特許第6143335号(P6143335)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143335
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】多管式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28D 7/16 20060101AFI20170529BHJP
   F28F 9/22 20060101ALI20170529BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20170529BHJP
   F28F 1/34 20060101ALI20170529BHJP
   F02M 26/22 20160101ALI20170529BHJP
【FI】
   F28D7/16 A
   F28F9/22
   F28F1/02 A
   F28F1/34
   F02M26/22
【請求項の数】2
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-70653(P2013-70653)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-194296(P2014-194296A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000120249
【氏名又は名称】臼井国際産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123869
【弁理士】
【氏名又は名称】押田 良隆
(72)【発明者】
【氏名】滝川 一儀
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 忠弘
(72)【発明者】
【氏名】滝川 一真
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 豪孝
【審査官】 西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−232020(JP,A)
【文献】 特開2007−154683(JP,A)
【文献】 特開2009−114924(JP,A)
【文献】 特開2013−053620(JP,A)
【文献】 特開2004−028469(JP,A)
【文献】 特開2008−196319(JP,A)
【文献】 特開2008−231929(JP,A)
【文献】 特開2009−091948(JP,A)
【文献】 特開2012−047105(JP,A)
【文献】 特開2007−225190(JP,A)
【文献】 特許第4386215(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 7/16
F28F 9/22
F02M 26/22
F01N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数積層された扁平伝熱管と、該扁平伝熱管の外周を囲繞するように形成されたケーシングと、該ケーシングの両端部に設けられ、前記扁平伝熱管の両端部が貫設されたチューブシートとを備え、前記扁平伝熱管内を流通する排気ガスと前記ケーシング内を流通する冷却水との間で熱交換を行う方式の多管式熱交換器であって、端部に冷却水配管を接続する冷却水流入管を設けると共に基端部を前記ケーシングの排気ガス流入口側端部に前記ケーシング長手方向と略直交する方向に設けられた長孔からなる冷却水流入用開口部を覆うように接続する冷却水分配器を備え、かつ前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に、先端が排気ガス流入口側のチューブシート内面を指向した少なくとも1箇のガイド部材を有し、さらに前記ガイド部材が前記扁平伝熱管に少なくとも1箇所で固定されている多管式熱交換器において、前記冷却水流入用開口部付近に前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に冷却水が指向するように前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間とに対応した位置に複数の噴出孔を有するノズル部材を有し、前記ノズル部材は扁平伝熱管側に断面略V字状もしくはU字状で扁平伝熱管の積層幅に応じて突出した凸状部を有し、該凸状部のチューブシート側(排気ガス流入口側)に前面側傾斜面を形成し該凸状部の両端部に両端部傾斜面を形成し、かつ前記前面側傾斜面の各扁平伝熱管の間の空間に対応した位置及び前記両端部傾斜面の扁平伝熱管とケーシング間の空間に対応した位置に各空間を指向した噴出孔を設けたことを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】
複数積層された扁平伝熱管と、該扁平伝熱管の外周を囲繞するように形成されたケーシングを備え、前記扁平伝熱管内を流通する排気ガスと前記ケーシング内を流通する冷却水との間で熱交換を行う方式のチューブシートレスタイプの多管式熱交換器であって、端部に冷却水配管を接続する冷却水流入管を設けると共に基端部を前記ケーシングの排気ガス流入口側端部に前記ケーシング長手方向と略直交する方向に設けられた長孔からなる冷却水流入用開口部を覆うように接続する冷却水分配器を備え、かつ前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に、先端が排気ガス流入口側を指向した少なくとも1箇のガイド部材を有し、さらに前記ガイド部材が前記扁平伝熱管に少なくとも1箇所で固定されている多管式熱交換器において、前記冷却水流入用開口部付近に前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に冷却水が指向するように前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間とに対応した位置に複数の噴出孔を有するノズル部材を有し、前記ノズル部材は扁平伝熱管側に断面略V字状もしくはU字状で扁平伝熱管の積層幅に応じて突出した凸状部を有し、該凸状部のチューブシート側(排気ガス流入口側)に前面側傾斜面を形成し該凸状部の両端部に両端部傾斜面を形成し、かつ前記前面側傾斜面の各扁平伝熱管の間の空間に対応した位置及び前記両端部傾斜面の扁平伝熱管とケーシング間の空間に対応した位置に各空間を指向した噴出孔を設けたことを特徴とする多管式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンあるいはガソリンエンジン等の冷却水等の液体状の冷却媒体によってエンジンの排気ガスからの熱回収や、EGRガスを冷却する多管式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多管式の熱交換器としては、例えば以下に記載するEGRガス冷却装置(特許文献1〜7)が提案されている。
【0003】
即ち、特許文献1には、図36図37にその概略を示すように、両端部に冷却媒体流入口201−1a及び冷却媒体流出口201−2aが設けられた胴管201の両端部付近に固定されたチューブシート203に伝熱管群202が固着配列され、さらに胴管201の両端部に端部キャップ204が固着され、該端部キャップ204にはEGRガスの流入口204−1と及び流出口204−2が設けられ、該端部キャップ204のEGRガスの流入口204−1と及び流出口204−2の外側開口端部に締結用フランジ205が外嵌固着された構造の多管式のEGRガス冷却装置において、EGRガスの流入口204−1側に設ける複数個の冷却媒体流入口201−1aを、胴管201内に流入した冷却媒体がEGRガス流入口204−1側のチューブシート203に沿って流れるように胴管201の軸芯に対する垂直線に対し傾斜させて設けたEGRガス冷却装置が示されている。
【0004】
特許文献2には、図38図39にその概略を示すように、複数並設された扁平チューブ212と、該扁平チューブ212の外周を囲繞するように形成されたケース213と、該ケース213の両端部に設けられ各扁平チューブの両端部が貫設されたヘッダプレート(チューブシート)214とを備え、扁平チューブ212内を流通する排気ガスと、ケース213内を流通する冷却水との間で熱交換を行うように構成されたEGRクーラ211であって、基端部221がケース213に接続されると共に、先端部220に冷却水入口管216が接続される冷却水供給チャンバ215を備え、該冷却水供給チャンバ215は先端部220から基端部221に向って漸次幅広となる形状と成し、基端部221の幅がケース213の幅に略等しくなるように形成され、ケース213の他端部には冷却水出口管222が設けられたEGRクーラが示されている。図中、217は端部キャップ、218は締結用フランジである。
【0005】
特許文献3には、図40図41にその概略を示すように、熱交換器のシェル231にチューブアセンブリ234を内蔵し、両端部をエンドプレート(チューブシート)233に支持された各扁平チューブ232の内部に高温のEGRガスを通し、その外部に冷却水を通して熱交換するEGRクーラ用熱交換器において、シェル231内に冷却水を導入する冷却水入口231−1を2箇所以上設け、シェル231内から冷却水を排出する冷却水出口231−2を1箇所設け、冷却水入口231−1に冷却水入口パイプアダプタ235を設ける構成となしたEGRクーラ用熱交換器が示されている。図中、231−1aは冷却水入口パイプ、231−2aは冷却水出口パイプである。
【0006】
特許文献4には、図42図43にその概略を示すように、冷却水導入口241−1及び排出口241−2を備えた中空状のシェル241と、シェル241内部に配置されたEGRガスが通過する複数の扁平チューブ242とを備えたEGRクーラ240において、シェル241の下側面部241−3に設けた冷却水導入口241−1に冷却水を導入するアダプタ部材243を開口243−1を有して配置した構成のEGRクーラが示されている。
【0007】
特許文献5には、図44図45にその概略を示すように、冷却水導入口251−1及び排出口251−2を備えた中空状のシェル251と、シェル251内部に配置されたエンドプレート(チューブシート)253及びEGRガスが通過する複数の扁平チューブ252とを備えたEGRクーラ250において、冷却水導入口251−1に取り付けられシェル251内に冷却水を導入するアダプタ部材254を備え、このアダプタ部材254は当該アダプタ部材内部からシェル251内まで延設され、冷却水導入口251−1からシェル251内に導入される冷却水の流入方向を調整する案内板255を備えたEGRクーラが示されている。
【0008】
特許文献6には、図46図47にその概略を示すように、円筒状の冷却水入口パイプ261−1及び排出口(図面省略)を備えた中空状のシェル261と、該シェル261内部に配置されたEGRガスが通過する複数の扁平チューブ262とを備えたEGRクーラ260において、冷却水入口パイプ261−1のシェル261内の出口に接合される有底筒状のプレス成形品であって、底面あるいは側面下部に冷却水を任意の方向に向けて放出する放出口261−2aを形成したアタッチメント261−2を設けたEGRクーラが示されている。
【0009】
上記特許文献1〜6は、いずれも複数積層された扁平伝熱管の両端部を組付けるためのチューブシート(ヘッダプレート、エンドプレート等)を備えた構成となしたものであるが、例えば特許文献7には複数積層された扁平伝熱管を本体部(胴管、ケース、外管等)内に気密性を保持して収容した、チューブシートレスタイプあるいはヘッダプレートレスタイプの多管式熱交換器(図面省略)が提案されている。この種の多管式熱交換器は、複数積層される扁平伝熱管の両端部に拡張部を設けて相互に当接させて本体部(胴管、ケース、外管等)に収容するとともに、その扁平伝熱管の両端部を気密的に本体部に組付けて構成することにより、チューブシート(ヘッダプレート、エンドプレート等)を省略することができて、製造コストの低減をはかったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4386215号
【特許文献2】特開2007−154683号
【特許文献3】特開2008−231929号
【特許文献4】特開2009−114924号
【特許文献5】特開2009−91948号
【特許文献6】特開2012−47105号
【特許文献7】特開2007−225190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した従来の多管式の熱交換器には、以下に記載する欠点がある。
即ち、前記特許文献1に記載されたEGRガス冷却装置は、冷却媒体流入口201−1aを複数個設けることによりチューブシート203付近のオーバーヒートエリアをほとんど皆無にできるので冷却媒体の沸騰の解消に有効であるが、冷却媒体流入口201−1aの流入方向に直角な断面積は冷却媒体流入口へ流入する配管の断面積とは略等しく、冷却媒体流入口から流入する冷却媒体の流速を冷却媒体流入口へ流入する配管内の流速より増速させる作用を有しないため、チューブシート203内面に沿って流れる流速の増速作用が十分に得られず、沸騰防止作用の不足が危惧されている。
【0012】
特許文献2に記載されたEGRガス冷却装置は、冷却水供給チャンバ215がヘッダプレート214と平行に位置していることから、流入冷却水流にヘッダプレート214内面に対する指向性がなく、冷却水供給チャンバ215の先端部220から流入した冷却水は単に冷却水出口管222に向ってケース213の軸方向に流れるだけであるから、排気ガス(EGRガス)流入口側での冷却水の沸騰防止作用が十分に得られないという欠点がある。
【0013】
特許文献3に記載されたEGRクーラ用熱交換器は、冷却水入口231−1よりシェル231内に多くの流れが流水方向を左右に変えながら流入すると共に、前記特許文献2に記載されたEGRガス冷却装置と同様に、冷却水流にエンドプレート(チューブシート)233内面に対する指向性がなく、単に冷却水出口231−2aに向ってシェル231の軸方向に流れるだけであるから、EGRガス流入口側での冷却水の沸騰防止作用が十分に得られないという欠点がある。
【0014】
特許文献4に記載されたEGRクーラの場合は、開口243−1から流入した冷却水はアダプタ部材243を通過して冷却水導入口241−1よりシェル241内に多くの流れが流水方向を左右に変えながら流入しチューブ列の各チューブの間に導入され、シェル241内の各チューブの軸方向を側面に沿い、排出口241−2に向って流れるだけでありその冷却水流にエンドプレート(チューブシート)245内面に対する指向性がないため、前記特許文献2、3に記載されたEGRガス冷却装置及びEGRクーラ用熱交換器と同様に、EGRガス流入口側での冷却水の沸騰防止作用が十分に得られないという欠点がある。又、このEGRクーラは、扁平伝熱管列として扁平伝熱管の長寸方向が上下方向を向くように垂直に配置された構成のものに限られ、扁平伝熱管が水平に配置されて積層された構造のEGRクーラの場合は、局所的な冷却水の沸騰を防止する効果がほとんど得られないという難点がある。
【0015】
特許文献5に記載されたEGRクーラの場合は、冷却水導入口251−1からシェル251内に流入する冷却水流は、流入する直前にエルボ状アダプタ部材254にて流れ方向を略90度変えられた後、さらに案内板255により扁平チューブ252の積層方向に指向(一部の流れは案内方向とは逆方向)されるが、急激に流れ方向が変えられるのみでその冷却水流にエンドプレート253内面に対する指向性に乏しいため、前記特許文献2〜4に記載されたものと同様に、単にシェル251の軸方向を排出口251−2に向って流れるだけであるから、EGRガス流入口側での冷却水の沸騰防止作用が十分に得られないという欠点がある。
【0016】
特許文献6に記載されたEGRクーラの場合は、円筒状の冷却水入口パイプ261−1からシェル261内に流入する冷却水は、冷却水入口パイプ261−1のシェル261内の出口に接合された有底筒状のアタッチメント261−2によりガス入口側のエンドプレート264付近に向けて放出され、かつシェル261の幅方向の左右両側に多少は広がりながら放出されることとなるが、円筒状の冷却水入口パイプ261−1はシェル261の端部付近に設置されてはいるものの、冷却水の沸騰防止作用は冷却水入口パイプ261−1の近傍が最も大きく、冷却水入口パイプ261−1より離れるほど小さく、シェル261の幅方向全体にわたって均一な冷却水の沸騰防止効果が得られないという問題がある。このために冷却水入口パイプ261−1はエンドプレート264より離す必要があるが、冷却水量はエンドプレート264付近に達するまでに減速される傾向があり、この傾向はシェル261の幅方向の両端側への流れに特に顕著となり、冷却水の放出口261−2aをエンドプレート264付近に向けて形成したアタッチメント261−2であっても、シェル261の幅方向全体にわたって冷却水の放出量及び流入速度を適切に制御することができないため、排気ガス(EGRガス)流入口側での冷却水の沸騰防止作用を均一にかつ十分に高めることができないという欠点があり、特に大型のEGRクーラには適さないという難点がある。図中、262は扁平チューブ、263は入口ヘッダである。
【0017】
又、特許文献7に記載されたチューブシートレスタイプあるいはヘッダプレートレスタイプの多管式熱交換器の場合は、前記特許文献1〜6に共通のチューブシートあるいはヘッダプレート自体が存在しないのでその内表面から沸騰するという問題はないものの、本体部(胴管、ケース、シェル等)内に流入した冷却水は、本体部内の各扁平伝熱管の側面に沿って流れるだけでありその冷却水流に複数積層された扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側方向に対する指向性がないため、扁平伝熱管の拡張部に近接する外表面の排気ガス(EGRガス)流入口側での冷却水の沸騰防止作用が十分に得られないという欠点がある。
【0018】
本発明は上記した従来の多管式熱交換器の問題を解決するためになされたもので、特に伝熱管群を扁平チューブで構成した多管式熱交換器において、ケースあるいはシェル内に導入される冷却水流に、チューブシート(ヘッダプレート、エンドプレート等)内面、あるいは扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側方向に対する指向性を高めて排気ガス(EGRガス)流入口側での冷却水の沸騰防止作用を十分に高めることができる多管式熱交換器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る多管式熱交換器は、複数積層された扁平伝熱管と、該扁平伝熱管の外周を囲繞するように形成されたケーシングと、該ケーシングの両端部に設けられ、前記扁平伝熱管の両端部が貫設されたチューブシートとを備え、前記扁平伝熱管内を流通する排気ガスと前記ケーシング内を流通する冷却水との間で熱交換を行う方式の多管式熱交換器であって、端部に冷却水配管を接続する冷却水流入管を設けると共に基端部を前記ケーシングの排気ガス流入口側端部に前記ケーシング長手方向と略直交する方向に設けられた長孔からなる冷却水流入用開口部を覆うように接続する冷却水分配器を備え、かつ前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に、先端が排気ガス流入口側のチューブシート内面を指向した少なくとも1箇のガイド部材を有し、さらに前記ガイド部材が前記扁平伝熱管に少なくとも1箇所で固定されている多管式熱交換器において、前記冷却水流入用開口部付近に前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に冷却水が指向するように前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間とに対応した位置に複数の噴出孔を有するノズル部材を有し、前記ノズル部材は扁平伝熱管側に断面略V字状もしくはU字状で扁平伝熱管の積層幅に応じて突出した凸状部を有し、該凸状部のチューブシート側(排気ガス流入口側)に前面側傾斜面を形成し該凸状部の両端部に両端部傾斜面を形成し、かつ前記前面側傾斜面の各扁平伝熱管の間の空間に対応した位置及び前記両端部傾斜面の扁平伝熱管とケーシング間の空間に対応した位置に各空間を指向した噴出孔を設けたことを特徴とするものである。
【0020】
本発明に係る多管式熱交換器は又、複数積層された扁平伝熱管と、該扁平伝熱管の外周を囲繞するように形成されたケーシングを備え、前記扁平伝熱管内を流通する排気ガスと前記ケーシング内を流通する冷却水との間で熱交換を行う方式のチューブシートレスタイプの多管式熱交換器であって、端部に冷却水配管を接続する冷却水流入管を設けると共に基端部を前記ケーシングの排気ガス流入口側端部に前記ケーシング長手方向と略直交する方向に設けられた長孔からなる冷却水流入用開口部を覆うように接続する冷却水分配器を備え、かつ前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に、先端が排気ガス流入口側を指向した少なくとも1箇のガイド部材を有し、さらに前記ガイド部材が前記扁平伝熱管に少なくとも1箇所で固定されている多管式熱交換器において、前記冷却水流入用開口部付近に前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に冷却水が指向するように前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間とに対応した位置に複数の噴出孔を有するノズル部材を有し、前記ノズル部材は扁平伝熱管側に断面略V字状もしくはU字状で扁平伝熱管の積層幅に応じて突出した凸状部を有し、該凸状部のチューブシート側(排気ガス流入口側)に前面側傾斜面を形成し該凸状部の両端部に両端部傾斜面を形成し、かつ前記前面側傾斜面の各扁平伝熱管の間の空間に対応した位置及び前記両端部傾斜面の扁平伝熱管とケーシング間の空間に対応した位置に各空間を指向した噴出孔を設けたことを特徴とするものである。
【0021】
本発明のチューブシートを備えた多管式熱交換器及びチューブシートレスタイプの多管式熱交換器における、前記ガイド部材は、短冊状もしくは櫛歯状であることを好ましい態様とするものである。
【0022】
さらに、前記ガイド部材は前記扁平伝熱管と該扁平伝熱管に固着された支持部材の双方に固定されていること、又、前記支持部材は短冊状もしくは櫛歯状であること、そして又、前記短冊状支持部材は当該短冊状部の先端近傍部が扁平伝熱管に固定されていること、前記櫛歯状支持部材は当該櫛歯状部の先端近傍部が扁平伝熱管に固定されていること、を好ましい態様とするものである。
【0023】
ここで、前記短冊状ガイド部材は片端が櫛歯状支持部材の基端部に固定され、前記櫛歯状ガイド部材の基端部は短冊状支持部材の片端もしくは櫛歯状支持部材の基端部に固定されていることを好ましい態様とするものである。
【0024】
又、本発明においては、前記積層された扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に、扁平伝熱管の軸方向に複数のガイド部材を有すること、及び、前記積層された扁平伝熱管群が扁平伝熱管の扁平方向に複数群設けられ、かつ少なくとも一つの前記ガイド部材が前記複数群の扁平伝熱管に跨って配置されていることを好ましい態様とするものである。
【0025】
さらに、前記ガイド部材の短冊状ガイド部が扁平伝熱管の平坦面に対しほぼ直角に設けられていることを好ましい態様とするものである。
【0026】
又、前記ガイド部材には扁平伝熱管に固定される少なくとも一つのフィン部を有すること、及び、前記フィン部は前記ガイド部材の先端部近傍に設けられていることを好ましい態様とするものである。
【0027】
本発明は又、前記積層された扁平伝熱管群が扁平伝熱管の扁平方向に複数群設けられ、かつ前記ガイド部材が前記複数群の扁平伝熱管に跨って少なくとも一つ配置され、さらに前記ガイド部材は各々の扁平伝熱管に固定される複数のフィン部を有すること、及び、前記フィン部は前記扁平伝熱管の扁平部に固定されていることを好ましい態様とするものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、排気ガス(EGRガス)流入口側での冷却水の沸騰防止作用を十分に高める手段として、冷却水をチューブシート内面、あるいは扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側方向を指向して流入させるよう冷却水分配器及びガイド部材を設ける手段をこうじたもので、これによりチューブシート、又は扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側方向への指向性がより高められ、排気ガス(EGRガス)流入口側での冷却水の沸騰防止効果を向上させることが可能となる。
即ち、本発明に係る多管式熱交換器は、以下に記載する効果を奏する。
1.冷却水がチューブシート内面、あるいは扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側を指向してケーシング内に流入することにより、ケーシング内に流入した冷却水が排気ガス流入口側のチューブシート内表面に沿って流れるので、チューブシート内表面付近、あるいは扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側付近での冷却水沸騰をより効果的に防止することができる。
2.前記ガイド部材が扁平伝熱管の外壁面、特に扁平面に接触固定されていることにより、以下に記載する効果を奏する。
・排気ガスからの熱が固定部からガイド部材に伝播し、ガイド部材が放熱フィンとしての機能を発揮して、冷却水流の確実な誘導と相俟って扁平管外壁面からの交換熱量を増加させて外壁面温度を低下させ、固定部付近からの沸騰を効果的に防止するとともに、熱応力を緩和させることができる。
・ガイド部材が対向する扁平管外壁の互いに平行な扁平(平坦)面間に配置・固定されるとガイド面は扁平管の各外壁の扁平面に対し何れもほぼ直角に配設されることなり補強リブの機能を発揮して、温度上昇やエンジン振動などに伴う扁平伝熱管の特に積層方向に対する変形に対して抑制力を発揮してチューブシートと扁平伝熱管との固定部、もしくは扁平伝熱管の各拡管部相互の固定部及びケーシングとの固定部の振動応力や熱応力の上昇を効果的に防止する。
・扁平管とガイド部材は当接させて固定するのであるから組み立て時に扁平管外壁面との間に微小な隙間を確保する高精度の組み立て・固定技術は必要がなく少ない工数で安価に製作することができる。
なお、ガイド部材が短冊状の場合、長尺であってもその先端付近は扁平管外壁面に固定されているので、冷却水流速や圧力の変化あるいは装着されるエンジン自身もしくはエンジンが搭載される車両の路面からの振動により加振されても先端位置が変動することがなく、冷却水流がチューブシートに向かって確実に流れ、チューブシートに沿った流れが確保され、扁平伝熱管やチューブシートとの干渉を生じフレッティング磨耗が発生することがない。
・前記短冊状ガイド部材はその先端付近を扁平伝熱管の平坦面等の外壁面に固定させているので先端の振動が抑制されていて長尺化が可能であり、扁平伝熱管群の積層配列が複数列におよぶ大型のEGRクーラであっても、冷却水流入開口部から離れた位置に配置されている扁平伝熱管群のチューブシート側(EGRガス流入側)のチューブシート内面付近(拡径部の当接部付近)にも冷却水流を確実に到達させることができ、該扁平伝熱管群のチューブシート内面(拡径部の当接部付近)付近及びその近傍の扁平伝熱管の外表面での冷却水沸騰を効果的に防止することができる。
・扁平伝熱管の間の1つの空間部に複数の短冊状ガイド部材を配置した場合には、冷却水の整流ガイド作用がさらにきめ細かく発揮され、例えば扁平伝熱管群の積層配列を複数配列した大型EGRクーラにあっては、EGRガス流入側(チューブシート側)から離れた位置のガイド部材を冷却水流入開口部から離れた位置に配置された扁平伝熱管群の各扁平伝熱管の壁面にまで達する長尺のガイド部材とし、冷却水流入開口部に近い扁平伝熱管には当該扁平伝熱管の扁平位置におさまる短尺のガイド部材をよりチューブシート付近(拡径部の当接部付近)に配置し、前記長尺ガイド部材と短尺のガイド部材とを組合わせることにより、EGRガス流入側の広い範囲にわたって冷却水の流れ方向、流速、流量を制御して冷却水沸騰をより効果的に防止することができる。
・EGRガス流入側の広い範囲にわたって冷却水の流れ方向、流速、流量を制御して冷却水の沸騰をより効果的に防止することができることになり、冷却水流入開口部の設置位置をチューブシート側(EGRガス流入側)から離すことが可能となることによってレイアウト性が向上すると共に、扁平伝熱管(拡管部を含む)、チューブシート、ケーシング、ボンネットの組立・固定作業性も極めて良好となる。
3.又、ケーシングに設けられた冷却水流入用開口部付近に、前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間部内に冷却水が指向するように前記積層された各扁平伝熱管の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管とケーシング内面との間の空間とに対応した位置に複数の噴出孔を設けたノズル部材を設けることにより、チューブシート内表面付近、あるいは扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側付近でのより大きな冷却水沸騰防止効果が得られる。
4.前記噴出孔の断面積の総和を前記冷却水分配器内の冷却水の流れ直角方向断面積より小さくすることにより、前記噴出孔からの冷却水の噴出速度が前記冷却水分配器内の軸直角方向断面における平均流速より増速されてチューブシート内表面付近、あるいは扁平伝熱管の排気ガス(EGRガス)流入口側付近での冷却水沸騰防止作用をより高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施例に係る多管式熱交換器を一部省略して示す要部破断概略側面図である。
図2図1A−A矢視図である。
図3図1に示す多管式熱交換器の短冊状ガイド部材単体を示す拡大斜視図である。
図4図1に示す多管式熱交換器の短冊状ガイド部材単体の変形例を示す拡大斜視図である。
図5図3に示す短冊状ガイド部材を採用した場合の図2点円部を拡大して示す断面図である。
図6図3図4に示す左右両側に固定用フィンを有する短冊状ガイド部材と、片側のみに固定用フィンを有する短冊状ガイド部材を用いた場合の図1B−B拡大断面図で、図(A)は左右両側に固定用フィンを有する短冊状ガイド部材を用いた場合、図(B)は片側のみに固定用フィンを有する短冊状ガイド部材を用いた場合をそれぞれ示す。
図7図1に示す多管式熱交換器のガイド部材として用いる櫛歯状ガイド部材の一例を示す拡大斜視図である。
図8】本発明の第2実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図9図8に示す多管式熱交換器のガイド部材の要部を示す斜視図である。
図10図8に示す多管式熱交換器の他のガイド部材の要部を示す斜視図である。
図11】本発明の第3実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図12図11に示す多管式熱交換器のガイド部材を示す斜視図である。
図13図11A矢視図である。
図14図11B−B矢視図である。
図15】本発明の第4実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図16図15に示す多管式熱交換器のガイド部材を示す斜視図である。
図17】本発明の第5実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図18図17に示す多管式熱交換器のガイド部材を示す斜視図である。
図19】本発明の第6実施例に係る多管式熱交換器の櫛歯状ガイド部材を示す斜視図である。
図20図19に示す櫛歯状ガイド部材の要部を拡大して示す斜視図である。
図21】本発明の第7実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図22図21C−C矢視図である。
図23】本発明の第8実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図24図23D−D矢視図である。
図25】本発明の第9実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図26図25に示すガイド部材の要部を拡大して示す斜視図である。
図27】本発明の第10実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図28】(ア)は図27E−E矢視図で、(イ)は図27図28(ア)に示すノズル部材の拡大斜視図である。
図29】本発明の第11実施例に係る多管式熱交換器の要部を示す概略縦断面図である。
図30図29F−F矢視図である。
図31図29に示す多管式熱交換器のノズル板を一部省略して示す斜視図である。
図32】本発明の第12実施例に係る多管式熱交換器(チューブシートレスタイプ)の要部を示す概略縦断面図である。
図33図32G−G矢視図である。
図34図32に示す多管式熱交換器の扁平伝熱管群を概略的に示す斜視図である。
図35図34H−H矢視拡大図である。
図36】従来の多管式熱交換器の第1例を中央部を省略して示す概略平面図である。
図37図36に示す多管式熱交換器の中央部を省略して示す概略縦断面図である。
図38】従来の多管式熱交換器の第2例を示す概略縦断面図である。
図39図38のイ−イ線上の概略図である。
図40】従来の多管式熱交換器の第3例を斜め下方から見た概略斜視図である。
図41図40に示す多管式熱交換器の概略縦断面図である。
図42】従来の多管式熱交換器の第4例を斜め下方から見た概略斜視図である。
図43図42に示す多管式熱交換器の概略縦断面図である。
図44】従来の多管式熱交換器の第5例を示す概略斜視図である。
図45図44に示す多管式熱交換器の概略縦断面図である。
図46】従来の多管式熱交換器の第6例を示す概略縦断面図である。
図47図46に示す多管式熱交換器の概略横縦面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1図6に示す本発明の第1実施例に係る多管式熱交換器は、好ましくは伝熱フィンが内挿固着された複数本の扁平伝熱管2が並設されて積層された扁平伝熱管群と、該扁平伝熱管群の外周を囲繞するように形成されたケーシング1と、該ケーシング1の両端部に設けられ、各扁平伝熱管2の両端部が貫通支持されたチューブシート3を備え、ケーシング1の片側の端部には排気ガス流入ボンネット4が、他端には排気ガス流出ボンネット5がそれぞれ設けられ、さらにケーシング外周壁面の排気ガス流入ボンネット4側端部付近には扁平伝熱管2の積層方向に略平行な略矩形の長孔からなる冷却水流入用開口部6が設けられ、排気ガス流出ボンネット5側端部には冷却水流出管7が接続されている。
【0033】
前記冷却水流入用開口部6には、該冷却水流入用開口部6を覆うように基端部(底部)が開口されたボックス形の冷却水分配器8をケーシング1の軸芯に対する垂直線に対し平行に(又は傾斜させて)設ける。この冷却水分配器8は、基端部に前記冷却水流入用開口部6を覆うフランジ部8−1を有し、該基端部と反対側端部に冷却水配管(図面省略)に接続する冷却水流入管9がケーシング外壁面と略平行に横設されている。この冷却水流入管9には、前記冷却水分配器8内に連通する長孔からなる冷却水流入口9−1が設けられ、他端はキャップ(図示せず)により閉鎖されている。
【0034】
ケーシング1内には、該ケーシング内に流入した冷却水が扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット4方向に指向してチューブシート3内面に沿うように又は積層された扁平伝熱管2の間の空間部を流れるようにするための短冊状ガイド部材10a又は10bを配設する。この短冊状ガイド部材10aは、図3に拡大して示すように、ガイド面10a−1の上部に扁平伝熱管2の平坦面又はケーシング1内壁との固定用フィン10a−2が当該ガイド部材10aの側面よりその厚み分外側に突出するように背面側に直角に折曲げられて形成され、又、図4に拡大して示す短冊状ガイド部材10bは、当該ガイド部材10bの側面と面一に形成された固定用フィン10b−2がガイド面10b−1の略中間部と下部の二箇所に形成されている。ここでは、図3に示す短冊状ガイド部材10aを扁平伝熱管2の平坦面に取着した多管式熱交換器を例示したもので、図5に拡大して示すように、短冊状ガイド部材10aは固定用フィン10a−2を介して扁平伝熱管2の平坦面に例えばNiろう付けされて取付けられている。
また、10a−2、10b−2は、必ずしも両側に設ける必要はなく、片側フィンによる片面固定、あるいは片面の交互固定(図示せず)でも特に問題はない。図6は両面固定方式と片面固定方式を示す説明図で、図(A)は短冊状ガイド部材10a、10bをそれぞれ両側に設けられた固定用フィン10a−2、10b−2を介して扁平伝熱管2の平坦面にろう付けにて取付ける方式を、図(B)は固定用フィン10a−2、10b−2を片側のみしか有しない短冊状ガイド部材(図示せず)を、片側のみの固定用フィン10a−2、10b−2を介して扁平伝熱管2の平坦面にろう付けにて取付ける方式を、それぞれ示す。
【0035】
上記図1図6に示す構成の多管式熱交換器の場合は、冷却水流入管9より冷却水分配器8及び冷却水流入用開口部6を介してケーシング1内に流入した冷却水が短冊状ガイド部材10a、10bのガイド面10a−1、10b−1に沿って流れて各扁平伝熱管2の間の空間及び扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット4方向を指向してチューブシート3内表面に速やかにかつ確実に達して冷却し冷却水の沸騰がより効果的に防止される。そして、冷却水の沸騰を伴わずに、ケーシング1内を流れる冷却水と扁平伝熱管2内を流れる排気ガスとが熱交換される。又、図3に示す短冊状ガイド部材10aを用いた場合には、図5に示すように扁平伝熱管2の平坦面と当該短冊状ガイド部材10aとの間に形成される隙間10a−3から冷却水が前記平坦面に沿いかつ渦を伴って乱れながら流出管7側へも流れるので当該短冊状ガイド部材10a裏側の澱みが防止される。更に、短冊状ガイド部材10a、10bがろう付けなどで固定されていることにより排気ガスの熱がその固定部より伝熱して放熱フィンとしても作用し、扁平伝熱管2の平坦面の温度を低下させて沸騰を抑制するとともに交換熱量を増加させる(排気ガスの温度が下げられる)。なお、扁平伝熱管2の平坦部に位置するガイド部材を平坦面に対しほぼ直角に設け、隣接する扁平伝熱管2の平坦部に跨がってフィンを固定することにより、扁平伝熱管2の積層方向等への変形等に対する補強リブ作用を発揮し、耐振動性や耐熱性(熱応力による変形防止)を向上できる。
【0036】
図7に示すガイド部材は、前記短冊状ガイド部材10a、10bに替えて用いる櫛歯状ガイド部材10cを例示したもので、その構造は図示のように、ガイド面10c−1の略中間部と下部の二箇所に形成された固定用フィン10c−2を有する複数個の短冊状ガイド部材10c−3をその基端部(冷却水流入口側端部)10c−4と共に一体成形した構造となしたもので、前記短冊状ガイド部材10a、10bと同様に、短冊状ガイド部材10c−3を扁平伝熱管2の間に配置させて各固定用フィン10c−2を介して扁平伝熱管2の平坦面に例えばNiろう付けにて取付ける。この図7に示す櫛歯状ガイド部材の場合は、ケーシング1内に流入した冷却水がその基端部10c−4に沿って流れてケーシング1内面に沿って排気ガスの出口方向に向かって漏洩して沸騰防止に寄与しない冷却水の流量を減少させ、短冊状ガイド部材10c−3の先端に向って各扁平伝熱管2の間の空間及び扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット方向を指向してチューブシート3内表面に速やかにかつ確実に達して冷却し冷却水の沸騰が効果的に防止される。
【0037】
図8図10に示す本発明の第2実施例に係る多管式熱交換器は、前記第1実施例に係る多管式熱交換器と同様に、短冊状ガイド部材を各扁平伝熱管2の間に配置させる方式において、例えば図9に示す複数の短冊状ガイド部材10dをその基端部(冷却水流入口側端部)10d−3において背面側に円弧状溝部11a−2を有する短冊状ステー11a−1を設けた櫛歯状ステー11aの基端部11a−3にろう付け又は溶接により一体化したガイド部材を、図8に示すように扁平伝熱管2の側面にろう付け又は溶接により固定した構造となしたものである。10d−1はガイド面、10d−2は固定フィンである。又、図10に示すガイド部材は、複数の短冊状ガイド部材10dをその基端部(冷却水流入口側端部)10d−3において背面側に円弧状溝部11b−2を有する短冊状ステー11b−1を設けた断面L字状の櫛歯状ステー11bの基端部11b−3にろう付け又は溶接により一体化したものである。この図10に示すガイド部材も前記櫛歯状ステー11aと同様に、図8に示すように扁平伝熱管2の側面の平坦面及び凸状面にろう付け又は溶接により固定する。
【0038】
上記図8図10に示す構成の本発明の多管式熱交換器の場合は、前記第2実施例に係る多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、前記第2実施例に係る多管式熱交換器のガイド部材より各基端部11a−3、11b−3及び円弧状溝部11a−2、11b−2を有する短冊状ステー11a−1、11b−1の扁平管2の凸状側面への固定箇所の存在により、更に櫛歯状ステーの剛性が向上すると共に放熱性も向上し、より高い耐久信頼性が得られる。
【0039】
図11図14に示す本発明の第3実施例に係る多管式熱交換器は、前記図7に示す櫛歯状ガイド部材10cと略同様の構造を有する櫛歯状ガイド部材10eと、短冊状ステー11cとで構成したガイド部材を採用したもので、そのガイド部材の構造は図示のように、ガイド面10e−1に形成された固定用フィン10e−2を有する複数個の短冊状ガイド部材をその基端部(冷却水流入口側端部)10e−3において一体成形した構造となした櫛歯状ガイド部材10eの基端部10e−3背面に、扁平伝熱管2と同じ数でかつ各扁平伝熱管2の側面の凸状面と対応する位置に円弧状溝部11c−1を有する短冊状ステー11cの基端部11c−2をろう付け又は溶接により一体化した構造となしたものである。本実施例は、このガイド部材を各扁平伝熱管2の側面の平坦面及び凸状面にろう付け又は溶接により固定した構造となしたものである。なお、櫛歯状ガイド部材10eのガイド面10e−1部の長さは、特に限定するものではなく適宜定めることとする。
【0040】
上記図11図14に示す構成の本発明の第3実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記第1、第2実施例に係る多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、前記第2実施例に係る多管式熱交換器のガイド部材よりさらに短冊状ステー11c(櫛歯状ステー11bに相当する)の存在により櫛歯状ガイド部材10eの剛性が向上し、より高い耐久信頼性が得られる。
【0041】
図15図16に示す本発明の第4実施例に係る多管式熱交換器は、前記第3実施例に係る多管式熱交換器のガイド部材と略同様の形状を有するガイド部材を採用したもので、そのガイド部材の構造は図示のように、ガイド面10f−1に形成された固定用フィン10f−2を有する複数個の短冊状ガイド部材をその基端部(冷却水流入口側端部)10f−3において一体成形した構造の櫛歯状ガイド部材10fの基端部背面に、同櫛歯状ガイド部材と一体成形(扁平伝熱管用溝部に位置する材料を背面側に湾曲させて成形)されて基端部に連なって円弧状溝部10f−5を有する櫛歯状ステー10f−4を有する構造となしたものである。本実施例は、このガイド部材を各扁平伝熱管2の側面にろう付け又は溶接により固定した構造となしたものである。
【0042】
上記図15図16に示す構成の本発明の第4実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記第2、第3実施例に係る多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、櫛歯状ガイド部材の櫛歯状ステー10f−4が扁平伝熱管用溝部に位置する材料を背面側に湾曲させて一体成形されているので、前記第2、第3実施例に係る多管式熱交換器で採用したガイド部材に比べ材料歩留が良くかつ櫛歯状ステー10f−4の剛性も向上し、より高い耐久信頼性が得られる。
【0043】
図17図18に示す本発明の第5実施例に係る多管式熱交換器は、前記第3実施例に係る多管式熱交換器のガイド部材と類似の形状を有するガイド部材を採用したもので、そのガイド部材の構造は図示のように、ガイド面10g−1に形成された固定用フィン10g−2を有する複数個の短冊状ガイド部材をその基端部(冷却水流入口側端部)10g−3において一体成形した構造の櫛歯状ガイド部材10gの基端部背面に、同櫛歯状ガイド部材と一体成形(扁平伝熱管用溝部と同位相に位置する材料を背面側に湾曲させて成形)されて基端部に連なって円弧状溝部10g−5を有する櫛歯状ステー10g−4を設けた構造となしたものである。本実施例は、このガイド部材を各扁平伝熱管2の側面にろう付け又は溶接により固定した構造となしたものである。
【0044】
上記図17図18に示す構成の本発明の第5実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記第2、第3実施例に係る多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、櫛歯状ガイド部材10gの櫛歯状ステー10g−4が扁平伝熱管用溝部と同位相に位置する材料を背面側に湾曲させて一体成形されているので、前記第4実施例に係る多管式熱交換器と同様に、前記第2、第3実施例に係る多管式熱交換器で採用したガイド部材に比べ製作工数が少なく、材料歩留も良く、かつ櫛歯状ステー10g−4の剛性も向上し、より高い耐久信頼性が得られる。
【0045】
図19図20に示す本発明の第6実施例に係る多管式熱交換器は、前記第2実施例に係る多管式熱交換器のガイド部材と類似の形状を有するガイド部材を採用したもので、そのガイド部材の構造は図示のように、短冊状ガイド部材を各扁平伝熱管2の間に配置させる方式において、図19及び図20に示す複数の短冊状ガイド部材10dをその基端部(冷却水流入口側端部)10d−3において背面側に、各扁平伝熱管2を跨ぐ断面円弧状の湾曲部10h−2と該湾曲部をつなぐ繋ぎ部10h−3及び繋ぎ部10h−3の部分に形成した舌状部10h−4を有する帯状ステー10h−1の前記舌状部10h−4をろう付け又は溶接により一体化したガイド部材を、扁平伝熱管2の側面にろう付け又は溶接により固定した構造となしたものである。
【0046】
上記図19図20に示す構成の本発明の第6実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記の各多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、ガイド部材の帯状ステー10h−1が湾曲部10h−2により各扁平伝熱管と強固に固定されることにより振動等による扁平伝熱管の変形を効果的に防止できるという効果を奏する。
【0047】
図21図22に示す本発明の第7実施例に係る多管式熱交換器は、扁平伝熱管の積層配列が複数列に及ぶ場合、各ガイド部材を冷却水流入口側から各列に跨設した実施例を示したもので、その構造は、ケーシング1内に複数本の扁平伝熱管2が並設されて積層された上下2段に配列された扁平伝熱管群2a、2bを有する多管式熱交換器において、例えば図7に示すものと略同様のガイド部材、即ち、上下2段に配列された扁平伝熱管群に対応する長さを有するガイド面10i−1の略中間部と下部の二箇所に形成された固定用フィン10i−2を有する複数個の短冊状ガイド部材をその基端部(冷却水流入口側端部)において一体成形した構造となした櫛歯状ガイド部材10iを用い、短冊状ガイド部材がそれぞれ扁平伝熱管2の間に位置するように各固定用フィン10i−2を介して扁平伝熱管2の平坦面に例えばNiろう付けにて取付けて構成したものである。
【0048】
この図21図22に示す本発明の第7実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記の各多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、冷却水流入用開口部6側から離れた位置に積層配列されている扁平伝熱管群2bの各扁平伝熱管の平坦面まで各短冊状ガイド部材が延長配設されているので、冷却水流入口側から離れた位置のチューブシート3内面並びに各扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット側及び扁平伝熱管表面まで確実に冷却水を導くことができるという効果を奏する。
【0049】
図23図24に示す本発明の第8実施例に係る多管式熱交換器は、積層された扁平伝熱管2の間の各空間部にガイド部材を複数配設した実施例を示したもので、ここでは前記第7実施例に係る多管式熱交換器と同様の扁平伝熱管の積層配列が上下2列の多管式熱交換器を例にとり説明する。
即ち、この第8実施例に係る多管式熱交換器は、ケーシング1内に複数本の扁平伝熱管2が並設されて積層された上下2段に配列された扁平伝熱管群2a、2bを有する多管式熱交換器において、例えば前記図21図22に示すものと同様のガイド部材、即ち、上下2段に配列された扁平伝熱管群2a、2bに対応する長さを有するガイド面10j−1の略中間部と下部の二箇所に形成された固定用フィン10j−2を有する複数個の短冊状ガイド部材をその基端部(冷却水流入口側端部)において一体成形した構造となした長尺の櫛歯状ガイド部材(第1ガイド部材)10jと、扁平伝熱管の平坦面の幅より長さの短いガイド面10k−1の中間部に固定用フィン10k−2を有する短尺の短冊状ガイド部材(第2ガイド部材)10kを用い、長尺の櫛歯状ガイド部材(第1ガイド部材)10jと短尺の短冊状ガイド部材(第2ガイド部材)10kがそれぞれ扁平伝熱管2の間に位置するように、かつ短尺の短冊状ガイド部材10kは排気ガス流入ボンネット4側に近い位置に、それぞれ各固定用フィン10j−2、10k−2を介して扁平伝熱管2の平坦面に例えばNiろう付けにて取付けて構成したものである。
【0050】
この図23図24に示す本発明の第8実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記の各多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果、耐振性の向上効果が得られるのみならず、特に冷却水流入口側から離れた位置まで積層配列されている櫛歯状ガイド部材(第1ガイド部材)10jと冷却水流入用開口部側に近い位置に配設されている短冊状ガイド部材(第2ガイド部材)10kとの併用により、広い範囲のチューブシート3内面並びに各扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット4側及び扁平伝熱管表面まで確実に冷却水を導くことができるという効果と、冷却水流入用開口部をチューブシート3から軸方向に少し離れた位置に配置してもチューブシート内面並びに各扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット4側及び扁平伝熱管表面まで確実に冷却水を導くことができるという効果を奏する。
【0051】
図25図26に示す本発明の第9実施例に係る多管式熱交換器は、前記図1図6に示す第1実施例に係る多管式熱交換器と同様の構成を有する多管式熱交換器において、固定用フィン10l−2を有する短冊状ガイド部材10lのガイド面10l−1に小孔10l−3を穿設し、ケーシング1内に流入した冷却水の一部を積極的に流出管7側へ流すことにより、広い範囲で沸騰防止効果を得ようとするものである。即ち、この第9実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記の各多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果、耐振性の向上効果が得られるのみならず、短冊状ガイド部材10lの小孔10l−3から背面側に流出した冷却水がチューブシート3から軸方向に少し離れた位置の扁平伝熱管の平坦面にまで速やかに到達して広い範囲にわたり冷却を促進するので、排気ガス温度が上昇しかつ排気ガス流量が増大し高速化した場合でも沸騰を防止するという効果が得られる。
【0052】
図27図28に示す本発明の第10実施例に係る多管式熱交換器は、前記図1図6に示す第1実施例に係る多管式熱交換器と同様の構成を有する多管式熱交換器において、冷却水分配器8が設けられるケーシング1の冷却水流入用開口部6付近に前記積層された各扁平伝熱管2の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管2とケーシング1内面との間の空間部内に冷却水が指向するように前記積層された各扁平伝熱管2の間の空間もしくは該空間に加えて扁平伝熱管2とケーシング1内面との間の空間とに対応した位置に複数の噴出孔13−1を設けたノズル部材13をケーシング1内壁又は外壁(図示せず)に設ける方式となしたものである。ここで、ノズル部材13は噴出孔13−1の断面積の総和が冷却水分配器8内の冷却水の流れ方向断面積より小さくなっていることにより該噴出孔13−1における冷却水の噴出流速が冷却水分配器8内の軸直角方向断面における平均流速より増速させることができる。この第10実施例に係る多管式熱交換器の場合は、前記の各多管式熱交換器と同様に冷却水流の整流及びガイド作用に伴う沸騰防止・交換熱量の増大(排気ガス温度の低下)効果が得られるのみならず、噴出孔13−1から好ましくは増速されてケーシング1内に流入した冷却水がチューブシート3内表面並びに各扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット側や扁平伝熱管の平坦面にまで速やかに到達して冷却し沸騰を防止するという効果と、冷却水流入口をチューブシート3から軸方向に少し離れた位置に配置してもチューブシート3内表面並びに各扁平伝熱管2の排気ガス流入ボンネット側及び扁平伝熱管表面まで確実に冷却水を導くことができるという優れた効果が得られる。なお、ノズル部材13の扁平伝熱管2とケーシング1内面との間の空間とに対応した位置に設ける噴出孔13−1は必ずしも全周縁が繋がった孔形状とする必要はなく、開口部を有して全周縁が繋がっていない例えば図28(ア)、(イ)に示すようにU字状の切欠形状として設けておいてケーシング1の内面又は外面(図示せず)に設置されることにより、冷却水流入用開口部6の周縁によって前記開口部が塞がって該噴出孔13−1の全周縁が孔状に繋がるように設けてもよい。
【0053】
図29図31に示す本発明の第11実施例に係る多管式熱交換器は、冷却水分配器8の冷却水流入用開口部付近に冷却水の流速が冷却水分配器8内より増速されるように複数の噴出孔を設けたノズル部材をケーシング1内壁又は外壁(図示せず)に設ける方式において、前記第10実施例に係る多管式熱交換器のノズル部材13に替えて、扁平伝熱管2側に断面略V字状もしくはU字状で扁平伝熱管2の積層幅に応じて突出した凸状部23−1を有するノズル部材23を採用したもので、その構造は断面略V字状の凸状部23−1の両端部に、チューブシート側(排気ガス流入口側)を指向した傾斜面を形成し、凸状部23−1の前面側傾斜面23−1aには各扁平伝熱管2の間の空間に対応して位置し該空間を指向した噴出孔23−2aを、凸状部23−1の両端部の両端部傾斜面23−1bには扁平伝熱管2とケーシング1間の空間に対応して位置し該空間を指向した噴出孔23−2bをそれぞれ設けたものである。ここで、ノズル部材23も前記ノズル部材13と同様に、噴出孔23−2a、23−2bの断面積の総和が冷却水分配器8内の冷却水の流れ直角方向断面積より小さい。なお、噴出孔23−2a、23−2bの形状は真円又は楕円もしくは長円形状のいずれでもよい。この第11実施例に係る多管式熱交換器の場合は、ノズル部材23の凸状部23−1の前面側傾斜面23−1aの噴出孔23−2aからは各扁平伝熱管2の間の空間を、両側の両端部傾斜面23−1bに設けられている噴出孔23−2bからは積層された扁平伝熱管群の最もケーシング内壁に近い扁平伝熱管2とケーシング1の間の空間を指向して噴出した冷却水が、各扁平伝熱管の間の空間に配設された短冊状ガイド部材10a〜10lに沿って確実に流れることにより、該空間部分を含めた広い範囲における冷却水の沸騰がより効果的に防止される。なお断面略V字状のノズル部材であって前面側傾斜面が略平坦面の例を示したが、ノズル部材は断面略U字状であって前面側傾斜面が湾曲面であっても良いことは云うまでも無い。
【0054】
図32図35に示す本発明の第12実施例に係る多管式熱交換器は、複数本の扁平伝熱管が並設されて積層された扁平伝熱管群を支持するチューブシート3を有さない、いわゆるチューブシートレスタイプの多管式熱交換器であり、その構造は伝熱フィンが内挿固着された複数本の扁平伝熱管12が並設されて積層された扁平伝熱管群と、該扁平伝熱管群の外周を囲繞するように形成されたケーシング11とからなり、各扁平伝熱管12の両端部がケーシング11の両端部に気密に組込まれ、ケーシング11の片側の端部には排気ガス流入ボンネット14が、他端には排気ガス流出ボンネット15がそれぞれ設けられ、さらにケーシング外周壁面の排気ガス流入ボンネット14側端部には扁平伝熱管12の積層方向に略平行な略矩形の長孔からなる冷却水流入用開口部16が設けられ、排気ガス流出ボンネット15側端部には冷却水流出管17が接続されている。このチューブシートレスタイプの多管式熱交換器の扁平伝熱管12は、図32図35に示すように、両端部に膨出した拡管部12−1を有する扁平な中空角柱状の管体にインナーフィン12−2が介装された構成となし、この多数の扁平伝熱管12が厚み方向に積層されて扁平伝熱管群が形成されている。
【0055】
前記冷却水流入用開口部16には、前記チューブシート付きの多管式熱交換器と同様に、該冷却水流入用開口部16を覆うように基端部(底部)が開口されたボックス形の冷却水分配器18をケーシング11の軸芯に対する垂直線に対し平行に(又は傾斜させて)設けている。この冷却水分配器18も前記のものと同様に、基端部に前記冷却水流入用開口部16を覆うフランジ部18−1を有し、該基端部と反対側端部に冷却水配管(図面省略)に接続する冷却水流入管19がケーシング外壁面と平行に横設されている。この冷却水流入管19には、前記冷却水分配器18内に連通する長孔からなる冷却水流入口19−1が設けられ、他端はキャップ(図示せず)により閉鎖されている。
【0056】
ケーシング11内には、前記チューブシート付きの多管式熱交換器と同様に、該ケーシング内に流入した冷却水が積層された扁平伝熱管12の間の空間部を通流して当該扁平伝熱管の排気ガス流入口側方向を指向して流れるようにするための短冊状ガイド部材20aが配設されている。この短冊状ガイド部材20aは、ガイド面20a−1の上部と下部の二箇所に扁平伝熱管12の平坦面との固定用フィン20a−2が当該ガイド部材20aの側面よりその厚み分外側に突出するように背面側に直角に折曲げられて形成されている。この短冊状ガイド部材20aも前記のものと同様に、固定用フィン20a−2を介して扁平伝熱管2側面の平坦面に例えばNiろう付けされて取付けられている。なおこの場合も、固定用フィン20a−2は必ずしも両側に設ける必要はなく、片側フィンによる片面固定でも特に問題はない。
【0057】
上記図32図35に示す構成の多管式熱交換器の場合は、冷却水流入管19より冷却水分配器18及び冷却水流入用開口部16を介してケーシング11内に流入した冷却水が短冊状ガイド部材20aのガイド面20a−1に沿って流れて各扁平伝熱管12の間の空間及び当該扁平伝熱管の排気ガス流入口側端部付近に速やかにかつ確実に達して冷却し、各扁平伝熱管12の間の空間及び当該扁平伝熱管の排気ガス流入口側端部付近での冷却水の沸騰が効果的に防止される。そして、冷却水の沸騰を伴わずに、ケーシング11内を流れる冷却水と扁平伝熱管12内を流れる排気ガスとが熱交換される。
【0058】
なお、積層された扁平伝熱管群の最もケーシング内壁に近い扁平伝熱管とケーシングの間の空間に短冊状ガイド部材を配設した例、及び、ガイド部材に凸状部を設け、その凸状部の両端部傾斜面に噴出孔を配設した例などを示したが、ケーシングの外表面がエンジン冷却用ファン(図示せず)による冷却が充分に期待できる場合など、積層された扁平伝熱管群の最もケーシング内壁に近い扁平伝熱管とケーシングの間の空間部における沸騰が危惧されない場合には必ずしも配置しなくても良い。
【符号の説明】
【0059】
1、11 ケーシング
2、12 扁平伝熱管
2a、2b 扁平伝熱管群
3 チューブシート
4、14 排気ガス流入ボンネット
5、15 排気ガス流出ボンネット
6、16 冷却水流入用開口部
7、17 冷却水流出管
8、18 冷却水分配器
8−1、18−1 フランジ部
9、19 冷却水流入管
9−1、19−1 冷却水流入口
10a、10b、10c−3、10d、10k、10l、20a 短冊状ガイド部材
10a−1、10b−1、10c−1、10d−1、10e−1、10f−1、10g−1、10i−1、10j−1、10k−1、10l−1、20a−1 ガイド面
10a−2、10b−2、10c−2、10d−2、10e−2、10f−2、10g−2、10i−2、10j−2、10k−2、10l−2、20a−2 固定用フィン
10a−3 隙間
10c、10e、10f、10g、10i、10j 櫛歯状ガイド部材
10c−4、10d−3、10e−3、10e−4、10f−3、10g−3、11a−3、11b−3、11c−2 基端部
10h−1 帯状ステー
10h−2 湾曲部
10h−3 繋ぎ部
10h−4 舌状部
10l−3 小孔
11a、11b、10f−4、10g−4 櫛歯状ステー
11a−1、11b−1、11c 短冊状ステー
10f−5、10g−5、11a−2、11b−2、11c−1 円弧状溝部
12−1 拡管部
12−2 インナーフィン
13、23 ノズル部材
13−1、23−2a、23−2b 噴出孔
23−1 凸状部
23−1a 前面側傾斜面
23−1b 両端部傾斜面
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