特許第6143480号(P6143480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143480
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   G01N35/00 F
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-16854(P2013-16854)
(22)【出願日】2013年1月31日
(65)【公開番号】特開2014-149174(P2014-149174A)
(43)【公開日】2014年8月21日
【審査請求日】2015年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】村松 友美
(72)【発明者】
【氏名】金山 省一
(72)【発明者】
【氏名】高山 博子
(72)【発明者】
【氏名】内川 明日香
【審査官】 長谷 潮
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−318559(JP,A)
【文献】 特開2011−242392(JP,A)
【文献】 特表2005−511066(JP,A)
【文献】 特表2008−525784(JP,A)
【文献】 特開平09−318663(JP,A)
【文献】 特表平11−502625(JP,A)
【文献】 特開2009−168636(JP,A)
【文献】 特開2011−153946(JP,A)
【文献】 特開2010−107253(JP,A)
【文献】 特開2003−329405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の反応管を移動経路に沿って移動可能に保持する反応管保持機構と、
前記複数の反応管各々について設けられ、前記複数の反応管と共に前記移動経路を移動し、前記反応管各々に磁場を印加するための磁場発生体と、
前記移動経路に沿う所定位置に配置される磁場検出部であって、記反応管各々について設けられた前記磁場発生体から発生される磁場であって、前記複数の反応管と前記反応管各々について設けられた前記磁場発生体とが繰り返し横切る前記移動経路上の磁場検出可能領域に含まれる磁場を繰り返し検出し、前記検出された磁場の強度に応じた信号を出力する磁場検出部と、
前記磁場検出部から出力された信号の強度の時間経過に伴うパターンに基づいて、前記反応管各々について設けられた前記磁場発生体の配置と前記磁場発生体からの磁場の強度との少なくとも一つが適正であるか否かを判定する判定部と、
を具備する自動分析装置。
【請求項2】
前記移動経路は、環状であり、
前記磁場検出部は、前記複数の反応管の内周側、前記複数の反応管の外周側、前記複数の反応管の内周側と外周側との両側に配置される、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記移動経路は、環状であり、
前記磁場検出部は、前記複数の反応管の底面側に配置される、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記磁場検出部は、ホール素子である、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記反応管保持機構は、環状に配列された前記複数の反応管を回転軸回りに回転可能に保持し、
前記磁場検出部は、前記複数の反応管各々について設けられた前記磁場発生体から発生された磁場に含まれる、前記複数の反応管の回転線速度方向の磁場成分を検出する、
請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記判定部は、測定動作前の初期状態、測定開始から前記反応管に磁性粒子が吐出されるまでの期間、または、前記反応管が洗浄された後において前記磁場検出部から出力された信号に基づいて、前記反応管に印加された磁場の強度と分布との少なくとも一つが適正であるか否かを判定する、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記判定部による判定結果を報知する報知部、をさらに備える請求項1記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性粒子を用いて検出対象分子を分離して検査するため、反応管内の反応液に磁場を印加するための磁石が搭載された自動分析装置がある。磁石は、反応管内の反応液において磁場の磁束密度が略均一になるように配置されている。磁石に位置ずれが生じた場合や磁石の磁力が劣化した場合、測定値の精度が悪化してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−168636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
目的は、反応管に磁場を印加する磁場発生体が搭載された自動分析装置において、測定結果の信頼性の向上を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る自動分析装置は、複数の反応管を移動経路に沿って移動可能に保持する反応管保持機構と、前記複数の反応管各々について設けられ、前記複数の反応管と共に前記移動経路を移動し、前記反応管各々に磁場を印加するための磁場発生体と、前記移動経路に沿う所定位置に配置される磁場検出部であって、記反応管各々について設けられた前記磁場発生体から発生される磁場であって、前記複数の反応管と前記反応管各々について設けられた前記磁場発生体とが繰り返し横切る前記移動経路上の磁場検出可能領域に含まれる磁場を繰り返し検出し、前記検出された磁場の強度に応じた信号を出力する磁場検出部と、前記磁場検出部から出力された信号の強度の時間経過に伴うパターンに基づいて、前記反応管各々について設けられた前記磁場発生体の配置と前記磁場発生体からの磁場の強度との少なくとも一つが適正であるか否かを判定する判定部と、を具備する。


【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図。
図2図1の反応ディスクにおける磁場検出部と磁場発生体との配置を模式的に示す図。
図3図1の測光機構と反応管と磁石との位置関係を模式的に示す図。
図4図1の反応ディスクの平面図の部分的な拡大図。
図5図4のA−A´断面を示す図。
図6】本実施形態において磁場検出部(磁気センサ)として利用されるホール素子の原理を説明するための図。
図7】本実施形態に係る磁気センサの他の配置例を示す図。
図8図1の磁気センサにより検出される、磁石の正常時における磁場検出信号の強度の時間変化の一例を示す図。
図9図1の磁気センサにより検出される、磁石の異常時における磁場検出信号の強度の時間変化の一例を示す図。
図10図1の磁気センサにより検出される、磁石の他の異常時における磁場検出信号の強度の時間変化の一例を示す図。
図11図1の判定部により設定される、磁場検出信号のサンプリング期間について説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる自動分析装置を説明する。
【0008】
図1は、本実施形態に係る自動分析装置の構成を示す図である。図1に示すように、自動分析装置1は、分析機構2、分析機構制御部3、解析部4、判定部5、表示部6、操作部7、記憶部8、及びシステム制御部9を備える。
【0009】
分析機構2は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。分析機構2は、自動分析装置の筐体に設けられている。分析機構2は、例えば、図1に示すように、反応ディスク11、サンプルディスク13、第1試薬庫15、第2試薬庫17、サンプルアーム19―1、サンプルプローブ21―1、第1試薬アーム19―2、第1試薬プローブ21―2、第2試薬アーム19―3、第2試薬プローブ21―3、撹拌アーム23、撹拌子25、測光機構27、及び洗浄機構29を搭載する。
【0010】
反応ディスク11は、環状に配列された複数の反応管31を保持する。反応ディスク11は、既定の時間間隔で回動と停止とを交互に繰り返す。後述するように、反応ディスク11には、各反応管31に磁場を印加するための磁場発生体が設けられている。反応管31は、例えば、ガラスにより形成されている。サンプルディスク13は、反応ディスク11の近傍に配置されている。サンプルディスク13は、検体が収容されたサンプル容器33を保持する。サンプルディスク13は、分注対象の検体が収容されたサンプル容器33が検体吸入位置に配置されるように回動する。第1試薬庫15は、検体の検査項目に選択的に反応する第1試薬が収容された複数の第1試薬容器35を保持する。第1試薬庫15は、分注対象の第1試薬が収容された第1試薬容器35が第1試薬吸入位置に配置されるように回動する。第2試薬庫17は、反応ディスク11の近傍に配置される。第2試薬庫17は、第1試薬に対応する第2試薬が収容された複数の第2試薬容器37を保持する。第2試薬庫17は、分注対象の第2試薬が収容された第2試薬容器37が第2試薬吸入位置に配置されるように回動する。
【0011】
本実施形態において、第1試薬または第2試薬として、検体に含まれる検査対象の分子に直接または間接に特異的に結合する磁性粒子を含む溶液が用いられる。検査対象の分子が検体に微量に含まれる場合に磁性粒子を用いると、検査対象の分子を高感度に定量分析することができる。
【0012】
反応ディスク11とサンプルディスク13との間にはサンプルアーム19―1が配置される。サンプルアーム19―1の先端には、サンプルプローブ21―1が取り付けられている。サンプルアーム19―1は、サンプルプローブ21―1を上下動可能に支持している。また、サンプルアーム19―1は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能にサンプルプローブ21―1を支持している。サンプルプローブ21―1の回動軌跡は、サンプルディスク13上のサンプル吸入位置や反応ディスク11上のサンプル吐出位置を通過する。サンプルプローブ21―1は、サンプルディスク13上のサンプル吸入位置に配置されているサンプル容器33から検体を吸入し、反応ディスク11上の検体吐出位置に配置されている反応管31に検体を吐出する。
【0013】
反応ディスク11の外周近傍には第1試薬アーム19―2が配置される。第1試薬アーム19―2の先端には第1試薬プローブ21―2が取り付けられている。第1試薬アーム19―2は、第1試薬プローブ21―2を上下動可能に支持する。また、第1試薬アーム19―2は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第1試薬プローブ21―2を支持している。第1試薬プローブ21―2の回動軌跡は、第1試薬庫15上の第1試薬吸入位置と反応ディスク11上の第1試薬吐出位置とを通る。第1試薬プローブ21―2は、第1試薬庫15上の第1試薬吸入位置に配置されている第1試薬容器35から第1試薬を吸入し、反応ディスク11上の第1試薬吐出位置に配置されている反応管31に第1試薬を吐出する。
【0014】
反応ディスク11と第2試薬庫17との間には第2試薬アーム19―3が配置される。第2試薬アーム19―3の先端には第2試薬プローブ21―3が取り付けられている。第2試薬アーム19―3は、第2試薬プローブ21―3を上下動可能に支持する。また、第2試薬アーム19―3は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に第2試薬プローブ21―3を支持している。第2試薬プローブ21―3の回動軌跡は、第2試薬庫17上の第2試薬吸入位置と反応ディスク11上の第2試薬吐出位置とを通る。第2試薬プローブ21―3は、第2試薬庫17上の第2試薬吸入位置に配置されている第2試薬容器37から第2試薬を吸入し、反応ディスク11上の第2試薬吐出位置に配置されている反応管31に第2試薬を吐出する。
【0015】
反応ディスク11の外周近傍には撹拌アーム23が配置される。撹拌アーム23の先端には撹拌子25が取り付けられている。撹拌アーム23は、撹拌子25を上下動可能に支持する。また、撹拌アーム23は、円弧状の回動軌跡に沿って回動可能に撹拌子25を支持している。撹拌子25は、反応ディスク11上の撹拌位置に配置された反応管31内の検体と第1試薬との混合液、または、検体と第1試薬と第2試薬との混合液を攪拌する。以下、これら混合液を反応液と呼ぶことにする。
【0016】
図1に示すように、反応ディスク11近傍には、測光機構27が設けられている。測光機構27は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、測光機構27は、光源210と光検出器220とを有している。光源210は、反応ディスク11内の測光位置にある反応管31内の反応液に向けて光を照射する。光検出器220は、測光位置にある反応管31を挟んで光源に対向する位置に配置される。光検出器220は、光源から照射され反応管31及び反応液を透過した光、反応管31及び反応液により反射された光、あるいは、反応管31及び反応液により散乱された光を検出する。光検出器220は、検出された光の強度に応じた計測値を有するデータ(以下、測光データと呼ぶことにする。)を生成する。生成された測光データは、解析部4に供給される。
【0017】
反応ディスク11の外周には、洗浄機構29が設けられている。洗浄機構29は、分析機構制御部3による制御に従って作動する。具体的には、洗浄機構29は、洗浄ノズルと乾燥ノズルとが取り付けられている。洗浄機構29は、反応ディスク11の洗浄位置にある反応管31を洗浄ノズルで洗浄し、乾燥ノズルで乾燥する。
【0018】
また、反応ディスク11には磁場検出部39が設けられている。磁場検出部39は、磁場発生体から発生される磁場を検出し、検出された磁場の強度に応じた電気信号を出力する磁気センサである。以下、磁気センサ39から出力される電気信号を、磁場検出信号と呼ぶことにする。磁場検出信号は、判定部5に供給される。磁気センサ39は、磁場発生体から発生される磁場を検出可能な位置に配置される。例えば、磁気センサ39は、反応ディスク11内の反応管31の回転軌道の近傍に設置される。磁気センサ39は、一つだけ設置されても良いし、複数設置されても良い。
【0019】
分析機構制御部3は、システム制御部9による制御に従って分析機構2の各装置や機構を作動する。解析部4は、測光データに基づいて、磁性粒子に由来する反応液の吸光度を算出したり、算出された吸光度に基づいて濁度を算出したりする。また、解析部4は、算出された反応液の濁度や吸光度に基づいて検査項目に応じた検査対象の分子を定量分析する。判定部5は、磁気センサ39からの磁場検出信号に基づいて、磁場発生体の配置と磁場発生体から発生された磁場の強度との少なくとも一つが適正であるか否かを判定する。表示部6は、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスを有する。表示部6は、解析部4による解析結果や判定部5による判定結果を表示する。操作部7は、オペレータからの入力機器を介した各種指令や情報入力を受け付ける。入力機器としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、スイッチボタン等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。記憶部8は、自動分析装置1の動作プログラム等を記憶している。システム制御部9は、自動分析装置1の中枢として機能する。システム制御部9は、記憶部8から動作プログラムを読み出し、動作プログラムに従って各部3,4,5,6,8を制御する。
【0020】
以下、本実施形態に係る自動分析装置1について詳細に説明する。
【0021】
まずは、図2を参照しながら、反応ディスク11における磁気センサ39と磁場発生体41との配置について説明する。
【0022】
図2は、反応ディスク11における磁気センサ39と磁場発生体41との配置を模式的に示す図である。図2に示すように、反応ディスク11には、回転軸R1を中心とする円環に沿って複数の反応管31が配列されている。複数の反応管31は、反応ディスク11により、回転軸R1回りに間欠的に回転と停止とを繰り返す。各反応管31を挟むように一対の磁場発生体41が配置されている。一対の磁場発生体41は、反応管31の回転方向(回転線速度方向)に沿って磁場が印加するように配置される。本実施形態に係る磁場発生体41としては、磁場を発生可能な如何なる物体が適用可能である。具体的には、磁場発生体41としては、磁石が採用されると良い。本実施形態に係る磁石41としては、既存の如何なるものも適用可能である。例えば、磁石41として、フェライト磁石やアルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジム磁石等の永久磁石を用いることが望ましい。反応管31を挟むように配置される一対の永久磁石41は、SN対向で磁化される。また、磁石41として、永久磁石と他の磁性材料とを組み合わせたものでも良い。さらに、磁石41は金属や合金、酸化物等の強磁性体を含んでも良い。さらに、磁石41は電磁石を含んでも良い。この場合、上記の強磁性体と同様に、電磁石と永久磁石または他の磁性体とからなる磁石41(磁気回路)が構成される。以下、磁場発生体41は、磁石であるものとする。一対の磁石41が反応管31を挟んで配置されることにより、反応管31内の反応液に磁場が印加される。
【0023】
図3は、測光機構27と反応管31と磁石41との位置関係を模式的に示す図である。図3に示すように、測光機構27は、光源210と光検出器220とを有している。光源210と光検出器220とは、自動分析装置1の筐体内部の所定位置に固定されている。光源210から光検出器220に向けて光が照射される。ここで光の照射方向をY方向に規定する。光源210から光検出器220までの光路上の所定位置に測光位置が設けられている。反応管31は、光源210からの光を測光位置で略直角に横切るように所定の時間間隔で反応ディスク11により回転される。反応管31内の反応液は、測光位置を横切る毎に測光機構27により光学計測される。ここで、反応管31の長軸A1に沿う方向をZ方向に規定し、Y方向とZ方向との両方に直交する方向をX方向に規定する。X方向は、反応管31の回転方向(回転線速度動向)に一致する。
【0024】
図2に示すように、反応ディスク11の内周側または外周側には磁気センサ39が設けられている。なお、内周側は、反応ディスク11内の反応管31の回転軌道K31を挟んだ回転軸R1側の領域を指し、外周側は、反応ディスク11内の回転軌道K31を挟んだ回転軸R1側とは反対側の領域を指すものとする。磁気センサ39は、測光機構27や洗浄機構29等の反応ディスク11周囲の他の機構に磁気的または物理的に干渉しない位置に配置されると良い。磁気センサ39は、磁石41から発生される磁場を検出し、検出された磁場の強度に応じた磁場検出信号を出力する。反応ディスク11の駆動中、反応管31と磁石41とは、反応ディスク11により回転軸R1回りに回転される。反応管31と磁石41とは、磁気センサ39による磁場検出可能領域を横切る。磁気センサ39は、磁場検出可能領域に含まれる磁場を繰り返し検出する。なお、磁気センサ39は、必ずしも内周側と外周側との何れか一方のみに設けられている必要はなく、内周側と外周側との両方に設けられていても良い。また、磁気センサ39の数は1又は2に限定されず、3つ以上でも良い。
【0025】
次に、磁気センサ39の配置についてより詳細に説明する。図4は、反応ディスク11の平面図の部分的な拡大図であり、図5は、図4のA−A´断面を示す図である。反応ディスク11は、環状の恒温槽43を有している。恒温槽43には、反応管31内の反応液の周囲の温度を典型的な生体内の温度に近づけるため、当該温度近辺に保たれた溶液(例えば、お湯)が収容されている。反応ディスク11は、複数の反応管31を恒温槽43内において回転方向X(回転線速度方向)に回転可能に保持している。上記の通り、各反応管31を回転方向Xに関して挟むように一対の磁石41が配置されている。磁石41は、反応管31から離反していても良いし接触していても良い。恒温槽43の内壁43wの所定位置には磁気センサ39が取り付けられている。磁気センサ39は、上記の通り、内周側の内壁43w、外周側の内壁43w、または内周側の内壁43wと外周側の内壁43wとの両方に取り付けられている。
【0026】
磁気センサ39は、磁石41から発生される磁場のうちの、回転線速度方向に略平行する磁場成分を検出するように配置される。磁気センサ39としては、磁場を検出可能であれば如何なるものでも良い。例えば、磁気センサ39としては、ホール素子が利用可能である。
【0027】
図6は、ホール素子39の原理を説明するための図である。ホール素子39は、ホール効果を利用した磁気センサである。ホール素子は、板形状を有する半導体薄膜39sである。半導体薄膜39sの側面には、電流入力端子39iと電圧出力端子39oとが取り付けられている。半導体薄膜39sは、検出対象の磁場成分が表面から裏面を貫くように配置される。この状態において、電流入力端子39i間に電流が供給された場合、ローレンツ力により半導体薄膜39s内の電子の進行方向が曲げられる。例えば、磁場が印加されていない場合、電流入力端子39iの中心間を結ぶ軸に平行な方向に電子が進む。磁場が印加された場合、ローレンツ力により、軸に対して角度θだけ電子の進行方向が曲げられる。電子の進行方向が曲がることにより、電圧出力端子39o間にホール電圧(磁場検出信号)が発生する。なお、電流入力端子39i間には電流の代わりに電圧が印加されても良い。
【0028】
本実施形態においてホール素子39は、回転線速度方向に略平行する磁場成分を検出することが望ましい。この場合、半導体薄膜39sの表面と裏面とが回転線速度方向に直交するようにホール素子39が配置されると良い。
【0029】
なお、磁気センサ39の設置個所は、反応ディスク11の内周側と外周側とに限定されない。磁気センサ39は、磁石41からの磁場を検出可能であれば、如何なる場所に設けられても良い。例えば、図7に示すように、磁気センサ39は、反応ディスク11のうちの、反応管31の底面近傍に設定されても良い。この場合、磁気センサ39は、恒温槽43の底面の内壁に設けられることとなる。
【0030】
次に、本実施形態に係る自動分析装置1の動作例について説明する。
【0031】
判定部5による磁石41の適否の判定処理は、磁性粒子の存在による磁場検出信号の乱れを排除するため、反応管31に磁性粒子が収容されていない期間に行われると良い。具体的には、判定期間は、イニシャル期間、測定動作中の特定期間、及び洗浄動作後の期間の何れかに設定されると良い。イニシャル期間は、自動分析装置1による検体検査の実行前の期間である。イニシャル期間において検体検査は行われない。測定動作中の特定期間は、自動分析装置1による検体検査の実行中の期間であって、反応管31に磁性粒子が吐出される前の期間である。洗浄動作後の期間は、検体検査が終了し、洗浄機構29による反応管31の洗浄が終了した後の期間である。例えば、判定処理は、操作部7を介してユーザからの指示が入力されることを契機としてシステム制御部9による制御のもとに行われる。
【0032】
反応管31に印加される磁場が乱れる主な要因は、磁石41の位置ずれ(落下も含む)と磁石41から発生される磁場の強度の低下である。磁石41の位置ずれや磁場の強度の低下が生じている場合の磁場検出信号の強度または強度の時間変化パターンは、正常時とは異なる。
【0033】
図8は、正常時における磁場検出信号の強度の時間変化の一例を示す図である。図8の縦軸は磁場検出信号の強度、すなわち、磁場の強度に規定され、横軸は時間に規定される。反応ディスク11の回転時において磁気センサ39の磁場検出可能領域を異なる磁石41が繰り返し横切ることとなる。従って磁場検出信号の強度は、時間経過に伴って上昇と下降とを繰り返す波形形状を有する。全ての磁石41が正常に配置されている場合、図8に示すように、磁場検出信号の強度は、時間経過に伴って規則正しく変化する。例えば、正常配置時の場合における磁場検出信号の強度は、時間経過に伴って略一定の周期を有する。換言すれば、ピーク間の時間間隔が一定である。また、磁場検出信号の強度は、上限閾値と下限閾値との間に限定されている。
【0034】
図9は、異常時における磁場検出信号の強度の時間変化の一例を示す図である。磁石41が正常配置時に比して磁気センサ39から離反する方向にずれている場合、磁気センサ39により検出される磁場の強度が低下し、これに起因して磁場検出信号の強度が減少する。磁場の検出位置において磁石41が正常配置時に比して磁気センサ39に接近する方向にずれている場合、磁気センサ39により検出される磁場の強度が上昇し、これに起因して磁場検出信号の強度が上昇する。また、磁石41の磁場の強度が劣化している場合、磁気センサ39により検出される磁場の強度が減少し、これに起因して磁場検出信号の強度が減少する。換言すれば、磁場検出信号の強度が上限閾値よりも上回る場合、この時点(例えば、図9の時点A)の磁場検出対象の磁石41は磁気センサ39から接近していることを意味している。磁場検出信号の強度が下限閾値よりも下回る場合、この時点(例えば、図9の時点B)の磁場検出対象の磁石41は磁気センサ39から離反している、または、磁石41の磁場の強度が劣化している、ことを意味している。
【0035】
図10は、他の異常時における磁場検出信号の強度の時間変化の一例を示す図である。磁石41が正常配置時に比して回転線速度方向にずれている場合、磁気センサ39により検出される磁場の強度の時間経過に伴うパターンが変化し、これに起因して磁場検出信号の強度の時間経過に伴うパターンが変化する。時間経過に伴うパターンの変化としては、例えば、磁場検出信号の強度のピーク間の時間間隔の変化が該当する。ピークは極小値でも良いし、極大値でもよい。図10においては、ピーク間の時間間隔として、極小値間の時間間隔Piを例示している。例えば、磁場検出信号の強度のピーク間の時間間隔Piが正常配置時に比して短い場合、この時点の磁場検出対象の磁石41が他の磁石41に接近するように回転線速度方向にずれていることを意味し、磁場検出信号の強度のピーク間の時間間隔Piが正常配置時に比して長い場合、この時点(例えば、図9の時点C)の磁石41が他の磁石41に離反するように回転線速度方向にずれていることを意味する。なお、時間経過に伴うパターンの変化としては、ピーク間の時間間隔Piのみに限定されず、磁場検出信号の強度の時間変化の周期や波形等でも良い。
【0036】
判定部5は、磁石41の配置と磁場の強度の劣化との少なくとも一方に伴う、磁場検出信号の強度と強度の時間変化パターンとの少なくとも一方の変化を利用して、磁石41の配置と磁場の強度との少なくとも一方の適否を判定する。なお、複数の磁気センサ39が設けられている場合、各磁気センサ39からの磁場検出信号に基づいて個別に判定処理が行われる。
【0037】
具体的には、判定部5は、磁石41の適否の判定期間において、磁気センサ39からの磁場検出信号の強度をモニタリングする。判定期間は、操作部7により任意に設定可能である。判定部5は、磁場検出信号の強度が予め定められた正常範囲に収まっているか否かを判定する。正常範囲は、上限閾値と下限閾値との間の範囲に規定される。上限閾値と下限閾値とは操作部7を介して任意に設定可能である。具体的には、判定部5は、磁場検出信号の強度が予め設定された上限閾値を上回るか、あるいは、下限閾値を下回るかを繰り返し判定する。磁場検出信号の強度が正常範囲を逸脱した契機として、エラー信号を出力する。エラー信号は、システム制御部9に供給される。また、判定部5は、判定期間において、磁場検出信号の強度が正常範囲を逸脱しなかった場合、判定期間の終了時に非エラー信号を出力する。非エラー信号は、システム制御部9に供給される。
【0038】
また、判定部5は、磁気センサからの磁場検出信号の強度をモニタリングし、磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱しているか否かを判定する。例えば、磁場検出信号の強度のピーク間の時間間隔が正常時のピーク間の時間間隔に基づく閾値範囲に収まっているか否かを判定する。閾値範囲は、上限値と下限値との間の範囲に規定される。上限値と下限値とは操作部7を介して任意に設定可能である。具体的には、判定部5は、磁場検出信号の強度のピーク間の時間間隔が予め設定された上限値を上回るか、あるいは、下限値を下回るか否かを繰り返し判定する。ピーク間の時間間隔が予め設定された上限値を上回る、あるいは、下限値を下回る場合、磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱したことを意味する。反対に、ピーク間の時間間隔が上限値と下限値との間にある場合、磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱していないことを意味する。
【0039】
上記のように、正常時の時間変化パターンは、磁場検出信号の強度のピーク間の時間間隔のみに限定されず、例えば、磁場検出信号の強度の波形でも良い。この場合、判定部5は、正常時の磁場検出信号の強度の典型的な波形を記憶している。磁場検出信号の強度の波形の形状が正常時の波形の形状から逸脱している場合、磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱したことを意味する。反対に、磁場検出信号の強度の波形の形状が正常時の波形の形状から逸脱している場合、磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱していないことを意味する。
【0040】
磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱したことを契機として判定部5は、エラー信号を出力する。エラー信号は、システム制御部9に供給される。また、判定部5は、判定期間において、磁場検出信号の強度の時間変化パターンが正常時の時間変化パターンから逸脱しなかった場合、判定期間の終了時に非エラー信号を出力する。非エラー信号は、システム制御部9に供給される。
【0041】
このようにして、判定部5は、磁気センサ39からの磁場検出信号に基づいて、磁石41の配置と磁石41からの磁場の強度との少なくとも一方、換言すれば、磁石41の磁場の分布と強度との少なくとも一方が適切か否かを判定することができる。
【0042】
エラー信号の供給を受けたシステム制御部9は、表示部6に異常がある旨のメッセージを表示させる。磁石の適否の判定が測定期間中に行われる場合、測定結果に異常である旨のデータフラグが付加されても良い。非エラー信号の供給を受けたシステム制御部9は、表示部に異常が無い旨のメッセージを表示させる。これによりユーザに、判定部5による判定結果を報知することができる。
【0043】
判定部5は、磁場検出信号の強度と時間変化パターンとの両方を用いて磁石の適否を判定しても良いし、磁場検出信号の強度と時間変化パターンとの何れか一方のみを用いて磁石の適否を判定しても良い。
【0044】
また、上記の説明において、複数の磁気センサ39が設けられている場合、各磁気センサ39からの磁場検出信号に基づいて個別に判定処理が行われるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、判定部5は、複数の磁気センサ39からの磁場検出信号に基づいて個別に判定処理を行い、複数の判定処理に基づいて総合的に磁石41の配置と磁石41からの磁場の強度との少なくとも一方の適否を判定しても良い。例えば、判定部5は、複数の判定処理のうち一つでも適切でないとの判定結果があれば、適切でないと判定すると良い。
【0045】
上記の説明において判定部5は、磁気センサ39により出力された全ての磁場検出信号を利用するものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。判定部5は、全ての磁場検出信号の中から特定のサンプリング期間の磁場検出信号を切り出して利用しても良い。
【0046】
図11は、磁場検出信号のサンプリング期間psについて説明するための図である。図11の縦軸は反応ディスク11の回転速度に規定され、横軸は時間に規定されている。図11に示すように、反応ディスク11は、回転と停止とを繰り返している。反応ディスク11の回転速度は設定速度Tvに一定であることが望ましい。しかし、現実的には、回転開始の直後と回転停止の直前とにおいて、設定速度Tvから逸れた速度で反応ディスク11が回転することとなる。磁場の適否の判定精度を高めるため判定部5は、回転開始時から同一のタイミングで出力された磁場検出信号を利用することが望ましい。従って、サンプリング期間psは、回転開始時trから設定時間ts経過後の一定期間に設定されると良い。例えば、サンプリング期間psは、回転速度が一定の期間、すなわち、回転開始時trから時間tss経過後から時間tse経過後までの期間に設定されると良い。なお、判定部5が磁場検出信号の強度のみを用いて磁場の適否を判定する場合、磁場検出信号のサンプリング期間は、反応ディスク11の各回転期間について期間ではなく時点であっても良い。
【0047】
以上で本実施形態に係る自動分析装置1の動作例の説明を終了する。
【0048】
上記説明の通り、自動分析装置1は、反応ディスク11、磁石41、磁気センサ39、判定部5を有している。反応ディスク11は、反応管31を保持する。磁石41は、反応管31に磁場を印加する。磁気センサ39は、磁石41から発生される磁場を検出し、検出された磁場の強度に応じた信号を出力する。判定部5は、磁気センサ39から出力された磁場検出信号に基づいて、磁石41の配置と磁石41からの磁場の強度との少なくとも一つが適正であるか否かを判定する。
【0049】
上記構成により、自動分析装置1は、磁石41の配置と磁石41からの磁場の強度との少なくとも一つが適正でないことを検出することができる。従って、ユーザは、磁石41の配置と磁石41からの磁場の強度との少なくとも一つが適正か否かを知ったうえで測定結果を参照することができる。従って測定結果の信頼性が向上する。また、適正でないと判定された場合、ユーザは、磁石41の配置を直したり、磁石41を交換したりすることができる。また、磁石41の位置ずれが放置されると、磁石41が外れたり、他の反応管31に付着したり、恒温槽内に落下したりし、装置が破損してしまう場合もある。本実施形態によれば、磁石41の位置ずれを検出することができるので、磁石41の落下を防止することもできる。
【0050】
かくして、本実施形態によれば、反応管に磁場を印加する磁場発生体が搭載された自動分析装置において、測定結果の信頼性を向上することができる。
【0051】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
1…自動分析装置、2…分析機構、3…分析機構制御部、4…解析部、5…判定部、6…表示部、7…操作部、8…記憶部、9…システム制御部、11…反応ディスク、13…サンプルディスク、15…第1試薬庫、17…第2試薬庫、19―1…サンプルアーム、19―2…第1試薬アーム、19―3…第2試薬アーム、21―1…サンプルプローブ、21―2…第1試薬プローブ、21―3…第2試薬プローブ、23…撹拌アーム、25…撹拌子、27…測光機構、29…洗浄機構、31…反応管、33…サンプル容器、35…第1試薬容器、37…第2試薬容器、39…磁場検出部(磁気センサ)、41…磁石、31f…磁石正面、210…光源、220…光検出器。
図1
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図11