特許第6143669号(P6143669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143669
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】グレーチング用孔開き突起付き主部材
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/12 20060101AFI20170529BHJP
   E03F 5/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   E03C1/12 A
   E03F5/06 Z
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-273703(P2013-273703)
(22)【出願日】2013年12月28日
(65)【公開番号】特開2015-127487(P2015-127487A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2016年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】595126082
【氏名又は名称】中尾技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101627
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
(72)【発明者】
【氏名】中尾 吉也
【審査官】 七字 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−235774(JP,A)
【文献】 実開昭58−095437(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12 − 1/33
E03F 1/00 −11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平配設される帯状の鋼製上板部(2)と、該上板部(2)の帯幅方向の両側縁(21,21)から下方へそれぞれ延在する鋼製側板部(3,3)と、前記上板部(2)に上下方向へ貫通する透孔(40)を有して、該透孔(40)の周縁(41)を上板部(2)の表面(2a)から上方側へ筒状に形成される鋼製孔開き突起(4)と、を具備し、且つ該孔開き突起(4)が、前記上板部(2)の長手方向へ向け、互いに離間させて複数設けられ、さらに前記上板部(2)の両側縁(21)から下方へ延在する側板部(3)に係る一方の側板部を、他方の側板部よりも下方へ延びて帯幅方向長さ(W)が長くなる幅広側板部(3A)とし、且つ少なくともこの幅広側板部(3A)に、連結材(5)を貫通させる通孔(30)が設けられ、該連結材(5)とで格子状に形成されるようにしたことを特徴とするグレーチング用孔開き突起付き主部材。
【請求項2】
前記孔開き突起(4)が、バーリング加工により前記上板部(2)に一体成形され、さらに該孔開き突起(4)の上方へ向けてその横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台の形状である請求項1記載のグレーチング用孔開き突起付き主部材。
【請求項3】
前記孔開き突起(4)がピアスバーリング加工により上板部(2)に一体成形され、さらに前記筒状錐台の孔開き突起(4)に係る錐面(45)と上板部(2)の表面(2a)とのなす角度θが45°〜75°の範囲内にある請求項2記載のグレーチング用孔開き突起付き主部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨房等の排水溝や雨水用側溝などの上面開口に蓋をするグレーチング(溝蓋)や、クリーンルーム向けフロアパネルの格子状体(グレーチング)で、そのグレーチング用孔開き突起付き主部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、厨房の排水溝の上面開口に蓋をするグレーチングが存在するが、厨房では水を使用することから、該グレーチングで作業者が滑り易い問題があった。こうしたことから、滑り止め防止の改善発明が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−1801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1はその請求項1に記載のごとく「…各メインバー(110)の間の所要箇所に、上部が通水用の隙間(100)から突出しメインバー(110)の上面より高くなるよう着脱自在に取り付けられた滑り止め部材(2)と、を備えている、グレーチング。」であり、メインバーや連結手段とは別体の滑り止め部材(2)を必要とした。部品点数が増え、さらにグレーチングの組立ても厄介であった。
起立部gと上板部fとで断面T字形とし、その上板部fに滑り止めを設けて、組立ても単純化させた図10のようなグレーチング用凸部付き主部材baも発明されている。ただ、エンボス加工による凸部ebであり、該凸部ebが主部材baの上面でなだらかに隆起していることから、ストッパとしての機能を十分発揮させるには至らないでいる。エンボス加工により図10(ロ)のごとく凸部ebが丸みをもって上板部fの上面で隆起しているので、滑り止め効果を上げるのに限界があった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するもので、主部材そのものに滑り止め機能をもたせ、しかもエッジ部分を確保して滑り止め効果をいかんなく発揮できるグレーチング用孔開き突起付き主部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、水平配設される帯状の鋼製上板部(2)と、該上板部(2)の帯幅方向の両側縁(21,21)から下方へそれぞれ延在する鋼製側板部(3,3)と、前記上板部(2)に上下方向へ貫通する透孔(40)を有して、該透孔(40)の周縁(41)を上板部(2)の表面(2a)から上方側へ筒状に形成される鋼製孔開き突起(4)と、を具備し、且つ該孔開き突起(4)が、前記上板部(2)の長手方向へ向け、互いに離間させて複数設けられ、さらに前記上板部(2)の両側縁(21)から下方へ延在する側板部(3)に係る一方の側板部を、他方の側板部よりも下方へ延びて帯幅方向長さ(W)が長くなる幅広側板部(3A)とし、且つ少なくともこの幅広側板部(3A)に、連結材(5)を貫通させる通孔(30)が設けられ、該連結材(5)とで格子状に形成されるようにしたことを特徴とするグレーチング用孔開き突起付き主部材にあることを特徴とする。
請求項2の発明たるグレーチング用孔開き突起付き主部材は、請求項1で、記孔開き突起(4)が、バーリング加工により前記上板部(2)に一体成形され、さらに該孔開き突起(4)の上方へ向けてその横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台の形状であることを特徴とする。
請求項3の発明たるグレーチング用孔開き突起付き主部材は、請求項2で、孔開き突起(4)がピアスバーリング加工により上板部(2)に一体成形され、さらに前記筒状錐台の孔開き突起(4)に係る錐面(45)と上板部(2)の表面(2a)とのなす角度θが45°〜75°の範囲内にあることを特徴とする。
【0007】
(作用)
請求項1の発明のごとく、上板部(2)に孔開き突起(4)を具備すると、該孔開き突起(4)の透孔(40)周りに、滑り止め効果が期待できるエッジのある角部を作製できる。上板部(2)の帯幅方向の両側縁(21,21)から下方へそれぞれ延在する鋼製側板部(3,3)とすると、主部材上に車両,歩行者等の荷重負荷に十分耐えられるようになる。
さらに、上板部(2)の両側縁(21)から下方へ延在する側板部(3)に係る一方の側板部を、他方の側板部よりも下方へ延びて帯幅方向長さ(W)が長くなる幅広側板部(3A)とすると、該幅広側板部と幅小側板部による異形溝形を有することになり、孔開き突起付き主部材の荷重による曲げ特性の断面二次モーメントを大きくできる。
請求項2の発明のごとく、バーリング加工により孔開き突起(4)が形成されると、その加工で透孔(40)周りに角部が自動的に形成されるので、エッジを後加工等で作製する必要がない。孔開き突起(4)が、その上方へ向けて横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台の形状であると、透孔を形成する孔開き突起先端に角部が形成されるので、角部が上板部上に露出し、滑り止め効果を存分に発揮する。
請求項3の発明のごとく、孔開き突起(4)がピアスバーリング加工により上板部(2)に一体成形されると、ピアスバーリング加工が通常のバーリング加工と違って一工程で孔開き突起を作製できるので、作業性向上,生産性向上につながる。孔開き突起(4)に係る錐面(45)と上板部(2)の表面(2a)とのなす角度θが45°〜75°の範囲内にあると、透孔周りの孔開き突起先端で、断面「ヘ」字形の突起角部が上板部上に露出するので、より一層良好な滑り止め効果を発揮できるようになる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のグレーチング用孔開き突起付き主部材は、主部材に孔開き突起を一体形成が可能で、さらに該孔開き突起に高い滑り止め機能を有するエッジのある角部を簡単に製造できるなど多大な効を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のグレーチング用孔開き突起付き主部材の一形態で、その部分斜視図である。
図2図1のI-I線矢視図である。
図3】(イ)が孔開き突起付き主部材の右半分正面図、(ロ)が(イ)のII-II線矢視図、(ハ)が(イ)のIII-III線矢視図である。
図4】(イ)が図1の孔開き突起付き主部材を用いたグレーチングの平面図、(ロ)が(イ)のIV-IV線矢視図である。
図5図4のV-V線矢視図である。
図6図2に代わる他態様の孔開き突起周りの説明断面図である。
図7】(イ)が図2に代わる別態様の孔開き突起周りの平面図、(ロ)は(イ)のVII-VII線矢視図である。
図8】(イ)が図2に代わる別態様の孔開き突起周りの平面図、(ロ)は(イ)のVIII-VIII線矢視図である。
図9図3(ハ)に代わる孔開き突起付き主部材の他態様の横断面図である。
図10】(イ)従来技術の説明斜視図、(ロ)が(イ)の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る格子盤体について詳述する。
図1図10は本発明のグレーチング用孔開き突起付き主部材(以下、単に「主部材」又は「孔開き突起付き主部材」ともいう。)の一形態で、厨房床面の排水溝に蓋をするグレーチング用の主部材に適用する。
図1は主部材の部分斜視図、図2図1のI-I線矢視図、図3は(イ)が主部材の右半分正面図、(ロ)が(イ)のII-II線矢視図、(ハ)が(イ)のIII-III線矢視図、図4は(イ)が本主部材を用いたグレーチングの平面図、(ロ)が(イ)のIV-IV線矢視図、図5図4のV-V線矢視図、図6図2に代わる他態様の孔開き突起周りの説明断面図で、図2に対応する縦断面図である。図7,図8は(イ)が図2に代わる別態様の孔開き突起周りの平面図、(ロ)は(イ)のVII-VII線矢視図,VIII-VIII線矢視図、図9図3(ハ)に代わる孔開き突起付き主部材の他態様の横断面図である。尚、図3(イ)は切欠35の位置を判り易くするため、通孔30内へ強調して張り出す形状にし、図4(ロ)の孔開き突起付き主部材1は簡略図示する。
【0011】
主部材1は、炭素鋼製やステンレス鋼製等の鋼板を用いたプレス加工品で、鋼製上板部2と鋼製側板部3と鋼製孔開き突起4とを具備する(図1)。水平配設される平面視帯状の上板部2と、該上板部2の両側縁21から下方へそれぞれ延在する帯状側板部3,3とで、長手方向に向け側面視「コ」字状又は「7」字状の等断面形状品とする。グレーチングGRの使用時、側板部3の帯幅方向を起立させるようにして主部材1が配設される。そして、長手方向等断面形状のこの金属加工品の上板部2に孔開き突起4が複数設けられ、また側板部3に通孔30,切欠35が設けられる。
【0012】
詳しくは、帯状鋼板の曲げ,成形加工により、平面視細長矩形の上板部2に係る表面2aを上側にして水平に保った状態で、該上板部2の帯幅方向の両側縁21から下方にそれぞれ延在する側板部3を有する主部材とする。本発明でいう「上側」,「上方向」とは側溝9の上面開口90にグレーチングGRで蓋をした図5のグレーチング使用状態の孔開き突起付き主部材1でいえば、その紙面の上側,その紙面の上方向、「下方」,「水平方向」とはその紙面下方向,紙面左右横方向及び紙面前後横方向を指す。図5中、符号91は側溝9の側壁部、符号92は底壁部、符号911はグレーチングGRを受け支える段部、符号uは流路を示す。
本実施形態の主部材1は、細長矩形の帯状上板部2と、これを水平配設したとき、その帯幅方向の両側縁21から垂直下方にそれぞれ延在する側板部3と、を備える側面視が図3(ハ)のごとく数字の「7」字状の形になっている。一方の側板部3の垂直下方へ延びる帯幅W1が、他方の側板部3の垂直下方へ延びる帯幅W2よりも長い。上板部2の両側縁21から下方へ延在する側板部3に係る一方の側板部3を、他方の側板部3よりも下方へ延びて帯幅方向長さWが長くなる幅広側板部3Aとする。さらに、少なくともこの幅広側板部3Aには、連結材5を貫通させる通孔30が設けられる。他方の側板部3となる幅小側板部3Bは、該通孔30に対応する位置に通孔30又は切欠35が設けられる。ここでの幅小側板部3Bは、図3(イ)のごとく帯幅W2が小さいため、通孔30の下方部分が切り取られた格好の略半円形又は略U字形の切欠35になっている。
【0013】
そして、前記上板部2に、上下方向へ貫通する透孔40を有して、該透孔40の周縁41を上板部2の表面2aから上方側へ筒状に形成される孔開き突起4を備える。該孔開き突起4は、上板部2の長手方向へ向け、互いに離間させて所定ピッチで複数配設される。具体的には、バーリング加工により上板部2に一体成形され、さらに上方へ向けて横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台形である孔開き突起4とする。図1図5の本実施形態の孔開き突起4は筒状円錐台であるが、これに限らず図7図8の筒状四角錐台,筒状五角錐台等の筒状多角錐台の形状とすることができる。バーリング加工では、通常、上板部2に下孔を開け、この下孔にパンチを押し込み、上板部2の表面2aよりも上方側へ張り出す穴フランジ状の孔開き突起4が設けられる。
【0014】
該バーリング加工により主部材に係る板厚の端面49が、透孔40の上面開孔40a周りに露出する(図2)。そして、図10のようなエンボス加工による全体がなだらかな曲線のエンボス凸部ebと違って、バーリング加工であることから、この端面49と錐面45との角部Eで、図2のごとく屈曲点のあるエッジを形成する。しかも、突起先端43に出来る角部Eは透孔40の上面開孔40aの外周縁先端43を取巻いて露出するので、グレーチング上へ歩いてくるあらゆる方向からの歩行者に対し、このエッジを形成した角部Eが滑り止め効果を発揮する。
【0015】
ところで、バーリング加工は一般に螺子を立てたいとき、或いはピンやパイプを嵌め込みたいときに用いられ、筒孔径が筒長方向に略一定の円筒形フランジが張り出し形成される。これに対し、本発明の孔開き突起4は、筒孔径が筒長方向に略一定の円筒形フランジでもよいが、上方へ向けてその横断面積が徐々に小さくなっていく図2ごとくの筒状錐台の形状にするのがより好ましい。孔開き突起先端43の角部Eが、図2のごとく断面「へ」字形と山状に立つので、滑り止め効果が高まるからである。さらに、孔開き突起4が、その上方へ向けてその横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台の形状であり、上板部2に対し孔開き突起4の錐面45が傾斜面になっていると、歩行者の靴の踵がその錐面45にぶつかってもそこを滑っていくので、躓き難くなっている。
【0016】
また、筒状錐台形状の孔開き突起4に係る錐面45と上板部2の表面2aとのなす角度θが45°〜75°の範囲内にあると、一層好ましくなる。上板部2の表面2aとのなす角度θが45°よりも小さくなると、図2に示した山状の角部Eを形成する片方の錐面45が横に寝る形に近づき、滑り止め効果が弱まるからである。一方、上板部2の表面2aとのなす角度θが75°よりも大きくなると、図2に示す突起先端43をつくる山状の角部Eが外方へ傾き、角部Eを形成するもう片方(他方)の端面49が横に寝る形に近づいてしまうからである。尚、本発明でいう上板部2の表面2aとで角度θを形成する錐面45とは、孔開き突起4の基端部4Rを除いた筒壁42の錐面45を指す。バーリング加工では基端部4Rに曲面部分ができるため、この部分を除外して、基端部4R以外の筒壁42の外面を錐面45とする。
【0017】
ここでは、孔開き突起付き主部材1がステンレス鋼製帯状板を用いたオールステンレス鋼製加工品にして、且つ孔開き突起4がバーリング加工のうちでもピアスバーリング加工によって上板部2に一体成形される。バーリング加工は、下孔抜き,バーリングと二工程になるのが基本で、下孔バリの面打ちなどを入れると三工程になる。ピアスバーリングにすると、一工程で済ますことができ、生産性向上につながり、一層好ましくなっている。
【0018】
前記孔開き突起4の大きさは適宜選択することができ、例えば透孔40に係る上面開孔40aの孔径が約2mmφ、下面開孔の孔径が約3mmφ、孔開き突起4の高さHが約1mmの大きさとする。斯かる孔開き突起4が、上板部2に図1,図4のごとくその長手方向へ向けて所定ピッチで複数配設される。尚、図4は、上板部2に、孔開き突起4を長手方向へ一列に並べたが、複数列や千鳥配列等にさせることもできる。
そして、図3(イ)の孔開き突起付き主部材1では、幅広側板部3Aの板面中央に通孔30を穿設すると共に、孔開き突起付き主部材1の該通孔30に対向する幅小側板部3Bの位置に切欠35を設ける。
【0019】
斯かる上板部2,側板部3,孔開き突起4,通孔30,切欠35を備える孔開き突起付き主部材1は、複数用意され、図4のごとく通水用等のスリットSL分を開けて互いに平行配設して、グレーチングの主要部材を構成する。スリットSL分の幅を確保しながら、この孔開き突起付き主部材1を互いに平行に離間させ、且つ各上板部2の表面2a(孔開き突起4を除く)を同一水平面として複数配設する。さらに、各孔開き突起付き主部材1の透孔40に連結材5を貫通させて格子状とした後、これら孔開き突起付き主部材1の両側端面19に側板7をあてがって、溶接固定することにより、所望のグレーチングが出来上がる。
【0020】
尚、図4のグレーチングは、両端の孔開き突起付き主部材1に係る幅広側板部3Aを外側に配し、該幅広側板部3Aに端板6を担わせているが、孔開き突起付き主部材1と連結材5とで格子状にした格子状体を、帯板状の側板7と帯板状端板6とで方形枠に囲ってグレーチングとすることができる。本発明は図4のごとく各孔開き突起付き主部材1に一本の連結材を通しても格子状とみなす。各孔開き突起付き主部材19の両端面19に側板7をあてがい固着することにより、格子状体を形成するグレーチングになるからである。勿論、各孔開き突起付き主部材1に、その長手方向に向け通孔30及び切欠35を離間させて複数設けると共に、複数の連結材5を用意して、夫々の通孔30,切欠35に連結材5を貫通させて格子状にすることもできる。
図中、符号2bは上板部2の裏面、符号38は側板部3の下端、符号40bは透孔40の下面開孔、符号46は孔開き突起4の内壁面を示す。
【0021】
このように構成した孔開き突起付き主部材1は、その上板部2にバーリング加工によって滑り止め機能をもつ孔開き突起4を一体成形しているので、新たな部材を要しない。滑り止め用孔開き突起4が主部材に係る上板部2に一体形成されるので、特許文献1のように部品点数が増えることなく、在庫管理,組立て作業等が容易になっている。しかも、特許文献1の滑り止め部材のごとく樹脂製であるのと違い、本孔開き突起4は炭素鋼やステンレス鋼等の鋼製であるので耐久性に優れる。長期安定して滑り止め効果を発揮する。
【0022】
そして、上板部2に上下方向へ貫通する透孔40を有して、該透孔40の周縁1を上板部2の表面2aから上方側へ筒状に形成される孔開き突起であると、透孔40周りに図2のごとく屈曲点のある角部Eを形成できる。ここでは、孔開き突起4の上方へ向けてその横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台の形状であるので、孔開き突起4の先端43に錐面45と端面49とで角部Eが出来る。透孔40の上面開孔40a周りの角部Eが、エッジ部分となって滑り止め効果を発揮する。孔開き突起4が上板部2に互いに離間させて複数設けられるので、グレーチング上面を形成する上板部2の全域に亘って前記角部Eを配することができる。
しかも、図10に示すようなエンボス加工の丸みのあるなだらかな凸部ebと違って、バーリング加工による筒状錐台の孔開き突起4を形成すれば、透孔40の上面開孔40a周りの錐面45と主部材の板厚に相当する端面49とでエッジ部分になる所望の角部Eを簡便に作製できる。エッジ部分を後加工等で作製することを要せず、作業負担が少なく、孔開き突起付き主部材1を低コスト生産できる。
さらに、孔開き突起4をバーリング加工で造ると、該孔開き突起4のみならず上板部2,側板部3,通孔30,切欠35等をプレス加工によって全て円滑に作製できる。
【0023】
また、孔開き突起4が、その上方へ向けて横断面積が徐々に小さくなっていく筒状錐台の形状であると、孔開き突起4の上面開孔周り先端43に、エッジ部分を形成した山状角部Eが露出するので、滑り止め効果をいかんなく発揮できる。
加えて、筒状錐台の孔開き突起4に係る錐面45と上板部2の表面2a(孔開き突起4を除く。)とのなす角度θが45°〜75°の範囲内にあると、錐面45と主部材の板厚に相当する端面49とで、孔開き突起4の上部先端43に、断面「へ」字状のエッジ部分を上に向けた角部Eを確実に形成できるので、抜群の滑り止め効果を発揮する。
【0024】
さらに、上板部2の帯幅方向の両側縁21から下方へそれぞれ延在する鋼製側板部3を備えるので、単なる平板状の上板部2だけの場合と違って、孔開き突起付き主部材1は、その上を車両,歩行者等が通過する際、それらの荷重に十分耐える高い機械的強度を有する。さらにいえば、上板部2の両側縁21から下方へ延在する側板部3に係る一方の側板部3を、他方の側板部3よりも下方へ延びて帯幅方向長さWが長くなる幅広側板部3Aとするので、該幅広側板部3Aと幅小側板部3Bによる異形溝形を有することになり、孔開き突起付き主部材1の荷重による曲げ特性の断面二次モーメントが大きくなるメリットを有する。
【0025】
また、ピアスバーリング加工により上板部2に孔開き突起4を一体成形するので、一工程で孔開き突起4を加工できることから、さらなる作業性向上,生産性向上につながる。加えて、孔開き突起付き主部材1がオールステンレス製品であると、サビつかず清潔で且つ外観も綺麗で輝きをみせ、衛生環境を重視する厨房等の排水溝に敷設するグレーチング用主部材として打ってつけとなる。景観重視の建物エントランスや公園などの側溝9等にも好適となる。
このように、本グレーチング用孔開き突起付き主部材1は、上述した様々な優れた効果を発揮し極めて有益である。
【0026】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。孔開き突起付き主部材1,側板部3,孔開き突起4,連結材5,側板7等の形状,大きさ,個数,材料,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。グレーチング用孔開き突起付き主部材は、実施形態で述べた厨房等の排水溝や雨水用側溝などの溝蓋だけでなく、例えばクリーンルーム等のフロアパネル用グレーチング(格子)にも適用できる。実施形態はステンレス鋼製突起付き主部材1としたが、炭素鋼等の鉄製突起付き主部材にも、勿論適用できうる。
【符号の説明】
【0027】
2 孔開き突起付き主部材
2a 表面
21 側縁
3 側板部
3A 幅広側板部
30 通孔
4 孔開き突起
45 錐面
5 連結材
W 幅広方向長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10