圧は、70〜1600mVが好ましく、900〜1100mVが特に好ましい。70mV未満又は1600mV以上だと、ノイズが発生する。液体培地中の電流値は過大であると、細菌の発育を阻害するため、好ましくは5mA以下、更に1mA以下が好ましい。
【0026】
本発明の方法において測定される溶液抵抗(電気インピーダンス)は、少なくとも70オーム、好ましくは約100〜約200オームである。本発明の方法においては、細菌の増殖により、約20%の溶液抵抗の減少が確認できるので、非常に精度良く細菌の検出が行える。
測定(培養)時間は、食品中の細菌数や細菌の種類によって適宜変更可能であるが、通常は、5時間以内、好ましくは2時間以内で測定が完了する。食品中の細菌数が多い場合は、短い時間でインピーダンスの低下が確認でき、短時間で検出を終了できる。
本発明の方法を用いると、食品中の菌数が、10000cfu/10g食品以上であれば、5時間以内の測定で検出が可能である。
【0027】
また、本発明では、低塩濃度細菌培養用培地として特定の菌種が増殖するのに適した培地を選択することにより、一般生菌だけでなく、例えば大腸菌等の特定の菌種の検出が可能である。大腸菌群以外にも、サルモネラ、腸炎ビブリオ、又は黄色ブドウ球菌等に適した低塩濃度培養培地を用いることにより、それらの菌を効率よく検出できる。
【0028】
電気インピーダンス変化の測定は、同時点における測定液の電気インピーダンスから参照液の電気インピーダンスを引いた値をモニターすることにより測定することもできるが、予め又はある時点までの参照液における電気インピーダンスの平均値を求めておきその値を測定液の電気インピーダンスから引いた値をモニターすることによる測定でも行うことができる。参照溶液の電気インピーダンスを測定することにより、細胞の増殖以外の原因に基づく影響を排除でき、精度良く細菌の増殖を測定できる(図7)。
【0029】
本発明の電極付きセルの構造の概略図を図1及び2に示す。図1は、電極付きセルの分解図であり、図2は、電極付きセルを検出装置にセットしてインピーダンスを測定する時の状態を示している。電極付きセルは、測定液又は参照液を入れる容器5、蓋1及び電極部(電極4及び電極支持部3)からなる。蓋の中央には開口部2が設けられており、開口部に電極支持部を挿入することにより、電極が固定される。電極4は、4本の電極からなり、蓋の中心部から両側面へと直線上に配置される。各電極間の距離は、容器の大きさに応じて、適当なインピーダンスを得るように調節可能である。例えば、直径が約40mmの容器5の場合は、各電極間の距離は、約10mmとできる。図2に示されるように、蓋の開口部2には、電極に電源をつなぐための4本の電極の接点が位置するようになっている。
【0030】
電極(4)の大部分は、非導電性材料からなる電極支持部(3)によって覆われることにより、細い電極が折れることを防止している。インピーダンス抵抗をあげるためには、電極は細い方が一般には好ましいが、調理場等の現場で検査の専門家でない者が簡易な装置を扱う場合は、細い電極は折れる危険性があり、操作がしづらい。そのため、1.5mm以上の径を有する電極を用いるのが好ましい。電極支持部から露出しているインピーダンス検出部(図1の電極4の下端付近6)は、良好なインピーダンス抵抗を得るためには短い方が好ましく、長さ10mm以下が好ましく、5mm以下が特に好ましく、2〜3mmが更に好ましい。
【0031】
本発明においては、電極支持部を用いることにより、電極のインピーダンス検出部の面積を任意に調整して良好なインピーダンスを得ることができるとともに、電極のインピーダンス検出部の位置を、測定液及び参照液の上層と下層の間の中間部(特に、中間部付近のみ)に位置するように配置することが可能となっている。電極のインピーダンス検出部が測定・参照液の中間部に位置することにより、試料(例えば食品)から由来するインピーダンス測定に影響を与える夾雑物(沈殿物及び浮遊物)の影響を避けることができる。すなわち、食品などを試料として用いた場合は、測定液及び参照液の上層には食片浮遊物、下層には食片沈殿物が生じるので、検出部を溶液の中間部に配置することにより、測定阻害を防ぎ、安定的な測定を実現できる。
【0032】
測定液又は参照液を入れて蓋をした状態が図3に示されている。電極16は電極支持部15によって支持されて、その先端付近のインピーダンス検出部は、容器12中の溶液13の中間部に位置している。電極の他端の接点14は、蓋11の中央の開口部に位置し、検出装置の接点(図4の23)とつながって外部より定電流が供給される。
【0033】
図4は、本発明の検出装置の一例の斜視図である。図4においては、測定容器と参照容器の対を5連でセットできるように構成されているが、特に制限はなく、1対のみであってもよい。1対で1つの測定が可能であるので、段階的に希釈したものを同時に測定する場合は、2〜5連でセットできるように構成されているのが好ましい。装置の蓋21には、電極付きセルの上部の電極の接点と接触できる端子23が配置され、電極付きセルの電極上部端子14と本体蓋の端子23の接触を確実とするために、本体蓋21には、セルの蓋の形状に合わせた収納部22が形成されている。蓋を閉めると電極に電流が流れてインピーダンスの測定を開始する(測定中の状態26)。装置は、PCにつなげて、PCで制御可能である。本体25の前面には、インジケータ27が配置され、インピーダンス変化がおきた場合にその程度に応じて表示できるようになっている。本発明の装置の一態様の構成を示したブロック図を図6に示す
【0034】
図5は、図4の装置の分解図である。電極付きセル33を収納する収納部34の下には、培地を37℃に保温するヒーター36及び浴槽37が配置されている。
【実施例】
【0035】
以下、実施例より本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)塩濃度によるインピーダンスへの影響
図1と同様の構造を有する電極付きセルを用いて、培養によるインピーダンス変化を確認した。市販の通常のLB培地を用いた条件では、細菌の増殖は確認できたが、インピーダンス値が小さく(20オーム以下)、培養によるインピーダンス値の変化自体も非常に小さくノイズの影響もあり、細菌の検出に用いることができる程度のインピーダンス値の変化が確認できなかった。そのため、塩濃度を下げた培地LB培地を用いて検討を行った。測定条件:基準電圧2000mV、定電流:1mA
測定液組成:(a)0.9%NaCl水溶液(生理食塩水)、(b)0.5%NaCl水溶液(0.5%NaCl)、(c)0.1%NaCl水溶液、(d)LB培地(トリプトン10g、酵母エキス5g、NaCl5g/1000ml)、(e)塩無しLB培地(トリプトン10g、酵母エキス5g/1000ml)(f)BPW培地(ペプトン10g、NaCl5g、リン酸水素二ナトリウム3.5g、リン酸水素二カリウム1.5g/1000ml)(g)塩無しBPW培地(1%トリプトン水)
各溶液を作成し測定容器(40ml容容器:直径=38mm)に40mlずつ入れ、溶液に電極をセットし、溶液をインキュベートカバー(37℃)内に入れそのまま1時間放置した。その後、5分間測定を行った。
結果、塩濃度の低下に伴い抵抗値の上昇が確認できた。抵抗値を測定したところ、0.1%NaCl濃度以下の条件(c、e及びg)において、良好な抵抗値(約70オーム以上)を得ることができた。
【0037】
塩濃度の範囲を決定するための、NaCl水溶液を用いて、0.1%から塩濃度を下げていき、インピーダンス値を測定した(測定条件:基準電圧1600mV、定電流:1mA)。結果を図8に示す。塩濃度が、0.1%NaCl相当以下であれば、良好な抵抗値を示すことが判った。
【0038】
(実施例2)電極の長さによる抵抗値変化
電極のインピーダンス検出部(電圧検出部及び定電流部(図1の6の部分))の長さを変えて、測定時の抵抗値に対する影響を検討した。以下の表及び図9に示すように、電圧検出部及び定電流部の長さを変えて測定を行った(測定条件:基準電圧1600mV、定電流1mA、電極径2mm)。
【0039】
【表1】
【0040】
結果、いずれの場合も電極を長くすると逆に抵抗値が減少してしまうのが確認でき、また、定電流用の電極(4本のうち両端の2本)を長くした場合は、測定中にノイズが発生するのが確認できた。よって、電極面積(長さ)は全て統一し出来るだけ面積を小さくした方が良好な抵抗値が得られることが判った。
【0041】
(実施例3)培養によるインピーダンス変化の測定
培地として1%トリプトン水(ナカライテスク製)を用いて、以下のようにして培養によるインピーダンス値の変化を測定した。
(3−1)インピーダンス変化の測定
普通寒天培地に大腸菌を塗り37℃で一晩培養を行った。次いで、シャーレから白金糸を用いて菌をそぎ取り、5mlのLB培地へ溶解させた。50mlチューブに1%トリプトン水培地を45ml加え、そこに菌体溶液を5ml加え、10倍希釈の溶液(1)を得た。その後、106倍までの段階希釈を行った(希釈溶液(2)〜(6))。Blankとして、培地のみと菌の入った培地を用意し、各々に抗菌剤スーパーミル88を45μl添加した参照液を用意した。各溶液を40mlずつ測定容器(電極付きセル)に移し電極をセットして蓋を閉じ、容器と電気プローブを接続しインキュベートカバー(37℃)を被せた。基準電圧1200mV、定電流1mAの測定条件にて測定を開始し、およそ5時間培養を行い、インピーダンス値の変化を測定した。結果を図10に示す。
(3−2)菌数(cfu)の測定
希釈を行った菌液(4)〜(6)(104及び106倍希釈)をシャーレに100μlずつ分注し、普通寒天培地を各シャーレに流し込んで固まらせ、30℃で一晩培養して、翌日コロニー数をカウントした。結果は、希釈溶液(6)(105倍希釈溶液)の菌数が4.15x103であった。
【0042】
上記の測定結果(図10)において、測定開始40分後経過後の5分間の数値を初期値0として、データをプロットし直したものを図11に示す。このようなデータ処理を行うことにより、より精度良く菌の増殖、即ち菌の存在が確認できた。これらの結果より、インピーダンス変化の起こる時間は、菌濃度が高いほど早く、またその変動はBlankに比べ20%程度の変動であった。また、培養中に見られたノイズも非常に小さかった(1%程度)。この結果より、本発明により、5時間で約103オーダー/mlの菌数で検出可能なことが判った。更には、インピーダンス変化が起こる時間により、試料中の菌数を判定できることが判った。
【0043】
(実施例4)培地組成による抵抗値の影響
測定用の培養培地の組成を変えて、測定時の抵抗値に対する影響を検討した。培地は、0.4〜1%のカゼインペプトン水溶液(ナカライテスク社製)及び0.1〜0.5%牛肉エキス水溶液(ナカライテスク社製)を作成し、インピーダンスを測定した(測定条件:基準電圧1600mV、定電流1mA)。
結果は、全ての条件において、100オーム以上の溶液の抵抗値が得られた。また、牛肉エキスにおいては、濃度による抵抗値の変動が少なかった。
【0044】
(実施例5)電気インピーダンス変化の測定
図4及び図5に示す構造の装置を用いて、電気インピーダンス変化を以下のようにして測定した。
普通寒天培地に播いた菌(E. coli(NBRC 3301)、又はサルモネラ菌(NBRC 100797))よりコロニーを取り、予め販売者のマニュアルに従って調製した培地溶液(Cat. Fst-1000P/M 第一興商)40mlに溶解し、予め37℃にセットしておいた恒温槽を用いて一晩培養を行い前培養液とした。
培養した前培養液20mlを培地溶液180mlに加えよく混和した。予め分注しておいた培地溶液180mlに混和液20mlを加えよく混和した。この操作を4回繰り返し、希釈系列を作製した。作製した混和液を、一つの希釈度について4個X40mlずつ測定容器に分注し、それぞれがペアとなるように、分注溶液の半分(2個)に抗菌剤溶液(ポリヘキサメチレンビグアナイドハイドロチオライドを主成分とする、Cat. Fst-K、第一興商)を2滴(約80μl)添加した。各溶液を調整後、電極付き蓋を付け、測定装置の手前側に抗菌剤添加なし(A ch:Broth ch)、奥側に抗菌剤有り(B ch:Reference ch)をセットし、アームを下ろしてスタートスイッチを押し測定を行った。
菌(E. coli(NBRC 3301))を用い、1.5 x 105 cfu/mLとなるように菌数を調製した培地溶液(抗菌剤添加なし及び抗菌剤有り)を用いて電気インピーダンス変化を測定した結果を図12に示す。Aは、抗菌剤添加なし(Broth ch)、抗菌剤有り(Reference ch)のそれぞれの電気インピーダンス変化を示しており、Bは、それらの差を示している。
【0045】
(実施例6)微生物初濃度と判定時間
実施例5の方法による測定にて得られたデータを用いて、陽性判定点の算出を行った、各ペアとなるデータにて、B chデータからA chデータを差し引いた。差し引いたデータの、62〜67分間の平均値を算出し、オフセット値とした。68分以降のデータに対して、オフセット値を差し引き測定値とした。測定値が6オームを超え、10分継続したところを陽性点とした。各データから得られた陽性点と菌数を用いてデータのプロットを行った。なお、菌数は以下のようにして算出した。
作製した培地希釈系列より5番目を100μlづつ、3枚の普通寒天培地に測り取り、コンラージ棒を用いて溶液を均等に塗抹した。予め37℃にセットしておいた恒温槽を用いて、一晩培養を行った。培養後、コロニー数をカウントし、測定溶液の菌数を算出した。
E. coliの結果を図13に、サルモレラ菌の結果を図14に示す。これらの結果より、105 cfu/mLで3時間程度で菌の陽性判定ができること、また菌数が100個オーダーでも10時間の測定で確認できることが判った。このように、本発明の方法及び装置を用いて、菌数を精度よく測定できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の方法及び装置により、簡易かつ迅速に、食品への細菌の混入を検出できる。
【符号の説明】
【0047】
1 蓋
2 開口部
3 電極支持部
4 電極
5 容器
6 インピーダンス検出部
11 蓋
12 本体
13 測定液
14 電極端子
15 電極支持体
16 電極
21 装置本体蓋
22 セル蓋収納部
23 接点
24 電極付きセル
25 装置本体
26 閉じた蓋
27 インジケータ
31 装置本体蓋
32 セル蓋収納部
33 電極付きセル
34 セル収納部
35 収納構造体
36 ヒーター
37 浴槽
38 本体カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14