特許第6143346号(P6143346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143346
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】アイドルストップ車の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20170529BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20170529BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   F02D29/02 321A
   F02D29/02 321C
   F02D17/00 Q
   B60T8/1761
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-154181(P2013-154181)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-25385(P2015-25385A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(72)【発明者】
【氏名】西川 和久
【審査官】 山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−230677(JP,A)
【文献】 特開2012−077714(JP,A)
【文献】 特開2011−226315(JP,A)
【文献】 特開2011−1028(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 − 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪のロックによる車両の滑走を防止するための自動ブレーキ制御を行うブレーキ制御手段と、
前記車両が予め定められた所定車速以下になることを含む所定のエンジン停止条件の成立により、前記車両が停車する前にエンジンを自動停止するアイドルストップ制御手段と、
前記ブレーキ制御手段にバックアップ電圧を供給する供給手段とを備え、
前記供給手段は、前記車両が、前記所定車速よりも予め大きい値に設定された設定車速にまで減速したときに、前記ブレーキ制御手段への前記バックアップ電圧の供給を開始する
ことを特徴とするアイドルストップ車の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定のエンジン停止条件が成立することにより、エンジンを自動停止し、エンジンの自動停止状態で所定の再始動条件が成立することにより、エンジンを再始動するアイドルストップ車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆるアイドルストップ車は、IG(イグニッション)オンの操作によりエンジンを始動すると、その後は、IGオフの操作によりエンジンが停止するまで、所定のエンジン停止条件の成立によりエンジンを自動停止し、所定のエンジン再始動条件の成立によりエンジンを自動的に再始動することを繰り返す(アイドルストップ制御)。このようなアイドルストップ車は、燃費の向上を目的として、例えば、車両停車中にエンジンを自動停止させるものであるが、近年では、車両停車中のみならず、停車前の車両の減速段階からエンジンを自動停止させて、さらなる燃費向上が図られている。
【0003】
このように車両の減速段階でアイドルストップ制御を実行するシステムでは、アイドルストップ制御が実行される車速領域と、車輪のロックによる車両の滑走を防止するための自動ブレーキ制御(所謂、ABS(Antilocked Braking System)制御)が実行される車速領域とが重なる場合がある。このような場合、例えば、アイドルストップ制御によりエンジンが自動停止された状態でABS制御が実行され、そのAGB制御実行中に、エンジン再始動条件が成立してエンジンが再始動されると、この再始動に伴って一時的にバッテリ電圧が低下し、ABS制御が正常に実行されなくなるという問題があった。
【0004】
そこで、従来では、ABS制御の実行中およびABS制御が実行され得る状況下で、エンジンを自動停止するアイドルストップ制御の実行を禁止するアイドルストップ車の制御装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−226315号公報(段落0043〜0053、図3等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したアイドルストップ車の制御装置では、ABS制御の制御性は確保することができるものの、アイドルストップ制御の実行機会が制限されるため、車両の減速段階でエンジンを自動停止させてさらなる燃費向上を図るというアイドルストップ制御の意義が薄らぐという問題がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ABS制御の制御性を確保しつつ、アイドルストップ制御の実行により、燃費の向上を図ることができるアイドルストップ車の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明のアイドルストップ車の制御装置は、車輪のロックによる車両の滑走を防止するための自動ブレーキ制御を行うブレーキ制御手段と、前記車両が予め定められた所定車速以下になることを含む所定のエンジン停止条件の成立により、前記車両が停車する前にエンジンを自動停止するアイドルストップ制御手段と、前記ブレーキ制御手段にバックアップ電圧を供給する供給手段とを備え、前記供給手段は、前記車両が、前記所定車速よりも予め大きい値に設定された設定車速にまで減速したときに、前記ブレーキ制御手段への前記バックアップ電圧の供給を開始することを特徴としている(請求項1)。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる発明によれば、アイドルストップ制御手段は、車速が予め定められた所定車速以下になることを含む所定のエンジン停止条件の成立により、車両が停車する前にエンジンを自動停止するが、供給手段は、アイドルストップ制御手段によるエンジン自動停止前である設定車速にまで車両が減速したときに、ブレーキ制御手段へのバックアップ電圧の供給を開始する。このように構成すると、アイドルストップ制御手段による制御の実行前から、ブレーキ制御手段の制御に必要な電圧はバックアップ電圧により確保されているため、例えば、ブレーキ制御手段の制御が実行された状態で、エンジンの再始動に伴うバッテリ電圧の一時的な低下が発生しても、ブレーキ制御手段による制御を正常に実行することができる。
【0010】
また、ブレーキ制御手段の制御に必要な電圧を確保することで、従来のアイドルストップ車の制御装置のように、ブレーキ制御手段による制御の実行中および制御が実行され得る状況下で、アイドルストップ制御手段による制御を禁止する必要がない。そのため、アイドルストップ制御手段は、ブレーキ制御手段の制御の実行の有無に制約されずに、車両が所定車速にまで減速したときにエンジンの自動停止制御を実行することができ、これにより、車両の燃費の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態にかかるアイドルストップ車の制御装置のブロック図である。
図2】比較例にかかるアイドルストップ車の制御装置の動作説明図である。
図3図1のアイドルストップ車の制御装置の動作説明図である。
図4図1のアイドルストップ車の制御装置の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態にかかるアイドルストップ車1の制御装置2について図1を参照して説明する。なお、図1(a)はアイドルストップ車1の制御装置2のブロック図である。
【0013】
(構成)
図1に示すように、アイドルストップ車1(以下、車両1と呼ぶ場合もある)は、軽量化、小型化等を図るため、電源として12Vの比較的小容量の1個の鉛バッテリ3を有し、このバッテリ3の負極端子はアイドルストップ車1の車体に接続されている。
【0014】
そして、車両1の駆動源であるエンジン4は、トランスミッション側のCVT5を有し、このCVT5とエンジン4との間にトルクコンバータ(ロックアップクラッチ機構を含む)6が介在している。
【0015】
エンジン3はスタータ7により始動され、このスタータ7にはリレー8を介して鉛バッテリ3から給電されてエンジン4を始動する駆動力を発生する。また、鉛バッテリ3の正極端子とリレー8との間に鉛バッテリ3に近接して設けられたバッテリセンサ9により、鉛バッテリ3の温度、電流が検出され、エンジン4の回転力がベルト10を介してオルタネータ11に伝達され、車両の走行中等にオルタネータ11の発電出力により鉛バッテリ3の充電が行われる。
【0016】
さらに、図1に示すように、車両1には、アイドルストップ制御のECUが形成するアイドルストップ制御部12が設けられるとともに、エンジン制御のECUが形成するエンジン制御部13、ABS制御のECUが形成するABS制御部14、CVT(Continuously Variable Transmission)制御のECUが形成するCVT制御部15、ABS制御部14へ供給するバックアップ電圧制御のECUが形成する電圧制御部16(本発明の供給手段に相当)が設けられ、これらの各制御部12〜16はそれぞれマイクロコンピュータ等により形成され、CAN等の通信バス17を介して情報のやり取りを行う。
【0017】
ABS制御部14には、車両1の4輪それぞれの車輪速度を検出する4つの車輪速センサ17と、ブレーキ機構のマスタシリンダ圧等を検出する液圧センサ18とが設けられ、車輪のロックによる車両1の滑走を防止するための自動ブレーキ制御を実行する。このブレーキ制御を簡単に説明すると、ABS制御部14は、各車輪速センサ17により検出された各車輪の車輪速度などから、各車輪のスリップ率を算出し、このスリップ率が所定範囲内に維持されるように、マスタシリンダ圧、ひいては、各車輪毎のブレーキ液圧の加圧・保持・減圧を瞬時に切替え制御し、各車輪のロックによる車両1の滑走を防止する。このようなABS制御部14によるブレーキ制御機能が本発明における「ブレーキ制御手段」に相当する。なお、ABS制御部14は、車輪速センサ17が検出した各車輪の車輪速度から、車両の車速を算出し、この車速情報をアイドルストップ制御部12や電圧制御部16に送っている。
【0018】
アイドルストップ制御部12は、車両1が予め定められた所定車速以下になることを含む所定のエンジン停止条件の成立により、車両1が停車する前にエンジン4を自動停止するとともに、所定のエンジン再始動条件の成立により自動的にエンジン4を再始動する。具体的には、アイドルストップ制御部12により、車両1の車速が所定速度(この実施形態では車速=11km/h)以下であること、マスタシリンダ圧が所定の踏込圧値以上であってストップランプが点灯していることを含む所定のエンジン停止条件が成立したことが確認されると、エンジン制御部13にエンジン停止指令が出力され、エンジン4が自動停止される。続いて、自動停止状態においてドライバがブレーキペダルから足を離すなどの所定のエンジン再始動条件が成立したことがアイドルストップ制御部12により確認されると、エンジン制御部13にエンジン再始動指令が出力され、停止しているエンジン4が自動的に始動される。このようなアイドルストップ制御部12によるアイドルストップ制御機能が本発明における「アイドルストップ制御手段」に相当する。
【0019】
このような構成を有するアイドルストップ車1のアイドルストップ動作を簡単に説明すると、ドライバがIG(イグニッション)キー(図示せず)をオン操作してからエンジンスタートを指令することにより、IGオンの信号が例えば通信バス17からアイドルストップ制御部12に入力され、この入力に基づいてアイドルストップ制御部12は、リレー8を瞬時に通電してオンし、鉛バッテリ3の電源をスタータ7に給電してスタータ7を始動し、停止していたエンジン4を始動する(初回始動)。エンジン4が始動してオルタネータ11の発電電力で鉛バッテリ3が一旦満充電状態に充電されると、その後は、IGキーのオフ操作でエンジン4が停止するまで、アイドルストップ制御部12がアイドルストップ制御を実行する。
【0020】
アイドルストップ制御部12には、通信バス17を介してエンジン制御部13の情報(エンジンの回転数や冷却水温等のエンジンの情報)および、鉛バッテリ3の電流、温度等の情報、ブレーキ制御部14を介した車両1の車速情報、液圧センサ18によるマスタシリンダ圧等の情報、CVT制御部15のロックアップクラッチのON/OFF情報等が入力される。
【0021】
そして、これらの情報に基づき、アイドルストップ制御中のアイドルストップ制御部12は、交通信号の赤信号等に従ってドライバがブレーキペダルを踏み込み、マスタシリンダ圧が所定の踏込圧以上になってストップランプが点灯していること、車両1が所定速度以下であること等の所定のエンジン停止条件の成立を確認することにより、車両1が停車していなくても所定車速以下に減速すれば、エンジン制御部13にエンジン停止指令を出力し、エンジン制御部13が燃料スロットルを絞ったりしてエンジン4を自動停止する。
【0022】
次に、交通信号が青信号に変わるなどしてドライバがブレーキペダルから足を離し、マスタシリンダ圧が所定の開放圧に低下したことを検出すると、アイドルストップ制御部12が、アイドルストップ制御の所定のエンジン再始動条件の成立を確認し、アイドルストップ制御部12はリレー8を瞬時に通電してオンし、鉛バッテリ3の電源をスタータ7に給電してスタータ7を始動し、停止しているエンジン4を自動的に再始動する。以降、減速中の所定のエンジン停止条件の成立に基づくエンジン4の自動停止と、所定のエンジン再始動条件の成立に基づくエンジン4の自動的な再始動とが交互に行われる。
【0023】
電圧制御部16には、鉛バッテリ3から供給される電圧をABS制御部14の制御に必要な電圧(例えば、12〜15V)に維持するための昇圧回路が設けられ、所定の電圧供給開始条件の成立により、ABS制御部14に対してバックアップ電圧を供給する。具体的には、電圧制御部16は、ABS制御部14により算出された車両1の車速に関する情報を通信バス17を介して取得し、車両1が、前記所定車速よりも予め大きい値に設定された設定車速(この実施形態では、12km/h)にまで減速したときに、ABS制御部14へのバックアップ電圧の供給を開始する。このように、アイドルストップ制御部12によるアイドルストップ制御が実行される前記所定車速よりも前のタイミングである設定車速にまで車両1が減速したときに、電圧制御部16がABS制御部14にバックアップ電圧を供給することで、アイドルストップ制御中のABS制御部14に対する制御に必要な電圧が確保される。このような電圧制御部16による電圧供給制御機能が本発明の「供給手段」に相当する。なお、上記した電圧供給開始条件における設定車速は一例であり、前記所定車速以上であれば、適宜、変更可能である。
【0024】
次に、電圧制御部16によるABS制御部14へのバックアップ電圧の供給開始タイミングについて、図2および図3を参照して、比較例と対比しながら説明する。なお、図2は比較例にかかるアイドルストップ車の制御装置のバックアップ電圧の供給開始タイミングを説明するための図、図3は本実施形態にかかるアイドルストップ車1の制御装置2のバックアップ電圧の供給開始タイミングを説明するための図である。また、図2(a)および図3(a)それぞれは車両1の車速と時間との関係、図2(b)および図3(b)それぞれはアイドルストップ制御部12によるエンジン自動停止制御の開始タイミング、図2(c)および図3(c)それぞれはロックアップ(L/U)のON/OFFの切替わりタイミング、図2(d)および図3(d)それぞれは、バックアップ電圧の供給開始タイミングを示す。
【0025】
まず、アイドルストップ制御部12によるアイドルストップ制御のエンジン停止条件として、上記したものの他に、ロックアップがOFF状態であることが挙げられる。これは、トルクコンバータ6のロックアップクラッチがON状態のまま、エンジン4を自動停止させると、エンジンストップ(所謂、エンスト)が発生するためである。また、この実施形態においてロックアップがOFF状態になるのは、車両1が11km/hにまで減速したときであり、そうすると、燃費向上の観点から、アイドルストップ制御部12によるエンジン自動停止制御は、ロックアップがOFF状態になったときに開始されるのが理想的である。そこで、図2に示す比較例のように、例えば、電圧制御部16が、通信バス17を介してCVT制御部15からのロックアップOFF情報を取得したのち、ABS制御部14へのバックアップ電圧の供給を開始するとともに、その供給開始制御が完了した旨をアイドルストップ制御部12に出力し、その出力を受けたアイドルストップ制御部12がエンジン自動停止制御を開始すると、図2(b)に示すように、ロックアップがOFF状態になったタイミングとアイドルストップ制御部12によるエンジン自動停止制御の開始タイミング(例えば、車速=9km/h)との間にタイムラグが発生する。
【0026】
そこで、この実施形態では、燃費向上の観点から理想的なエンジン自動停止制御の開始タイミングである車速が11km/h(ロックアップがOFF状態になる車速)以下であることをアイドルストップ制御部12によるエンジン停止条件の前記所定車速として定めるとともに、電圧制御部16によるABS制御部16へのバックアップ電圧の供給を開始するタイミングを、車両1が前記所定車速よりも予め大きな値に設定された設定車速(この実施形態では、12km/h)にまで減速したときに設定している。このように構成することで、この実施形態にかかるアイドルストップ車1の制御装置2では、ABS制御部16への安定した電圧供給を行ってABS制御部16による自動ブレーキ制御の制御性を確保しつつ、アイドルストップ制御部12によるエンジン自動停止制御を早期に開始して、車両1のさらなる燃費向上を図ることができるように構成されている。
【0027】
この場合、電圧制御部16は、CVT制御部15からロックアップOFF情報を取得する前に、ABS制御部14から通信バス17を介して取得した車速情報により、車両1が12km/hにまで減速したときに、ABS制御部14へのバックアップ電圧の供給を開始し(図3(d)参照)、この供給開始制御の完了後にその旨をアイドルストップ制御部12に出力する。そして、アイドルストップ制御部12は、供給開始制御が完了した旨の出力を、ロックアップOFF情報の取得前に取得している場合には、図3(b)に示すように、CVT制御部15から通信バス17を介してロックアップOFF情報を取得したタイミングとほぼ同じタイミングで、エンジン自動停止制御を開始する。
【0028】
次に、この実施形態にかかるアイドルストップ車1の制御装置2によるアイドルストップ処理(エンジン自動停止制御)について、図4を参照して説明する。なお、図4はアイドルストップ処理のフローチャートである。
【0029】
まず、ステップS1において、電圧制御部16は、ABS制御部14からの車両1の車速情報に基づき、車両1が設定車速(車速=12km/h)にまで減速したか否かを判断し、車両1が設定車速にまで減速している場合は昇圧回路を駆動してABS制御部14に対してバックアップ電圧の供給を開始する(ステップS2)。ステップS1がNOである場合は、車両1が設定車速にまで減速するまでステップS1を繰り返す。なお、電圧制御部16は、バックアップ電圧の供給開始制御が完了したあとは、その旨の信号をアイドルストップ制御部12に出力する。
【0030】
次に、電圧制御部16から出力されたバックアップ電圧供給の開始制御が完了した旨の信号を取得したアイドルストップ制御部12は、CVT制御部15からのロックアップON/OFF情報に基づき、ロックアップがOFF状態であるか否かを判断する(ステップS3)。そして、アイドルストップ制御部12は、ロックアップがOFF状態であると判断した場合は、ABS制御部14からの車両1の車速情報に基づき、車両1が所定車速(11km/h)にまで減速しているか否かを判断する(ステップS4)。ステップS3において、NOである場合(ロックアップがON状態)、アイドルストップ制御部12は、ロックアップがOFF状態になるまで、ステップS1〜ステップS3の処理を繰り返す。
【0031】
次に、ステップS4において、アイドルストップ制御部12が、車両1が所定車速にまで減速していると判断すると、所定のエンジン停止条件が成立したと判断し、エンジン4の自動停止制御を実行して(ステップS5)、アイドルストップ処理を終了する。また、ステップS4において、NOである場合は、車両1が所定車速にまで減速するまで、ステップS1〜ステップ4を繰り返す。
【0032】
したがって、上記した実施形態によれば、アイドルストップ制御部12は、車両1の車速が予め定められた所定車速以下になることを含む所定のエンジン停止条件の成立により、車両1が停車する前にエンジンを自動停止するが、電圧制御部16は、アイドルストップ制御部12によるエンジン自動停止制御前である設定車速にまで車両1が減速したときに、ABS制御部14へのバックアップ電圧の供給を開始する。このように構成すると、アイドルストップ制御部12による制御の開始前から、ABS制御部14の制御に必要な電圧はバックアップ電圧により確保されているため、例えば、ABS制御部14の制御が実行された状態で、エンジン4の再始動に伴うバッテリ電圧の低下が発生しても、ABS制御部14によるブレーキ制御を正常に実行することができる。
【0033】
また、ABS制御部14の制御に必要な電圧を確保することで、従来のアイドルストップ車の制御装置のように、ABS制御部14による制御の実行中および制御が実行され得る状況下で、アイドルストップ制御部12によるエンジン自動停止制御を禁止する必要がない。そのため、アイドルストップ制御部12は、ABS制御部14の制御の実行の有無に制約されずに、車両1が所定車速にまで減速したときにエンジン4の自動停止制御を実行することができ、これにより、アイドルストップ車1の燃費の向上を図ることができる。
【0034】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能であり、例えば、上記した実施形態では、アイドルストップ車1の制御装置2において、アイドルストップ制御部12と電圧制御部16とを個別に設ける場合について説明したが、例えば、アイドルストップ制御部12に電圧制御部16の機能をさらに設ける構成であってもかまわない。
【0035】
また、上記した実施形態では、ABS制御部14に車輪速センサ17を設けるように構成したが、これらを個別に設ける構成であってもかまわない。
【符号の説明】
【0036】
1… アイドルストップ車(車両)
2… 制御装置
4… エンジン
12… アイドルストップ制御部(アイドルストップ制御手段)
14… ABS制御部(ブレーキ制御手段)
16… 電圧制御部(供給手段)
図1
図2
図3
図4