(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カード移動手段に連動して前記カード保持部を開閉するシャッタが設けられ、前記カード挿入口兼返却口の取出可能位置は、前記シャッタにより前記カード保持部を開放するシャッタ開放位置である
ことを特徴とする請求項2に記載のカード処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1のカード処理装置においては、移動部材をカード挿入口の方向へ付勢するため当該移動部材に取り付けられる第1の引張りコイルばねに所定の引張荷重が必要となるが、その引張荷重が弱過ぎるとカードがカード挿入口から排出されずにカード詰まりが発生してしまい、その逆に、スプリングの引張荷重が強過ぎると、カードがカード挿入口から飛び出してしまう。
【0005】
そこで、カードがカード挿入口から排出される際、カードの側部を制動部材の押圧部が押圧(側圧)することが対策として想定されるが、その側圧が強過ぎるとカードがカード挿入口から排出されずにカード詰まりが発生し、逆に側圧が弱過ぎるとカードがカード挿入口から飛び出してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、いかなる状態のカードに対してもカード返却位置から飛び出すこと無く安定して排出させ得るカード処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために、請求項1に係る発明は、カードを挿入または返却するカード挿入口兼返却口と、前記カード挿入口兼返却口から挿入されたカードに所定の処理を施すため当該カードを一時的に保持するカード保持部と、前記カード挿入口兼返却口と前記カード保持部との間でカードを移動させるカード移動手段と、
前記カードの幅方向における前記カード移動手段の両端部に接続され、前記カード移動手段を介してカードを前記カード挿入口兼返却口の方向へ付勢する
2個の引張りコイルばねからなる第1付勢手段と、前記第1付勢手段による前記カード移動手段の付勢の強弱をカードと非接触で制御する制動手段とを備え
、前記制動手段は、前記カードの幅方向において前記2個の第1付勢手段どうしの間に配置され、前記カード移動手段を前記カード挿入口兼返却口の方向とは反対向きの前記カード保持部の方向へ付勢する圧縮コイルばねからなる第2付勢手段と、前記カード移動手段に設けられ、前記第2付勢手段と当接する第2付勢手段当接部とにより構成されているようにする。
【0008】
請求項2に係る発明において、前記制動手段は、前記カード移動手段によってカードが前記カード挿入口兼返却口の取出可能位置に到達したときから前記カード移動手段の付勢の強弱を制御することができる。
【0009】
請求項3に係る発明において、前記カード移動手段に連動して前記カード保持部を開閉するシャッタが設けられ、前記カード挿入口兼返却口の取出可能位置は、前記シャッタにより前記カード保持部を開放する位置とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、カード挿入口兼返却口から挿入されたカードに所定の処理を施した後、カード移動手段によりカードをカード保持部からカード挿入口兼返却口へ返却する際、第1付勢手段によるカード移動手段の付勢の強弱をカードと非接触で制御できるので、カードの種類や状態に拘わらず如何なるカードであってもカード挿入口兼返却口におけるカード返却位置から飛び出すことなく安定して排出させることができる。
また、請求項1の発明によれば、カード移動手段をカード挿入口兼返却口の方向とは反対向きのカード保持部の方向へ付勢する第2付勢手段に対して、カード移動手段に設けられた第2付勢手段当接部が当接されるため、その当接されたときからカード移動手段の付勢の強弱を制御することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、カード移動手段によってカードがカード挿入口兼返却口の取出可能位置に到達したときから当該カード移動手段の付勢の強弱が制御されるため、取出可能位置までは速やかにカードを移動させた後、その取出可能位置からカード返却位置までは遅くカードを移動させることができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、カード移動手段に連動してカード保持部を開閉するシャッタによりカード保持部を開放するシャッタ開放位置に到達したときから当該カード移動手段の付勢の強弱が制御されるため、シャッタによりカード保持部を開放する位置までは速やかにカードを移動させた後、そのカード保持部を開放する位置からカード返却位置までは遅くカードを移動させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
<
本発明の実施の形態>
図1乃至
図9を用いて
本発明の実施の形態に係るカード処理装置100の構成を説明する。カード処理装置100は、樹脂からなるベース1の上端部に非接触型IC(Integrated Circuit)カードCA(以下、これを単にカードCAと呼ぶ)を挿入または返却するためのカード挿入口兼返却口1aが設けられるとともに、ベース1を構成している表面側ベース1fmに対してカバー2が装着可能な全体外観構成を有している。
【0020】
表面側ベース1fmにおける左右両側上端部にはシャッタ3、3が設けられ、当該シャッタ3、3における下方端部のシャッタ軸3a、3aを介してリンク4、4と連結されている。当該リンク4の下端部に設けられた貫通孔4aには、スライダ5の左右両側端部に形成された突起5d、5dが係合連結されている。
【0021】
図2および
図3に示されるように、ベース1を構成している表面側ベース1fmのほぼ中央に平行に設けられた縦長のベース溝1c、1cにはスライダ5の上端部から突出したカード支承部5b(
図4、
図5)が矢印A−B方向へスライド自在に係合されているとともに、スライダ5の中央に縦長に設けられたスライダ溝5eに対して表面側ベース1fm上に立設された突起部1eが係合されている。
【0022】
スライダ5は、スライダ溝5eとは直交する矢印E方向へ向かって突出したカード支承部5b(
図4、
図5)を有し、当該カード支承部5bが表面側ベース1fmのベース溝1c、1cから矢印E方向に向かって突出している。またスライダ5には、当該スライダ5の下方に設けられたストッパ10の爪10bと係合するための係合孔5aが当該ストッパ10の延長線上方の所定位置に形成されている。
【0023】
スライダ5の左右両側には2個のバネ6、6が設けられ、当該スライダ5の左右両側下方端部とバネ6、6の下端部とが取り付けられるとともに、バネ6、6が矢印A−B方向へ向かって互いに平行となるように、当該バネ6、6の上端部が表面側ベース1fm上の所定位置に取り付けられている。このバネ6、6は、
図2に示されるように、カードCAが未だ挿入されていない未挿入時のカード待受位置であり、かつ、カードCAをカード挿入口兼返却口1aから排出するときのカード返却位置にスライダ5を戻すよう所定の荷重でカード挿入口兼返却口1aに向かう矢印A方向へ当該スライダ5を常時付勢している。すなわちバネ6、6は、第1付勢手段を構成する。
【0024】
スライダ5の下方に設けられたストッパ10は、表面側ベース1fmから矢印F方向へ突設されたボス1gに対して軸10aを中心に回動自在に取り付けられている。ストッパ10の近傍には第1の電磁ソレノイド9が設けられ、そのプランジャ9aに固定されたピン11がストッパ10の係合部10cの長孔10hに摺動自在に係合されている。
【0025】
第1の電磁ソレノイド9は、
図2に示されるように、電流が印加されない状態ではプランジャ9aが上方に位置されているので、このとき
図4に示されるように、ストッパ10が図中時計回り方向へ付勢され、当該ストッパ10の爪10bがスライダ5の係合孔5aに係合された状態が維持されるように構成されている。
【0026】
一方、第1の電磁ソレノイド9は、電流が印加されるとプランジャ9aが吸引されるので、
図5に示されるように、当該プランジャ9aとともにピン11が下方へ移動することになる。
【0027】
このとき、ピン11がストッパ10の係合部10cの長孔10hの中で下方へ移動し、当該長孔10hの下端に当接された状態でプランジャ9aが更に吸引され続けることにより、軸10aを中心としてストッパ10が図中反時計回り方向へ回転され、当該ストッパ10の爪10bがスライダ5の係合孔5aから係合解除されるように構成されている。なお、スライダ5によりカードCAを矢印A−B方向へ移動するカード移動手段が構成され、かつ、スライダ5、電磁ソレノイド9およびストッパ10によってカードCAをカード挿入口兼返却口1aから上方へ返却するカード返却部が構成される。
【0028】
図4および
図5に示すように、ベース1の表面側ベース1fmと所定間隔だけ離れた位置には、当該表面側ベース1fmと平行に配置された裏面側ベース1bmが設けられている。表面側ベース1fmと裏面側ベース1bmとの間には、断面略L字状でなり、その先端に矢印E方向へ向かって突出する突出部19cの形成されたシュータ19が設けられており、当該シュータ19は、裏面側ベース1bmの上端部の回動軸20を中心として回動自在に支持されている。
【0029】
シュータ19における突出部19cの反対側の背面には、スライダ5のカード支承部5bの先端が当接される。かくして、表面側ベース1fmと、シュータ19の表面側ベース1fm側へ向いた背面と、スライダ5のカード支承部5bとにより、カード挿入口兼返却口1aから挿入されたカードCAを一時的に保持し、当該保持されたカードCAの背面側に配置されたリーダライタ12(
図4、
図5)により当該カードCAに対して所定の処理(データの読み出しや、データの書き込み)を行うためのカード保持空間CHKが形成される。
【0030】
シュータ19の背面側には、カード保持空間CHKに挿入されたカードCAを左右両側から係止するための爪(図示せず)が左右2カ所ずつ合計4個設けられており、カードCAがカード保持空間CHKに挿入されたとき、スライダ5のカード支承部5bにカードCAの一方の端部が当接されるとともに当該カードCAの左右両側端部が4カ所の爪に係止されるように構成されている。すなわちシュータ19はカードCAをカード保持空間CHKに保持するカード保持部を構成する。
【0031】
シュータ19の突出部19cの下方には、表面側ベース1fmと裏面側ベース1bmとの間にカード導出路1bが形成されている。ここで表面側ベース1fmはその途中の段差部1fdから矢印B方向に向かって延在するとともに矢印E方向へ傾斜された傾斜部を有し、裏面側ベース1bmについても矢印B方向へ向かって延在するとともにその途中から矢印E方向へ傾斜された傾斜部を有している。
【0032】
すなわちカード導出路1bには所定角度の傾斜が形成されており、カードCAがカード挿入口兼返却口1aから返却されるのではなく、そのまま回収される場合、シュータ19が回動軸20を中心として矢印E方向へ回動され、カード保持空間CHKのカードCAがカード導出路1bから下方のカード収納箱(図示せず)に収納されるように構成されている。
【0033】
ところで
図8および
図9に示すように、シャッタ3、3は表面側ベース1fmに対して回動軸3aを中心にシャッタ閉塞位置(
図8)とシャッタ開放位置(
図9)との間を揺動自在に支持されている。
【0034】
シャッタ3、3の一方の端部3d、3dは、リンク4、4に形成されたリンク溝4a、4aに係合されており、リンク4の矢印A−B方向への移動に伴い当該端部3d、3dがリンク溝4a、4aに沿って摺動される。
【0035】
すなわち
図8に示すように、リンク4、4と共にスライダ5が下方へ移動されたときのカードCAのカード読出書込時には、シャッタ3、3の他方の端部3u、3uがカード保持空間CHKの上方開口を閉塞するシャッタ閉塞位置に位置付けられる。
【0036】
また、
図9に示すように、リンク4、4と共にスライダ5が上方に移動されたときの第2付勢手段としてのダンパ50のダンパ作動時(後述する)では、シャッタ3、3の端部3u、3uがカード保持空間CHKの上方開口を開放するシャッタ開放位置に位置付けられる。
【0037】
図6乃至
図9に示すように、表面側ベース1fmの段差部1fdと、表面側ベース1fmから植設されて段差部1fdと対向するように配置された支柱1stと、表面側ベース1fmからスライダ5側へ向かって立設され、その下端部で支柱1stと一体化された第1リブLb1と、当該第1リブLb1の左右両側にダンパ50の幅だけ離れて互いに平行に配置された第2リブLb2および第3リブLb3とによって、当該ダンパ50を収納保持するダンパ保持空間dsが形成され、そのダンパ保持空間dsに圧縮コイルバネからなるダンパ50が配置されている。
【0038】
ダンパ50の下端部と対向したスライダ5の下端部には、第2付勢手段当接部としてのスライダ突起部5cが表面側ベース1fmの傾斜部へ向かって突出するように形成されている。スライダ5のスライダ突起部5cは、
図6に示すように、表面側ベース1fmに植設された支柱1stと対向するように設けられているものの、当該支柱1stと衝突することを回避するためにその先端が二股に分割された形状を有している。
【0039】
なおダンパ50は、表面側ベース1fmの段差部1fdを起点として矢印B方向へ当該スライダ5のスライダ突起部5cを付勢可能にダンパ保持空間dsに設けられている。ここで、バネ6、6のカード挿入口兼返却口1aに向かう矢印A方向への付勢力は、ダンパ50の矢印B方向への付勢力よりも大きく設定されていれば良い。このダンパ50およびスライダ5のスライダ突起部5cによって、ばね6、6によりスライダ5を介してカード挿入口兼返却口1aへカードCAを移動させる際の付勢の強弱を当該カードCAと非接触で制御する制動手段が構成される。
【0040】
<カード処理装置によるカード挿入および返却動作>
カード処理装置100にカードCAが挿入されていないカード待受位置(
図2)において、
図5に示されるようにカード挿入口兼返却口1aからカードCAの短手方向が矢印A−B方向に沿った状態で挿入されると、バネ6、6により上方に付勢されたスライダ5のカード支承部5bにカードCAの一方の端部(長手方向)が当接された状態で、当該カードCAが下方へ押し続けられることにより、当該スライダ5がカードCAとともにバネ6、6の付勢力に抗して押し下げられる(
図3)。
【0041】
このとき、
図4に示されるように、図中時計回り方向へ付勢されたストッパ10の爪10bと、カードCAの挿入とともに上方から下方へ押し下げられたスライダ5の係合孔5aとが係合され、当該スライダ5がその位置に留まることにより、当該カードCAがシュータ19の爪に係止された状態でカード保持空間CHKに保持される。
【0042】
この場合、リーダライタ12によるカードCAに対するカート読出書込状態となるが、
図8に示されるように圧縮コイルバネ100の下端部とスライダ5のスライダ突起部5cとは当接することのない非接触状態のままである。
【0043】
その後、カードCAに対する返却命令が与えられると、その返却命令に応じて第1の電磁ソレノイド9に電流が印加され、プランジャ9aが下方に吸引されるので、当該プランジャ9aとともにピン11が下方へ移動し、当該ピン11がストッパ10の係合部10cの長孔10hの中で下方へ移動し(
図5)、当該長孔10hの下端に当接された状態でプランジャ9aが更に吸引され続けることにより、軸10aを中心としてストッパ10が反時計回り方向へ回転される。
【0044】
この結果、ストッパ10の爪10bとスライダ5の係合孔5aとの係合状態が解除され、当該スライダ5はバネ6、6の付勢力により勢い良くカード挿入口兼返却口1aへ向かって押し上げられ、スライダ5のカード支承部5bに一方の端部が当接された状態のカードCAも当該スライダ5とともにカード挿入口兼返却口1aへ向かって一緒に勢い良く押し上げられる。
【0045】
ここで、ストッパ10の爪10bとスライダ5の係合孔5aとの係合状態が解除されると、スライダ5のカード挿入口兼返却口1aへの押し上げとともに、スライダ5と係合連結されたリンク4、4が上方へ押し上げられ、そのリンク4、4の押し上げと共にシャッタ3、3の一方の端部3d、3dが当該リンク4、4のリンク溝4a、4aに沿って摺動する。これにより、回動軸3a、3aを中心としてシャッタ3、3が図中時計回り方向へ回転されるため当該シャッタ3、3の他方の端部3u、3uがシャッタ閉塞位置からシャッタ開放位置へ位置付けられる。
【0046】
そのとき同時に、バネ6、6により高速で押し上げられたスライダ5のスライダ突起部5cが表面側ベース1fmの支柱1stとの衝突を回避しながらダンパ50の下端部に当接され、この当接されたときの位置をダンパ作動位置(ダンパ作動時)として、当該ダンパ50の矢印B方向への付勢力に抗しつつスライダ5がカード挿入口兼返却口1aへ向かって速度を低下しながら徐々に押し上げられる。
【0047】
このダンパ作動位置とは、シャッタ3、3のシャッタ開放位置でもあり、当該シャッタ3、3の開放動作と同時に、バネ6、6によりスライダ5を介してカードCAをカード挿入口兼返却口1aに向けて移動させる際の付勢の強弱が制御され、カードCAの一方の端部がカード挿入口兼返却口1aから僅かに露出した取出可能位置(
図2、
図9)に位置付けられる。
【0048】
すなわちスライダ5は、ダンパ作動位置においてダンパ50の矢印B方向への付勢力により、バネ6、6の矢印A方向への付勢力が徐々に弱められ、最終的にダンパ50の付勢力とバネ6、6の付勢力とがつり合ったカード返却位置(
図2)で当該スライダ5によるカードCAのカード挿入口兼返却口1aへ向かう押し上げが停止されるので、カードCAがカード挿入口兼返却口1aから飛び出してしまう事態を未然に防止することができる。
【0049】
これによりユーザは、カード挿入口兼返却口1aからカードCAの一方の端部がカード挿入口兼返却口1aから露出したカード返却位置で、当該カードCAの他方の端部を指で掴みながら引き抜くことにより確実にカードCAの返却を受けることができる。
【0050】
このようにバネ6、6によるスライダ5を介したカードCAの上方への付勢力がダンパ50によりカードCaとは非接触で次第に弱められるので、従来のように制動部材の押圧部がカードCAの側面を側圧することによりカード返却動作を行う場合に比べて、当該カードCAと直接接触することなく取出可能位置からカード返却位置に向かって速度を落としながらカードCAを排出することができる。
【0051】
かくして、カードCAの種類や状態(カードCAの摩擦係数や曲がり度合い)に拘わらず、カードCAがカード挿入口兼返却口1aから飛び出してしまうことがなく、カードCAの他方の端部がカード挿入口兼返却口1aから露出した状態のカード返却位置にカードCAを排出し、当該カードCAをユーザに返却することができる。
【0052】
因みに、従来の側圧を用いてカードCAの返却動作を行う場合、当該カードCAの短手方向を挿入方向および返却方向とすると、制動部材の押圧部がカードCAの側面と接触する距離が短くなるため、カードCAがカード挿入口兼返却口1aから飛び出してしまうリスクが高くなる。
【0053】
しかしながらカード処理装置100では、カードCAと直接接触することなくカード返却動作を行うことができるので、カードCAの短手方向を挿入方向および返却方向としてカード返却動作を行っても当該カードCAがカード挿入口兼返却口1aから飛び出すことなく確実にカードCAの他方の端部をカード挿入口兼返却口1aから露出したカード返却位置に排出することができる。
【0054】
<
参考例>
次に、本発明の参考となる技術を図10〜図13によって説明する。この参考例においては、
上述した実施の形態におけるカード処理装置100と基本的な構成は同じであり、ダンパ50が設けられていない代わりに、
図10に示すように、表面側ベース1fmに第3付勢手段としての樹脂バネ60が形成されたものであるため、この樹脂バネ60の構成を中心に説明する。
【0055】
図10乃至
図13に示すように、表面側ベース1fmのほぼ中央に平行に設けられた縦長のベース溝1c、1cの間には、当該表面側ベース1fmからスライダ5側へ向かってその先端部60aが僅かに突出するように折り曲げられた樹脂バネ60が当該表面側ベース1fmから切り欠かれた状態で一体に成形されている。
【0056】
この樹脂バネ60は、表面側ベース1fmの約半分の厚さに形成されており、先端部60aと一体に図中矢印E−F方向へ弾性変形可能である。樹脂ばね60の先端部60aは、矢印F方向へ突出されており、スライダ5がカード挿入口兼返却口1aに向かって上方へ移動されたとき、当該スライダにおける第3付勢手段当接部としての当接面5mと当接されると、樹脂バネ60の先端部60aがスライダ5の当接面5mにより矢印E方向へ押し戻される。
【0057】
この樹脂バネ60およびスライダ5の当接面5mによって、ばね6、6によりスライダ5を介してカード挿入口兼返却口1aへカードCAを移動させる際の付勢力の強弱を当該カードCAと非接触で制御する制動手段が構成される。
【0058】
図11に示すように、カード保持空間CHKに保持されたカードCAに対するカート読出書込時には、樹脂バネ60の先端部60aとスライダ5の当接面5mとは互いに当接することのない非接触状態のままである。
【0059】
その後、カードCAに対する返却命令が与えられると、ストッパ10の爪10bとスライダ5の係合孔5aとの係合状態が解除されるので、スライダ5はバネ6、6の付勢力により勢い良くカード挿入口兼返却口1aへ向かって押し上げられ、スライダ5のカード支承部5bに一方の端部が当接された状態のカードCAも当該スライダ5とともにカード挿入口兼返却口1aへ向かって一緒に勢い良く押し上げられる。
【0060】
図12に示すように、ストッパ10の爪10bとスライダ5の係合孔5aとの係合状態が解除されると、スライダ5のカード挿入口兼返却口1aへの押し上げとともに、スライダ5と係合連結されたリンク4、4が上方へ押し上げられ、そのリンク4、4の押し上げと共にシャッタ3、3の一方の端部3d、3dが当該リンク4、4のリンク溝4a、4aに沿って摺動するので、回動軸3a、3aを中心としてシャッタ3、3が図中時計回り方向へ回転されて当該シャッタ3、3の他方の端部3u、3uがシャッタ閉塞位置からシャッタ開放位置へ位置付けられる。
【0061】
そのとき同時に、バネ6、6により勢い良く押し上げられたスライダ5の当接面5mが表面側ベース1fmの樹脂バネ60の先端部60aと当接され、この当接されたときの位置をダンパ作動位置(ダンパ作動時)として、樹脂バネ60の先端部60aがスライダ5の当接面5mにより次第に押し戻されるので、当該樹脂バネ60の矢印F方向への付勢力に抗しつつスライダ5がカード挿入口兼返却口1aへ向かって速度を低下しながら徐々に押し上げられる。
【0062】
このダンパ作動位置とは、シャッタ3、3のシャッタ開放位置でもあり、当該シャッタ3、3の開放動作と同時に、バネ6、6によりスライダ5を介してカードCAをカード挿入口兼返却口1aに向けて移動させる際の付勢の強弱が樹脂バネ60によって制御され、カードCAの一方の端部がカード挿入口兼返却口1aから僅かに露出した取出可能位置に位置付けられる。
【0063】
すなわちスライダ5は、ダンパ作動位置において樹脂バネ60の矢印F方向への付勢力により、バネ6、6の矢印A方向への付勢力が徐々に弱められ、
図13に示すように、最終的に樹脂バネ60の付勢力とバネ6、6の付勢力とがつり合ったカード返却位置で当該スライダ5によるカードCAのカード挿入口兼返却口1aへ向かう押し上げが停止されるので、カードCAがカード挿入口兼返却口1aから飛び出してしまう事態を未然に防止することができる。
【0064】
これによりユーザは、カード挿入口兼返却口1aからカードCAの一方の端部の全面がカード挿入口兼返却口1aから露出したカード返却位置で、当該カードCAの他方の端部を指で掴みながら引き抜くことにより確実にカードCAの返却を受けることができる。
【0065】
このようにバネ6、6によるスライダ5を介したカードCAの上方への付勢力が樹脂バネ60によりカードCaとは非接触で次第に弱められるので、従来のように制動部材の押圧部がカードCAの端面を側圧することによりカード返却動作を行う場合に比べて、当該カードCAと直接接触することなく取出可能位置からカード返却位置に向かって速度を落としながらカードCAを排出することができる。
【0066】
かくして、カードCAの種類や状態(カードCAの摩擦係数や曲がり度合い)に拘わらず、カードCAがカード挿入口兼返却口1aから飛び出してしまうことがなく、カードCAの他方の端部がカード挿入口兼返却口1aから露出した状態のカード返却位置にカードCAを排出し、当該カードCAをユーザに返却することができる。
【0067】
<他の実施の形態>
なお、上述した
実施の形態および
参考例においては、カードCAの短手方向を挿入方向および返却方向とした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、カードCAの長手方向を挿入方向および返却方向としても良い。
【0068】
また、上述した
実施の形態および参考例においては、
図2および
図6に示したようにカードCAの他方の端部がカード挿入口兼返却口1aから僅かに露出した状態を取出可能位置とするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、
図2の2点鎖線で示すようにカードCAの他方の端部がカード挿入口兼返却口1aの円弧状部分から他方の端部の一部だけが露出した状態を取出可能位置とするようにしても良い。
【0069】
さらに、上述した
参考例においては、スライダ突起部5cが設けられたスライダ5を用いるようにした場合について
述べたが、これに限らず、スライダ突起部5cの形成されていない従来のスライダを用いるようにしても良い。