(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導電部材に垂直に配向されて表面に耐熱性を有する被覆膜が形成された複数の被覆カーボンナノチューブからなるセンサ素子体と、当該センサ素子体が収容される収容部材と、当該収容部材の開口部に設けられて複数の前記被覆カーボンナノチューブの先端を覆う受圧部である可撓性及び導電性を有するダイアフラムとを具備し、
負荷がない状態において、前記ダイアフラムと前記被覆カーボンナノチューブの先端とが当接するように配置され、
且つ負荷が作用した状態において、前記ダイアフラムを介して前記被覆カーボンナノチューブが歪むことによる抵抗値の変化を検出して圧力を測定し得るようにしたことを特徴とする圧力センサ。
導電部材に垂直に配向されて表面に耐熱性を有する被覆膜が形成された複数の被覆カーボンナノチューブからなるセンサ素子体と、当該センサ素子体が収容される収容部材と、当該収容部材の開口部に設けられて複数の前記被覆カーボンナノチューブの先端を覆う受圧部である可撓性及び導電性を有するダイアフラムとを具備し、
負荷がない状態において、前記ダイアフラムと前記被覆カーボンナノチューブの先端とが離間するように配置され、
且つ負荷が作用した状態において、前記被覆カーボンナノチューブと前記ダイアフラムとの接触面積が増減することによる抵抗値の変化を検出して圧力を測定し得るようにしたことを特徴とする圧力センサ。
被覆膜は、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウムのいずれか一種、又は二種以上を含む複合材から成ることを特徴とする請求項1に記載の圧力センサ。
被覆膜は、アルミニウム、チタン、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、金、銀のいずれか一種、若しくは二種以上を含む合金、又は少なくとも一種の酸化物から成ることを特徴とする請求項2に記載の圧力センサ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような従来の圧力センサは、センサ素子体にカーボンナノチューブを用いるため、例えば高温下や酸化雰囲気下などの過酷な測定環境での利用を目的とした場合には、センサ素子体であるカーボンナノチューブも腐食され、圧力センサとして利用できない惧れがある。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、過酷な測定環境での利用を可能とする特に耐熱性に優れたカーボンナノチューブを用いた圧力センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例1に係る圧力センサは、導電部材に垂直に配向されて表面に耐熱性を有する被覆膜が形成された複数の被覆カーボンナノチューブからなるセンサ素子体と、当該センサ素子体が収容される収容部材と、当該収容部材の開口部に設けられて複数の前記被覆カーボンナノチューブの先端を覆う受圧部である可撓性及び導電性を有するダイアフラムとを具備し、
負荷がない状態において、前記ダイアフラムと前記被覆カーボンナノチューブの先端とが当接するように配置され、
且つ負荷が作用した状態において、前記ダイアフラムを介して前記被覆カーボンナノチューブが歪むことによる抵抗値の変化を検出して圧力を測定し得るようにした。
【0007】
また、本発明の実施例2に係る圧力センサは、導電部材に垂直に配向されて表面に耐熱性を有する被覆膜が形成された複数の被覆カーボンナノチューブからなるセンサ素子体と、当該センサ素子体が収容される収容部材と、当該収容部材の開口部に設けられて複数の前記被覆カーボンナノチューブの先端を覆う受圧部である可撓性及び導電性を有するダイアフラムとを具備し、
負荷がない状態において、前記ダイアフラムと前記被覆カーボンナノチューブの先端とが離間するように配置され、
且つ負荷が作用した状態において、前記被覆カーボンナノチューブと前記ダイアフラムとの接触面積が増減することによる抵抗値の変化を検出して圧力を測定し得るようにした。
【0008】
そして、実施例1に係る圧力センサにおいて、被覆膜は、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、硫化亜鉛、セレン化亜鉛、炭化ケイ素、シリコンゲルマニウムのいずれか一種、又は二種以上を含む複合材から成ることが好ましい。
【0009】
さらに、実施例2に係る圧力センサにおいて、被覆膜は、アルミニウム、チタン、銅、クロム、鉄、コバルト、ニッケル、マグネシウム、亜鉛、金、銀のいずれか一種、若しくは二種以上を含む合金、又は少なくとも一種の酸化物から成ることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧力センサによれば、耐熱性を有する被覆膜が形成された被覆カーボンナノチューブをセンサ素子体として用いているため、例えば高温下や酸化雰囲気下などの過酷な測定環境での利用、特に高温下での利用に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
本発明の実施例1に係る圧力センサ1と圧力センサ1を用いた圧力計測器10について
図1〜
図3を用いて説明する。
【0013】
圧力計測器10は、概して、
図1に示すように、センサ部10aと演算出力部10bとから構成され、センサ部10aには、実施例1に係る圧力センサ1が設けられ、演算出力部10bには、圧力センサ1の抵抗値を測定して出力する抵抗計2と、抵抗計2から入力された抵抗値を圧力値に変換して出力する抵抗/圧力変換部3と、抵抗/圧力変換部3から入力された変換された圧力値を表示する圧力表示部4とが備えられる。
【0014】
以下、本発明の実施例1に係る圧力センサ1について、
図1及び
図2を用いて説明する。
本発明の実施例1に係る圧力センサ1は、歪みゲージ型の圧力センサ1であり、
図2に示すように、センサ素子として被覆カーボンナノチューブ5が用いられているものである。
図1に示すように、圧力センサ1はセンサ部10aに設けられており、圧力センサ1は演算出力部10bの抵抗計2に接続され、被覆カーボンナノチューブ5の歪み(屈曲)による抵抗率の変化が計測される。すなわち、被覆カーボンナノチューブ5の歪み(屈曲)によるピエゾ抵抗効果(後述する)を利用し、受けた負荷(圧力)を検知するものである。
【0015】
具体的には、
図2に示すように圧力センサ1は、導電部材6に垂直に配向されて垂直配向性を備えるとともに、表面に耐熱性を有する被覆材料、実施例1においては半導体材料の被覆膜5aが形成(被覆)された複数の被覆カーボンナノチューブ5からなるセンサ素子体7と、センサ素子体7が収容される収容部材8と、収容部材8の開口部に設けられて複数の被覆カーボンナノチューブ5の先端を覆う受圧部である可撓性及び導電性を有するダイアフラム9とを具備している。そして、圧力センサ1、具体的には導電部材6とダイアフラム9とが抵抗計2に接続されている。また、負荷(圧力)がない状態(以下、基準状態という。)において、
図2に示すように、被覆カーボンナノチューブ5は屈曲せず垂直配向性を有する状態で、ダイアフラム9と被覆カーボンナノチューブ5の先端とが当接して配置されている。ここで、垂直配向性の被覆カーボンナノチューブ5として、カーボンナノチューブ5aが導電部材6に対して概ね90°±10°の範囲内で形成されたものが使用される。
【0016】
被覆カーボンナノチューブ5におけるカーボンナノチューブ5aは多層カーボンナノチューブが用いられている。多層カーボンナノチューブは2層以上のカーボンナノチューブで、本発明では、使用する多層カーボンナノチューブは3層以上であることが望ましい。その長さは30μm〜500μmである。センサ素子体7は、複数のカーボンナノチューブ5aが10
8〜10
11/cm
2の本数密度で導電部材6に対して垂直に配向されて形成されたブラシ状の構造体を成している。また、それらのカーボンナノチューブ5aの表面には、
図2に示すように、耐熱性を有する半導体材料、具体的には炭化ケイ素(SiC)の被覆膜5bが被覆されている。炭化ケイ素のほかに、半導体材料としては、耐熱、耐酸化性を有するケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ヒ化ガリウム(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化ガリウム(GaN)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、炭化ケイ素(SiC)、シリコンゲルマニウム(SiGe)、酸化スズ(SnO
2)、酸化インジウム(In
2O
3)のいずれか一種又は二種以上を含む複合材が適用できる。このとき、被覆膜5bの厚さは、薄すぎると歪みによる抵抗率の変化が小さくセンサ素子体7の感度が低くなり、また厚すぎると被覆カーボンナノチューブ5が歪みにくくなるため、10nm〜100nmの範囲が好適である。
【0017】
導電部材6は、
図2に示すように、導電性を有する材料から成る板状物、膜状物であり、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)のいずれか一種、二種以上を含む合金、若しくは少なくとも一種の酸化物、又は二種以上の酸化物を含む合金が適用できる。なかでも、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)及びモリブデン(Mo)が特に効果的である。
【0018】
ダイアフラム9は
図2に示すように、表面側に耐腐食性の強いセラミック層(膜)9aが、裏面側に導電性を有する金属層(膜)9bが重ねられて2層構造にされている。ダイアフラム9の金属層9bは耐熱性、耐酸化性及び導電性を有する材料から成る板状物又は膜状物である。ダイアフラム9の金属層9bには、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、金(Au)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)のいずれか一種、若しくは二種以上を含む合金、又は少なくとも一種の酸化物が適用できる。なかでも、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)及びチタン(Ti)が、導電性の面では銅(Cu)、金(Au)などが特に効果的である。また、セラミック層9aには、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、炭化ケイ素(SiC)が適用できる。
【0019】
センサ素子体7が収められる収容部材8は、耐熱、耐酸化性を有するガラスなどの絶縁体から成る。その形状は特に限定されるものではないが、本実施例においては角状の容器が用いられている。
【0020】
以下、本実施例1に係る圧力センサ1を用いた圧力計測器10について
図1を用いて説明する。圧力計測器10は、本実施例1に係る圧力センサ1と、圧力センサ1の被覆カーボンナノチューブ5の抵抗値を測定する抵抗計2と、抵抗計2から出力される抵抗値を圧力値に変換する変換テーブルを有して圧力値を出力する抵抗/圧力変換部3とを備える。変換テーブルについては、例えば、予め実験で求めた抵抗―圧力特性が用いられる。
【0021】
以下、本発明の実施例1に係る圧力センサ1を用いた圧力の測定方法について
図1〜
図3を用いて説明する。
基本的な原理について説明すると、基準状態において、ダイアフラム9と被覆カーボンナノチューブ5とが当接して配置されていることから、受圧時にダイアフラム9が変形することによって被覆カーボンナノチューブ5が変形するため、被覆カーボンナノチューブ5が歪む。この歪みにより被覆カーボンナノチューブ5の抵抗率が変化することで、センサ素子としての抵抗値が変化する。いわゆるピエゾ抵抗効果が得られる。ピエゾ抵抗効果とは、一般的に、半導体などに力を加えると結晶格子に歪みが生じて、半導体中のキャリアの数や移動度が変化するために、抵抗率が変化するといわれるものである。具体的には、実施例1においては、ダイアフラム9が受けた圧力F1に比例して抵抗率が増加する。本実施例においては、この抵抗率の変化、すなわち被覆カーボンナノチューブ5の抵抗値をホイートストンブリッジ回路を有する抵抗計2により測定するようにしたものである。
【0022】
測定方法を圧力センサ1の状態とともに説明すれば、
図2に示すように、基準状態において、ダイアフラム9と導電部材6とを抵抗計2に接続して、ダイアフラム9、導電部材6及び被覆カーボンナノチューブ5に電圧を印加して通電状態にする。そして、
図3に示すように、ダイアフラム9が圧力F1を受けると、ダイアフラム9とともに被覆カーボンナノチューブ5は歪み(屈曲し)ながら全体として断面凹状に変形する。このように変形した被覆カーボンナノチューブ5の抵抗値が抵抗計2により測定され、この抵抗値が、抵抗/圧力変換部3に入力されて、予め実験により求めておいた抵抗―圧力特性に基づき圧力値が得られる。この圧力値が圧力表示部4に表示される。
【0023】
実施例1に係る圧力センサ1及びこれを用いた圧力計測器10においては、耐熱性を有する被覆膜5bが形成された被覆カーボンナノチューブ5をセンサ素子体として用いているため、例えば高温下や酸化雰囲気下などの過酷な測定環境での利用、特に400℃以上の高温下(ただし、被覆材料の融点以下であることが好ましく、炭化ケイ素(SiC)の場合1400℃程度である。)での利用に優れている。
【0024】
また、本実施例1に係る圧力センサ1及びこれを用いた圧力計測器10においては、被覆膜5bが半導体材料であるため、歪みによる抵抗率の変化が金属よりも大きいため、被覆カーボンナノチューブ5の抵抗値の変化を正確に検出でき、圧力センサ1の感度を高くすることができる。
【0025】
本実施例1に係る圧力センサ1及びこれを用いた圧力計測器10においては、センサ素子体7に垂直配向性を有する被覆カーボンナノチューブ5を用いることで、垂直配向性を有さないカーボンナノチューブを用いる場合に比べて、抵抗値(歪み)検知に寄与するカーボンナノチューブ5aの本数が多くなるため、圧力センサ1の感度を高くすることができる。
【0026】
なお、実施例1に係る圧力センサ1を用いた圧力計測器10は、センサ素子の要部となる被覆カーボンナノチューブ5が、耐熱、耐酸化性を有するガラス製の収容部材8に収められるとともに、耐熱、耐酸化性を有するダイアフラム9に覆われているため、被覆カーボンナノチューブ5は測定環境と遮絶されて、測定雰囲気に影響されることがない。したがって、この圧力センサ1を用いた圧力計測器10は、測定雰囲気によらず、正確な測定を可能とする。
[実施例2]
本発明の実施例2に係る圧力センサ20及びこれを用いた圧力計測器30について
図4〜
図6を用いて説明する。なお、実施例2に係る圧力センサ20は、実施例1に係る圧力センサ20において、被覆カーボンナノチューブ21の先端とダイアフラム9とが離間して配置されている構成であり、その他は実施例1と同一である。したがって、実施例1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
図4に示すように、実施例1と同様に、センサ部30aと演算出力部30bとで構成される圧力計測器30のセンサ部30aに、実施例2に係る圧力センサ20が用いられる。
【0027】
圧力センサ20は、
図5に示すように、導電部材6に垂直に配向されて垂直配向性を備えるとともに、表面に被覆材料、実施例2においては金属材料21bの被覆膜が形成された複数の被覆カーボンナノチューブ21からなるセンサ素子体7と、センサ素子体7が収容される収容部材8と、収容部材8の開口部に設けられて複数の被覆カーボンナノチューブ21の先端を覆う受圧部である可撓性及び導電性を有するダイアフラム9とを具備している。そして、圧力センサ20、具体的には導電部材(金属板又は金属膜)6とダイアフラム9とは抵抗計2に接続されている。また、基準状態において、ダイアフラム9と被覆カーボンナノチューブ21の先端とが離間して配置されている。離間の大きさについては、所望の測定範囲やカーボンナノチューブ21aの長さ、ダイアフラム9の特性(撓み量)などの諸条件によって、適宜設計される。
【0028】
実施例1と同様に、被覆カーボンナノチューブ21におけるカーボンナノチューブ21aは多層カーボンナノチューブ(3層以上が望ましい)である。また、カーボンナノチューブ21aの表面には、耐熱性を有する金属材料、具体的にはチタン(Ti)の被覆膜21bが被覆されている。チタンのほかに、耐熱性を有する金属材料としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、金(Au)、銀(Ag)のいずれか一種、若しくは二種以上を含む合金、又は少なくとも一種の酸化物が適用できる。このとき、被覆カーボンナノチューブ21の表面に被覆された金属材料の被覆膜21aの厚みは、5nm以上が好適である。
【0029】
実施例2に係る圧力センサ20を用いた測定方法について
図4〜
図6を用いて説明する。基準状態において、
図5に示すように、ダイアフラム9とカーボンナノチューブ21aの先端とが離間して配置されているため、負荷(圧力)が作用した状態において、
図6に示すように、受圧時にダイアフラム9が変形すると、ダイアフラム9と被覆カーボンナノチューブ21の先端側とが接触するとともに、ダイアフラム9と接触するカーボンナノチューブ21aの本数に応じて接触面積が変化し、接触抵抗が変化する。したがって、この圧力センサ20に、受圧時に抵抗計2により抵抗値を計測し、抵抗/圧力変換部3において、予め実験により求めた抵抗―圧力特性から圧力値を得て、これを測定値とする。
【0030】
測定方法を圧力センサ20の状態とともに説明すれば、基準状態において、
図5に示すように、ダイアフラム9と導電部材6とを抵抗計2に接続して、ダイアフラム9及び導電部材6に電圧を印加して通電状態にする。
図6に示すように、ダイアフラム9が圧力F2を受けると、断面凹状に変形して接触する被覆カーボンナノチューブ21の本数が徐々に増えていく。このダイアフラム9と被覆カーボンナノチューブ21との接触抵抗値が抵抗計2により測定され、この抵抗値が、抵抗/圧力変換部3に入力されて、予め実験により求めておいた抵抗―圧力特性に基づき、圧力値が得られる。この圧力値が、圧力表示部4に表示される。
【0031】
実施例2に係る圧力センサ20及びこれを用いた圧力計測器30においては、被覆膜21bが金属材料から成るため半導体材料(実施例1に例示された被覆材料)と比べて導電性が向上し、接触抵抗の変化を検知しやすくなるとともに、接触面積の変化による抵抗値の変化に対して、歪みによる抵抗値の変化量が小さく、接触面積と抵抗値との関係がほぼ比例するため、接触抵抗の変化を精度良く検知することができる。
【0032】
また、実施例2に係る圧力センサ20及びこれを用いた圧力計測器30においては、耐熱性を有する被覆膜21bが形成された被覆カーボンナノチューブ21をセンサ素子体として用いているため、400℃以上の高温下(ただし、被覆材料の融点以下であることが好ましく、チタン(Ti)の場合1600℃程度である。)での利用が可能となる。
【0033】
そして、実施例2に係る圧力センサ20を用いた圧力計測器30は、センサ素子の要部となる被覆カーボンナノチューブ21が、耐熱、耐酸化性を有するガラス製の収容部材8に収められるとともに、耐熱、耐酸化性を有するダイアフラム9に覆われているため、被覆カーボンナノチューブ21は測定環境と遮絶されて、測定雰囲気に影響されることがない。したがって、この圧力センサ20を用いた圧力計測器30は、測定雰囲気によらず、正確な測定を可能とする。
[変形例]
実施例1に係る圧力センサ1においては、被覆カーボンナノチューブ5における被覆膜5bの被覆材料として半導体材料を用い、実施例2に係る圧力センサ20においては、被覆カーボンナノチューブ21における被覆膜21bの被覆材料として金属材料を用いたが、これに限定されない。例えば、実施例1に係る圧力センサ1において、被覆膜5bの被覆材料として実施例2に例示した金属材料を用い、実施例2に係る圧力センサ2において、被覆膜21bの被覆材料として実施例1に例示した半導体材料を用いてもよい。
【0034】
実施例1及び実施例2に係る圧力センサ1,20においては、被覆カーボンナノチューブ5,21におけるカーボンナノチューブ5a,21aには多層のものを用いたが、これに限定されない。例えば、単層カーボンナノチューブを用いてもよい。単層カーボンナノチューブは、炭素原子の六員環のつながり方であるカイラリティによって金属型と半導体型とに分類されるが、実施例1においては歪みの感度がより高い半導体型を、実施例2においては導電性がより高い金属型をそれぞれ用いることが好適である。このように、半導体型及び金属型の選別はこのカイラリティにより行うことができるが、金属型及び半導体型を区別することなく用いるためには、実施例1又は実施例2と同様に、単層カーボンナノチューブの表面に半導体材料又は金属材料の被覆膜5b,21bをそれぞれ被覆すればよい。このとき、被覆膜5b,21bは、複数の単層カーボンナノチューブに半導体材料又は金属材料が湿式塗布された後、乾燥させて形成されるのが望ましい。なお、実施例1及び実施例2において、単層カーボンナノチューブを被覆せずに用いる場合には、収容部材8内は、不活性ガス(例えば窒素やアルゴン)で充満させた不活性ガス雰囲気又は真空にするのがよい。
【0035】
実施例1において、被覆カーボンナノチューブ5の先端とダイアフラム9とを単に当接させて配置したが、より確実に互いを接触させるため、例えば、両者を融着や接着などにより固定してもよい。
【0036】
実施例1及び実施例2においては、カーボンナノチューブ5a,21aを導電部材6側に固定したが、被覆カーボンナノチューブ5,21の垂直配向性を保つため、被覆カーボンナノチューブ5,21の基端部分を樹脂等で固定してもよい。
【0037】
実施例1及び実施例2において、ダイアフラム9は2層構造のものを用いているが、当然ながら1層構造のものを用いても構わない。この場合、ダイアフラム9に用いられる材料は実施例1及び実施例2とダイアフラム9の金属層9bと同一のものが適用される。