特許第6143672号(P6143672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143672捩りソノトロード、超音波溶接装置及び超音波により溶接された接続を実現する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143672
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】捩りソノトロード、超音波溶接装置及び超音波により溶接された接続を実現する方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/10 20060101AFI20170529BHJP
   B06B 1/10 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B23K20/10
   B06B1/10
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-508507(P2013-508507)
(86)(22)【出願日】2011年5月5日
(65)【公表番号】特表2013-532064(P2013-532064A)
(43)【公表日】2013年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2011057219
(87)【国際公開番号】WO2011138404
(87)【国際公開日】20111110
【審査請求日】2014年2月21日
【審判番号】不服2015-22253(P2015-22253/J1)
【審判請求日】2015年12月17日
(31)【優先権主張番号】102010029395.4
(32)【優先日】2010年5月27日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】102010028765.2
(32)【優先日】2010年5月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】512283494
【氏名又は名称】テルゾニック ホルディング アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TELSONIC HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(72)【発明者】
【氏名】アルベルト ビュッティカー
【合議体】
【審判長】 栗田 雅弘
【審判官】 平岩 正一
【審判官】 渡邊 真
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0040903(US,A1)
【文献】 特開2005−238333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの互いに対向する端面(S1,S2)と、捩り軸(T)を取り囲む周囲表面(U)と、前記周囲表面(U)から突出し、かつ前記捩り軸(T)からある半径方向距離(R)に作用面(A1,A2,A3,A4)が設けられた少なくとも1つの突起(V1,V2,V3,V4)とを備える、捩りソノトロード(SO)からなり
環状表面(R1,R2)が、前記周囲表面(U)に又は該周囲表面から突出して、少なくとも1つの前記作用面(A1,A2,A3,A4)の両側に設けられ、前記捩りソノトロード(SO)の固有振動の波長に関する節線上に位置しており
少なくとも1つの変換器(K1,K2)が、前記捩り軸(T)の周りに超音波振動を生成するように、前記捩りソノトロード(SO)の前記端面(S1,S2)の1つに結合され
圧力装置(D)が前記捩り軸(T)ほぼ垂直に作用する圧力を生成するように設けられ
前記捩りソノトロード(SO)が、該捩りソノトロードに設けられた前記環状表面(R1,R2)を介して支持装置(SV)に支持され、
前記支持装置(SV)が、前記圧力装置(D)に結合されている、超音波溶接装置。
【請求項2】
前記変換器(K1,K2)は捩り振動要素(T1)に放射状に結合されており、前記捩り振動要素(T1)は前記捩りソノトロード(SO)の前記端面(S1,S2)の一つに結合されている、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項3】
前記捩り振動要素(T1)はブースター(B1)を介在して前記捩りソノトロード(SO)の前記端面(S1,S2)の一つに結合されている、請求項2に記載の超音波溶接装置。
【請求項4】
更なる変換器が前記捩りソノトロード(SO)の前記端面(S1,S2)の他方に結合されて前記捩り軸(T)の周りに向かう超音波振動を生成する、請求項2に記載の超音波溶接装置。
【請求項5】
前記更なる変換器は更なる捩り振動要素に放射状に結合されており、前記更なる捩り振動要素は前記捩りソノトロード(SO)の他の端面(S1,S2)に結合されている、請求項4に記載の超音波溶接装置。
【請求項6】
前記更なる捩り振動要素は更なるブースターを介在して前記捩りソノトロード(SO)の前記端面(S1,S2)の他方に結合されている、請求項5に記載の超音波溶接装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの作用面(A1,A2,A3,A4)を備えた中央部(M1,M2,M3)が設けられ、そのいずれかの側から延び、各々が前記端面(S1,S2)の1つを有する端片(E1,E2)に取り外し可能なように結合されている、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの作用面(A1,A2,A3,A4)は予め定められた半径(R)を持って周囲方向に曲面となっている、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項9】
前記作用面(A1,A2,A3,A4)は全周に亘って半径方向に突出する環状作用面である、請求項に記載の超音波溶接装置。
【請求項10】
前記環状表面(R1,R2)は半径方向に突出している、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項11】
n個の作用面(A1,A2,A3,A4)が設けられ、前記作用面は周囲に360°/nの角度で均一に配置されており、ここで、nは整数>1である、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの作用面(A1,A2,A3,A4)は、前記捩りソノトロード(SO)の軸方向の細溝が設けられ、又は多結晶ダイヤモンドでコーティングされている、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項13】
前記捩りソノトロード(SO)は、前記捩り軸(T)に垂直な対称面(SY)に関して対称である、請求項1に記載の超音波溶接装置。
【請求項14】
2つの互いに対向する端面(S1,S2)と、捩り軸(T)を取り囲む周囲表面(U)と、前記周囲表面(U)から突出し、かつ前記捩り軸(T)からある半径方向距離(R)
に作用面(A1,A2,A3,A4)が設けられた少なくとも1つの突起(V1,V2,V3,V4)とを備える捩りソノトロード(SO)であって、環状表面(R1,R2)が、前記周囲表面(U)に又は該周囲表面から突出して、少なくとも1つの前記作用面(A1,A2,A3,A4)の両側に設けられ、前記捩りソノトロード(SO)の固有振動の波長に関する節線上に位置する、前記捩りソノトロード(SO)を提供するステップと、
前記作用面(A1,A2,A3,A4)と基盤の間に、溶接されるべき2つの金属部品を配置するステップと、
前記捩り軸(T)ほぼ垂直に圧力を作用させて、溶接されるべき前記2つの金属部品を前記作用面(A1,A2,A3,A4)と前記基盤の間で締め付けるステップと、
前記捩り軸(T)の周りに超音波振動を発生させて、前記作用面(A1,A2,A3,A4)を前記捩り軸(T)を中心とした周方向に振動させ、前記溶接されるべき2つの金属部品にもたらされる摩擦力により溶接接続するステップと、
の各ステップを有することを特徴とする、超音波による金属部品間の溶接方法。
【請求項15】
前記捩りソノトロード(SO)は、前記捩り軸(T)に垂直な対称面(SY)に関して対称である、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は捩りソノトロード、超音波溶接装置及び超音波により溶接された接続を実現する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は概略的に超音波溶接の分野に関する。特に、本発明は金属部品の超音波溶接の分野に関する。これらの部品は、超音波振動の作用によって溶接表面に実質的に平行に互いに移動し、この溶接表面に垂直に、接続されるべき部品上に圧力又は溶接力が同時に及ぼされる。超音波振動は、部品表面に通常存在する汚染層及び酸化層を裂き開き、強制移動させることを可能にする。この結果としての純粋な金属表面への直接接触により、金属部品間の永久的で一体的な接続が実現する。
【0003】
超音波溶接装置は、米国特許第3039333号から知られており、そこではロッド形状のソノトロードが、そのソノトロードから放射状に伸びているカップラにより2つのコンバータに結合されている。接続されるべき部品に押し付けられているソノトロードの作用面は、直線経路に沿って溶接表面に実質的に平行に前後に移動する。
【0004】
米国特許第5603444号は、長手方向ソノトロードを有する超音波溶接装置を開示しており、そのソノトロードの作用面も直線経路に沿って前後に移動する。長手方向ソノトロードは、従来の方法で螺子接続により且つブースターを介して変換器に接続されている。圧力装置がさらに設けられて作用面上に圧力を生成する。圧力装置により生成された圧力は、長手方向ソノトロードの節線(ノーダルライン)を介して印加される。実際には、変換器により与えられた超音波パワーの一部のみが作用面に伝達されることが判明した。より最近の発見によれば、このことは、作用面に及ぼされた圧力により生じた、長手方向ソノトロードとブースターの間及びブースターと変換器の間の隣接接合面の傾斜移動の発生に原因があるとすべきである。この効果は圧力の増大とともに増大する。
【0005】
EP1930148A1は、捩りソノトロードとして知られているものを用いる超音波溶接装置を開示している。この場合、ソノトロードは実質的に回転対称ソノトロードであり、その作用面はそのソノトロードの一端面に設けられている。変換器が他端面の近傍にある捩りソノトロードの周囲表面に結合されており、それらの変換器によって捩り軸まわりの振動が捩りソノトロードに伝達される。この結果、接続されるべき部品に対して押圧されている作用面は、捩りソノトロードの周囲に対応する曲線上を前後に移動する。この事例の欠点は、接続されるべき部品に伝達されたるパワーが、作用面の半径方向内側部においては作用面の半径方向外側部より小さいということである。この結果、接続されるべき部品間の溶接接続が均一ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の不利益を克服することにある。特に、変換器により提供されるパワーが作用面に改善された効率で伝達され得るソノトロードが開示されている。パワー伝達の改善された効率はまた特に高圧が印加される際にも達成される。本発明の更なる目的によれば、接続されるべき部品間の溶接接続の効率的で均一な実現を可能にする、超音波による溶接接続を実現しうる超音波溶接装置及び方法もまた開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は請求項1及び請求項15における本発明の特徴により達成される。本発明の好適な技術的詳細は請求項2乃至14における特徴から明らかとなる。
【0008】
本発明の一態様によれば、2つの互いに対向する端面と周囲表面とを備え、周囲表面は捩り軸を取り囲み、周囲表面上で捩り軸からある半径方向距離に少なくとも1つの作用面が設けられている、捩りソノトロードが提供される。
【0009】
本発明による捩りソノトロードによれば、先行技術とは対照的に、作用面はもはや端面の一つに配置されることがなく、捩り軸を取り囲む周囲面上に配置される。この結果、作用面のすべての表面要素は捩り軸から実質的に同じ半径距離にある。作用面の実質的な部分全体にわたって均一なパワーが溶接されるべき部品に伝達される。本発明によるソノトロードを用いて実現された溶接接続は均一である。
【0010】
更に、提案された捩りソノトロードは、変換器から作用面に与えられるパワーの実質的に伝達損失ゼロを可能にする。このプロセスの間、捩りソノトロード、オプションとして提供されたブースター及び変換器の間の結合面において傾斜移動は生成されない。作用面は捩り軸の周りの捩り移動を実行するが、捩り軸に平行な長手方向の移動は行わない。提案された捩りソノトロードは金属部品間、例えばより線とプラグの間の溶接接続の実現に特に適合している。
【0011】
超音波を用いる提案された捩りソノトロードの適切な励起で、軸方向には小さいか又は取るに足りない歪しか存在しないが、横方向に捩りが存在し、この捩りは捩りのモジュールGにより記載されるべきである。捩り振動の周波数に対して以下が成立する。
【数1】
但し、nは整数>0、
lは捩りソノトロードの軸方向長さ
ρは捩りソノトロードの密度である。
【0012】
捩りソノトロードの軸方向長さlは、そのソノトロードが定常振動をするか又は予め定められた周波数νn、波長λで固有振動をするように好適に選択される。この場合、作用面は周囲表面上の中央に設けられる。しかしながら、原理的には、予め定められた周波数νnに対する捩りソノトロードの軸方向長さlを選択して、その結果波長nλ/2、但し、nは整数>0、の固有振動が実現するようにすることが可能である。即ち、捩りソノトロードの長さlはλ/2、3λ/2、2λ、等であってもよい。
【0013】
有利な実施例によれば、捩りソノトロードは好ましくは、少なくとも1つの作用面の両側の周囲表面に、好ましくは該周囲表面から半径方向に突出した環状表面を有しており、その環状表面は、捩りソノトロードの固有振動の波長に関する節線(ノーダルライン)上に位置している。捩りソノトロードの軸方向長さlは、予め定められた超音波周波数における固有振動の波長λに正確に対応するように好適に選択される。この場合、節線は例えば捩りソノトロードの長さlの1/4及び3/4に配置される。この場合、作用面は節線間に配置され、例えば、捩りソノトロードの長さlの1/2の位置に配置される。
【0014】
捩りソノトロードは、好適には、捩り軸を介して垂直に走行している対称面に関して対称的である。特に好適な実施例によれば、作用面の輪郭又は外形は対称面に関して対称である。特に、対称面は少なくとも一つの作用面を貫通し、その作用面は対称面に関して対称である。捩りソノトロードのこのような実施例は、特にシンプルである。この場合、その少なくとも一つの作用面は、捩りソノトロードの周囲表面上で捩りソノトロードの軸方向長さlに対して中央に配置されている。
【0015】
更に好適な実施例によれば、捩りソノトロードは、その少なくとも1つの作用面を備えた中央部を有し、その中央部は、その両側から伸びている端片に取り外し可能なように結合されており、端片の各々は端面の一つを有している。この場合、各端片それぞれ環状表面を有していてもよい。端片と中央部との間の結合は例えば螺子結合でよい。また、2つの端片は、例えば螺子結合により直接的に相互結合してもよく、中央部は、結合された端片上にシュリンク・フィットしたリングで形成されてもよい。作用面を備えた中央部を設けたことで、中央部を置き換えることにより作用面の形状を変化させることが可能になる。作用面に対する損傷があった場合、捩りソノトロードの修理も同様に中央部の交換により簡単に行うことができる。
【0016】
更なる好適な実施例によれば、作用面は予め定められた半径を持って周囲方向に曲面となっている。この半径は捩り軸に由来する。即ち、作用面はこの事例においては従って捩り軸の周囲に横たわっている。
【0017】
更なる好適な実施例によれば、作用面は全周に亘って半径方向に突出する環状作用面である。このような環状作用面は、特に捩りソノトロードの長時間寿命を可能にする。環状作用面の一部が用いられるようになると、捩りソノトロードを予め定められた角度で回転させることにより、更に、未だ使用されない作用面の一部を提供して、更なる溶接接続を実現することが可能である。こうして、提案された捩りソノトロードを用いて、実現可能な溶接接続の数は従来のソノトロードに比べて増大することが可能である。
【0018】
更なる好適な実施例によれば、捩りソノトロードはまた、n個の作用面が設けられ、その作用面は周囲に360°/nの角度で均一に配置されていてもよい。この場合、作用面は例えばアンビル形状で、捩りソノトロードの周囲表面から放射状に突出している。例えば、このタイプの2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上の作用面が提供されてもよい。複数の作用面の提供により、環状作用面の提供と同様に、一つの作用面が疲労した場合に素早い変更が可能になる。このような捩りソノトロードは、特に長寿命である。捩りソノトロードを単純に回転させることにより、一つの作用面を他の作用面に交換できる。この目的のために取替え又は分解は不要である。
【0019】
更なる好適な実施例によれば、作用面は、好ましくは複数の細溝からなる構造を有している。これらの細溝は軸方向に延長しているか、又は軸方向に対して傾斜している。好適な実施例によれば、作用面は多結晶ダイヤモンド(PCD)でコーティングすることも可能である。このようなPCD層は、例えば、作用目上に半田付け可能である。こうして、作用面の耐久性は増大し及び/又は特に、アルミニュームとの溶接中の望ましくない接続は避けることが可能である。
【0020】
本発明の更なる態様によれば、少なくとも1つの変換器が、本発明による捩りソノトロードに結合されて捩り軸の周りに向かう超音波振動を生成する、超音波溶接装置が提供される。この提供された超音波溶接装置によって、接続されるべき部品に高いパワーを伝達することができる。こうして、比較的厚い金属部品が優れた品質で溶接可能になる。
【0021】
好適な実施例によれば、変換器は、捩り振動要素に放射状に結合されており、その捩り振動要素は捩りソノトロードの端面の一つに結合されている。捩り振動要素は例えば円筒状のロッドである。もちろん、複数の変換器を捩り振動要素に結合して捩り振動を生成することも可能である。このタイプの捩り振動手段自体は、先行技術から知られている。EP1930148A1を参照すると、その[0039]及び[0040]及び図2及び3に適切な捩り振動手段を開示している。この文献の開示内容は、この関連で本明細書に取り込まれている。
【0022】
更なる好適な実施例によれば、捩り振動要素は、ブースターを介在して捩りソノトロードの一つの端面に結合されている。ブースターは、変換器により与えられた振幅を修正して本発明による捩りソノトロードに転送する機能を有している。ブースターの設計に依存して、振幅は減少させたり増大させたりすることができる。一般的に、変換器により与えられた振幅を増大させるブースターが用いられる。ブースターの変換は例えば1:1.5から1:2でよい。
【0023】
更なる好適な実施例によれば、更なる変換器が捩りソノトロードの端面の他方に結合されて捩り軸の周りに向かう超音波振動を生成することが出来る。この更なる変換器は、更なる捩り振動要素に放射状に結合されており、その更なる捩り振動要素は、捩りソノトロードの他の端面に結合されることができる。対応する更なる捩り振動装置は、上述の捩り振動装置と同じように設計できる。特に、その更なる振動要素は、更なるブースターを介在して捩りソノトロードの他の端面に結合されてもよい。上記の実施例によれば、特に高いパワーを捩りソノトロードに結合することが可能である。それぞれのパワーが互いに補完して結合されるように、その変換器及びその更なる変換器の振動の位相及び、必要に応じ、ブースターの変換率は、この場合、互いに一致している。
【0024】
更なる好適な実施例によれば、圧力装置が設けられて作用面上で実質的に捩り軸に垂直に作用する圧力を生成する。例えば、その圧力装置はこの事例においては油圧式、空気圧式、又は電気的に動作する圧力装置でよい。作用面上の圧力は、捩りソノトロードの上に設けられた作用面を介して、捩りソノトロードを固定のアンビル又はその上に配置された接続されるべき部品に押し付けることにより生成できる。しかしながら、捩りソノトロードは、固定されてアンビルが作用面に押し付けられることでもよい。
【0025】
いずれにしても、捩りソノトロードは、ソノトロード上に設けられた環状表面を介して支持装置内で支持されていることが好ましい。環状表面は捩りソノトロードの節線上に位置しているので、提案された支持体によるパワーの損失はない。
【0026】
支持装置は、圧力装置に結合されている。この場合、圧力装置によって捩りソノトロードは、固定アンビルに対して移動可能である。
【0027】
本発明の更なる特徴によれば、
本発明によるソノトロードを提供すること、
作用面と基盤の間に、溶接されるべき2つの部品を配置すること、
捩り軸に対して実質的に垂直に圧力を加えて、共に溶接されるべき部品が作用面と基盤の間で締め付けられるようにすること、
捩り軸の周りに超音波振動を発生させて作用面を捩り軸の周りで曲面にわたって振動させ、溶接されるべき部品上にもたらされる摩擦力により溶接接続を実現させること、
というステップを備える、超音波による溶接接続を実現する方法が提供される。
【0028】
本発明による方法の本質的な特徴によれば、作用面は、基盤に対する捩り軸に関する振り子状運動を描く。捩り軸に垂直に配置された振動の平面は、このプロセスの間は実質的に変化しない。即ち、作用面は捩り軸に平行な方向には移動しないか、或いはこの方向に取るに足りない範囲でのみ移動する。提案された方法により、格別なハイパワーが接続されるべき部品に伝達される。振動の振幅は、作用面のすべての位置で同じである。したがって、格別に均質な溶接接続の実現が可能である。
【0029】
基盤は固定のアンビルでよい。しかしながら、基盤は、本発明による更なる捩りソノトロードの方法で形成することも可能である。この場合、捩りソノトロードと更なる捩りソノトロードとは、対向する方向に振動することが好適である。捩りソノトロードの作用面と更なる捩りソノトロードの更なる作用面との間の距離は、したがって実質的に一定に保持され得る。この実施例により、より大きなパワーが接続されるべき部品に伝達され得る。この実施例においては、溶接されるべき部品は、捩りソノトロードと更なる捩りソノトロードに対して固定されている保持装置によって保持され得て、その保持装置は共に溶接されるべき部品の曲がりを防止する。
【0030】
図面に基づいて、以下に本発明の典型的な実施例をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の捩りソノトロードの斜視図である。
図2図1の平面図である。
図3図1の第1の側面図である。
図4図1の第2の側面図である。
図5】第2の捩りソノトロードの側面図、及び第2の捩りソノトロードの場合における波長λの固有振動を示す図である。
図6図5の平面図である。
図7図5のA−A線断面図である。
図8】第3の捩りソノトロードの斜視図である。
図9図8の側面図である。
図10図8の平面図である。
図11図9の線A−A断面図である。
図12】超音波溶接装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
図1から4に示される第1の捩りソノトロードは、2つの互いに対向する円形端面S1,S2を有しており、それらの中心点を通って第1のねじ穴G1と第2のねじ穴G2が中心に延在している。端面S1及びS2を接続している周囲表面Uは、この事例においては円筒状である。周囲表面Uは、少なくともいくつかの部分では仮想的な表面であり、その断面の形状は実質的に端面の形状に一致している。第1の捩りソノトロードは、2つの実質的に円筒形状の端片E1,E2を有している。第1の端片E1は、第1の端面S1により規定されており、第2の端片E2は、第2の端面S2により規定されている。周囲表面Uから突出している2つの互いに対向するアンビル状の突起V1,V2を有する中央部Mが端片E1,E2の間に配置されている。第1の突起V1は第1の作用面A1を有し、第2の突起V2は第2の作用面A2を有する。参照符号Tで示される捩り軸からの作用面A1,A2の半径方向距離は、周囲表面Uの半径よりも有利に大きくなっている。例えば、それは50から100mmであり、好ましくは60から90mmである。周囲表面の半径は30から70mmであり、好ましくは40から60mmである。
【0033】
周囲表面Uから突出している環状表面R1,R2が中央部Mの両側の上の端片E1,E2上に設けられている。
【0034】
第1の捩りソノトロードは、図4に示す対称面SYに関して対称的である。対称面SYは、参照符号Tで示される捩り軸に垂直に配置されている。この事例においては、端片E2,E2は捩り軸Tに関して実質的に回転対称である。
【0035】
図5から7に示す第2の捩りソノトロードは、端片E2,E2の間に第2の中央部M2を有し、その中央部M2は周囲にわたる4つのアンビル状の突起V1,V2,V3,V4を有している。これらの突起V1,V2,V3,V4は、90°の角度だけ互いにオフセットされている。これらは対称面SYに関して対称である。突起各V1,V2,V3,V4の各々の周囲面上に設けられた作用面A1,A2,A3,A4は周囲方向に曲面となっている。その曲率半径は捩り軸Tから伸びており、図7に参照符号Rで示されている。特に図7から更に分かるように、作用面A1,A2,A3,A4の各々は、例えば、軸方向に延びる細溝によって形成され得る構造を有している。
【0036】
特に図5に関連して分かるように、捩りソノトロードの軸方向長さlは、波長λでの定常振動が所定の超音波周波数で提供されるように選択されている。また、図5は捩りソノトロードの長さlにわたる両方の対向する振動状態の振幅+/-ρを示している。定常振動のゼロクロス点は節線(ノーダルライン)を形成しており、その上に環状表面R1,R2が配置されている。捩りソノトロードは、端片E2,E2が各々中央部M2に対して対向する方向に移動するように振動する。
【0037】
図5から7に示した実施例とは対照的に、突起V1,V2,V3,V4に替えて単一の環状突起(ここでは図示せず)を設けて、その単一の環状突起の上にその全周に亘る一つの環状作用面(ここでは図示せず)が形成されているようにしてもよい。更に、4個の突起V1,V2,V3,V4に替えて6個又は8個の突起を設けることも考えられる。
【0038】
図8から11は第3の捩りソノトロードを示す。この第3のソノトロードでは、端片E2,E2の、環状表面R1,R2から外側に配置されている部分a1,a2における直径が、第3の中央部M3の近傍に配置されている内側部分a2,a4と比べて小さい。環状表面R1,R2に関して端片E1,E2の直径を異なる設計にしたので、その端片はブースターの効果を有する。互いに並行に配列されて互いに対向する表面f1,f2,f3及び(ここでは図示しない)f4が外側部分a1,a2の上に更に設けられている。この表面f1からf4はツールと係合するために用いられる。
【0039】
好適な実施例で示された捩りソノトロードは、金属製の一片から有利に生成される。上記図面には示されていないが、中央部M1,M2は例えば螺子接続により取り外し可能な方法で端片E1,E2に結合してもよい。端面S1,S2は、ブースターや捩りロッドへの遊び無しの結合を可能にする、例えば溝(グルーブ)、ウェブ、凹部(リセス)、ピン等の放射状に伸びる構造を有していてもよい。
【0040】
図12は、図12に参照符号SOで示される本発明による捩りソノトロードを用いた超音波溶接装置の構造の概略的斜視図を示す。捩りソノトロードSOは、螺子結合によりその第1の端面S1において第1のブースターB1に堅く結合している。次に第1のブースターB1は、第1の捩りロッドT1に螺子結合によりねじ込まれており、その第1の捩りロッドT1には、第1の変換器K1と第2の変換器K2が放射状に対向配置で取り付けられている。参照符号ABは、捩りソノトロードSOに対して固定的な方法で配置されているアンビルを示す。この事例では、概略的に示されている支持装置SVは、例えば締め付けの方法で環状表面R1,R2の周りに係合している。支持装置SVは圧力装置Dに結合しており、この圧力装置Dによって、変換器K1,K2、捩りロッドT1、ブースターB1及び捩りソノトロードSOから形成されている超音波振動装置がアンビルABに対して垂直に移動可能であり、またこの圧量装置Dによって圧力が第2の作用面A2又は第2の作用面A2とアンビルABの間に配置されている接続されるべき部品(ここでは図示せず)に及ぼされ得る。
【0041】
超音波溶接装置は以下のように機能する。
捩り軸Tの周りに向けられた捩り振動は、対向する位相で動作する変換器K1,K2によって第1の捩りロッドT1内で生成され、その捩り振動は第1のブースターB1を介して捩りソノトロードSOに伝達される。この結果、突起V1,V2とその上に設けられた作用面A1,A2は捩り軸Tの周りの円軌道部分にわたり振動する。突起V1,V2の軸方向の位置は、このプロセスの間で実質的に変化しない。溶接接続を実現するために、接続されるべき2つの部品(ここでは図示せず)がアンビルAB上に配置される。捩りソノトロードSOの第2の作用面A2は次いで、上下に配置された部品上に、圧力装置Dにより押圧される。変換器K1,K2を始動させることにより、捩り振動が発生し、それにより部品は互いに変位する。溶接接続は生成された摩擦により実現される。
【0042】
図12には示されていないが、捩りソノトロードSOの第2の端面S2は、第2のブースターB2(ここでは図示せず)及び第2の捩りロッドT2(ここでは図示せず)を介して、第3及び第4の変換器K3,K4(ここでは図示せず)に接合されてもよいことは勿論である。
【0043】
変換器と、ブースターと捩りソノトロードで形成された超音波振動装置はまた固定された方法で配置してもよい。この場合、アンビルABは、垂直移動可能でもよく圧力装置を備えてもよい。更に、2つの超音波溶接装置が互いに対向する配置で動作して溶接接続を実現するようにすることも考えられる。この場合、アンビルABに替えて更なる捩りソノトロードが例えば設けられる。この事例においては、互いに対向する捩りソノトロードは反対方向に振動する。
【符号の説明】
【0044】
a1,a2 外側部
a3,a4 内側部
A1,A2,A3,A4 作用面
AB アンビル
B1 第1のブースター
D 圧力装置
E1 第1の端片
E2 第2の端片
G1,G2 ねじ穴
f1,f2,f3,f4 表面
K1 第1の変換器
K2 第2の変換器
l 捩りソノトロードの軸方向長さ
M1 第1の中央部
M2 第2の中央部
M3 第3の中央部
R 曲率半径
R1 第1の環状表面
R2 第2の環状表面
S1 第1の端面
S2 第2の端面
SO 捩りソノトロード
SV 支持装置
SY 対称面
T 捩り軸
T1 第1の捩りロッド
U 周囲表面
V1,V2,V3,V4 突起
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12