(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(A)に由来する構成単位(a)と、二重結合及び芳香族基を有する化合物(B)(但し、前記化合物(A)を除く)に由来する構成単位(b)と、
ハロゲン基を含むモノマー及びポリシロキサン構造を含むオリゴマーの少なくともいずれかに由来する構成単位(c)と、を含み、
前記化合物(A)が、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表されるモノマー
であり、
屈折率が1.58以上である高屈折率ポリマー。
(前記一般式(1)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
1は、水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
(前記一般式(2)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
(前記一般式(3)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
(前記一般式(4)中、R
4は、単結合、炭素数20以下のアルキレン基、炭素数20以下のオキシアルキレン基、又は炭素数20以下のヒドロキシアルコキシル基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示し、R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示す)
前記化合物(B)が、スチレン系モノマー、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の高屈折率ポリマー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
樹脂物品の耐光性を向上させるには、通常、光安定剤や、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、及びシアン系の紫外線吸収剤等の多様な化学構造を有する化合物が樹脂に添加される。しかしながら、これらの紫外線吸収剤等は、通常、低分子量であるため、樹脂との相溶性の程度によっては樹脂物品の表面にブリードすることがあり、外観不良が生ずる場合がある。また、これらの紫外線吸収剤等は高温に曝されると揮散しやすいため、樹脂物品中の有効濃度が徐々に低下することがある。このため、時間経過とともに耐光性等が低下してしまい、劣化してしまう場合があった。
【0006】
紫外線吸収剤は、一般的に嵩高い分子構造を有する。また、スチレン等の芳香族基を含む高屈折率樹脂を構成するためのモノマーは、一般的に反応性が乏しい。このため、紫外線吸収剤と高屈折率樹脂を構成するためのモノマーとを反応させて、高分子量の共重合体(樹脂)を製造することは困難である。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、耐光性に優れているとともに、ブリードアウトが発生せず、塗料、コーティング剤、インキ、フィルム、及びシート等の各種の高屈折率な物品を製造することが可能な高屈折率ポリマーを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、この高屈折率ポリマーの製造方法、この高屈折率ポリマーを含有する高屈折率ポリマー組成物、及びこの高屈折率ポリマーを用いて製造される物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す高屈折率ポリマーが提供される。
[1]二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(A)に由来する構成単位(a)と、二重結合及び芳香族基を有する化合物(B)(但し、前記化合物(A)を除く)に由来する構成単位(b)と、
ハロゲン基を含むモノマー及びポリシロキサン構造を含むオリゴマーの少なくともいずれかに由来する構成単位(c)と、を含み、前記化合物(A)が、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表されるモノマー
であり、屈折率が1.58以上である高屈折率ポリマー。
【0009】
(前記一般式(1)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
1は、水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
【0010】
(前記一般式(2)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
【0011】
(前記一般式(3)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
【0012】
(前記一般式(4)中、R
4は、単結合、炭素数20以下のアルキレン基、炭素数20以下のオキシアルキレン基、又は炭素数20以下のヒドロキシアルコキシル基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示し、R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示す)
【0013】
[2]前記構成単位(c)の含有割合が2質量%以下である前記[1]に記載の高屈折率ポリマー。
[
3]前記化合物(B)が、スチレン系モノマー、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種である
前記[1]
又は[2]に記載の高屈折率ポリマー
。
[4]前記構成単位(a)の含有割合が1〜80質量%である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の高屈折率ポリマー
。
[5]ガラス転移点(Tg)が−20〜160℃であり、重量平均分子量(Mw)が1,000〜1,500,000である前記[1]〜[
4]のいずれかに記載の高屈折率ポリマー。
【0014】
また、本発明によれば、以下に示す高屈折率ポリマー組成物が提供される。
[
6]前記[1]〜[
5]のいずれかに記載の高屈折率ポリマーと、屈折率が2.0以上の無機粒子と、を含有する高屈折率ポリマー組成物(以下、「第1の高屈折率ポリマー組成物」とも記す)。
[
7]前記[1]〜[
5]のいずれかに記載の高屈折率ポリマーと、屈折率が1.58以上のポリマー(但し、前記高屈折率ポリマーを除く)と、を含有する高屈折率ポリマー組成物(以下、「第2の高屈折率ポリマー組成物」とも記す)。
【0015】
さらに、本発明によれば、以下に示す高屈折率ポリマーの製造方法が提供される。
[
8]前記[1]〜[
5]のいずれかに記載の高屈折率ポリマーの製造方法であって、前記化合物(A)
、前記化合物(B)
、並びに前記ハロゲン基を含むモノマー及び前記ポリシロキサン構造を含むオリゴマーの少なくともいずれかを含有する重合成分を反応させる工程を有する高屈折率ポリマーの製造方法。
【0016】
また、本発明によれば、以下に示す物品が提供される。
[
9]前記[1]〜[
5]のいずれかに記載の高屈折率ポリマーを用いて製造される物品。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高屈折率ポリマーは、耐光性に優れているとともに、紫外線吸収基を有する化合物に由来する構成単位をそのポリマー鎖中に含むものであるため、ブリードアウトが実質的に発生することがない。このため、本発明の高屈折率ポリマーを用いれば、耐光性に優れているとともにブリードアウトが実質的に生じない、塗料、コーティング剤、インキ、フィルム、及びシート等の各種の高屈折率な物品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の高屈折率ポリマーは、二重結合及び紫外線吸収基を有する化合物(A)に由来する構成単位(a)と、二重結合及び芳香族基を有する化合物(B)(但し、化合物(A)を除く)に由来する構成単位(b)とを含む。以下、本発明の高屈折率ポリマーの詳細について説明する。
【0019】
(化合物(A))
化合物(A)は、重合反応性を有する二重結合及び紫外線吸収基をその分子構造中に有する化合物(重合性モノマー)である。本発明の高屈折率ポリマーは、この化合物(A)に由来する構成単位(a)を含むために、耐光性に優れているとともに、ブリードアウトが実質的に発生することがない。紫外線吸収基の構造としては、例えば、一般的に用いられているベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリシレート系、及びトリアジン系の各種紫外線吸収剤を構成する分子構造を挙げることができる。なお、化合物(A)には、これらの紫外線吸収剤を構成する分子構造以外の紫外線吸収基が含まれていてもよい。
【0020】
化合物(A)は、下記一般式(1)〜(4)のいずれかで表されるモノマーである。
【0021】
(前記一般式(1)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
1は、水素原子又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
【0022】
(前記一般式(2)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
【0023】
(前記一般式(3)中、Xは、ハロゲン、水素原子、又は炭素数10以下のアルキル基を示し、R
2は、単結合、炭素数10以下のアルキレン基、炭素数10以下のオキシアルキレン基、又は炭素数10以下のヒドロキシオキシアルキレン基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示す)
【0024】
(前記一般式(4)中、R
4は、単結合、炭素数20以下のアルキレン基、炭素数20以下のオキシアルキレン基、又は炭素数20以下のヒドロキシアルコキシル基を示し、R
3は、水素原子又はメチル基を示し、R
5〜R
8は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を示す)
【0025】
一般式(1)で表される化合物(A)は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の分子構造を有する化合物である。一般式(1)で表される化合物(A)の具体例としては、2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[(2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル)−5−クロロ]−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。これらの化合物(A)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
一般式(2)で表される化合物(A)は、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の分子構造を有する化合物である。一般式(2)で表される化合物(A)の具体例としては、2−ベンゾイル−5−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルオキシプロポキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−メタクリロイルオキシエトキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−アクリロイルオキシエトキシ)−フェノール、2−ベンゾイル−5−(2’−アクリロイルオキシエトキシ)−6−tert−ブチル−フェノール等を挙げることができる。これらの化合物(A)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
一般式(3)で表される化合物(A)は、サリシレート系紫外線吸収剤の分子構造を有する化合物である。また、一般式(4)で表される化合物(A)は、トリアジン系紫外線吸収剤の分子構造を有する化合物である。一般式(4)で表される化合物(A)の具体例としては、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピオキシ)]−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−[2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル]−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。これらの化合物(A)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
本発明の高屈折率ポリマーに含まれる構成単位(a)の割合は、高屈折率ポリマー全体に対して、1〜80質量%であることが好ましく、2〜60質量%であることがさらに好ましく、3〜40質量%であることが特に好ましい。構成単位(a)の含有割合が1質量%未満であると、耐光性が不十分となる傾向にある。一方、構成単位(a)の含有割合が80質量%超であると、構成単位(b)の含有割合が相対的に減少するため、屈折率が低下する傾向にある。
【0029】
(化合物(B))
化合物(B)は、重合反応性を有する二重結合及び芳香族基をその分子構造中に有する化合物(重合性モノマー)である。本発明の高屈折率ポリマーは、この化合物(B)に由来する構成単位(b)を含むために屈折率が高い。化合物(B)は、スチレン系モノマー、アクリル酸系モノマー、メタクリル酸系モノマー、及びアクリロニトリル系モノマーからなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。なお、化合物(B)中の二重結合は、反応性及び入手又は合成の容易さなどの観点から、アクリル系又はメタクリル系の二重結合が好ましい。以下、「アクリル」と「メタクリル」を、併せて「(メタ)アクリル」とも記す。
【0030】
化合物(B)の具体例としては、スチレン、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、フェノールEO変性(メタ)アクリレート、o−フェニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、パラクミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールPO変性(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルEO変性(メタ)アクリレート、N−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トロブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート、エトキシ化o−フェニルフェノール(メタ)アクリレート、p-スチリルトリメトキシシラン等を挙げることができる。これらの化合物(B)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
(その他の化合物)
本発明の高屈折率ポリマーは、屈折率やガラス転移点(Tg)を調整するために、その分子構造中に重合反応性を有する二重結合を有するが芳香族基を有しないその他の化合物に由来する構成単位を含んでいてもよい。その他の化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート等のアクリレート系モノマー;アクリロニトリル系モノマー等を挙げることができる。これらの化合物(C)は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
なお、本発明の高屈折率ポリマーは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸等の水酸基、エポキシ基、又はカルボキシル基等の官能基を有するモノマーに由来する構成単位をさらに含むことが好ましい。これらのモノマーに由来する構成単位を含むと、イソシアネート、メルカプタン、エポキシ樹脂、又はメラミン樹脂等と架橋させることが可能となり、高屈折率ポリマーの屈折率、耐光性、及び耐久性等をさらに向上させることができる。
【0033】
さらに、本発明の高屈折率ポリマーは、屈折率、ガラス転移点(Tg)、及び耐久性等を調整するために、ハロゲン基を含むモノマーとポリシロキサン構造を含むオリゴマーの少なくともいずれかに由来する構成単位(c)をさらに含むことが好ましい。これらのモノマーやオリゴマーの具体例としては、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート、パーフルオロヘキシルエチルアクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチルメタクリレート、パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモベンジル(メタ)アクリレート、片末端メタクリル変性ポリジメチルシロキサン、及び片末端メタクリル変性ポリジブチルシロキサン等を挙げることができる。これらの二重結合含有成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
(高屈折率ポリマーの物性等)
本発明の高屈折率ポリマーの屈折率は、通常、1.58以上、好ましくは1.60以上である。なお、本明細書における「屈折率」は、例えば、多波長アッベ屈折率計(商品名「DR−M2」、ATAGO社製)を使用し、干渉フィルターとしてλ=589nm、及び中間液としてブロモナフタレンを用いて測定される値である。
【0035】
本発明の高屈折率ポリマーのガラス転移点(Tg)は、通常、−20〜160℃、好ましくは0〜120℃である。また、本発明の高屈折率ポリマーの重量平均分子量(Mw)は、非ブリードアウト性、耐光性、高屈折率、及び塗膜性能などの諸性能をより満足するために、1,000〜1,500,000であることが好ましく、5,000〜750,000であることがさらに好ましい。なお、本明細書における「重量平均分子量(Mw)」及び「数平均分子量(Mn)」とは、特に断らない限り、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されるポリスチレン換算の値を意味する。
【0036】
(高屈折率ポリマーの製造方法)
本発明の高屈折率ポリマーは、例えば、化合物(A)及び化合物(B)、並びに必要に応じて使用される化合物(C)を含む重合成分を、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、又は塊状重合等の従来公知の重合方法により重合することで製造することができる。例えば、溶液重合においては、重合開始剤の存在下、適当な溶剤中で重合成分を重合させればよい。
【0037】
溶液重合の際に用いる溶剤の種類は、重合反応に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定されない。溶剤の具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレンングリコールなどのアルコール系溶剤;石油エーテル、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン(NMP)などのアミド系溶剤を挙げることができる。溶剤の使用量は、重合反応の条件によって適宜決定される。通常、重合成分に対して質量比で0.01〜100倍程度、好ましくは0.1〜20倍程度である。なお、これらの溶剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
重合開始剤としては、従来既知のものを用いることができる。重合開始剤の具体例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどの過酸化物類;2,2‘−アゾビスイソブチロニトリル、2,2‘−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2‘−アゾビス(2メチルプロピオネート)、2,2‘−アゾビス(プロパン-2-カルボアミジン)・二塩酸、2,2‘−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2‘−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2‘−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロパンアミド]などのアゾ系重合開始剤を挙げることができる。これらの重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。重合開始剤の使用量は特に限定されないが、通常、重合成分に対して0.1〜10質量%程度である。
【0039】
重合反応の温度は、反応条件によって適宜設定される。通常は、室温(25℃)〜使用する溶剤の沸点以下の温度であればよい。また、得られる高屈折率ポリマーの重合度を調整するために、メルカプタン類などの連鎖移動剤やハイドロキノンなどの重合禁止剤を重合反応系に添加してもよい。
【0040】
(高屈折率ポリマー組成物)
次に、本発明の高屈折率ポリマー組成物について説明する。本発明の第1のポリマー組成物は、前述の高屈折率ポリマーと、屈折率が2.0以上の無機粒子とを含有する。また、本発明の第2のポリマー組成物は、前述の高屈折率ポリマーと、屈折率が1.58以上のポリマー(但し、前述の高屈折率ポリマーを除く)とを含有する。
【0041】
高屈折率ポリマーに高屈折率の無機粒子を添加することで、屈折率、耐光性、耐摩耗性、耐薬品性、及び耐熱性をさらに高めた高屈折率ポリマー組成物とすることができる。このような屈折率が2.0以上の無機粒子の具体例としては、酸化チタン、酸化ジルコニア、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロム、シリコン等を挙げることができる。なお、これらの無機粒子を分散媒中に分散させた分散液を高屈折率ポリマーに添加することが、無機粒子の分散性が向上するために好ましい。
【0042】
また、本発明の高屈折率ポリマーと、それ以外の屈折率が1.58以上の高屈折率ポリマー(以下、第2のポリマーとも記す)とを混合することで、低コストであるとともに、屈折率、耐光性、耐摩耗性、耐薬品性、及び耐熱性がさらに向上した高屈折率ポリマー組成物とすることができる。第2のポリマーの具体例としては、ポリエステル系樹脂、ポリエステルメタクリレート系樹脂、メラミン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エピスルフィド系樹脂、チオウレタン系樹脂等を挙げることができる。なお、ブリードアウトの抑制や物性向上のために、これらの樹脂を架橋させることがさらに好ましい。
【0043】
(高屈折率ポリマーを用いた物品)
本発明の高屈折率ポリマーを用いれば、耐光性に優れているとともに、ブリードアウトが実質的に発生しない各種の高屈折率な物品を製造することができる。このような高屈折率な物品としては、例えば、光学用レンズ、有機EL光取り出し層、光封止剤、光学用接着剤、高屈折率粘着剤、光学用フィルター、メガネレンズ等を挙げることができる。また、屈折率が上昇すると表面反射率が高くなり、光沢性が向上することが知られている。このことから、高光沢で耐光性に優れるとともに、紫外線吸収剤が実質的にブリードアウトしない塗料、コーティング剤、インキ、フィルム、及びシート等の物品を得ることができる。なお、高屈折率ポリマーを第2のポリマー等と混合することで、耐候性及び耐久性に優れた塗料、コーティング剤、インキ、フィルム、及びシート等への応用が可能である。
【0044】
さらに、本発明の高屈折率ポリマーは、光沢仕上げが可能であるとともに、耐光性を有する。このため、印刷分野においては、昇華転写用又は感熱転写用の保護層、フォト用インクジェットプリントの保護インキ、高光沢紙、インクジェット記録媒体、ウォーターシールドメディア印刷、ラインジェット印刷、レーザー印刷方式の光沢仕上げ等への応用が可能である。また、フィルム分野においては、サインディスプレイ、ラッピング広告、加飾フィルム用の屋外用超耐光性光沢フィルム等への応用が可能である。そして、生地印刷分野においては、アパレルの光沢仕上げ等への応用が可能である。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0046】
<ポリマーの製造>
[
参考例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)62.5g、スチレン95g、及び2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(商品名「RUVA−93」、大塚化学社製)(以下、「(A)−1」とも記す)5gを仕込んだ。窒素雰囲気下で80℃に加熱した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gを添加した。8時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が73,000、数平均分子量(Mn)が35,000であるポリマーの溶液(固形分濃度80%)を得た。
【0047】
[
参考例2〜7]
表1に示す配合としたこと以外は、前述の
参考例1と同様にしてポリマーの溶液を得た。得られたポリマーの溶液の固形分濃度、並びにポリマーのガラス転移点、重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)を表1に示す。なお、表1中の略号の意味を以下に示す。
【0048】
(A)−1:2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
(A)−2:2−[2’−ヒドロキシ−5’−(2’−ヒドロキシ−3’−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール
(A)−3:2−ベンゾイル−5−(2’−メタクリロイルオキシエチル)−フェノール
(A)−4:フェニル−3−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)サリシレート
(A)−5:2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ,2−ドデシロキシメチル)]−1,3,5−トリアジン
【0049】
【0050】
[
参考例8]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)62.5g、メタクリル酸ベンジル(以下、「(B)−1」とも記す)90g、及び2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール((A)−1)10gを仕込んだ。窒素雰囲気下で80℃に加熱した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gを添加した。8時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が73,000、数平均分子量(Mn)が35,000であるポリマーの溶液(固形分濃度80%)を得た。
【0051】
[
参考例9〜14]
表2に示す配合としたこと以外は、前述の
参考例8と同様にしてポリマーの溶液を得た。得られたポリマーの溶液の固形分濃度、並びにポリマーのガラス転移点、重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)を表2に示す。なお、表2中の略号の意味を以下に示す。
【0052】
(B)−1:メタクリル酸ベンジル
(B)−2:アクリル酸ベンジル
(B)−3:メタクリル酸フェニル
(B)−4:アクリル酸フェニル
(B)−5:o−フェニルフェノールEO変性アクリレート
【0053】
【0054】
[実施例15]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、トルエン27.8g、スチレン94g、及び2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール((A)−1)5g、2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート(商品名「CHEMINOX FAAC−6」、ユニマテック社製)(以下、「(C)−1」とも記す)1gを仕込んだ。窒素雰囲気下で80℃に加熱した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gを添加した。8時間反応させて、重量平均分子量(Mw)が122,000、数平均分子量(Mn)が60,000であるポリマーの溶液(固形分濃度80%)を得た。
【0055】
[実施例16〜18]
表3に示す配合としたこと以外は、前述の実施例15と同様にしてポリマーの溶液を得た。得られたポリマーの溶液の固形分濃度、並びにポリマーのガラス転移点、重量平均分子量(Mw)、及び数平均分子量(Mn)を表3に示す。なお、表3中の略号の意味を以下に示す。
【0056】
(C)−1:2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート
(C)−2:片末端メタクリル変性ポリジメチルシロキサン
【0057】
【0058】
[
参考例19〜21]
参考例3で得たポリマーの溶液に、1phr(
参考例19)、5phr(
参考例20)、及び10phr(
参考例21)となるようにZrO
2分散液(商品名「SZR−K」、堺化学工業製)を添加して、ポリマー組成物を得た。
【0059】
[
参考例22〜24]
参考例3で得たポリマーの溶液に、0.1phr(
参考例22)、0.5phr(
参考例23)、及び1phr(
参考例24)となるようにメチル化メラミン樹脂(商品名「サイメル303」、日本サイテック社製)を添加して、ポリマー組成物を得た。
【0060】
[比較例1]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)62.5g、及びメタクリル酸メチル100gを仕込んだ。窒素雰囲気下で80℃に加熱した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gを添加した。8時間反応させてポリマーの溶液(固形分濃度80%)を得た。
【0061】
[比較例2]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)62.5g、及びスチレン100gを仕込んだ。窒素雰囲気下で80℃に加熱した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gを添加した。8時間反応させてポリマーの溶液(固形分濃度80%)を得た。
【0062】
[比較例3]
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換した後、メチルエチルケトン(MEK)62.5g、及びスチレン100gを仕込んだ。窒素雰囲気下で80℃に加熱した後、重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.25gを添加した。8時間反応させた後、2−(2H−べンゾトリアゾール−2−イル)−4’,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(商品名「チヌビン328」、BASF社製)5.3gを添加して、ポリマーの溶液(固形分濃度80%)を得た。
【0063】
<評価>
[試験1:屈折率]
参考例1〜
14、実施例15〜18及び比較例1〜3で得たポリマーの溶液、並びに
参考例19〜24で得たポリマー組成物を、それぞれ離型紙上にコーティングした後、加熱乾燥して、膜厚20μmの塗膜が形成された塗工フィルムを得た。得られた塗工フィルムについて、多波長アッベ屈折率計(商品名「DR−M2」、ATAGO社製)を用いて屈折率を測定した。なお、干渉フィルターはλ=589nmのものを使用し、中間液にはブロモナフタレンを使用した。屈折率の測定結果を表4に示す。なお、「『レンズ特性とその選択について』、川村隆之著、視覚の科学、第25巻、第2号、2004年6月、日本眼光学学会発行、55頁」の記載を参考とすれば、屈折率が1.55以下である場合を「低屈折率」、屈折率が1.58以上である場合を「高屈折率」と評価することもできる。
【0064】
[試験2:耐光変色性]
前述の「試験1」で得た塗工フィルムに対して、キセノンウェザオメーター(アトラス社製)を使用して20MJ照射を行った。試験条件の具体的な内容を以下に示す。照射後の塗工フィルムの表面(塗膜表面)を目視観察し、耐光変色性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0065】
(耐光変色性試験条件)
試験サイクル:連続照射(光照射のみ)
放射照度(制御波長):110W/m
2 At 300〜400nm
フィルター組み合わせ:ボロシリケイト(内側)、ソーダライム(外側)
ブラックパネル温度(制御センサ):89±3℃
槽内湿度:50±5%
【0066】
[試験3:ブリードアウト]
前述の「試験1」で得た塗工フィルムを室温条件下で放置し、放置後の塗工フィルムの表面(塗膜表面)を目視観察してブリードアウトの有無を評価した。評価結果を表4に示す。
【0067】
[試験4:耐傷付き性]
前述の「試験1」で得た塗工フィルムに対して、スチールウール(#0000)で軽く擦り、フィルムの表面(塗膜表面)を目視観察し、傷付き性を評価した。評価結果を表4に示す。
【0068】
[試験5:グロス値]
参考例1〜
14、実施例15〜18及び比較例1〜3で得たポリマーの溶液、並びに
参考例19〜24で得たポリマー組成物を、それぞれLENETA Chart(品番:KL−N2C、LENETA社製)上にコーティングした後、加熱乾燥して、膜厚1μmの塗膜が形成された塗工フィルムを得た。フィルムの表面(塗膜表面)をデジタル光沢計(商品名「BYKガードナー・マイクロ−グロス60°、東洋精機製作所社製)を用いてグロス値を測定した。評価結果を表4に示す。
【0069】