特許第6143676号(P6143676)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143676
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】酸素センサ及びその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/78 20060101AFI20170529BHJP
   G01N 31/00 20060101ALI20170529BHJP
   G01N 21/77 20060101ALI20170529BHJP
   G01N 31/22 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G01N21/78 Z
   G01N31/00 L
   G01N21/77 A
   G01N31/22 122
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-550942(P2013-550942)
(86)(22)【出願日】2012年1月25日
(65)【公表番号】特表2014-505253(P2014-505253A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】GB2012000076
(87)【国際公開番号】WO2012101407
(87)【国際公開日】20120802
【審査請求日】2015年1月23日
(31)【優先権主張番号】1101299.4
(32)【優先日】2011年1月25日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】513187922
【氏名又は名称】メディカル リサーチ カウンシル
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】パウエル,ジョナサン,ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ファリア,ヌーニョ,ジョルジェ,ロドリゲス
(72)【発明者】
【氏名】バストス,カルロス,アンドレ,パソス
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−182604(JP,A)
【文献】 特表2010−520856(JP,A)
【文献】 特表2009−516836(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/096130(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0300133(US,A1)
【文献】 国際公開第2010/085927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/75−21/83
G01N 31/00−31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装であって、該製品包装が、酸素に応答して第2の酸化状態へと酸化する能力を有する、第1の酸化状態にある遷移金属イオンを有する固体ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を含む酸素センサを含み、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料が、オキソ基及び/又は水酸基が1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された高分子構造を有し、それによって、前記材料の、包装袋中に漏入した酸素に対する曝露が固体ポリオキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こして、前記材料中で検知可能な変化を生じる、前記製品包装。
【請求項2】
固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料が、ナノ粒子又はナノ構造形態で存在する、請求項1に記載の製品包装。
【請求項3】
金属イオン材料が、水和した酸素透過性のマトリクス中に存在し、それによって、マトリクスを透過した酸素が金属イオンの酸化を引き起こして、前記材料中で検知可能な変化を生じ、場合により
(i)トリクスがゼラチン、寒天、アガロース、セルロース系材料、又はそれらの組み合わせから形成される;及び/又は
(ii)マトリクスが少なくとも50% w/wの水を含む;及び/又は
(iii)マトリクスが固体金属イオン材料を5% w/wから25% w/w含む、
請求項1又は2に記載の製品包装。
【請求項4】
金属イオン材料が、マトリクス形成材料と可溶な錯体を形成しない、請求項3に記載の製品包装。
【請求項5】
(a)オキソ基及び/又は水酸基が、リン酸アニオン、硫酸アニオン、ケイ酸アニオン、亜硝酸アニオン、硝酸アニオン、セレン酸アニオン及び/又は炭酸水素アニオンから選択される1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された;又は
(b)オキソ基及び/又は水酸基が、リン酸アニオンにより非化学量論的に置換され、リン酸アニオンが、オキソヒドロキシド無機相上の主たる無機相になる;又は
(c)オキソ基及び/又は水酸基が、ケイ酸アニオンにより非化学量論的に置換され、ケイ酸アニオンが、オキソヒドロキシド無機相上の主たる無機相になる、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製品包装。
【請求項6】
(a)ガス置換包装における通常の使用下で、色相変化が不可逆である;及び/又は
(b)検知可能な変化が可視光の色相変化である;又は
(c)検知可能な変化がUV光下で検知可能である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製品包装。
【請求項7】
(a)遷移金属イオンが、銅、鉄、クロム、バナジウム、マンガン、チタン、コバルト、モリブデン及び/又はタングステンである;
(b)遷移金属イオンが、銅及び/又は鉄である;又は
(c)遷移金属イオンが、(i)鉄であり、第1の酸化状態がFe(II)、第2の酸化状態がFe(III)、又は、(ii)銅であり、第1の酸化状態がCu(I)、第2の酸化状態がCu(II)、又は、(iii)コバルトであり、第1の酸化状態がCo(II)、第2の酸化状態がCo(III)である、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製品包装。
【請求項8】
(a)酸素センサが、ガス置換条件下の袋内の1%を超える酸素濃度に反応して、検知可能な変化を生み出す;又は
(b)酸素センサが、環境適合性及び/又は生体適合性を有する;又は
(c)酸素センサが、食品、食品製品、栄養補助食品製品又は医薬製品に対する適合性のために無毒である;又は
(d)マトリクスが、半固体マトリクス、固体形式、又は水性懸濁液である;又は
(e)酸素センサが、粉体又は表面被覆状である、
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製品包装。
【請求項9】
配位子が、カルボン酸配位子、食品添加物配位子、アミノ酸配位子、栄養素系配位子、並びに/又は半固体マトリクスからのペンダント基である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製品包装。
【請求項10】
カルボン酸配位子が、グルコン酸及び乳酸から選択され、食品添加物配位子が、マルトール及びエチルマルトールから選択され、アミノ酸配位子が、トリプトファン、グルタミン及びヒスチジンから選択され、栄養素系配位子が、葉酸塩、アスコルビン酸塩及びニコチン酸塩から選択され、又は半固体マトリクスからのペンダント基が、ゼラチンのアミノ酸側鎖である、請求項9に記載の製品包装。
【請求項11】
(a)カルボン酸配位子が、直鎖状ジカルボン酸配位子である;又は
(b)カルボン酸配位子が、式HOOC-R1-COOH、但し、R1は場合により置換されているアルキル、アルケニル又はアルキニル基、で表されるか、又はそれらのイオン化された形態である;又は
(c)カルボン酸配位子が、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、アスパラギン酸、酒石酸、ピメリン酸、クエン酸又はそれらのイオン化された形態である、
請求項1〜9のいずれか1項に記載の製品包装。
【請求項12】
ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装中への酸素の漏入を検出するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製品包装の使用であって、包装袋中に漏入した酸素が金属イオンの酸化を引き起こし、材料中で検知可能な変化を生じる、前記使用。
【請求項13】
ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装中への酸素の漏入の検出方法であって、
(a)ガス置換条件下で、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製品包装を提供し、それによって、包装袋中に漏入した酸素が金属イオンの酸化を引き起こし、材料中で検知可能な変化を生じるステップと、
(b)場合により材料中での変化を検出して、包装袋中への酸素の漏入を表示するステップと、
を含む、前記方法。
【請求項14】
ガス置換条件が、大気の条件と比較して低い酸素レベルを有する;又はガス置換条件が、窒素及び/又は二酸化炭素を用いる、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
包装が、食品製品、医薬製品、補助栄養食品製品、文書、書籍若しくは原稿、又は電子機器若しくは部品から選択される製品のためのものである、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素センサ及びそれらの使用に関し、より詳細には、ガス置換条件(modified atmosphere)下で包装袋中に物品を保存する製品包装に使用するための酸素センサに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス置換包装、特に酸素非存在での包装は、食品などの腐敗しやすい製品の保存期間を延長すること、又は他の種類の敏感な製品を保護する雰囲気を提供することに関して、重要性が増している。しかし、この重要性の増加は、酸素レベルが適切に低いレベルに維持されていることを確認することができる適切なセンサがないために、限定的なものであった。
【0003】
当該技術分野におけるこの欠点は、理想的なセンサに求められる様々な異なる要求の結果である。一般的に、包装、特に食品などの消耗品のための包装は、高いコストを負うことはできないために、センサは安価である必要がある。また、センサは食品と接触することがあり、溶脱が起こる場合もあり、或いは、例えば小児による、誤食の危険もあり得るため、センサは安全で無毒であることも必要である。更に、センサの包装不良に対する反応が、好ましくは、通常の包装環境下において不可逆であることが必要である。包装不良が発生した場合に酸素レベルが上昇すると、微生物の繁殖による腐敗を引き起こし得るが、微生物の代謝活動によって低酸素レベルが復活することが起こり得るので、これは重要である。このことは、可逆的なセンサは、包装不良が起きていないと表示する可能性があることを意味する。加えて、異なる包装用途においては酸素許容レベルが異なり得るため、センサの感度が必要に応じて変化させ得るならば、それは有用である。最後に、センサは、世間に通じていないユーザーが認識し得る観察可能な変化を与え、そして、追加の用具に頼ることなく、理想的には使用が容易であるべきであり、そして、容易に包装内に組み込まれるべきである。
【0004】
少数の製品が市場で市販品として入手可能であり、すなわち、Oxy2Dot(登録商標)、RedEye(登録商標)及びAgeless Eye(商標)である。しかし、それらは、様々な大きな制約を受ける。
【0005】
OxySense(登録商標)により製造されるOxy2Dot(登録商標)は、蛍光系の酸素センサである。製品は小さな輪状であり、包装の内側に付着し、酸素レベルに反比例する蛍光強度を光検知器で測定する。このセンサについての二つの主たる問題は、(a)高価な感知装置が必要であること、及び(b)センサが可逆的に作用するため、一時的な高酸素レベルは検知されないおそれがあることである。RedEye(登録商標)はOxy2Dot(登録商標)と同様の原理で作用し、そのため、同様の制約を受ける。
【0006】
三菱ガス化学(MGC)により製造されるAgeless Eye(商標)は、酸化により可視色が変化する。低酸素濃度(<0.1%)においてセンサはピンクに見えるが、酸素濃度が上昇すると色相が徐々に青に変化する。このセンサに対する制約は、不可逆ではないこと、高価(1個60ペンス)であること及び色素が有害(メチレンブルー)であることである。
【0007】
更なる製品が開発途中である。UV活性化型酸素インジケータがMillsによって現在開発中である。このセンサは、Ageless Eye(商標)と同一の色素(メチレンブルー)を使用し、包装用フィルムの内面上に塗布され、UV光に曝した時のみ活性化され、その色相を青から白に変化させる。センサが酸素に曝されると、再び青色になる。このセンサについての主な問題は、メチレンブルーを使用することに起因する安全上の問題、美感(食品の汚染)、及び長時間棚の照明に曝されることに起因する漂白作用(青から白)であり、これは偽陰性を引き起こすおそれがある。
【0008】
また、医薬及び栄養補助食品の包装などの非食品関連分野において使用するため、及び希少な書籍及び原稿の保存などの他の分野で使用するため、及び電子機器や部品などの価値の高い製品の包装に使用するために効果的な酸素センサの開発のニーズもある。
【0009】
酸素検知は他の技術分野において開発されてきた。US3,663,176は、重合プロセスにおけるアルケン(オレフィン)流中における比色型酸素インジケータとして、周期表のIVB及びVB族元素の金属塩の使用を記載している。US2008/0300133は、以下の3種の成分を含む酸素捕捉剤兼インジケータを開示している:(a)一つの酸化状態から別の酸化状態へ移行可能な金属又は金属化合物である酸素収着剤、(b)酸化還元指示薬及び/又は金属若しくは金属の酸化形態に対する錯化剤、及び(c)少なくとも一つのポリマー又はゲル電解質。この出願の酸素インジケータは明らかに、金属の酸化が、酸化還元指示薬又は錯化剤との相互作用の変化を通して、色相の変化などの酸素収着剤の物理的特性の変化を引き起こすときに作用する。
【0010】
GB2,369,808は、一般的には可溶な配位錯体である可溶な遷移金属化合物の色相の変化に基づく、食品包装用酸素又は水分センサを開示する。
【0011】
上記の議論より、ガス置換包装のための効果的なセンサの提供、そして特に食品包装用について、本技術分野において未解決の問題が残っていることが明らかであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US3,663,176
【特許文献2】US2008/0300133
【特許文献3】GB2,369,808
【発明の概要】
【0013】
本発明は、広い意味では酸素センサ及びそれらの使用に関し、より詳細には、ガス置換条件下で包装袋中に物品を保存する製品包装において使用するための酸素センサに関し、その酸素センサは、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を含み、場合により1種以上の配位子で修飾される。幾つかの実施形態において、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料は、例えば、ゼラチンなどの材料から形成される、水和した酸素透過性のマトリクス中に存在する。本発明は多くの技術分野に適用可能であるが、特に食品包装の分野に適用可能である。食品包装中の酸素の存在は、酵素触媒反応、風味料及び栄養塩類の酸化を通して、並びに/又は食品を腐敗させる好気的な微生物の繁殖を許すことにより、食品の腐敗を引き起こす。食品包装を窒素又は二酸化炭素などの不活性ガスで置換したガス置換包装は、酸素レベルを低減して食品製品の保存期間を延長する。この包装の市場は成長してはいるが、現在、食品包装の保存及び取扱いの間、酸素が低レベルに維持されたことを保証する安価な酸素監視器具、すなわち酸素センサが存在しないことによって制約を受けている。本発明は、安全に使い捨てができ(例えば、環境にやさしく)、安価に製造でき、そして酸素が存在する場合に、読み取りやすく検知可能な変化を示す、無機オキソヒドロキシド系センサの開発を通してこの問題に対処する。加えて、又は或いは、本発明の酸素センサは食品用グレードのGRAS反応剤から合成され得るものであり、このことにより、このセンサは食品用途に対して本来的に安全なものになる。
【0014】
このように、本発明は、US2008/0300133において用いられ、酸化還元指示薬との相互作用に依存して、酸素の存在に応答して検知可能な変化を生み出す伝統的な配位錯体とは対照的に、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を使用する。
【0015】
従って、第1の態様において、本発明は、酸素に応答して第2の酸化状態へと酸化する能力を有する、第1の酸化状態にある遷移金属イオンを有する固体ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を含み、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料が、オキソ基及び/又は水酸基が1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された高分子構造を有し、それによって、前記材料の酸素に対する曝露が固体ポリオキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こし、該材料中で検知可能な変化を生じる、酸素センサを提供する。本発明のこの態様における幾つかの例において、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料は、ナノ粒子又はナノ構造形態で存在する。
【0016】
更なる態様において、本発明は、酸素に応答して第2の酸化状態へと酸化する能力を有する、第1の酸化状態にある遷移金属イオンを有する固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を含み、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料が、水和した酸素透過性のマトリクス中に存在し、それによって、マトリクスを透過した酸素が固体ポリオキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こし、前記材料中で検知可能な変化を生じる、酸素センサを提供する。
【0017】
或いは、又はそれに加えて、本発明は、酸素に応答して第2の酸化状態へと酸化する能力を有する、第1の酸化状態にある遷移金属イオンを有する固体オキソヒドロキシ金属イオン材料を含み、固体オキソヒドロキシ金属イオン材料がナノ粒子又はナノ構造形態で存在し、それによって、前記材料の酸素に対する曝露が固体オキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こし、該材料中で検知可能な変化を生じる、酸素センサを提供する。
【0018】
好ましくは、本発明の任意の態様において使用される金属イオン材料も、マトリクス中において、ナノ粒子又はナノ構造形態で分散し得る。これは、当該材料の表面積の増加を助け、材料が、マトリクスを透過した酸素と接触可能となる。好ましくは、本発明のセンサにおいては、US2008/0300133に開示されるシステムにおける場合のようには、金属イオン材料がマトリクス形成材料と可溶な錯体を形成しない。
【0019】
一つの実施形態において、酸素センサは、オキソ基及び/又は水酸基が1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された構造を有する、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を含む。後に更に説明するように、このことは、配位子が固相材料中に統合され、少なくともある程度の証明可能な金属-配位子結合を有することを一般に意味する。
【0020】
更なる態様において、本発明は、ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装であって、該製品包装が、包装袋中に本発明の酸素センサを含み、それによって、包装袋中に漏入した酸素が金属イオンの酸化を引き起こし、材料中で検知可能な変化を生じる、前記製品包装を提供する。
【0021】
更なる態様において、本発明は、ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装中への酸素の漏入を検出するための、本明細書に開示する酸素センサであって、それによって、包装袋中に漏入した酸素がオキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こし、その材料中で検知可能な変化を生じる、酸素センサの使用を提供する。
【0022】
更なる態様において、本発明は、ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装中への酸素の漏入の検出方法であって、
(a)ガス置換条件下の包装袋内に、本発明の酸素センサを供給し、それによって、包装袋中に漏入した酸素がオキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こし、その材料中で検知可能な変化を生じるステップと、
(b)場合により材料中での変化を検出して、包装袋中への酸素の漏入を表示するステップと
を含む、前記方法を提供する。
【0023】
更なる態様において、本発明は、本発明の酸素センサの製造方法であって、
(a)遷移金属イオンを含む溶液、及び場合により1種以上の配位子を、反応媒体中で、成分が可溶となる第1のpH(A)にて混合するステップと、
(b)pH(A)を第2のpH(B)に変更して、配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の固体沈殿又はコロイドを形成させるステップと、
(c)ステップ(b)にて生成した固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を分離し、場合により乾燥及び/又は配合するステップと、
(d)場合により固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を加工して、ナノ粒子材料又はナノ構造材料を生成せしめるステップと、
(e)場合により加熱などの一つ以上の製造後処理を行うステップと、
を含む、前記製造方法を提供する。
【0024】
後により詳しく説明するように、該製造方法は、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料又はその前駆体を、1種以上のマトリクス形成材料と混合することにより、前記材料をマトリクス中に配合して、酸素検知能を有する水和した酸素透過性マトリクスを形成する、更なるステップを含み得る。或いは、又はそれに加えて、1種以上のマトリクス形成材料を反応の際に導入し、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を沈殿せしめてもよく、それによって、該製造方法は、可溶化されたマトリクス材料の存在下で、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を沈殿せしめ、得られる材料を固化せしめて、半固体マトリクス中の固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を生成させるステップを含む。
【0025】
本発明は、酸化還元金属(Mr)を含有する材料は、異なる酸素含有量又は酸化/還元電位の新しい環境に曝露される際に、酸化状態を転換することができる、及び、ある場合には、これがMr含有材料において色相の変化をもたらすとの認識に基づく。それ故、本発明は、Mr含有材料を酸素の変化又は酸化的環境のセンサとして利用する。これらの材料は、一つ以上の一般的な酸素センサの要求事項を満たすことができる、非常に特異的なMr含有材料であることが判っていた。これらの要求事項としては、(1)通常、これらは「使い捨て」のセンサであるため、安価なことが必要であること、(2)特に食品を伴う使用に対して、環境適合性及び生体適合性を有すること、(3)異なる環境の異なる検知ニーズに対して調整可能であること、及び(4)好ましくは高価な装置又は顧客の訓練を必要とせず、センサとして、容易に読み取ることができ、理解されることが挙げられる。一般的に、溶液、懸濁液又はゲル相中においては、センサは、鋭敏な検知を可能にする十分に大きな表面積を付与するために、好ましくは十分に分散されるところ、固体又は半固体方式のセンサについては、センサは、酸化還元活性活動を促進するために、ある水和度を含むことになろう。本発明者らは、Mrポリオキソヒドロキシド(本技術分野では同様にヒドロキシ-オキシドとも呼ぶ)にある特定の操作を行うことで、上記の全ての基準を満たすこと、及び、鋭敏且つ調整可能な酸素環境の検知を提供することを見出した。更に、本発明者らは、結晶形態、すなわちMr酸化物又はMr水酸化物もまた、有用な酸素検知が可能になるように、そのようにして操作できることを明らかにした。このように、高分子若しくは架橋高分子である(「ポリ」が意味する)自己集合の初期段階のMrオキソヒドロキシド、又はそのより高結晶性の形態(酸化物又は水酸化物を意味する)は、有用に酸素レベルを検知するように、修飾又は操作できる。後により詳細に述べるように、当業者にとって、材料の修飾が、その結晶性の低下、すなわちそれらの非晶性の増加をもたらしそうであることは、明白なこととなり得る。
【0026】
ここで、添付する図面及び例を参照して、限定ではなく例として、本発明の実施形態を記載する。
【0027】
本明細書で使用する「及び/又は」は、二つの特定された特徴又は成分のそれぞれを、もう一方のものを含み又は含まずに、明示的に開示するものと解すべきである。例えば、「A及び/又はB」は、(i)A、(ii)B及び(iii)A及びBのそれぞれを、本明細書にそれぞれが個別に提示されたかのように、明示的に開示するものと解すべきである。
【0028】
文脈から別のことを指示しない限り、上記に提示される特徴の記述及び定義は、本発明の特定の態様又は実施形態に何ら限定されるものではなく、記載される全ての態様又は実施形態に同様に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1-1】図1aは、窒素下でのFe2+40OHの合成中の相分布を示す図であり、これらの材料の記述に用いる命名法は後記する。 図1bは、ゼラチンに組み込まれる前のFe2+40OHの粒子径を示す図であり、修飾なしでは、大きな凝集物を形成することを示している(N=3)。 図1cは、ゼラチンマトリクス中に分散した2〜15nmのFe2+40OHナノ粒子のTEM像を示す図である。ナノ粒子(TEM像中で小さな暗色の棒状に見える)は、例8に記載するように作製し、ゼラチンマトリクス中に組み込み、その後空気に対する曝露により酸化させた。
図1-2】図1−1の続きである。
図2図2aは、Fe2+40OH-T200の合成の際の相分布を示す図である。 図2bは、合成後のFe2+40OH-T200ナノ粒子の粒子径を示す図である(N=3)。
図3】窒素下でのFe2+40OH-T200Succ200の合成の際の相分布を示す図である。
図4】合成後のCu2+20OH-Cys20ナノ粒子の粒子径を示す図である(N=3)。
【発明を実施するための形態】
【0030】
金属イオン(M)
本発明は、酸素の存在に応答する酸素センサの要素源として、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を採用し得る。これらは、固体の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料であっても、又はそうでなくてもよい。固体の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の製造及び特性決定は、本出願人の以前の出願であり、参照によりその全てが明瞭に組み込まれるWO2008/096130に開示され、これらの手法は、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料、すなわち、前記材料中に配位子が組み込まれていない材料の製造に対しても用い得る。配位子が組み込まれた材料において、固体の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料は、非化学量論的な式(MxLy(OH)n)で表し得る。但し、Mは1種以上の金属イオンを、Lは1種以上の配位子を、そしてOHは、固体オキソヒドロキシド材料中で当該基が架橋しているか(オキソ基)、又は表面基かに応じて、オキソ基又は水酸基を表す。本技術分野において周知のように、非化学量論的化合物とは、その材料が再現性をもって作製でき、矛盾なく再現性のある特性を有するとしても、明確な自然数の比で表されることができない、すなわち、上記式中の下付き文字x、y及びnが必ずしも全て自然数でない元素組成を有する化学的化合物である。
【0031】
簡便にも、固体ポリオキソヒドロキシドは、元来は塩の形態にある金属イオンを溶解し、次にポリオキソヒドロキシ材料を形成するように誘導した際に形成し得る。これは、場合により1種以上の配位子(L)の存在下に起こり得て、それにより幾つかの配位子は、正式なM-L結合(「配位子結合」と呼ばれる)を通して固相内に統合される、すなわち、全てではない配位子(L)は、単に原末材料中に捕捉されるか、又はその上に吸着される。材料中の金属イオンの結合は、赤外線分光分析などの物理的分析技法により測定されることができ、そのスペクトルは、M-O、O-H及び配位子(L)内の結合などの材料中に存在するその他の結合に特徴的なピークと共に、金属イオンと配位子種(L)との間の結合に特徴的なピークを有するであろう。好ましい金属イオン(M)は、当該材料を使用する条件において生体適合性を有し、水性溶液からオキソヒドロキシドを形成することにより、容易に沈殿可能なものである。
【0032】
本発明において、センサを形成するために用いる材料は、少なくとも二つの酸化状態を有し、検知可能な変化、好ましくは可視光色の変化又はUV-可視変化を生じる必要があり、その際材料中の遷移金属イオンが、酸素又は酸化的環境への曝露に対して応答して、第1の低酸化状態から第2の高酸化状態へと酸化される。特に食品と接して使用される用途に対して、当該材料が生体適合性を有することもまた、好ましいことである。これらの要因は、遷移金属オキソヒドロキシドが、要求される特性を通常有し、且つ、簡素な方法により製造される、半固体マトリクス中に容易に組み込むことができる、安全であり、(通常の包装条件下で)酸素に対する曝露により不可逆な変化を起こすとの追加の利点を有するために、本発明のセンサが、好ましくは、遷移金属オキソヒドロキシドに基づくものであることを意味する。金属イオンの例としては、銅、鉄、クロム、バナジウム、マンガン、チタン、コバルト、モリブデン及び/又はタングステンが挙げられる。本発明において使用し得る、色相の変化を生み出す金属の酸化状態の幾つかの好ましい例としては、鉄(Fe2+からFe3+)、銅(Cu+からCu2+)及びコバルト(Co2+からCo3+)が挙げられ、これらの全てが、両方の酸化状態において毒性がないとの利点を有する。色相変化をもたらす金属イオンの酸化状態の変化が不可逆的、又は少なくともそれが酸素センサとして用いられる条件下において不可逆であることもまた好ましい。幾つかの実施形態において、2種以上の金属イオン(2、3、4又はそれ以上)を使用し得る。
【0033】
修飾なしの場合、本明細書で使用する材料の一次粒子は、金属酸化物の核及び金属水酸化物の表面を有し、異なる規則内において、金属酸化物又は金属水酸化物と呼ばれ得る。用語「オキソヒドロキシ」又は「オキソヒドロキシド」は、オキソ基又は水酸基の比率には全く言及することなく、これらの事実を認識していることを意図して用いるものである。従って、ヒドロキシオキシドも同様に使用できよう。上述のように、配位子がドープされた本発明の材料は、金属オキソヒドロキシドの一次粒子のレベルにおいて、一次粒子の構造に導入される少なくとも一部の配位子Lにより改変される、すなわち、一次粒子の配位子Lによるドーピングをもたらす。
【0034】
本明細書に記載する固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の一次粒子は、沈殿法と呼ばれる方法によって製造される。沈殿法との用語の使用は、多くの場合、沈降又は遠心分離によって溶液から分離する、材料の凝集体の形成を意味する。ここでは、用語「沈殿法」は、上記のような凝集体及び、例えば、ナノ粒子状又はナノ構造化されたなどの粒子状であってもそうでなくとも、凝集せずに懸濁液中に不溶部分として留まる固体材料を包含する、全ての固相材料の形成を言い表すことを意図する。これらの材料の形態は、酸素との反応のための高表面積を有する材料が、容易にマトリクス中に分散可能である、又は、粉体の形態で使用可能であるという利点を有する。当業者は、材料が、水性懸濁液として存在する場合には、例えば、動的光散乱などの技法又は等価な技法を用いて、或いは粉体として又はマトリクス中に存在する場合には、TEM又は等価な技法を用いて同様に、当該材料がナノ粒子又はナノ構造体であるかを容易に決定することができる。ナノ構造材料としては、好ましくは、その構造要素-クラスタ、結晶子、又は分子-が、1〜100nmの範囲の大きさを有する材料が挙げられる。
【0035】
本発明においては、一般的に臨界沈殿pHを超えて形成される、高分子構造を有する金属オキソヒドロキシドに言及し得る。既に述べたように配位子の導入量(該当する場合)は偶然の一致を除いて非化学量論的であるので、本明細書で使用する場合、これは、材料の構造が、規則的なモノマー単位の繰返しを有するとの厳密な意味で高分子であることを示すと考えるべきではない。配位子種はオキソ基又は水酸基に対する置換により固相構造中に導入され、固相中の秩序に変化をもたらす。オキソヒドロキシド金属イオン材料の高分子としての性質は、Flynn, Chem. Rev., 84: 31-41, 1984において議論されている。或いは、又は加えて、本発明によって使用する配位子で修飾された材料については、高分解能透過型電子顕微鏡によって測定できる、材料構造の結晶性の低下、すなわち無秩序性の増加が存在し得る。高分解能透過型電子顕微鏡は、当該材料の結晶模様を視覚的に評価することができる。高分解能透過型電子顕微鏡は、一次粒子の大きさ及び構造(d-間隔など)を示し、非晶性及び結晶性材料間の分布に関してある程度の情報を与えることができる。この技法を用いると、上述の化学が、組み込まれた配位子が存在しない相当する材料に比較して、述べてきたわれわれの材料の非晶質相を増加させることが明らかである。高角度円環状暗視野収差補正走査型透過電子顕微鏡を用いた場合に、解像度を維持したまま高コントラストが達成され、それにより当該材料の一次粒子の表面もバルクも視覚化されることから、このことが特に明確となり得る。
【0036】
本発明の材料の、再現性のある物理化学的特性又は特徴は、当該材料が意図される用途に依存しよう。本発明を使用して、有効に調整可能な特性の例としては、粒子径、光吸収/反射特性、硬さ-柔らかさ、色相、酸化還元能、溶解性及びカプセル化特性が挙げられる。この文脈において、繰り返した実験が、好ましくは±20%以内、より好ましくは±10%以内、そして更により好ましくは限度の±5%以内の標準偏差での再現性を示せば、特性又は特徴は再現性があるとしてよい。
【0037】
配位子(L)
酸素センサを形成するために使用するオキソヒドロキシ金属イオン材料が配位子修飾さたものである本発明の実施形態において、固相の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン種は、式(MxLy(OH)n)で表され、但し、Lは、固相の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料中に組み込まれ得る1種以上の配位子又はアニオンを表す。例として、配位子は、次の特性の一つ以上を調節するために使用し得る:酸素に曝露した前後の材料の色相、酸素に応答した(色相)変化速度、酸素への応答感度、すなわち、例えば0.1%未満、若しくは0.5%未満、若しくは1.0%未満若しくは5.0%未満といった、検知可能な変化の誘起に必要な酸素レベル、又は酸素若しくは酸化性環境に対する応答の速度論。
【0038】
本明細書に記載する材料において、配位子の好ましい例としては、次の配位子の種類の1種以上を挙げることができる:
(a)リン酸アニオン、硫酸アニオン、ケイ酸アニオン、セレン酸アニオン及び/若しくは炭酸水素アニオンから選択される古典的なアニオン配位子、並びに/又は、
(b)マルトール若しくはエチルマルトールなどの食品添加物である配位子、並びに/又は、
(c)トリプトファン、グルタミン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸配位子、並びに/又は、
(d)葉酸塩、アスコルビン酸塩若しくはニコチン酸塩などの栄養素系配位子、並びに/又は、
(e)グルコン酸若しくは乳酸などのカルボン酸配位子、並びに/又は、
(f)例えば、ゼラチンのアミノ酸側鎖などの半固体マトリクスからのペンダント基。
【0039】
直鎖状のジカルボン酸配位子などのカルボン酸配位子を用い得る。これらの例としては、式HOOC-R1-COOH、但し、R1は場合により置換されているアルキル、アルケニル若しくはアルキニル基である、によって表される配位子、又はそれらのイオン化された形態が挙げられ、例えば、R1はC1-10のアルキル基であって、R1は場合により一つ以上の水酸基により置換される。これらの配位子の具体的な例としては、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、クエン酸、アスパラギン酸若しくは酒石酸、又はそれらのイオン化された形態、すなわち配位子としては、コハク酸アニオン、マレイン酸アニオン、アジピン酸アニオン、グルタル酸アニオン、ピメリン酸アニオン、クエン酸アニオン、アスパラギン酸アニオン又は酒石酸アニオンが挙げられる。
【0040】
カルボン酸配位子が酸として又は一部若しくは完全にイオン化されて存在するか、及びカルボキシレートアニオンの形態で存在するかは、当該材料が製造される及び/又は回収される際のpHなどの様々な因子、製造後の処理又は配合工程の使用及び配位子が如何にしてポリオキソヒドロキシ金属イオン材料中に組み込まれたかに依存する。幾つかの実施形態において、当該材料は典型的にはpH>4において回収されるため、及び、配位子と正電荷を有する金属イオンとの間の相互作用が、負電荷を有するカルボキシレートイオンの存在によって大幅に高められると思われるので、配位子の少なくともある割合はカルボキシレートの形態で存在しよう。疑義を避けるため、本発明によるカルボン酸配位子の使用は、これら全ての可能性、すなわち、この配位子が、非イオン化形態、部分イオン化形態(例えば、配位子がジカルボン酸である場合)のカルボン酸として存在又はカルボキシレートイオンとして完全にイオン化されており、及びこれらの混合物である。
【0041】
如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、配位子が、金属オキソヒドロキシドを固定化及び/又は分散しているマトリクス材料からのペンダント基として供し得ると考える。例えば、センサを固定化し分散させるために、ゼラチンなどの半固体マトリクスを用いることができ、それにより、ゼラチン中のアミノ酸の側鎖の幾つかをポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の一次粒子の表面に組み込み、そのようにして、該材料の物理化学的特性を変化させ得る。
【0042】
典型的には、配位子は、固相のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料中に組み込まれ、例えば、その中に配位子(複数可)が存在しないポリオキソヒドロキシル化金属イオン種と比較して、固体材料の物理化学的な特性の修飾を助ける。本発明の幾つかの実施形態において、配位子(複数可)Lはまた、幾らかの緩衝能を有し得る。本発明において採用し得る配位子の例としては、それらに限定されるものではないが、例えばアジピン酸、グルタル酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、アスパラギン酸、ピメリン酸、クエン酸、グルコン酸、乳酸又は安息香酸などのカルボン酸、例えばマルトール、エチルマルトール又はバニリンなどの食品添加物、例えば炭酸水素アニオン、硫酸アニオン、亜硝酸アニオン、硝酸アニオン及びリン酸アニオンなどの、配位子特性を有する「古典的なアニオン」、例えばケイ酸アニオン、ホウ酸アニオン、モリブデン酸アニオン及びセレン酸アニオンなどの無機配位子、例えばトリプトファン、グルタミン、プロリン、バリン又はヒスチジンなどのアミノ酸、及び、例えば葉酸塩、アスコルビン酸塩、ピリドキシン又はニコチン酸塩若しくはニコチン酸アミドなどの栄養素系の配位子が挙げられる。典型的には、本技術分野において、配位子は、特定の金属イオンに対して溶液中で高い親和性を有するか、若しくは低い親和性しか有しないかをよく認識され得ており、又は典型的には、所定の金属イオンに対しての配位子として全く認識され得ない。しかし、本発明者らは、配位子が、溶液中では明らかに活性を欠いているにも拘わらず、ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料中においては、役割を有し得ることを見出した。ある用途においては、0、1、2、3、4又はそれ以上の配位子が有用であり得るが、これらの材料の製造においては、典型的には、金属イオンに対する親和性の異なる1種又は2種の配位子が用いられる。
【0043】
多くの用途に対して、配位子は、使用される条件の下で生体適合性を有する必要があり、そして一般に、反応の段階で、孤立電子対を有する一個以上の原子を有する。配位子は、アニオン、弱い配位子及び強い配位子を含む。配位子は、反応の間、何等かの固有の緩衝能を有し得る。
【0044】
金属イオン(複数可)の配位子(複数可)(L)に対する比率もまた、当該材料の特性を変えるために、本明細書に開示する方法に従って変化させ得る、固相の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料のパラメータである。一般的に、有用なM:Lの比は、10:1、5:1、4:1、3:1、2:1及び1:1並びに1:2、1:3、1:4、1:5又は1:10の間にある。
【0045】
例の全体を通して、配位子修飾ポリオキソヒドロキシ遷移金属材料の調製について記述するために、Mi+jOH-Lkとの命名法を採用した。但し、(1)Mは遷移金属を、i+はその価数を、jは合成に先立つ初期の溶液中のその濃度を表し、(2)Lは配位子を、kはその濃度を表す。配位子の数に対する制限はなく、また、配位子が存在しなかった場合、使用した命名はMi+jOHであった。例えば、Fe2+40OH-Tart200と定義されるナノ粒子状のポリオキソヒドロキシ材料は、40mMの第一鉄と200mMの酒石酸を含む初期溶液から調製された。酸素検知のために製造される修飾又は非修飾ポリオキソヒドロキシ材料に加えて、より結晶性の高い類似物、すなわち水酸化物及び酸化物もまた採用し得ることが判明した。これらのより結晶性の構造は、初期には、配位子の存在下での水性沈殿法を通して同様に調整され得るが、反応条件を、結晶化度が確実に達成されるように選択する。そして、結晶化度は、典型的にはX線回折測定を通じて評価される。しかし、ポリオキソヒドロキシ相を結晶相に転換するための、熱の使用を含む更なる方法が存在することは、当業者には明らかであろう。
【0046】
酸素センサ作製に使用される材料の製造及び加工
一般的に、本発明の材料は、(a)構成成分が溶解する第1のpH(A)において、遷移金属イオン及び場合により1種以上の配位子を反応媒体に含む溶液を混合するステップ、
(b)pH(A)を第2のpH(B)に変更し、場合により配位子修飾された、ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の固体沈殿又はコロイドの形成をもたらすステップ、
(c)ステップ(b)で製造された固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を分離し、並びに、場合により乾燥及び/又は配合するステップ、
(d)場合により固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を加工して、ナノ粒子材料又はナノ構造材料を製造するステップ、及び/又は、
(e)場合により加熱などの一つ以上の製造後処理を行うステップ、
を含む方法によって製造され得る。
【0047】
配位子が、半固体マトリクス形成材料によって与えられる場合、製造方法は、一つ以上の可溶化されたマトリクス材料の存在下で固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を沈殿させ、得られる材料を固化して、半固体マトリクス中に固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を製造するステップを含み得る。如何なる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、本発明者らは、そのような材料において、半固体マトリクスからのペンダント基が、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料中において配位子として作用することができると考える。
【0048】
酸素センサを形成するために用いられる材料が、大気中の酸素の存在により酸化され得るため、不活性雰囲気又は酸素を低減した条件下でそれらを調製することが得策であることは明らかであろう。採用され得るその他の条件の例としては、以下の、2.0未満の第1のpH(A)及び3.0と12.0の間、好ましくは3.5と8.0の間、そしてより好ましくは4.0と6.0の間である第2のpH(B)を用いるステップ、及び、室温(20〜25℃)にて反応を行うステップが挙げられる。一般に、ステップ(a)では、溶液が20〜100mMのFe3+及び0〜250mMの適当なカルボン酸配位子、より好ましくは約40mMのFe3+及び100mMを超える配位子を含むことが望ましい。配位子が用いられる場合は、好ましい配位子は酒石酸である。
【0049】
候補材料の分離に続き、当該材料を特性決定又は試験する一つ以上のステップを実施してもよい。更なるステップ又は製造後処理の例としては、これらに限定されるものではないが、加熱、洗浄、遠心分離、ろ過、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、オーブン乾燥、透析、摩砕、造粒、カプセル化、包埋(例えばゼラチン中に)、錠剤化、混合、圧縮、ナノサイズ化、及びミクロンサイズ化が挙げられる。
【0050】
これらの材料が酸素センサとして使用されるとき、更なるステップとして、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を、それがその中にあって酸素センサとして使用されることになる構成中に形成することが挙げられる。例として、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を、ゼラチンなどの、半固体マトリクスを形成するためのマトリクス形成材料中に分散し、水と共に混合して水性懸濁液を形成する、又はセンサを提供する基材上に粉体被覆の形態で被覆若しくは噴霧乾燥し得る。
【0051】
検知時間を制御するために、種々の大きさ及び形状のセンサが使用され得る点に留意する必要がある。例えば、本明細書に記載のものよりも浅い金型中で製造された検知材料は、酸素が検知材料全体に到達するまでに、半固体マトリクス中をより短い距離で透過するため、より速やかに色相を変化させよう。
【0052】
ヒドロキシ基及びオキソ基
本発明は、これらのポリオキソヒドロキシ材料の形成にあって、ヒドロキシ表面基とオキソ架橋を提供することができる濃度において水酸化物イオンを形成する任意の手段を使用し得る。例としては、これらに限定されるものではないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及び炭酸水素ナトリウムなどの、ML混合物若しくはM(+)の溶液に添加して[OH]を増加させるアルカリ溶液、又は、鉱酸若しくは有機酸などの、ML混合物若しくはM(+)の溶液に添加して[OH]を減少させる酸溶液が挙げられる。
【0053】
本発明の組成物を製造するために用いられる条件は、沈殿物の物理化学的な性質を制御するために調整し得るか、さもなければ、その収集、回収又は1種以上の賦形剤の配合において補助し得る。これは、意図した凝集の防止、又は、その後に材料の特性に影響を与える乾燥若しくは摩砕ステップの使用を伴うことができる。しかし、これらはそのような溶液相から固体を取り出すための如何なるシステムに対しても一般的な変数である。沈殿した材料の分離後、使用又は更なる配合の前に、それを場合により乾燥してもよい。しかし、乾燥された生成物は若干の水を保持し得るし、また、水和した固体相の配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の形態であり得る。当業者にとって、本明細書に記載される固相の回収のための如何なる段階においても、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料と混合するが、一次粒子を修飾するのではなく、当該材料の意図する機能に対して配合を最適化するとの考えから使用する賦形剤を添加してもよいということは明白である。これらの例としては、それらに限定されるものではないが、糖脂質、リン脂質(例えばホスファチジルコリン)、糖及び多糖、糖アルコール(例えばグリセロール)、ポリマー(例えばポリエチレングリコール(PEG))及びタウロコール酸であり得る。
【0054】
使用
本発明の酸素センサは、様々な用途、特に包装及び貯蔵の領域、とりわけ、一般的に包装袋中で窒素及び/又は二酸化炭素を使用する、ガス置換条件下で貯蔵がなされる前記領域において採用され得る。従って、このセンサは、食品製品、医薬製品、機能性食品製品、文書、書籍若しくは原稿、又は電子機器若しくは部品というような多様な製品の包装及び/又は貯蔵に使用され得る。
【0055】
材料及び方法
未着色の牛肉ゼラチン以外は、全ての化学製品はSigma Aldrich(Dorset、英国)から購入し、前記ゼラチンは市販の供給元(Oetker)から入手した。
【0056】
酸素センサとして使用するための金属オキソヒドロキシドの合成
本明細書に記載する金属オキソヒドロキシドは、少なくとも、Fe2+又はCu+などの、低い酸化状態にあり、より高い酸化状態への酸化を受けることが可能な可溶性遷移金属を含む、初期の溶液のpHを高めることによって製造される。この初期溶液は、典型的には1.0>pH>7.0の酸性であるが、金属がそのような初期条件において可溶のままであり得るのであれば、より高いpHもまた使用することもできる。この初期の溶液は、場合により、酒石酸又はコハク酸などの、本明細書に記載される種類の配位子の1種以上を含むことができる。更に、NaCl又はKClなどの電解質を、この初期の溶液に添加することもできる。続いて、オキソヒドロキシド材料は、適当なpHが達成されるまで、pHを徐々に高めること(例えばNaOH)によるコロイド形成及び/又は沈殿のプロセスによって形成される。沈殿は、典型的には室温(20〜25℃)にて実施されるが、必要ならば、より高い温度もまた使用できる。意図する用途によって、当該材料の酸素に対する感度を調整する目的で、グルコース又はフルクトースなどの還元糖を包含する還元性化合物を、合成プロセスの間の任意の時点で添加することができる。最後に、形成する無機物は、無機物の性質及び意図する用途に応じて、様々な戦略を通して回収することができる。合成プロセスは、好ましくは低酸素条件下で実施すべきであることを注意する必要があり、それは、そうすることが、初期の可溶な金属又はその後に生成する金属オキソヒドロキシドの酸化を防止するからである。低い酸素条件は、本明細書に記載しない様々な戦略を通じ、例えば窒素気流により達成され得る。より結晶性のセンサの合成、或いは、他所での例中に記載される、以前に製造した非晶性材料のより結晶性の相への転換は、上述の条件に類似した条件を用いて達成できる。しかし、それらの合成においては、より高いpH(pH>11)及び/又はより高い温度(>60℃)が採用し得る。
【0057】
合成後の回収及び試験
本発明の金属オキソヒドロキシドの合成後の回収に用いた技法は、合成した無機物の用途及び性質に依存した。金属オキソヒドロキシドは、ろ過又は遠心分離などの様々な方法により回収できる。後述する例において、金属オキソヒドロキシドは、(i)水性懸濁液、(ii)乾燥粉体、又は(iii)半固体のマトリクスの一部として試験した。
【0058】
水性懸濁液
合成において、ナノ粒子状の金属オキソヒドロキシドは、懸濁液中で安定な状態を維持し、直接酸素検知として使用することができる。ナノ粒子状材料は、大気中の酸素又はその他の任意の酸素源に対する曝露により、連動する監視可能な色相の変化又はUV吸収の変化を伴う酸化工程を受ける。
【0059】
乾燥粉体
合成において、金属オキソヒドロキシドは、乾燥することができ、乾燥粉体として酸素検知に使用することができる。金属オキソヒドロキシド粉体は、最終的な懸濁液から直接乾燥することもでき、又は、遠心分離、ろ過、又は限外ろ過により得られるペレットから乾燥することもできる。大気中の酸素又はその他の任意の酸素源に対する曝露により、乾燥材料は連動する酸素検知に使用可能な色相の変化を伴う酸化工程を受ける。粉体はまた、塗布を容易にするため、塗料又は噴霧被覆組成物中に組み込まれ得る。
【0060】
半固体マトリクス
合成において、金属オキソヒドロキシドは、当該材料をナノ粒子状の形態にて固定化し分散させる、ゼラチンマトリクスなどの半固体マトリクス中に組み込むことができる。半固体マトリクスはまた、半固体マトリクスが存在しない場合にはミクロンサイズの凝集体のままでいるであろう材料をも分散させ得る。例として、このマトリクスは、牛肉ゼラチンなどのゼラチン粉体を金属オキソヒドロキシドの水性懸濁液中に溶解し、次いでそれを冷却して半固体マトリクスを形成することによって製造することができる。或いは、マトリクスは、金属オキソヒドロキシドを形成するために用いられる反応の一部として製造し得る。好都合には、ゼラチンは10〜20% w/wの間の量で用いられる。大気中の酸素又はその他の任意の酸素源に対する曝露において、半固体マトリクス中の金属オキソヒドロキシドは、連動する酸素検知に使用可能な色相の変化を伴う酸化工程を受ける。
【0061】
本発明の酸素検知材料を分散状態、及び、好ましくはナノ粒子状の形態で保持するための半固体マトリクスとして使用し得る材料の例としては、それらに限定されるものではないが、ゼラチン(例えば牛肉、豚肉)、ペクチン、デンプン(例えばトウモロコシ、小麦、タピオカ、ジャガイモ、その他)、デンプン誘導体(例えば、カルボキシメチルデンプン、デンプンリン酸エステル)、セルロース、セルロース誘導体(例えばヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース)、植物ガム(例えば、アラビアガム、グアーカラヤガム、ハリエンジュ豆ガム、トラガカントガム、オオバコ種子ガム、マルメロ種子ガム、キサンタンガム、カラマツガム、ガティガム)、藻由来のガム(アルギン酸塩、カラギーン、寒天、アガロース、ファーセルラン)、細菌由来の糖(例えばデキストラン)、又はキトサンなどの、生物関連の供給源からの親水コロイド又はヒドロゲルが挙げられる。
【0062】
それらに限定されるものではないが、ポリ(ビニルアルコール)[PVA]、ポリ(アクリル酸)[PAA]、ポリ(エチレングリコール)[PEG]ポリ(アクリロニトリル)[PAN]などの、合成有機高分子からの親水コロイド又はヒドロゲルが挙げられる。
【0063】
それらに限定されるものではないが、ケイ酸塩、二酸化ケイ素、マグネシウムアルミニウムケイ酸塩、その他のケイ素系ゲル、水酸化アルミニウム、ベントナイト、その他のアルミニウム系ゲル、又はホウ酸系ゲルなどの無機高分子からの親水コロイド又はヒドロゲルが挙げられる。
【0064】
マトリクス中に当該材料を包含することの一つの重要性は、本発明者らが、酸素センサを作製するために用いるマトリクス材料及び条件(pHなど)の選択を通じて、センサの色相を幾らか変える設計を行い得ることを見出したことにある。このことは、上記に議論した配位子修飾の使用に加えて、特定の用途に対して異なる酸素センサを仕立て上げるための、更なる手段を提供する。例として、Fe2+40OHの懸濁液にゼラチンを加えると仮定すると、懸濁液はより暗い(より黒い)緑色を呈する一方、第一鉄を含むナノ粒子を含有する半固体マトリクスは、強く明るい緑色を呈す。興味深いことに、酸化されると、ゼラチンを含まない懸濁液は褐色/オレンジ色になる一方、ゼラチン系マトリクスは明るい赤色になる。
【0065】
合成中の相分布
合成中に異なるpHにおいて幾つかの一定分量を採取したことを除いて、「酸素センサとして使用するための金属オキソヒドロキシドの合成」における、上述したものと同様の操作を実施した。最初に、「初期の金属」濃度の分析のために初期の一定分量も採取した。次に、常に撹拌しながら、濃NaOH溶液を滴下により添加することにより、混合物が塩基性のpH(一般的に>8.0)に到達するまでpHをゆっくりと上昇させた。滴定の間の異なる時点で、混合物の均一な一定分量(1mL)を採取し、エッペンドルフ管に移した。遠心分離(13000rpmで10分間)により溶液から形成する如何なる遠心分離可能な相も分離した。次に、上清画分中の鉄の濃度をICPOESにより測定した。可溶な鉄と、上清中の粒子化していて遠心分離されない鉄(一般的に直径が<15nmのナノ粒子)とを識別するために、各時点で、各一定分量を限外ろ過(ビバスピン 3,000 Da分子量カットオフ ポリエーテルスルホン膜、カタログ VS0192、Sartorius Stedium Biotech GmbH、Goettingen、Germany)も行い、再度ICPOESにより分析した。
【0066】
誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICPOES)
JY2000-2 ICPOES (Horiba Jobin Yvon Ltd., Stanmore, U.K.)を用いて、溶液の金属含有量を測定した。分析に先立ち、溶液を1〜7.5%の硝酸中に希釈した。
【0067】
TEM分析
次に、標準的固定用ペレットをアルコール/アセチルニトリル勾配液を通して脱水した後、非水クエトール樹脂中で7日間固定した。非水ペレットを直接100%エタノール中に一晩再懸濁し、続いてアセチルニトリル中に、最後に樹脂中に再懸濁した。得られた樹脂包埋ペレットを100nm厚さの切片に切り出し、400メッシュの銅グリッド上、TEM分析に供した。
【0068】
酸素分析
酸素レベルは、酸素計(Rapidox 1100, Cambridge Sensotec、Cambridge、UK)を用いて監視した。
【0069】
粒子径分析
ナノ粒子状の懸濁液の流体力学上の粒径を、Zetasizer Nano-ZS(Malvern Instruments、UK)を用いて、動的光散乱法(DLS)により測定した。より大きな凝集体の流体力学上の粒径は、Mastersizer 2000(Malvern Instruments、UK)を用いて、静的光回折法(SLD)により測定した
【実施例】
【0070】
[例1]
第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH
低酸素条件を達成するために、全ての溶液/懸濁液に対して、合成の前及び合成全てを通して窒素によるバブリングを行った。第一鉄溶液は、前もって塩酸によって酸性化した水に硫酸第一鉄を添加することによって調製した。最終的な鉄の濃度は40mM、そしてpHは概略4.0よりも低く、通常は約2.0であった。全ての第一鉄塩が溶解した後、5M NaOH溶液によりpH 7.0〜9.0、通常は8.0までpHを高め、その間、ミクロンサイズの凝集体からなる緑色沈殿、すなわち第一鉄オキソヒドロキシドが生成した。最後に、この材料を半固体のマトリクス中にナノ粒子状の分散として組み込んだ。
【0071】
[例2]
ナノ粒子状タータレート(tartrate)修飾第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH-T200
低酸素条件を達成するために、全ての溶液/懸濁液に対して、合成の前及び合成全てを通して窒素によるバブリングを行った。第一鉄溶液は、前もって塩酸によって酸性化した水に硫酸第一鉄を添加し、全ての第一鉄塩が溶解するまで撹拌することによって調製した。次にこの溶液を酒石酸を含有する別な溶液に添加した。二つの溶液を混合して得られた溶液は、40mMの鉄及び200mMの酒石酸を含み、そしてそのpHは概略4.0よりも低く、通常は約2.0であった。その後、5M NaOH溶液によりpH 7.0〜9.0、通常は8.0までpHを高め、その間、緑色のナノ粒子状の懸濁液、すなわち第一鉄オキソヒドロキシドのナノ粒子が生成した。最後に、この懸濁液を直接センサとして使用し、他の酸素検知方法のためにろ過を通じて回収し、又は、好ましくは、半固体マトリクス中にナノ粒子状の分散として組み込んだ。
【0072】
[例3]
ナノ粒子状タータレート修飾第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH-T120
代わりに120mMの酒石酸を配位子として用いて、例2を繰り返した。
【0073】
[例4]
ナノ粒子状タータレート及びサクシネート(succinate)修飾第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH-T200Succ200
200mMの酒石酸に加えて200mMのコハク酸を用いて、例2を繰り返した。
【0074】
[例5]
サクシネート修飾第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH-Succ200
低酸素条件を達成するために、全ての溶液/懸濁液に対して、合成の前及び合成全てを通して窒素によるバブリングを行った。第一鉄溶液は、前もって塩酸によって酸性化した水に硫酸第一鉄を添加し、全ての第一鉄塩が溶解するまで撹拌することによって調製した。次にこの溶液をコハク酸を含有する別な溶液に添加した。二つの溶液を混合して得られた溶液は、40mMの鉄及び200mMのコハク酸を含み、そしてそのpHは約2.0であった。その後、NaOH溶液によりpH 6.5〜9.0、通常は8.0までpHを高め、その間、緑色沈殿、すなわちサクシネート修飾第一鉄オキソヒドロキシドが生成した。最後に、この懸濁液を直接センサとして使用し、他の酸素検知方法のためにろ過を通じて回収し、又は、好ましくは、半固体マトリクス中にナノ粒子状の分散として組み込んだ。
【0075】
[例6]
炭酸二ナトリウムを用いて製造された第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH
第一鉄オキソヒドロキシド材料を例1における場合と同様にして、但し、5M NaOHに代えて2.5M Na2CO3を用いて調製した。最後に、この材料を半固体マトリクス中にナノ粒子状の分散体として組み込んだ。
【0076】
[例7]
乾燥ナノ粒子状タータレート修飾第一鉄オキソヒドロキシド、Fe2+40OH-T200
例2中における場合と同様にして、ナノ粒子状懸濁液を調整した。次に、この懸濁液をRotavapor(登録商標)中にて60℃で真空下に蒸発させた。乾燥の後、粉体を摩砕して酸素検知に使用できた。
【0077】
[例8]
ゼラチン半固体マトリクス中に分散した第一鉄オキソヒドロキシド
以下の工程を窒素雰囲気下で実施した。第一鉄オキソヒドロキシド材料を例1又は例5中に記載されるようにして調製した。次に、撹拌下で牛肉ゼラチン(15% w/w)をこの懸濁液に添加した。次に、この混合物を40℃に加熱してゼラチンを溶解した。ゼラチンが完全に溶解したところで、NaOH溶液にて、pHをその最初のレベルに戻るように再調整した。最後に、この懸濁液を室温まで冷却して、第一鉄オキソヒドロキシドをナノ粒子にして固定化し分散させた、半固体マトリクスを形成させた。最終的な懸濁液の一定分量を、冷却する前に、適当な形状及び大きさに作られた金型に移すことによって、種々の大きさ及び形状のセンサが得ることができることを留意されたい。
【0078】
[例9]
ゼラチン半固体マトリクス中に固定化されたナノ粒子状第一鉄オキソヒドロキシド
以下の工程を窒素雰囲気下で実施した。ナノ粒子状第一鉄オキソヒドロキシドを、例2、3又は4中に記載されるようにして調製した。次に、撹拌下で、牛肉ゼラチン(15% w/w)をこの懸濁液に添加した。その後、この混合物を40℃に加熱してゼラチンを溶解した。ゼラチンが完全に溶解したところで、NaOH溶液にて、pHをその最初のレベルに戻るように再調整した。最後に、この懸濁液を室温まで冷却して、第一鉄オキソヒドロキシドナノ粒子を固定化した、半固体マトリクスを形成させた。
【0079】
最終的な懸濁液一定分量を、冷却する前に、適当な形状及び大きさに作られた金型に移すことによって、種々の大きさ及び形状のセンサを得ることができることを留意されたい。図1から1bに示すように、Fe40OHは、ゼラチンのようなマトリクスが存在しない場合には、凝集体を形成しやすい傾向にあるが、マトリクス材料中に組み込まれると、マトリクスの物理化学的な効果により、100nmより小さい大きさの物理的に分散された粒子となる。
【0080】
[例10]
ヒドロキシエチルセルロース半固体マトリクス中に分散したナノ粒子状タータレート修飾第一鉄オキソヒドロキシド
以下の工程を窒素雰囲気下で実施した。ナノ粒子状第一鉄オキソヒドロキシド材料を例2中に記載されるようにして調製した。次に、この懸濁液を40℃に加熱し、その後、撹拌下でヒドロキシエチルセルロース(10% w/w)をこの懸濁液に添加した。ヒドロキシエチルセルロースの添加後、極めて急速に、第一鉄オキソヒドロキシド粒子を固定化する半固体マトリクスが形成した。
【0081】
[例11]
第一銅オキソヒドロキシド、Cu+10OH
低酸素条件を達成するために、全ての溶液/懸濁液に対して、合成の前及び合成全てを通して窒素によるバブリングを行った。第一銅溶液は、前もって塩酸によって酸性化した水に塩化第一銅を添加することによって調製した。最終的な銅の濃度は10mM、そしてpHは概略2.0よりも低く、通常は約1.0であった。全ての第一銅塩が溶解した後、NaOH溶液によりpH 7.0〜9.0、通常は8.0までpHを高め、その間、沈殿、すなわち第一銅オキソヒドロキシドが生成した。この材料は、初期はかすかに黄色であり、21%酸素を有する雰囲気中で試験すると、青色/緑色に変わった。最後に、この材料を半固体マトリクス中にナノ粒子状の分散として組み込んだ。
【0082】
[例12]
第一銅オキソヒドロキシド、Cu+20OH
代わりに20mMの銅を用いて、例11を繰り返した。合成を開始する前には、第一銅塩を確実に完全に溶解するために、約1.0の初期pHが必要であった。
【0083】
[例13]
グルコネート修飾第一銅オキソヒドロキシド、Cu+20OH-Gluc100
低酸素条件を達成するために、全ての溶液/懸濁液に対して、合成の前及び合成全てを通して窒素によるバブリングを行った。第一銅溶液は、前もって塩酸によって酸性化した水に塩化第一銅を添加し、全ての第一銅塩が溶解するまで撹拌することによって調製した。次にこの溶液を、グルコン酸ナトリウムを含有する別な溶液に添加した。二つの溶液を混合して得られた溶液は、20mMの銅及び100mMのグルコン酸塩を含み、そしてそのpHは約1.0〜2.0であった。次に、NaOH溶液によってpH7.0〜9.0、通常は8.0までpHを高め、その間、青色/緑色の沈殿、すなわちグルコネート修飾第一銅オキソヒドロキシドが生成した。最後に、この懸濁液を直接センサとして使用し、他の酸素検知方法のためにろ過を通じて回収し、又は、幾つかの好ましい実施形態において、半固体マトリクス中に分散させた。
【0084】
[例14]
ナノ粒子状システイン修飾第一銅オキソヒドロキシド、Cu+20OH-Cys20
低酸素条件を達成するために、全ての溶液/懸濁液に対して、合成の前及び合成全てを通して窒素によるバブリングを行った。第一銅溶液は、前もって塩酸によって酸性化した水に塩化第一銅を添加し、全ての第一銅塩が溶解するまで撹拌することによって調製した。次にこの溶液を、システインを含有する別な溶液に添加した。二つの溶液を混合して得られた溶液は、20mMの銅及び20mMのシステインを含み、そしてそのpHは約1.0であった。次に、5MのNaOH溶液によってpH7.0〜9.0、通常は8.0までpHを高め、その間、褐色のナノ粒子状の懸濁液、すなわち第一銅オキソヒドロキシドのナノ粒子が生成し、これは酸化/検知に伴って黒色へと変化した。最後に、この懸濁液を直接センサとして使用し、又は他の酸素検知方法のためにろ過により回収し、又は、好ましくは、半固体マトリクス中のナノ粒子分散物として組み込んだ。
【0085】
[例15]
ゼラチン半固体マトリクス中に分散した第一銅オキソヒドロキシド
以下の工程を窒素雰囲気下で実施した。最初に、第一銅オキソヒドロキシドを例11、12又は13中に記載されるようにして調製した。次に、この懸濁液に、撹拌下で牛肉ゼラチン(15% w/w)を添加した。その後、この混合物を40℃に加熱してゼラチンを溶解させた。ゼラチンが完全に溶解したところで、NaOH溶液にてpHをその最初のレベルに戻るように再調整した。最後に、この懸濁液を室温に冷却することにより、第一銅オキソヒドロキシドをナノ粒子にして固定化し分散させた半固体マトリクスが形成した。
【0086】
[例16]
ゼラチン半固体マトリクス中に固定化されたナノ粒子状第一銅オキソヒドロキシド
以下の工程を窒素雰囲気下で実施した。ナノ粒子状第一銅オキソヒドロキシドを例14中に記載されるようにして調製した。次に、この懸濁液を40℃に加熱した。その後、この懸濁液に撹拌下で牛肉ゼラチン(15% w/w)を添加した。ゼラチンが完全に溶解したところで、NaOH溶液にてpHをその最初のレベルに戻るように再調整した。最後に、この懸濁液を室温に冷却することにより、第一銅オキソヒドロキシドのナノ粒子を固定化した半固体マトリクスが形成した。
【0087】
[例17]
ゼラチン半固体マトリクス中に固定化された第一鉄オキソヒドロキシド材料の感度の比較:Fe2+40OH及びFe2+40OH-Succ200
例8中に記載したように、pH 8にてFe2+40OH及びFe2+40OH-Succ200を生成せしめ、ゼラチン中に固定化した。冷却の前に、窒素気流下で、500マイクロリットルのそれぞれの懸濁液を上部が開いた円筒状の金型(内径1.35cm)中に分注した。検知実験の間、この検知物質を上部が開いた金型内に残し、これを初めは酸素が存在しない(<O2 100ppm)チャンバ中に保管した。次に、酸素濃度を0.5%に高めて酸化させた。O2 0.5%下で2時間30分の後、Fe2+40OHは緑色のままであった一方、Fe2+40OH-Succ200材料は緑色から橙色に変化し(Fe2+からFe3+への酸化)、このことは、サクシネートの導入がFe2+40OHに関係する感度を増加させたことを示している。
【0088】
一般的に、センサの大きさ及び形状が異なると、検知時間に強い影響を与えることを留意した方がよい。例えば、本明細書に記載のものよりも浅い金型中で製造された検知材料は、酸素が検知材料全体に到達するまでに、半固体マトリクス中をより短い距離で透過するため、より速やかに色相を変化させよう。
【0089】
[例18]
ゼラチン半固体マトリクス中に固定化された第一鉄オキソヒドロキシド材料の感度の比較:Fe2+40OH及びFe2+40OH-T200
例8及び9中に記載したように、pH 8.0にてFe2+40OH及びFe2+40OH-T200を生成せしめ、ゼラチン中に固定化した。冷却の前に、窒素気流下で、500マイクロリットルのそれぞれの懸濁液を上部が開いた円筒状の金型(内径1.35cm)中に分注した。検知実験の間、この検知物質を上部が開いた金型内に残し、これを初めは酸素が存在しない(<O2 100ppm)チャンバ中に保管した。次に、酸素濃度を大気のレベル(21%)に高めて酸化させた。O2 21%下で40分の後、Fe2+40OH-T200は緑色のままであった一方、Fe2+40OH材料中では緑色から橙色への変化(Fe2+からFe3+への酸化)が既に見て取れた。
【0090】
ナノセンサ:コンセプトの証明
酸素センサの試験
下記の例において、酸素センサを、直接懸濁液の形で、又はゼラチンマトリクス中に封じる形で試験した。その後、それぞれ、センサを大気中の酸素に曝露し、又は酸素が存在しない環境(すなわち窒素)に保管した。原理の証明を目的として、ゼラチンマトリクスを使用して、幾つかのセンサを「固体の形態」中で安定化したが、商業的な実施形態においては、その代わりに他の材料を用いるか、又はゼラチンに加えて他の材料を用い得る。
【0091】
懸濁液中のセンサ
Fe2+40OH-T200は、酒石酸で修飾されたナノ粒子状の第一鉄オキソヒドロキシドであり、暗緑色であるが、溶液は、酸素に対する曝露により橙色/褐色へと変化する。これは、第一鉄オキソヒドロキシドとしての第一鉄イオン(Fe2+)の第二鉄イオン(Fe3+)への酸化に起因する。異なる鉄の酒石酸に対する比(Fe2+40OH-T120)に対して、類似の結果が得られたが、色相の変化はより急速に起きることが判明した。
【0092】
サクシネート及びクエン酸もまた、配位子として使用し、得られた第一鉄オキソヒドロキシドは類似の挙動を示した。Fe2+40OH-T200Succ200の色相は、酸化に伴い緑色から橙色/褐色に変化した。ナノ粒子状の懸濁液は、Fe2+40OH-T200を用いたそれよりも色相がより明るく、酸化に伴ってより多くの沈殿が生成するが、色相の変化はなお明確に見て取れた。
【0093】
固体マトリクス中のセンサ
原理の証明として、未修飾の(すなわち配位子を添加していない)及び酒石酸をドープした第一鉄オキソヒドロキシドを、ゼラチンマトリクス中に固定化及びナノ分散させた。有利なことに、固体マトリクス中における色相の変化は、溶液中における色相の変化よりもより明確でさえあった。如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、ゼラチンなどのマトリクス材料を用いた実験において観察される色相の変化は、マトリクスからのペンダント基が第一鉄オキソヒドロキシド材料に組み込まれることに起因し得る、及び、適切な合成条件を与えると、マトリクス材料中に存在するこれらのペンダント基は、酒石酸などの拘束されていない配位子と類似の様式にて、金属イオンオキソヒドロキシド材料の物理化学的特性を変え得ることを示していると、考える。
【0094】
全体としてみれば、こうした結果は、これらの酸素センサを、ゼラチンなどのマトリクスに組み込むことによって、包装に適用できることを示し、また、デンプン又はセルロースなどのゲル又は固体マトリクスを形成し得る他の原料も使用できることを示唆する。また、本研究は、異なるpHにおいてセンサを製造することによって、異なる感度を得ることができることを示した。水を含むマトリクスを使用することはまた、M含有材料、無機物、化合物又は錯体を包含するその他の酸化還元に感度を有する材料などのその他の成分をセンサに添加することを可能にする。
【0095】
粉体形態の酸素インジケータ
表面被覆などの幾つかの用途には乾燥粉体が好ましいものとなり得るので、本発明者らは、未修飾及び酒石酸ドープの第一鉄オキソヒドロキシドの乾燥粉体のセンサとしての使用を検討した。未修飾第一鉄オキソヒドロキシドの粉体は、元来は緑色であったが、乾燥工程の間の僅かな酸化により、褐色がかった緑色に変化した。それでも、続く酸素に対する曝露により更に色相が変化し、これは、乾燥粉体は、酸素が存在しない環境で乾燥すれば、センサとして使用できることを示している。酒石酸ドープ第一鉄オキソヒドロキシドの粉体は、未修飾第一鉄オキソヒドロキシドに比較して、より微妙な、より緩慢な色相変化を示し、これは、乾燥粉体に基づくセンサの感度は、配位子による修飾によって調整し得ることを示している。
【0096】
酸化されたインジケータの再活性化
包装工程において、意図しない酸素に対する曝露に起因するセンサの部分的な酸化が起こり得る。本発明者らは、本発明のセンサを、それらを高温(>80℃)に曝露することで、再活性化することが可能であることの証拠を見出した。本発明者らはまた、この再活性化工程が、グルコース又はフルクトースなどの還元糖の存在下であると、顕著により効率的であることも見出した。
【0097】
銅系センサ
銅もまた、高いpHでオキソヒドロキシドを形成する遷移金属であり、酸化されると色相が変化する(第一銅[Cu+]から第二銅[Cu2+])。ゼラチンマトリクス中の未修飾の第一銅オキソヒドロキシドの色相変化は、元来の非常に明るい黄色(Cu+10OH)ないし暗い黄色(Cu+20OH)から、酸素存在下での青緑(Cu2+)であった。Cu+10OHは透明に見えたが、実際はほのかな黄色であった。
【0098】
配位子の組み込みによる感度の調整
オキソヒドロキシ金属イオン材料への配位子の組み込みは、感度を増加させるため(例えば、Fe2+40OH-Succ200の感度>Fe2+40OHの感度)又はそれを低下させるため(Fe2+40OH-T200の感度<Fe2+40OHの感度)の何れにも使用することができる。特定の理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、増加した感度は、金属イオンに対する親和性が低い配位子を組み込むことによって達成されるように思われ、一方、親和性のより高い配位子を組み込むことは、低い価数の状態にある当該材料を安定化すると思われ、それにより、当該材料の酸素に対する感度を低下させる、と考える。
【0099】
本明細書に述べる全ての文書は、参照によりそれらの全てがここに組み入れられる。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(1) 酸素に応答して第2の酸化状態へと酸化する能力を有する、第1の酸化状態にある遷移金属イオンを有する固体ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を含む酸素センサであって、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料が、オキソ基及び/又は水酸基が1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された高分子構造を有し、それによって、前記材料の酸素に対する曝露が固体ポリオキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こして、前記材料中で検知可能な変化を生じる、酸素センサ。
(2) 固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料が、ナノ粒子又はナノ構造形態で存在する、実施形態(1)に記載の酸素センサ。
(3) 酸素に応答して第2の酸化状態へと酸化する能力を有する、第1の酸化状態にある遷移金属イオンを有する固体オキソヒドロキシ金属イオン材料を含む酸素センサであって、固体オキソヒドロキシ金属イオン材料がナノ粒子又はナノ構造形態で存在し、それによって、前記材料の酸素に対する曝露が固体オキソヒドロキシ材料中の金属イオンの酸化を引き起こして、前記材料中で検知可能な変化を生じる、酸素センサ。
(4) 金属イオン材料が、水和した酸素透過性のマトリクス中に存在し、それによって、マトリクスを透過した酸素が金属イオンの酸化を引き起こして、前記材料中で検知可能な変化を生じる、実施形態(1)〜(3)のいずれかに記載の酸素センサ。
(5) 金属イオン材料が、マトリクス形成材料と可溶な錯体を形成しない、実施形態(4)に記載の酸素センサ。
(6) 金属イオン材料が、オキソ基及び/又は水酸基が1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された高分子構造を有する、実施形態(3)〜(5)のいずれかに記載の酸素センサ。
(7) オキソ基及び/又は水酸基が、リン酸アニオン、硫酸アニオン、ケイ酸アニオン、亜硝酸アニオン、硝酸アニオン、セレン酸アニオン及び/又は炭酸水素アニオンから選択される1種以上の配位子によって非化学量論的に置換された、実施形態(1)〜(6)のいずれかに記載の酸素センサ。
(8) オキソ基及び/又は水酸基が、リン酸アニオンにより非化学量論的に置換され、リン酸アニオンが、オキソヒドロキシド無機相上の主たる無機相になる、実施形態(1)〜(7)のいずれかに記載の酸素センサ。
(9) オキソ基及び/又は水酸基が、ケイ酸アニオンにより非化学量論的に置換され、ケイ酸アニオンが、オキソヒドロキシド無機相上の主たる無機相になる、実施形態(1)〜(8)のいずれかに記載の酸素センサ。
(10) ガス置換包装における通常の使用下で、色相変化が不可逆である、実施形態(1)〜(9)のいずれかに記載の酸素センサ。
(11) 検知可能な変化が可視光の色相変化である、実施形態(1)〜(10)のいずれかに記載の酸素センサ。
(12) 検知可能な変化がUV光下で検知可能である、実施形態(1)〜(10)のいずれかに記載の酸素センサ。
(13) 金属イオンが、銅、鉄、クロム、バナジウム、マンガン、チタン、コバルト、モリブデン及び/又はタングステンである、実施形態(1)〜(12)のいずれかに記載の酸素センサ。
(14) 金属イオンが、銅及び/又は鉄である、実施形態(1)〜(13)のいずれかに記載の酸素センサ。
(15) 遷移金属イオンが、(a)鉄であり、第1の酸化状態がFe(II)、第2の酸化状態がFe(III)、又は、(b)銅であり、第1の酸化状態がCu(I)、第2の酸化状態がCu(II)、又は、(c)コバルトであり、第1の酸化状態がCo(II)、第2の酸化状態がCo(III)である、実施形態(1)〜(14)のいずれかに記載の酸素センサ。
(16) マトリクスが、ゼラチン、寒天、アガロース、セルロース系材料、又はそれらの組み合わせから形成される、実施形態(1)〜(15)のいずれかに記載の酸素センサ。
(17) マトリクスが、動物性ゼラチン又は菜食主義者用ゼラチン等価物から形成される、実施形態(16)に記載の酸素センサ。
(18) マトリクスが、少なくとも50% w/wの水を含む、実施形態(1)〜(17)のいずれかに記載の酸素センサ。
(19) マトリクスが固体金属イオン材料を5% w/wから25% w/w含む、実施形態(1)〜(18)のいずれかに記載の酸素センサ。
(20) 酸素センサが、ガス置換条件下の袋内の1%を超える酸素濃度に反応して、検知可能な変化を生み出す、実施形態(1)〜(19)のいずれかに記載の酸素センサ。
(21) 酸素センサが、環境適合性及び/又は生体適合性を有する、実施形態(1)〜(20)のいずれかに記載の酸素センサ。
(22) 酸素センサが、食品、食品製品、栄養補助食品製品又は医薬製品に対する適合性のために無毒である、実施形態(1)〜(21)のいずれかに記載の酸素センサ。
(23) マトリクスが、半固体マトリクス、固体形式、又は水性懸濁液である、実施形態(1)〜(22)のいずれかに記載の酸素センサ。
(24) 酸素センサが、粉体又は表面被覆状である、実施形態(1)〜(23)のいずれかに記載の酸素センサ。
(25) 配位子が、グルコン酸若しくは乳酸などのカルボン酸配位子、マルトール及びエチルマルトールなどの食品添加物配位子、トリプトファン、グルタミン若しくはヒスチジンなどのアミノ酸配位子、葉酸塩、アスコルビン酸塩若しくはニコチン酸塩などの栄養素系配位子、並びに/又はリン酸アニオン、硫酸アニオン、ケイ酸アニオン、セレン酸アニオン及び/若しくは炭酸水素アニオンなどの古典的アニオン配位子である、実施形態(1)〜(24)のいずれかに記載の酸素センサ。
(26) カルボン酸配位子が、直鎖状ジカルボン酸配位子である、実施形態(1)〜(25)のいずれかに記載の酸素センサ。
(27) カルボン酸配位子が、式HOOC-R1-COOH、但し、R1は場合により置換されているアルキル、アルケニル又はアルキニル基、で表されるか、又はそれらのイオン化された形態である、実施形態(26)に記載の酸素センサ。
(28) カルボン酸配位子が、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルタル酸、アスパラギン酸、酒石酸、ピメリン酸、クエン酸又はそれらのイオン化された形態である、実施形態(26)又は(27)に記載の酸素センサ。
(29) ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装であって、該製品包装が、袋中に実施形態(1)〜(28)のいずれかに記載の酸素センサを含み、それによって、包装袋中に漏入した酸素が金属イオンの酸化を引き起こし、材料中で検知可能な変化を生じる、前記製品包装。
(30) ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装中への酸素の漏入を検出するための、実施形態(1)〜(28)のいずれかに記載の酸素センサの使用であって、包装袋中に漏入した酸素が金属イオンの酸化を引き起こし、材料中で検知可能な変化を生じる、前記使用。
(31) ガス置換条件下で包装袋中に物品を保管するための製品包装中への酸素の漏入の検出方法であって、
(a)ガス置換条件下の包装袋中に、実施形態(1)〜(28)のいずれかに記載の酸素センサを提供し、それによって、包装袋中に漏入した酸素が金属イオンの酸化を引き起こし、材料中で検知可能な変化を生じるステップと、
(b)場合により材料中での変化を検出して、包装袋中への酸素の漏入を表示するステップと、
を含む、前記方法。
(32) ガス置換条件が、大気の条件と比較して低い酸素レベルを有する、実施形態(31)に記載の方法。
(33) ガス置換条件が、窒素及び/又は二酸化炭素を用いる、実施形態(31)に記載の方法。
(34) 包装が、食品製品、医薬製品、補助栄養食品製品、文書、書籍若しくは原稿、又は電子機器若しくは部品から選択される製品のためのものである、実施形態(31)〜(33)のいずれかに記載の使用又は方法。
(35) 実施形態(1)〜(28)のいずれかに記載の酸素センサの製造方法であって、
(a)遷移金属イオンを含む溶液、及び場合により1種以上の配位子を、反応媒体中で、成分が可溶となる第1のpH(A)にて混合するステップと、
(b)pH(A)を第2のpH(B)に変更して、配位子修飾ポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の固体沈殿又はコロイドを形成させるステップと、
(c)ステップ(b)にて生成した固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を、分離、並びに乾燥及び/又は配合するステップと、
(d)場合により固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を加工し、ナノ粒子材料又はナノ構造材料を生成せしめるステップと、
を含む、前記製造方法。
(36) 第1のpH(A)は2.0未満であり、第2のpH(B)は3.0と12.0との間、好ましくは3.5と8.0の間、そして更に好ましくは4.0と6.0との間である、実施形態(35)に記載の方法。
(37) 前記方法のステップ(a)が、室温(20〜25℃)にて実施される、実施形態(35)又は実施形態(36)に記載の方法。
(38) 更に、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料の最終的な粒子径を、化学的に又は物理的に変えるステップを含む、実施形態(35)〜(37)のいずれかに記載の方法。
(39) 更に、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を1種以上のマトリクス形成材料と混合することにより、前記材料をマトリクス中に配合して、酸素検知能を有し、水を含み、酸素透過性であるマトリクスを形成するステップを含む、実施形態(35)〜(38)のいずれかに記載の方法。
(40) 1種以上の可溶化されたマトリクス材料の存在下で、固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を沈殿せしめ、得られる材料を固化せしめて、半固体マトリクス中の固体のポリオキソヒドロキシ金属イオン材料を生成させるステップを含む、実施形態(35)〜(38)のいずれかに記載の方法。
図1-1】
図1-2】
図2
図3
図4