特許第6143347号(P6143347)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143347
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】鋳型の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B22C 11/08 20060101AFI20170529BHJP
   B22C 9/02 20060101ALI20170529BHJP
   B22C 15/24 20060101ALI20170529BHJP
   B22C 1/10 20060101ALI20170529BHJP
   B22C 23/00 20060101ALI20170529BHJP
   B22C 11/00 20060101ALI20170529BHJP
   B22C 9/12 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B22C11/08
   B22C9/02 101E
   B22C15/24 Z
   B22C1/10 A
   B22C1/10 D
   B22C23/00 H
   B22C11/00 B
   B22C9/12 A
   B22C15/24 B
【請求項の数】10
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-155891(P2013-155891)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-24430(P2015-24430A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年4月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】312005186
【氏名又は名称】リグナイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085604
【弁理士】
【氏名又は名称】森 厚夫
(72)【発明者】
【氏名】井出 勇
【審査官】 川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−149364(JP,A)
【文献】 特開2012−076115(JP,A)
【文献】 特開2011−014242(JP,A)
【文献】 特開2009−241135(JP,A)
【文献】 特開2009−241094(JP,A)
【文献】 特開2000−079444(JP,A)
【文献】 特開2004−249340(JP,A)
【文献】 米国特許第04995443(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/10, 9/02,11/00,15/24
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火物に粘結剤を被覆して調製される粘結剤コーテッドサンドを成形型内に注入して充填するサンド供給ヘッドと、粘結剤コーテッドサンドが充填された成形型内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気による加熱で粘結剤コーテッドサンドの粘結剤を固化乃至硬化させる水蒸気供給ヘッドと、レールに沿って成形型を移動させる成形型移動装置を具備した鋳型製造装置であって、サンド供給ヘッドと水蒸気供給ヘッドはレールの長手方向に沿って離れた位置に配置されており、成形型移動装置は、成形型をサンド供給ヘッドの位置と水蒸気供給ヘッドの位置の間で往復移動させるものであると共に、粘結剤コーテッドサンドを成形型内に注入するためにサンド供給ヘッドに成形型を接続する位置、水蒸気を成形型内に吹き込むために水蒸気供給ヘッドに成形型を接続する位置、サンド供給ヘッドと水蒸気供給ヘッドの中間の成形型を開閉する位置の順に成形型を移動させるものであることを特徴とする鋳型製造装置。
【請求項2】
成形型移動装置は、サンド供給ヘッドに設けたノズル口に成形型に設けた注入口を接続する位置と、水蒸気供給ヘッドに設けたノズル口に成形型の注入口を接続する位置の間で、成形型を移動させるものであることを特徴とする請求項1に記載の鋳型製造装置。
【請求項3】
サンド供給ヘッドと水蒸気供給ヘッドを横方向において離した位置に配置すると共に成形型をこれらの下側に配置し、成形型移動装置は、成形型をサンド供給ヘッドの直下位置や水蒸気供給ヘッドの直下位置に横移動させる横駆動装置と、成形型をサンド供給ヘッドや水蒸気供給ヘッドに接続する高さにまで上昇させる縦駆動装置とを備えて形成されるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳型製造装置。
【請求項4】
成形型移動装置の横駆動装置は、サンド供給ヘッドの直下位置と、水蒸気供給ヘッドの直下位置と、サンド供給ヘッドと水蒸気供給ヘッドの間の位置の3か所に成形型を移動させるものであり、サンド供給ヘッドと水蒸気供給ヘッドの間の位置で成形型から鋳型が脱型されるものであることを特徴とする請求項3に記載の鋳型製造装置。
【請求項5】
水蒸気供給ヘッドは下方へ付勢力を付与された状態で上下動自在に支持されており、成形型移動装置の縦駆動装置で上昇された成形型で水蒸気供給ヘッドを押し上げることによって、水蒸気供給ヘッドのノズル口に成形型の注入口を密着させるものであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の鋳型製造装置。
【請求項6】
サンド供給ヘッド内にエアーを供給するエアー配管を備え、エアー配管から供給されるエアーの圧力でサンド供給ヘッド内の粘結剤コーテッドサンドを成形型内に吹き込んで注入するものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の鋳型製造装置。
【請求項7】
水蒸気を加熱して過熱水蒸気として水蒸気供給ヘッドに供給する過熱器を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の鋳型製造装置。
【請求項8】
水蒸気として温度120℃以上、水蒸気濃度10〜95%の高温高湿気体を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の鋳型製造装置。
【請求項9】
水蒸気として温度50〜500℃、水蒸気濃度10〜90%の高温高湿気体を用いることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の鋳型製造装置。
【請求項10】
水蒸気を成形型に吹き込んだ後、成形型に加熱気体を供給して通す加熱気体供給装置を備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の鋳型製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造に用いられる鋳型の製造装置、特に水蒸気による加熱で鋳型の造型を行なうようにした鋳型の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている鋳型は一般に、生砂型、高圧造型、高速造型など粘土類等を粘結剤として用いる普通鋳型と、熱硬化性鋳型、自硬性鋳型、ガス硬化鋳型、精密鋳造用鋳型など硬化性粘結剤を用いる特殊鋳型と、その他の鋳型とに分類される。
【0003】
これらの鋳型には一長一短があるが、鋳型を製造する際に高温の加熱が必要であったり、粘結剤の硬化に時間を要して短時間で安定して鋳型を製造することが難しかったり、鋳型を製造する際に有毒ガスが発生するおそれがあったりするなどの問題を有することが多い。
【0004】
そこで、粘結剤を耐火骨材に混合して調製される粘結剤コーテッドサンド(いわゆるレジンコーテッドサンド)を成形型内に充填し、この成形型内に水蒸気を吹き込んで粘結剤コーテッドサンドを加熱することによって、粘結剤を固化乃至硬化させ、耐火骨材を粘結剤で結合して形成される鋳型を製造する方法が提案されている。すなわち、水蒸気は高い凝縮潜熱を有するので、粘結剤コーテッドサンドを充填した型内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気が粘結剤コーテッドサンドに接する際にこの潜熱が伝達され、粘結剤コーテッドサンドを瞬時に加熱して粘結剤を固化乃至硬化させることができるものである。従って、成形型を高温に加熱しておく必要なく、安定して短時間で鋳型を製造することができると共に、有毒ガスの発生も低減することができるのである(特許文献1等参照)。
【0005】
このように水蒸気による加熱で鋳型の造型を行なうにあたって、鋳型製造装置としては、鋳型を造型する成形型の他に、成形型に粘結剤コーテッドサンドを供給する機構と、成形型に水蒸気を吹き込む機構とを備える必要があり、例えば特許文献2,3のような鋳型製造装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3563973号公報
【特許文献2】特開2009−241094号公報
【特許文献3】特開2009−241135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そして上記の特許文献2,3で提案されている鋳型製造装置はいずれも、鋳型を造型する成形型に、粘結剤コーテッドサンドを供給する機構や、水蒸気を供給する機構を一体的に組み込んだものとして形成されている。
【0008】
従って、これらのものでは、成形型の構造が複雑になるので、設備コストが高くなって実用性に欠けるものであり、また造型する鋳型の種類を切り換える際の成形型の交換が困難である等の問題を有するものであった。そして粘結剤コーテッドサンドの供給機構と水蒸気の供給機構が一体のものとして形成されているために、成形型に供給する前の粘結剤コーテッドサンドに水蒸気供給機構から水蒸気の熱が作用して、粘結剤コーテッドサンドの粘結剤が熱履歴を受けることになり、製造する鋳型の品質が不安定になるという問題もあった。特に粘結剤コーテッド耐火物の粘結剤がフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂である場合、水蒸気供給機構から水蒸気の熱が作用すると粘結剤が溶融固化して粘結剤コーテッド耐火物にブロッキングが生じ、粘結剤コーテッドサンドの流動性が損なわれて成形型に粘結剤コーテッド耐火物を充填することが困難になるという問題があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、成形型を複雑な構造にする必要がなく、また安定した品質の鋳型を製造することができる鋳型製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る鋳型製造装置は、耐火物に粘結剤を被覆して調製される粘結剤コーテッドサンド3を成形型2内に注入して充填するサンド供給ヘッド4と、粘結剤コーテッドサンド3が充填された成形型2内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気による加熱で粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤を固化乃至硬化させる水蒸気供給ヘッド5と、レール47に沿って成形型2を移動させる成形型移動装置6を具備した鋳型製造装置であって、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5はレール47の長手方向に沿って離れた位置に配置されており、成形型移動装置6は、成形型2をサンド供給ヘッド4の位置と水蒸気供給ヘッド5の位置の間で往復移動させるものであると共に、粘結剤コーテッドサンド3を成形型2内に注入するためにサンド供給ヘッド4に成形型2を接続する位置、水蒸気を成形型2内に吹き込むために水蒸気供給ヘッド5に成形型2を接続する位置、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の中間の成形型2を開閉する位置の順に成形型2を移動させるものであることを特徴とするものである。
【0011】
成形型2内への粘結剤コーテッドサンド3の充填は、成形型移動装置6で成形型2を移動させてサンド供給ヘッド4に成形型2を接続することによって行なうことができると共に、成形型2内への水蒸気の吹き込みは、成形型移動装置6で成形型2を移動させて水蒸気供給ヘッド5に成形型2を接続することによって行なうことができるものであり、鋳型を造型する成形型2に粘結剤コーテッドサンド3を注入する機構や水蒸気を吹き込む機構を一体的に結合して設ける場合のような、特別な仕様の複雑な構造の成形型2を用いる必要がなくなるものである。そして成形型2は粘結剤コーテッドサンド3を注入する機構や水蒸気を吹き込む機構と独立して形成できるため、造型する鋳型の種類を切り換える際に成形型2を交換することが容易になるものである。
【0012】
また、成形型2を移動させてサンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5に成形型2を接続するようにしているため、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5を近接させる必要なく離れた位置に配置することができるものであり、水蒸気供給ヘッド5からサンド供給ヘッド4に水蒸気の熱が伝わるようなことがないものであって、成形型2に供給する前の粘結剤コーテッドサンド3に水蒸気の熱が作用して、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が熱履歴を受けることを防ぐことができ、鋳型を安定した品質で製造することができると共に、ブロッキングのような問題もなくなるものである。
【0013】
請求項2の発明は、上記の成形型移動装置6は、サンド供給ヘッド4に設けたノズル口8に成形型2に設けた注入口1を接続する位置と、水蒸気供給ヘッド5に設けたノズル口9に成形型2の注入口1を接続する位置の間で、成形型2を移動させるものであることを特徴とするものである。
【0014】
成形型2への粘結剤コーテッドサンドの注入充填と水蒸気の吹き込みは、成形型2に設けた同じ注入口1から行なうことができ、成形型2の構造をより簡単なものに形成することができるものである。
【0015】
請求項3の発明は、上記のサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5を横方向において離した位置に配置すると共に成形型2をこれらの下側に配置し、上記の成形型移動装置6は、成形型2をサンド供給ヘッド4の直下位置や水蒸気供給ヘッド5の直下位置に横移動させる横駆動装置11と、成形型2をサンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5に接続する高さにまで上昇させる縦駆動装置12とを備えて形成されるものであることを特徴とするものである。
【0016】
このように成形型移動装置6を横駆動装置11と縦駆動装置12で形成し、成形型2を横駆動装置11で横移動させ、また縦駆動装置12で上下に移動させることで、成形型2をサンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5に接続するようにしているため、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5を移動させる駆動機構を別途備えるような必要なく、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5に成形型2を接続できるものであり、鋳型製造装置の全体の構造を簡略化することが可能になるものである。
【0017】
請求項4の発明は、上記の成形型移動装置6の横駆動装置11は、サンド供給ヘッド4の直下位置と、水蒸気供給ヘッド5の直下位置と、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間の3か所に成形型2を移動させるものであり、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間の位置で成形型2から鋳型が脱型されるものであることを特徴とするものである。
【0018】
成形型2内に成形した鋳型の脱型は、横方向に隔離されたサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間の位置で行なうことができるものであり、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5が邪魔になることなく脱型の作業を容易に行なうことができるものである。またサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間の距離を大きく確保することが可能になり、サンド供給ヘッド4の粘結剤コーテッドサンド3に水蒸気供給ヘッド5の水蒸気が作用することをより低減できるものである。
【0019】
請求項5の発明は、上記の水蒸気供給ヘッド5は下方へ付勢力を付与された状態で上下動自在に支持されており、成形型移動装置6の縦駆動装置12で上昇された成形型2で水蒸気供給ヘッド5を押し上げることによって、水蒸気供給ヘッド5のノズル口9に成形型2の注入口1を密着させるものであることを特徴とするものである。
【0020】
このように付勢力に抵抗して水蒸気供給ヘッド5を成形型2で押し上げることによって、水蒸気供給ヘッド5のノズル口9に成形型2の注入口1を密着させることができるものであり、ノズル口9と注入口1の間からの漏れを抑制しつつ成形型2内に水蒸気を吹き込むことができるものである。
【0021】
請求項6の発明は、エアーをサンド供給ヘッド4内に供給するエアー配管13を備え、エアー配管13から供給されるエアーの圧力でサンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3を成形型2内に吹き込んで注入するものであることを特徴とするものである。
【0022】
このようにエアー圧で成形型2内に粘結剤コーテッドサンド3を吹き込むことによって、粘結剤コーテッドサンド3の注入を短時間で、充填不良が発生することなく行なうことができるものである。
【0023】
請求項7の発明は、水蒸気を加熱して過熱水蒸気として水蒸気供給ヘッド5に供給する過熱器14を備えることを特徴とするものである。
【0024】
過熱水蒸気は高温の乾き空気であって、成形型2内で水蒸気から凝縮水が過剰に生成されることが少なくなり、成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3の温度上昇速度を速めることができ、鋳型の成形のサイクルを短縮することが可能になるものである。
【0025】
請求項8の発明は、上記の水蒸気として温度120℃以上、水蒸気濃度10〜95%の高温高湿気体を用いることを特徴とするものである。
【0026】
熱硬化性樹脂の粘結剤を表面に被覆した粘結剤コーテッドサンド3を充填した成形型内に、温度120℃以上、水蒸気濃度10〜95%の高温高湿気体を成形型内に通すことによって、高温高湿気体の顕熱と凝縮潜熱により粘結剤コーテッドサンド3の温度を上昇させることができ、そして継続して成形型2内に通される高温高湿気体で加熱して成形型2内の凝縮水を蒸発させると共に粘結剤コーテッドサンドの粘結剤を硬化させることができるものである。
【0027】
そして、成形型2内に通す高温高湿気体は、温度が120℃以上、水蒸気濃度10〜95%であるので、高温高湿気体中の含有水分量は、従来から使用される水蒸気に比べると大幅に少ないものであって、成形型2内で生成される凝縮水の量が少なくなり、凝縮水を蒸発させるのに要する時間を短縮することができ、鋳型の成形時間を短くすることができるものである。
【0028】
請求項9の発明は、上記の水蒸気として温度50〜500℃、水蒸気濃度10〜90%の高温高湿気体を用いることを特徴とするものである。
【0029】
水分を吸収した湿潤状態で粘着作用が生じる固形の粘結剤を表面に被覆した粘結剤コーテッドサンド3を充填した成形型2内に温度50〜500℃、水蒸気濃度10〜90%の高温高湿気体を通すと、高温高湿気体は粘結剤コーテッドサンド3に接触して温度が低下し、高温高湿気体中の水蒸気が凝縮して生成される凝縮水が粘結剤に供給され、凝縮水の水分を吸収して粘着性が生じた粘結剤で粘結剤コーテッドサンド3の粒子同士を粘結させることができるものであり、次いで継続して成形型2に通される高温高湿気体により、成形型内の粘結剤コーテッドサンド3を加熱して、粘結剤に含有されている水分を蒸発させて粘結剤を固化させることができ、固化した粘結剤で粘結剤コーテッドサンド3の粒子を結合した鋳型を得ることができるものである。
【0030】
そして成形型2内に通す高温高湿気体は、温度が50〜500℃、水蒸気濃度が10〜90%であるので、高温高湿気体中の含有水分量は、粘結剤を湿潤状態にして粘着作用を付与するのに十分であると共に、従来から使用される水蒸気に比べると大幅に少ないものであって、成形型2内で余分な凝縮水を多量に発生させることが少なくなくなり、凝縮水を蒸発させて粘結剤を乾燥固化させる時間を短縮することができ、鋳型の成形時間を短くすることができるものである。またこのように成形型内で余分な凝縮水が多量に生成されることがないので、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が凝縮水で流されるようなことがなくなり、粘結剤が偏在するようなことなく均一な強度の鋳型を製造することができるものである。
【0031】
請求項10の発明は、水蒸気を成形型2に吹き込んだ後、成形型2に加熱気体を供給して通す加熱気体供給装置93を備えることを特徴とするものである。
【0032】
粘結剤コーテッドサンド3を充填した成形型2内に水蒸気を吹き込むことによって、水蒸気の凝縮潜熱により粘結剤コーテッドサンド3の温度を100℃近傍まで急速に上昇させることができると共に、次いで、加熱気体を成形2型内に吹き込むことによって、水蒸気より水分の少ない加熱気体で凝縮水を迅速に蒸発させることができ、短時間で100℃以上の温度に上昇させることができるものであり、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上にまで成形型2内の温度を上昇させる速度を速めることができるものであって、短時間の加熱で強度の高い鋳型を製造することができるものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、成形型2内への粘結剤コーテッドサンド3の充填は、成形型移動装置6で成形型2を移動させてサンド供給ヘッド4に成形型2を接続することによって行なうことができると共に、成形型2内への水蒸気の吹き込みは、成形型移動装置6で成形型2を移動させて水蒸気供給ヘッド5に成形型2を接続することによって行なうことができるものであり、鋳型を造型する成形型2に粘結剤コーテッドサンド3を注入する機構や水蒸気を吹き込む機構を一体的に結合して設ける場合のような、特別な仕様の複雑な成形型2を用いる必要がなくなると共に、成形型2は粘結剤コーテッドサンド3を注入する機構や水蒸気を吹き込む機構と独立して形成できるため、造型する鋳型の種類を切り換える際に成形型2を交換することが容易になるものである。
【0034】
また、成形型2を移動させてサンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5に成形型2を接続するようにしているため、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5は離れた位置に配置することができるものであり、水蒸気供給ヘッド5からサンド供給ヘッド4に水蒸気の熱が伝わるようなことがないものであって、成形型2に供給する前の粘結剤コーテッドサンド3に水蒸気の熱が作用して、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が熱履歴を受けることを防ぐことができ、鋳型を安定した品質で製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明に係る鋳型製造装置の一例の全体構成を示すものであり、脱型の工程の正面図である。
図2】本発明に係る鋳型製造装置の一例の全体構成を示すものであり、粘結剤コーテッドサンドを注入する前の工程の正面図である。
図3】本発明に係る鋳型製造装置の一例の全体構成を示すものであり、粘結剤コーテッドサンドを注入する工程の正面図である。
図4】本発明に係る鋳型製造装置の一例の全体構成を示すものであり、水蒸気を吹き込む前の工程の正面図である。
図5】本発明に係る鋳型製造装置の一例の全体構成を示すものであり、水蒸気を吹き込む工程の正面図である。
図6】同上の装置の鋳型を備えるブロックを示すものであり、(a)は正面図、(b)は右側面図、(c)は平面図である。
図7】同上の装置の成形型を示すものであり、(a)は成形型を分離した状態の斜視図、(b)は成形型を型締めした状態の断面図である。
図8】同上の装置のサンド供給ヘッドを備えるブロックを示す断面図である。
図9】(a)は同上のノズル口部分の拡大した断面図、(b)は同上のノズル口部分の拡大した平面図である。
図10】同上のサンド供給ヘッドから成形型に粘結剤コーテッドサンドを注入する状態を示す断面図である。
図11】同上の水蒸気供給ヘッドを備えるブロックを示すものであり、(a)は一部を断面とした正面図、(b)は水蒸気供給ヘッドから成形型に水蒸気を吹き込む状態を示す断面図である。
図12】加熱気体を成形型に供給する実施形態を示す断面図である。
図13】高温高湿気体を調製する装置を示すものであり、(a)乃至(d)はそれぞれ概略図である。
図14】(a)は水蒸気供給ヘッドの他の実施の形態の概略下面図、(b)は成形型の他の実施の形態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0037】
図1は本発明に係る鋳型製造装置の一例の全体構成を示すものであり、この鋳型製造装置は主として、鋳型を成形する成形型2を備えるブロックと、成形型2に粘結剤コーテッドサンド3を供給するサンド供給ヘッド4を備えるブロックと、成形型2に水蒸気を供給する水蒸気供給ヘッド5を備えるブロックとからなっている。
【0038】
まず成形型2を備えるブロックの構成を図6を参照して説明する。図6において20は基台であって、一方の端部の立ち上がり部20aの上端に反転駆動機構部21が設けてある。この反転駆動機構部21は、ラック(図示しない)が内蔵された下部のラック機構部21aと、ラックと噛合するピニオン(図示しない)が内蔵された上部のピニオン機構部21bから形成してあり、ピニオン機構部21bは細長いラック機構部21aの中央部の上に一体に設けてある。ラック機構部21a内のラックは、シリンダー機構によって長手方向に直線往復駆動されるようになっており、ラックがこのように直線駆動されると、ラックに噛合するピニオン機構部21b内のピニオンが回転駆動されるようになっている。このピニオン部21bに固定側回動軸22が挿通して設けてあり、固定側回動軸22の外周に上記のピニオンが固定してある。この固定側回動軸22の先端部には固定側型板23が取り付けてある。
【0039】
基台20の他方の端部の上には一対の反転支持車25が設けてあり、この一対の反転支持車25間の上に反転支持円盤26が配置してある。反転支持円盤26と上記の固定側型板23の間に複数本の連結ロッド27が架け渡して取り付けてあり、反転支持円盤26は連結ロッド27を介して固定側型板23に連結固定された状態で、一対の反転支持車25の上に支持されているものである。この各連結ロッド27には、可動側型板28に設けたスリーブ29がスライド自在に外嵌してあり、連結ロッド27に沿ってスライドすることができるように可動側型板28が取り付けてある。反転支持円盤26の外側中央部に型開閉シリンダー装置30が取り付けてあり、このシリンダー装置30のシリンダーロッド30aが反転支持円盤26を通して内方へ突き出ている。シリンダーロッド30aの先端部は連結部材31を介して上記の可動側型板28に結合してある。従って、シリンダー装置30を駆動してシリンダーロッド30aを出入りさせるように作動させることによって、可動側型板28を連結ロッド27に沿ってスライドさせ、可動側型板28を上記の固定側型板23に近接・離反する方向に前進・後退させることができるものである。
【0040】
上記の基台20は下面に車輪42を設けた台車40の上に取り付けてある。台車40の上面には、複数本(例えば4本)の昇降シリンダー装置41が、シリンダーロッド41aを上向きにした姿勢で取り付けてあり、シリンダーロッド41aの先端部に基台20を載置して固定してある。昇降シリンダー装置41を作動させてシリンダーロッド41aを上方へ突出させると基台20は上昇し、またシリンダーロッド41aを昇降シリンダー装置41内に引っ込ませると基台20は下降する。このように昇降シリンダー装置41を作動させてシリンダーロッド41aを出入りさせることによって、基台20と共に成形型2を上昇・下降させることができるものであり、この昇降シリンダー装置41によって成形型2を上昇・下降させる縦駆動装置12が形成されるものである。
【0041】
成形型2は図7(a)のように固定側の型2aと可動側の型2bからなるものであり、型2aは固定側型板23に、型2bは可動側型板28に取り付けてある。型2a,2bの対向面にはそれぞれ成形用の凹所33a,33bが凹設してある。そして上記のようにシリンダー装置30を作動し、可動側型板28を前進させて固定側型板23に近接させることによって、型2a,2bを合致させて成形型2の型締めすることができるものであり、成形型2を型締めすることによって図7(b)のように凹所33a,33bで成形型2内にキャビティ33が形成され、またキャビティ33に連通し且つ成形型2の上面で開口する注入口1が形成されるようにしてある。型2a,2bの少なくとも一方の表面には、キャビティ33内から水蒸気を含む気体を排気するエアベント34が設けてある。エアベント34は、水蒸気などの気体は通過するが、粘結剤コーテッドサンド3は通過しない浅溝として形成してある。また型2a,2bには電気ヒータなどを内蔵してあり、成形型2を加熱することができるようにしてある。本発明は成形型2の熱で粘結剤コーテッドサンド3を加熱して鋳型の成形を行なうものではないので、成形型2の加熱温度は成形型2に吹き込まれる水蒸気の温度が低下しない程度の比較的低い温度でよい。また、成形する鋳型を変更するために成形型2を交換する場合、固定側型板23や可動側型板28に別の型2a,2bを取り付け直すだけで済むものであり、成形型2の交換を容易に且つ短時間で行なうことができるものである。
【0042】
ここで、上記したように、反転駆動機構部21のラック機構部21a内のラックを駆動して、ピニオン機構部21b内のピニオンを回転駆動すると、固定側回動軸22がこのピニオンと共に回動する。固定側型板23はこの固定側回動軸22に取り付けられており、反転支持車25上の反転支持円盤26及び可動側型板28は連結ロッド27を介して固定側型板23と連結されている。従って、反転駆動機構部21を作動して固定側回動軸22を回動させると、固定側型板23と共に反転支持円盤26が反転支持車25の上を転動するように回動するものであり、同時に可動側型板28も回動する。これに伴って、固定側型板23と可動側型板28に取り付けた型2a,2bからなる成形型2も回動する。そして、型締めした成形型2には、注入口1を上方に向けた状態でキャビティ33内に粘結剤コーテッドサンド3が充填されるが、このように成形型2を180度の角度で回動させて、成形型2の注入口1が下方を向くように上下反転させると、キャビティ33内の粘結剤コーテッドサンド3のうち、固まっていない粘結剤コーテッドサンド3を注入口1から排出することができるものであり、中空の鋳型を成形することが可能になる。
【0043】
次に、サンド供給ヘッド4を備えるブロックの構成を図8乃至図10を参照して説明する。サンド供給ヘッド4は、下端にノズル口8を設けると共に、外周のフランジ56より上部において上端がサンド導入口58として開口する円筒状のサンド導入筒57を上方へ突出して設けることによって形成してある。
【0044】
図8において60はサンド供給ヘッド4の下端部に設けた冷却板であり、水を通して冷却できるようにしてある。サンド供給ヘッド4の下端は加熱された成形型2に接触するが、成形型2の熱がサンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3に伝わることを、冷却板60で防ぐことができるものである。この冷却板60の中央部にサンド供給ヘッド4内に連通する連通孔60aが形成してあり、この連通孔60aの個所において冷却板60の下面にノズル取付板61が取り付けてある。ノズル取付板61には連通孔60aと連通するノズル取付口61aが形成してあり、ノズル取付口61aにノズル筒62が装着してある。
【0045】
ノズル筒62は図9(a)のように円筒状に形成してあり、ノズル筒62の下面の開口はフランジ底片63で閉塞してある。このフランジ底片63の中央部にノズル口8が開口して形成してあり、ノズル口8はノズル取付口61a、連通孔60aを介してサンド供給ヘッド4内に連通している。ノズル筒62内には邪魔板64が取り付けてある。この邪魔板64は円板状に形成されるものであり、図9(b)のように外周の複数個所に等間隔でスペーサ片64aが同じ突出寸法で突設してある。邪魔板64は、このスペーサ突片64aがノズル筒62の内周に当接した状態で、フランジ底片63から離れた位置に固定されるものであり、ノズル筒62内は邪魔板64によって上下に仕切られるものである。そしてスペーサ突片64aによって、邪魔板64の外周とノズル筒62の内周の間に狭い隙間65が形成され、邪魔板64の上側と下側はこの隙間65で連通されるものである。
【0046】
サンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3は、冷却板60の連通孔60a、ノズル取付板61のノズル取付口61a、ノズル筒62を通過してノズル口8から吐出されるが、ノズル筒62には邪魔板64が設けられており、粘結剤コーテッドサンド3は狭い隙間65を容易に通過できないので、粘結剤コーテッドサンド3の自重だけではノズル口8から吐出されないようになっている。特にサンド供給ヘッド4内と邪魔板64の間には狭い連通孔60aが設けられているので、サンド供給ヘッド4内の総ての粘結剤コーテッドサンド3の自重が邪魔板64に作用することがなく、通常の状態では粘結剤コーテッドサンド3はノズル口8から吐出されない。一方、後述のように、サンド供給ヘッド4内にエアーを導入して、サンド供給ヘッド4内を外気圧よりも高圧にすることによって、エアー圧でサンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3を押圧して邪魔板64の隙間65を強制的に通過させ、ノズル口9から図9(a)の矢印のように粘結剤コーテッドサンド3を吐出させることができるものである。
【0047】
また図8のように、サンド供給ヘッド4のサンド導入筒57の上側には、粘結剤コーテッドサンド3を貯留したサンド貯留槽10を配置して設けてある。漏斗状に形成されるサンド貯留槽10の下部には排出筒69が下方へ突出して設けてあり、排出筒69の下端の排出口70がサンド導入筒57の上端のサンド導入口58の開口に対向するように、サンド貯留槽10を配置して設けてある。
【0048】
サンド貯留槽10のこの排出口70は砂シャッター71で開閉されるようになっている。砂シャッター71にはシャッター孔71aが設けてあり、シャッター開閉シリンダー装置100のシリンダーロッド100aの先端に砂シャッター71を取り付けてある。砂シャッター71は排出口70の外周に張り出して形成したフランジ72とサンド導入口58の外周に張り出して形成したフランジ73の間に差し込んである。砂シャッター71はこれらのフランジ72,73に接した状態で、シャッター開閉シリンダー装置100によって前後に往復移動されるようにしてある。そして砂シャッター71のシャッター孔71aがサンド貯留槽10の排出口70に合致したときに排出口70は開口され、図8の矢印のように粘結剤コーテッドサンド3はシャッター孔71aを通過して自重でサンド貯留槽10の排出口70から排出される。またこの状態からシャッター開閉シリンダー装置100で砂シャッター71を前進させて、排出口70の位置からシャッター孔71aを外すことによって、図10のように砂シャッター71で排出口70を閉じることができ、サンド貯留槽10から粘結剤コーテッドサンド3が排出されないようにすることができる。通常状態では排出口70は砂シャッター71で閉じられている。またこの図10の状態では、サンド導入筒57のサンド導入口58も砂シャッター71で閉じられ、サンド導入筒57内は密閉状態になるものである。
【0049】
また、サンド供給ヘッド4のサンド導入筒57の上部の側面にはエアー導入口72が設けてあり、このエアー導入口72にエアー配管13が接続してある。エアー配管13はコンプレッサー等に接続されており、図10に矢印で示すように、エアー配管13からエアー導入口72を通して高圧エアーがサンド供給ヘッド4のサンド導入筒57に吹き込まれるようになっている。
【0050】
次に、水蒸気供給ヘッド5を備えるブロックについて図11を参照して説明する。水蒸気供給ヘッド5は矩形板状に形成されるものであり、下面の中央部にノズル口9が設けてある。水蒸気供給ヘッド5には図11(b)に示すように、後端部と上下面に開口する蒸気通路102が形成してあり、この蒸気通路の102の上下に開口する縦穴部にノズル筒103が上から差し込んで取り付けてある。ノズル筒103は上面が閉塞され下面が開口する円筒状に形成されるものであり、側面に形成した開口部103aが蒸気通路102内に開口させてある。従ってノズル筒103内は開口部103aを通して蒸気通路102と連通しているものであり、ノズル筒103の水蒸気ヘッド5の下面から突出する下端開口部によってノズル口9が形成されるものである。水蒸気供給ヘッド5の後端の蒸気通路102の開口には水蒸気供給管91が接続してあり、水蒸気供給管91を通して水蒸気供給ヘッド5に供給された水蒸気はノズル口9から図11(b)の矢印のように噴出されるようになっている。
【0051】
水蒸気供給ヘッド5は支持板87の下側に取り付けてある。水蒸気供給ヘッド5の上面には複数本(例えば4本)の上下ガイドピン88が上方へ突出して設けてあり、また支持板87には上下ガイドピン88と同数のガイド孔89が上下に貫通して設けてある。そしてこのガイド孔89に上下ガイドピン88を上下動自在に挿通することによって、支持板87の下側に水蒸気供給ヘッド5を上下動自在に配置し、上下ガイドピン88の上端に張り出して設けた係止片88aをガイド孔89の周縁の上面に係止させることによって、支持板87に水蒸気供給ヘッド5を取り付けるようにしてある。また水蒸気供給ヘッド5の上面と支持板87の下面の間において上下ガイドピン88の外周にスプリング90が取り付けてあり、スプリング90の上端と下端が支持板87の下面と水蒸気供給ヘッド5の上面に弾接していることによって、水蒸気供給ヘッド5はこのスプリング90の弾発力で下方への付勢力を付与された状態で上下動自在になっている。
【0052】
上記した成形型2を備えるブロック、サンド供給ヘッド4を備えるブロック、水蒸気供給ヘッド5を備えるブロックを躯体43に組み付けることによって、図1に示すような本発明に係る鋳型製造装置を組み立てることができるものである。躯体43は、ベース台44の端部に複数本の支柱45を立設すると共に支柱の上端間に支持梁45を架け渡して取り付けることによって形成されるものである。
【0053】
ベース台44の上面には支持梁46と平行な方向で一対のレール47が取り付けてある。このレール47に車輪42を転動自在に載置して、台車40をベース台44の上に配置するようにしてある。従って、台車40をレール47に沿って走行移動させることによって、台車40の上に基台20を介して取り付けた成形型2を、支持梁46の下側において支持梁46と平行な方向に移動させることができるものである。
【0054】
11は横駆動装置であり、シリンダー台車48の上に上下一対のシリンダー装置50,51を取り付けて形成されるものである。シリンダー台車48はその両側に設けた車輪49をレール40に転動自在に載置することによって、ベース台44の上に配置してある。一対のシリンダー装置50,51はシリンダー台車48に水平姿勢で取り付けてあり、各シリンダー装置46,47はそれぞれ反対方向にシリンダーロッド50a,51aが出入りするように、逆向き配置で取り付けてある。そして一方のシリンダー装置50のシリンダーロッド50aの先端はベース台44の一端部に設けた固定材52に固定してあり、他方のシリンダー装置51のシリンダーロッド51aの先端部は台車40に固定してある。従って、各シリンダー装置50,51を作動させてシリンダーロッド50a,51aを出入りさせると、シリンダー台車48がレール47に沿って走行することに伴ってシリンダー装置50,51が移動すると共に、台車40をレール47に沿って走行させることができるものであり、シリンダー装置50,51の各シリンダーロッド51a,51aが出入りするストロークの2倍のストロークで台車40を移動させることができるものである。このシリンダー装置50,51を備えた横駆動装置11によって、台車40の上に保持される成形型2を水平方向に移動させることができるものであり、成形型2を昇降させる上記の縦駆動装置12とこの横駆動装置11とで成形型移動装置6が形成されるものである。
【0055】
また、サンド供給ヘッド4を備えたブロックと、水蒸気供給ヘッド5を備えたブロックは、支持梁46に取り付けて固定することによって躯体43に組み込んである。ここで、サンド供給ヘッド4を備えたブロックは、サンド供給ヘッド4のフランジ56を支持梁46に係止した状態で固定してある。ここで、サンド貯留槽10はサンド供給ヘッド4とは独立して支持部材(図示省略)で支持梁46に取り付けて固定することができるものであり、シャッター開閉シリンダー装置100もこの支持部材に取り付けて固定することができる。また水蒸気供給ヘッド5を備えたブロックは、支持梁46に垂下して設けた取付具53に水蒸気供給ヘッド5を支持する支持板87を係止して取り付けることによって固定してある。
【0056】
上記のサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5はレール47の長手方向に沿って離れた位置で配置してあり、またレール47に沿って移動される成形型2よりも高い位置に配置してある。そして成形型2はサンド供給ヘッド4の直下位置と水蒸気供給ヘッド5の直下位置の間で往復移動されるようにしてある。すなわち、横駆動装置11を構成する一対のシリンダー装置50,51の各シリンダーロッド50a,51aを引っ込ませた状態から、一方のシリンダー装置50,51、例えばシリンダー装置51を作動させてシリンダーロッド51aを突出させて台車40をレール47に沿って走行させると、図1に示すように成形型2をサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間の中間に位置させることができる。
【0057】
次に横駆動装置11の他方のシリンダー装置50,51、例えばシリンダー装置50を作動させてシリンダーロッド50aを突出させて台車40をレール47に沿って走行させると、図2に示すように成形型2をサンド供給ヘッド4の直下に位置させることができる。さらに横駆動装置11の両方のシリンダー装置50,51を作動させ、各シリンダーロッド50a,51aを引っ込ませ台車40をレール47に沿って走行させると、図4のように成形型2を水蒸気供給ヘッド5の直下に位置させることができる。
【0058】
ここで、本発明の鋳型製造装置で使用する粘結剤コーテッドサンド3について説明する。粘結剤コーテッドサンド3はレジンコーテッドサンド(RCS)とも呼ばれるものであり、耐火骨材に粘結剤を混合することによって、耐火骨材の表面を粘結剤で被覆して形成されるものである。耐火骨材としては、特に限定されるものではないが、硅砂、山砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂、その他、人工砂などを例示することができる。また粘結剤としては、シェルモールド用のレジンコーテッドサンドに使用されるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、フェノール樹脂、フラン樹脂、イソシアネート化合物、アミンポリオール樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等から選ばれる熱硬化性樹脂、糖類、水溶性無機化合物、水溶性熱可塑性樹脂などを挙げることができる。この粘結剤コーテッドサンド3はサンド貯留槽10に貯留されている。
【0059】
そして本発明に係る鋳型製造装置で鋳型を製造するにあたっては、図1のように成形型2がサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の中間に位置している状態から鋳型を成形する工程が始まる。まず成形型2の型締めが行なわれる。すなわち、図6(a)(b)のように成形型2の固定側及び可動側の型2a,2bが開いた状態から、型開閉シリンダー装置30が作動し、シリンダーロッド30aが突出することによって、固定側の型2aに近接するように可動側の型2bを移動させて、図7(b)のように型締めすることができるものである。
【0060】
また、サンド貯留槽10からサンド供給ヘッド4に粘結剤コーテッドサンド3が供給される。すなわち図8に示すように、シャッター開閉シリンダー装置100を作動させて砂シャッター71のシャッター孔71aをサンド貯留槽10の排出口に合致させると、サンド貯留槽10内に貯留されている粘結剤コーテッドサンド3の一部が自重で落下して排出口70からシャッター孔71aを通して排出される。サンド貯留槽10の排出口70の直下にはサンド導入筒57の開口部58が位置しているので、排出口70から排出された粘結剤コーテッドサンド3は、開口部58からサンド導入筒57内に入り、サンド供給ヘッド4に供給される。所定量の粘結剤コーテッドサンド3がサンド供給ヘッド4に供給されると、シャッター開閉シリンダー装置100で砂シャッター71を前進させ、排出口70の位置からシャッター孔71aが外れるようにして、図10のように砂シャッター71で排出口70を閉じると共にサンド導入筒57のサンド導入口58を砂シャッター71で閉る。
【0061】
次に、横駆動装置11のシリンダー装置50を作動させてシリンダーロッド50aを突出させ、台車40をレール47に沿って走行させて図2のように成形型2をサンド供給ヘッド4の直下の位置に移動させる。この状態では成形型2はサンド供給ヘッド4の下方に離れた位置にあるので、縦駆動装置12の昇降シリンダー装置41を作動させ、各シリンダーロッド41aを上方へ突出させて基台20を持ち上げ、基台20に保持された成形型2を図3のように上昇させる。このように成形型2を上昇させると、図10に示すように、サンド供給ヘッド4の下端のノズル口8に成形型2の上面の注入口1が合致して密着する。そしてこの状態でエアー配管13から高圧エアーを図10の矢印のようにサンド導入筒57内に吹き込むと、サンド供給ヘッド4内は加圧状態になり、サンド供給ヘッド4内に貯留された粘結剤コーテッドサンド3は図9(a)の矢印のようにノズル口8を通過して吐出され、注入口1から成形型2のキャビティ33内に注入されるものである。
【0062】
このように、粘結剤コーテッドサンド3はエアーの圧力でサンド供給ヘッド4から成形型2内に吹き込まれるものであり、成形型2内への粘結剤コーテッドサンド3の注入を短時間で行なうことができ、また充填不良が発生することなく成形型2のキャビティ33内に粘結剤コーテッドサンド3を充填することができるものである。粘結剤コーテッドサンド3と共にキャビティ33内に流入するエアーは、エアベント34から排気される。
【0063】
このようにサンド供給ヘッド4から成形型2内に粘結剤コーテッドサンド3が注入されて充填されると、エアー配管13からの高圧エアーの供給が停止される。そして縦駆動装置12を構成する昇降シリンダー装置41を作動させ、シリンダーロッド41aを下方へ引っ込ませることによって、基台20を引き下げ、基台20に保持された成形型2を降下させて、成形型2をサンド供給ヘッド4から離す(図2参照)。
【0064】
次に、横駆動装置11を構成する一対のシリンダー装置50,51をそれぞれシリンダーロッド50a,51aが引っ込むように作動させ、台車40をレール47に沿って走行させて、成形型2をサンド供給ヘッド4の直下位置から、図4のように水蒸気供給ヘッド5の直下位置へと移動させる。この状態では成形型2は水蒸気供給ヘッド5の下方に離れた位置にあるので、縦駆動装置12の昇降シリンダー装置41を作動させ、各シリンダーロッド41aを上方へ突出させて基台20を持ち上げ、基台20に保持された成形型2を図5のように上昇させる。
【0065】
このように成形型2を上昇させると、図11(b)に示すように水蒸気供給ヘッド5のノズル口9に成形型2の注入口1が合致し、水蒸気供給管91から水蒸気供給ヘッド5に供給されている水蒸気が図11(b)の矢印のように、ノズル口9から注入口1を通して成形型2のキャビティ33内に吹き込まれるものである。キャビティ33内に吹き込まれた水蒸気は、粘結剤コーテッドサンド3の間を通過した後、エアベント34から排気される。
【0066】
ここで、縦駆動装置12によって上昇される成形型2は、図11(a)のように水蒸気供給ヘッド5が最も下にある位置より若干高い位置にまで上昇されるようになっており、水蒸気供給ヘッド5は成形型2によって押し上げられるようになっている。上記したように水蒸気供給ヘッド5は支持板87のガイド孔89に上下ガイドピン88が挿通しており上下動自在になっているが、スプリング90の弾発力で下方への付勢力が付与されているので、水蒸気供給ヘッド5を成形型2で押し上げると、スプリング90の弾発力によって水蒸気供給ヘッド5のノズル口9に成形型2の注入口1を密着させることができるものであり、ノズル口9と注入口1の間から漏れないようにして水蒸気の供給を行なうことができるものである。
【0067】
ここで、水蒸気供給ヘッド5へは水蒸気供給管91から常に水蒸気が供給されており、成形型2に水蒸気を吹き込むとき以外も、ノズル口9から常に水蒸気が噴き出ている。このため、成形型2が開いているときには図1のように、成形型2を水蒸気供給ヘッド5から離れた位置に移動させ、噴き出る水蒸気が悪影響しないようにしてある。また水蒸気供給ヘッド5は内部を通る水蒸気によって表面の温度が高くなっており、水蒸気供給ヘッド5とサンド供給ヘッド4とが近接していると、水蒸気供給ヘッド5からサンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3に熱が作用するおそれがある。このように成形型2に充填する前のサンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3に熱が作用すると、粘結剤の硬化が進行するなど熱履歴を受けるおそれがあって、この粘結剤コーテッドサンド3を用いて成形する鋳型の品質が不安定になる。しかし本発明では、成形型2をサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間で移動させて、粘結剤コーテッドサンド3の充填と水蒸気の吹き込みを行なうようにしているので、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5を離れた位置に配置することができ、水蒸気供給ヘッド5の熱がサンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3に作用することがなくなる。従って、サンド供給ヘッド4内の粘結剤コーテッドサンド3が熱履歴を受けるようなことがなく、この粘結剤コーテッドサンド3を用いて安定した品質の鋳型を成形することができるものである。
【0068】
上記のように、粘結剤コーテッドサンド3が充填された成形型2内に水蒸気を吹き込むと、粘結剤コーテッドサンド3の表面に水蒸気が接触することによって、水蒸気は潜熱が粘結剤コーテッドサンド3に奪われて凝縮するが、水蒸気は高い潜熱を有するので、水蒸気が凝縮する際に伝熱されるこの潜熱で粘結剤コーテッドサンド3の温度は100℃付近にまで急速に上昇する。このように水蒸気の潜熱の伝熱によって粘結剤コーテッドサンド3が100℃付近にまで加熱される時間は、水蒸気の温度や成形型2内への吹き込み流量、成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3の充填量などで変動するが、通常、3〜30秒程度の短時間である。成形型2内に注入口1から吹き込まれた水蒸気は、成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3を加熱した後、エアベント34から排気される。
【0069】
そして成形型2内に吹き込んだ水蒸気の凝縮潜熱で粘結剤コーテッドサンド3の温度を急速に上昇させることができるものであり、水蒸気の凝縮で成形型2内に生成される凝縮水は、その後に成形型2内に吹き込まれる水蒸気による加熱で蒸発されることにより、成形型2内の温度は水蒸気の温度付近にまで急速に上昇し、この温度で粘結剤コーテッドサンド3を加熱することができるものである。
【0070】
ここで、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が熱硬化性樹脂の場合、成形型2内に充填した粘結剤コーテッドサンド3を水蒸気の凝縮潜熱で加熱して、熱硬化性樹脂の硬化温度以上の温度に上昇させることによって、粘結剤を溶融・硬化させることができ、耐火骨材(サンド)を粘結剤で結合した状態で鋳型を成形することができるものである。
【0071】
また粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が糖類、水溶性無機化合物、水溶性熱可塑性樹脂の場合、成形型2内に水蒸気を吹き込み始める際に、上記のように水蒸気が粘結剤コーテッドサンド3に接触することで熱を奪われて凝縮水が生成されるので、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤に凝縮水が作用する。そして粘結剤コーテッドサンド3の固形状態の粘結剤に凝縮水が作用すると、粘結剤が糖類であるときは、この凝縮水を吸収して膨潤あるいは溶解して糊化し、また粘結剤が水溶性無機化合物や水溶性熱可塑性樹脂であるときは、この凝縮水に溶解して液状になって糊化し、糖類、水溶性無機化合物、水溶性熱可塑性樹脂からなる粘結剤はいずれも糊状になって粘着性が生じる。このように粘結剤に粘着性が生じることによって、成形型2内に充填された粘結剤コーテッドサンド3の耐火骨材はこの粘結剤の粘着性で結合される。次いで、引き続いて成形型2内に吹き込まれる水蒸気の凝縮潜熱で粘結剤コーテッドサンド3が加熱され、粘結剤に作用した水分が蒸発して乾燥するものであり、糖類、水溶性無機化合物、水溶性熱可塑性樹脂からなる粘結剤を乾燥固化させることができ、耐火骨材をこの固化した粘結剤によって結合させて、鋳型を成形することができるものである。
【0072】
上記のように、成形型2に水蒸気を供給して粘結剤コーテッドサンド3の加熱を行なうことによって、水蒸気の高い凝縮潜熱で粘結剤コーテッドサンド3を瞬時に加熱して、粘結剤を固化乃至硬化させることができ、成形型2を予め高温に加熱しておくような必要なく、安定して短時間で鋳型を製造することができるものであり、鋳型の生産性を向上することができるものである。また加熱の際に仮に粘結剤から有毒ガスが発生しても水蒸気の凝縮水に吸収させることができ、環境が汚染されることを低減することができるものである。
【0073】
ここで、水蒸気としては飽和水蒸気をそのまま用いることができるが、過熱水蒸気を用いるのが好ましい。過熱水蒸気は、飽和水蒸気をさらに加熱して、沸点以上の温度とした完全気体状態の水蒸気であり、100℃以上の乾き蒸気である。飽和水蒸気を加熱して得られる過熱水蒸気は、圧力を上げないで定圧膨張させたものであってもよく、あるいは膨張させないで圧力を上げた加圧水蒸気であってもよい。成形型2内に吹き込む過熱水蒸気の温度は特に限定されるものではなく、過熱水蒸気は900℃程度にまで温度を高めることができるので、100〜900℃の間で必要に応じた温度に設定すればよい。
【0074】
図11(b)に示す実施の形態では、ボイラーなど水蒸気生成装置115で発生した飽和水蒸気を過熱器14で加熱して過熱水蒸気を調製し、この過熱水蒸気を水蒸気供給管91を通して水蒸気供給ヘッド5に供給するようにしてある。
【0075】
また、粘結剤コーテッドサンド3の温度が100℃付近にまで上昇した後、成形型2への供給を水蒸気から加熱気体に切り換え、加熱気体を成形型2内に吹き込むようにしてもよい。加熱気体は水分含有率が上記の水蒸気より低いものであればよく、加熱した空気を用いることができる。この加熱気体の温度は特に限定されるものではなく、50℃以上、好ましくは100℃以上であり、且つ粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤が固化乃至硬化する温度以上のものであればよい。加熱気体の温度の上限は、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤を分解させる温度未満であればよく、特定の温度に限定されない。
【0076】
図12に示す実施の形態では、水蒸気供給ヘッド5に水蒸気を供給する水蒸気供給管91に三方弁などの切換弁92を設け、この切換弁92を介して加熱気体供給装置93が接続してある。加熱気体供給装置93としては、空気を加熱して送風する温風ブロアなどを用いることができる。そして水蒸気生成装置115から水蒸気供給管91を通して水蒸気供給ヘッド5に水蒸気を供給し、水蒸気供給ヘッド5から上記のように成形型2に水蒸気を吹き込んだ後、切換弁92を切り換えて水蒸気生成装置115からの水蒸気の供給を停止すると共に加熱気体供給装置93から水蒸気供給管91を通して水蒸気供給ヘッド5に加熱気体を供給し、水蒸気供給ヘッド5から成形型2に加熱気体を吹き込むようにすることができるものである。
【0077】
また加熱気体として、上記の水蒸気に加熱空気を混合して含有水分量を低くした混合気体を用いることもできる。この場合は、切換弁92の操作で、水蒸気発生装置115と加熱気体供給装置93の両方が水蒸気供給管91に接続されるようにし、水蒸気発生装置115から水蒸気が、加熱気体供給装置93から加熱気体がそれぞれ水蒸気供給管91を通して水蒸気供給ヘッド5に供給されるようにし、水蒸気と加熱気体が混合された状態で水蒸気供給ヘッド5から成形型2に加熱気体を吹き込まれるようにすることができる。
【0078】
上記したように、成形型2内に水蒸気を吹き込むことによって生成される凝縮水はその後に吹き込まれる水蒸気による加熱で蒸発されるが、水蒸気は水分を多く含むので、凝縮水を蒸発させる効率が低い。そこでこのように加熱気体を成形型2内に吹き込んで通過させるようにしたものであり、加熱気体は水蒸気よりも含有される水分量が少なく、湿度の低い乾燥気体であるので、成形型2内で生成された凝縮水を短時間で蒸発させて乾燥することができるものである。ここで、過熱水蒸気及び加熱空気の気流で水の蒸発実験を行なった場合、温度が170℃付近以下では、過熱水蒸気中への水の蒸発速度より、加熱空気中への水の蒸発が大きくなることが報告されている(T.Yosida,Hyodo,T.,Ind.Eng.Chem.Process Des.Dev.,9(2),207-214(1970))。この報告にもみられるように、加熱気体を成形型2内に吹き込むことによって、水蒸気を吹き込み続ける場合よりも、短時間で凝縮水を蒸発させて乾燥することができるものである。
【0079】
上記のように成形型2内に水蒸気を吹き込んで鋳型の成形を行なった後、縦駆動装置12を構成する昇降シリンダー装置41を作動させ、シリンダーロッド41aを下方へ引っ込ませることによって、基台20を引き下げ、基台20に保持された成形型2を降下させて、成形型2をサンド供給ヘッド4から離す(図4参照)。
【0080】
次に、横駆動装置11を構成するシリンダー装置51を作動させてシリンダーロッド51aを突出させることによって、台車40をレール47に沿って走行させて成形型2を水蒸気供給ヘッド5の直下位置から、水蒸気供給ヘッド5とサンド供給ベッド4の中間の位置に移動させる。そして最初の位置であるこの水蒸気供給ヘッド5とサンド供給ベッド4の中間位置で、図1に示すように成形型2の型開きがなされる。すなわち、型開閉シリダンダー装置30が作動し、シリンダーロッド30aが引っ込むことによって、固定側の型2aから離れるように可動側の型2bを移動させて、成形型2を型開きし、成形された鋳型を成形型2のキャビティ33から取り出すことができるものである。水蒸気供給ヘッド5とサンド供給ベッド4の中間位置では、成形型2の上方に水蒸気供給ヘッド5やサンド供給ベッド4という障害物がないので、成形型2から鋳型を脱型する作業を容易に行なうことができるものである。
【0081】
上記のようにして、成形型2を型締めし、成形型2に粘結剤コーテッドサンド3を充填し、成形型2に水蒸気を吹き込んで粘結剤コーテッドサンド3を加熱して鋳型を成形し、成形型2を型開きして鋳型を取り出すという工程のサイクルが終了するものであり、このサイクルを繰り返すことによって、鋳型の製造を行なうことができるものである。
【0082】
上記の実施の形態では、水蒸気として飽和水蒸気や過熱水蒸気を用いるようにしたが、水蒸気として高温高湿気体を用いることも可能である。ここで、粘結剤コーテッドサンド3が、熱硬化性樹脂の粘結剤を表面に被覆した粘結剤コーテッド耐火物である場合は、温度120℃以上、水蒸気濃度10〜95%の高温高湿気体を用いるものである。また粘結剤コーテッドサンド3が、水分を吸収した湿潤状態で粘着作用が生じる固形の粘結剤を表面に被覆した粘結剤コーテッド耐火物である場合は、温度50〜500℃、水蒸気濃度10〜90%の高温高湿気体を用いるものである。
【0083】
本発明において用いるこの高温高湿気体は、水蒸気と水蒸気以外の気体との混合気体である。この水蒸気以外の気体としては空気の他に窒素ガスなど任意のガスを用いることができるが、コストや使い易さの点などから、空気を用いるのが好ましい。また高温高湿気体の水蒸気濃度は、高温高湿気体中において水蒸気の体積が占める割合(近似的に水蒸気分圧/全圧)をいうものであり、例えば、
水蒸気濃度(%)=
[水蒸気の体積/(水蒸気の体積+水蒸気以外の気体の体積)]×100
の式から求められる。
【0084】
ここで、このような高温高湿気体は、水蒸気と空気などの気体とを混合することによって調製することができる。水蒸気と空気などの気体との混合比率を調整することによって、水蒸気濃度を上記の範囲に容易に設定することができるものである。また高温高湿気体の温度は、水蒸気と空気などの気体を混合した後に加熱したり、あるいは気体を予め所定温度に加熱しておくなどすることによって、上記の範囲に容易に設定することができるものである。
【0085】
図13(a)は高温高湿気体を調製する装置の一例を示すものであり、ボイラーなどで形成される水蒸気生成装置115と気体供給装置16がヒーター付きの混合器17に接続してある。気体供給装置16は、気体として大気中の空気を用いる場合にはブロワーやコンプレッサーなどで形成されるものであり、気体として窒素ガスなどを用いる場合にはガスボンベなどで形成されるものである。混合器17と水蒸気生成装置115や気体供給装置16の間にはバルブ18,19が設けてある。
【0086】
このものにあって、水蒸気生成装置15から水蒸気を、気体供給装置16から空気などの気体を、それぞれ混合器17に供給し、混合器17内で混合しながらヒーターで所定温度に加熱することによって、高温高湿気体を調製することができる。このとき、バルブ18,19の操作で水蒸気生成装置15から送られる水蒸気と気体供給装置16から供給される気体の比率を調節することによって高温高湿気体の水蒸気濃度を任意に調整することができる。
【0087】
ここで、水蒸気としては飽和水蒸気をそのまま用いることができるが、過熱水蒸気を用いることもできる。過熱水蒸気は、飽和水蒸気を水の沸点以上の温度に加熱して得られる水蒸気である。過熱水蒸気は、飽和水蒸気を圧力を上げないで定圧膨張させつつ加熱して得られた常圧過熱水蒸気であってもよく、飽和水蒸気を膨張させないで加熱して得られた加圧過熱水蒸気であってもよい。過熱水蒸気の温度は特に限定されるものではなく、100〜900℃程度の間で必要に応じた温度に設定すればよい。
【0088】
図13(b)の例では、水蒸気生成装置115に過熱器14が接続してあり、水蒸気生成装置115で生成された水蒸気を過熱器14に通して加熱して、100℃以上の過熱水蒸気にした後、バルブ18を通して混合器17に供給するようにしてある。尚、図13(a)(b)の装置において、水蒸気と空気などの気体との混合気体を加熱して温度調整する必要がないときには、混合器17は不要であり、水蒸気と気体を配管内で混合して高温高湿気体を調製することが可能である。
【0089】
高温高湿気体として特に高い温度・高い湿度のものを調製する場合には、100℃以上の過熱水蒸気と100℃以上に加熱した高温の空気など水蒸気以外の気体を混合するのが好ましい。図13(c)はその装置の一例を示すものであり、水蒸気生成装置115に過熱器14を接続すると共に、気体供給装置16にヒーターなどを備えた加熱器116が接続してある。
【0090】
そして水蒸気生成装置115で生成された水蒸気を過熱器14に通して100℃以上の所定温度の過熱水蒸気にし、この過熱水蒸気はバルブ18を通して混合器17に供給される。また気体供給装置16から空気などの気体を加熱器116に通して100℃以上の所定温度の高温気体にし、この高温気体はバルブ19を通して混合器17に供給され、過熱水蒸気と高温気体の混合気体として高温高湿気体を調製することができる。混合器17にはヒーターが内蔵してあり、高温高湿気体をさらに加熱することが可能であるが、過熱水蒸気と高温気体との混合気体を加熱する必要がないときには、混合器17は不要であり、過熱水蒸気と高温気体は配管内で混合されて高温高湿気体になる。
【0091】
また、高温高湿気体は空気などの水蒸気以外の気体中で水を気化させることによっても調製することができる。例えば図13(d)のように加熱器117に空気などの気体と水とを供給し、加熱器117内で水を加熱して気化させることによって、気化した水の水蒸気と空気などの気体とが混合された高温高湿気体を調製することができる。このとき、図13(d)の実線のように、気体に水を噴霧したり滴下したりして気体に水滴を混合した状態で加熱器117に送るようにしてもよく、また図13(d)の破線のように、気体とは別に水を加熱器117に直接供給するようにしてもよい。
【0092】
上記のようにして調製された高温高湿気体は、上記の図11図12の装置において水蒸気の代りに、水蒸気供給管91を通して水蒸気供給ヘッド5に供給されるものであり、粘結剤コーテッドサンド3を充填した成形型2内に水蒸気供給ヘッド5から高温高湿気体を吹き込んで、鋳型の成形を行なうことができるものである。
【0093】
ここで、粘結剤コーテッドサンド3として熱硬化性樹脂の粘結剤を表面に被覆した粘結剤コーテッド耐火物を用いる場合、温度120℃以上、水蒸気濃度10〜95%の高温高湿気体を成形型2内に吹き込むが、このように高温高湿気体を吹き込むと、高温高湿気体が粘結剤コーテッドサンド3に接触することによって、高温高湿気体の高温の顕熱が粘結剤コーテッドサンド3に伝熱されると共に、高温高湿気体中の水蒸気から潜熱が粘結剤コーテッドサンド3に奪われて凝縮し、水蒸気が凝縮する際のこの凝縮潜熱が粘結剤コーテッドサンド3に伝熱される。高温高湿気体の顕熱と凝縮潜熱で粘結剤コーテッドサンド3の温度は100℃付近にまで急速に上昇する。粘結剤コーテッドサンド3が100℃付近にまで加熱される時間は、高温高湿気体の温度や水蒸気濃度、成形型2内への吹き込み流量、成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3の充填量などで変動するが、通常、2〜30秒程度の短時間である。
【0094】
このように、粘結剤コーテッドサンド3を充填した成形型2内に高温高湿気体を通すことによって、粘結剤コーテッドサンド3を100℃付近まで短時間で加熱することができる。そして、成形型2内で高温高湿気体から凝縮水が生成されるので、粘結剤コーテッドサンド3を100℃以上の温度に上昇させるには、成形型2内の凝縮水を蒸発させる必要があるが、引き続いで成形型2内に通される高温高湿気体による加熱によって、成形型2内のこの凝縮水は蒸発される。ここで、成形型2に通す高温高湿気体は温度が120℃以上、水蒸気濃度が10〜95%であり、高湿度ではあるが、飽和状態の水蒸気よりも含有する水分量は低い。このため、高温高湿気体が成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3によって冷却されて温度低下して生成される凝縮水の量を少なくすることができるものであり、成形型2内の凝縮水を蒸発させる時間は短時間で済むものである。
【0095】
成形型2内の凝縮水が蒸発すると、高温高湿気体によって粘結剤コーテッドサンド3は100℃以上の温度に急加熱され、熱硬化性樹脂からなる粘結剤を硬化温度以上の温度にまで短時間で上昇させることができるものであり、熱硬化性樹脂からなる粘結剤の溶融・硬化によって、粘結剤コーテッドサンド3の粒子を結合させて鋳型を成形することができるものである。
【0096】
粘結剤コーテッドサンド3を充填した成形型2内に高温高湿気体を通し始めてから、熱硬化性樹脂の粘結剤が硬化して鋳型の成形が完了するまでの時間は、高温高湿気体の温度や水蒸気濃度、成形型2内への吹き込み流量、成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3の充填量などで変動するが、通常、10秒から1分程度の短時間である。このようにして成形された鋳型は、成形型2を開いて取り出すことができる。
【0097】
上記のように成形型2内で多量の凝縮水が生成されないように、高温高湿気体は水蒸気濃度が95%以下であることが必要である。しかし水蒸気濃度が低いと、高温高湿気体中での水蒸気の凝縮潜熱が低くなり、高温高湿気体による加熱効率が低下するおそれがあるので、水蒸気濃度は10%以上であることが必要である。このように高温高湿気体の水蒸気濃度は10〜95%の範囲に設定されるが、20〜90%の範囲が好ましく、30〜80%の範囲がより好ましい。
【0098】
また高温高湿気体の温度が低いと、高温高湿気体で粘結剤コーテッドサンド3を加熱したり、凝縮水を蒸発させたりする効率が悪くなり、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤を硬化させるのに長時間を要することになるので、高温高湿気体の温度は120℃以上である必要がある。高温高湿気体の温度の上限は特に設定されるものではないが、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤の熱硬化性樹脂の熱分解温度以下であることが望ましい。
【0099】
一方、粘結剤コーテッドサンド3として水分を吸収した湿潤状態で粘着作用が生じる固形の粘結剤を表面に被覆した粘結剤コーテッド耐火物を用いる場合、温度50〜500℃、水蒸気濃度10〜90%の高温高湿気体を成形型2内に吹き込む。このような粘結剤としては、糖類、水溶性無機化合物、水溶性熱可塑性樹脂から選ばれるものを用いることができる。糖類は水に膨潤あるいは溶解して糊状になって粘着性を示すようになり、水溶性無機化合物や水溶性熱可塑性樹脂は水に溶解して糊状になって粘着性を示すようになるものである。
【0100】
上記の糖類としては、単糖類、少糖類、多糖類を用いることができ、各種の単糖類、少糖類、多糖類のなかから、1種を選んで単独で用いる他、複数種を選んで併用することもできる。単糖類としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトースなどを挙げることができ、また少糖類としては、マルトース(麦芽糖)、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、セロビオースなどの二糖類を挙げることができる。さらに多糖類としては、でんぷん糖、デキストリン、ザンサンガム、カードラン、プルラン、シクロアミロース、キチン、キトサン、セルロース、でんぷんなどを挙げることができる。
【0101】
また上記の水溶性無機化合物としては、水ガラス、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、バナジン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酸化アルミニウムナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、硫酸化合物を用いることができる。
【0102】
さらに上記の水溶性熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリイタコン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、メチルセルロース、メトキシ化ナイロンなどを挙げることができる。
【0103】
そして、上記のように高温高湿気体を吹き込むと、高温高湿気体を通す初期の工程では、粘結剤コーテッドサンド3の表面に高温高湿気体が接触することによって、高温高湿気体の温度が下がって露点温度以下になり、高温高湿気体中の水蒸気が凝縮して、粘結剤コーテッドサンド3の表面で凝縮水が生成される。粘結剤コーテッドサンド3の表面のコーティング層の糖類、水溶性無機化合物、水溶性熱可塑性樹脂からなる水粘着性の粘結剤は固形であるので、固形のままでは粘結剤コーテッドサンド3同士を結合させることはできないが、このように粘結剤コーテッドサンド3の表面に凝縮水が供給されると、固形の粘結剤はこの水分の補給によって湿潤な糊状になって粘着性が生じ、粘結剤の粘着性で粘結剤コーテッドサンド3の粒子同士を粘結させることができるものである。
【0104】
このように高温高湿気体の凝縮水で粘結剤コーテッドサンド3の水粘着性の粘結剤を糊化して、この粘結剤で粘結剤コーテッド耐火物を粘結させることができるが、引き続いて連続して成形型2内に通される高温高湿気体で粘結剤コーテッドサンド3が加熱される。高温高湿気体中の水蒸気は高い潜熱を有するので、水蒸気が凝縮する際に伝熱されるこの潜熱で粘結剤コーテッドサンド3の温度は高温高湿気体の露点温度以上にまで急速に上昇する。このように粘結剤コーテッドサンド3が露点温度以上にまで加熱される時間は、高温高湿気体の温度や水蒸気濃度、成形型2内への吹き込み流量、成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3の充填量などで変動するが、通常、2〜30秒程度の短時間である。このように粘結剤コーテッドサンド3が露点温度以上に加熱されると、粘結剤コーテッドサンド3の表面の粘結剤に含まれる水分が蒸発し、粘結剤を乾燥することができるものである。
【0105】
上記のように、成形型2に高温高湿気体を通過させることによって、高温高湿気体中の水蒸気を凝縮させて粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤に水分を補給し、粘結剤コーテッドサンド3を粘結剤の粘着作用で粘結させ、次いで継続して成形型2内に通過させる高温高湿気体で加熱して粘結剤の水分を蒸発させ、粘結剤を乾燥固化させることができるものである。そして水粘着性の粘結剤の粘着作用による耐火骨材の結合は、粘結剤が固化することによって強固なものとなり、強度の高い鋳型を得ることができるものである。このようにして成形を終了した後、成形型2を開くことによって、鋳型を取り出すことができる。
【0106】
ここで、成形型2に通す高温高湿気体は温度が50〜500℃、水蒸気濃度が10〜90%であり、飽和状態の水蒸気よりも含有する水分量は低い。このため、高温高湿気体が成形型2内の粘結剤コーテッドサンド3によって冷却されて温度低下し、高温高湿気体の温度が露点以下になって生成される凝縮水の量は過剰に多くならず、成形型2内で余分な凝縮水が発生することが少なくなる。粘結剤コーテッドサンド3に被覆されている粘結剤の量は一般に耐火骨材の0.5〜6質量%程度に過ぎず、この粘結剤を湿潤させて粘着作用を発揮させるのに必要な水分量は粘結剤の0.1〜3倍程度である。従って上記の高温高湿気体から生成される凝縮水の量で、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤に粘着作用を発揮させることが十分に可能である。
【0107】
そして本発明ではこのように成形型2内で高温高湿気体から生成される凝縮水の量を抑制することができるので、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤に粘着作用を付与するために水分を補給した後、継続して成形型2に通す高温高湿気体で加熱して粘結剤に含まれる水分を蒸発させるにあたって、余分な水分の蒸発が不要になって、蒸発に要する時間を短縮することができるものであり、粘結剤の乾燥固化時間を短くすることができるものである。
【0108】
またこのように成形型2内で凝縮水が多量に生成されることがないので、粘結剤コーテッドサンド3の表面の粘結剤が凝縮水に溶解したりして流されるようなことを防ぐことができるものである。従って、粘結剤が流れることによって鋳型内で粘結剤が偏在するようなことがなくなり、均一な強度の鋳型を製造することができるものである。
【0109】
上記のように成形型2内で余分な凝縮水が生成されないように、高温高湿気体は水蒸気濃度90%以下であることが必要である。しかし水蒸気濃度が低すぎると、凝縮水の生成が少なくなり過ぎて、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤に粘着作用を十分に付与できなくなるおそれがあり、また露点温度が低くなるので、水蒸気濃度は10%以上であることが必要である。
【0110】
高温高湿気体の水蒸気濃度はこのように10〜90%の間に設定されるが、成形型2内で余分な凝縮水が生成されることを確実に防ぐには水蒸気濃度が60%以下であることが望ましく、また凝縮水を十分に生成させて粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤の粘着作用を十分に確保するためには水蒸気濃度が30%以上であることが望ましい。従って高温高湿気体の水蒸気濃度は30〜60%の範囲がより望ましい。
【0111】
また高温高湿気体の温度が高すぎると、成形型2内で高温高湿気体が露点以下に温度低下しないことがあり、成形型2内で凝縮水を十分に生成させることができないおそれがあるので、高温高湿気体の温度は500℃以下である必要がある。逆に高温高湿気体の温度が低すぎると、高温高湿気体で粘結剤コーテッドサンド3を加熱して凝縮水を蒸発させる効率が悪くなり、粘結剤コーテッドサンド3の粘結剤を乾燥固化させるのに長時間を要することになるので、高温高湿気体の温度は50℃以上である必要がある。
【0112】
ここで、高温高湿気体の温度や水蒸気濃度は温度50〜500℃、水蒸気濃度10〜90%の範囲内で、夏場と冬場など雰囲気温度に応じて調整するようにしてもよい。例えば冬場のように外気温や粘結剤コーテッドサンド3の温度が低いときには、温度が50℃付近、水蒸気濃度が10%付近と温度・水蒸気濃度が比較的低い高温高湿気体を用いても十分に成形を行なうことができるものであり、この場合にはエネルギーコストの低い高温高湿気体で成形ができるものである。
【0113】
図14は本発明の他の実施の形態を示すものである。上記の実施の形態では、成形型2として、上面に注入口1を一つ設けたものを使用するようにしたが、鋳型として大型のものを成型する場合、特に平面の面積が大きい鋳型を成型する場合、注入口1が一つだけであると、水蒸気は一か所の注入口1から成形型2内に吹き込まれることになるため、成形型2内の全体に均一に水蒸気を行き渡らせることは難しく、成形型2内に充填した粘結剤コーテッドサンド3を均一に加熱できないことがある。
【0114】
そこでこのような場合には、図14(b)のような、成形型2の上面の複数個所に注入口1を設けたものを用いるのが好ましい。そしてこのような複数個所に注入口1を設けた成形型2に水蒸気を供給する水蒸気供給ヘッド5としては、注入口1に対応した個数のノズル口9を設けた図14(a)に示すものを用いることができる。
【0115】
この水蒸気供給ヘッド5は、水蒸気供給管91に接続した水蒸気パイプ120をヘッド本体5aに設けて形成されるものである。水蒸気供給パイプ120には分岐パイプ121が左右に複数本分岐して設けてあり、各分岐パイプ121の先端にノズル口9が設けてある。このノズル口9は上記の成形型2の複数個所の注入口1に対応するように配置されるものである。このように形成される水蒸気ヘッド5は、既述の図11の場合と同様に支持板87の下側に取り付けて使用されるものである。
【0116】
そして、成形型2内に水蒸気を吹き込むにあたっては、既述の図11(b)と同様に成形型2を水蒸気供給ヘッド5に押し当てると、成形型2の上面の複数の注入口1を水蒸気供給ヘッド5の各ノズル口9に合致させることができる。従って水蒸気供給ヘッド5の各ノズル9からすべての注入口1を通して成形型2内に水蒸気が供給される。このため、水蒸気は複数個所の注入口1から成形型2内に吹き込まれ、成形型2内の全体に均一に水蒸気を行き渡らせることができるものであり、成形型2内に充填した粘結剤コーテッドサンド3を均一に加熱することができ、均質な鋳型を成型することができるものである。
【0117】
尚、本発明では成形型移動装置6を横駆動装置11と縦駆動装置12を具備して形成し、成形型2を横駆動装置11で横移動させ、また縦駆動装置12で上下に移動させることで、成形型2をサンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5に接続するようにしているので、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5を移動させる駆動機構を別途備えるような必要がなくなるものであり、上記の実施の形態では、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5を躯体43に固定するようにした。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、成形型2とサンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5との接続の時間を早めて成形速度を高めるなどの目的で、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5をシリンダー装置などで上下方向や水平方向に移動させるようにしてもよい。
【0118】
また上記の実施の形態では、図1に示すように、成形型2をサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の中間位置で型開きして成形した鋳型を脱型するようにしたが、サンド供給ヘッド4の右側位置あるいは水蒸気供給ヘッド5の左側位置でこの脱型を行なうようにすることも可能である。また、サンド供給ヘッド4や水蒸気供給ヘッド5が鋳型を脱型する際に障害とならないのであれば、成形型2がサンド供給ヘッド4の下方に位置するとき、あるいは水蒸気供給ヘッド5の下方に位置するときに、成形型2を開いて鋳型を脱型するようにしてもよい。
【0119】
さらに上記の実施の形態では、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5を横方向に離して配置し、成形型2をサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間で横方向に移動させるようにしたが、サンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5を縦に離して配置し、成形型2をサンド供給ヘッド4と水蒸気供給ヘッド5の間で縦方向に移動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 注入口
2 成形型
3 粘結剤コーテッドサンド
4 サンド供給ヘッド
5 水蒸気供給ヘッド
6 成形型移動装置
8 ノズル口
9 ノズル口
10 サンド貯留槽
11 横駆動装置
12 縦駆動装置
13 エアー配管
14 過熱器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14