(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
非水電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池は、小型軽量化できることから、携帯電話やノート型パソコンを含む移動機器の電源として有用である。更に、リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度を高くして蓄電できるため、大容量・高出力を必要とする電気自動車や電力貯蔵用等の次世代エネルギー貯蔵媒体として注目を集めている。
【0003】
このような長所がある一方で、リチウムイオン二次電池では、可燃性の非水電解質を用いるため、保護装置を備えない状態で過充電された場合には、電池の破裂・発火の危険性が伴うという欠点が存在する。
【0004】
過充電時における電池の各構成物質間の反応を説明すると、次の通りである。
即ち、過充電により、リチウムイオン二次電池の正極活物質LiCoO
2と電解液との間での副反応が激しくなると、正極活物質の構造崩壊と電解液の酸化反応などが発生する。そうすると、黒鉛等よりなる負極の活物質からリチウムが析出される。このような状態の中で、電圧が継続して上昇すると、やがて電池が破裂・発火するという危険性がある。
【0005】
上記異常に対する安全策を講じた機構として、特許文献1(特開2009−21133号公報)や、特許文献2(特開2011−18645号公報)等に示すものがある。特許文献1,2に示す技術では、電池の内圧が上昇した時に、反転板等と短絡板等とを接触させ、正極と負極とを導通させることにより、電池を強制的に放電させる仕組みとなっている。
【0006】
ここで、図面を参照して特許文献1,2に示されている技術を説明する。
【0007】
図9は、特許文献1(特開2009−21133号公報)に示されている、安全策構造を備えたリチウムイオン二次電池を示すものである。同図に示すように、金属製の外装缶1内には、正極2とセパレータ3と負極4を積層してなる電極組立体が収納されると共に、非水電解質が収納されている。
【0008】
外装缶1の蓋体1aには、正極端子5が電気的に接続された状態で配置され、且つ、負極端子6が電気的絶縁体7を介して電気的に絶縁された状態で配置されている。
正極端子5は、正極用のリードタブ2aを介して正極2に接続されており、負極端子6は、負極用のリードタブ(図示省略)を介して負極4に接続されている。
【0009】
外装缶1の蓋体1aには、ガス放出穴8が形成されている。金属製の圧力開放弁9は、図中に実線で示すように、蓋体1aの内面に電気的に接続された状態で取り付けられており、ガス放出穴8を塞いでいる。
リード線10は、一端が負極端子6に接続され、途中で折り曲げられ、折り曲げられた部分がガス放出穴8を横切る状態で配置されている。リード線10は、絶縁膜11を介して蓋体1aと絶縁されており、また、リード線10には抵抗体12が介在されている。
【0010】
電池異常により外装缶1内にガスが発生し、外装缶1内の圧力が上昇して圧力開放弁9の限界圧力を越えると、圧力開放弁9が図中に点線で示すように開放し、ガスがガス放出穴8を通して外部に放出される。
【0011】
また、圧力開放弁9が図中に点線で示すように開放してその先端が絶縁膜11を破ってリード線10に接触する。このようにして圧力開放弁9の先端がリード線10に接触すると、正極2−リードタブ2a−正極端子5−外装缶1(蓋体1a)−圧力開放弁9−抵抗体12が介在(接続)されたリード線10−負極端子6−負極用のリードタブ−負極4と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより電池電圧を低下させている。
【0012】
この場合、前記放電回路に抵抗体12が接続されているため、放電回路に放電電流(短絡電流)が流れても、放電電流の電流値が抑制される。この結果、放電電流による過大な発熱を抑制することができ、リード線10等が熱溶融することを防止している。
ちなみに、放電中にリード10等が熱溶融してしまうと、放電が途中で停止してしまい、電池電圧を適切に低下させることができず、安全性が確保できなくなってしまう。
【0013】
このようにして、特許文献1の技術では、ガス外部放出と放電により安全策を施している。
【0014】
図10は、特許文献2(特開2011−18645号公報)に示されている、安全策構造を備えたリチウムイオン二次電池を示すものである。同図に示すように、金属製の外装缶21内には、正極22とセパレータ23と負極24を積層してなる電極組立体が収納されると共に、非水電解質が収納されている。
【0015】
外装缶21の蓋体21aには、ガス放出穴25及び反転用穴26が形成されると共に、ガス放出穴25を塞ぐ圧力開放弁27及び反転用穴26を塞ぐ金属製の反転板28が備えられている。
反転板28は、蓋体21aに電気的に接続されており、外装缶21内の圧力が正常である場合には、外装缶21の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているが、外装缶21内の圧力が上昇して反転板28の限界圧力を越えた場合には、湾曲形状が反転して、外装缶21の外部側に向かって湾曲する形状に反転(変化)する。反転板28の湾曲形状が反転して、外装缶21の外部側に向かって湾曲した場合には、外装缶21の外部側に向かって湾曲した反転板28は、後述する短絡板30に接触する。
【0016】
また、外装缶21の蓋体21aには、蓋体21aとの電気的絶縁状態を確保しつつ、負極端子29と短絡板30が備えられている。負極端子29は、短絡板30と電気的に接続されていると共に、負極用のリードタブ29aを介して負極24に接続されている。なお、短絡板30は、抵抗値が大きく寸法が大きい金属部材である。
また、外装缶21の蓋体21aは、正極用のリードタブ22aを介して正極22に接続されている。つまり、外装缶21自体が正極端子としての機能を果たしている。
【0017】
電池異常により外装缶21内にガスが発生し、外装缶21内の圧力が上昇して反転板28の限界圧力を越えた場合には、反転板28は、湾曲形状が反転して外装缶21の外部側に向かって湾曲して、短絡板30に接触する。このようにして、反転板28と短絡板30が接触すると、正極22−リードタブ22a−外装缶21(蓋体21a)−反転板28−短絡板30−負極端子29−リードタブ29a−負極24と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより電池電圧を低下させている。
【0018】
この場合、前記放電回路に、抵抗値の大きな金属部材である短絡板30が接続されているため、放電回路に放電電流(短絡電流)が流れても、放電電流の電流値が抑制される。この結果、放電電流による過大な発熱を抑制することができ、反転板28等が熱溶融することを防止している。
ちなみに、放電中に反転板28等が熱溶融してしまうと、放電が途中で停止してしまい、電池電圧を適切に低下させることができず、安全性が確保できなくなってしまう。
【0019】
反転板28が反転した後も更に、外装缶21内の圧力が上昇して圧力開放弁27の限界圧力を越えると、圧力開放弁27が開放し、ガスがガス放出穴25を通して外部に放出される。
このように放電とガス外部放出により安全策を施している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明に係る非水電解質二次電池について、実施例に基づき詳細に説明する。
【0034】
[実施例1]
図1は本発明の実施例1に係るリチウムイオン二次電池100を示す概略断面図である。このリチウムイオン二次電池100の外装缶101は、有底の金属製の缶本体101aと、缶本体101aの上面開口を覆う金属製の蓋体101bとを溶接して構成されている。
金属製の外装缶101内には、正極とセパレータと負極を積層してなる電極組立体(図示省略)が収納されると共に、非水電解質が収納されている。
【0035】
外装缶101の蓋体101bには、絶縁材102により電気的絶縁を確保しつつ正極端子103が備えられると共に、絶縁材104により電気的絶縁を確保しつつ負極端子105が備えられている。
正極端子103は、電極組立体の正極(図示省略)に電気的に接続されており、負極端子105は、電極組立体の負極(図示省略)に電気的に接続されている。
【0036】
外装缶100の缶本体101aの底面には、ガス放出穴106が形成されると共に、ガス放出穴106を塞ぐ圧力開放弁107が備えられている。圧力開放弁107は、外装缶101内の圧力が予め決めた「開放圧力」を越えると開放状態になる。
外装缶100の蓋体101bには、反転用穴108が形成されると共に、反転用穴108を塞ぐ金属製の反転板109が備えられている。
【0037】
反転板109は、蓋体101bに電気的に接続されており、外装缶101内の圧力が正常である場合には、
図1において実線で示すように、外装缶101の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているが、外装缶101内の圧力が上昇して予め決めた「反転圧力」を越えた場合には、
図1において点線で示すように、湾曲形状が反転して、外装缶101の外部側に向かって湾曲する形状に反転(変化)する。
【0038】
反転板109に設定した「反転圧力」は、圧力開放弁107に設定した「開放圧力」よりも小さくしている。例えば、反転板109の「反転圧力」は0.2〜3MPaの範囲の圧力、圧力開放弁107の「開放圧力」は0.4〜4MPaの範囲の圧力であり、しかも、「反転圧力」<「開放圧力」となる圧力を採用する。
【0039】
バイメタル材により形成した短絡板110は、その基端部が負極端子105に電気的に接続されて当該負極端子105で支持されており、その先端部は反転用穴108及び反転板109に対向した位置に占位している。また、短絡板110は、絶縁材104により、外装缶101とは絶縁されている。
【0040】
短絡板110が熱変形していない状態(
図1に示す状態)における、短絡板110と反転板109との位置関係を説明すると、次の通りである。即ち、反転板109が外装缶101の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているときには、反転板109と短絡板110とは接触しておらず、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲した形状に反転(変化)したときには、反転板109が短絡板110に接触する。
【0041】
短絡板110は、予め決めた「熱変形温度」(例えば、80℃)を越えると、熱変形して外装缶101(蓋体101b)に向かって変形していく。反転板109が外装缶101の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているとき、または、反転板108が溶融して無くなっているときには、熱変形していった短絡板110は、外装缶101(蓋体101b)に接触する。
短絡板110の温度が「熱変形温度」未満になると、短絡板110は
図1に示す形状状態に戻り、外装缶101(蓋体101b)から離れる。
【0042】
リード板111は、正極端子103と外装缶101(缶本体101a)とを電気的に接続している。
【0043】
上記構成となっているリチウムイオン二次電池100による、安全確保動作を、状況に分けて説明する。
【0044】
まず、過充電時に圧力上昇した場合の安全確保動作を説明する。
過充電により外装缶101内にガスが発生して、外装缶101内の圧力が反転板109の反転圧力を越えると、反転板109は、
図1において点線で示すように、湾曲形状が反転して外装缶101の外部側に向かって湾曲する形状に反転(変化)する。このように反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲した形状になると、反転板109が短絡板110に接触する。
【0045】
反転板109が短絡板110に接触することにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−反転板109−外装缶101−リード板111−正極端子103−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100の破裂・発火を防止することができる。
【0046】
次に、火中投入等された場合の安全確保動作を説明する。
充電されているリチウムイオン二次電池100が、火中投入等されて電池外部からの加熱により電池温度が上昇し、短絡板110の熱変形温度を越えると、
図2に示すように、短絡板110は熱変形する。熱変形していった短絡板110は、外装缶101(蓋体101b)に接触する。
【0047】
短絡板110が外装缶101(蓋体101b)に接触することにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−外装缶101−リード板111−正極端子103−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100の破裂・発火を防止することができる。
【0048】
このように、火中投入などされて、電池外部からの加熱により電池温度が上昇した場合であっても、即座に放電回路が形成されて放電がされる。したがって、安定した安全確保動作が即座に発揮されて、電池電圧を低下させることが可能になる。
なお、短絡板110、外装缶101、リード板111等の抵抗及び各部の接触抵抗を合わせた放電回路の抵抗値は、例えば0.005Ω〜30Ωである。
【0049】
次に、形状反転した反転板109が溶断した場合の安全確保動作を説明する。
図1に点線で示すように、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲・反転し、反転板109と短絡板110とが接触し放電回路が形成されて放電が開始された後に、
図3に示すように、反転板109が短絡による発熱により溶融することがある。
この場合には、
図3に示すように、発熱による温度上昇で短絡板110が湾曲して外装缶101(蓋体101b)に接触する。よって、短絡状態が中断することなく、継続的に放電をして電池電圧を低下させることが可能となる。
【0050】
上述したようにして放電回路を通じて放電をしても、外装缶101内の圧力が更に上昇して圧力開放弁107の開放圧力を越えると、圧力開放弁107が開放されて、外装缶101内のガスがガス放出弁106を通して放出される。
【0051】
このように実施例1のリチウムイオン二次電池100では、過充電により内部圧力が上昇したときはもちろん、充電(特に満充電)されているリチウムイオン二次電池100が火中投入等により外部から急激に加熱されても、または、形状反転した反転板109が短絡電流で溶断しても、放電回路を確保して放電をすることにより安全性を確保することができる。
しかも、短絡板110はバイメタル材で形成することができるため、安価でありながら、作動安定性のある安全機構を構成することができる。
【0052】
また寸法の大きな抵抗体や金属部材を用いていないので、リチウムイオン二次電池100の全体を小型化することができる。
【0053】
[実施例1の変形例]
図4に示すリチウムイオン二次電池100Aは、
図1に示すリチウムイオン二次電池100の変形例である。
図4に示すリチウムイオン二次電池100Aでは、外装缶101内に収納した正極(図示省略)が外装缶101に電気的に接続されている。つまり、外装缶101自体が正極端子としての機能を果たしている。このため、
図1に示す、絶縁材102、正極端子103、リード板111は備えていない。
【0054】
図4に示すリチウムイオン二次電池100Aも、
図1に示すリチウムイオン二次電池100と同様な動作をする。
【0055】
つまり、過充電により外装缶101内にガスが発生して、外装缶101内の圧力が反転板109の反転圧力を越えると、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲して、反転板109が短絡板110に接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−反転板109−正極端子として機能する外装缶101−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Aの破裂・発火を防止することができる。
【0056】
また、充電されているリチウムイオン二次電池100Aが、火中投入等されて電池外部からの加熱により電池温度が上昇し、短絡板110の熱変形温度を越えると、短絡板110は熱変形して外装缶101(蓋体101b)に接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−正極端子として機能する外装缶101−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Aの破裂・発火を防止することができる。
【0057】
外装缶101の外部側に向かって湾曲・反転して短絡板110に接触した反転板109が、短絡による発熱により溶融した場合には、発熱による温度上昇で短絡板110が湾曲して外装缶101(蓋体101b)に接触する。よって、短絡状態が中断することなく、継続的に放電をして電池電圧を低下させることが可能となる。
【0058】
上述したようにして放電回路を通じて放電をしても、外装缶101内の圧力が更に上昇して圧力開放弁107の開放圧力を越えると、圧力開放弁107が開放されて、外装缶101内のガスがガス放出弁106を通して放出される。
【0059】
[実施例2]
図5は本発明の実施例2に係るリチウムイオン二次電池100Bを示す概略断面図である。
このリチウムイオン二次電池100Bは、
図1に示す実施例1に対して、短絡板120の形状が実施例1の短絡板110とは異なると共に、ガス放出弁106及び圧力開放弁107を備えていないことが異なるが、他の部分の構成は実施例1と同様である。
このため、実施例1と同一部分には同一符号を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0060】
このリチウムイオン二次電池100Bに備えた短絡板120は、その先端部で且つ反転板109に向かう面に、突起120aを備えている。
【0061】
バイメタル材により形成した短絡板120は、その基端部が負極端子105に電気的に接続されて当該負極端子105で支持されており、その先端部の突起120aは反転板109に対向した位置に占位している。また、短絡板120は、絶縁材104により、外装缶101とは絶縁されている。
【0062】
短絡板120が熱変形していない状態(
図5に示す状態)における、短絡板120と反転板109との位置関係を説明すると、次の通りである。即ち、反転板109が外装缶101の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているときには、反転板109と短絡板120とは接触しておらず、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲した形状に反転(変化)したときには、反転板109が短絡板120の突起120aに接触する。
【0063】
短絡板120は、予め決めた「熱変形温度」(例えば、80℃)を越えると、熱変形して外装缶101(蓋体101b)に向かって変形していく。反転板109が外装缶101の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているとき、または、反転板108が溶融して無くなっているときには、熱変形していった短絡板120は外装缶101(蓋体101b)に接触する。
短絡板120の温度が「熱変形温度」未満になると、短絡板120は
図5に示す形状状態に戻り、外装缶101(蓋体101b)から離れる。
【0064】
このリチウムイオン二次電池100Bによる、安全確保動作は次の通りである。
【0065】
過充電により外装缶101内にガスが発生して、外装缶101内の圧力が反転板109の反転圧力を越えると、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲して、反転板109が短絡板120の突起120aに接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板120(突起120a)−反転板109−外装缶101−リード板111−正極端子103−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Bの破裂・発火を防止することができる。
【0066】
上述したようにして放電回路を通じて放電をしても、外装缶101内の圧力が更に上昇すると、短絡板120の突起120aが反転板109に予め決めた圧力を越えた状態で接触・押圧され、突起120aが反転板109に食い込み反転板109が開放する(破れる)。このため、開放した(破れた)反転板109を通じて、外装缶101内のガスが放出される。
【0067】
また、充電されているリチウムイオン二次電池100Bが、火中投入等されて電池外部からの加熱により電池温度が上昇し、短絡板120の熱変形温度を越えると、短絡板120は熱変形して外装缶101(蓋体101b)に接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板120−外装缶101−リード板111−正極端子103−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Bの破裂・発火を防止することができる。
【0068】
外装缶101の外部側に向かって湾曲・反転して短絡板120に接触した反転板109が、短絡による発熱により溶融した場合には、発熱による温度上昇で短絡板120が湾曲して外装缶101(蓋体101b)に接触する。よって、短絡状態が中断することなく、継続的に放電をして電池電圧を低下させることが可能となる。
【0069】
このように実施例2のリチウムイオン二次電池100Bでは、過充電により内部圧力が上昇したときはもちろん、充電(特に満充電)されているリチウムイオン二次電池100が火中投入等により外部から急激に加熱されても、または、形状反転した反転板109が短絡電流で溶断しても、放電回路を確保して放電をすることにより安全性を確保することができる。
しかも、短絡板110はバイメタル材で形成することができるため、安価でありながら、作動安定性のある安全機構を構成することができる。
【0070】
また、寸法の大きな抵抗体や金属部材を用いていないので、リチウムイオン二次電池100の全体を小型化することができる。
【0071】
[実施例2の変形例]
図6に示すリチウムイオン二次電池100Cは、
図5に示すリチウムイオン二次電池100Bの変形例である。
図6に示すリチウムイオン二次電池100Cでは、外装缶101内に収納した正極(図示省略)が外装缶101に電気的に接続されている。つまり、外装缶101自体が正極端子としての機能を果たしている。このため、
図5に示す、絶縁材102、正極端子103、リード板111は備えていない。
【0072】
図6に示すリチウムイオン二次電池100Cも、
図5に示すリチウムイオン二次電池100Bと同様な動作をする。
【0073】
つまり、過充電により外装缶101内にガスが発生して、外装缶101内の圧力が反転板109の反転圧力を越えると、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲して、反転板109が短絡板120の突起120aに接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板120(突起120a)−反転板109−正極端子として機能する外装缶101−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Cの破裂・発火を防止することができる。
【0074】
上述したようにして放電回路を通じて放電をしても、外装缶101内の圧力が更に上昇すると、短絡板120の突起120aが反転板109に食い込み反転板109が開放する(破れる)ことで、開放した(破れた)反転板109を通じて、外装缶101内のガスが放出される。
【0075】
また、充電されているリチウムイオン二次電池100Cが、火中投入等されて電池外部からの加熱により電池温度が上昇し、短絡板120の熱変形温度を越えると、短絡板120は熱変形して外装缶101(蓋体101b)に接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板120−正極端子として機能する外装缶101−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Cの破裂・発火を防止することができる。
【0076】
外装缶101の外部側に向かって湾曲・反転して短絡板120に接触した反転板109が、短絡による発熱により溶融した場合には、発熱による温度上昇で短絡板120が湾曲して外装缶101(蓋体101b)に接触する。よって、短絡状態が中断することなく、継続的に放電をして電池電圧を低下させることが可能となる。
【0077】
〔実施例3〕
図7は本発明の実施例3に係るリチウムイオン二次電池100Dを示す概略断面図である。
【0078】
このリチウムイオン二次電池100Dでは、短絡板110の先端部、即ち、反転板109に対向する部分で、且つ、反転板109側の面に導電性セラミック115を備えている。導電性セラミック115としては、Al
2O
3+TiCやZrO
2+NbC等を採用することができる。
この導電性セラミック115の厚さは、電池機種や仕様により異なるが、0.1〜10mmの範囲内のものであり、極めて薄い。この導電性セラミック115は薄くて小さな部材であるが、大きな抵抗値を有している。
【0079】
なお、導電性セラミック115は、1枚の板状のものであっても、複数の板状のものを並べて形成したものであってもよい。
【0080】
他の部分の構成は、
図1に示す実施例1と同様であるため、実施例1と同一部分には同一符号を付し、重複する部分の説明は省略する。
【0081】
上記構成となっているリチウムイオン二次電池100Dによる、安全確保動作を、状況に分けて説明する。
【0082】
まず、過充電時に圧力上昇した場合の安全確保動作を説明する。
過充電により外装缶101内にガスが発生して、外装缶101内の圧力が反転板109の反転圧力を越えると、反転板109は、
図7において点線で示すように、湾曲形状が反転して外装缶101の外部側に向かって湾曲する形状に反転(変化)する。このように反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲した形状になると、反転板109が導電性セラミック115を介して短絡板110に接触する。
【0083】
反転板109が短絡板110に接触することにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−導電性セラミック115−反転板109−外装缶101−リード板111−正極端子103−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Dの破裂・発火を防止することができる。
【0084】
次に、火中投入等された場合の安全確保動作を説明する。
充電されているリチウムイオン二次電池100Dが、火中投入等されて電池外部からの加熱により電池温度が上昇し、短絡板110の熱変形温度を越えると、短絡板110は熱変形し、導電性セラミック115を介して外装缶101(蓋体101b)に接触する。
【0085】
短絡板110が外装缶101(蓋体101b)に接触することにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−導電性セラミック115−外装缶101−リード板111−正極端子103−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Dの破裂・発火を防止することができる。
【0086】
このように、火中投入などされて、電池外部からの加熱により電池温度が上昇した場合であっても、即座に放電回路が形成されて放電がされる。したがって、安定した安全確保動作が即座に発揮されて、電池電圧を低下させることが可能になる。
【0087】
なお、導電性セラミック115、短絡板110、外装缶101、リード板111等の抵抗及び各部の接触抵抗を合わせた放電回路の抵抗値は、例えば0.005Ω〜30Ωである。
この場合、導電性セラミック115の抵抗値が大きいため、上記のような抵抗値を得るための、各部材のサイズを小さくすることができ、リチウムイオン二次電池100Dの全体を小型化することができる。
【0088】
次に、形状反転した反転板109が溶断した場合の安全確保動作を説明する。
図7に点線で示すように、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲・反転し、反転板109と短絡板110とが接触し放電回路が形成されて放電が開始された後に、反転板109が短絡による発熱により溶融することがある。
この場合には、発熱による温度上昇で短絡板110が湾曲して外装缶101(蓋体101b)に接触する。よって、短絡状態が中断することなく、継続的に放電をして電池電圧を低下させることが可能となる。
【0089】
上述したようにして放電回路を通じて放電をしても、外装缶101内の圧力が更に上昇して圧力開放弁107の開放圧力を越えると、圧力開放弁107が開放されて、外装缶101内のガスがガス放出穴106を通して放出される。
【0090】
このように実施例3のリチウムイオン二次電池100Dでは、過充電により内部圧力が上昇したときはもちろん、充電(特に満充電)されているリチウムイオン二次電池100Dが火中投入等により外部から急激に加熱されても、または、形状反転した反転板109が短絡電流で溶断しても、放電回路を確保して放電をすることにより安全性を確保することができる。
しかも、短絡板110はバイメタル材で形成することができるため、安価でありながら、作動安定性のある安全機構を構成することができる。
【0091】
また導電性セラミック115は寸法が小さいため、リチウムイオン二次電池100Dの全体を小型化することができる。
【0092】
[実施例3の変形例]
図8に示すリチウムイオン二次電池100Eは、
図7に示すリチウムイオン二次電池100Dの変形例である。
図8に示すリチウムイオン二次電池100Eでは、外装缶101内に収納した正極(図示省略)が外装缶101に電気的に接続されている。つまり、外装缶101自体が正極端子としての機能を果たしている。このため、
図7に示す、絶縁材102、正極端子103、リード板111は備えていない。
【0093】
図8に示すリチウムイオン二次電池100Eも、
図7に示すリチウムイオン二次電池100Dと同様な動作をする。
【0094】
つまり、過充電により外装缶101内にガスが発生して、外装缶101内の圧力が反転板109の反転圧力を越えると、反転板109が外装缶101の外部側に向かって湾曲して、反転板109が導電性セラミック115を介して短絡板110に接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−導電性セラミック115−反転板109−正極端子として機能する外装缶101−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Eの破裂・発火を防止することができる。
【0095】
また、充電されているリチウムイオン二次電池100Eが、火中投入等されて電池外部からの加熱により電池温度が上昇し、短絡板110の熱変形温度を越えると、短絡板110は熱変形し、導電性セラミック115を介して外装缶101(蓋体101b)に接触する。これにより、負極(図示省略)−負極端子105−短絡板110−導電性セラミック115−正極端子として機能する外装缶101−正極(図示省略)と連なる放電回路が形成される。このようにして形成された放電回路を通じて放電することにより、強制的に電池電圧を低下させ、リチウムイオン二次電池100Eの破裂・発火を防止することができる。
【0096】
外装缶101の外部側に向かって湾曲・反転して短絡板110に接触した反転板109が、短絡による発熱により溶融した場合には、発熱による温度上昇で短絡板110が湾曲して外装缶101(蓋体101b)に接触する。よって、短絡状態が中断することなく、継続的に放電をして電池電圧を低下させることが可能となる。
【0097】
上述したようにして放電回路を通じて放電をしても、外装缶101内の圧力が更に上昇して圧力開放弁107の開放圧力を越えると、圧力開放弁107が開放されて、外装缶101内のガスがガス放出弁106を通して放出される。
【0098】
〔実施例4〕
ここで上記の各実施例の各種の変形例を、実施例4として説明する。
【0099】
図1〜
図8に示す各実施例では、負極端子105に短絡板を備えているが、正極端子103に短絡板を備えて、負極端子105を外装缶101に電気的に接続したり、外装缶101を負極端子として機能させたりするような構成を採用することも可能である。
【0100】
また上記の各実施例では、反転板109は、外装缶101内の圧力が正常である場合には、外装缶101の内部側に向かって湾曲した初期形状になっているが、外装缶101内の圧力が上昇して予め決めた「反転圧力」を越えた場合には、湾曲形状が反転して、外装缶101の外部側に向かって湾曲する形状に反転(変化)する金属製の反転板である。
しかし、反転板は、このようなものに限るものではない。例えば、導電性シリコーンゴムは、弾性、耐熱性、導電性(電気抵抗)を有しているので、平板状の導電性シリコーンゴムを、反転用穴108を塞ぐ状態で、カシメなどにより蓋体101bに取り付けて、これを反転板として機能させることができる。
【0101】
導電性シリコーンゴムにより形成した反転板は、外装缶101内の圧力が正常である場合には、平板状の初期形状になっているが、外装缶101内の圧力が上昇して予め決めた「反転圧力」を越えた場合には、平板形状が変化して、外装缶101の外部側に向かって湾曲する形状に反転(変化)する。
【0102】
また
図7及び
図8に示す実施例では、導電性セラミック115を用いているが、これに代わり、導電性セラミック115と同程度の抵抗値となっている導電性シリコーンゴムを用いることもできる。
【0103】
更に上記の各実施例では、反転した反転板109が仮に溶融したとしても短絡状態を確保することができるようにするために、短絡板110をバイメタル材により形成していた。しかし、
図7及び
図8に示す実施例では、短絡板を、バイメタル機能を有しない導電性の通常の金属材で形成することもできる。
図7及び
図8に示す実施例では、抵抗値の大きな導電性セラミック115があるため、放電回路が形成されて放電電流が流れても、放電電流の値が抑制されるため、反転板109の溶融が防止できる。よって、短絡板を、バイメタル機能を有しないもので形成することができるのである。