(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143358
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】一液型液状エポキシ樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/56 20060101AFI20170529BHJP
C08K 9/04 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
C08G59/56
C08K9/04
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-238406(P2013-238406)
(22)【出願日】2013年11月19日
(65)【公開番号】特開2015-98520(P2015-98520A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2016年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000216243
【氏名又は名称】田岡化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】沼田 有希
(72)【発明者】
【氏名】小畑 直也
【審査官】
久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭55−034213(JP,A)
【文献】
特開2005−239922(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/147070(WO,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0156546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00−59/72
C08L 1/00−101/14
C08K 9/00−9/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型電子部品または電気部品を気密封止または絶縁封止する一液型液状エポキシ樹脂組成物であって、
(A)室温で液状のエポキシ樹脂、
(B)ジシアンジアミド、
(C)ジシアンジアミド以外の潜在性硬化剤、
(D)表面に樹脂酸処理を施した炭酸カルシウム、
(E)表面に脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムを(A)室温で液状のエポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部、
を含有することを特徴とする一液型液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、(D)表面に樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムを1〜35重量部含有することを特徴とする請求項1記載の一液型液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(C)ジシアンジアミド以外の潜在性硬化剤がエポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載の一液型液状エポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
小型電子部品または電気部品がリレーであることを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の一液型液状エポキシ樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リレーをはじめとした小型電子部品または電気部品を気密封止又は絶縁封止するための一液型液状エポキシ樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リレーは、エレクトロニクス産業の発展とともに、その生産量も順調に伸びており、通信機器、OA機器、家電機器、自動販売機等使用される分野も多岐にわたっている。特にプリント配線基盤に搭載されるリレーが増加しつつある。その必要特性として、半田フラックスの侵入防止、部品の溶剤洗浄が可能であることあるいは半田リフロー処理後に気密性を保持できること等が挙げられ、樹脂等による完全気密封止型のリレーが多くなってきており、その信頼性要求は、ますます厳しくなっている。
【0003】
この様に、リレーとして、その気密性が強く要求されることに伴い、優れた封止材料が必要とされており、従来から、この様な目的のための封止樹脂としては、エポキシ樹脂が用いられていた。エポキシ樹脂組成物としては、ポリアミドアミン、酸無水物等の硬化剤とエポキシ樹脂とを使用直前に混合して使ういわゆる二液型エポキシ樹脂組成物と、潜在性硬化剤として、ジシアンジアミド等を予めエポキシ樹脂組成物と混合しておく、いわゆる一液型液状エポキシ樹脂組成物がある。
【0004】
一般に、二液型エポキシ樹脂組成物の欠点として、配合時の計量ミスによる硬化不良や配合後のポットライフが短い等が挙げられる。また、硬化剤にポリアミドアミン、脂肪族アミン等を用いた場合、硬化物の耐熱性が低く、封止後、半田槽を通過後の気密不良が生じることが多い。また、同様に酸無水物を用いた場合は、硬化温度を高くしなければならないという欠点があった。従って、最近では材料ロスが少なく生産性の高い一液型液状エポキシ樹脂組成物に移行している。
【0005】
従来から、一液型液状エポキシ樹脂組成物は、その電気特性や耐熱性の良好なことから電気、電子部品の生産にとっては必須の材料であり、接着剤、封止剤として使用されている。また、電気、電子部品の構成部材は、端子材料、コイル、磁石等以外は、プラスチック材料が主体であるため、硬化温度は120℃以下が望まれている。
【0006】
また、近年になって、電気、電子部品の小型化、軽量化や高密度化に伴い、各種部品の接着部分や封止部分における隙間の間隔が数μm以下と非常に狭くなってきている。数μm以下の極めて狭い隙間においては、毛細管現象により液状エポキシ樹脂と硬化剤との分離が発生し、この硬化剤と分離した液状エポキシ樹脂が可動部や接点部等の場所にまで入り込み、接点不良を始めとした特性不良を引き起こすという問題が発生している。
【0007】
上記問題を解決する手段として、隙間に流入した部分も完全硬化する一液型液状エポキシ樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。しかし、数μm以下の極めて狭い間隔の隙間に流入すること自体については改善されていないため、特に気密封止または絶縁封止の必要なリレーにおいては、数μm以下の極めて狭い間隔の隙間への流れ込みが低減された一液型液状エポキシ樹脂組成物の開発が強く望まれていた。
【0008】
【特許文献1】特開2001−220429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、リレーのような小型電子部品または電気部品を気密封止又は絶縁封止をする場合において、数μm以下の極めて狭い間隔の隙間への流れ込みが改善された一液型液状エポキシ樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々の一液型液状エポキシ樹脂組成物について鋭意検討した結果、
(A)エポキシ樹脂
(B)ジシアンジアミド
(C)ジシアンジアミド以外の潜在性硬化剤
(D)表面に樹脂酸処理を施した炭酸カルシウム
(E)表面に脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムを、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部
を含有することを特徴とする一液型エポキシ樹脂組成物とすることにより、数μm以下の極めて狭い間隔の隙間への流れ込みが改善されることを見出し、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0011】
本発明によればリレーのような小型電子部品または電気部品を気密封止又は絶縁封止をするための、流動性を初めとした一液型液状エポキシ樹脂組成物としての基本的な物性は犠牲にせず、数μm以下の極めて狭い間隔の隙間への流れ込みが改善された一液型液状エポキシ樹脂組成物が提供可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明において用いられる(A)エポキシ樹脂としては、一液型液状エポキシ樹脂組成物に用いられているエポキシ樹脂であれば、特に限定されないが、リレー封止用エポキシ樹脂組成物に用いられているエポキシ樹脂が好ましい。本発明で用いられるエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシン等の多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコールのような多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、あるいはp−オキシ安息香酸のようなヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸のようなポリカルボン酸から得られるポリグリシジルエステル、あるいは4,4−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどから得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、さらにはフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でもビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好適に用いられる。これらのエポキシ樹脂は単独あるいは混合して使用しても差し支えない。
【0013】
本発明において用いられる(D)表面に樹脂酸処理を施した炭酸カルシウム(以下樹脂酸処理炭酸カルシウムと称することがある)とは、樹脂酸類で表面処理した炭酸カルシウムのことを示す。樹脂酸処理炭酸カルシウムは、樹脂酸類により、原料炭酸カルシウム粒子または処理された炭酸カルシウム粒子の表面の全部または一部を覆う構造のものであればよく、必ずしも、表面全てを連続的に覆う必要はない。また処理する順序も限定されない。
【0014】
樹脂酸処理炭酸カルシウムの原料となる炭酸カルシウムとしては、公知の重質炭酸カル
シウム、合成(沈降性)炭酸カルシウムなどを用いることができる。前記樹脂酸類としては、例えば、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸などのアビエチン酸類或いはその重合体、不均化ロジン、水添ロジン、重合ロジン、これらの塩(例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩)またはエステルなどが挙げられる。
【0015】
樹脂酸による炭酸カルシウムの表面処理方法は特に制限はなく、公知の処理方法を用いることができる。樹脂酸の付着量は特に制限はないが、原料となる炭酸カルシウム100質量部に対して、5〜30質量部が好ましく、10〜20質量部がより好ましい。樹脂酸処理炭酸カルシウムの粒径は、平均粒径0.01〜20μmが好ましく、0.02〜15μmがより好ましい。
【0016】
上述した樹脂酸処理炭酸カルシウムとして例えば、一般に市販されているグレードのものが使用可能である。具体的には、白石カルシウム社製「白艶華DD」、「IGV−IV」等が例示される。また、(D)表面に樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムの使用量としては特に限定されないが通常は、(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、(D)表面に樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムを1〜35重量部、好ましくは5〜30重量部使用する。使用量が1重量部より少ない場合、数μm以下の極めて狭い間隔の隙間にエポキシ樹脂が流入してしまい、本願効果を発揮しない場合がある。35重量部より多い場合、一液型液状エポキシ樹脂組成物とした際に不溶解分が生成する恐れがあり、これが製造過程で不都合を生じる場合があることから製品製造時にろ過工程を追加する必要がある為、本一液型液状エポキシ樹脂組成物を工業的優位に製造することが出来ない恐れがある。
【0017】
本発明において用いられる(E)表面に脂肪酸処理を施した炭酸カルシウム(以下脂肪酸処理炭酸カルシウムと称することがある)とは、脂肪酸類を表面処理した炭酸カルシウムのことを示す。脂肪酸処理炭酸カルシウムは、脂肪酸類により、原料炭酸カルシウム粒子または処理された炭酸カルシウム粒子の表面の全部または一部を覆う構造のものであればよく、必ずしも、表面全てを連続的に覆う必要はない。また処理する順序も限定されない。
【0018】
脂肪酸処理炭酸カルシウムの原料となる炭酸カルシウムとしては、公知の重質炭酸カル
シウム、合成(沈降性)炭酸カルシウムなどを用いることができる。前記脂肪酸類としては、例えば、カプロン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、オレイン酸、マレイン酸、リノール酸、リノレイン酸、アジピン酸、ヒドロキシ脂肪酸、牛脂脂肪酸、やし脂脂肪酸、トール油脂肪酸などの脂肪酸が挙げられる。
【0019】
脂肪酸による炭酸カルシウムの表面処理方法は特に制限はなく、公知の処理方法を用いることができる。脂肪酸の付着量は特に制限はないが、原料となる炭酸カルシウム100質量部に対して、1〜15質量部が好ましい。脂肪酸処理炭酸カルシウムの粒径は、平均粒径0.01〜20μmが好ましく、0.02〜15μmがより好ましい。
【0020】
上述した脂肪酸処理炭酸カルシウムとして例えば、一般に市販されているグレードのものが使用可能である。具体的には、米庄石灰工業(株)製「ミクローン200」、白石カルシウム(株)製「白艶華CC」等が例示される。また、(E)表面に脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムは(A)エポキシ樹脂100重量部に対して、(E)表面に脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムを0.5〜20重量部使用する。使用量が0.5重量部より少ない場合や20重量部より多い場合、エポキシ樹脂組成物を対象物に塗布する際に、流れすぎて塗布が困難となったり、粘性が高すぎて塗布が困難となったりといった使用上の問題が発現する。
【0021】
本発明において用いられる(B)ジシアンジアミドは、一般的に入手可能なものが利用可能であり、この中でも事前に粉砕を行い、#150メッシュパスしたものが好ましい。(B)ジシアンジアミドを添加しない場合は金属との接着性が低下し、小型電子部品または電気部品を気密封止または絶縁封止することが出来なくなる。また、その使用量は特に限定されないが、(A)エポキシ樹脂100重量部に対し、通常1〜10重量部、好ましくは1〜5重量部使用される。1重量部より少ない場合金属への接着性が低下する恐れがあり、また10重量部より多い場合、樹脂への接着性が低下し、一液型液状エポキシ樹脂組成物としての実用性が乏しくなる恐れがある。
【0022】
本発明において用いられる(C)ジシアンジアミド以外の潜在性硬化剤としては、例えば、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物、ヒドラジド化合物等が挙げられる。これらの内、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物、変性脂肪族ポリアミン化合物が好適に用いられる。このような化合物の具体例としては、エポキシ樹脂イミダゾールアダクト化合物としては、例えば、味の素テクノファイン(株)製アミキュアPN−23、アミキュアPN−R、エアープロダクト ジャパン(株)製サンマイドLH−210等が挙げられ、エポキシ樹脂アミンアダクト化合物としては、例えば、味の素テクノファイン(株)製アミキュアMY−24、アミキュアMY−Rや特開昭和57−100127号公報に示されたアダクト系化合物等が挙げられる。変性脂肪族ポリアミン化合物としては、例えば、(株)T&K TOKA製フジキュアーFXE−1000、フジキュアー FXR−1121等が挙げられる。また、(C)ジシアンジアミド以外の潜在性硬化剤の使用量は特に限定されないが、(A)エポキシ樹脂100重量部に対し、通常、0.5重量部から30重量部配合され、好ましくは3重量部から20重量部配合される。(C)ジシアンジアミド以外の硬化剤を配合しない場合120℃以下では硬化せず、30重量部より多い場合は接着性が低下し保存安定性が悪化する恐れがある。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じて無機充填剤、カップリング剤、着色剤等を配合することができる。無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラスフィラー、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、アルミナ等が挙げられ、カップリング剤としては、例えば3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられ、着色剤としては、例えばカーボンブラック、酸化チタン等が挙げられる。
【0024】
さらに、本発明のエポキシ樹脂組成物は、必要に応じてチキソトロピー剤を配合することができる。チキソトロピー剤としては、例えば、日本アエロジル(株)製アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジル380、楠本化成(株)製ディスパロンC−308、ディスパロン4110、ディスパロン4300、ディスパロン6500、ディスパロン6600等が挙げられる。
【0025】
本発明の一液型液状エポキシ樹脂組成物の調製方法は、通常のエポキシ樹脂組成物の調製方法と同様に一般的な撹拌混合装置と混合条件が適用される。使用される装置としては、ミキシングロール、ディゾルバ、プラネタリミキサ、ニーダ、押出機等である。混合条件としてはエポキシ樹脂等を溶解および/または低粘度化し、撹拌混合効率を向上させるために加熱してもよい。また、摩擦発熱、反応発熱等を除去するために必要に応じて冷却してもよい。撹拌混合の時問は必要により定めればよく、特に制約されることはない。
【0026】
こうして製造された一液型液状エポキシ樹脂組成物は120℃以下で硬化し、作業性に適した流動性を有しているため、リレーのような小型電子部品または電気部品を気密封止又は絶縁封止をするものとして好適に利用される。なお、本発明における流動性とは後述する条件で測定する45度流動性という値を以って定義される。一液型液状エポキシ樹脂組成物を前述する目的で使用する際は、この45度流動性が10〜25mmであることが好ましい。25mm以上の場合、一液型液状エポキシ樹脂組成物を対象物に塗布する際に、流動性が高すぎて塗布が困難となったり、10mm以下の場合、粘性が高すぎて塗布が困難となったりといった使用上の問題が発現する恐れがある。
【実施例】
【0027】
<45度流動性の測定>
後述の各実施例及び比較例で調整した各一液型液状エポキシ樹脂組成物について、スライドガラス(縦26mm×横76mm×厚み1.5mm)の端に100mgの一液型エポキシ樹脂組成物を正確にスポットし、100℃に設定した熱風循環式乾燥機中に45度の傾斜角で所定の時間置く。取り出し後、ノギスで流動距離(mm)を測定する。
【0028】
<分離性流れ込み距離の測定方法>
1. 2枚のスライドガラス(縦26mm×横76mm×厚み1.5mm)の間に厚み9μmのスペーサーを相対する26mmの2辺に挟み、その両端をスライドガラスの上からクリップでとめる。
2. 1.の2枚のスライドガラスの76mmの辺に均等に実施例1〜5、比較例1〜4で調製した一液型エポキシ樹脂組成物を塗布し、100℃で60分硬化させた後、隙間に入り込んだ距離の最大値を測定した。流れ込み距離の評価基準は下記の通り。
流れ込み距離(mm):
×:5.0を超える、○:3.0〜5.0、◎:3.0未満
【0029】
<濾過後の残渣の確認>
後述の各実施例及び比較例で調整した各一液型液状エポキシ樹脂組成物について、48メッシュの網で自然濾過を行い、網に無機フィラー等の残渣が残っていないか目視で確認する。残渣が残っていた場合、濾過後の一液型液状エポキシ樹脂組成物の物性に大きく影響を与えることは無いが、製造時に製造ラインが止まってしまう等の問題が発現する恐れがある。
【0030】
<実施例1>
(A)エポキシ樹脂としてD.E.R.331J(ビスフェノールA型エポキシ樹脂:ダウ・ケミカル(株)製、)75重量部及びjER807(ビスフェノールF型エポキシ樹脂:ジャパンエポキシレジン(株)製)25重量部、(B)ジシアンジアミド2.5重量部、(C)ジシアンジアミド以外の潜在性硬化剤としてフジキュアーFXR−1121(変性脂環式ポリアミン化合物:(株) T&K TOKA社製)8重量部、(D)樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムとして白艶華DD(ロジン酸処理炭酸カルシウム:白石カルシウム社製)5重量部、(E)脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムとしてミクローン200(脂肪酸処理炭酸カルシウム:ニューライム社製)15重量部を混合した後、ミキシングロールを使って混練し、一液型液状エポキシ樹脂組成物を調製した。これらの一液型液状エポキシ樹脂組成物について、45度流動性、流れ込み距離の測定及び濾過後の残渣の確認し、評価した結果を表1に示す。
【0031】
<実施例2>
(D)樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムを白艶華DDからIGV−IV(白石カルシウム社製)に変更する以外は実施例1と同様に一液型エポキシ樹脂組成物を調整し45度流動性、流れ込み距離を測定及び濾過後の残渣の確認し、評価した結果を表1に示す。
【0032】
<実施例3〜5>
実施例1の(D)樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムの配合量を5重量部から15重量部、30重量部または40重量部に変更し、(E)脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムの配合量を15重量部から10重量部、3重量部または1重量部に変更する以外は実施例1と同様に一液型エポキシ樹脂組成物を調整し45度流動性、流れ込み距離の測定及び濾過後の残渣の確認し、評価した結果を表1に示す。
【0033】
<比較例1>
実施例1の(D)樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムを使用しない以外は実施例1と同様に一液型エポキシ樹脂組成物を調整し45度流動性及び流れ込み距離を測定し、評価した結果を表2に示す。
【0034】
<比較例2>
比較例1の(D)樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムを(E)脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムに変更する以外は比較例1と同様に一液型エポキシ樹脂組成物を調整し45度流動性及び流れ込み距離を測定し、評価した結果を表2に示す。
【0035】
<比較例3>
実施例4の(D)樹脂酸処理を施した炭酸カルシウムを、処理を施していない炭酸カルシウムに変更する以外は実施例4と同様に一液型エポキシ樹脂組成物を調整し45度流動性及び流れ込み距離を測定し、評価した結果を表2に示す。
【0036】
<比較例4>
実施例3の(E)脂肪酸処理を施した炭酸カルシウムを処理の配合量を10重量部から30重量部に変更する以外は実施例3と同様に一液型エポキシ樹脂組成物を調整し45度流動性及び流れ込み距離を測定し、評価した結果を表2に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】