(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1実施形態)
図1を参照し、本願発明の第1実施形態に係るパノラマ画像表示システム1について、説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
【0014】
図1に示すように、パノラマ画像表示システム1は、全方位パノラマ画像を生成して表示するものであり、撮影装置10と、入力装置20と、パノラマ画像表示装置30と、表示装置40と、を備える。
例えば、本実施形態では、パノラマ画像表示システム1は、屋内のパノラマ画像を生成して表示することとする。
【0015】
[撮影装置]
撮影装置10は、パノラマ要素画像及びステレオ画像を撮影するものであり、撮影部11R,11C,11Lと、駆動部12と、制御部13と、を備える。
撮影部11R,11Lは、後記する距離情報を生成するためのステレオ画像を撮影するステレオカメラである。
撮影部11Cは、後記するパララマ画像を生成するためのパノラマ要素画像を撮影するカメラである。
駆動部12は、撮影部11R,11C,11Lをパン方向及びチルト方向に駆動する雲台である。
【0016】
図2に示すように、撮影部11R,11C,11Lは、同一の筐体内部に配置される。具体的には、撮影部11Cが中央に位置し、撮影部11R,11Lが撮影部11Cを挟んで位置する。また、撮影部11R,11C,11Lは、互いの光軸が平行になるように駆動部12に搭載される。さらに、撮影部11R,11Lは、同一の焦点距離であることが好ましい。一方、撮影部11Cは、撮影部11R,11Lの焦点距離と異なってもよい。
【0017】
図1に戻り、撮影装置10の説明を続ける。
制御部13は、パノラマ画像の生成に必要な画像を撮影できるように、撮影装置10を制御するものである。具体的には、制御部13は、撮影部11R,11C,11Lが上を向くように駆動部12を駆動し、撮影部11R,11C,11Lに撮影させる。続いて、制御部13は、上を向いた撮影部11R,11C,11Lが回転するように駆動部12を駆動し、撮影部11R,11C,11Lに撮影させる。この制御を繰り返して、制御部13は、上部一周分のパノラマ要素画像を撮影させる。そして、制御部13は、撮影部11R,11C,11Lが下を向くように駆動部12を駆動した後、一周分のパノラマ要素画像を撮影させることを繰り返す。このようにして、撮影装置10は、パノラマ画像の生成に必要なパノラマ要素画像及びステレオ画像を自動的に撮影できる。その後、制御部13は、撮影部11Cが撮影したパノラマ要素画像と、撮影部11R,11Lが撮影したステレオ画像とを、画像記憶部31に書き込む。
【0018】
なお、制御部13は、パノラマ要素画像及びステレオ画像を撮影した撮影部11R,11C,11Lと、パノラマ要素画像及びステレオ画像の撮影順序とを示す識別情報をパノラマ要素画像に付与してもよい。
また、制御部13がパノラマ要素画像及びステレオ画像をSDカード等の記憶媒体に書き込んで、パノラマ画像表示装置30が記憶媒体からパノラマ要素画像及びステレオ画像を読み出してもよい。
【0019】
[入力装置]
入力装置20は、ユーザの操作に応じて、パノラマ画像の観察方向及び観察位置を表示制御部35及びパノラマ画像表示部36に出力するものである。例えば、入力装置20は、図示を省略したキーボード及びマウスで構成される。
【0020】
ここで、観察方向及び観察位置の入力について、簡単に説明する。
図3に示すように、表示装置40に表示されたパノラマ画面50には、観察方向51と、観察位置を示す矢印52とが含まれている。例えば、観察方向51は、3次元座標空間で北を基準として、中心位置から見た方向を表している。また、観察位置52は、一定の方向毎に矢印として表示され、現在の観察位置から矢印の方向に一定量だけ移動することを示す。
なお、
図3では、球体状のパノラマ画像のうち、一定の角度に収まって表示装置40に表示された部分をパノラマ画面50として図示した。
【0021】
例えば、観察方向を変えたい場合、ユーザは、所望する観察方向51がパノラマ画像50の中央となるように、マウスをドラッグする。すると、パノラマ画像50の中央が、パノラマ画像表示装置30に観察方向として入力される。また、観察位置を変えたい場合、ユーザは、所望の矢印52をマウスでクリックする。すると、今までの観察位置から矢印52の方向に一定量だけ移動した位置が、パノラマ画像表示装置30に観察位置として入力される。
【0022】
3次元仮想空間とは、パノラマ画像の撮影対象となった空間を表す3次元モデルである。例えば、本実施形態では、3次元仮想空間は、屋内を表している。
以下、説明を簡易にするため、水平軸、垂直軸及び奥行軸からなる3次元仮想空間において、観察位置は、水平軸及び奥行軸の平面上で入力され、その高さが撮影部11Cの同じ高さで一定であることとする。一方、観察方向は、水平軸、垂直軸及び奥行軸の3次元方向で入力されることとする。
【0023】
[パノラマ画像表示装置]
図1に戻り、パノラマ画像表示装置30について、説明する。
パノラマ画像表示装置30は、球体状のパノラマ画像を表示するものであり、画像記憶部31と、記憶部32と、パノラマ画像生成部33と、距離情報生成部34と、表示制御部35と、パノラマ画像表示部36と、を備える。
【0024】
画像記憶部31は、撮影装置10が撮影したパノラマ要素画像及びステレオ画像を記憶する、例えば、メモリ、ハードディスク等の記憶装置である。
記憶部32は、パノラマ画像50及び距離情報を記憶する、例えば、メモリ、ハードディスク等の記憶装置である。
【0025】
パノラマ画像生成部33は、画像記憶部31に記憶された撮影部11Cのパノラマ要素画像を用いて、パノラマ画像50を生成するものである。例えば、本実施形態では、パノラマ画像生成部33が、1つのパノラマ画像50を生成することとする。
【0026】
<パノラマ画像の生成>
図4を参照し、パノラマ画像生成部33によるパノラマ画像50の生成について、詳細に説明する(適宜
図1参照)。
具体的には、パノラマ画像生成部33は、予め設定されたパノラママップ60の板モデル61にパノラマ要素画像をマッピングすることで、パノラマ画像50を生成する。
パノラママップ60は、複数の板モデル61を球体状に配置して構成されている。パノラママップ60(複数の板モデル61によって構成された球体)の中心位置は、撮影装置10の設置位置に対応している。各板モデル61は、撮影部11Cのパノラマ要素画像の撮影範囲に対応している。すなわち、板モデル61は、撮影部11Cのパノラマ要素画像と同数である。
【0027】
パノラママップ60の中心位置と隣り合う板モデル61の各中心とをそれぞれ結んだ二本の線分からなる角の角度は、撮影装置10の設置位置で隣り合う画像を撮影したときの撮影部11による撮影方向の角度差に対応している。また、各板モデル61の縦横比は、各パノラマ要素画像の縦横比に対応している。また、複数の板モデル61によって構成された球の中心位置から板モデル61までの距離及び板モデル61の縦横サイズは、撮影部11Cの焦点距離及びパノラマ要素画像の縦横サイズに対応している。
【0028】
また、各板モデル61には、パノラマ要素画像と同様に識別情報が付与されている。これによって、パノラマ画像生成部33は、パノラマ要素画像に付与された識別情報と板モデル61に付与された識別情報とに基づいて、パノラマ要素画像を対応する板モデル61にマッピングすることで、パノラマ画像50を生成できる。
【0029】
そして、パノラマ画像生成部33は、生成したパノラマ画像50を3次元仮想空間に対応付けて、記憶部32に書き込む。前記したように、撮影装置10の設置位置がパノラマ画像50の中心位置と同じであり、パノラマ要素画像の撮影時に撮影装置10を屋内に設置した位置も既知である。従って、パノラマ画像生成部33は、パノラマ画像50の中心位置を3次元仮想空間に対応付けることができる。
【0030】
なお、パノラマ画像50の生成手法は、例えば、特開2012−221324号公報に記載されているため、これ以上の説明を省略する。
また、パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像50の生成手法がこれに限定されない。
【0031】
距離情報生成部34は、画像記憶部31に記憶されたステレオ画像を用いて、距離情報を生成するものである。
【0032】
<距離情報の生成>
図5を参照し、距離情報生成部34による距離情報の生成について、詳細に説明する(適宜
図1参照)。
図5では、屋内を表した3次元仮想空間を符号70で図示した。また、
図5では、水平軸上での左右と、奥行軸上での前後とを図示した。
【0033】
距離情報は、所定の方向毎に、撮影装置10の設置位置(パノラマ画像50の中心位置50a)から、パノラマ画像50で撮影された被写体までの距離を表した情報である。
図5では、距離情報は、中心位置50aから、被写体としての、屋内に存在する壁面までの距離を表している。
【0034】
具体的には、距離情報生成部34は、ステレオ視の原理により、撮影装置10から被写体までの距離を求める。例えば、距離情報生成部34は、画像記憶部31に記憶されたステレオ画像にマッチングを施し、ステレオ画像間で被写体の視差を求める。そして、距離情報生成部34は、被写体の視差に応じて、撮影装置10から被写体までの距離を求める。
【0035】
図5に示すように、距離情報生成部34は、中心位置50aから3次元仮想空間70の各頂点に向かう4方向と、中心位置50aから前後左右の4方向との合計8方向で、距離情報を生成している。例えば、中心位置50aから右方向であれば、距離情報は、中心位置50aから右壁面までの距離L1を示す。また、中心位置50aから後方向であれば、距離情報は、中心位置50aから後壁面までの距離L2を示す。また、中心位置50aから左方向であれば、距離情報は、中心位置50aから左壁面までの距離L3を示す。
【0036】
ここで、入力装置20には、距離情報を生成していない観察方向が入力される場合もある。従って、距離情報生成部34は、生成していない方向の距離情報を補間(例えば、線形補間、スプライン補間)することが好ましい。その後、距離情報生成部34は、生成及び補間した距離情報を、パノラマ画像50に対応付けて記憶部32に書き込む。
【0037】
図1に戻り、パノラマ画像表示装置30の説明を続ける。
表示制御部35は、パノラマ画像50の表示制御を行うものであり、表示半径算出部35aを備える。
【0038】
表示半径算出部35aは、入力装置20から入力された観察方向及び観察位置に基づいて、記憶部32から距離情報を取得するものである。そして、表示半径算出部35aは、取得した距離情報に応じてパノラマ画像50の表示半径を算出し、パノラマ画像表示部36に出力する。
なお、表示半径算出部35aの詳細は、後記するパノラマ画像の表示半径算出で説明する。
【0039】
パノラマ画像表示部36は、表示半径算出部35aから入力された表示半径で、パノラマ画像50を表示装置40に表示させるものである。具体的には、パノラマ画像表示部36は、入力装置20から観察方向及び観察位置が入力されると共に、記憶部32からパノラマ画像50を読み出す。そして、パノラマ画像表示部36は、入力された表示半径となるようにパノラマ画像50を拡大又は縮小する。さらに、パノラマ画像表示部36は、拡大又は縮小したパノラマ画像50から、表示装置40に表示される領域(以後、表示領域)を切り出して、表示装置40に出力する。
なお、パノラマ画像表示部36は、後記するパノラマ画像非表示通知が入力された場合、表示装置40にパノラマ画像50の表示領域を出力しない。
【0040】
ここで、パノラマ画像50を拡大又は縮小した後、表示領域を切り出す理由について、簡単に説明する。拡大又は縮小された状態のパノラマ画像50に対し、観察位置52の移動を行って(中心位置50aからずれる)、移動後の観察位置52で視野角が決まることで、表示装置40に表示される画面内容(表示領域)が初めて定まる。
【0041】
[表示装置]
表示装置40は、パノラマ画像表示装置30から入力されたパノラマ画像50(正確にはパノラマ画像50の表示領域)を表示するものである。例えば、表示装置40としては、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイがあげられる。
【0042】
<パノラマ画像の表示半径算出:第1例>
図6を参照し、パノラマ画像の表示半径算出について、第1例を説明する(適宜
図1参照)。
図6では、観察位置を黒丸52
1,52
2で図示し、各観察位置52
1,52
2から見た観察方向を矢印51
1,51
2で図示した。
また、
図5の距離情報が記憶部32に記憶されていることとする。
【0043】
まず、観察位置52
1及び観察方向51
1が入力された場合を考える。
図6に示すように、表示半径算出部35aは、記憶部32から、観察方向51
1と同じ方向の距離情報を取得する。つまり、表示半径算出部35aは、観察方向51
1が右を向いているので、右方向の距離情報を記憶部32から取得する。従って、取得した距離情報は、距離L1を示している。
【0044】
そして、表示半径算出部35aは、取得した距離情報が示す距離L1に応じて、パノラマ画像50の表示半径を算出する。例えば、表示半径算出部35aは、実空間で求められた距離L1を、パノラマ画像50が配置された3次元仮想空間70での距離L1に変換する。従って、3次元仮想空間70において、パノラマ画像50の表示半径は、中心位置50aから右壁面までの距離L1と等しくなる。
【0045】
次に、観察位置52
2及び観察方向51
2が入力された場合を考える。
表示半径算出部35aは、観察方向51
2が右を向いているので、観察方向51
1と同様、パノラマ画像50の表示半径をL1と算出する。つまり、表示半径算出部35aは、観察方向51
1,51
2だけを考慮し、観察位置52
1,52
2を考慮せずに、パノラマ画像50の表示半径を算出する。
【0046】
<パノラマ画像の表示半径算出:第2例>
図7を参照し、パノラマ画像の表示半径算出について、第2例を説明する(適宜
図1,
図6参照)。
【0047】
まず、観察位置52
1及び観察方向51
1が入力された場合を考える。
図7に示すように、表示半径算出部35aは、観察方向51
1が後を向いているので、後方向の距離情報を記憶部32から取得する。従って、取得した距離情報は、距離L2を示している。
【0048】
そして、表示半径算出部35aは、第1例と同様、取得した距離情報が示す距離L2に応じて、パノラマ画像50の表示半径を算出する。従って、3次元仮想空間70において、パノラマ画像50の表示半径は、中心位置50aから後壁面までの距離L2と等しくなる。
【0049】
次に、観察位置52
2及び観察方向51
2が入力された場合を考える。
表示半径算出部35aは、観察方向51
2が後を向いているので、観察方向51
1と同様、パノラマ画像50の表示半径をL2と算出する。つまり、表示半径算出部35aは、第1例と同様、観察方向51
1,51
2だけを考慮して、観察位置52
1,52
2を考慮せずに、パノラマ画像50の表示半径を算出する。
【0050】
前記した第1例及び第2例をまとめると、以下のようにパノラマ画像が表示されることになる。例えば、ユーザが観察方向を右で入力すると、パノラマ画像表示装置30は、表示半径がL1となる、大きなパノラマ画像50を表示する(
図6)。そして、ユーザが観察方向を後に変更すると、パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像50の表示半径をL1からL2まで縮小して表示する(
図7)。
【0051】
<パノラマ画像の表示半径算出:第3例>
図8を参照し、パノラマ画像の表示半径算出について、第3例を説明する(適宜
図1参照)。
【0052】
図8のように、表示半径算出部35aは、観察方向51が左を向いているので、第1例及び第2例と同様、パノラマ画像50の表示半径をL3と算出する。この場合、中心位置50aから観察位置52までの距離L4が、パノラマ画像50の表示半径L3よりも大きくなる。つまり、観察位置52は、パノラマ画像50の表示範囲から外れてしまう。そこで、表示半径算出部35aは、パノラマ画像50の表示半径L3が距離L4以上となるように、パノラマ画像50を拡大する。
【0053】
具体的には、表示半径算出部35aは、距離情報から算出したパノラマ画像50の表示半径L3と、距離L4とを比較する。
パノラマ画像50の表示半径L3が距離L4以上の場合、表示半径算出部35aは、パノラマ画像50の表示半径L3をそのまま利用する。この場合、パノラマ画像50が表示されることになる。
パノラマ画像50の表示半径L3が距離L4未満の場合、表示半径算出部35aは、距離L4と、距離L5とを比較する。この距離L5は、中心位置50aと距離L4との線分を壁面(想定壁)まで延長した延長線が示す距離である。つまり、距離L5は、距離L4を想定壁まで延長した距離である。
【0054】
距離L4が距離L5以下の場合、表示半径算出部35aは、表示距離L3に予め設定された係数αを乗じた値を、パノラマ画像50’の表示半径として算出する。
距離L4が距離L5を超える場合、表示半径算出部35aは、観察位置52が想定壁面の向こう側に移動したと考えられるため、パノラマ画像50を表示しない旨の通知(パノラマ画像非表示通知)を、パノラマ画像表示部36に出力する。
【0055】
ここで、係数αは、表示領域を拡大するための係数であり、通常、1.0で設定される。また、係数αは、パノラマ画像50が不自然に歪まないように、1.0以上2.0以下の範囲内で設定されてもよい。さらに、係数αは、観察方向51の反対方向(右側)で中心位置50aから壁面までの距離L1と(
図5)と、観察方向51(左側)で中心位置50aから壁面までの距離L3との比で設定されてもよい(α=L1/L3)。
【0056】
[パノラマ画像表示装置の動作]
図9を参照し、
図1のパノラマ画像表示装置30の動作について、説明する(適宜
図1参照)。
【0057】
パノラマ画像表示装置30は、撮影装置10で撮影されたパノラマ要素画像及びステレオ画像を画像記憶部31に記憶する(ステップS1)。
【0058】
パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像生成部33によって、画像記憶部31に記憶された撮影部11Cのパノラマ要素画像を用いて、パノラマ画像を生成する。具体的には、パノラマ画像生成部33は、パノラママップの板モデルにパノラマ要素画像をマッピングすることで、パノラマ画像を生成する(ステップS2)。
【0059】
パノラマ画像表示装置30は、距離情報生成部34によって、画像記憶部31に記憶されたステレオ画像を用いて、所定の方向毎に距離情報を生成する。具体的には、距離情報生成部34は、ステレオ視の原理により、撮影装置10から被写体までの距離を求め、距離情報を生成する(ステップS3)。
【0060】
パノラマ画像表示装置30は、表示制御部35及びパノラマ画像表示部36に、入力装置20からパノラマ画像の観察方向及び観察位置が入力される(ステップS4)。
【0061】
パノラマ画像表示装置30は、表示半径算出部35aによって、ステップS4で入力された観察方向に基づいて、記憶部32から距離情報を取得し、取得した距離情報に応じてパノラマ画像の表示半径を算出する(ステップS5)。
【0062】
パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像表示部36によって、ステップS5で算出した表示半径で、パノラマ画像を表示装置40に表示させる。具体的には、パノラマ画像表示部36は、ステップS5で算出した表示半径となるように、パノラマ画像を拡大又は縮小する。さらに、パノラマ画像表示部36は、拡大又は縮小したパノラマ画像50から表示領域を切り出して、表示装置40に出力する(ステップS6)。
【0063】
[作用・効果]
図6,
図7に示すように、パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像の表示半径に実際の被写体までの距離を反映させることで、パノラマ画像の歪みが減少し、移動感が自然に近くなるので、視点を移動させたときの違和感を少なくできる。
さらに、
図8に示すように、パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像50の表示半径L3が距離L4以上となるように、パノラマ画像50の表示半径を拡大する。これによって、パノラマ画像表示装置30は、パノラマ画像50の表示範囲から観察位置が外れることを防止できる。
【0064】
(第2実施形態)
図10を参照し、本願発明の第2実施形態に係るパノラマ画像表示システム1Bについて、第1実施形態と異なる点を説明する。
パノラマ画像表示システム1Bは、異なる撮影位置で撮影された複数のパノラマ画像を切り替えて表示する点が、第1実施形態と異なる。
【0065】
図10に示すように、パノラマ画像表示システム1Bは、全方位パノラマ画像を生成して表示するものであり、撮影装置10と、入力装置20と、パノラマ画像表示装置30Bと、表示装置40と、を備える。
【0066】
パノラマ画像表示装置30Bは、複数のパノラマ画像を生成し、切り替えて表示するものであり、画像記憶部31と、記憶部32Bと、パノラマ画像生成部33と、距離情報生成部34と、表示制御部35Bと、パノラマ画像表示部36Bと、を備える。
【0067】
記憶部32Bは、複数のパノラマ画像と、パノラマ画像毎の距離情報とを記憶する、例えば、メモリ、ハードディスク等の記憶装置である。ここで、記憶部32Bは、パノラマ画像を一意に識別する識別情報が、各パノラマ画像に付加されていることとする。例えば、本実施形態では、記憶部32Bは、2個のパノラマ画像を記憶することとする。
【0068】
図11に示すように、パノラマ画像50
1,50
2は、それぞれの中心位置50a
1,50a
2が異なるように、3次元仮想空間70の左右に配置されている。また、パノラマ画像50
1,50
2は、3次元仮想空間70の中央付近で互いに重複している。
【0069】
なお、パノラマ画像50は、中心位置50aが異なっていれば、3次元仮想空間70に何処に配置してもよい。また、パノラマ画像50は、配置する間隔が任意であり、互いに重複しなくともよい。また、パノラマ画像50は、3次元仮想空間70に配置できる個数が制限されない。また、個々のパノラマ画像50の生成手法は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0070】
表示制御部35Bは、パノラマ画像50の表示制御を行うものであり、表示半径算出部35aと、パノラマ画像選択部35bとを備える。
パノラマ画像選択部35bは、記憶部32に記憶された複数のパノラマ画像50から、観察位置が中心位置に最も近くなるパノラマ画像50を選択するものである。
なお、表示半径算出部35aは、パノラマ画像選択部35bが選択したパノラマ画像50の表示半径を、第1実施形態と同様に算出するので、詳細な説明を省略する。
【0071】
<パノラマ画像の選択:第1例>
図11を参照して、パノラマ画像選択部35bによるパノラマ画像50の選択について、第1例を説明する(適宜
図10参照)。
【0072】
パノラマ画像選択部35bは、記憶部32から、全てのパノラマ画像50を読み出す。また、パノラマ画像選択部35bは、各パノラマ画像50の中心位置50aと、観察位置52との距離を求める。そして、パノラマ画像選択部35bは、各パノラマ画像50で求めた距離を比較し、距離が短い方のパノラマ画像50を選択する。
【0073】
まず、観察位置52
1が入力された場合を考える。
この場合、中心位置50a
1と観察位置52
1との距離が、中心位置50a
2と観察位置52
1との距離よりも短い。従って、パノラマ画像選択部35bは、パノラマ画像50
1を選択する。
【0074】
次に、観察位置52
2が入力された場合を考える。
この場合、中心位置50a
2と観察位置52
2との距離が、中心位置50a
1と観察位置52
2との距離よりも短い。従って、パノラマ画像選択部35bは、パノラマ画像50
2を選択する。
【0075】
つまり、パノラマ画像選択部35bは、
図11の一点鎖線を境として、観察位置52が3次元仮想空間70の左側にある場合、パノラマ画像50
1を選択する。一方、パノラマ画像選択部35bは、
図11の一点鎖線を境として、観察位置52が3次元仮想空間70の右側にある場合、パノラマ画像50
2を選択する。その後、パノラマ画像選択部35bは、選択したパノラマ画像50の識別情報を、パノラマ画像表示部36Bに出力する。
【0076】
<パノラマ画像の選択:第2例>
続いて、パノラマ画像選択部35bによるパノラマ画像50の選択について、第2例を説明する。
【0077】
パノラマ画像選択部35bは、記憶部50に記憶された複数のパノラマ画像50から、入力された観察位置52と、有効範囲と、中心位置50aとに基づいて、1つのパノラマ画像50を選択する。通常、屋内には壁面が存在することから、パノラマ画像50の有効範囲は、中心位置50aから壁面までと考えられる。そこで、パノラマ画像選択部35bは、距離情報が示す距離を、パノラマ画像50の有効範囲として扱う。
【0078】
以下、パノラマ画像50
1が表示中であり、観察位置52
1が入力されたこととして説明する。
具体的には、パノラマ画像選択部35bは、表示中のパノラマ画像50
1の中心位置50a
1から観察位置52までの取得基準方向を求める。また、パノラマ画像選択部35bは、記憶部32から、求めた取得基準方向と同じ方向の距離情報を取得し、取得した距離情報が示す距離を、パノラマ画像50
1の有効範囲とする。そして、パノラマ画像選択部35bは、中心位置50a
1から観察位置52までの判定基準距離を求める。さらに、パノラマ画像選択部35bは、求めた判定基準距離がパノラマ画像50
1の有効範囲を超えたか否かを判定する。
【0079】
求めた判定基準距離が有効範囲を超えた場合、パノラマ画像選択部35bは、例えば第1例と同様の手法により、最適なパノラマ画像50を1つ選択する。ここで、最適なパノラマ画像50を選択できない場合、パノラマ画像選択部35bは、表示中のパノラマ画像50
1を選択、又は、パノラマ画像非表示通知をパノラマ画像表示部36に出力してもよい。
【0080】
求めた判定基準距離が有効範囲以内の場合、パノラマ画像選択部35bは、表示中のパノラマ画像50
1をそのまま選択する。
その後、パノラマ画像選択部35bは、選択したパノラマ画像50の識別情報を、パノラマ画像表示部36Bに出力する。
【0081】
この第2例の手法によれば、パノラマ画像表示装置30Bは、壁面の向こう側に位置するパノラマ画像50に切り替えて表示することを抑制できる。
なお、パノラマ画像選択部35bは、第1例又は第2例の何れを用いるか、手動で設定される。
【0082】
図10に戻り、パノラマ画像表示装置30Bの説明を続ける。
パノラマ画像表示部36Bは、パノラマ画像選択部35bから入力された識別情報のパノラマ画像を、表示装置40に表示させるものである。具体的には、パノラマ画像表示部36Bは、パノラマ画像選択部35bから入力された識別情報に一致するパノラマ画像を記憶部32Bから読み出す。そして、パノラマ画像表示部36Bは、第1実施形態と同様、表示半径算出部35aから入力された表示半径で、パノラマ画像を表示装置40に表示させる。
【0083】
[パノラマ画像表示装置の動作]
図12を参照し、
図10のパノラマ画像表示装置30Bの動作について、説明する(適宜
図10参照)。
ステップS1〜S4は、
図9と同様のため、説明を省略する。
【0084】
パノラマ画像表示装置30Bは、パノラマ画像選択部35bによって、前記した第1例又は第2例の手法により、記憶部32に記憶された複数のパノラマ画像50から、1つのパノラマ画像50を選択する(ステップS10)。
【0085】
パノラマ画像表示装置30Bは、表示半径算出部35aによって、ステップS4で入力された観察方向に基づいて、記憶部32から距離情報を取得し、取得した距離情報に応じて、ステップS10で選択されたパノラマ画像の表示半径を算出する(ステップS11)。
【0086】
パノラマ画像表示装置30Bは、パノラマ画像表示部36Bによって、ステップS10で選択されたパノラマ画像を、ステップS11で算出した表示半径で表示装置40に表示させる(ステップS12)。
【0087】
[作用・効果]
パノラマ画像表示装置30Bは、第1実施形態と同様、視点を移動させたときの違和感を少なくすると共に、パノラマ画像50の表示範囲から観察位置が外れることを防止できる。
さらに、
図11に示すように、パノラマ画像表示装置30Bは、複数のパノラマ画像50を切り替えるので、例えば、障害物の裏側を表示するように、様々な視点でパノラマ画像を表示することができる。
【実施例】
【0088】
図13〜
図15を参照し、本願発明の実施例に係るパノラマ画像表示システム(以後、パノラマ画像表示システム1Cと呼ぶ)について、説明する。
図13では、天井内部を表した3次元仮想空間70において、梁、ブリーズライン等の障害物が存在する箇所をハッチングで図示した。
【0089】
パノラマ画像表示システム1Cは、
図10のパノラマ画像表示システム1Bと同様の構成であり、天井内部を撮影したパノラマ画像を生成、表示するものである。
図13に示すように、パノラマ画像表示システム1Cは、撮影装置10を天井に設けられた第1の点検口(中心位置50a
1)に挿入し、第1の点検口から天井内部を撮影し、パノラマ画像50
1を生成する。
図14のパノラマ画像50
1は、観察方向51
1で中心位置50a
1から天井内部を表示したものである。
【0090】
また、パノラマ画像表示システム1Cは、撮影装置10を第2の点検口(中心位置50a
2)に挿入し、第2の点検口から天井内部を撮影し、パノラマ画像50
2を生成する。
図15のパノラマ画像50
2は、観察方向51
2で中心位置50a
2から天井内部を表示したものである。
【0091】
図14に示すように、パノラマ画像50
1は、障害物で視界が遮られるため、その裏側を表示できない。そこで、ユーザが観察位置をパノラマ画像50
2に近づけることで、パノラマ画像表示システム1Cは、パノラマ画像50
1をパノラマ画像50
2に切り替えて表示する。すると、
図15に示すように、パノラマ画像表示システム1Cは、パノラマ画像50
2により、障害物の裏側を表示することができる。
【0092】
このように、パノラマ画像表示システム1Cは、複数のパノラマ画像50を3次元仮想空間70に配置し、表示するパノラマ画像50を切り替えるので、障害物の裏側も表示することができる。従って、パノラマ画像表示システム1Cは、普段目にすることが少ない天井内部を、分かりやすく表示することができる。
【0093】
(変形例)
本願発明に係るパノラマ画像表示装置は、前記した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で変形を加えることができる。
前記した実施形態では、ステレオ画像を用いて距離情報を生成することとして説明したが、これに限定されない。例えば、パノラマ画像表示装置は、レーザ距離計、GPS(Global Positioning System)等の計測装置により距離を計測し、距離情報を生成してもよい。さらに、パノラマ画像表示装置は、手動で測量された距離に基づいて、距離情報を生成してもよい。
【0094】
前記した実施形態では、パノラマ画像の表示半径を算出する際、観察方向のみを利用することとして説明したが、これに限定されない。例えば、記憶部には、屋内で壁面の位置を示す壁面位置データを予め記憶しておく。
図16に示すように、表示半径算出部は、壁面位置データを用いて、入力された観察方向51を向いたときの、観察位置52に正対する壁面上の正対位置53を求める。そして、表示半径算出部は、中心位置50aから正対位置53までの距離L6を、パノラマ画像の表示半径として算出する。
【0095】
さらに、算出した表示半径が、中心位置50aから観察位置52までの距離(
図8の距離L4)よりも小さい場合もある。この場合、表示半径算出部は、パノラマ画像の表示半径算出の第3例で説明した手法を用いて、算出した表示半径を拡大してもよい。