特許第6143654号(P6143654)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143654
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/04 20060101AFI20170529BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20170529BHJP
   C11D 1/68 20060101ALI20170529BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20170529BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20170529BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C11D3/04
   C11D1/75
   C11D1/68
   A01N59/16 Z
   A01N25/30
   A01P3/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-244771(P2013-244771)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-101692(P2015-101692A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100076680
【弁理士】
【氏名又は名称】溝部 孝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】大谷 孝
【審査官】 古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−126724(JP,A)
【文献】 特開2012−051858(JP,A)
【文献】 特開2010−202720(JP,A)
【文献】 特開2007−177128(JP,A)
【文献】 特開2007−177085(JP,A)
【文献】 特開2007−126581(JP,A)
【文献】 特開2005−154506(JP,A)
【文献】 特開2004−277554(JP,A)
【文献】 特開2004−203918(JP,A)
【文献】 特開2004−189874(JP,A)
【文献】 特開2004−175846(JP,A)
【文献】 特開2004−131626(JP,A)
【文献】 特開2003−096498(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/079817(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 3/04
A01N 25/30
A01N 59/16
A01P 3/00
C11D 1/68
C11D 1/75
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)亜鉛又はその塩〔以下、(A)成分という〕を亜鉛イオン換算で0.02質量%以上、0.7質量%以下、(B)アミンオキサイド型界面活性剤〔以下、(B)成分という〕を4.5質量%以上、22質量%以下、(C)アルキルグリコシド型界面活性剤〔以下、(C)成分という〕を5質量%以上、22.5質量%以下、含有し、陰イオン界面活性剤の含有量が3質量%以下である、食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物。
【請求項2】
(A)成分の亜鉛イオン換算の質量と(B)成分の質量との比が、〔(B)成分の質量〕/〔(A)成分の亜鉛イオン換算の質量〕で、40以上、200以下である、請求項1記載の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物。
【請求項3】
(A)成分が、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、塩化亜鉛及び過塩素酸亜鉛から選ばれる1種以上である、請求項1又は2記載の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を、食器又は調理器具の洗浄道具に適用する、食器又は調理器具の洗浄道具の除菌方法。
【請求項5】
前記組成物を適用後、4時間以上洗浄道具を放置する、請求項4記載の食器又は調理器具の洗浄道具の除菌方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に洗浄剤は、洗浄力の点から陰イオン界面活性剤が用いられており、特に食器洗い用の洗浄剤は、省資源の観点から、陰イオン界面活性剤濃度を高めた濃縮タイプの組成物が提案されている。また、衛生に対する意識の高まりから、洗浄剤分野においても抗菌剤等を配合し、洗浄対象物や洗浄道具の菌を除去したり、菌の繁殖を抑制したりするなどの研究が行われている。
【0003】
しかしながら、陰イオン界面活性剤の濃度が高い食器洗い用洗浄剤組成物においては、従来用いられている抗菌剤では効果が発現し難く、満足できる抗菌効果を得るためには多くの抗菌剤を用いなければならなかった。また、抗菌剤の抗菌効果を阻害しないために、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、又は半極性界面活性剤を主成分とした食器洗い用洗浄剤組成物では、満足する洗浄力が得られなかった。
【0004】
亜鉛化合物を抗菌剤として用いる技術はすでに知られている。例えば、特許文献1には、陰イオン界面活性剤、多価カルボン酸、亜鉛、アルカリ土類金属、及び水を所定条件で含有する液体洗浄剤組成物が開示されている。特許文献2には、亜鉛及びモノアルキルグリセリルエーテルを含有する抗菌剤が開示されており、低濃度の亜鉛と高濃度の陰イオン界面活性剤とを併用した場合でも、抗菌性が高く、かつ貯蔵安定性に優れた抗菌液体洗浄剤組成物を提供できることが記載されている。特許文献3には、非イオン界面活性剤、亜鉛塩、及び所定の有機酸を、所定条件で含有する硬表面用液体洗浄剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−131626号公報
【特許文献2】特開2005−170878号公報
【特許文献3】特開2005−336384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
汚れや菌汚染の環境が非常に厳しい厨房業務品用途での液体洗浄剤組成物においては、従来提案されている方法では、十分な抗菌効果が発現できない場合がある。業務用施設の厨房周りにおける洗浄道具では多数の菌が検出されることが判っている。しかし、洗浄道具に菌汚染があったとしても、その洗浄道具の菌数を低減することにより、食器、調理器具や、食物への交差汚染も低減出来ると考えられる。業務用施設の厨房などにて使用される洗浄道具は、一般家庭で使用されるものに比べ非常に汚れ負荷が高く、さらにはスポンジなどの多孔性材料からなる洗浄道具中ではバイオフィルムも多く存在するものと考えられ、洗浄剤により洗浄道具の除菌を十分に行うためには、より高い水準の抗菌力が要求される。
【0007】
また、厨房業務品用途での液体洗浄剤組成物では、使い勝手の面から適切な粘度があり、そのような粘度を具備しつつ、液体組成物の安定性、特に低温での保存安定性に優れることが望まれる。
【0008】
本発明の課題は、良好な洗浄力を有し、汚れや菌汚染の環境が非常に厳しい業務用厨房用途においても確実な除菌効果を発現し、食器又は調理器具用の液体洗浄剤組成物として望ましい粘度及び低温での保存安定性を有する、食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、(A)亜鉛又はその塩〔以下、(A)成分という〕を亜鉛イオン換算で0.02質量%以上、0.7質量%以下、(B)アミンオキサイド型界面活性剤〔以下、(B)成分という〕を4.5質量%以上、22質量%以下、(C)アルキルグリコシド型界面活性剤〔以下、(C)成分という〕を5質量%以上、22.5質量%以下、含有し、陰イオン界面活性剤の含有量が3質量%以下である、食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を、食器又は調理器具の洗浄道具に適用する、食器又は調理器具の洗浄道具の除菌方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、良好な洗浄力を有し、汚れや菌汚染の環境が非常に厳しい業務用厨房用途においても確実な除菌効果を発現し、食器又は調理器具用の液体洗浄剤組成物として望ましい粘度及び低温での保存安定性(以下、低温保存安定性ともいう)を有する、食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<(A)成分>
(a)成分の亜鉛は、亜鉛イオンとして含有されていることが好ましい。また亜鉛は、洗浄剤に溶解したときに解離した亜鉛イオンを生成する化合物として配合されることが好ましく、より好ましくは20℃の水100gにおける溶解度が5g以上、より好ましくは10g以上の亜鉛塩として配合される。
【0013】
このような亜鉛塩としては、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、過塩素酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、硫酸亜鉛アルミニウム、硫酸亜鉛カリウム、ヨウ化亜鉛等を挙げることができる。
【0014】
(a)成分としては、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、酒石酸亜鉛、塩化亜鉛及び過塩素酸亜鉛から選ばれる1種以上が、除菌性の観点から好ましい。また、(a)成分としては、汎用性の観点から、硫酸亜鉛が好ましい。なお、亜鉛は、解離した亜鉛イオンと解離平衡にある全ての亜鉛を含むものとする。
【0015】
<(B)成分>
(B)成分のアミンオキサイド型界面活性剤は、粘度、除菌性、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、炭素数が好ましくは8以上、より好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下の炭化水素基を有する。より好ましくは、(B)成分のアミンオキサイド型界面活性剤は、炭素数が好ましくは8以上、より好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、好ましくは14以下、より好ましくは13以下の炭化水素基1個と炭素数1以上、3以下の炭化水素基2個とを有する。炭素数8以上、14以下の炭化水素基はアルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。炭素数1以上、3以下の炭化水素基はアルキル基又はアルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0016】
具体的に好ましい(B)成分としては、下記一般式(B1)の化合物を挙げることができる。
【0017】
【化1】
【0018】
〔式中、R1bは炭素数8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上、そして、14以下、好ましくは13以下の直鎖アルキル基又は直鎖アルケニル基であり、R3b、R4bは炭素数1以上、3以下のアルキル基又はヒドロキシアルキル基である。R2bは炭素数1以上、5以下、好ましくは2又は3のアルキレン基である。Aは−COO−、−CONH−、−OCO−、−NHCO−、−O−から選ばれる基であり、nは0又は1、好ましくは0である。〕
【0019】
(B)成分は、炭素数8以上、14以下のアルキル基を有するアルキルジメチルアミンオキサイドが好ましい。
【0020】
<(C)成分>
(C)成分のアルキルグリコシド型界面活性剤としては、粘度、除菌性、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、下記一般式(C1)で表される化合物が好ましい。
1c−(OR2cxy (C1)
〔式中、R1cは直鎖の炭素数8以上、好ましくは10以上、16以下、好ましくは14以下のアルキル基、R2cは炭素数2以上、4以下のアルキレン基、好ましくはエチレン基又はプロピレン基、より好ましくはエチレン基であり、Gは還元糖に由来する残基、xは平均値0以上、6以下の数、yは平均値1以上、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは2以下の数を示す。〕
【0021】
一般式(C1)の化合物において、Gは還元糖に由来する残基であり、Gの原料の還元糖は、アルドースとケトースの何れであっても良い。また、Gの原料の還元糖は、炭素数が3のトリオース、炭素数が4のテトロース、炭素数が5のペントース、炭素数が6のヘキソースを挙げることができる。アルドースは、具体的に、具体的には、アピオース、アラビノース、ガラクトース、グルコース、リキソース、マンノース、ガロース、アルドース、イドース、タロース、キシロースを挙げることができる。また、ケトースは、具体的に、フラクトースを挙げることができる。本発明のGの原料の還元糖は、これらの中、粘度、除菌性、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、炭素数5のアルドースであるアルドペントース又は炭素数6のアルドースであるアルドヘキソースであり、より好ましくはグルコースである。
【0022】
一般式(C1)の化合物は、上記還元糖と R1c−(OR2cx−OH とを酸触媒を用いてアセタール化反応又はケタール化反応することで容易に合成することができる。また、アセタール化反応の場合、ヘミアセタール構造であっても良く、通常のアセタール構造であっても良い。
【0023】
一般式(C1)の化合物は、粘度、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、の点から好ましい。
【0024】
<食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物>
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物は、(A)成分を、亜鉛イオン換算で0.02質量%以上、0.7質量%以下含有する。(A)成分の含有量は、除菌性の観点から、亜鉛イオン換算で、組成物中、0.02質量%以上であり、好ましくは0.04質量%以上、より好ましくは0.06質量%以上、より好ましくは0.08質量%以上である。また、(A)成分の含有量は、低温保存安定性の観点から、亜鉛イオン換算で、組成物中、0.7質量%以下であり、好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下である。
【0025】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物は、(B)成分を、4.5質量%以上、22質量%以下含有する。(B)成分の含有量は、粘度、除菌性、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、組成物中、4.5質量%以上であり、好ましくは5.5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。また、(B)成分の含有量は、粘度、洗浄性及び低温保存安定性の観点から22質量%以下であり、好ましくは21質量%以下、より好ましくは17質量%以下である。
【0026】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物では、粘度及び除菌性の観点から、(A)成分の亜鉛イオン換算の質量と(B)成分の質量との比は、〔(B)成分の質量〕/〔(A)成分の亜鉛イオン換算の質量〕で、好ましくは40以上、より好ましくは50以上、より好ましくは60以上、より好ましくは80以上、より好ましくは90以上である。また、〔(B)成分の質量〕/〔(A)成分の亜鉛イオン換算の質量〕の質量比は、粘度及び低温保存安定性の観点から、好ましくは200以下、より好ましくは190以下、より好ましくは160以下である。
【0027】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物は、(C)成分を、5質量%以上、22.5質量%以下含有する。(C)成分の含有量は、粘度、除菌性、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、組成物中、5質量%以上であり、より好ましくは7質量%以上、より好ましくは9質量%以上である。また、(C)成分の含有量は、粘度及び除菌性の観点から、組成物中、22.5質量%以下であり、好ましくは21.5質量%以下、より好ましくは20質量%以下、より好ましくは17質量%以下である。
【0028】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物は、粘度、除菌性、洗浄性及び低温保存安定性の観点から、(B)成分と(C)成分の質量比は、〔(B)成分の質量〕/〔(C)成分の質量〕で、好ましくは0.20以上、より好ましくは0.25以上、より好ましくは0.35以上、より好ましくは0.65以上であり、そして、好ましくは8以下、より好ましくは5以下、より好ましくは3以下、より好ましくは2以下である。
【0029】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物では、(A)成分の含有量、(B)成分の含有量、及び(C)成分の含有量の合計は、組成物中、洗浄性及び粘度の観点から、好ましくは18質量%以上、より好ましくは22質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、そして、粘度、低温保存安定性及び経済性の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0030】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物では、(A)成分の含有量、(B)成分の含有量、及び(C)成分の含有量の合計は、水以外の成分中、除菌性の観点から、好ましくは85質量%以上、より好ましくは90質量%以上、より好ましくは93質量%以上である。
【0031】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物では、除菌性、粘度及び低温保存安定性の観点から、陰イオン界面活性剤の含有量が3質量%以下である。陰イオン界面活性剤の含有量は、組成物中、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。陰イオン界面活性剤を含有しないこと、すなわち、陰イオン界面活性剤の含有量が、組成物中、0質量%がより好ましい。
【0032】
陰イオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル及びこれらの塩が挙げられる。本発明では、アルキルベンゼンスルホン酸、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル及びこれらの塩から選ばれる陰イオン界面活性剤の含有量を前記範囲に制限してよい。
【0033】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、低温保存安定性及び粘度の観点から、好ましくは5.5以上、より好ましくは5.8以上、より好ましくは6.0以上であり、そして、好ましくは8.5以下、より好ましくは7.5以下、より好ましくは7.0以下である。
【0034】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物の20℃における粘度は、使用時のハンドリングの観点から、好ましくは80mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは150mPa・s以上、220mPa・s以上であり、そして、好ましくは1000mPa・s以下、より好ましくは700mPa・s以下、より好ましくは600mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下である。粘度は、B型粘度計によりローターNo.2を用いて、60rpm、1分間、20℃の条件で測定されたものである。
【0035】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物は、前述した(A)成分、(B)成分、(C)成分及び陰イオン界面活性剤の他に、本発明の効果に影響しない範囲で、通常の液体洗浄剤に含有することができる成分を含有することができる。例えば、亜硫酸ナトリウムなどの防錆剤、或いは、香料、色素などが挙げられる。なお、(A)成分の効果を考慮すると、キレート剤のように金属イオンを捕捉する成分の含有量は少ない方が好ましい。本発明では、キレート剤の含有量が組成物中、0.01質量%未満であることが好ましく、0.005質量%以下がより好ましい。キレート剤を含有しないこと、すなわち、キレート剤の含有量が、組成物中、0質量%であってもよい。キレート剤は、多価カルボン酸又はその塩が挙げられ、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、及びこれらの塩から選ばれるキレート剤が挙げられる。クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、及びこれらの塩から選ばれるキレート剤の含有量を前記範囲に制限してよい。
【0036】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物の調製方法は、特に限定されるものではないが、高粘度化を抑制する観点から、(C)成分の配合の前に、(A)成分、(B)成分及びその他成分を配合することが好ましい。すなわち、(A)成分と(B)成分とを混合した後、(C)成分を混合することが好ましい。
【0037】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物の外観は、(A)成分、(B)成分、及び(C)成分の各有効成分の効果を発現させる観点から、均一透明であることが好ましい。なお、ここで、食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物について「均一透明」とは、濁りや分離がなく、沈殿、凝集、浮遊物といった異物が目視により認められないことをいう。
【0038】
本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を、食器又は調理器具に適用して、食器又は調理器具を洗浄する。本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物の食器又は調理器具への適用は、具体的には、適量を洗浄道具に塗布し、手洗いにて洗浄により行う。本発明により、本発明は、本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を、食器又は調理器具に適用する、食器又は調理器具の洗浄方法が提供される。
【0039】
本発明の対象となる食器は、皿、グラス、コップ、パントリーなどが挙げられる。また、本発明の対象となる調理器具は、レストランの厨房等で使用される包丁、まな板、又はザル等の調理器具類が挙げられる。さらに、本発明の対象として、食品工場や飲料工場等で使用される食品や飲料を製造、又は加工する機器、設備、若しくは充填機類等、食品と直接接触する器具、機器、又は設備類が挙げられる。
【0040】
<洗浄道具の除菌方法>
本発明は、本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を、食器又は調理器具の洗浄道具に適用する、食器又は調理器具の洗浄道具の除菌方法に関する。好ましくは本発明の組成物が接触した状態、より好ましくは本発明の組成物から適用された(A)成分、(B)成分及び(C)成分が接触した状態を一定時間維持する。本発明では、前記組成物を適用後、除菌性の観点から、好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上、より好ましくは6時間以上、より好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間以上、より好ましくは16時間以上、そして、経済性の観点から、好ましくは3日以下、より好ましくは2日以下、より好ましくは1日以下、より好ましくは20時間以下、洗浄道具を放置する。手間を掛けない観点から、室温で自然乾燥することが好ましい。放置する際の温度は、乾燥効率の観点から好ましくは10℃以上、より好ましくは15℃以上、そして、除菌性の観点から好ましくは35℃以下、より好ましくは30℃以下である。
【0041】
更に、本発明により、
(I)本発明の洗浄剤組成物を含む食器又は調理器具の洗浄道具で食器又は調理器具を洗浄すること、
(II)洗浄後の洗浄道具を水で濯いだ後、該洗浄道具に本発明の洗浄剤組成物を付着させること、
(III)(II)の後、洗浄道具を、5℃以上、40℃以下の温度で、4時間以上好ましくは5時間以上、より好ましくは6時間以上、より好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間以上、より好ましくは16時間以上、そして、3日以下、好ましくは2日以下、より好ましくは1日以下、より好ましくは20時間以下放置すること、
を、(I)、(II)、次いで(III)の順に、繰り返し行う、洗浄道具の使用方法が提供される。
【0042】
更に、本発明により、本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を、食器又は調理器具を付着させた洗浄道具で食器又は調理器具を洗浄した後、前記洗浄道具が、前記組成物から取り込まれた(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含んだ状態を維持する、除菌方法が提供される。
【0043】
例えば、一日の洗浄作業終了時に、本発明の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物の原液をスポンジ等の洗浄道具に適量含浸させ、そのまま自然乾燥放置するだけで、数時間後或いは翌日の洗浄道具の菌数を効果的に低減する。また、食器又は調理器具を洗浄した後、洗浄道具をそのまま自然乾燥放置するだけで、洗浄道具に本発明の組成物が付着した状態が維持され、数時間後或いは翌日の洗浄道具の菌数を効果的に低減する。
【0044】
本発明の組成物を適用後放置する時間、洗浄道具に(A)成分、(B)成分及び(C)成分が付着した状態を維持する時間、又は乾燥時間は、除菌性の観点から、好ましくは4時間以上、より好ましくは5時間以上、より好ましくは6時間以上、より好ましくは8時間以上、より好ましくは12時間以上、より好ましくは16時間以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは3日以下、より好ましくは2日以下、より好ましくは1日以下、より好ましくは20時間以下である。
【0045】
本発明の対象となる洗浄道具としては、スポンジ等の可撓性吸収体、ブラシや束子などが挙げられる。効果的な除菌性を得る観点から、スポンジ等の可撓性吸収体が好適である。
【実施例】
【0046】
実施例1〜8、比較例1〜8
表1記載の洗浄剤組成物を調製し、25℃における洗浄剤組成物のpHをpHメータにより測定した。実施例1〜8の組成物は、目視観察で均一透明な外観を呈していた。また、20℃における洗浄剤組成物の粘度をB型粘度計により測定した。それぞれの測定結果を表1に記載した。さらに、−5℃における保存安定性、スポンジ除菌性、及び洗浄性を下記の方法により評価した。評価結果を表1に記載した。
【0047】
<−5℃における保存安定性の評価>
洗浄剤組成物100mLを充填したNo.11の規格瓶を、−5℃の恒温槽に入れて20日間保存した。保存後の洗浄剤組成物の外観の状態を目視により観察して、下記の基準で評価した。
G:均一透明であった。
NG:濁り、分離、又は沈殿等の状態変化があった。
【0048】
<スポンジ除菌性の評価>
緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa NBRC13275)をLB培地(日本ベクトン・ディッキンソン(株)製)を用いて、37℃で18時間前培養して増殖させた。その後、生理食塩水10mLを加え、懸濁させて菌液を得た。菌液1mL中の菌数を測定し、初期接種菌数を得た。
市販鶏肉ミンチ5gと滅菌水100mLをジューサーで混合したモデル汚れに、菌液1mLと洗浄剤組成物1mLとを加えた。菌液と洗浄剤組成物を加えたモデル汚れを、市販の新品スポンジ(115mm×75mm×35mmの可撓性吸収体、商品名:キクロン、販売元:キクロン株式会社)に1分間揉み込んだ。そのスポンジを軽く絞った後、25℃で5時間放置した。そのスポンジを水道水の流水にて10秒間すすいだ。さらに、洗浄剤組成物2gをスポンジに揉み込み、25℃で18時間放置した。
その後、LP希釈液(品名 LP希釈液「ダイゴ」日本製薬株式会社製)100mLにてスポンジを揉んで搾り出し、その絞り液1mL中の菌数を測定し、操作後菌数を得た。(初期接種菌数)/(操作後菌数)の商を求め、その10を底とする対数を除菌活性値とした。
即ち、除菌活性値は、以下の式で算出される。表中の値が大きいものほど除菌性が高いことを意味する。
除菌活性値=Log10[(初期接種菌数)/(操作後菌数)]
【0049】
<洗浄性の評価>
市販の新品スポンジ(115mm×75mm×35mmの可撓性吸収体、商品名:キクロン、販売元:キクロン株式会社)を30℃に調整した水道水でもみ洗いし、水道水の含有量が約10gになるまでスポンジを絞った後、表1記載の食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物1gと水道水約20gを染み込ませた。絞った後の水道水の含有量と染み込ませた水道水の含有量との合計が30gとなるようにした。予め用意したモデル汚れ付き食器上で食器又は調理器具洗浄用洗浄剤組成物を染みこませたスポンジを2〜3回手でもみ泡立たせた後、モデル汚れ付き食器を擦り洗いした。モデル汚れ付き食器は、質量比が1:1となるように混合した牛脂となたね油との混合物1gを均一に塗布した直径200mmの陶器皿とした。30℃に調整した水道水にて4L/minの流速で30秒間流水すすぎを行い、洗浄できた皿の枚数を求め、洗浄できた皿の枚数により洗浄性を評価した。すすぎ後の皿のヌルつきが無い場合に、洗浄できたと判断した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1中の成分は以下のものである。なお、表1中、(A)成分のかっこ内の数字は、亜鉛イオン換算の質量%である。また、表1中、(B)/(A)質量比は、〔(B)成分の質量〕/〔(A)成分の亜鉛イオン換算の質量〕である。
・硫酸亜鉛:ZnSO4・7H2
・アミンオキサイド:一般式(B1)において、R1bが炭素数12の直鎖アルキル基、nが0、R3b、R4bが炭素数1のアルキル基であるアミンオキサイド型界面活性剤(N−ラウリル−N,N−ジメチルアミンオキサイド)
・アルキルグルコシド:一般式(C1)において、R1cが炭素数12の直鎖アルキル基、xが0、Gがグルコースに由来する基、グルコースの縮合度yが平均値1.3であるアルキルグリコシド型界面活性剤
・ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル:一般式 R−O−(EO)n−H において、Rが炭素数12のアルキル基であり、EOがエチレンオキシ基であり、EOの平均付加モル数nが21の非イオン界面活性剤
・ポリオキシエチレン(7)アルキル(sec−C12−C14)エーテル:一般式 R−O−(EO)n−H において、Rが炭素数12〜14の第2級の混合アルキル基であり、EOがエチレンオキシ基であり、EOの平均付加モル数nが7の非イオン界面活性剤
・LAS−S:炭素数12の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸
【0052】
実施例9
実施例3のスポンジ除菌性の評価において、25℃で18時間放置する代わりに、25℃で5時間放置した結果、除菌活性値が4.8であった。