特許第6143491号(P6143491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダイハツ工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6143491-車両のフロア下面構造 図000002
  • 特許6143491-車両のフロア下面構造 図000003
  • 特許6143491-車両のフロア下面構造 図000004
  • 特許6143491-車両のフロア下面構造 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143491
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両のフロア下面構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20170529BHJP
   B62D 35/02 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B62D25/20 N
   B62D35/02
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-34282(P2013-34282)
(22)【出願日】2013年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-162323(P2014-162323A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087619
【弁理士】
【氏名又は名称】下市 努
(72)【発明者】
【氏名】小西 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 保和
(72)【発明者】
【氏名】米谷 亮平
(72)【発明者】
【氏名】大坪 研太
【審査官】 森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−050780(JP,U)
【文献】 国際公開第2011/114509(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B62D 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロア下面の車輪前方部分を覆うようにアンダーカバーを配設した車両のフロア下面構造において、
前記アンダーカバーは、車両前後方向に見たとき、中央壁部と、該中央壁部の両側に設けられ、該中央壁部から車幅方向に離れるほど車両上方に位置するよう湾曲又は傾斜する側壁部とを有し、
前記中央壁部の両側に設けられた側壁部の何れか一方又は両方の前記車輪の前方に位置する部位には、車両上方に凹む凹部が形成され、
該凹部は、前記中央壁部から車幅方向外方に向かう開口と、前記中央壁部側に位置する縦面と、フロア側寄りに位置する底面とを有し、
該底面は、車両後方ほど上方に位置するよう傾斜する前底面と、該前底面の上端から車両後方ほど下方に位置するよう傾斜する後底面とを有する
ことを特徴とする車両のフロア下面構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアパネルの下面にアンダーカバーを配設した車両のフロア下面構造に関し、詳細には走行風を車輪の下方あるいは側方に導くことにより、走行風が車輪に当たるのを抑制するようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
走行風が前輪に当たるのを抑制するようにした従来構造として、前輪の前方に車両下方に突出するディフレクタを配設した構造(例えば特許文献1参照)、あるいは前輪の前方に車両上方に凹む床下カバーを配設した構造(例えば特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−55425号公報
【特許文献2】実開平01−81389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に記載の従来構造のように、ディフレクタ等の空力板を車両下方に突出させるほど走行風を車輪の下方や側方に効果的に導くことができる。しかし空力板を下方に突出させるほど車両の最低地上高が悪化するという問題があり、空力板の最適な寸法を設定するのは困難である。またディフレクタの構造が複雑であり、重量及びコストが増大し、生産性が低いという問題もある。
【0005】
また前記特許文献2に記載の従来構造のように、凹状の床下カバーを設けるだけでは走行風を車輪の下方や側方に効果的に導くのは困難である。
【0006】
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、簡単な構造で、車両の最低地上高を悪化させることなく走行風を車輪の下方又は側方に導くことができ、重量,コスト,生産性の悪化を来すこともない車両のフロア下面構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、フロア下面の車輪前方部分を覆うようにアンダーカバーを配設した車両のフロア下面構造において、
前記アンダーカバーは、車両前後方向に見たとき、中央壁部と、該中央壁部の両側に設けられ、該中央壁部から車幅方向に離れるほど車両上方に位置するよう湾曲又は傾斜する側壁部とを有し、前記中央壁部の両側に設けられた側壁部の何れか一方又は両方の前記車輪の前方に位置する部位には、車両上方に凹む凹部が形成され、該凹部は、前記中央壁部から車幅方向外方に向かう開口と、前記中央壁部側に位置する縦面と、フロア側寄りに位置する底面とを有し、該底面は、車両後方ほど上方に位置するよう傾斜する前底面と、該前底面の上端から車両後方ほど下方に位置するよう傾斜する後底面とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両のフロア下面構造によれば、アンダーカバーの中央壁部は路面との間隔が狭いので、中央壁部下方に進入した走行風は路面との間隔が広い側壁部方向に向かって左,右に分かれる。この分かれた走行風は前記側壁部に沿うように車両後方に流れ、さらに前記凹部に流入する。この凹部は、中央壁部から車幅方向外方に向かう開口と、該中央壁部側に位置する縦面と、車両後方ほど上方に位置するよう傾斜する底面を有するので、前記凹部に流入した走行風は縦面及び底面に案内されて開口から車幅方向外方に向かって流れるよう案内される。
【0009】
このように本発明では、中央壁部の下方に進入した走行風の流れを、上方に湾曲又は傾斜する側壁部で車幅方向外方に向かうよう変化させ、凹部によりさらに外方に向かうよう二段階に変化させるので、走行風を車輪の下方又は側方に効果的に流すことができ、凹部を設けるだけの簡単な構造で、車両の最低地上高を悪化させることなく、空力板を車両下方に突出するように設けた場合と同等の車輪への風当たり抑制効果を得ることができる。
【0010】
また車輪への風当たりを抑制できるので、ホイールハウス回りの空気流の整流効果が得られ、その結果、燃費を低減でき、騒音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例1によるフロア下面構造をフロアパネルの下面側から見た模式図である。
図2】前記フロア下面構造の断面正面図(図1のII-II線断面図)である。
図3】前記フロア下面構造の要部の断面側面図(図1のIII-III線断面図)である。
図4】前記フロア下面構造をフロアパネルの下面側かつ前方から見た模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0013】
図1ないし図4は本発明の実施例1に係る車両のフロア下面構造を説明するための図である。本実施例において、前,後,左,右とは、車室内側から車両前方を見た状態での前,後,左,右を意味している。
【0014】
図において、1は車体の底部であり、該底部1は、車幅方向中央部にて車両前後方向に延びるように配設されたトンネル部2と、該トンネル部2の左,右側方に配設され、車両前後方向に延びる左,右のサイドメンバ3,3と、該各サイドメンバ3のさらに車幅方向左,右側方に配設され、車両前後方向に延びる左,右のロッカメンバ4,4と、前記トンネル部2と左,右のロッカメンバ4との間の部分に張り設されたフロアパネル5とを含む構成となっている。なお、6aは前輪、6bは後輪である。
【0015】
前記トンネル部2は左,右フランジ部2a,2aを有する横断面ハット状をなしており、また前記サイドメンバ3は左,右フランジ部3a,3aを有する横断面逆ハット状をなしている。また前記ロッカメンバ4は、ロンカインナ4aとロッカアウタ4bとをフランジ結合してなる大略角筒状をなしている。前記フロアパネル5の、内フランジ5aはトンネル部2のフランジ2aに、外フランジ5bは前記ロッカインナ4aにそれぞれ結合され、またその車幅方向略中央部は前記サイドメンバ3の左,右のフランジ部3a,3aに結合されている。
【0016】
前記左,右のロッカメンバ4の前端部4cは、結合部材7により前記左,右のサイドメンバ3に結合されており、後端部4d同士は車幅方向に延びるクロス部材8により結合されている。また前記サイドメンバ3の前端部3b同士はクロス部材9により結合されている。
【0017】
そして前記左,右のロッカメンバ4とトンネル部2との間には、フロアパネル5の下面に沿って流れる走行風を整流することにより空力特性を改善する左,右のアンダーカバー10,10が配設されている。該各アンダーカバー10は、前記フロアパネル5の前記前輪6aと後輪6bとの間の部分を下方から覆うように、つまり前記後輪6bの前方に位置するように配設されている。また前記アンダーカバー10は、前記サイドメンバ3の下方を車幅方向に跨いでいる。なお、12は前記フロアパネル5の下面に配索されたブレーキパイプ等のパイプ部材であり、該パイプ部材12は所定ピッチ毎に支持ブラケット12aにより前記フロアパネル5の下面に固定支持されている。
【0018】
前記各アンダーカバー10は、発泡繊維質,あるいは不織布等により形成された樹脂製のもので、平面視で上端開口を有する略矩形箱状をなしており、前記サイドメンバ3の下方に位置する略平坦な中央壁部10aと、該中央壁部10aに続いて上向きに湾曲する内側,外側の側壁部10b,10cと、前,後壁部10d,10dとを有する。また上端開口の周囲4辺には、外側,内側フランジ部10e,10f及び前側,後側フランジ部10g,10hが外側に折り曲げ形成されている。なお、車幅方向外側辺に沿って形成された外側フランジ部10eは他のフランジ部10f〜10hより下方に段落ちさせて形成されている。
【0019】
前記アンダーカバー10の車幅方向内側辺に沿うフランジ部10fは前記トンネル部2のフランジ部2aにスタッドボルト11aにより固定され、フランジ部10eは前記ロッカインナ4aの底面にスタッドボルト11cで固定されている。
【0020】
なお、図2のみに示し、他の図では図示を省略しているが、前記アンダーカバー10の中央壁部10aには、複数組のリブ10i,10iが前開きとなるように、かつ前記サイドメンバ3の底壁下面3cに当接するよう上方に突出形成されており、また該両リブ10i,10iの後端部間には水抜き孔10jが形成されている。前記リブ10i,10iはアンダーカバー10内に進入した雨水等を走行風により前記水抜き孔10jに導き排水するためのものである。
【0021】
そして前記アンダーカバー10の外側の側壁部10cの、前記後輪6bの前方かつ該後輪6b寄りの部分には、凹部13が車両上方に凹むように形成されている。この凹部13は、前記中央壁部10aから車幅方向外方に向かう開口13aと、該中央壁部10a側に位置する縦面13bと、フロアパネル5側寄りに位置する底面13cとを有し、前記開口13aの外側縁部が前記後輪6bの車幅方向中心付近に位置するように配置されている。
【0022】
前記縦面13bは、上端部が下端部より外側に位置するように少し傾斜している。また前記底面13cは、車両後方ほど上方に位置するよう傾斜する前底面13dと、該前底面13d の上端から車両後方ほど下方に位置するように傾斜する後底面13eとを有する。図3に示すように、車幅方向内側から見たとき、前記底面13cはへ字形状をなしており、また前記開口13aは略三角形状をなしている。
【0023】
本実施例1による車両のフロア下面構造によれば、アンダーカバー10の中央壁部10aは路面Gとの間隔が狭いので、該中央壁部10aの下方に進入した走行風Aは路面Gとの間隔が広い側壁部10b,10c方向に向かって左,右に分かれる。この分かれた走行風A1,A2は該側壁部10b,10cに沿うように車両後方に流れ、走行風A2の一部はさらに前記凹部13に流入する。この凹部13は、中央壁部10aから車幅方向外方に向かう開口13aと、該中央壁部10a側に位置する縦面13bと、車両後方ほど上方に位置するよう傾斜した後さらに下方に傾斜する底面13cを有するので、該凹部13内に流入した走行風は、前記縦面13b及び底面13cに案内されて開口13aから車幅方向外方に向かう流れA3となる。
【0024】
このように本発明では、中央壁部10aの下方に進入した走行風Aの流れを、上方に湾曲する側壁部10b,10cで車幅方向外方に向かうよう変化させ、凹部13によりさらに外方に向かうよう二段階に変化させるように構成したので、車両の最低地上高を悪化させることなく、空力板を車両下方に突出するように設けた場合と同等の車輪への風当たり抑制効果を得ることができる。また後輪6bへの風当たりを抑制できるので、ホイールハウス回りの空気流の整流効果が得られ、その結果、燃費を低減でき、騒音を抑制できる。
【0025】
また、本実施例では、凹部13を、開口13aの外側縁が後輪6bの車幅方向中心と略一致するように外側に寄せて配置しているので、前記風当たり抑制効果がより一層得られる。
【0026】
本実施例では、凹部13を設けるだけの簡単な構造で前記作用効果を実現できるので、車両重量やコストが増加したり、生産性が悪化したりすることもない。
【0027】
なお、前記実施例では、アンダーカバー10の側壁部が上方に湾曲している場合を説明したが、本発明の側壁部は外側ほど上方に位置するよう傾斜しているものであっても勿論構わない。また前記実施例では、中央壁部が平坦面をなす場合を説明したが、本発明の中央壁部は湾曲あるいは傾斜していても良い。
【0028】
また前記実施例では、車幅方向外側の側壁部のみに凹部を形成したが、該凹部を内側の側壁部にも形成しても良い。
【0029】
さらにまた、前記実施例では、本発明を後輪に適用したが、本発明は前輪に適用することも、あるいは両方に適用することもできる。
【符号の説明】
【0030】
5 フロアパネル
6b 後輪
10 アンダーカバー
10a 中央壁部
10c 側壁部
13 凹部
13a 開口
13b 縦面
13c 底面
図1
図2
図3
図4