(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記同期機が、前記複数の直列接続風車群の個々の出力端に接続される複数の三相巻線を有し、前記複数の三相巻線が、同一の鉄心に位相をずらして設置されることを特徴とする、請求項1または2に記載の風力発電システム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る風力発電システムの実施形態について説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0014】
まず
図1、2を参照して、本発明の一実施形態に係る風力発電システム1の構成を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る風力発電システムの概略構成を示す機能ブロック図であり、
図2は、
図1中の直列接続風車群の構成を示す模式図である。
【0015】
本実施形態の風力発電システム1は、風力発電機の出力を一旦コンバータで直流電力に変換し、インバータにより再度一定の電圧及び周波数の交流電力に変換して、三相負荷または電力系統などの出力先(以下では単に「負荷」とも表記する)に供給するDCリンク方式の風力発電システムである。
図1に示すように、風力発電システム1は、複数のk組の風力発電ユニット100−1〜100−kを電気的に並列接続して構成され、各風力発電ユニット100−1〜100−kから出力された交流電力を合成して負荷に出力することができる。以降では、風力発電システム1が負荷に出力する電力の電圧を「負荷電圧」、電流を「負荷電流」とも表記する。
【0016】
風力発電ユニット100−1〜100−kは、
図1に示すように、直列接続風車群10−1〜10−k、波形改善リアクトル20−1〜20−k(波形改善手段)、位相整合回路30−1〜30−k(位相整合手段)を有する。ここで、風力発電ユニットとその構成要素の符号に付された添え字1〜kは、k組の風力発電ユニット100−1〜100−kのそれぞれに割り当てられた番号であり、kは2以上の整数である。つまり、直列接続風車群、波形改善リアクトル、位相整合回路は、符号の添え字が同一の風力発電ユニットに1つずつ含まれる。例えば、k番目の風力発電ユニット100−kは、直列接続風車群10−k、波形改善リアクトル20−k、位相整合回路30−kを有する。また、風力発電システム1は、単一の同期発電機40(同期機)を備え、この同期発電機40を風力発電ユニット100−1〜100−kのそれぞれに接続する構成をとる。
【0017】
直列接続風車群10−1〜10−kは、風力発電を行うための複数の発電用風車を有し、これらの風車を電気的に直列接続して構成される。直列接続風車群10−1〜10−kは、これらの電気的に直列接続された発電用風車により生成された交流電力を合成して出力する。つまり、風力発電システム1は、電気的に直列接続された風車群を複数組備え、これらの複数組の風車群からの出力電力を合成して出力するものである。
【0018】
図2に示すように、直列接続風車群10−1〜10−kのそれぞれは、直列接続された複数の発電用風車11−1〜11−n(以降では、単に「風車」とも標記する)と、これらの風車11−1〜11−nからそれぞれ出力される直流電力の直列和を入力し、その直列和を交流電力に変換する変換ユニット16と、当該直列接続風車群10−1〜10−kの動作を制御するコントローラ17とを有する。
【0019】
複数の風車11−1〜11−nのそれぞれは、風力W
d1〜W
dnに応じて回転エネルギを発生させる風力タービン12−1〜12−nと、その風力タービン12−1〜12−nで発生した回転エネルギに応じて交流電力を発生させる風力発電機13−1〜13−nと、その風力発電機13−1〜13−nで発生した交流電力を直流電力に変換するコンバータ14−1〜14−nと、風力タービン12−1〜12−nを回転させる風力W
d1〜W
dnの風速V
wind1〜V
windnを測定する風速計18−1〜18−nと、を有する。
【0020】
ここで、複数の風車とその構成要素の符号に付された添え字1〜nは、n台の風車11−1〜11−nのそれぞれに割り当てられた番号であり、nは2以上の整数である。つまり、風力タービン、風力発電機、コンバータ、風速計は、符号の添え字が同一の風車に1つずつ含まれる。例えば、n番目の風車11−nは、風力タービン12−n、風力発電機13−n、コンバータ14−n、風速計18−nを有する。なお、直列接続風車群10−1〜10−kのそれぞれが有する複数の風車11−1〜11−nの台数nは、各風車群ごとに異なるものであってもよい。
【0021】
風力タービン12−1〜12−nは、風の持つ運動エネルギを回転エネルギに変換し、風力発電機13−1〜13−nをそれぞれ駆動する。具体的には、風力タービン12−1〜12−nの回転軸に風力発電機13−1〜13−nが機械的に接続され、風力発電機13−1〜13−nは風力W
d1〜W
dnに応じて電力をコンバータ14−1〜14−nに出力する。
【0022】
風力発電機13−1〜13−nには、永久磁石同期発電機(PMSG)や巻線界磁形同期発電機等の同期発電機が採用可能である。例えば、PMSGは界磁励磁のための電源回路が不要であり、構造が簡単で保守が容易であるため、本実施形態に好適である。
【0023】
コンバータ14−1〜14−nには、例えばサイリスタコンバータが採用可能である。ただし、サイリスタコンバータ以外のコンバータであっても、外部からの信号によって出力電圧V
d1〜V
dnを制御可能な、自己消弧型素子を用いた電流型コンバータであれば、コンバータ14−1〜14−nに採用可能である。出力電圧V
d1〜V
dnを制御するためにコンバータ14−1〜14−nの外部から調整可能なパラメータを、以下において「コンバータパラメータ」という。
【0024】
コンバータ14−1〜14−nにサイリスタコンバータを採用した場合は、コンバータ14−1〜14−nの各制御角を調整することにより、出力電圧V
d1〜V
dnが制御される。つまり、制御角がコンバータ14−1〜14−nのコンバータパラメータである。コンバータ14−1〜14−nに絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)や電界効果トランジスタ(FET)を用いた場合には、ゲート電圧を調整することにより、コンバータ14−1〜14−nの出力が制御される。
【0025】
図2に示すように、風車11−1〜11−nの出力端は直列接続される。そして、風車11−1〜11−nがそれぞれ出力する直流電力の直列和が、直流送電線15を介して、変換ユニット16に送られる。ここで、風車11−1〜11−nから変換ユニット16に送られる直流電流(以下において、「DCリンク電流」という)をI
dとする。また、風車11−1〜11−nの出力電圧和(以下において、「DCリンク電圧」という)V
dは、V
d=V
d1+V
d2+・・・+V
dnである。
【0026】
変換ユニット16は、複数の風車11−1〜11−nのコンバータ14−1〜14−nがそれぞれ出力した直流電力の直列和を交流電力に変換して出力する。
図2に示した変換ユニット16は、直流リアクトル16aとインバータ16bとを有する。直流リアクトル16aは、風車11−1〜11−nから送られた直流電流を平滑化する。
図2に示した例では、直流リアクトル16aはインダクタLdから成る構成を示しているが、他の構成としてもよい。
【0027】
インバータ16bは、直流リアクトル16aによって平滑化された直流電流を交流電流に変換する。インバータ16bには、例えば他励式サイリスタインバータが採用可能である。ただし、サイリスタインバータ以外のインバータであっても、外部からの信号によって入力電圧E
dを制御可能な、自己消弧型素子を用いた電流型インバータであれば、インバータ16bに採用可能である。入力電圧E
dを制御するための、インバータ16bの外部から調整可能なパラメータを、以下において「インバータパラメータ」という。インバータ16bにサイリスタインバータを採用した場合は、制御進み角を調整することにより、入力電圧E
dが制御される。つまり、制御進み角がインバータ16bのインバータパラメータである。
【0028】
変換ユニット16により出力された交流電力は、波形改善リアクトル20−1〜20−kに入力される。なお、変換ユニット16が出力する交流電力、すなわち直列接続風車群10−1〜10−kが出力する交流電力のうちの交流電流を、以下では「インバータ出力電流i
inv#1〜k」とも表記する。なお、本実施形態では、インバータ16bは電流形であるため、インバータ出力電流はほぼ方形波形状となる(
図5参照)。
【0029】
コントローラ17は、複数の風車11−1〜11−nの風速計18−1〜18−nが測定する風速V
wind1〜V
windnをそれぞれ監視し、風速V
wind1〜V
windnに応じて、コンバータ14−1〜14−nそれぞれの出力電圧V
d1〜V
dn及びインバータ16bの入力電圧E
dをリアルタイムに制御する。コントローラ17は、風速V
wind1〜V
windnに応じて、コンバータ14−1〜14−nの出力電圧V
d1〜V
dnを調整するコンバータパラメータを変更するコンバータ出力制御信号をコンバータ14−1〜14−nにそれぞれ出力する。更に、コントローラ17は、風速V
wind1〜V
windnに応じて、インバータ16bの入力電圧E
dを調整するインバータパラメータを変更するインバータ制御信号をインバータ16bに出力する。
【0030】
本実施形態では、コンバータ14−1〜14−nにサイリスタコンバータを採用し、インバータ16aにサイリスタインバータを採用した場合を説明する。つまり、コントローラ17は、風速計18−1〜18−nの各測定値である風速V
wind1〜V
windnに応じてコンバータ14−1〜14−nの各制御角α
1〜α
nをリアルタイムに制御する。そして、コントローラ17は、風速V
wind1〜V
windnに応じてインバータ16bの制御進み角γをリアルタイムに制御する。制御角α
1〜α
n及び制御進み角γの設定方法の詳細は後述する。
【0031】
図1に戻り、波形改善リアクトル20−1〜20−kは、直列接続風車群10−1〜10−kの各出力端に接続されている。
図1に示した例では、波形改善リアクトル20−1〜20−kのそれぞれは、直列接続風車群10−1〜10−kの各出力端に直列に接続された2つのコイルを有する。両コイルは、同一鉄心上に図示の極性で巻装されている。
【0032】
波形改善リアクトル20−1〜20−kは、2つのコイルの自己インダクタンスと、両コイル間の相互インダクタンスを適切に選定することにより、同期発電機40の初期過渡インダクタンスを等価的に打ち消すことができる。この結果、直列接続風車群10−1〜10−kの各インバータ16bのサイリスタの転流時に発生する出力電圧の跳躍や陥没などの歪みを本質的に除去することができ、これにより、常に高品質の電力を出力することができる。
【0033】
また、波形改善リアクトル20−1〜20−kの両コイルの直列接続点が、同期発電機40と直接接続されている。この接続により、波形改善リアクトル20−1〜20−kは、直列接続風車群10−1〜10−kが出力する交流電力と、同期発電機40が出力する電力とを合成した電力を出力する。
【0034】
同期発電機40は、上述のように、波形改善リアクトル20−1〜20−kのそれぞれにおいて両コイル間の直列接続点に接続されている。本実施形態において、同期発電機40は、風力発電ユニット100−1〜100−k(直列接続風車群10−1〜10−k)の組数に応じた相数を有し、具体的には3×k相の相数を有する。すなわち同期発電機40の電機子巻線は、k組の三相巻線により構成される。k組の三相巻線は、風力発電ユニット100−1〜100−kのいずれかに個別に割り当てられている。k組の三相巻線のそれぞれは、割り当てられた風力発電ユニット100−1〜100−kにおいて、波形改善リアクトル20−1〜20−kを介して、直列接続風車群10−1〜10−kの出力(すなわちインバータ16b)に接続されている。
【0035】
同期発電機40は、図示しない原動機により駆動され、交流電力を出力する。同期発電機40は、風力発電システム1の出力先の負荷が要求する有効電力のうち、直列接続風車群10−1〜10−kからの出力で賄うことのできない不足分の有効電力を供給する。また、同期発電機40は、直列接続風車群10−1〜10−kの各インバータ16bのサイリスタの転流と、風力発電システム1の出力先の負荷とが必要とする無効電力を供給する役割を担う。
【0036】
本実施形態の同期発電機40は単一の装置であるので、k組の三相巻線、すなわち3×k相分の電機子巻線は全て同一の鉄心に設置される。本実施形態の同期発電機40では、3×k相の電機子巻線のそれぞれが、同一の鉄心にそれぞれが360/(3×k)度間隔で配置されている。ここで、一般に、一組の三相巻線の各相の電機子巻線は、360/3=120度の間隔で配置される。すなわち、同期発電機40の電機子巻線は、複数のk組の三相巻線が、360/(3×k)度ずつ位相をずらして配置された状態と等価である。例えばk=4の場合、風力発電ユニットは4組であり、同期発電機40が12相であるので、各相の電機子巻線は360/(3×4)=30度の間隔で配置されており、4組の三相巻線が30度ずつ順番に位相をずらして配置されることになる。
【0037】
位相整合回路30−1〜30−kは、波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力端と、各風力発電ユニット100−1〜100−kの出力端との間に配置されている。位相整合回路30−1〜30−kは、波形改善リアクトル20−1〜20−kからの出力、すなわち、直列接続風車群10−1〜10−kの出力と同期発電機40からの出力を合成した電力について、各風力発電ユニット100−1〜100−k間の電圧の位相差を解消することにより、風力発電ユニット100−1〜100−kの出力電圧の位相を揃える。
【0038】
各直列接続風車群10−1〜10−kから出力された交流電圧は、波形改善リアクトル20−1〜20−kの作用により、正弦波状に調整される。上述の通り、本実施形態の同期発電機40では、各風力発電ユニット100−1〜100−kに割り当てられたk組の三相巻線は、同一の鉄心上に360/(3×k)度ずつ位相をずらして設置されるため、各組の三相巻線から発生して各風力発電ユニット100−1〜100−kへ送られる電圧には、必ず同期発電機の三相巻線同士の位相ずれに対応する360/(3×k)度の位相差が生じる。このため、各風力発電ユニット100−1〜100−k間において、波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力にも必ず同様の位相差が発生する。
【0039】
位相整合回路30−1〜30−kは、例えば同期発電機40の三相巻線同士の位相差に基づいて、これらの位相差を解消するよう動作する。位相整合回路30−1〜30−kは、例えば三相変圧器を適用し、結線方式、巻数比、相順の組み合わせを適宜設定することで、風力発電ユニット100−1〜100−k間の位相差を解消する機能を実現できる。また、位相整合回路30−1〜30−kは、インバータを適用し、周波数を変えずに位相を変えることでも上記の機能を実現可能である。
【0040】
次に、本実施形態に係る風力発電システム1の動作を説明する。
【0041】
まず、
図1に示す各風力発電ユニット100−1〜100−kの直列接続風車群10−1〜10−kにおいて、
図2に示す複数の風車11−1〜11−nのそれぞれにより風力発電が行われ、交流電力が生成される。直列接続風車群10−1〜10−kは、複数の風車11−1〜11−nで生成された交流電力を合成して、三相交流電力を波形改善リアクトル20−1〜20−kに出力する。
【0042】
ここで、上述した直列接続風車群10−1〜10−kの動作の詳細を説明する。まずは、
図3を参照して、直列接続風車群10−1〜10−kの各風車11−1〜11−nの出力電圧V
d1〜V
dnについて説明する。
図3は、
図2中の各風車の動作を説明するための模式図である。以下では、風車11−1〜11−nを代表して風車11−1について説明するが、他の風車11−2〜11−nも風車11−1と同様である。
【0043】
図3に示した例では、風車11−1の風力タービン12−1が、半径R
rotor、ピッチ角βのブレード12a−1を有する。また、風力発電機13−1としてPMSGを採用する。
【0044】
風力タービン12−1に流入する風力W
d1が風速V
wind1の場合に、この風車11−1の出力P
t1は、以下の(1)式で表される。
P
t1=(Cp×ρ×A
W×V
wind13)/2=V
d1×I
d ・・・(1)
ここで、Cpは風力タービン12−1が風力を機械出力に変換する割合を示す出力係数であり、A
Wは風力タービン12−1の受風面積であり、ρは空気密度である。
【0045】
出力係数Cpは、周速比λとブレード12a−1のピッチ角βの関数として表され、最大効率が得られる周速比λが存在することが知られている。周速比λは、ブレード先端の周速度と風速との比であり、風力タービン12−1の回転角速度ω
1とすると、周速比λは以下の(2)式で表される。
λ=ω
1×R
rotor/V
wind1 ・・・(2)
【0046】
風力タービン12−1を効率良く運転するためには、なるべく大きな出力係数Cpが得られる一定の周速比λを動作点として風力タービン12−1を運転することが望ましい。このため、風力エネルギを有効に抽出・変換することを目的として、例えば、風速変動に関わらず出力係数Cp(効率に相当)が最大となる周速比λを維持するように、風力タービン12−1の回転数を操作する変速制御運転法が採用される。
図2に示した風車群10−1〜10−kは、直流送電線15を有するため、コンバータ14−1の出力に依存せずに、独立して風力タービン12−1の周波数を制御できるという利点がある。
【0047】
周速比λ及び出力係数Cpが一定という条件において風力タービン12−1を運転すると、風力発電機13−1の出力電圧の大きさは風速V
wind1にほぼ比例する。風力発電機13−1としてPMSGを使用しているので、コンバータ14−1の出力電圧V
d1は、風力発電機13−1の回転角速度にほぼ比例する。出力電圧V
d1と風力発電機13−1の回転角速度との比例係数(発電機定数)をKdとすると、出力電圧V
d1は以下の(3)式で表される。
V
d1=Kd×ω
1×cosα
1
=(Kd×λ/R
rotor)×V
wind1×cosα
1 ・・・(3)
ここで、α
1はコンバータ14−1の制御角である。
【0048】
上記では、風車11−1の出力電圧V
d1について説明したが、他の風車11−2〜11−nの出力電圧V
d2〜V
dnについても出力電圧V
d1と同様に式(3)で表される。
【0049】
次に、
図2を参照して直列接続風車群10−1〜10−kの動作を説明する。風力タービン12−1〜12−nにそれぞれ流入する風力W
d1〜W
dnの風速V
wind1〜V
windnが風速計18−1〜18−nによって測定される。測定された風速V
wind1〜V
windnの情報は、風速計18−1〜18−nからコントローラ17に送られる。
【0050】
コントローラ17は、風速V
wind1〜V
windnのうちの最大風速V
WMAXを選択する。つまり、V
WMAX=max(V
wind1、V
wind2、・・・、V
windn)である。以下において、最大風速V
WMAXが測定された風車11−mを「最大風速風車」という(1≦m≦n)。最大風速風車11−mのコンバータ14−mの制御角α
mを、コンバータ14−mの出力電圧V
dmが最大になるように、例えば0(deg)とする。式(1)〜式(3)を用いて、最大風速風車11−mの出力P
tm、出力電圧V
dm、及び出力電流であるDCリンク電流I
dは、それぞれ以下の式(4)〜式(6)で表される。
P
tm=(Cp×ρ×A
W×V
WMAX3)/2 ・・・(4)
V
dm=(Kd×λ)/R
rotor×V
WMAX ・・・(5)
I
d=P
tm/V
dm
=(Cp×ρ×A
W×R
rotor×V
WMAX2)/(2×Kd×λ)
・・・(6)
【0051】
風車11−1〜11−nの出力の総和である総出力P
tTotal、及びDCリンク電圧V
dは、それぞれ以下の式(7)〜式(8)で表される。
P
tTotal={Cp×ρ×A
W×Σ(V
windi3)}/2 ・・・(7)
V
d=P
tTotal/I
d ・・・(8)
式(7)で、Σはi=1〜nまでの和を意味する。
【0052】
インバータ16bがサイリスタインバータである場合、インバータ16bの直流側入力電圧である入力電圧E
d、交流側出力電圧である出力(線間)電圧Va、制御進み角γの関係は、以下の式(9)で表される。
E
d=3×2
1/2/π×Va×cosγ ・・・(9)
【0053】
このとき、DCリンク電流I
dは、以下の式(10)で表される。
I
d=(V
d−E
d)/Rd
={V
d−(3×2
1/2/π×Va×cosγ)}/Rd ・・・(10)
【0054】
ここで、変換ユニット16が出力する交流出力の線間電圧(実効値)について予め設定された交流電力の電圧(以下において「設定出力電圧」という)がV
l−lであるとする。コントローラ17は、変換ユニット16の交流側出力が設定出力電圧V
l−lで安定するように、以下の式(11)を用いて制御進み角γを調整する。
γ=cos
−1{π(V
d−I
d×Rd)/(3×2
1/2×V
l−l)}
・・・(11)
コントローラ17は、式(11)を用いて算出した制御進み角γを、インバータ16bに送信する。
【0055】
上記のように、コントローラ17は、最大風速風車11−mの出力電流であるDCリンク電流I
dと設定出力電圧V
l−lとを用いて、インバータ16bの入力電圧E
dを制御する。これにより、直列接続風車群10−1〜10−kから出力される交流電圧の実効値は、設定出力電圧V
l−lで安定する。
【0056】
更に、コントローラ17は、最大風速風車11−m以外の風車11−1〜11−nのコンバータ14−1〜14−nの制御角α
1〜α
nを調整する。以下の説明において、最大風速風車11−m以外の風車11−1〜11−nを風車11−jで示す。風車11−jの出力P
tj及び出力電圧V
djは、それぞれ以下の式(12)〜式(13)で表される。
P
tj=(Cp×ρ×A
W×V
windj3)/2 ・・・(12)
V
dj=(Kd×λ)/R
rotor×V
windj×cosα
j ・・・(13)
【0057】
風車11−1〜11−nの出力電流はDCリンク電流I
dで共通であり、式(6)の値になるように制御される。このため、以下の式(14)が成立する。
P
tj/P
tm=V
dj/V
dm=V
windj3/V
windm3
=V
windj×cosα
j/V
WMAX ・・・(14)
【0058】
式(14)から、コントローラ17は、以下の式(15)を用いて制御角α
jを調整す
る。
α
j=cos
−1(V
windj2/V
WMAX2) ・・・(15)
コントローラ17は、式(15)を用いて算出した制御角α
1〜α
nをコンバータ14−1〜14−nに送信する。
【0059】
上記のように、コントローラ17は、最大風速風車11−m以外の風車11−1〜11−nの出力する各出力電流がDCリンク電流I
dと同一になるように、コンバータ14−1〜14−nそれぞれの出力電圧V
d1〜V
dnを制御する。このように、直列接続風車群10−1〜10−kは、最大風速風車11−mの出力から定まるDCリンク電流I
dを用いて風車11−1〜11−nの負荷分担率を算出し、制御角α
1〜α
nを設定することにより、風車11−1〜11−nの出力電圧V
d1〜V
dnを制御する。
【0060】
なお、DCリンク電圧V
dは式(16)で表され、式(16)の値は式(8)の値と等しい。
V
d=Kd×λ/R
rotor×Σ(V
windi×cosα
i)}
・・・(16)
【0061】
以上に説明したように、
図2に示した直列接続風車群10−1〜10−kによれば、複数の風車11−1〜11−nのそれぞれにおいて測定された風速V
wind1〜V
windnを用いてコンバータ14−1〜14−nの制御角α
1〜α
n、及びインバータ16bの制御進み角γを調整する。コンバータ14−1〜14−nの制御角α
1〜α
nの調整により、風車11−1〜11−nが出力する各出力電流をDCリンク電流I
dに統一することができる。インバータ16bの制御進み角γの調整により、すべての直列接続風車群10−1〜10−kから出力される三相交流電力の交流電圧を、その実効値が設定出力電圧V
l−lとなるよう統一することができる。なお、直列接続風車群10−1〜10−kから出力される三相交流電力の交流電流(インバータ出力電流)はすべて方形波となるが、これらの交流電流の振幅や位相は、上記のように各直列接続風車群10−1〜10−kごとに調整される制御進み角γの大きさに応じて個別に決まる。
【0062】
以上が直列接続風車群10−1〜10−kの動作説明である。なお、以降では、
図1に示す風力発電システム1の動作説明に併せて、
図4〜10を参照して、この風力発電システム1に従ったシミュレーションの結果も挙げて説明する。
【0063】
図4は、
図1に示す風力発電システム1に基づくシミュレーションの構成図である。
図4に示すように、本シミュレーションでは、風力発電システム1は4組の風力発電ユニット100−1〜100−4を有する構成とした(k=4)。風力発電システム1は、相数を3φ(三相)、定格電圧を200/√3(V)、定格周波数を50(Hz)とした。
【0064】
直列接続風車群10−1〜10−4は、それぞれの出力を2.273、2.668、3.068、3.434(kW)、制御進み角γを25、30、35、40(°)と設定し、これらのパラメータに対応した振幅及び位相となる方形波状のインバータ出力電流i
inv#1,i
inv#2,i
inv#3,i
inv#4を出力する構成とした。以下ではこれらのインバータ出力電流i
inv#1,i
inv#2,i
inv#3,i
inv#4を纏めて「インバータ出力電流i
inv」とも表記する。
【0065】
同期発電機40は、3×4=12相を有し、4組の風力発電ユニット100−1〜100−4にそれぞれ割り当てられる4組の三相巻線が、それぞれ360/(3×4)=30(°)ずつ位相をずらして配置される構成とした。4組の三相巻線の誘導起電力SG
emf#1,SG
emf#2,SG
emf#3,SG
emf#4は、周波数を50(Hz)、相電圧を200/√3(V)とした。以下では、これらの誘導起電力SG
emf#1,SG
emf#2,SG
emf#3,SG
emf#4を纏めて「同期発電機起電力SG
emf」とも表記する。
【0066】
位相整合回路30−1〜30−4は、各風力発電ユニット100−1〜100−4間の30度の位相差を解消し、風力発電ユニット100−1〜100−4の出力電力の位相を一致させるための構成として、
図4に示す三相変圧器を適用した。具体的には、
図4に示すように、風力発電ユニット100−1の位相整合回路30−1は、結線方式をデルタ・デルタ結線、巻数比を1:1、一次側の相順をA−B−C、二次側の相順をa−b−cとした。風力発電ユニット100−2の位相整合回路30−2は、結線方式をデルタ・スター結線、巻数比を1.73:1、一次側の相順をA−B−C、二次側の相順をa−b−cとした。風力発電ユニット100−3の位相整合回路30−3は、結線方式をデルタ・デルタ結線、巻数比を1:1、一次側の相順をC−A−B、二次側は相順をa−b−cとしたうえで極性を反転した。風力発電ユニット100−4の位相整合回路30−4は、結線方式をデルタ・スター結線、巻数比を1.73:1、一次側の相順をA−C−B、二次側の相順をb−a−cとした。また、位相整合回路30−1〜30−4では、三相変圧器の出力側にそれぞれ0.1(Ω)の抵抗と、10(μH)のコイルを設けた。
【0067】
その他、
図4のシミュレーションでは、同期発電機40から波形改善リアクトル20−1〜20−4に流れる電機子電流をそれぞれi
SG#1,i
SG#2,i
SG#3,i
SG#4と表記し、以下ではこれらを纏めて「SG電機子電流i
SG」とも表記する。また、
図4では、波形改善リアクトル20−1〜20−4から出力される交流電流をi
out#1,i
out#2,i
out#3,i
out#4と表記し、以下ではこれらを纏めて「波形改善リアクトル出力電流i
out」とも表記する。また、
図4では、風力発電システム1が負荷に出力する負荷電圧及び負荷電流をそれぞれv
OutTotal,i
OutTotalと表記する。
【0068】
図1に示す風力発電システム1の動作説明に戻る。直列接続風車群10−1〜10−kから出力された電力は波形改善リアクトル20−1〜20−kに入力される。波形改善リアクトル20−1〜20−kは、直列接続風車群10−1〜10−kからの出力電圧の高調波分を除去する。
【0069】
図5は、
図4のシミュレーションにおける直列接続風車群10−1〜10−4の出力電力の電流(インバータ出力電流i
inv)の波形の一例を示す図である。
図5の縦軸はインバータ出力電流i
inv(A)を示し、横軸は時間(ms)を示す。
図5には、実線のグラフAと、破線のグラフBが図示されている。グラフAは、風力発電ユニット100−1の三相のうちa相におけるインバータ出力電流i
invの時間推移を示し、グラフBは、風力発電ユニット100−2の三相のうちa相におけるインバータ出力電流i
invの時間推移を示す。
図5のグラフA,Bに一例を示すように、各直列接続風車群10−1〜10−4から出力されるインバータ出力電流i
invは、インバータ16bが電流型のため、ほぼ方形波となる。また、
図4のシミュレーションでは、各直列接続風車群10−1〜10−4のそれぞれの制御進み角γを異なる値に設定したので、直列接続風車群10−1〜10−4のインバータ出力電流i
invの波形は振幅及び位相が相違している。
【0070】
なお、以降の
図6〜8においても、
図5と同様に風力発電ユニット100−1の三相のうちa相に関する情報の時間推移をグラフAとして、また、風力発電ユニット100−2の三相のうちa相に関する情報の時間推移をグラフBとして、
図4のシミュレーション結果の一部を例示している。
【0071】
図1に戻り、同期発電機40では、界磁巻線に励磁電流(界磁電流)が供給されて、この励磁電流による磁束により、各相の電機子巻線に誘導起電力が発生する。本実施形態では、上記のように、同期発電機40の各相の電機子巻線は所定間隔で同一の鉄心に設置されているので、各電機子巻線に発生する誘導起電力は、電機子巻線の間隔に基づく位相差分だけずれたものとなる。つまり、風力発電ユニット100−1〜100−kにそれぞれ割り当てられたk組の三相巻線では、それぞれ他の組と360/(3×k)度ずつ位相がずれた誘導起電力が発生する。なお、誘導起電力の振幅は、励磁電流を制御することにより制御することができる。
【0072】
図6は、
図4のシミュレーション結果における同期発電機40に発生した誘導起電力(同期発電機起電力SG
emf)の波形の一例を示す図である。
図6の縦軸は同期発電機起電力SG
emf(V)を示し、横軸は時間(ms)を示す。
図6においても、
図5と同様に、風力発電ユニット100−1の三相のうちa相に接続される電機子巻線に発生する誘導起電力SG
emfの時間推移をグラフAとして図示し、風力発電ユニット100−2の三相のうちa相に接続される電機子巻線に発生する誘導起電力SG
emfの時間推移をグラフBとして図示している。
図6のグラフA,Bに一例を示すように、各相の誘導起電力SG
emfは、すべて相電圧が200/√3(V)、周波数が50(Hz)となるよう生成されている。また、上述のとおり4組の風力発電ユニット100−1〜100−4にそれぞれ割り当てられる4組の三相巻線は、それぞれ30(°)の位相差をつけて配置されるので、
図6に示すように、風力発電ユニット100−1及び風力発電ユニット100−2の誘導起電力SG
emfには30(°)の位相差が生じている。
【0073】
図1に戻り、波形改善リアクトル20−1〜20−kは、同期発電機40の初期過渡インダクタンスを打ち消すように設計すると、インバータ16bの転流による電圧の跳躍/陥没を完全に除去することができるので、波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力側の電圧・電流波形は正弦波状になる。したがって、同期発電機40の電機子電流は、波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力電流の正弦波と、インバータ出力電流の方形波との差分となるように自動的に生成される。
【0074】
図7は、
図4のシミュレーション結果における同期発電機40から出力された電機子電流(SG電機子電流i
SG)の波形の一例を示す図である。
図7の縦軸はSG電機子電流i
SG(A)を示し、横軸は時間(ms)を示す。
図7においても、
図5,6と同様に、風力発電ユニット100−1の三相のうちa相に接続される電機子巻線に発生する電機子電流i
SGの時間推移をグラフAとして図示し、風力発電ユニット100−2の三相のうちa相に接続される電機子巻線に発生する電機子電流i
SGの時間推移をグラフBとして図示している。
図7のグラフA,Bに一例を示すように、電機子電流i
SGは、波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力電流i
outの正弦波と、インバータ出力電流i
invの方形波との差分となるため、インバータ出力電流i
invの高調波電流を打ち消すように生成される。
図7のグラフAを
図5のグラフAと比較すると、例えば時刻tにおいて、方形波状のインバータ出力電流i
invがステップ状に0まで減少するのに応じて、電機子電流i
SGはこのインバータ出力電流i
invの変動分を相殺するようにステップ状に増加している。インバータ出力電流i
invがステップ状に変化する他のタイミングでも電機子電流は時刻tと同様の挙動をとっている。
【0075】
図1に戻り、波形改善リアクトル20−1〜20−kは、直列接続風車群10−1〜10−kの出力と、同期発電機40からの出力とを合成した交流電力を位相整合回路30−1〜30−kに出力する。
【0076】
図8は、
図4のシミュレーション結果における波形改善リアクトル20−1〜20−kからの出力電流(波形改善リアクトル出力電流i
out)の波形の一例を示す図である。
図8の縦軸は波形改善リアクトル出力電流i
out(A)を示し、横軸は時間(ms)を示す。
図8においても、
図5〜7と同様に、グラフAは、風力発電ユニット100−1の三相のうちa相における波形改善リアクトル出力電流i
outの時間推移を示し、グラフBは、風力発電ユニット100−2の三相のうちa相における波形改善リアクトル出力電流i
outの時間推移を示す。
図8のグラフA,Bに一例を示すように、波形改善リアクトル出力電流i
outは、インバータ出力電流i
invとSG電機子電流i
SGとを合成したことで、正弦波状の波形として出力される。また、
図8に示すように、風力発電ユニット100−1の波形改善リアクトル出力電流i
outと風力発電ユニット100−2の波形改善リアクトル出力電流i
outとの間では、同期発電機40による三相巻線間の位相差の影響によって30(°)の位相差が生じている。
【0077】
図1に戻り、同期発電機40の誘導起電力は三相巻線同士の位相差をもつため、波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力電圧にも同様の位相差がある。位相整合回路30−1〜30−kは、これらの位相差を解消するよう動作し、波形改善リアクトル20−1〜20−kから出力された電圧の位相が揃えられる。
【0078】
位相整合回路30−1〜30−kにより電圧の位相が揃えられた各風力発電ユニット100−1〜100−kの電力は、合成されて三相負荷または電力系統などの出力先に供給される。風力発電システム1から出力先に供給される電力は、各風力発電ユニット100−1〜100−kの直列接続風車群10−1〜10−kから出力される電力と、同期発電機40から出力される有効電力が合成されたものである。なお、
図4のシミュレーションでは、直列接続風車群10−1〜10−4から出力された電力2.273、2.668、3.068、3.434(kW)と、同期発電機40から出力された有効電力とが合成され、風力発電システム1から出力先の負荷に供給された電力は18.90(kW)であった。
【0079】
負荷電流は、風力発電ユニット100−1〜100−kの出力電流を合成したものである。負荷電圧は、風力発電ユニット100−1〜100−kの出力電圧と同一であり、システム全体で共通である。この出力電圧は、同期発電機40の界磁電圧を調整することで制御できる。例えば、同期発電機40の界磁電圧を、風力発電ユニット100−1〜100−kの出力電圧を一定に保つように、例えば直流チョッパ回路における通流率を変更することにより調整する。なお、位相整合回路30−1〜30−kにより出力電圧を調整することも可能である。
【0080】
図9は、
図4のシミュレーション結果における負荷電流の波形の一例を示す図であり、
図10は、
図4のシミュレーション結果における負荷電圧の波形の一例を示す図である。
図9の縦軸は負荷電流i
OutTotal(A)を示し、横軸は時間(ms)を示す。
図10の縦軸は負荷電圧v
OutTotal(V)を示し、横軸は時間(ms)を示す。
図9,10は、風力発電システム1の出力端における三相のうちのa相の負荷電流i
OutTotal及び負荷電圧v
OutTotalを示す。
図9に示すように、負荷電流i
OutTotalは、波形改善リアクトル出力電流i
outの位相差が、三相変圧器の位相整合回路30−1〜30−4により解消された後に、4組の風力発電ユニット100−1〜100−4から出力された交流電流が合成されたものであるので、負荷電流i
OutTotalの振幅は、
図8に示した波形改善リアクトル出力電流i
outと比較して約4倍に増大している。また、
図4のシミュレーションでは、上述のように各直列接続風車群10−1〜10−4の制御進み角γの異なる場合について検討し、それぞれから出力されたインバータ出力電流i
invに位相差があったが、
図9に示すように、最終的に風力発電ユニット100−1〜100−4間の位相が揃えられ、上手く合成されて出力されている。
図10に示すように、負荷電圧v
OutTotalは、
図6に示した同期発電機40の誘導起電力SG
emfと振幅が略同一であり、交流電圧は風力発電システム1で共通であることがわかる。
【0081】
次に、本実施形態に係る風力発電システム1の効果を説明する。
【0082】
従来、複数台の風力発電機(発電用風車)を相互接続した風力発電システムでは、風力発電機の出力を並列接続して電力系統に出力する並列接続方式が一般的である。一方、本実施形態の風力発電システム1は、風力発電を行うための複数の風車11−1〜11−nを相互に直列接続する直列接続方式の構成をとる。このような直列接続方式は、従来の並列接続方式に対して例えば以下の(i)〜(vii)に挙げる利点を有する。
【0083】
(i)複数台の風車に対してインバータが1台のみで済むなど、構成が極めて簡単である。
(ii)電力変換器のスイッチング素子としてサイリスタを採用し、かつ平滑用大容量コンデンサを使用しないなどの点、及び上記(i)により、信頼性が高くかつ保守が容易である。
(iii)上記(ii)により、システムの大容量化が容易である。
(iv)併設する同期機に原動機で駆動する同期発電機を適用すれば、所謂ハイブリッド風力発電システムを実現することができ、風車の出力変動の平準化が容易に達成できる。
(v)電圧形インバータで必要な高調波除去用のフィルタを用いることなく、原理的に出力電圧歪みを皆無にすることができるため、常に高品質の電力が得られる。
(vi)電流形サイリスタインバータを採用しているため、IGBTや平滑用コンデンサ等を必要とする電圧形インバータと比較してコスト面で有利である。
(vii)風力発電機群の直流出力をインバータに送電する手段として、長距離送電に有利な直流送電方式を使用することができるため、風車設置場所の選択における自由度が増す。
【0084】
ここで、複数台の風力発電用の風車を相互接続した風力発電システムにおいて、システム全体の出力容量を増加させるためには、システム内の風車の台数を増加させればよい。しかしながら、直列接続方式の風力発電システムにおいて、相互に直列接続される風車群の台数を増加させる場合、風車群の両端間の電圧レベル差が増大し、システム各部(例えば
図2に示す構成では最上部の発電用風車11−1など)の対地電圧が上昇する。このため、絶縁に対する特別な配慮が必要となる。
【0085】
このような問題を考慮して、本実施形態の風力発電システム1は、風力発電を行うための複数の発電用風車11−1〜11−nを電気的に直列接続して構成される複数の直列接続風車群10−1〜10−kと、これらの複数の直列接続風車群10−1〜10−kの組数に応じた相数を有し、複数の直列接続風車群10−1〜10−kの個々の出力端に接続される単一の同期発電機40と、複数の直列接続風車群10−1〜10−kと同期発電機40との合成出力の電圧位相を揃える位相整合回路30−1〜30−kと、を備え、位相整合回路30−1〜30−kにより電圧位相を揃えられた電力を合成して出力する構成をとる。
【0086】
この構成により、複数の直列接続風車群10−1〜10−kの組数を増加することで、システム全体の出力容量を増加することができる。また、個々の直列接続風車群10−1〜10−k同士は、相互に直列接続されないので、直列接続風車群10−1〜10−kの組数を増やしても、個々の直列接続風車群10−1〜10−kの風車11−1〜11−nの台数を増やさなければ対地電圧は上昇しない。したがって、本実施形態の風力発電システム1は、個々の直列接続風車群10−1〜10−kにおいて風車11−1〜11−nの台数を所定数に抑えると共に、直列接続風車群10−1〜10−kの組数を増加すれば、個々の直列接続風車群10−1〜10−kの対地電圧を増やすことなくシステム全体の出力容量を増加できる。このように、本実施形態の風力発電システム1は、システム各部の電圧上昇を抑制しつつ、出力容量を増加できる。これにより、絶縁に特別な配慮をせずに出力容量の増大を容易に行うことができる。
【0087】
また、上記構成により、単一の同期発電機40により複数の直列接続風車群10−1〜10−kの出力を調整できるので、簡易な構成でシステムを実現することができる。さらに、上記構成により、直列接続風車群10−1〜10−kの組数を増加した際には、単一の同期発電機40の相数の増加と、これに伴う位相整合回路30−1〜30−kの調整を行うだけで出力容量を容易に増加させることができるので、システムの拡張性を向上できる。
【0088】
また、本実施形態の風力発電システム1は、複数の直列接続風車群10−1〜10−kと同期発電機40との間に波形改善リアクトル20−1〜20−kを備え、位相整合回路30−1〜30−kが波形改善リアクトル20−1〜20−kの出力端に接続される。
【0089】
この構成により、直列接続風車群10−1〜10−kの各インバータ16bのサイリスタの転流時に発生する出力電圧の跳躍や陥没などが、波形改善リアクトル20−1〜20−kにより除去できるので、常に高品質の電力を出力することができる。
【0090】
また、本実施形態の風力発電システム1において、同期発電機40が、複数の直列接続風車群10−1〜10−kの個々の出力端に接続される複数のk組の三相巻線を有し、これらの複数のk組の三相巻線が、同一の鉄心に位相をずらして設置される。
【0091】
この構成により、同期発電機40から直列接続風車群10−1〜10−kの個々の出力端に供給される誘導起電力SG
emfには、k組の三相巻線同士の設置間隔に応じた位相差が発生し、これにより、複数の直列接続風車群10−1〜10−kと同期発電機40との合成出力の電圧にも同様の位相差が発生する。この電圧の位相差は、位相整合回路30−1〜30−kを用いて解消される。つまり、本実施形態の風力発電システム1では、同期発電機40のk組の三相巻線の配置間隔や、位相整合回路30−1〜30−kの構成などの機械的な設定のみによって、複数の直列接続風車群10−1〜10−kの出力を調整することができる。このため、本実施形態の風力発電システム1は、複数の直列接続風車群10−1〜10−kの出力を調整するための制御装置等を新たに追加することなく、簡易な構成で直列接続風車群10−1〜10−kの間の連携をとることが可能となり、システム全体の出力を安定化できる。
【0092】
また、本実施形態の風力発電システム1は同期発電機40を備える構成であるため、同期発電機40から出力先へ有効電力を供給することができる。これにより、風力発電システム1は、各風力発電ユニット100−1〜100−kの直列接続風車群10−1〜10−kからの出力と、同期発電機40からの出力とを合成した交流電力を出力する、所謂ハイブリッド型の風力発電システムとして機能する。
【0093】
直列接続風車群10−1〜10−kの出力は、エネルギ源である風力W
d1〜W
dnによって変動する。例えば各設置場所の地形や季節風等の風力の変動要因が多いため、風力W
d1〜W
dnの風速V
wind1〜V
windnは不安定である。本実施形態の風力発電システム1では、直列接続風車群10−1〜10−kの出力する電力が、負荷が必要とする所定の電力に足りない場合に、同期発電機40が不足分の電力を負荷に供給する。これにより、風力変動に起因する直列接続風車群10−1〜10−kの出力変動の影響を緩和して、風力発電システム1全体の出力を一定に維持することができる。したがって、ハイブリッド型である本実施形態の風力発電システム1は、風力W
d1〜W
dnの変動に依存せずに、必要な所定の電力を出力先の負荷に供給できる。
【0094】
また、本実施形態の風力発電システム1において、複数の直列接続風車群10−1〜10−kのそれぞれが、風力W
d1〜W
dnに応じて回転エネルギを発生させる風力タービン12−1〜12−n、該風力タービン12−1〜12−nで発生した回転エネルギに応じて交流電力を発生させる風力発電機13−1〜13−n、該風力発電機13−1〜13−nで発生した交流電力を直流電力に変換するコンバータ14−1〜14−n、及び風力タービン12−1〜12−nを回転させる風力W
d1〜W
dnの風速V
wind1〜V
windnを測定する風速計18−1〜18−nを、それぞれ有する複数の発電用風車11−1〜11−nと、複数の風車11−1〜11−nのコンバータ14−1〜14−nがそれぞれ出力する直流電力の直列和を入力し、該直列和を交流電力に変換するインバータ16bを有する変換ユニット16と、複数の風車11−1〜11−nの風速計18−1〜18−nが測定する風速V
wind1〜V
windnをそれぞれ監視し、風速V
wind1〜V
windnに応じてコンバータ14−1〜14−nそれぞれの出力電圧V
d1〜V
dn及びインバータ16bの入力電圧E
dをリアルタイムに制御するために、コンバータ14−1〜14−nの出力電圧V
d1〜V
dnを調整するコンバータパラメータ(制御角α
1〜α
n)を変更するコンバータ出力制御信号をコンバータ14−1〜14−nにそれぞれ出力し、インバータ16bの入力電圧E
dを調整するインバータパラメータ(制御進み角γ)を変更するインバータ制御信号をインバータ16bに出力するコントローラ17と、を備える。コントローラ17は、複数の風車11−1〜11−nのうちで最大風速V
WMAXが測定された最大風速風車11−m(1≦m≦n)の出力電流であるDCリンク電流I
dを用いてインバータ16bの入力電圧Edを制御し、且つ、最大風速風車11−m以外の風車11−1〜11−nの出力する各出力電流が最大風速風車11−mの出力電流I
dと同一になるように風車11−1〜11−nそれぞれのコンバータ14−1〜14−nの出力電圧V
d1〜V
dnを制御する。
【0095】
この構成により、個々の直列接続風車群10−1〜10−kにおいてインバータ16bの台数を1台にすることで風力発電システムの設置費用を抑制できると共に、各風車11−1〜11−nの風速に応じてインバータ16b及びコンバータ14−1〜14−nをリアルタイムで制御することによって、複数の直列接続風車群10−1〜10−kを有する風力発電システムの発電効率を向上できる。
【0096】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行なうことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0097】
上記実施形態では、風力発電システム1が同期発電機40を備える構成を例示したが、風力発電システム1は同期機を備えればよく、同期発電機40の代わりに同期調相機を備える構成としてもよい。同期調相機は、機械的負荷が0の状態で回転する同期機であり、直列接続風車群10−1〜10−kの各インバータ16bのサイリスタの転流と、風力発電システム1の出力先の負荷とが必要とする無効電力を供給する役割を担う。
【0098】
また、上記実施形態では、各風力発電ユニット100−1〜100−kにおいて、波形改善リアクトル20−1〜20−kが直列接続された2つのコイルから成り、両コイルの直列接続点にて同期発電機40が接続される構成を例示したが、波形改善リアクトル20−1〜20−kは他の構成としてもよい。例えば、波形改善リアクトル20−1〜20−kの両端部に直列接続風車群10−1〜10−k及び同期発電機40がそれぞれ接続され、波形改善リアクトル20−1〜20−kの2つのコイルの直列接続点にて出力側の位相整合回路30−1〜30−kに接続される構成であってもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、各風力発電ユニット100−1〜100−kにおいて、直列接続風車群10−1〜10−kと同期発電機40との間に波形改善リアクトル20−1〜20−kを備える構成を例示したが、風力発電ユニット1は、波形改善リアクトル20−1〜20−kを含まない構成とすることも可能である。