【文献】
NIEHR, Franziska et al,Combination therapy with vemurafenib (PLX4032/RG7204) and metformin in melanoma cell lines with distinct driver mutations,Journal of Translational Medicine,2011年,9:76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、LuCap35V原発性前立腺腫瘍における実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図2】
図2は、PC3−NCI前立腺腫瘍における断続的に経口(PO)又は腹腔内(IP)投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図3】
図3は、PC3−NCI前立腺腫瘍における経口投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図4】
図4は、MCF7−neo/HER2腫瘍における断続的に腹腔内投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図5】
図5は、MCF7−neo/HER2乳房腫瘍における経口投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図6】
図6は、MAXF401乳腺腫瘍における実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図7】
図7は、SKOV3卵巣腫瘍における実施例2の化合物及びドセタキセルについて実施例15からの結果を示す。
【
図8】
図8は、SKOV3卵巣腫瘍における実施例2の化合物及びシスプラチンについて結果を示す。
【
図9】
図9は、IGROV−1卵巣腫瘍における経口投与された実施例2の化合物及びカルボプラチンについて実施例15からの結果を示す。
【
図10】
図10は、実施例2の化合物及び2.5mg/kgでのGDC−973について実施例15からの結果を示す。
【
図11】
図11は、実施例2の化合物及び5.0mg/kgでのGDC−973について実施例15からの結果を示す。
【
図12】
図12は、実施例2の化合物及び7.5mg/kgでのGDC−973について実施例15からの結果を示す。
【
図13】
図13は、LuCap35V細胞における実施例2の化合物及びMDV3100について実施例15からの結果を示す。
【
図14】
図14は、Fo5 HER2三重陽性(triple positive)乳癌モデル(PRC)におけるGDC−0068(実施例2)及びB20(マウスアバスチン)の組み合わせの結果を示し、50&100mg/kgのGDC−0068の投与で相加性が観察される。
【
図15】
図15は、NCI−H2122(Kras変異体)細胞における実施例2の化合物及びタルセバの実施例15からの結果を示し、そこでは相加効果が観察されるものの、エルロチニブの併用した実施例2の100mg/kgでは耐容性良好ではなかった。
【
図16】
図16は、多数の癌の種類に対して、代表的な組み合わせが相加又は相乗的活性を提供することを示す実施例14からのデータを示す。
【
図17】
図17は、実施例2と5FU/シスプラチンの活性が、特に胃および頭頸部扁平上皮癌においてAKT経路活性化に関連していることを示す実施例14からのデータを示す。相加効果が、GDC−0068と5FU/シスプラチンの組み合わせにおいて観察され、そしてPTEN(低または欠損)、pAKT(過剰発現)、PI3K変異及び増幅に関連付けられている。
【
図18】
図18は、胃の細胞株における実施例2(GDC−0068)と5−FU/Cシスプラチン(”化学療法”)の組み合わせの活性を示す実施例14からのBLISSスコアデータを示す。相乗効果は、PTENステータスが低く、pAKTが過剰発現されるNUGC3細胞株(胃癌)における組み合わせで示されている。更に、この特定の細胞株(NUGC3)は、中等度用量の5FU/シスプラチン及び高用量のGDC−0068で相加効果を示す。
【
図19】
図19は、実施例2とドセタキセルの組み合わせは、実施例2に対して最小の単一薬剤応答を有したPTEN欠損株において最大の相乗効果を示すことを示す実施例14からのデータを示す。
【
図20】
図20は、実施例2とドセタキセルの組み合わせは、PTENが正常な細胞株において相加相乗効果がより弱いことを示す実施例14からのデータを示す。
【
図21】
図21は、A2058メラノーマ腫瘍において経口投与される、式Iaの化合物(GDC−0068)とBRAF阻害剤(ベムラフェニブ)の併用を用いた実施例15によるインビボ異種移植研究の結果を示す。
【
図22】
図22は、
メラノーマA375細胞株(
図22A)及びベムラフェニブに耐性なメラノーマA375細胞株(
図22B)のそれぞれにおける、単剤でのGDC−0068とベムラフェニブのインビトロEC50を示す。
【
図23】
図23は、
メラノーマA375細胞株(
図23A)及びベムラフェニブに耐性なメラノーマA375細胞株(
図23B)のそれぞれにおける、GDC−0068とベムラフェニブの併用のインビトロEC50を示す。
【
図24】
図24は、Colo800ヒト
メラノーマ細胞株におけるGDC−0068+ベムラフェニブの相乗的組み合わせと比較して、GDC−0068及びベムラフェニブの単剤治療に対する、Colo800 BRAF V600E変異細胞株におけるDMSOに対する24時間及び48時間の時点での絶対的細胞死を示す。
【
図25】
図25は、A375
メラノーマ細胞株(
図25A)及びベムラフェニブ耐性細胞株(
図25B)におけるGDC−0068+ベムラフェニブの併用によるDMSOに対する細胞死の倍増を示す。この図は、ベムラフェニブ単剤治療法に耐性となる患者を治療するために、GDC−0068+ベムラフェニブの併用がいかに相乗的に作用するかを示している。
【
図26】
図26は、GDC−0068+ベムラフェニブの併用に対する阻害割合により測定される、親細胞株(赤丸)に対するベムラフェニブ耐性A375メラノーマ細胞株クローンの感受性の増加を示す。この図は、ベムラフェニブ単剤治療法に耐性となる患者を治療するために、GDC−0068とベムラフェニブの併用がいかに相乗的に作用するかを示している。
【0025】
発明を実施するための最良の形態及び定義
用語「含む(comprise)」、「含めた(comprising)」、「含む(include)」、「含めた(including)」及び「含む(includes)」は、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、定められた特徴、整数、成分、又は工程の存在を特定することを意図するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、成分、工程、又はその群の存在又は追加を除外しない。
【0026】
用語「アルキル」は、本明細書において使用する場合、1〜12個の炭素原子の飽和直鎖又は分岐鎖の一価炭化水素基を意味し、アルキル基は、下記の1個または複数の置換基で独立に任意選択で置換されていてもよい。用語「アルキル」は、本明細書において使用する場合、1〜12個の炭素原子の飽和直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基を意味し、アルキル基は、下記の1個または複数の置換基で独立に任意選択で置換されていてもよい。アルキル基の例には、それだけに限らないが、メチル(Me、−CH
3)、エチル(Et、−CH
2CH
3)、1−プロピル(n−Pr、n−プロピル、−CH
2CH
2CH
3)、2−プロピル(i−Pr、i−プロピル、−CH(CH
3)
2)、1−ブチル(n−Bu、n−ブチル、−CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−メチル−1−プロピル(i−Bu、i−ブチル、−CH
2CH(CH
3)
2)、2−ブチル(s−Bu、s−ブチル、−CH(CH
3)CH
2CH
3)、2−メチル−2−プロピル(t−Bu、t−ブチル、−C(CH
3)
3)、1−ペンチル(n−ペンチル、−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−ペンチル(−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
3)、3−ペンチル(−CH(CH
2CH
3)
2)、2−メチル−2−ブチル(−C(CH
3)
2CH
2CH
3)、3−メチル−2−ブチル(−CH(CH
3)CH(CH
3)
2)、3−メチル−1−ブチル(−CH
2CH
2CH(CH
3)
2)、2−メチル−1−ブチル(−CH
2CH(CH
3)CH
2CH
3)、1−ヘキシル(−CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
3)、2−ヘキシル(−CH(CH
3)CH
2CH
2CH
2CH
3)、3−ヘキシル(−CH(CH
2CH
3)(CH
2CH
2CH
3))、2−メチル−2−ペンチル(−C(CH
3)
2CH
2CH
2CH
3)、3−メチル−2−ペンチル(−CH(CH
3)CH(CH
3)CH
2CH
3)、4−メチル−2−ペンチル(−CH(CH
3)CH
2CH(CH
3)
2)、3−メチル−3−ペンチル(−C(CH
3)(CH
2CH
3)
2)、2−メチル−3−ペンチル(−CH(CH
2CH
3)CH(CH
3)
2)、2,3−ジメチル−2−ブチル(−C(CH
3)
2CH(CH
3)
2)、3,3−ジメチル−2−ブチル(−CH(CH
3)C(CH
3)
3、1−ヘプチル、1−オクチル等が挙げられる。
【0027】
用語「アルケニル」は、少なくとも1つの部位の不飽和、すなわち、炭素−炭素sp
2二重結合を有する、2〜12個の炭素原子の直鎖または分岐鎖の一価炭化水素基を意味し、アルケニル基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立に任意選択で置換されていてもよく、「cis」および「trans」配向、または代わりに、「E」および「Z」配向を有する基が含まれる。その例は、限定されないが、エチレニル又はビニル(−CH=CH
2)、アリル(−CH
2CH=CH
2)などが挙げられる。
【0028】
用語「アルキニル」は、少なくとも1つの部位の不飽和、すなわち、炭素−炭素sp三重結合を有する、2〜12個の炭素原子の直鎖状または分岐状の一価炭化水素基を意味し、アルキニル基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立に任意選択で置換されていてもよい。その例は、限定されないが、エチニル(−C≡CH)、プロピニル(プロパルギル、−CH
2C≡CH)などが挙げられる。
【0029】
用語「炭素環」、「カルボシクリル」、「炭素環」および「シクロアルキル」は、単環式環として3〜12個の炭素原子、または二環式環として7〜12個の炭素原子を有する、一価非芳香族の飽和または部分不飽和環を意味する。7〜12個の原子を有する二環式炭素環は、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]系として用意することができ、9個または10個の環原子を有する二環式炭素環は、ビシクロ[5,6]または[6,6]系として、あるいはビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタンおよびビシクロ[3.2.2]ノナンなどの架橋系として用意することができる。単環式炭素環の例には、それだけに限らないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1−シクロペント−1−エニル、1−シクロペント−2−エニル、1−シクロペント−3−エニル、シクロヘキシル、1−シクロヘキサ−1−エニル、1−シクロヘキス−2−エニル、1−シクロヘキス−3−エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0030】
「アリール」とは、親芳香環系の単一の炭素原子からの1個の水素原子の除去によって誘導される6〜20個の炭素原子の一価芳香族炭化水素基を意味する。いくつかのアリール基は、例示的な構造中に「Ar」として表される。アリールには、飽和環、部分不飽和環に縮合している芳香環、または芳香族炭素環もしくは複素環を含む、二環式基が含まれる。典型的なアリール基には、それだけに限らないが、ベンゼン(フェニル)、置換ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、インデニル、インダニル、1,2−ジヒドロナプタレン、1,2,3,4−テトラヒドロナプチルから誘導される基などが挙げられる。アリール基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立に任意に置換されていてもよい。
【0031】
「複素環」、「ヘテロシクリル」および「複素環」という用語は、本明細書において互換的に使用され、少なくとも1個の環原子は、窒素、酸素および硫黄から選択されるヘテロ原子であり、残りの環原子はCであり、1個または複数の環原子が、下記の1個または複数の置換基で独立に任意に置換されていてもよい、3〜20個の環原子の飽和または部分不飽和(すなわち、環中に1つまたは複数の二重および/または三重結合を有する)炭素環基を意味する。複素環は、3〜7環員(2〜6個の炭素原子、ならびにN、O、P、およびSから選択される1〜4個のヘテロ原子)を有する単環、または7〜10環員(4〜9個の炭素原子、ならびにN、O、P、およびSから選択される1〜6個のヘテロ原子)を有する二環、例えば、ビシクロ[4,5]、[5,5]、[5,6]、または[6,6]系でよい。複素環は、Paquette、Leo A.;「Principles of Modern Heterocyclic Chemistry」(W.A.Benjamin、New York、1968)、特に第1、3、4、6、7、および9章;「The Chemistry of Heterocyclic Compounds,A series of Monographs」(John Wiley & Sons、New York、1950年から現在まで)、特に第13、14、16、19、および28巻;ならびにJ.Am.Chem.Soc.(1960)82:5566に記載されている。「複素環」という用語には、ヘテロシクロアルコキシが含まれる。「ヘテロシクリル」はまた、複素環基が飽和環、部分不飽和環、または芳香族炭素環もしくは複素環と縮合している基を含む。複素環の例には、それだけに限らないが、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル、ピペリジノ、モルホリノ、チオモルホリノ、チオキサニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ホモピペリジニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、インドリニル、2H−ピラニル、4H−ピラニル、ジオキサニル、1,3−ジオキソラニル、ピラゾリニル、ジチアニル、ジチオラニル、ジヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロフラニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、イミダゾリジニル、3−アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3−アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、3H−インドリルキノリジニルおよびN−ピリジル尿素が挙げられる。スピロ部分はまた、この定義の範囲内に含まれる。2個の環状炭素原子がオキソ(=O)部分で置換されている複素環基の例は、ピリミジノニルおよび1,1−ジオキソ−チオモルホリニルである。本明細書において複素環基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立に任意に置換されていてもよい。
【0032】
「ヘテロアリール」という用語は、5員、6員、または7員環の一価芳香族基を意味し、窒素、酸素、および硫黄から独立に選択される1個または複数のヘテロ原子を含有する、5〜20個の原子の縮合環系(その少なくとも1個は芳香族である)が含まれる。ヘテロアリール基の例は、ピリジニル(例えば、2−ヒドロキシピリジニルを含めた)、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、ピリミジニル(例えば、4−ヒドロキシピリミジニルを含めた)、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、テトラゾリル、フリル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、キノリニル、イソキノリニル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、シンノリニル、インダゾリル、インドリジニル、フタラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、イソインドリル、プテリジニル、プリニル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、チアジアゾリル、フラザニル、ベンゾフラザニル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、およびフロピリジニルである。ヘテロアリール基は、本明細書に記載されている1個または複数の置換基で独立に任意に置換されていてもよい。
【0033】
複素環またはヘテロアリール基は、そのようなことが可能であれば、炭素(炭素結合型)、窒素(窒素結合型)または酸素(酸素結合型)結合でよい。限定のためではなく例示として、炭素結合型複素環またはヘテロアリールは、ピリジンの2位、3位、4位、5位、または6位、ピリダジンの3位、4位、5位、または6位、ピリミジンの2位、4位、5位、または6位、ピラジンの2位、3位、5位、または6位、フラン、テトラヒドロフラン、チオフラン、チオフェン、ピロールまたはテトラヒドロピロールの2位、3位、4位、または5位、オキサゾール、イミダゾールまたはチアゾールの2位、4位、または5位、イソオキサゾール、ピラゾール、またはイソチアゾールの3位、4位、または5位、アジリジンの2位または3位、アゼチジンの2位、3位、または4位、キノリンの2位、3位、4位、5位、6位、7位、または8位、あるいはイソキノリンの1位、3位、4位、5位、6位、7位、または8位で結合している。
【0034】
限定のためではなく例示として、窒素結合型複素環またはヘテロアリールは、アジリジン、アゼチジン、ピロール、ピロリジン、2−ピロリン、3−ピロリン、イミダゾール、イミダゾリジン、2−イミダゾリン、3−イミダゾリン、ピラゾール、ピラゾリン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、ピペリジン、ピペラジン、インドール、インドリン、1H−インダゾールの1位、イソインドール、またはイソインドリンの2位、モルホリンの4位、およびカルバゾール、またはβ−カルボリンの9位で結合している。
【0035】
「治療する」および「治療」という用語は、治療的処置および防止的または予防的措置の両方を意味し、その目的は、癌の増殖、発達または拡散などの望ましくない生理的変化または障害の防止または減速(減少)である。本発明の目的のために、有益なまたは所望の臨床結果には、それだけに限らないが、検出可能であれ検出不能であれ、症状の軽減、疾患の程度の減少、病状の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患の悪化の遅延または減速、病態の改善または緩和、および(部分的また完全な)寛解が挙げられる。「治療」はまた、治療を受けない場合に予想される生存時間と比較した生存時間の延長を意味することができる。治療を必要としているものには、既にその状態または障害を有しているもの、および状態または障害を有しがちであるもの、または状態または障害が予防すべきであるものが含まれる。
【0036】
「治療有効量」という句は、一例において単独で又は別の例においては第二化学療法剤と併用して、(i)特定の疾患、状態、または障害を治療する、(ii)特定の疾患、状態、または障害の1つもしくは複数の症状を弱め、改善し、または除去する、あるいは(iii)本明細書に記載されている特定の疾患、状態、または障害の1つもしくは複数の症状の発症を防止または遅延させる、本発明の化合物の量を意味する。癌の場合、薬物の治療有効量は、単独又は併用して、癌細胞の数を減少させ;腫瘍の大きさを減少させ;末梢器官への癌細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度遅延、好ましくは停止)し;腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度減速、好ましくは停止)し;腫瘍増殖をある程度阻害し;及び/又は癌と関連する症状の1つもしくは複数をある程度軽減し得る。薬物が単独又は併用で増殖を防止し、及び/又は存在する癌細胞を殺し得る範囲で、それは細胞増殖阻害性及び/又は細胞毒性でよい。癌治療のために、例えば、疾患の悪化までの時間(TTP)の評価および/または反応速度(RR)の決定によって、有効性を測定することができる。
【0037】
「癌」および「癌の」という用語は、未制御の細胞増殖によって典型的には特徴付けられる哺乳動物における生理条件を意味し、または説明する。「腫瘍」は、1個または複数の癌細胞を含む。癌の例には、それだけに限らないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病またはリンパ性悪性腫瘍が挙げられる。このような癌のさらなる特定の例には、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平細胞癌);小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含めた肺癌;腹膜癌、肝細胞癌、消化管癌を含めた胃部または胃癌、膵癌、神経膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、および頭頸部癌が挙げられる。本明細書で使用される場合、胃癌は、胃の任意の部分に発生することができ、胃全体及び他の臓器;特に食道、肺、リンパ節、肝臓に広がる場合がある胃癌を含む。また、BRAF V600E変異により駆動される癌の例として、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸癌、転移性メラノーマ、甲状腺乳頭癌、非小細胞肺癌、及び肺の腺癌が挙げられる。BRAF V600E変異により駆動される癌の特定の一例は、転移性又は切除不能なメラノーマである。
【0038】
「化学療法剤」は、作用機序に関わらず癌の治療に有用な生物学的(大分子)または化学的(小分子)化合物である。化学療法剤のクラスには、それだけに限らないが、アルキル化剤、代謝拮抗剤、紡錘体毒植物アルカロイド、細胞毒性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、タンパク質、抗体、光増感剤、およびキナーゼ阻害剤が挙げられる。化学療法剤には、「標的療法」および非標的の従来の化学療法において使用される化合物が含まれる。
【0039】
「哺乳動物」という用語には、これらだけに限らないが、ヒト、マウス、ラット、モルモット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、ブタ、およびヒツジ、ならびに家禽が含まれる。患者なる用語は、哺乳動物を意味し、一実施態様では、患者はヒトである。
【0040】
「添付文書」という用語は、このような治療薬の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、禁忌症および/または警告についての情報を含有する、治療薬の商業用パッケージ中に通常含まれる指示を意味するために使用される。
【0041】
「薬学的に許容される塩」という句は、本明細書において使用する場合、本発明の化合物の薬学的に許容される有機または無機塩を意味する。例示的な塩には、これらだけに限定されないが、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、酒石酸水素塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩(gentisinate)、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカリン酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられる。薬学的に許容される塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの他の分子の包含を伴ってもよい。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分でよい。さらに、薬学的に許容される塩は、その構造中に複数の電荷を帯びた原子を有し得る。複数の電荷を帯びた原子が薬学的に許容される塩の部分である例は、複数の対イオンを有することができる。それ故、薬学的に許容される塩は、1つもしくは複数の電荷を帯びた原子および/または1つもしくは複数の対イオンを有することができる。
【0042】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容される塩は、当技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば、遊離塩基の無機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸など)による処理、あるいは有機酸(酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、ピラノシジル酸(pyranosidyl acid)(グルクロン酸またはガラクツロン酸など)、αヒドロキシ酸(クエン酸または酒石酸など)、アミノ酸(アスパラギン酸またはグルタミン酸など)、芳香族酸(安息香酸またはケイ皮酸など)、スルホン酸(p−トルエンスルホン酸またはエタンスルホン酸など)、あるいは同様のものなど)による処理によって調製し得る。基本の医薬化合物からの薬学的に有用または許容される塩の形成のために適切であると一般に考えられる酸は、例えば、P.Stahlら、Camille G.(編)Handbook of Pharmaceutical Salts.Properties,Selection and Use.(2002)Zurich:Wiley-VCH;S.Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977)66(1)1 19;P.Gould、International J.of Pharmaceutics(1986)33 201 217;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996)、Academic Press、New York;Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、(1995)Mack Publishing Co.、Easton PA;およびThe Orange Book(Food & Drug Administration、Washington,D.C.、ウェブサイト上)に議論されている。これらの開示は、それらへの参照により本明細書中に組み込まれている。
【0043】
本発明の化合物が酸である場合、所望の薬学的に許容される塩は、任意の適切な方法、例えば、遊離酸の無機または有機塩基(アミン(第一級、第二級もしくは第三級)、アルカリ金属水酸化物もしくはアルカリ土類金属水酸化物、または同様のものなど)による処理によって調製し得る。適切な塩の実例には、それだけに限らないが、アミノ酸に由来する有機塩(グリシンおよびアルギニンなど)、アンモニア、第一級、第二級、および第三級アミン、ならびに環状アミン(ピペリジン、モルホリンおよびピペラジンなど)、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウムおよびリチウムに由来する無機塩が挙げられる。
【0044】
「薬学的に許容される」という句は、物質または組成物が、製剤を構成する他の成分、および/またはそれによって治療される哺乳動物と化学的および/または毒物学的に適合性でなくてはならないことを示す。
【0045】
「溶媒和物」とは、1つまたは複数の溶媒分子と本発明の化合物との物理的会合または複合体を意味する。本発明の化合物は、非溶媒和形態および溶媒和形態で存在し得る。溶媒和物を形成する溶媒の例には、それだけに限らないが、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸、およびエタノールアミンが挙げられる。「水和物」という用語は、溶媒分子が水である複合体を意味する。この物理的会合は、水素結合を含めた様々な程度のイオン結合および共有結合を伴う。例えば、1個または複数の溶媒分子が、結晶性固体の結晶格子中に組み込まれている場合、場合によっては、溶媒和物は単離することができる。溶媒和物の調製は、一般に公知である。例えば、M.Cairaら、J.Pharmaceutical Sci.、93(3)、601 611(2004)。溶媒和物、半溶媒和物、水和物などの同様の調製は、E.C.van Tonderら、AAPS PharmSciTech.、5(1)、論文12(2004);およびA.L.Binghamら、Chem.Commun.、603 604(2001)によって記載されている。典型的な非限定的方法は、本発明の化合物を周囲温度より高い温度で所望の量の所望の溶媒(有機物または水またはその混合物)に溶解し、結晶が形成されるのに十分な速度で溶液を冷却し、次いでそれを標準的方法によって単離することを伴う。例えばI.R.分光法などの分析技術は、結晶中の溶媒(または水)の存在を溶媒和物(または水和物)として示す。
【0046】
「相乗的」という用語は、本明細書において使用する場合、2つ以上の単一の薬剤の相加効果より有効な治療薬の組合せを意味する。式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と1種または複数の化学療法剤との間の相乗的な相互作用の決定は、本明細書に記載されているアッセイから得られた結果に基づいてもよい。組合せインデックスを得るためのChouおよびTalalayの組合せ法およびCalcuSynソフトウェアによる用量効果分析を使用して、これらのアッセイの結果を分析することができる(ChouおよびTalalay、1984、Adv.Enzyme Regul.22:27-55)。本発明によって提供される組合せをいくつかのアッセイ系において評価した。データは、抗癌剤の間の相乗作用、相加作用、および拮抗作用を定量化するための標準的プログラムを用いて分析することができる。例えば実施例16で用いられるプログラムは、好ましくはChouおよびTalalayにより「New Avenues in Developmental Cancer Chemotherapy」、Academic Press、1987、第2章に記載されているものである。0.8未満の組合せインデックス値は相乗作用を示し、1.2超の値は拮抗を示し、0.8〜1.2の値は相加効果を示す。併用療法は、「相乗作用」を実現し、「相乗的」であること、すなわち活性成分が共に使用される場合に達成される作用が、化合物を別々に使用することからもたらされる作用の合計より大きいことを証明し得る。一例において、活性成分を、(1)同時製剤および投与する、または合わせた単位製剤において同時に送達するとき;(2)別々の製剤として交互にまたは並行して送達するとき;あるいは(3)いくつかの他の投与計画によるときに、相乗効果を達成し得る。交互の治療において送達する場合、化合物が逐次に、例えば、別々のシリンジ中の異なる注射剤によって、又は異なる経口投与量によって投与または送達するときに、相乗効果を達成し得る。一般に、交互の治療の間、有効量の各活性成分は逐次に、すなわち連続的に投与し、一方、併用療法において、有効量の2種以上の活性成分が共に投与する。一般に、交互治療の間、各活性成分の有効用量は、逐次に、即ち連続的に投与されるが、併用療法では、二つ以上の活性成分の有効用量が一緒に投与される。
【0047】
幾つかの例において(
図18〜20を参照)、併用効果はBLISS独立モデル及び最高単剤(HSA)モデルの両方を用いて評価した(Lehar et al. 2007, Molecular Systems Biology 3:80)。BLISSスコアは、単一薬剤からの増強の程度を定量化し、BLISSスコア>0は単純加算よりも大きいことを示唆している。HSAスコア>0は、単一薬剤応答の最大値よりも対応する濃度で大きい併用効果を示唆している。
【0048】
一態様において、本発明は、過剰増殖性疾患を治療するための方法を提供し、式Iの化合物又はその塩、及び5−FU、白金剤、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、SN−38、カペシタビン、テモゾロミド、エルロチニブ、PD−0325901、パクリタキセル、ベバシズマブ、ペルツズマブ、タモキシフェン、ラパマイシン、ラパチニブ、ベムラフェニブ、MDV3100、アビラテロン、及びGDC−0973から選択される一以上の薬剤の投与は、過剰増殖性疾患の治療において相乗効果を与える。更なる態様において、相乗効果は、約0.8未満のコンビネーションインデックス値を有する。更なる態様において、相乗効果は、0より大きいBLISSスコアを有する。更なる態様において、相乗効果は、0より大きいHASスコアを有する。更なる態様において、過剰増殖性疾患は、PTEN欠損状態、PTENは低い状態、PI3k変異、AKT変異又は高pAKT発現又は活性を含む。
【0049】
別の態様は、GDC−0068又はその塩及びベムラフェニブ又はその塩の投与が癌の治療において相乗的効果を与える、リンパ腫、大腸癌、転移性メラノーマ、甲状腺癌または肺癌から選択される癌を治療するための方法を提供する。更なる態様において、癌はBRAF V600E変異を含み、一実施例において、高pAKT発現又は活性レベルを更に含む。更なる態様において、相乗効果は、約0.8未満のコンビネーションインデックス値を有する。更なる態様において、相乗効果は、0より大きいBLISSスコアを有する。更なる態様において、相乗効果は、0より大きいHASスコアを有する。
【0050】
式Iの化合物
式Iの化合物は式Iの化合物
及び薬学的に許容されるその塩を含み、ここで
R
1はH、Me、Et、ビニル、CF
3、CHF
2又はCH
2F、
R
2はH又はMeであり、
R
5はH、Me、Et、又はCF
3であり、
Aは
であり、
Gは、任意で1から4のR
9群により置換されたフェニル又は任意でハロゲンにより置換された5〜6員環ヘテロアリールであり、
R
6及びR
7は、独立にH、OCH
3、(C
3−C
6シクロアルキル)−(CH
2)、(C
3−C
6シクロアルキル)−(CH
2CH
2)、V−(CH
2)
0−
1(ここで、Vは、N、O及びSから独立に選択される1から2の環ヘテロ原子を有する5〜6員環ヘテロアリールである)、W−(CH
2)
1−
2(ここでWは任意でF、Cl、Br、I、OMe、CF
3又はMeと置換される)、C
3−C
6シクロアルキル(任意でC
1−C
3アルキル又はO(C
1−C
3アルキル)と置換される)、ヒドロキシ−(C
3−C
6−シクロアルキル)、フルオロ−(C
3−C
6−シクロアルキル)、CH(CH
3)CH(OH)フェニル、4〜6員複素環(任意でF、OH、C
1−C
3−アルキル、シクロプロピルメチル又はC(=O)(C
1−C
3アルキルと置換される)、又はC
1−C
6アルキル(任意でオキソ、O(C
1−C
6−アルキル)、CN、F、NH
2、NH(C
1−C
6−アルキル)、N(C
1−C
6−アルキル)
2、シクロプロピル、フェニル、イミダゾリル、ピペリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、オキセタニル、又はテトラヒドロピラニルから独立に選択される一以上の群と置換される)であるか、
又は、R
6及びR
7は、それに結合する窒素とともに、4〜7員複素環を形成し、ここで前記複素環は任意で、OH、ハロゲン、オキソ、CF
3、CH
2CF
3、CH
2CH
2OH、O(C
1−C
3アルキル)、C(=O)CH
3、NH
2、NHMe、N(Me)
2、S(O)
2CH
3、シクロプロピルメチル及びC
1−C
3アリールから独立に選択される一以上の群と置換されており、
R
a及びR
bはHであるか、
又はR
aはHであり、及びR
b及びR
6は、それに結合する原子とともに、1〜2の環窒素原子を有する5〜6員複素環を形成し、
R
c及びR
dはH又はMeであるか、
又はR
c及びR
dは、それに結合する原子とともに、シクロプロピル環を形成し、
R
8はH、Me、F又はOHであるか、
又はR
8及びR
6は、それに結合する原子とともに、1〜2の環窒素原子を有する5〜6員複素環を形成し、
各R
9は、独立にハロゲン、C
1−C
6−アルキル、C
3−C
6−シクロアルキル、O−(C
1−C
6−アルキル)、CF
3、OCF
3、S(C
1−C
6−アルキル)、CN、OCH
2−フェニル、CH
2O−フェニル、NH
2、NH−(C
1−C
6−アルキル)、N−(C
1−C
6−アルキル)
2、ピペリジン、ピロリジン、CH
2F、CHF
2、OCH
2F、OCHF
2、OH、SO
2(C
1−C
6−アルキル)、C(O)NH
2、C(O)NH(C
1−C
6−アルキル),及びC(O)N(C
1−C
6−アルキル)
2であり、
R
10はH又はMeであり、そして
m、n及びpは独立に0又は1である。
【0051】
式Iの特定の化合物は、Aが
であることを特徴とする化合物である。
式Iの特定の化合物は、式Iaの化合物が
であるか又は薬学的に許容されるその塩であることを特徴とする化合物である。
【0052】
式Iの化合物の本発明の一態様は、化合物(S)−2−(4−クロロフェニル)−1−(4−((5R、7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−(イソプロピルアミノ)プロパン−1−オン(式Ia)
及び薬学的に許容されるその塩(この化合物はGDC−0068とも呼ばれ得る)を除外する。
【0053】
式Iの化合物の調製
この発明の化合物は、特に本明細書に含まれる記述に照らして、化学技術分野において既知であるものに類似するプロセスを含む合成ルートによって合成することができる。出発材料は、概してアルドリッチケミカルズ社(Milwaukee, WI)等の商業的供給源から入手可能であるか、または当業者に既知の方法を使用して容易に調製される(例えば、Louis F. Fieser and Mary Fieser, Reagents for Organic Synthesis, v. 1-19, Wiley, N.Y. (1967-1999 ed.)、又はBeilsteins Handbuch der organischen Chemie, 4, Aufl. ed. Springer-Verlag, Berlin(補足を含む)に概して記載されている方法によって調製される)。
【0054】
式Iの化合物は、単独で、または少なくとも2つ、例えば5〜1,000の化合物、又は10〜100の化合物を含んでなる化合物ライブラリーとして調製することができる。式Iの化合物のライブラリーは、コンビナトリアル「スプリット・ミックス法」アプローチによって、又は液相又は固相化学のいずれかを使用した複数の並列合成によって、当業者に公知の方法により調製することができる。従って、本発明の更なる態様によれば、式Iのうちの少なくとも2化合物、又はその塩を含む化合物ライブラリーが提供される。
【0055】
例示を目的として、スキーム1〜4およびスキームA〜Jは、本発明の化合物および鍵となる中間体を調製するための一般的方法を示す個々の反応工程のより詳細な説明については、下記の実施例の節を参照されたい。当業者であれば、本発明の化合物を合成するために他の合成ルートを使用してもよいことを理解するであろう。特定の出発材料および試薬がスキームに描写され、後述されているが、多種多様な誘導体および/または反応条件を提供するために、その他の出発材料および試薬で簡単に代用できる。さらに、以下に記載されている方法によって調製される化合物の多くは、この開示に照らし、当業者に既知である従来の化学を使用してさらに修飾することができる。
【0056】
【0057】
スキーム1は、式Iの化合物10を調製する方法を示し、ここで、R
1はH、R
2はH及びR
5はHである。ピリミジン2の形成は、エタノールなどの適当な溶媒中、例えば、KOHのような塩基の存在下でチオ尿素とケトエステル1の反応により達成することができる。標準的な還元条件下(例えば、ラネーニッケル及びNH
4OH)で化合物2のメルカプト基を還元し、化合物3を与えた後、標準的な条件下で(例えば、DIEA/DCE中のPOCl
3)ヒドロキシピリミジン3を塩素化することができ、化合物4を与える。化合物4は、その後、標準的な条件下(CHCl
3などの適切な溶媒中のMCPBAなど)で酸化され、ピリミジン酸化物5を得る。無水酢酸によるピリミジン酸化物の処置により転位生成物6を与える。化合物7を得るための標準的なSNAr反応条件下で化合物6を適切に置換されているピペリジンと反応させることにより、化合物7が得られる。化合物7を加水分解して化合物8を得、続いてこれを脱保護して中間体9を得る。HBTU等のカップリング試薬の存在下における、適切なアミノ酸によるピペラジニルシクロペンタ[d]ピリミジン9のアシル化、必要に応じてそれに続く脱保護により、式Iの化合物10が生じる。
【0058】
【0059】
スキーム2は、式Iの化合物22、25および27[式中、R
1、R
2およびR
5はメチルである]を調製する方法を示す。スキーム2によれば、臭素による(+)−プレゴン11の臭素化により、二臭化物12が生じる。ナトリウムエトキシド等の塩基による二臭化物12の処理により、プレジェネート(pulegenate)13が得られる。プレジェネート13のオゾン分解により、ケトエステル14が生じる。エタノール中、KOH等の塩基の存在下における、チオ尿素によるケトエステル14の処理、それに続く標準的な条件(例えば、アンモニア中のラネーNi触媒)下におけるメルカプト基の還元は、ヒドロキシピリミジン16をもたらす。標準的な条件(例えば、POCl
3)下におけるヒドロキシピリミジン16の塩素化により、4−クロロピリミジン17が得られる。MCPBAまたは過酸化水素等の酸化剤による4−クロロピリミジン17の酸化により、N−オキシド18が得られる。無水酢酸によるN−オキシド18の転位により、中間体19が得られる。スキーム1に記載されている手順に従って化合物19を所望のピペラジンと反応させ、化合物20[式中、R
5はHである]および23[式中、R
5はMeである]を得る。キラル固定を用いるHPLCを使用して化合物20および23をキラル分離に付し、続いて水酸化リチウム等の塩基で処理して加水分解し、それぞれ化合物21および24を得る。脱保護後、化合物21および24を適切なアミノ酸と反応させて、それぞれ化合物22および25を得る。
【0060】
あるいは、化合物24の7−ヒドロキシ基を、NaHまたはKOH等の塩基の存在下、ハロゲン化アルキル等のアルキル化試薬でアルキル化して、化合物26[式中、R
2はMeである]を得てもよい。脱保護後、化合物26を適切なアミノ酸と反応させて、化合物27を得る。
【0061】
【0062】
スキーム3は、化合物73および74を調製する代替的な方法を示す。スキーム3によれば、アンモニアシントンを使用する14のアミノ化により、63が生じる。ホルムアミドの存在下、50℃〜250℃および/または高圧における、例えばギ酸アンモニウムを使用するピリミジン形成により、二環ユニット64が生じる。例えばPOCl
3またはSOCl
2を使用する64の活性化により、活性ピリミジン65が生じる。適切な保護/置換されているピペリジンを使用する、0℃〜150℃におけるこの離脱基の転移により、ピペリジン66が生じる。例えばm−クロロ過安息香酸(「MCPBA」または「m−CPBA」)またはOxone(登録商標)を使用する、−20℃〜50℃における酸化により、N−オキシド67が生じる。アシル化剤(例えば、無水酢酸)による処理とそれに続く加熱(40℃〜200℃)は転位を引き起こし、68が生じる。例えばLiOHまたはNaOHを使用する、0℃〜50℃における加水分解により、アルコール69が生じる。例えばスワーン条件、MnO
4またはピリジン−SO3複合体を使用する、適温における酸化により、ケトン70が生じる。例えば、水素の存在下での触媒的キラル触媒、CBS触媒、またはキラルリガンドの存在下でのホウ化水素還元剤を使用する不斉還元により、アルコール71または72において(R)または(S)いずれかの立体化学が生じる。あるいは、シクロペンタンユニット上のメチル基に面選択性および最終的にジアステレオ選択性を提供することを可能にする非キラル還元剤(例えば、H
2、Pd/C)が使用される場合もある。還元によってより低いジアステレオ選択性が生じる場合、ジアステレオマーを(例えば)クロマトグラフィー、結晶化または誘導体化によって分離することができる。最後に、例えば0℃〜50℃の酸を使用するBoc−基の脱保護、適切に官能基化されたアミノ酸を使用するアシル化、およびこのアミノ酸のアミンの最終官能基化(例えば、新たな置換基を導入するための、任意の保護基の除去、アルキル化、還元的アミノ化またはアシル化)により、最終化合物73および74が生じる。
【0063】
【0064】
化合物1へのキラル補助基(例えば、エバンス(Evans)のオキサゾリジノン等)の導入は、共役2を生じさせるための標準的なアシル化手順によって遂行することができる。例えば、活性化剤(例えば、COCl
2)による酸の処理、または−20℃〜100℃における、アミン塩基の存在下での混合無水物形成(例えば、2,2−ジメチルプロパノイルクロリド)、それに続く適切なキラル補助基(X)による処理により、化合物2が生じる。キラル補助基の立体化学および選定は、新たに作成されたキラル中心の立体化学およびジアステレオ選択性を決定し得る。低温(例えば、−20℃〜−100℃)でのルイス酸(例えば、TiCl
4)およびアミン塩基(例えば、ヒューニッヒ塩基)による化合物2の処理、それに続く低温での適切に置換されているイミニウムイオン前駆体3の使用により、化合物4が生じる。温度、ルイス酸およびキラル補助基はすべて、付加体のジアステレオ選択性に影響を及ぼすことが予期され得る。最後に、温和な条件(例えば、−10℃〜30℃におけるLiOH/H
2O)下での鹸化により、所望の酸5が生じる。
【0065】
したがって、この発明の別の態様は、式Iの化合物を調製する方法であって、
式:
[式中、R
1、R
2、R
5およびR
10は本明細書で定義される通りである]を有する化合物を、式:
[式中、R
6、R
7、R
a、R
b、R
c、R
d、G、m、nおよびpは本明細書で定義される通りである]を有するアミノ酸と反応させるステップ
を含む方法を提供する。
【0066】
スキーム1〜4および実施例に示されている通りの式Iの化合物の合成において使用されるアミノ酸は、市販されているか本明細書において開示されている方法に従って調製できるかのいずれかである。例えば、いくつかの実施形態において、式Iの化合物を調製するために使用されるアミノ酸は、式1Aを有するβ−フェニルグリシンアミノ酸、式2Aを有するγ−フェニルグリシンアミノ酸、式3Aを有するβ−フェニルアラニンアミノ酸および式4Aを有するγ−フェニルアラニンアミノ酸を含む。
式IA〜4Aのアミノ酸を調製する方法はスキームA〜Jに示される。
【0067】
スキームAは、式1Aの場合によって置換されているβ−フェニルグリシンアミノ酸25および26[式中、R
8はHであり、R
6およびR
9は本明細書で定義される通りであり、tは0〜4であり、R
7はHまたはアミン保護基である]を調製する方法を示す。スキームAによれば、酸20は、触媒量の濃H
2SO
4等の酸またはDCC/DMAP等のカップリング剤の存在下における適切なアルコール(例えば、MeOH)による処理等の標準的な条件を使用して、あるいは、NEt
3/DMAP等の塩基の存在下、適温(例えば、−20℃〜100℃)における適切な求電子剤(例えば、MeI、EtBr、BnBr)による処理によって、エステル21[式中、R’はアルキルである]に変換される。エステルの適切な選定は、合成終了時に酸を改質するために必要とされる条件によって決定され、多数の適切な例および条件は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第5章に掲載されている。化合物22を得るためのヒドロキシメチル基の導入は、NaOEt等の塩基の存在下、適温(例えば、−20℃〜室温)における適切なアルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)による処理によって実行することができる。離脱基(例えば、メシラート、トシラート、ハロゲン化物)を形成するための化合物22のアルコール基の活性化は、例えば、NEt
3、DIPEAまたはDBU等の過剰塩基の存在下、適温(例えば、−20℃〜室温)における塩化メタンスルホニルによる処理によって遂行することができる。多くの場合、オレフィン24はこの手順によって直接的に単離することができ、その他の場合、化合物24を得るための脱離を完了するには、加温(30℃〜100℃)またはさらなる塩基(例えば、ハロゲン化物の場合にはDBU)が必要となり得る。活性オレフィン24を、適温(例えば、−20℃〜還流)において、THF等の適切な溶媒中の所望の第一級アミン(例えば、エチルアミン)で処理して、アミノエステル中間体を生成することができる。化合物24が電子豊富な芳香環または電子不足/巨大な第一級アミンを有する場合、加熱(例えば、封管中で30〜240℃)またはマイクロ波化学が必要となる場合がある。アミン基の(例えばBoc−基としての)保護は、化合物23[式中、Pgは保護基である]を得るための標準的な条件下、Boc
2Oを使用して遂行することができる。代替的な保護基を使用してもよく、多数の適切な例が、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第7章に掲載されている。保護アミノ酸25を形成するためのエステル23の鹸化は、エステルに適した条件(例えば、メチルエステルには水性LiOH、ベンジルエステルには水素化、t−ブチルエステルには酸)を使用して遂行することができる。
【0068】
あるいは、活性オレフィン24を、適温(例えば、−20℃〜還流)において、THF等の適切な溶媒中の第二級アミン(例えば、ジエチルアミン)で処理して、アミノエステル中間体(図示せず)を生成することもできる。化合物24が電子豊富な芳香環または電子不足/巨大な第二級アミンを有する場合、加熱(例えば、封管中で30〜240℃)またはマイクロ波化学が必要となる場合がある。アミノ酸26を形成するためのエステルの鹸化は、エステルに適した条件(例えば、メチルエステルには水性LiOH、ベンジルエステルには水素化、t−ブチルエステルには酸等)を使用して遂行することができる。
【0069】
スキームAの代替において、化合物23および25中のPgはR
7で置換されていてよい。
【0070】
【0071】
スキームA1は、スキーム1の代替を示し、活性オレフィン24は反応してアミノ酸26Aを形成する。
【0072】
【0073】
スキームBは、式1Aの場合によって置換されているβ−フェニルグリシンアミノ酸30および31[式中、R
8はOHであり、R
6およびR
9は本明細書で定義される通りであり、tは0〜4であり、R
7は本明細書で定義される通りまたはアミン保護基である]を調製する方法を示す。適温(室温〜還流)における、MCPBA等の標準的な酸化剤を使用する不飽和エステル24(スキームAに従って調製されたもの)[式中、tは0〜4であり、R’はアルキルである]の酸化により、エポキシド中間体28が得られる。中間体28を、一般に高温(例えば、50〜300℃)および高圧(例えば、封管またはボンベ中)において適切なアミンで処理して、アミノアルコール29または30を生じさせることができる。第二級アミンを使用する場合(化合物30の調製において等)、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第5章に掲載されている条件(例えば、メチルエステルにはLiOH、ベンジルエステルには水素化等)を使用するエステルの脱保護が使用され得る。第一級アミンを使用する場合(化合物29の調製において等)、アミンの保護(例えば、Boc無水物を使用してBoc−基として)、それに続くエステルの脱保護(上記条件を使用する)により、ヒドロキシル化アミノ酸31が得られる。
【0074】
【0075】
スキームCは、式1Aの場合によって置換されているβ−フェニルグリシンアミノ酸36[式中、R
8はメチルであり、R
6はHであり、R
7はアミン保護基であり、tは0〜4であり、R
9は本明細書で定義される通りである]を調製する方法を示す。エステル32[式中、R’’’はアルキルである]を、適温(例えば、0℃〜還流)において塩基(例えば、NaOtBu)で処理してアニオンを形成し、それに続く適温(−78℃〜室温)における求電子剤(例えば、tert−ブチル2−ブロモアセテート)の添加により、ホモログ化された(homologated)エステル33を生じさせることができる。適温(例えば、0℃〜還流)において、TFAまたはHCl等の適切な酸を使用する化合物33のt−ブチルエステルの鹸化により、化合物34が得られる。NEt
3等の弱塩基の存在下、適温(例えば、0℃〜還流)における、例えばDPPAを使用する化合物34のクルチウス転位、それに続く、場合によってルイス酸(例えば、SnCl
2)の存在下、高温(例えば、40〜200℃)におけるアルコール(例えば、t−BuOH)による反応中間体の処理により、化合物35[式中、Pgはアミン保護基である]が得られる。化合物35を調製するために使用されるアルコールの選定は、アミン保護基を決定する(例えば、t−BuOHはBoc−アミンを提供する)。標準的な条件(例えば、保護基がメチルエステルである場合にはLiOH、ベンジルエステルには水素化等)を使用する化合物35のエステル基の脱保護により、酸化合物36が生じる。
【0076】
スキームCの一代替において、R
8は、メチル、HまたはFであってよい。
【0077】
スキームCの別の代替において、化合物35および36中のPgはR
7で置換されていてよい。
【0078】
【0079】
スキームDは、式2Aの場合によって置換されているγ−フェニルグリシンアミノ酸40[式中、R
c、R
d、およびR
9は本明細書で定義される通りであり、tは0〜4であり、R
6はHであり、R
7はBoc等のアミン保護基である]を調製する方法を示す。スキームAに従って調製された出発不飽和エステル24を、DBU等の塩基の存在下、適温(例えば、0℃〜室温)において置換ニトロメタン誘導体(例えば、ニトロエタン)で処理して、ホモログ化された付加体37を生じさせることができる。化合物37のニトロ基を、適温(例えば、室温〜還流)において、標準的な条件(例えば、水素化、Zn/酸等)を使用して還元し、結果として生じた中間体を環化して、ラクタム中間体38を生じさせることができる。化合物39を得るための、例えばBoc−基によるアミンの保護は、標準的な条件下、Boc
2Oを使用して遂行することができる。代替的な保護基を使用してもよく、多数の適切な例が、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第7章に掲載されている。適温(例えば、0〜100℃)における、LiOHまたはKOH等の塩基水溶液による化合物39の処理は、ラクタムの開環をもたらし、適切に置換されている保護アミノ酸化合物40を生じさせる。
【0080】
スキームDの一代替において、化合物39および40中のBocはR
7で置き換えられていてよい。
【0081】
スキームD1は、γアミノ酸40dおよび40eの単一鏡像異性体[式中、R
c、R
dおよびR
9は本明細書で定義される通りであり、tは0〜4であり、R
6はHであり、R
7はBoc等のアミン保護基である]を形成する代表的な方法を示す。考えられる1つの方法において、ラセミアミノ酸を、キラル固定相を使用するキラルクロマトグラフ分離に付す。あるいは、従来のクロマトグラフ技術により分離することができるジアステレオマー混合物を調製してもよい。例えば、塩基性アミン(例えば、ヒューニッヒ塩基)の存在下、−20℃〜50℃における化合物40(例えば、COCl
2、塩基)の活性化およびキラル補助基(例えば、エバンスのオキサゾリジノン)の導入により、化合物40bおよび40cのジアステレオマー混合物が生じる。この混合物を、標準的な条件(例えば、カラムクロマトグラフィー、HPLC、SFC等)を使用して分離し、個々のジアステレオマーを生じさせることができる。これらを、キラル補助基の切断によって(エバンスの補助基の場合、−15℃〜室温において(例えば)LiOH/HOOHを使用して)所望の酸に変換し、化合物40dおよび40eを生じさせることができる。新たに分離されたキラル中心のラセミ化を防止するために、温度を低く保つことが必要な場合もある。
【0082】
スキームEは、式2Aの場合によって置換されているγ−フェニルグリシンアミノ酸44[式中、R
8はメチルであり、R
6はHであり、R
7はアミン保護基であり、tは0〜4であり、R
9は本明細書で定義される通りである]を作製する方法を示す。エステル32[式中、R’’’はアルキルであり、tは0〜4である]を、適温(例えば、0℃〜還流)において、KOtBu等の適切な塩基で処理してアニオンを形成し、それに続く、−78℃〜室温の範囲の温度におけるアクリレートユニット(例えば、t−ブチルアクリレート)の添加により、ホモログ化されたエステル41を生じさせることができる。適温(例えば、0℃〜還流)における、TFAまたはHCl等の適切な酸による処理による、化合物41のt−ブチルエステルの鹸化により、化合物42が得られる。NEt
3等の弱塩基の存在下、適温(例えば、0℃〜還流)における、例えばDPPAを使用する化合物42のクルチウス転位、それに続く、場合によってルイス酸(例えば、SnCl
2)の存在下、昇温(例えば、40〜200℃)における適切なアルコール(例えば、tBuOH)による反応中間体の処理により、化合物43が得られる。アルコールの選定は、化合物43のアミン保護基を決定する(例えば、tBuOHはBoc−アミンを提供する)。標準的な条件(例えば、メチルエステルにはLiOH、ベンジルエステルには水素化等)下における化合物43のエステルの脱保護により、酸44が生じる。
【0083】
スキームEの一代替において、化合物43および44中のPgはR
7で置換されていてよい。
【0084】
スキームFは、式3Aの場合によって置換されているβ−フェニルアラニンアミノ酸48、49および50[式中、R
6はHであり、R
7はアミン保護基であり、tは0〜4であり、R
9は本明細書で定義される通りである]を調製する方法を示す。適切に置換されているアルデヒド45を、ピペリジン等の適切な塩基の存在下、適温(例えば、室温〜還流)において、式CN−CH
2CO
2R’’’のシアノアセテート[式中、R’’’はアルキル(例えば、エチル2−シアノアセテート)である]で処理して、不飽和エステル46を生じさせることができる。化合物47を得るための化合物46のオレフィンおよびニトリル基の還元は、多数の手法で遂行することができる。例えば、オレフィンは、NaBH
4等、1,4−還元をもたらすことが知られている任意の剤で還元することができる。ニトリルは、BF
3OEt
2またはTFA等のルイス酸の存在下、LiAlH
4またはNaBH
4等の剤を使用して還元することができる。「Reductions in Organic Chemistry」、Hudlicky著、ACS monograph、第2版、第18章に掲載されているもの等、多数の代替的な還元剤を使用することができる。必要に応じ、標準的な条件(例えば、適切なアルデヒド、ルイス酸および還元剤を使用する還元的アミノ化)を使用して、第一級アミン47をこの段階でモノアルキル化またはビスアルキル化し、化合物48および49になる途中の中間体(図示せず)を得ることができる。第一級および第二級アミンを調製するために、任意の数の保護基(例えば、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第7章)を使用し、例えば0℃〜室温においてBoc無水物を使用するBoc−基として、保護を遂行することができる。アミノ酸48、49または50を形成するためのエステル基の切断は、LiOHもしくはKOH等の塩基水溶液、または前述の「Protecting Groups」教科書に掲載されている代替的な試薬のいずれか(例えば、ベンジルエステルには水素化)を使用して遂行することができる。
【0085】
スキームFの一代替において、化合物49または50中のPgはR
7で置換されていてよい。
【0086】
【0087】
スキームGは、式4Aの場合によって置換されているα−フェニルアラニンアミノ酸54[式中、R
6はHであり、R
7はアミン保護基であり、tは0〜4であり、R
9は本明細書で定義される通りである]を調製する方法を示す。適切に置換されている酸51を、室温〜還流の範囲の温度で、例えばLiAlH
4を使用して還元し、ベンジルアルコール52とすることができる。化合物52のアルコール基は、例えばPBr
3、MsCl/NEt
3等を使用して、離脱基(例えば、ハロゲン化物、メシラート等)として活性化することができる。LDA、nBuLi等の強塩基の存在下、エチル2−(ジフェニルメチレンアミノ)アセテート等の保護グリシン誘導体を使用するこの離脱基の転移により、アミノエステル中間体53[式中、R
1はアルキルであり、Pgは保護基である]が得られる。適切な保護基は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscienceに掲載されている)。例えばBoc−基を導入するために、この段階でアミン保護基を変化させてもよい。その後の適温(例えば、0℃〜還流)におけるエステル53の脱保護(例えば、ベンジルエステルには3NのHCl、LiOH、水素化を使用する等)により、所望のN−保護アミノ酸54が得られる。
【0088】
スキームGの一代替において、化合物53の脱保護後の化合物54中のPgはR
7で置換されていてよい。
【0089】
スキームHは、式2Aの場合によって置換されているγ−フェニルグリシンアミノ酸56[式中、R
6およびR
8は、それらが結合した原子と一緒になって、スピロ環式ヘテロシクリル環を形成し、R
7はアミン保護基であり、tは0〜4であり、R
9は本明細書で定義される通りである]を調製する方法を示す。スキームHによれば、不飽和エステル24を、乾燥条件下(例えば、分子篩の添加による)、適温(例えば、室温〜還流)において、適切に保護されているグリシン誘導体(例えば、ベンジルグリシン)およびホルムアルデヒドで処理し、化合物55を生成することができる。標準的な条件(例えば、水素化、1−クロロエチルホルメート等を介する)を使用するベンジル基の切断、それに続く、Boc−基等のアミン保護基の添加および標準的な条件(例えば、0℃〜還流において、メチルエステルにはLiOH、t−ブチルエステルには酸等)下におけるエステルの切断により、N−保護アミノ酸56が得られる。
【0090】
スキームHの一代替において、化合物56中のPgはR
7で置換されていてよい。
【0091】
スキームIは、式3Aの場合によって置換されているβ−フェニルアラニンアミノ酸61および62[式中、R
6およびR
bは、それらが結合した原子と一緒になって、ヘテロシクリル環を形成し、R
7およびR
9は本明細書で定義される通りであり、tは0〜4である]を調製する方法を示す。酸57を、触媒酸(例えば、濃H
2SO
4またはTMSCl)またはカップリング剤(例えば、DCC/DMAP)いずれかの存在下、適切なアルコール(例えば、MeOH)による処理等の標準的条件を使用して、あるいは、NEt
3/DMAP等の適切な塩基の存在下、適温(例えば、−20℃〜100℃)における適切な求電子剤(例えば、MeI、EtBr、BnBr)による処理によって、エステル58に変換する。エステルの適切な選定は、「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第5章に記載されているもの等、合成終了時に酸を改質するために必要とされる条件によって決定される。化合物59を得るための化合物58の環化は、TFAの存在下、例えばN−(メトキシメチル)(フェニル)−N−((トリメチルシリル)メチル)メタンアミンを使用して達成することができる。この特定の試薬のセットはベンジルアミンを生成し、これを、−20℃〜50℃における水素化等の標準的な条件または「Protective Groups in Organic Synthesis」、GreeneおよびWuts著、Wiley-Interscience、第3版、第7章に掲載されているもの等、その他任意の標準的な条件下で切断し、化合物60を得ることができる。Boc−無水物等、前述の教科書に掲載されている試薬を使用する、代替保護基(例えば、Boc)による化合物60の遊離アミンの保護、それに続く、エステルに適した標準的な条件(例えば、メチルエステルには水性LiOH、ベンジルエステルには水素化、t−ブチルエステルには酸)を使用するエステルの切断により、酸化合物61が得られる。あるいは、(例えば、アルキル化、還元的アミノ化またはアシル化条件を使用して)遊離アミンをさらに官能基化し、それに続くエステル切断により、第三級アミノ酸化合物62を生成することができる。
【0092】
【0093】
b−アミノ酸のいずれかの鏡像異性体は、スキームJに示されるもの等の手順を使用して調製することができる。アミノ酸のb位に所望の化学を生成するために適切な立体化学を有する適切なキラル補助基(R*)(例えば、エバンスの補助基またはスルタム)と結合された2−フェニル酢酸塩を、イミンまたはイミニウムイオンシントン(例えば、−100℃〜50℃における、ルイス酸(例えば、TiCl
4)および適切に置換されているアルコキシメタンアミンまたはN−(アルコキシメチル)アミド/カルバメートの存在により、インシチュで調製されたもの)で処理することができる。不斉付加は、最高レベルの立体化学的誘導を起こすために、ルイス酸(例えば、TiCl
4)の存在、アミン塩基(例えば、ヒューニッヒ塩基)および低温(例えば、−100℃〜0℃)を必要とする場合がある。deが必要とされるよりも低い場合、別個のジアステレオマーを、(例えば)クロマトグラフィーまたは結晶化によってこの段階で分離することができる。選定された補助基を切断することが知られている方法(例えば、エバンス補助基には−50℃〜50℃におけるLiOH/H
2O
2)を使用するキラル補助基の切断は、その後、b位に所望の立体化学を有する所望のN−保護b−アミノ酸をもたらす。さらに、R
6も保護基(例えば、2,4−ジメトキシベンジル)である場合、その保護基はBoc−基(例えば、水素化またはDDQ等)の存在下で除去されてBoc−アミノ酸を生じさせることができ、これがBoc−基の除去時に第一級アミンを提供し、そのアミンは、アルキル化、アシル化または還元的アミノ化によって(ピリミジン−ピペラジンユニットとの結合の前または後に)さらに官能基化することができる。
【0094】
式Iの化合物を調製するとき、中間体の遠隔官能基(例えば、第一級または第二級アミン等)の保護が必要となる場合がある。そのような保護の必要性は、遠隔官能基の性質および調製方法の条件に応じて異なってくる。適切なアミノ保護基(NH−Pg)は、アセチル、トリフルオロアセチル、t−ブトキシカルボニル(BOC)、ベンジルオキシカルボニル(CBz)および9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)を含む。そのような保護の必要性は、当業者によって容易に判断される。保護基の概要およびその使用については、T. W. Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley & Sons、ニューヨーク、1991年を参照されたい。
【0095】
分離の方法
式Iの化合物を調製するための合成法のいずれかにおいて、反応生成物を互いにおよび/または出発材料から分離することが有利な場合がある。各ステップまたは一連のステップの所望の生成物は、当該技術分野において一般的な技術により、望ましい程度の均質性になるまで分離および/または精製される。一般にそのような分離は、多相抽出、溶媒もしくは溶媒混合物からの結晶化、蒸留、昇華またはクロマトグラフィーを伴う。クロマトグラフィーは、例えば、逆相および順相;サイズ排除;イオン交換;高、中および低圧液体クロマトグラフィー方法および装置;小規模分析;疑似移動床(SMB)および分取薄層または厚層クロマトグラフィー、ならびに小規模薄層およびフラッシュクロマトグラフィーの技術を含む多数の方法を伴い得る。
【0096】
別の種類の分離法は、所望の生成物、未反応の出発材料、反応副生成物等に結合するため、または別の分離可能な状態にするために選択された試薬による反応混合物の処理を伴う。そのような試薬は、活性炭、分子篩、イオン交換媒体等の吸着剤または吸収剤を含む。あるいは、試薬は、塩基性物質の場合は酸、酸性物質の場合は塩基、抗体等の結合試薬、結合タンパク質、クラウンエーテル等の選択的キレート剤、液/液イオン交換試薬(LIX)等であってもよい。
【0097】
適切な分離の方法の選択は、関与する材料の性質に依存する。例えば、蒸留および昇華における沸点および分子量、クロマトグラフィーにおける極性官能基の有無、多相抽出における酸性および塩基性媒体中の材料の安定性等である。当業者であれば、所望の分離を達成する可能性が最も高い技術を適用するであろう。
【0098】
ジアステレオマー混合物は、クロマトグラフィーおよび/または分別結晶によって等、当業者に既知の方法により、それらの物理化学的相違に基づき、個々のジアステレオマーに分離することができる。鏡像異性体は、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールまたはモッシャーの酸塩化物等のキラル補助基)と反応させることによって鏡像異性体混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応する純鏡像異性体に変換する(例えば、加水分解する)ことによって分離することができる。また、本発明の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であってよく、この発明の一部とみなされる。鏡像異性体は、キラルHPLCカラムの使用によって分離することもできる。
【0099】
単一の立体異性体、例えばその立体異性体を実質的に含まない鏡像異性体は、光学活性分割剤を使用するジアステレオマーの形成等の方法を使用する、ラセミ混合物の分割によって得ることができる(Eliel, E.およびWilen, S.「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons, Inc.、ニューヨーク、1994年;Lochmuller, C. H.、J. Chromatogr.、(1975年)、113巻、3号、283-302頁)。本発明のキラル化合物のラセミ混合物は、(1)キラル化合物によるイオン性のジアステレオマー塩の形成および分別結晶または他の方法による分離、(2)キラル誘導体化試薬によるジアステレオマー化合物の形成、ジアステレオマーの分離および純立体異性体への変換、ならびに(3)直接キラル条件下における実質的に純または富化立体異性体の分離を含む任意の適切な方法によって分離および単離することができる。「Drug Stereochemistry, Analytical Methods and Pharmacology」、Irving W. Wainer編、Marcel Dekker, Inc.、ニューヨーク(1993年)を参照されたい。
【0100】
方法(1)では、ジアステレオマー塩は、ブルシン、キニーネ、エフェドリン、ストリキニーネ、α−メチル−β−フェニルエチルアミン(アンフェタミン)等の鏡像異性的に純粋なキラル塩基の、カルボン酸およびスルホン酸等の酸性官能基を担持する不斉化合物との反応により形成することができる。ジアステレオマー塩は、分別結晶またはイオンクロマトグラフィーによって分離するように誘発することができる。アミノ化合物の光学異性体の分離のために、ショウノウスルホン酸、酒石酸、マンデル酸または乳酸等、キラルカルボン酸またはスルホン酸の添加により、ジアステレオマー塩の形成をもたらすことができる。
【0101】
あるいは、方法(2)により、分割される基質がキラル化合物の1個の鏡像異性体と反応してジアステレオマー対を形成する(E.およびWilen, S.、「Stereochemistry of Organic Compounds」、John Wiley & Sons, Inc.、1994年、322頁)。ジアステレオマー化合物は、不斉化合物をメチル誘導体等の鏡像異性的に純粋なキラル誘導体化試薬と反応させ、それに続くジアステレオマーの分離および加水分解によって純または富化鏡像異性体を得ることにより、形成することができる。光学純度を測定する方法は、塩基またはモッシャーエステル、ラセミ混合物のα−メトキシ−α−(トリフルオロメチル)フェニルアセテート(Jacob III.、J. Org. Chem.、(1982年)、47巻、4165頁)の存在下、メンチルエステル、例えば(−)メンチルクロロホルメート等のキラルエステルを作製するステップと、2種のアトロプ異性鏡像体(atropisomeric enantiomer)またはジアステレオマーの存在について
1H NMRスペクトルを分析するステップとを含む。アトロプ異性化合物の安定したジアステレオマーは、アトロプ異性ナフチル−イソキノリンの分離のための方法に続く順相および逆相クロマトグラフィーにより、分離および単離することができる(国際公開第96/15111号)。方法(3)により、2種の鏡像異性体のラセミ混合物は、キラル固定相を使用するクロマトグラフィーによって分離することができる(「Chiral Liquid Chromatography」(1989年)、W. J. Lough編、Chapman and Hall、ニューヨーク;Okamoto、J. of Chromatogr.、(1990年)、513巻、375-378頁)。富化または精製された鏡像異性体は、旋光度および円偏光二色性等、不斉炭素原子を有する他のキラル分子を識別するために使用される方法によって識別することができる。
【0102】
化学療法剤
特定の化学療法剤は、式Iの化合物またはその薬学的に許容可能な塩と組み合わせて、細胞増殖をインビトロおよびインビボで阻害することにおいて驚くべき予想外の特性を示した。このそような化学療法剤には、5−FU、白金剤、イリノテカン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、SN−38、カペシタビン、テモゾロミド、エルロチニブ、PD−0325901、パクリタキセル、ベバシズマブ、ペルツズマブ、タモキシフェン、ラパマイシン、ラパチニブ、ベムラフェニブ、MDV3100、アビラテロン、及びGDC−0973が挙げられる。
【0103】
5−FU(フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、CAS登録番号51−21−8)はチミジレートシンターゼ阻害剤であり、結腸直腸癌および膵癌を含めた癌の治療において数十年間使用されてきた(米国特許第2802005号;米国特許第2885396号;Duschinskyら(1957)J.Am.chem.Soc.79:4559;Hansen,R.M.(1991)Cancer Invest.9:637-642)。5−FUは、5−フルオロ−1H−ピリミジン−2,4−ジオンと称される。
【0104】
カルボプラチン(CAS登録番号41575−94−4)は、卵巣癌、肺癌、頭頸部癌に対して使用される化学療法薬である(米国特許第4140707号;Calvertら(1982)Cancer Chemother.Pharmacol.9:140;Harlandら(1984)Cancer Res.44:1693)。カルボプラチンは、アザニド;シクロブタン−1,1−ジカルボン酸;白金と称される。
【0105】
シスプラチン、シスプラチン、又はシス−ジアミンジクロロ白金(II)(CAS登録番号15663−27−1)は、肉腫、いくつかの癌(例えば、小細胞肺癌、卵巣癌)、リンパ腫、及び胚細胞腫瘍を含む様々なタイプの癌を治療するために使用される化学療法薬である。それは、白金含有抗癌薬のクラスの最初のメンバーであり、それに現在カルボプラチン及びオキサリプラチンも含まれている。シスプラチンは、構造シス−PtCl
2(NH
3)
2を有する。
【0106】
オキサリプラチン(CAS登録番号63121−00−6)は、癌化学療法で使用されている配位錯体である(米国特許番号4,169,846)。オキサリプラチンは、進行癌(胃、卵巣)において他の白金化合物(シスプラチン、カルボプラチン)と比較されている。オキサリプラチンは、典型的には、結腸直腸癌の治療のためFOLFOXとして知られる併用でフルオロウラシル及びロイコボリンとともに投与される。
【0107】
イリノテカン(CAS登録番号97682−44−5)は巻き戻しからDNAを防ぐトポイソメラーゼ1阻害剤である。イリノテカンは、トポイソメラーゼIの阻害剤であるSN−38への加水分解により活性化される。活性代謝物SN−38によるトポイソメラーゼIの阻害は結果としてDNA複製及び転写の両方の阻害につながる。その主な用途は、他の化学療法剤と組み合わせて、特に大腸癌における用途である。これは注入投与の5−フルオロウラシル、ロイコボリン、イリノテカン及びから構成される投薬計画FOLFIRIを含む。
【0108】
ドキソルビシン(CAS登録番号23214−92−8)は、アントラサイクリン系抗生物質である。すべてのアントラサイクリンと同様に、それは挿入DNAによって作用する。ドキソルビシンは、一般的に造血器腫瘍、多くの種類の癌及び軟部組織肉腫を含む癌の広い範囲の治療に使用されている。ドキソルビシンは、(8S、10S)−10−(4−アミノ−5−ヒドロキシ−6−メチル−テトラヒドロ−2H−ピラン−2−イルオキシ)−6,8,11−トリヒドロキシ−8−(2−ヒドロキシアセチル)−1−メトキシ−7,8,9,10−テトラヒドロテトラセン−5,12−ジオンと称される。
【0109】
ドセタキセル(CAS登録番号114977−28−5)は乳癌、卵巣癌、及びNSCLC癌を治療するために使用される(米国特許第4814470号;米国特許第5438072号;米国特許第5698582号;米国特許第5714512号;米国特許第5750561号; Mangatal et al (1989) Tetrahedron 45:4177; Ringel et al (1991) J. Natl. Cancer Inst. 83:288; Bissery et al (1991) Cancer Res. 51:4845; Herbst et al (2003) Cancer Treat. Rev. 29:407-415; Davies et al (2003) Expert. Opin. Pharmacother. 4:553-565)。ドセタキセルは、5,20−エポキシ−1,2,4,7,10,13−ヘキサヒドロキシタキサ−11−エン−9−オン4−アセテート2−ベンゾエート三水和物を有する(2R,3S)−N−カルボキシ−3−フェニルイソセリン,N−tert−ブチルエステル,13−エステル(米国特許第4814470号;EP253738;CAS登録番号114977−28−5)と称される。
【0110】
フォリン酸(INN)又はロイコボリン(米国一般名)((2S)−2−{[4−[(2−アミノ−5−ホルミル−4−オキソ−5,6,7,8−テトラヒドロ−1H−プテリジン−6−イル)メチルアミノ]ベンゾイル]アミノ}グルタール酸、CAS登録番号1492−18−8)は、一般にホリナートカルシウム又は葉酸ナトリウム(又はカルシウム/ナトリウムロイコボリン)として投与され、投薬計画FOLFOXの一部として、化学療法剤の5−フルオロウラシルと、及び特定の実施態様においてはオキサリプラチンとの相乗的組み合わせを含む癌の化学療法において使用される。それは下記の構造を有する。
【0111】
ゲムシタビン(CAS登録番号95058−81−4)は、DNA複製を遮断するヌクレオシド類似体であり、膵臓、乳房、NSCLC、およびリンパ腫を含めた様々な癌腫を治療するために使用される(米国特許第4808614号;米国特許第5464826号;Hertel et al (1988) J. Org. Chem. 53:2406; Hertel et al (1990) Cancer Res. 50:4417; Lund et al (1993) Cancer Treat. Rev. 19:45-55)。ゲムシタビンは、4−アミノ−1−[3,3−ジフルオロ−4−ヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)テトラヒドロフラン−2−イル]−1H−ピリミジン−2−オンと称される。
【0112】
SN−38(CAS登録番号86639−52−3)は、イリノテカン(上記参照)の活性代謝産物である。それはイリノテカン自体より200倍活性である。これは、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンという名称を有している。
【0113】
カペシタビン(CAS登録番号154361−50−9)は、転移性乳癌および結腸直腸癌の治療に使用される経口投与化学療法剤である。カペシタビンは、腫瘍において5−フルオロウラシルに酵素的に変換されるプロドラッグであり、そこではDNA合成を阻害し腫瘍組織の増殖を遅らせる。カペシタビンの活性化は三つの酵素による工程及び二つの中間代謝産物、5’−デオキシ−5−フルオロシチジン(5’−DFCR)および5’−デオキシ−5−フルオロウリジン(5’−DFUR)を含む経路に従い、5−フルオロウラシルを形成する。カペシタビンは、ペンチル[1−(3,4−ジヒドロキシ−5−メチルテトラヒドロフラン−2−イル)−5−フルオロ−2−オキソ−1H−ピリミジン−4−イル]アミノメタノエート(aminomethanoate)なる名称を有する。
【0114】
テモゾロミド(CAS登録番号85622−93−1)は、多形性膠芽腫並びに皮膚癌の形態であるメラノーマとして知られているグレードIVの星状細胞腫の治療に用いることができるアルキル化剤である。テモゾロミドは、4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミドなる名称を有する。
【0115】
エルロチニブ(CAS登録番号183321−74−6、TARCEVA(登録商標)、OSI−774、ジェネンテック)は、上皮成長因子受容体(EGFR)チロシンキナーゼを特異的に標的とすることにより、非小細胞肺癌(NSCLC)、肺癌、膵臓癌及び幾つか他のタイプの癌を治療するために使用される(米国特許第5747498号;米国特許第6900221号; Moyer et al (1997) Cancer Res. 57:4838; Pollack et al (1999) J. Pharmcol. Exp. Ther. 291:739; Perez-Soler et al (2004) J. Clin. Oncol. 22:3238; Kim et al (2002) Curr. Opin. Invest. Drugs 3:1385-1395; Blackhall et al (2005) Expert Opin. Pharmacother. 6:995-1002)。エルロチニブは、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(メトキシメトキシ)キナゾリン−4−アミン(CAS登録番号183321−74−6)と称され、下記構造を有する。
【0116】
【0117】
PD−0325901(CAS登録番号391210−10−9、ファイザー)は、癌の潜在的な経口錠剤の治療のための第二世代、非ATP競合性、アロステリックMEK阻害剤である(米国特許第6960614号;米国特許第6972298号;米国特許出願公開第2004/147478号;米国特許出願公開第2005/085550号)。第II相臨床試験が、乳癌、結腸腫瘍、黒色腫の可能性のある治療のために行われている。PD−0325901は、(R)−N−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)−3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニル)ベンズアミドと命名され、下記構造を有する。
【0118】
パクリタキセル(CAS登録番号33069−62−4、TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology, Princeton NJ)は、タイヘイヨウイチイ(セイヨウイチイ)の樹皮から単離された化合物であり、肺癌、卵巣癌、乳癌、およびカポジ肉腫の進行型を治療するために使用される(Wani et al (1971) J. Am. Chem. Soc. 93:2325; Mekhail et al (2002) Expert. Opin. Pharmacother. 3:755-766)。パクリタキセルは、β−(ベンゾイルアミノ)−α−ヒドロキシ−,6,12b−ビス(アセチルオキシ)−12−(ベンゾイルオキシ)−2a,3,4,4a,5,6,9,10,11,12,12a,12b−ドデカヒドロ−4,11−ジヒドロキシ−4a,8,13,13−テトラメチル−5−オキソ−7,11−メタノ−1H−シクロデカ(3,4)ベンゾ(1,2−b)オキセト−9−イルエステル,(2aR−(2a−α,4−β,4a−β,6−β,9−α(α−R*,β−S*),11−α,12−α,12a−α,2b−α))−ベンゼンプロパン酸と称され、下記の構造を有する。
【0119】
【0120】
ベバシズマブ(CAS登録番号216974−75−3、AVASTIN(登録商標)、ジェネンテック)は、VEGF(血管内皮増殖因子)に対する組換えヒト化モノクローナル抗体である(米国特許第6054297号;Prestaら(1997)Cancer Res.57:4593-4599)。それは癌の治療において使用され、新たな血管形成を遮断することによって腫瘍増殖を阻害する。ベバシズマブは、転移性結腸癌および転移性非小細胞肺癌の大部分の形態の治療における標準的な化学療法と組み合わせた使用のためにFDAによって2004年に承認された、米国において最初の臨床的に利用可能な血管形成阻害剤であった。いくつかの後期臨床研究が、アジュバント/非転移性結腸癌、転移性乳癌、転移性腎細胞癌、転移性多形神経膠芽腫、転移性卵巣癌、転移性耐ホルモン性前立腺癌、および転移性または切除不能な局所進行膵癌を有する患者のためのその安全性および有効性を決定するために進行中である(Ferraraら(2004)Nat.Rev.Drug Disc.3:391-400)。ベバシズマブは、その受容体に対するヒトVEGFの結合を遮断するマウス抗hVEGFモノクローナル抗体A.4.6.1由来の変異ヒトIgG1フレームワーク領域及び抗原結合相補性決定領域を含む。ベバシズマブは約149,000ダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。
【0121】
ベバシズマブおよび他のヒト化抗VEGF抗体は、米国特許第6884879号にさらに記載されている。さらなる抗VEGF抗体には、G6またはB20シリーズの抗体、例えば、G6−31、B20−4.1が挙げられる(国際公開第2005/012359号;国際公開第2005/044853号;米国特許第7060269号;米国特許第6582959号;米国特許第6703020号;米国特許第6054297号;国際公開第98/45332号;国際公開第96/30046号;国際公開第94/10202号;欧州特許第0666868B1号;米国特許出願公開第2006/009360号;米国特許出願公開第2005/0186208号;米国特許出願公開第2003/0206899号;米国特許出願公開第2003/0190317号;米国特許出願公開第2003/0203409号;同20050112126号;Popkovら(2004)Journal of Immunological Methods288:149-164。その全開示が参照により本明細書中に明確に組み込まれている国際公開第2005/012359号の
図27〜29のいずれか1つによるB20抗体またはB20由来抗体の配列に由来する「B20シリーズの抗体」は、抗VEGF抗体である。一実施態様では、B20シリーズの抗体は、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K10l、E103、およびC104を含むヒトVEGF上の機能的エピトープに結合している。他の抗VEGF抗体には、残基F17、M18、D19、Y21、Y25、Q89、I91、K10l、E103、およびC104を含む、または、代わりに、残基F17、Y21、Q22、Y25、D63、I83およびQ89を含む、ヒトVEGF上の機能的エピトープに結合するものが含まれる。
【0122】
トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、huMAb4D5−8、rhuMAb HER2、ジェネンテック)は、細胞ベースのアッセイ(Kd=5nM)においてヒト上皮増殖因子受容体2タンパク質HER2(ErbB2)の細胞外ドメインに選択的に高親和性で結合する、マウスHER2抗体の組換えDNA由来ヒト化IgG1κモノクローナル抗体バージョンである(米国特許第5821337号;米国特許第6054297号;米国特許第6407213号;米国特許第6639055号;Coussens Lら(1985)Science230:1132-9;Slamon DJら(1989)Science244:707-12)。トラスツズマブは、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を有するヒトフレームワーク領域を含有する。トラスツズマブはHER2抗原に結合し、したがって癌細胞の増殖を阻害する。トラスツズマブはHER2抗原に結合し、したがって癌細胞の増殖を阻害する。トラスツズマブは、インビトロアッセイおよび動物の両方において、HER2を過剰発現しているヒト腫瘍細胞の増殖を阻害することが示されてきた(Hudziak RMら(1989)Mol Cell Biol9:1165-72;Lewis GDら(1993)Cancer Immunol Immunother;37:255-63;Baselga Jら(1998)Cancer Res.58:2825-2831)。トラスツズマブは、抗体依存性細胞性細胞傷害ADCCのメディエーターである(Hotaling TEら(1996)[抄録].Proc.Annual Meeting Am Assoc Cancer Res;37:471;Pegram MDら(1997)[抄録].Proc Am Assoc Cancer Res;38:602;Sliwkowskiら(1999)Seminars in Oncology26(4)、追補12:60-70;Yarden Y.およびSliwkowski,M.(2001)Nature Reviews:Molecular Cell Biology、Macmillan Magazines,Ltd.、第2巻:127-137)。HERCEPTIN(登録商標)は、ErbB2過剰発現転移性乳癌を有する患者の治療のために1998年に承認された(Baselgaら、(1996)J.Clin.Oncol.14:737-744)。FDAは、HER2陽性、リンパ節陽性乳癌を有する患者のアジュバント治療のためのドキソルビシン、シクロホスファミドおよびパクリタキセルを含有する治療計画の一部として、HERCEPTIN(登録商標)を2006年に承認した。HERCEPTIN(登録商標)治療に対して反応しない、または反応が不十分な、HER2過剰発現腫瘍またはHER2発現と関連する他の疾患を有するそれらの患者のためのさらなるHER2を標的とした癌治療を開発するための相当な臨床的必要性が存在する。
【0123】
ペルツズマブ(OMNITARG(商標)、rhuMab 2C4、Genentech)は、臨床段階のヒト化抗体であり、HER2受容体が、他のHER受容体ファミリーメンバー、すなわちHER1/EGFR、HER3、およびHER4と共同する能力を遮断するHER二量体化阻害剤(HDI)として知られている薬剤の新規なクラスにおける第1のものである(米国特許第6949245号;Agusら(2002)Cancer Cell2:127-37;Jacksonら(2004)Cancer Res64:2601-9;Takaiら(2005)Cancer104:2701-8)。癌細胞において、他のHERファミリー受容体と共同するHER2の能力を妨げることは細胞シグナル伝達を遮断し、最終的に癌細胞の増殖阻害および癌細胞の死をもたらし得る。HDIは、それらの独特な作用機序によって、HER2を過剰発現していないものを含めた多種多様の腫瘍において作用する可能性を有する(Mullenら(2007)Molecular Cancer Therapeutics6:93-100)。
【0124】
テモゾロミド(CAS登録番号85622−93−1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough)は、FDAによって承認された未分化星状細胞腫の治療のための経口化学療法の薬剤であり、多形神経膠芽腫などの他の脳腫瘍タイプのために研究されてきた(米国特許第5260291号;Stevensら(1984)J.Med.Chem.27:196;Newlandsら(1997)Cancer Treat.Rev.23:35-61;Dansonら(2001)Expert Rev.Anticancer Ther.1:13-19)。テモゾロミドは、(4−メチル−5−オキソ−2,3,4,6,8−ペンタアザビシクロ[4.3.0]ノナ−2,7,9−トリエン−9−カルボキサミドまたは3,4−ジヒドロ−3−メチル−4−オキソイミダゾ[5,1−d]−as−テトラジン−8−カルボキサミド(米国特許第5260291号、CAS番号85622−93−1)と称され、下記の構造を有する。
【0125】
【0126】
タモキシフェン(CAS登録番号10540−29−1、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標))は、乳癌の治療において使用される経口で有効な選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)であり、この適応症について現在世界で最も売れている薬物である。タモキシフェン(Nolvadex(登録商標))は、転移性乳癌の治療のためにFDAによって1977年に最初に承認された(ICI Pharmaceuticals、現AstraZeneca)(Jordan VC(2006)Br J Pharmacol147(追補1):S269-76)。タモキシフェンは、閉経前および閉経後の女性における早期および進行のエストロゲン受容体(ER)陽性乳癌両方の治療のために現在使用されている(Jordan VC(1993)Br J Pharmacol110(2):507-17)。それはまた、疾患の発症の危険性が高い女性における乳癌の予防のため、および対側性(反対の乳房における)乳癌の減少のために、FDAによって承認されている。タモキシフェンは、(Z)−2−[4−(1,2−ジフェニルブタ−1−エニル)フェノキシ]−N,N−ジメチル−エタンアミン(CAS登録番号10540−29−1)と称され、下記の構造を有する。
【0127】
【0128】
ラパマイシン(CAS登録番号53123−88−9、シロリムス、RAPAMUNE(登録商標))は、臓器移植において拒絶反応を防止するために使用される免疫抑制剤であり、特に腎臓移植において有用である。ラパマイシンは、イースター島としてむしろ知られているラパヌイと呼ばれる島からの土壌試料中の細菌ストレプトマイセスハイグロスコピカスの産物として最初に発見されたマクロライド系抗生物質(「−マイシン」)である(Pritchard DI(2005).Drug Discovery Today10(10):688-691)。ラパマイシンは、インターロイキン−2(IL−2)に対する反応を阻害し、それによってT細胞およびB細胞の活性化を遮断する。ラパマイシンの作用機序は、細胞質タンパク質であるFK結合タンパク質12(FKBP12)を結合することである。ラパマイシン−FKBP12複合体は、mTOR複合体1(mTORC1)に直接結合することによって、ラパマイシン(mTOR)経路の哺乳動物標的を阻害する。mTORはまた、FRAP(FKBP−ラパマイシン付随タンパク質)またはRAFT(ラパマイシンおよびFKBP標的)とも称される。ラパマイシンは、(3S,6R,7E,9R、10R、12R、14S、15E、17E、19E,21S,23S,26R,27R,34aS)−9,10,12,13,14,21,22,23,24,25,26,27,32,33,34,34a−ヘキサデカヒドロ−9,27−ジヒドロキシ−3−[(1R)−2−[(1S,3R,4R)−4−ヒドロキシ−3−メトキシシクロヘキシル]−1−メチルエチル]−10,21−ジメトキシ−6,8,12,14,20,26−ヘキサメチル−23,27−エポキシ−3H−ピリド[2,1−c][1,4]−オキサアザシクロヘントリアコンチン−1,5,11,28,29(4H,6H,31H)−ペントン(CAS登録番号53123−88−9)と称され、下記構造を有する。
【0129】
【0130】
ラパチニブ(CAS登録番号388082−78−8;TYKERB(登録商標)、GW572016、Glaxo SmithKline)は、その腫瘍がHER2(ErbB2)を過剰発現しており、アントラサイクリン、タキサンおよびトラスツズマブを含めた事前の治療を受けてきた進行または転移性乳癌を有する患者の治療のためにカペシタビン(XELODA(登録商標)、Roche)と組み合わせて使用することが承認された。ラパチニブは、EGFR/HER2プロテインキナーゼドメインのATP結合ポケットに結合することによって受容体の自己リン酸化および活性化を阻害する、ATP競合的上皮増殖因子(EGFR)およびHER2/neu(ErbB−2)デュアルチロシンキナーゼ阻害剤である(米国特許第6727256号;米国特許第6713485号;米国特許第7109333号;米国特許第6933299号;米国特許第7084147号;米国特許第7157466号;米国特許第7141576号)。ラパチニブは、N−(3−クロロ−4−(3−フルオロベンジルオキシ)フェニル)−6−(5−((2−(メチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)フラン−2−イル)キナゾリン−4−アミンと称され、下記の構造を有する。
【0131】
【0132】
ベムラフェニブ(RG7204、PLX−4032、CAS登録番号1029872−55−5)は、種々の癌細胞株、例えばメラノーマ細胞株においてプログラムされた細胞死を引き起こすことが示されている。ベムラフェニブは−B−Rafが、共通のV600E変異を有する場合、B−Raf/MEK/ERK経路上のB−Raf/MEKステップを中断する。FDAにより承認されたように、ベムラフェニブは、患者において、例えばその癌がBRAF V600E変異を有する(つまり、B−RAFタンパク質上のアミノ酸位置番号600で、通常のバリンがグルタミン酸に置換されている)メラノーマ患者において作用する。メラノーマの約60%がBRAF V600E変異を持っている。V600E変異は、リンパ腫、大腸癌、メラノーマ、甲状腺癌及び肺癌を含む他の種々の癌に存在する。ベムラフェニブは下記の構造を有する。
【0133】
【0134】
ZELBORAF(登録商標)(ベムラフェニブ)(ジェネンテック社)は、米国で承認された薬物製品であり、FDAの承認を受けた試験により検出されるBRAF V600E変異を有する切除不能又は転移性メラノーマの患者の治療に適応される。ZELBORAF(登録商標)(ベムラフェニブ)は、BRAF V600E変異を欠く
メラノーマ患者(野生型
メラノーマ)における使用のためには推奨されない。
【0135】
MDV3100(CAS登録番号915087−33−1)はホルモン抵抗性前立腺癌の治療のために開発されアンドロゲン受容体拮抗薬である。前立腺特異抗原血清レベルで最大89%の減少が、薬を服用の1ヶ月後に報告されている。ビカルタミドとは対照的に、MDV3100は核へのARの移行を促進せず、加えて、DNAに対するARの結合、及びコアクチベータータンパク質に対するARの結合を阻止する。MDV3100は、進行中の第I相および第II相臨床試験において、転移性去勢抵抗性前立腺癌患者における臨床的活性が見出された。MDV3100は、4−(3−(4−シアノ−3−(トリフルオロメチル)フェニル)−5,5−ジメチル−4−オキソ−2−チオキソイミダゾリジン−1−イル)−2−フルオロ−N−メチルベンズアミドなる名称を有する。
【0136】
アビラテロン(CAS登録番号154229−19−3;米国特許第5,604,213号及び同5,618,807号を参照)は、去勢抵抗性前立腺癌における使用のために現在調査中の薬である。それは、CYP17A1(CYP450c17)(17α−ヒドロキシラーゼ/17,20リアーゼとしても知られている酵素)を阻害することによってテストステロンの形成を遮断する。この酵素は、最終的にはテストステロンに代謝され得るDHEA及びアンドロステンジオンの形成に関与する。アビラテロンは、(3S,8R,9S,10R,13S,14S)−10,13−ジメチル−17−(ピリジン−3−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−オルなる名称を有する。また、それはアセテートプロドラッグ(3S,8R,9S,10R,13S,14S)−10,13−ジメチル−17−(ピリジン−3−イル)−2,3,4,7,8,9,10,11,12,13,14,15−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタ[a]フェナントレン−3−イルアセテートとして投与することができる。
【0137】
ZYTIGA(登録商標)(酢酸アビラテロン)(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)は、米国で承認され、ドセタキセルを含む前化学療法を受けている転移性去勢抵抗性前立腺癌患者の治療のためのプレドニゾンとの併用で使用するために適応される薬物製品である。
【0138】
GDC−0973はまた、ヒトの腫瘍でしばしば活性化されるRAS/RAF/MEK/ERK経路の重要なコンポーネントであるマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MAPKK)としても知られるMEKの選択的阻害剤である。MEK/ERK経路の不適切な活性化は、外因性増殖因子の非存在下で細胞増殖を促進する。固形腫瘍においてGDC−0973を評価する第一相臨床試験が進行中である。GDC−0973は、国際特許出願公開番号WO2007044515(A1)号に記載されているように調製することができる。GDC−0973は、(S)−(3,4−ジフルオロ−2−(2−フルオロ−4−ヨードフェニルアミノ)フェニル)(3−ヒドロキシ−3−(ピペリジン−2−イル)アゼチジン−1−イル)メタノンなる名称と下記の構造を有する。
【0139】
【0140】
薬学的組成物
本発明の薬学的組成物または製剤は、式Iの化合物、化学療法剤、及び一以上の薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤、または賦形剤との組合せを含む。
【0141】
一例は、式Iの化合物又はその塩、及び一以上の薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤、または賦形剤の経口送達のための第一製剤、及びベムラフェニブ又はその塩、及び一以上の薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤、または賦形剤の経口送達のための第二製剤を含む。一例において、第一製剤はGDC−0068又はその塩を含む。
【0142】
本発明の式Iの化合物、および化学療法剤は、非溶媒和形態、および水、エタノールなどの薬学的に許容される溶媒との溶媒和形態で存在してもよく、本発明は溶媒和および非溶媒和形態の両方を包含することを意図する。
【0143】
本発明の式Iの化合物、および化学療法剤はまた、異なる互変異性型で存在してもよく、全てのこのような形態は、本発明の範囲内に包含される。「互変異性体」または「互変異性型」という用語は、低いエネルギー障壁によって相互転換可能な異なるエネルギーの構造異性体を意味する。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られている)には、ケトエノールおよびイミン−エナミン異性化などのプロトンの移動を介した相互変換が含まれる。原子価互変異性体には、結合電子のいくつかの再編成による相互変換が含まれる。
【0144】
薬学的組成物は、薬学的に不活性な賦形剤、希釈剤、担体、または流動促進剤と共に、式Iの化合物と本明細書に記載されているさらなる薬剤の一覧から選択される化学療法剤とを含む複数(例えば、2種)の医薬活性剤からなるバルク組成物および個々の投与単位の両方を包含する。バルク組成物および各々の個々の投与単位は、固定された量の前記医薬活性剤を含有することができる。バルク組成物は、個々の投与単位にまだ形成されていない材料である。例示的な投与単位は、錠剤、丸剤、カプセル剤などの経口投与単位である。同様に、本明細書において記載されている、本発明の医薬組成物を投与することによって患者を治療する方法はまた、バルク組成物および個々の投与単位の投与を包含することを意図している。
【0145】
薬学的組成物はまた、本明細書に記載されたものと同一の同位体標識された本発明の化合物を包含するが、1個または複数の原子が、天然に通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられている。規定されているような任意の特定の原子または元素の全ての同位体は、本発明の化合物、およびそれらの使用の範囲内に企図される。化合物に組み込むことができる例示的な同位体には、
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
13N、
15N、
15O、
17O、
18O、
32P、
33P、
35S、
18F、
36Cl、
123Iおよび
125Iなどの、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体が挙げられる。特定の同位体標識された本発明の化合物(例えば、3Hおよび14Cで標識されたもの)は、化合物および/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化した(
3H)および炭素14(
14C)同位体は、それらの調製の容易性および検出性のために有用である。さらに、重水素(
2H)などのより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性(例えば、インビボ半減期の増加または投与必要量の減少)からもたらされる特定の治療上の利益をもたらすことができ、それ故にいくつかの状況下では好ましいであろう。
15O、
13N、
11Cおよび
18Fなどのポジトロン放出同位体は、基質受容体占有率を調べるポジトロン放出断層撮影(PET)研究のために有用である。同位体標識された本発明の化合物は、本明細書における下記のスキームおよび/または実施例に開示されているものと類似した手順に従うことによって、同位体標識されていない試薬を同位体標識された試薬で置換することによって一般に調製することができる。
【0146】
式Iの化合物および化学療法剤は、ヒトを含めた哺乳動物において(予防的治療を含めた)高増殖性障害の治療上の処置のための治療薬の組合せにおける使用のために標準的薬務に従って製剤される。本発明は、1種または複数の薬学的に許容される担体、流動促進剤、希釈剤、または賦形剤と合わせて、式Iの化合物を含む医薬組成物を提供する。
【0147】
適切な担体、希釈剤および賦形剤は当業者には周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性および/または膨潤性ポリマー、親水性または疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などの材料が挙げられる。使用される特定の担体、希釈剤または賦形剤は、本発明の化合物が適用される手段および目的によって決まる。溶媒は、哺乳動物に投与するのに、当業者に安全と認められる(GRAS)溶媒に基づいて一般に選択される。一般に、安全な溶媒は、水中で可溶性または混和性の、水および他の無毒性溶媒などの無毒性水性溶媒である。適切な水性溶媒には、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、およびこれらの混合物が挙げられる。製剤にはまた、薬物(すなわち、本発明の化合物またはその医薬組成物)の洗練された提示または医薬品(すなわち、医薬)の製造における補助を提供するために、1種または複数の緩衝液、安定化剤、界面活性剤、湿潤剤、滑沢剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、抗酸化剤、不透明化剤、流動促進剤、加工助剤、着色剤、甘味料、香料剤、香味剤および他の公知の添加剤を含み得る。
【0148】
製剤は、従来の溶解および混合手順を使用して調製し得る。例えば、原薬(すなわち、本発明の化合物または化合物の安定化した形態(例えば、シクロデキストリン誘導体との複合体または他の公知の複合体形成剤)は、上記の賦形剤の1種または複数の存在下で適切な溶媒に溶解する。本発明の化合物は典型的には、医薬品剤形に製剤され、薬物の容易に制御可能な投与量を実現し、処方された投与計画による患者の薬剤服用順守を可能にする。
【0149】
使用のための医薬組成物(または製剤)は、薬物投与のために使用される方法によって、種々の方法で包装し得る。一般に、分配のための物品には、その中に適切な形態の医薬製剤が入れられる容器が含まれる。適切な容器は当業者には周知であり、ビン(プラスチックおよびガラス)、小容器、アンプル、プラスチック袋、金属円筒などの材料が含まれる。容器はまた、パッケージの内容への不注意なアクセスを防止するためのいたずら防止の集合体を含み得る。さらに、容器は、その上に容器の内容を記載するラベルを有する。ラベルはまた、適切な警告を含んでもよい。
【0150】
本発明の化合物の医薬製剤は、投与の様々な経路およびタイプのために調製し得る。例えば、所望の程度の純度を有する式Iの化合物は、凍結乾燥した製剤、粉砕した粉末、または水溶液の形態で、薬学的に許容される希釈剤、担体、賦形剤または安定剤と任意選択で混合し得る(Remington's Pharmaceutical Sciences(1995)、第18版、Mack Publ.Co.、Easton、PA)。製剤は、周囲温度にて適切なpHで所望の程度の純度で、生理学的に許容できる担体、すなわち、用いられる投与量および濃度でレシピエントにとって無毒性の担体と混合することによって行い得る。製剤のpHは、特定の使用および化合物の濃度によって主に決まるが、約3〜約8の範囲でよい。
【0151】
薬学的製剤は、好ましくは無菌である。特に、インビボ投与のために使用される製剤は、無菌でなくてはならない。このような滅菌は、滅菌濾過膜を通す濾過によって容易に達成される。
【0152】
薬学的製剤は通常、固体組成物、凍結乾燥した製剤として、または水溶液として保存することができる。
【0153】
薬学的製剤は、良好な医療行為と調和する態様、すなわち、量、濃度、スケジュール、コース、ビヒクルおよび投与経路で服用および投与する。このような状況において考慮する要因には、治療される特定の障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の臨床症状、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与の日程計画、および医師には公知の他の要因が挙げられる。投与する化合物の「治療有効量」はこのような見地によって決定され、凝固因子が媒介する障害を予防、改善、または治療するのに必要な最小量である。このような量は、ホストにとって有毒である量未満またはホストを有意により出血を起こしやすくする量未満である。
【0154】
一般的な提案として、経口または非経口で投与する式Iの化合物の当初の服用量当たりの医薬有効量は、約0.01〜1000mg/kgの範囲、すなわち1日当たり患者の体重1kg当たり約0.1〜20mgで、一例において、使用する化合物の典型的な当初の範囲は0.3〜15mg/kg/日であろう。投与する式Iの化合物の用量および化学療法剤の用量は、各々単位剤形毎に約1mg〜約1000mg、または一例において、単位剤形毎に約10mg〜約100mg、及び別の例において約100mgから約1000mgの範囲でよい。式Iの化合物および化学療法剤の用量は、約1:50〜約50:1の重量比、または約1:10〜約10:1の重量比で投与し得る。
【0155】
許容される希釈剤、担体、賦形剤および安定剤は、用いる投与量および濃度でレシピエントにとって無毒性であり、(リン酸、クエン酸および他の有機酸などの)緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含めた抗酸化剤;保存剤(塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン(メチルまたはプロピルパラベンなど);カテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質(血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなど);親水性ポリマー(ポリビニルピロリドンなど);アミノ酸(グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなど);グルコース、マンノース、またはデキストリンを含めた単糖類、二糖類および他の炭水化物;キレート剤(EDTAなど);糖類(スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなど);塩形成対イオン(ナトリウムなど);金属錯体(例えば、Zn−タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤(TWEEN
TM、PLURONICS
TMまたはポリエチレングリコール(PEG)など)が挙げられる。活性医薬成分はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製したマイクロカプセル、例えば、各々、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフィア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)中、またはマクロエマルジョン中のヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル中に封入し得る。このような技術は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、(1995)Mack Publ.Co.、Easton、PAに開示されている。
【0156】
式Iの化合物の持続放出調製品を調製してもよい。持続放出調製品の適切な例には、式Iの化合物を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、マトリックスは、造形物品の形態、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルである。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3773919号)、L−グルタミン酸とγ−エチル−L−グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン−酢酸ビニル、LUPRON DEPOT(商標)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー(乳酸−グリコール酸コポリマーおよび酢酸ロイプロリドからなる注射用ミクロスフィア)、およびポリ−D(−)3−ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0157】
薬学的製剤には、本明細書において詳述する投与経路に適したものが含まれる。製剤は、製剤分野で周知の方法のいずれかによって調製し得る単位剤形で便利に提示し得る。技術および製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(1995)Mack Publishing Co.、Easton、PAに一般に見出される。このような方法には、活性成分を1種または複数の補助成分を構成する担体と混合するステップが含まれる。一般に、活性成分を液体担体または微粉化した固体担体または両方と均一におよび密接に混合し、次いで必要に応じて、生成物を造形することによって製剤は調製される。
【0158】
経口投与に適した式Iの化合物および/または化学療法剤の製剤は、各々が所定の量の式Iの化合物および/または化学療法剤を含有する、丸剤、ハードもしくはソフトの、例えばゼラチンカプセル、カシェ剤、トローチ剤、ロゼンジ、水性もしくは油懸濁剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、乳剤、シロップ剤またはエリキシル剤などの個別単位として調製し得る。式Iの化合物の量および化学療法剤の量は、合わせた製剤として丸剤、カプセル剤、溶液剤または懸濁剤に製剤し得る。代わりに、式Iの化合物および化学療法剤は、交互投与のための丸剤、カプセル剤、溶液剤または懸濁剤に別々に製剤し得る。
【0159】
製剤は、薬学的組成物の製造のための技術分野で公知の任意の方法に従って調製してもよい。このような組成物は、口当たりがいい調製品を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤および保存料を含めた1種または複数の薬剤を含有し得る。圧縮錠剤は、適切な機械中で粉末または顆粒などの易流動性形態の活性成分を圧縮し、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、表面活性剤または分散剤と任意選択で混合することによって調製し得る。成形錠剤は、適切な機械中で不活性な液体希釈剤で湿らせた粉末の活性成分の混合物を成形することによって作製し得る。錠剤は、任意選択でコーティングまたは刻み目を付けてもよく、活性成分のそこからの持続放出または制御放出を実現するために任意選択で製剤される。
【0160】
薬学的製剤の錠剤賦形剤には、錠剤を構成する粉末の薬物のバルク容量を増加するための充填剤(または希釈剤);錠剤が摂取され、薬物の急速な溶解および吸収を促進する場合、錠剤が小さな断片、理想的には個々の薬物粒子に分解されるのを促す崩壊剤;顆粒剤および錠剤が必要とされる機械的強度で形成され、圧縮された後で錠剤をまとめられることを確実にし、包装、輸送および日常的な取扱いの間にそれがその成分粉末に分解することを防止するための結合剤;生産の間に錠剤を構成する粉末の流動性を改善するための流動促進剤;製造の間に錠剤をプレスするために使用される装置に打錠用粉末が付着しないことを確実にする滑沢剤(それらは、プレスを通る混合粉体の流れを改善し、完成した錠剤が装置から排出されるときに摩擦および破損を最小化する);流動促進剤の機能と同様の機能を有し、錠剤を構成する粉末と製造の間に錠剤の形状を打ち出すのに使用される機械との間の接着を減少させる抗接着剤;より心地よい味を与えるため、または不快な味を隠すために錠剤に組み込まれるフレーバー;ならびに識別および患者の薬剤服用順守を助けるための着色剤を含めてもよい。
【0161】
錠剤の製造に適した無毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合した活性成分を含有する錠剤が許容される。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(炭酸カルシウムもしくは炭酸ナトリウム、ラクトース、カルシウムまたはリン酸ナトリウムなど);造粒剤および崩壊剤(トウモロコシデンプン、またはアルギン酸など);結合剤(デンプン、ゼラチンまたはアカシアなど);および滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなど)でよい。錠剤はコーディングされていなくてもよく、またはマイクロカプセル化を含めた公知の技術によってコーティングされて、消化管内での崩壊および吸着を遅らせ、それによってより長期間に亘る持続性の作用を実現してもよい。例えば、時間遅延材料(モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル単独またはワックスと合わせたものなど)を用いてもよい。
【0162】
目または他の外部組織、例えば、口および皮膚の治療のために、製剤は好ましくは、活性成分(複数可)を例えば0.075〜20%w/wの量で含有する局所軟膏またはクリーム剤として施用される。軟膏に製剤された場合、活性成分はパラフィン性または水混和性の軟膏基剤と共に用いてもよい。代わりに、活性成分は、水中油型クリーム基剤と共にクリームに製剤し得る。
【0163】
必要に応じて、クリーム基剤の水相は、多価アルコール、すなわち、2個以上のヒドロキシル基を有するアルコール(プロピレングリコール、ブタン1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含めた)、ならびにこれらの混合物など)を含み得る。局所製剤は、皮膚または他の患部領域を通る活性成分の吸収または浸透を増強する化合物を望ましくは含み得る。このような皮膚浸透増強剤の例には、ジメチルスルホキシドおよび関連する類似体が挙げられる。
【0164】
本発明の乳剤の油性相は、脂肪もしくは油と、または脂肪および油の両方と少なくとも1種の乳化剤の混合物を含めた、公知の成分から公知の態様で構成し得る。好ましくは、親水性乳化剤が、安定剤として作用する親油性乳化剤と共に含まれる。一緒になって、安定剤(複数可)を有するまたは有さない乳化剤(複数可)は、乳化ワックスを構成し、ワックスは油脂と一緒になって、クリーム製剤の油性分散相を形成する乳化軟膏基剤を構成する。製剤における使用に適した乳化剤および乳化安定剤には、Tween(登録商標)60、Span(登録商標)80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0165】
薬学的製剤の水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。このような賦形剤には、懸濁化剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアゴムなど)、ならびに分散剤または湿潤剤(天然リン脂質(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸および無水ヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物(例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)など)が挙げられる。水性懸濁液はまた、1種または複数の保存剤(エチルまたはn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートなど)、1種または複数の着色剤、1種または複数の香味剤、および1種または複数の甘味剤(スクロースまたはサッカリンなど)を含有し得る。
【0166】
薬学的組成物は、無菌注射用水性または油性懸濁剤などの無菌注射用調製品の形態でよい。この懸濁剤は、上記のそれらの適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術によって製剤し得る。無菌注射用調製品は、1,3−ブタンジオール中の溶液などの無毒性の非経口的に許容される希釈剤もしくは溶媒中の、または凍結乾燥した粉末から調製した溶液剤または懸濁剤でよい。用いてもよい許容されるビヒクルおよび溶媒の中に、水、リンゲル液および等張食塩液がある。さらに、無菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒として通常用いてもよい。この目的のために、合成モノまたはジグリセリドを含めて任意の無菌性不揮発性油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は同様に、注射剤の調製において使用し得る。
【0167】
単一の剤形を生じさせるために担体材料と合わせ得る活性成分の量は、治療されるホストおよび特定の投与方法によって変化するであろう。例えば、ヒトへの経口投与用の持続放出製剤は、全組成物の約5〜約95%(重量:重量)で変化し得る適切で好都合な量の担体材料と配合された約1〜1000mgの活性材料を含有し得る。薬学的組成物は、投与のために容易に測定可能な量を提供するために調製することができる。例えば、静脈内注入用の水溶液は、約30mL/時間の速度の適切な容量の注入が起こり得るように、溶液1ミリリットル毎に約3〜500μgの活性成分を含有し得る。
【0168】
非経口投与に適切な製剤には、水性および非水性の無菌注射液(抗酸化剤、緩衝液、制菌剤および製剤を意図するレシピエントの血液と等張にさせる溶質を含有し得る);ならびに水性および非水性の無菌懸濁剤(懸濁化剤および増粘剤を含み得る)が挙げられる。
【0169】
目への局所投与に適した製剤にはまた、活性成分が、適切な担体、特に活性成分のための水性溶媒に溶解または懸濁した、点眼薬が含まれる。活性成分は、好ましくはこのような製剤中に約0.5〜20%w/w、例えば約0.5〜10%w/w、例えば約1.5%w/wの濃度で存在する。
【0170】
口腔内の局所投与に適した製剤には、香味を付けた基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性成分を含むロゼンジ;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性な基剤中に活性成分を含む香錠;ならびに適切な液体担体中に活性成分を含む口内洗浄剤が含まれる。
【0171】
直腸投与のための製剤は、例えば、カカオバターまたはサリチレートを含む適切な基材を有する坐薬として提示し得る。
【0172】
肺内または経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1〜500ミクロンの範囲の粒径(0.5ミクロン、1ミクロン、30ミクロン、35ミクロンなどのミクロン単位で、0.1ミクロン〜500ミクロンの範囲の粒径を含めた)を有し、肺胞嚢に達するように鼻腔を通る急速な吸入によってまたは口を通る吸入によって投与する。適切な製剤には、活性成分の水性または油性溶液が含まれる。エアロゾルまたは乾燥粉末による投与に適した製剤は、従来の方法に従って調製してもよく、下記で説明するような障害の治療または予防においてこれまで使用された化合物などの他の治療剤と共に送達してもよい。
【0173】
膣投与に適した製剤は、活性成分に加えて当技術分野において適切であるとして公知のものなどの担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー製剤として提示し得る。
【0174】
製剤は、単位用量または複数用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルに詰めてもよく、注射のために使用の直前に無菌液体担体、例えば水を添加することのみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)した状態で保存してもよい。即時調合注射液および懸濁液は、上記のものなどの無菌粉末、顆粒および錠剤から調製される。好ましい単位製剤は、活性成分の、本明細書における上記のような1日用量もしくは単位1日部分用量、またはその適切な画分を含有するものである。
【0175】
本発明は、したがって獣医学的担体と一緒に、上記で定義したような少なくとも1種の活性成分を含む獣医学的組成物をさらに提供する。獣医学的担体は、組成物を投与する目的のために有用な材料であり、その他の場合は不活性もしくは獣医学的技術分野において許容される固体、液体または気体材料でよく、活性成分と適合する。これらの獣医学的組成物は、非経口、経口でまたは任意の他の所望の経路によって投与し得る。
【0176】
併用療法
式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は、前悪性及び非腫瘍性又は非悪性の過剰増殖性疾患と共に、腫瘍、癌、および腫瘍性組織を含めた過剰増殖性疾患または障害の治療のために、他の化学療法剤又は薬学的に許容されるその塩と組み合わせて用いてもよい。ある実施態様において、式Iの化合物又は薬学的に許容されるその塩は、抗過剰増殖特性を有する又は過剰増殖性障害の治療において有用である第二化合物又はその薬学的に許容されるその塩と、併用療法として投薬計画で組み合わされる。投薬計画の第二化合物は好ましくは、それらが互いに悪影響を与えないような、式Iまたは薬学的に許容されるその塩に相補的活性を有する。このような化合物は、意図する目的に有効な量で投与され得る。一実施態様では、治療の組み合わせは投薬計画によって管理され、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の治療的有効量は、1日2回から3週間に1回(q3wk)の範囲で投与され、治療的有効量の化学療法剤は、1日2回から3週間に1回の範囲で投与される。
【0177】
併用療法は、同時または逐次の投与計画として投与し得る。逐次に投与する場合、組合せは、2つ以上の投与で投与し得る。合わせた投与には、別々の製剤、およびいずれかの順序の連続投与が含まれ、両方(または全て)の活性剤がそれらの生物活性を同時に及ぼす期間があることが好ましい。
【0178】
本発明の一の特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩は、一以上の薬剤の投与を開始した後に約1日から約10日の期間において投与することができる。本発明の別の特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩は、組み合わせを開始する前の約1日から約10日の期間において投与することができる。本発明の別の特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の投与、及び化学療法剤の投与は同日に開始する。
【0179】
上記の同時投与した薬剤のいずれかについての適切な用量は、現在使用されているものであり、治療係数を増加させ、あるいは毒性または他の副作用もしくは結果を軽減するなどで、新規に同定された薬剤および他の化学療法剤または治療の合わせた作用(相乗作用)によって低下し得る。
【0180】
抗癌治療の特定の実施態様において、式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩は、化学療法剤と合わせてもよく、外科療法および放射線療法と合わせてもよい。式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩及び薬学的に活性な化学療法剤(複数可)の量、及び投与の相対的タイミングは、所望の組み合わせた治療効果を達成するために選択される。
【0181】
薬学的組成物の投与
本発明の化合物は、治療される状態に適した任意の経路によって投与し得る。適切な経路には、経口、非経口(皮下、筋内、静脈内、動脈内、吸入、皮内、くも膜下腔内、硬膜外、および注入技術を含めた)、経皮、直腸、経鼻、局所(口腔および舌下を含めた)、膣内、腹腔内、肺内および鼻腔内が挙げられる。局所投与は、経皮パッチまたはイオン導入装置のような経皮投与の使用を含むことができる。
【0182】
薬物の製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版、(1995)Mack Publishing Co.、Easton、PAにおいて議論されている。薬物製剤の他の例は、Liberman,H.A.およびLachman,L.、編、Pharmaceutical Dosage Forms、Marcel Decker、第3巻、第2版、New York、NYに見出すことができる。局所免疫抑制治療のために、化合物は、潅流またはさもなければ移植前に移植片を阻害剤と接触させることを含めて、病巣内投与によって投与し得る。好ましい経路は、例えばレシピエントの状態によって変化し得ることを理解されたい。化合物を経口投与する場合、薬学的に許容される担体、流動促進剤、または賦形剤と共に、丸剤、カプセル剤、錠剤などとして製剤し得る。化合物を非経口的に投与する場合、下記で詳述するように、薬学的に許容される非経口ビヒクルまたは希釈剤と共に、および単位用量の注射剤形中で製剤され得る。
【0183】
ヒト患者を治療する用量は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を約20mg〜約1600mgの範囲であり得る。典型的な用量は、化合物約50mg〜約800mgであり得る。用量は、特定化合物の吸収、分布、代謝、および排泄を含めた薬物動態(PK)および薬力学的(PD)特性によって、1日1回(QD)、1日2回(BID)、またはさらに頻繁に投与し得る。さらに毒性要因は、投与量および投与計画に影響を与え得る。経口投与する場合、丸剤、カプセル剤、または錠剤は、特定の期間に1日2回、1日1回またはより少なく(週1回または2週間もしくは3週間毎に1回など)摂取してもよい。投与計画は、数サイクルの治療で繰り返してもよい。
【0184】
治療方法
(1)式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と(2)化学療法剤又はその薬学的に許容される塩との治療薬の組合せは、それだけに限らないが、哺乳動物におけるAKTキナーゼにより調製されるものを含めた疾患、状態および/または障害の治療に有用である。一例において、本発明の方法に従って処置され得る癌としては、限定されないが、中皮腫癌、子宮内膜癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺(去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)を含む)、膵臓癌、メラノーマ、胃癌、結腸癌、グリオーマ、頭頸部癌を含む。
【0185】
(1)式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩と(2)化学療法剤又はその薬学的に許容される塩との治療的組合せは、それだけに限らないが、哺乳動物において、V600E変異を含むAKTキナーゼにより調製されるもの、及び一例において高pAKT発現又は活性レベルにより更に調節されるもの含めた疾患、状態および/または障害の治療に有用である。この発明の方法によって治療することが可能な癌は、限定されないが、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫を含む)、結腸癌、転移性メラノーマ、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌を含む)又は肺癌(非小細胞肺癌を含む)を含む。一例では、治療すべき癌は切除不能又は転移性メラノーマである。
【0186】
患者がBRAF V600E変異を含むかどうかを試験するためのキットは市販されている。一例は、ホルマリン固定、パラフィン包埋(FFPET)ヒトメラノーマ組織を検出するCOBAS(登録商標)4800 BRAF V600変異原性試験(Roche Molecular Systems Inc.)である。それは、メラノーマ腫瘍はBRAF遺伝子の変異型を有する患者を治療するために設計されており、ベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩を用いた治療のためのコンパニオン診断として米国で承認されている。前臨床試験及び臨床試験において、cobas(登録商標)BRAF変異原性試験は、BRAF V600E(1799T>A)変異の検出に97.3%陽性一致を有しており、それはCOSMICデータベースに報告されたすべてのBRAF変異の>〜85%を示している。
【0187】
ホルマリン固定、パラフィン包埋組織(FFPET)において、cobas(登録商標)BRAF変異原性試験は>5%の変異レベルでV600E変異を検出することができる。試験ではまた、V600D及びV600Kなどの他V600変異を検出することができる。cobas(登録商標)BRAF変異原性試験は、組織サンプルまたは患者から得られた腫瘍細胞などの標本の受領から、8時間未満で行うことができる。cobas(登録商標)BRAF変異原性試験は、cobas(登録商標)4800システムv2.0上でのリアルタイムPCR試験であり、腫瘍がベムラフェニブ、特定の実施態様において、式Iの化合物又はその塩、例えばGDC−0068と併用したベムラフェニブによる治療のためのBRAF V600E変異を有するメラノーマ患者の選択の支援として使用することが意図されている。
【0188】
一態様では、BRAF V600E変異を含み、一例において高pAKT発現又は活性レベルを更に含む癌に罹患している患者において、GDC−0068又はその薬学的に許容される塩、及びベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩を患者に投与することを含む、腫瘍増殖阻害(TGI)の方法を含む。特定の実施態様において、組み合わせは相乗的である。特定の実施態様において、組み合わせのTGIは、GDC−0068またはベムラフェニブ単独のいずれかのTGIよりも大きい。特定の実施態様において、組み合わせのTGIは、GDC−0068またはベムラフェニブ単独のいずれかのTGIよりもおよそ10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70又は75パーセント大きい。
【0189】
TGIを測定する方法は、当該技術分野で知られている。一例の方法では、平均腫瘍体積が決定され、治療前と後で患者から比較した。腫瘍体積は、当該技術分野において任意の方法、例えばUltraCal IVキャリパー(Fred V. Fowler Company)を使用して、又はPET(陽電子放射断層撮影法)によって、または他の方法によって、二次元(長さと幅)で測定することができる。腫瘍体積(mm
3)=(長さx幅
2)x0.5なる式を用いることができる。複数の期間にわたって腫瘍体積の測定を、混合モデリング線形混合効果(LME)のアプローチを用いて行うことができる(Pinheiro et al. 2009)。このアプローチは、反復測定(および複数の患者)の両方に対処することができる。キュービックスプライン回帰は、各用量レベルで腫瘍体積の経時変化に対する非線形プロファイルに適合するために使用することができる。これらの非線形プロファイルは、その後、混合モデル内での用量に関連することができる。ビヒクルのパーセントとしての腫瘍増殖阻害は、以下の式を用いて、ビヒクルに対する日当たりの近似曲線下面積(AUC)のパーセントとして計算することができる。
この式を用いて、100%のTGI値は腫瘍鬱血を示し、約1%より大きく約100%未満は腫瘍増殖阻害を示し、約100%より大きいものは腫瘍退縮を示す。
【0190】
特定の実施態様において、本組み合わせにより治療されている患者は、以前にベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩によって治療されている。特定の実施態様において、患者は以前にベムラフェニブにより治療されベムラフェニブに対する耐性を獲得している。特定の実施態様において、単剤のベムラフェニブ治療の最中又は後で、癌は退行したり回復する。特定の実施態様において、癌はBRAF V600E変異を含むがベムラフェニブ治療に耐性となり、高pAKT発現又は活性レベルを更に含む。特定の実施態様において、式Iの化合物又その薬学的に許容される塩とベムラフェニブ及びその薬学的に許容される塩の併用治療は、ベムラフェニブ耐性を克服して退行した癌を治療するように作用する。特定の実施態様において、癌は、ベムラフェニブ耐性癌、例えばベムラフェニブ耐性リンパ腫(非ホジキンリンパ腫を含む)、結腸癌、転移性メラノーマ、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌を含む)又は肺癌(非小細胞肺癌を含む)を含む。一例では、治療すべき癌はベムラフェニブ耐性切除不能又は転移性メラノーマである。特定の実施態様において、患者は、本明細書に記述される組み合わせ(例えば、GDC−0068又はその塩とベムラフェニブ又はその塩)による治療を受ける前に、ベムラフェニブ単剤を以前に受けており、一例において失敗しているか又は退行している。
【0191】
特定の実施態様において、癌は、BRAF V600E変異及びAKT、PI3K又はPTENの変異ないしはAKT、PI3K及びPTENの異常なシグナル伝達のうち一つを含む。一例において、治療されるべき患者又は腫瘍はBRAF V600E変異及び高pAKTレベルを含む。
【0192】
一態様は、治療における、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩をベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩と併用した使用を含む。一実施態様において、治療法は、限定されないが、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫を含む)、結腸癌、転移性メラノーマ、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌を含む)又は肺癌(非小細胞肺癌を含む)を含む、RAF V600E、AKT、PTEN又はPI3k変異により媒介されるものを含む、過剰増殖性疾患のものである。一例では、治療すべき癌は切除不能又は転移性メラノーマである。
【0193】
一態様は、医薬の製造における、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩をベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩と併用した使用を含む。一実施態様において、医薬は、限定されないが、リンパ腫(非ホジキンリンパ腫を含む)、結腸癌、転移性メラノーマ、甲状腺癌(甲状腺乳頭癌を含む)又は肺癌(非小細胞肺癌を含む)を含む、RAF V600E、AKT、PTEN又はPI3k変異により媒介されるものを含む、過剰増殖性疾患の治療用である。一例では、治療すべき癌は切除不能又は転移性メラノーマである。特定の実施態様において、医薬は、ベムラフェニブ単剤治療を以前に受けて、一例において失敗したか又は退行した患者を治療するためである。
【0194】
製造品
本発明の他の実施形態において、上記の疾患および障害の治療に有用な式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含有する製造品、または「キット」を提供する。一実施態様では、キットは、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含む容器を含む。
【0195】
キットは、容器上または容器に付随したラベルまたは添付文書をさらに含み得る。用語「添付文書」とは、このような治療薬の使用に関する適応症、用法、投与量、投与、禁忌症および/または警告についての情報を含む、治療薬の商業用パッケージ中に通常含まれる指示を意味するために使用される。適切な容器には、例えば、ビン、バイアル、シリンジ、ブリスターパックなどが挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの種々の材料から形成し得る。容器は、症状の治療のために有効な式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩またはその製剤を保持することができ、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって穴を開けることが可能なストッパーを有する静脈注射用溶液のバッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1種の活性剤は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩である。ラベルまたは添付文書は、組成物が癌などの選択した疾患の治療に使用されることを示す。一実施態様では、ラベルまたは添付文書は、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含む組成物が異常細胞増殖からもたらされる障害を治療するために使用することができることを示す。ラベルまたは添付文書はまた、組成物が他の障害を治療するために使用することができることを示し得る。代わりに又はさらに製造品は、薬学的に許容される希釈バッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含む第二の容器をさらに含んでもよい。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含めた、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0196】
キットは、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、および存在する場合は第2の薬学的製剤の投与のための指示をさらに含み得る。例えば、キットが、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を含む第1の組成物と第2の医薬製剤とを含む場合、そのキットは、それを必要としている患者への第1および第2の医薬組成物の同時、逐次または別々の投与のための指示をさらに含み得る。
【0197】
他の実施態様では、キットは、錠剤またはカプセル剤などの式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩の固体経口剤形の送達のために適切である。このようなキットは、多数の単位用量を好ましくは含む。このようなキットは、それらの意図した使用の順番に配置した投与量を有するカードを含むことができる。このようなキットの一例は、「ブリスターパック」である。ブリスターパックは、包装産業において周知であり、医薬の単位剤形を包装するために広範に使用されている。必要に応じて、例えば数字、文字、または他のマークの形態の、または適量を投与することができる治療スケジュールにおける日を指定するカレンダーの折り込みを有する、記憶補助を提供することができる。
【0198】
一実施態様によれば、キットは、(a)その中に含まれている式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩を有する第1の容器と;任意選択で(b)その中に含まれている第2の医薬製剤を有する第2の容器(第2の薬学的製剤は、抗過剰増殖活性を有する第2の化合物を含む)とを含み得る。代わりに、またはさらに、キットは、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液およびデキストロース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む第3の容器をさらに含み得る。それは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含めた、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含み得る。
【0199】
キットが式Iの組成物又はその薬学的に許容される塩と第2の治療剤、すなわち化学療法剤とを含む場合、キットは、別々の組成物を含有するための容器(分割されたビンまたは分割されたホイルパケットなど)を含んでもよいが、別々の組成物はまた、単一の分割されていない容器中に含有されてもよい。典型的には、キットは、別々の成分の投与のための指示を含む。別々の成分が異なる剤形(例えば、経口および非経口)で好ましくは投与するとき、異なる投与間隔で投与するとき、または組合せの個々の成分を用量設定することが処方する医師の所望であるときに、キット形態は特に有利である。
【0200】
発明の特定の態様
本発明の一つの特定の態様において、過剰増殖性疾患は癌である。本発明の別の特定の態様において、癌は転移性メラノーマである。
本発明の一つの特定の態様において、癌はPTEN変異と関連付けられている。
本発明の一つの特定の態様において、癌はPTENが低いか又は欠損状態と関連付けられている。
本発明の一つの特定の態様において、癌はAKT変異、過剰発現又は増幅と関連付けられている。
本発明の一つの特定の態様において、癌は高pAKT発現又は活性レベルと関連付けられている。
本発明の一つの特定の態様において、癌はPI3K変異と関連付けられている。
本発明の一つの特定の態様において、癌は、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌(例えば、去勢抵抗性前立腺癌)、メラノーマ、胃癌、結腸癌、腎臓癌、頭頸部癌、及びグリオーマから選択される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及び5−FUが哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、5−FU、及びオキサリプラチンが哺乳動物に投与され、癌は胃癌、卵巣癌、又は結腸癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、5−FU、及びオキサリプラチンが哺乳動物に投与され、癌は胃癌、前立腺癌、頭頸部癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、5−FU、オキサリプラチン及びフォリン酸が哺乳動物に投与され、癌は胃癌、卵巣癌、又は結腸癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、5−FU、オキサリプラチン及びフォリン酸が哺乳動物に投与され、癌は胃癌、前立腺癌、又は頭頸部癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、5−FU、オキサリプラチン及びフォリン酸が哺乳動物に投与され、癌は胃癌、前立腺癌、頭頸部癌であり、哺乳動物はPTENが低いか又はPTEN欠損状態、PI3k変異、AKT変異又は高pAKTを有する。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びカルボプラチンが哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びカルボプラチンが哺乳動物に投与され、癌は乳癌、肺癌、又は前立腺癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びカルボプラチンが哺乳動物に投与され、癌は乳癌、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びイリノテカンが哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びイリノテカンが哺乳動物に投与され、癌は結腸癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びドセタキセルが哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びドセタキセルが哺乳動物に投与され、癌は乳癌、グリオーマ、肺癌、メラノーマ、卵巣癌又は前立腺癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びドセタキセルが哺乳動物に投与され、癌は乳癌、卵巣癌、又は前立腺癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びドキソルビシンが哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びドキソルビシンが哺乳動物に投与され、癌は乳癌、肺癌、卵巣癌、グリオーマ、又は前立腺癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びSN−38が哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びSN−38が哺乳動物に投与され、癌は結腸癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びテモゾロミドが哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びテモゾロミドが哺乳動物に投与され、癌はグリオーマである。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及び白金剤が哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及び白金剤が哺乳動物に投与され、癌は卵巣癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びGDC−0973又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びGDC−0973又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与され、及び癌は、膵臓癌、前立腺癌、メラノーマ又は乳癌である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与され、及び癌はメラノーマである。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びGDC−0973又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与され、及び癌は、膵臓癌、前立腺癌、メラノーマ又は乳癌であり、哺乳動物はBRAF V600E変異及び高pAKT発現又は活性レベルを含む。
一つの特定の態様において、GDC−0068又はその薬学的に許容される塩、及びGDC−0973又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与され、及び癌は、膵臓癌、前立腺癌、メラノーマ又は乳癌であり、哺乳動物はBRAF V600E変異及び高pAKT発現又は活性レベルを含む。
一つの特定の態様において、GDC−0068又はその薬学的に許容される塩、及びGDC−0973又はその薬学的に許容される塩が哺乳動物に投与され、ここで哺乳動物はBRAF V600E変異を含み、ベムラフェニブ単剤治療に耐性である。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩が経口投与される。
本発明の一つの特定の態様において、式Iの化合物又はその薬学的に許容される塩が錠剤として処方される。
【0201】
本発明の更なる特定の態様は、以下のとおりである。
態様1
過剰増殖性疾患の予防的又は治療的処置のための、a)式Iaの化合物
又はその薬学的に許容される塩;及びb)ベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩との組み合わせ。
態様2
過剰増殖性疾患が癌である、態様1に記載の組み合わせ。
態様3
癌がBRAF V600E変異を含む、態様2に記載の組み合わせ。
態様4
癌が高pAKT発現又は活性化レベルと関連付けられる、態様2又は3に記載の組み合わせ。
態様5
癌が、リンパ腫、結腸癌、メラノーマ、甲状腺癌又肺癌である、態様2から4の何れか一態様に記載の組み合わせ。
態様6
癌がベムラフェニブ単剤療法に耐性である、態様5に記載の組み合わせ。
態様7
癌が転移性又は切除不能なメラノーマである、態様6に記載の組み合わせ。
態様8
組み合わせが疾患の治療に相乗効果を与える、態様1から7の何れか一態様に記載の組み合わせ。
態様9
式Iaの化合物又はその塩がベムラフェニブ又はその塩と同時に投与される、態様1から7の何れか一態様に記載の組み合わせ。
態様10
式Iaの化合物又はその塩及びベムラフェニブ又はその塩が逐次に投与される、態様1から7の何れか一態様に記載の組み合わせ。
態様11
ベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩により過剰増殖性疾患を治療される患者の生活の質を改善するための治療的用途のために、態様1に記載される式Iaの化合物又はその薬学的に許容される塩。
態様12
a)態様1に記載される式Iaの化合物又はその薬学的に許容される塩、及びb)ベムラフェニブ又はその薬学的に許容される塩を哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物においてBRAF V600E変異及び高pAKTレベルにより調節される疾患又は状態を治療するための方法。
態様13
患者がベムラフェニブ単剤療法を以前に受けている、態様12に記載の方法。
態様14
ベムラフェニブが哺乳動物に投与される、哺乳動物における過剰増殖性疾患の治療のための医薬の調製において、態様1に記載される式Iaの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
態様15
ベムラフェニブが哺乳動物に投与される、哺乳動物におけるAKTキナーゼにより調節される疾患又は状態の治療のための医薬の調製において、態様1に記載される式Iaの化合物又はその薬学的に許容される塩の使用。
一般的調製方法
〔実施例〕
【実施例】
【0202】
本発明を説明するために、以下の実施例を含める。しかしながら、これらの実施例は、本発明を限定するものではなく、本発明を実施する方法を示唆することを意味するにすぎないことを理解すべきである。当業者は、記載された化学反応が本発明の多数の他のAKT阻害剤化合物を調製するために容易に適応でき、本発明の化合物を調製する代替方法が本発明の範囲内であるとみなされることを認識するであろう。例えば、例示されていない本発明の化合物の合成は、例えば、介在基を適切に保護することにより、記載された試薬以外の当該技術分野で知られている他の適切な試薬を利用することにより、および/または反応条件の常套的な修正を行うことにより、当業者に明らかな修正によって、成功裡に実行することができる。代わりとして、本明細書中で開示されているかまたは当該技術分野で知られている他の反応は、本発明の他の化合物を調製するために適用できると認識されるであろう。
実施例1
(S)−3−アミノ−2−(4−クロロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)プロパン−1−オン二塩酸塩の調製
【0203】
工程1:1L丸底フラスコに、(R)−(+)−プレゴン(76.12g、0.5mmol)、無水NaHCO
3(12.5g)および無水エーテル(500mL)を加えた。反応混合物を窒素下氷浴で冷却した。臭素(25.62mL、0.5mmol)を30分かけて滴下添加した。混合物を濾過し、氷冷浴中NaOEt(21%、412mL、1.11mmol)に注意深く加えた。混合物を室温で終夜撹拌し、次いで5%HCl(1L)およびエーテル300mLを加えた。水相をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣をセミカルバジド塩酸塩(37.5g)およびNaOAc(37.5g)の加温水(300mL)溶液に加え、次いで沸騰エタノール(300mL)を加えて、透明溶液を得た。混合物を2.5時間還流させ、次いで室温で終夜撹拌した。混合物を水1Lおよびエーテル300mLで処理した。水相をエーテル(2×300mL)で抽出した。合わせた有機相を水で洗浄し、乾燥し、濃縮した。残渣を真空蒸留(0.8mmHgにて73〜76℃)により精製して、(2R)−エチル2−メチル−5−(プロパン−2−イリデン)シクロペンタンカルボキシレート(63g、64%)を得た。
1H NMR(CDCl
3, 400 MHz) δ 4.13 (m, 2H), 3.38 (d, J = 16 Hz, 0.5H), 2.93 (m, 0.5H), 2.50−2.17 (m, 2H), 1.98 (m, 1H), 1.76 (m, 1H), 1.23 (m, 6H), 1.05 (m, 6H)。
【0204】
工程2:酢酸エチル(100mL)中の(2R)−エチル2−メチル−5−(プロパン−2−イリデン)シクロペンタンカルボキシレート(24g、0.122mol)をドライアイス/イソプロパノールで−68℃に冷却した。オゾン化酸素(O
2の5〜7ft
3h
−1)を3.5時間溶液に吹き込んだ。色が消えるまで、反応混合物を室温で窒素を用いてフラッシュした。酢酸エチルを真空下に除去し、残渣を酢酸150mLに溶解し、氷水により冷却し、亜鉛末(45g)を加えた。溶液を30分間撹拌し、次いで濾過した。濾液を2NのNaOH(1.3L)およびNaHCO
3で中和した。水相をエーテル(3×200mL)で抽出した。有機相を合わせ、水で洗浄し、乾燥し、濃縮して、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、96%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 4.21 (m, 2H), 2.77 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 2.60 (m, 1H), 2.50−2.10 (m, 3H), 1.42 (m, 1H), 1.33 (m, 3H), 1.23 (m, 3H)。
【0205】
工程3:(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(20g、117.5mmol)とチオ尿素(9.2g、120.9mmol)との混合物のエタノール(100mL)溶液に、水(60mL)中のKOH(8.3g、147.9mmol)を加えた。混合物を10時間還流させた。冷却後、溶媒を除去し、残渣を0℃で濃HCl(12mL)を用いて中和し、次いでDCM(3×150mL)で抽出した。溶媒を除去し、ヘキサン/酢酸エチル(2:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、56%)を得た。MS (APCI+)[M+H] +183。
【0206】
工程4:(R)−2−メルカプト−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(12g、65.8mmol)の蒸留水(100mL)懸濁液に、ラネーニッケル(15g)およびNH
4OH(20mL)を加えた。混合物を3時間還流させ、次いで濾過し、濾液を濃縮して、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(9.89g、99%)を得た。MS (APCI+)[M+H] +151。
【0207】
工程5:(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(5.8g、38.62mmol)のPOCl
3(20mL)混合物を5分間還流させた。過剰のPOCl
3を真空下に除去し、残渣をDCM(50mL)に溶解した。次いで混合物を飽和NaHCO
3(200mL)に加えた。水相をDCM(3×100mL)で抽出し、合わせた有機相を乾燥し、濃縮した。酢酸エチルで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(3.18g、49%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.81 (s, 1H), 3.47 (m, 1H), 3.20 (m, 1H), 3.05 (m, 1H), 2.41 (m, 1H), 1.86 (m, 3H), 1.47 (m, 3H)。
【0208】
工程6:(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(2.5g、14.8mmol)のCHCl
3(60mL)溶液に、MCPBA(8.30g、37.0mmol)を3回に分けて加えた。混合物を室温で2日間撹拌した。混合物を0℃に冷却し、これに水(60mL)中のNa2S2O3(10g)を、続いて水(20mL)中のNa2CO
3(6g)を滴下添加した。反応混合物を20分間撹拌した。水相をCHCl
3(2×200mL)で抽出し、合わせた有機相を低温(<25℃)で濃縮した。酢酸エチル−DCM/MeOH(20:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−オキシド(1.45g、53%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.66 (s, 1H), 3.50 (m, 1H), 3.20 (m, 2H), 2.44 (m, 1H), 1.90 (m, 1H), 1.37 (d, J = 7.2 Hz, 3H)。
【0209】
工程7:(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−オキシド(1.45g、7.85mmol)の無水酢酸(20mL)溶液を110℃に2時間加熱した。冷却後、過剰の溶媒を真空下に除去した。ヘキサン/酢酸エチル(3:1)で溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、(5R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−イルアセテート(1.25g、70%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.92 (m, 1H), 6.30−6.03 (m, 1H), 3.60−3.30 (m, 1H), 2.84 (m, 1H), 2.40−2.20 (m, 1H), 2.15 (d, J = 6 Hz, 2H), 1.75 (m, 2H), 1.47 (d, J = 6.8, 2H), 1.38 (d, J = 7.2, 1H). MS (APCI+) [M+H] +227。
【0210】
工程8:(5R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−イルアセテート(0.5g、2.2mmol)のNMP(10mL)溶液に、1−Boc−ピペラジン(0.9g、4.8mmol)を加えた。反応混合物を110℃に12時間加熱した。冷却後、反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(6×100mL)で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮した。酢酸エチルで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、tert−ブチル4−((5R)−7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(0.6g、72%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.60 (d, 1H), 6.05−5.90 (m, 1H), 3.80−3.30 (m, 9H), 2.84 (m, 1H), 2.20− (m, 1H), 1.49 (s, 9H), 1.29−1.20 (m, 3H). MS (APCI+) [M+H] +377. 得られたジアステレオマーの混合物をキラル分割HPLC(Chiralcel ODHカラム、250×20mm、ヘキサン/EtOH60:40、21mL/分)により精製した。最初のピーク(保持時間=3.73分)はtert−ブチル4−((5R,7R)−7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(0.144g、24%)を得た。第二のピーク(保持時間=5.66分)はtert−ブチル4−((5R,7S)−7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(0.172g、29%)を得た。MS (APCI+) [M+H] +377。
【0211】
工程9:tert−ブチル4−((5R,7R)−7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(0.144g、0.383mmol)のTHF(4mL)溶液にLiOH(3M、2mL)を加えた。混合物を室温で6時間撹拌し、次いで2NのHCl(3mL)でクエンチした。溶媒を除去し、酢酸エチルで溶離するシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(89mg、70%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.52 (s, 1H), 5.48 (br, 1H), 5.14 (m, 1H), 3.82−3.40 (m, 9H), 2.20 (m, 2H), 1.49 (s, 9H), 1.19 (d, J = 6.8 Hz, 3H). MS (APCI+) [M+H] +335。
【0212】
工程10:tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレートを、DCM(5mL)中のHCl(ジオキサン中4M、2mL)で6時間処理して、(5R,7R)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩を得た。MS (APCI+) [M+H] +235。
【0213】
工程11:tert−ブチル2,4−ジメトキシベンジルカルバメート(3.96g、14.8mmol)をTHF(74mL)に溶解し、−78℃に冷却した。溶液をブチルリチウム(7.44mL、16.3mmol)で5分間かけて滴下処理して、淡黄色溶液を得た。溶液を15分間撹拌した後、クロロ(メトキシ)メタン(1.35mL、17.8mmol)を(無溶媒で)滴下添加した。反応物を−78℃で10分間撹拌し、次いで周囲温度に終夜ゆっくり加温した。反応物を真空で濃縮して、黄色ゲルを得、これを半飽和NH
4Cl溶液とエーテルとの間で分配した。水層を一度抽出し、有機物を合わせた。有機層を水、次いでブラインで洗浄し、分離し、Na
2SO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮した。
1H NMRは、所望するほぼ純粋な(>90%)tert−ブチル2,4−ジメトキシベンジル(メトキシメチル)カルバメート(4.81g、104%収率)を淡黄色油として支持し、これは精製せずに使用した。
【0214】
工程12:(R)−4−ベンジル−3−(2−(4−クロロフェニル)アセチル)オキサゾリジン−2−オン(3.00g、9.10mmol)をDCM(91mL)に溶解し、−78℃に冷却した。TiCl
4の1Mトルエン溶液(11.4mL、11.4mmol)を溶液に加え、続いてDIEA(1.66mL、9.55mmol)を加えて、暗紫色反応物を得た。これを15分間撹拌した後、tert−ブチル2,4−ジメトキシベンジル(メトキシメチル)カルバメート(3.40g、10.9mmol)をDCM(10mL)溶液として滴下添加した。反応物を−78℃で15分間撹拌し、次いでブライン−氷浴中で−18℃に1時間加温した。この反応物を2.5時間かけて0℃にゆっくり加温した。次いで飽和NH4Cl溶液(100mL)を加えて反応物をクエンチした。層を分離し、有機層をDCMで1回抽出した。合わせた有機層をMgSO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、黄色油を得た。クロマトグラフィー(4:1のヘキサン類:酢酸エチルで溶離したシリカゲル)により残渣を精製して、純粋物を無色油のtert−ブチル2,4−ジメトキシベンジル((S)−3−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピル)カルバメート(4.07g、73.5%収率)として得た。このtert−ブチル2,4−ジメトキシベンジル((S)−3−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピル)カルバメート(680mg、1.12mmol)をDCM(10.6mL)および水(560μL、19:1のDCM:水)に周囲温度で溶解した。溶液をDDQ(380mg、1.67mmol)で処理し、反応物を1日間撹拌すると、TLCおよびLCMS分析により反応は完結していた。反応物をDCMで希釈し、半飽和NaHCO
3溶液で2回洗浄した。有機層をMgSO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、黄オレンジ色油を得た。クロマトグラフィー(9:1のヘキサン類:酢酸エチルで溶離したシリカゲル)により残渣を精製して、アルデヒド副生成物およびtert−ブチル(S)−3−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピルカルバメート(分離できない)を淡黄色油として得た(合わせて729mg)。LC/MS (APCI+) m/z 359.1 [M−BOC+H]+。
【0215】
工程13:35%H
2O
2(0.240mL、2.91mmol)を、LiOH−H
2O(0.0978g、2.33mmol)の2:1 THF:H
2O(33mL)溶液に加えた。反応混合物を室温で35分間撹拌し、次いで0℃に冷却した。tert−ブチル(S)−3−((R)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピルカルバメート(0.535g、1.17mmol)と2,4−ジメトキシベンズアルデヒド(0.194g、1.17mmol)とのTHF(7mL)混合物を含む溶液を、添加用漏斗により滴下添加した。氷浴をゆっくり加温し、反応混合物を終夜撹拌した。次いで反応混合物を0℃に冷却し、1MのNa
2SO
3(7mL)を加えた。混合物を5分間撹拌し、次いで室温に加温し、さらに20分間撹拌した。次いで反応混合物を分液漏斗に移し、エーテル(3回)で洗浄した。水層をKHSO
4(固体)で酸性化し、混合物をDCM(2回)で抽出した。合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮して、(S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸(0.329g、94.2%収率)を白色残渣として得た。LC/MS (APCI+) m/z 200 [M−BOC+H]+。
【0216】
工程14:4MのHCl/ジオキサン(5.49ml、22.0mmol)を、(S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸(0.329g、1.10mmol)の2:1ジオキサン:DCM(10mL)溶液に加えた。反応混合物を室温で終夜(16時間)撹拌し、その後1/3容量に濃縮した。得られた濁った混合物をエーテルで希釈し、混合物を再度1/3容量に濃縮した。混合物を再度エーテル(20mL)で希釈し、窒素圧を用いて中間のガラス漏斗を通して固体を濾取し、エーテル(5×10mL)で濯ぎ、窒素圧下に乾燥し、真空で乾燥して、(S)−3−アミノ−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸塩酸塩(0.199g、76.8%収率)を白色粉体として得た。HPLC>99面積%純度。LC/MS (APCI+) m/z 200。
【0217】
工程15:Boc2O(0.368g、1.69mmol)を、(S)−3−アミノ−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸塩酸塩(0.199g、0.843mmol)および水酸化テトラメチルアンモニウム五水和物(0.382g、2.11mmol)の10:1 MeCN:H
2O(7.7mL)溶液に加えた。反応混合物を室温で終夜(12時間)撹拌し、その後MeCNを回転蒸発器で除去した。混合物を水で希釈し、エーテル(2回)で洗浄した。水層をKHSO
4(固体)で酸性化し、混合物をDCMで抽出し、合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮して、(S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸(0.229g、90.6%収率)を発泡体として得た。HPLC>99面積%純度。LC/MS (APCI+) m/z 200 [M−BOC+H]+。
【0218】
工程16:(5R,7R)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩(88mg、0.29mmol)および(S)−3−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸(86mg、0.29mmol)のDCM(10mL)およびジイソプロピルエチルアミン(0.22mL、1.3mmol)溶液に、HBTU(110mg、0.29mmol)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(100mL)に溶解し、水(6×50ml)で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮して、tert−ブチル(S)−2−(4−クロロフェニル)−3−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−オキソプロピルカルバメート(116mg、78%)を得た。
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 8.51 (s, 1H), 7.34−7.20 (m, 4H), 5.15−5.09 (m, 2H), 4.15−4.05 (m, 1H), 3.87−3.85 (m, 2H), 3.78−3.38 (m, 7H), 3.22−3.19 (m, 1H), 2.20−2.10 (m, 2H), 1.48 (s, 9H), 1.41 (s, 9H), 1.14−1.12 (d, J=7.2Hz, 3H). MS (APCI+) [M+H] +516。
【0219】
工程17:tert−ブチル(S)−2−(4−クロロフェニル)−3−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−オキソプロピルカルバメートを、DCM(5mL)中のHCl(ジオキサン中4M、2mL)で6時間処理して、(S)−3−アミノ−2−(4−クロロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)プロパン−1−オン二塩酸塩を得た。
1H NMR (D
2O, 400 MHz) δ 8.38 (s, 1H), 7.37−7.35 (d, J=8.4Hz, 2H), 7.23−7.21 (d, J=8.4Hz, 2H), 5.29−5.25 (m, 1H), 4.64 (s, 9H), 4.31−4.28 (m, 1H), 4.11 (m, 1H), 3.88−3.79 (m, 2H), 3.70−3.20 (m, 10H), 2.23−2.17 (m, 1H), 2.07−1.99 (m, 1H), 1.22−1.20 (m, 2H), 0.98−0.96 (d, J = 6.8 Hz, 2H). MS (APCI+) [M+H] +416。
【0220】
実施例2
(S)−2−(4−クロロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−(イソプロピルアミノ)プロパン−1−オン
【0221】
工程1:EtOAc(900mL)中のプレゲン酸エチル(130g、662mmol)を、ドライアイス−イソプロパノール浴を用いて−78℃に冷却した。反応物が紫色に変色するまで、この混合物をオゾン処理に供した。この時点で、オゾンの発生を止め、反応物をドライアイス浴から除去した。黄色になるまで、酸素を反応混合物に吹き込んだ。反応混合物を真空下に濃縮し、得られた残渣を氷酢酸(400mL)に溶解した。溶液を0℃に冷却し、Zu末(65g、993mmol)を30分かけて少しずつ加えた。次いで反応物を2時間撹拌し、この時点でセライトのパッドを通して反応混合物を濾過して、亜鉛末を除去した。酢酸をNaOHおよびNaHCO3水溶液でpH7に中和し、エーテル(3×800mL)で抽出した。合わせた有機物をブライン、MgSO
4で乾燥し、濃縮して、(2R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレートを茶褐色液体として得た(107g、95%)。
【0222】
工程2:酢酸アンモニウム(240.03g、3113.9mmol)を、(R)−エチル2−メチル−5−オキソシクロペンタンカルボキシレート(106.0g、622.78mmol)のMeOH(1.2L)溶液に加えた。反応混合物を窒素下室温で20時間撹拌し、その後TLCおよびHPLCにより判断した通り完結した。反応混合物を濃縮してMeOHを除去した。得られた残渣をDCMに溶解し、H
2Oで2回、ブラインで1回洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮して、(R)−エチル2−アミノ−5−メチルシクロペント−1−エンカルボキシレート(102g、97%収率)をオレンジ色油として得た。LC/MS(APCI+)m/z170[M+H]+。
【0223】
工程3:(R)−エチル2−アミノ−5−メチルシクロペント−1−エンカルボキシレート(161.61g、955.024mmol)およびギ酸アンモニウム(90.3298g、1432.54mmol)を含むホルムアミド(303.456ml、7640.19mmol)溶液を、内温150℃に加熱し、17時間撹拌した。反応混合物を冷却し、2Lの1つ口フラスコに移した。次いで過剰のホルムアミジンを高真空蒸留により除去した。ホルムアミジンの蒸発が止まった時点で、蒸留器中に残った油をDCMに溶解し、ブライン(3×200mL)で洗浄した。合わせた水性洗液をDCMで抽出した。合わせた有機抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮した。得られた茶褐色油を最少量のDCMに溶解し、この溶液を分液漏斗を用いてエーテルの撹拌溶液(約5容量のエーテル対DCM溶液)に加えて、茶褐色がかった沈殿物が生成した。この茶褐色沈殿物を中間のガラス漏斗を通して濾別し、これをエーテルで濯ぎ、廃棄した。濾液を濃縮し、エーテルから摩砕し、これをさらに2回繰り返し、次いで高真空ライン上で乾燥して、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(93.225g、65.00%収率)を黄茶褐色糊状固体として得た。LC/MS(APCI−)m/z149.2。
【0224】
工程4:POCl
3(463.9ml、5067mmol)を無溶媒で、(R)−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−オール(152.2g、1013mmol)のDCE(1.2L)0℃溶液に添加用漏斗によりゆっくり加えた。添加完了後、反応混合物を室温に加温し、次いで加熱還流させ、70分間撹拌した。反応はHPLCにより完結したと決定した。反応混合物を室温に冷却し、過剰のPOCl
3を以下の通りに4分割でクエンチした:反応混合物を分液漏斗に移し、氷浴中で冷却した氷および飽和NaHCO
3溶液を含むビーカーに滴下した。反応混合物のそれぞれの分割部分の滴下を完了した時点で、クエンチした混合物を30分撹拌してPOCl
3の分解を完了し、その後分液漏斗に移した。混合物を分液漏斗に移し、DCMで2回抽出した。合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮した。粗製物を以下の通りにシリカゲル上で精製した:シリカゲル(1kg)を、真空下でシリカを設置し、砂で最上層を覆った、3Lのガラス漏斗上で9:1のヘキサン:酢酸エチルにスラリー化した。粗製物をDCM/ヘキサン混合物とともに仕込み、真空下1Lのサイドアームフラスコを用いて化合物を溶離した。高Rfの副生成物が最初に、次いで(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(104.4g、61.09%収率)が茶褐色油として溶離した。トリエチルアミン(93.0ml、534mmol)およびtert−ブチルピペラジン−1−カルボキシレート(34.8g、187mmol)を、(R)−4−クロロ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン(30.0g、178mmol)のn−BuOH(250mL)溶液に加えた。反応混合物を窒素下に加熱還流させ、終夜(17時間)撹拌し、その後回転蒸発器上で濃縮した。得られた油をDCMに溶解し、H
2Oで洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮した。得られた茶褐色油を、生成物がきれいに溶離されるまで最初に2:1のヘキサン類:酢酸エチルで、次いで濃度勾配1:1から1:5のDCM:酢酸エチルで溶離するシリカゲル上で精製して、(R)−tertブチル4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(42.0g、74.1%収率)をベージュ色粉体として得た。LC/MS(APCI+)m/z319.1[M+H]
+。
【0225】
工程5:最大77%の固体のMCPBA(23.9g、107mmol)を、(R)−tert−ブチル4−(5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(20.0g、62.8mmol)のCHCl3(310mL)0℃溶液に少しずつ加えた。反応混合物を5分間撹拌し、次いで室温に加温し、90分間撹拌した。HPLCは7.5時間後同様に見えた。反応混合物を0℃に冷却し、次いでNaHCO
3(13.2g、157mmol)およびさらに0.5当量のm−CPBAを加えた。反応混合物を終夜(14時間)撹拌した。反応混合物を0℃に冷却し、Na
2S
2O
3(29.8g、188mmol)のH
2O(50mL)溶液を添加用漏斗により滴下添加した。続いてNa
2CO
3(24.6g、232mmol)のH
2O(70mL)溶液を滴下漏斗により滴下添加した(混合物は均一に変化した)。反応混合物を30分間撹拌し、次いで混合物をCHCl
3(3×150mL)で抽出した。合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮して、N−オキシドを得た。LC/MS(APCI+)m/z335.1[M+H]+。
【0226】
工程6:Ac
2O(77.0ml、816mmol)を、工程5からのN−オキシド(21.0g、62.8mmol)に加えた。反応混合物を窒素下90℃の砂浴中で加熱し、100分間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、過剰の無水酢酸を回転蒸発器により除去した。得られた油をDCMに溶解し、次いでこれを氷冷した飽和Na
2CO
3に注意深く注ぎ入れた。混合物をDCMで抽出し、合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮して、(5R)−tert−ブチル4−(7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(23.6g、100%)を茶褐色発泡体として得た。LC/MS(APCI+)m/z377.1[M+H]+。
【0227】
工程7:LiOH−H
2O(6.577g、156.7mmol)を、(5R)−tert−ブチル4−(7−アセトキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(23.6g、62.69mmol)の2:1 THF:H
2O(320mL)0℃溶液に加えた。反応混合物を10分間撹拌し、次いで室温に加温した。LC/MSは、3時間および4.5時間で同一に見えた。反応混合物を0℃に冷却し、次いで飽和NH
4Clを混合物に加えた。混合物を5分間撹拌し、THFの殆どを回転蒸発器により除去した。混合物をEtOAc(3×250mL)で抽出し、合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮した。粗製物をBiotage65M(4:1のDCM:酢酸エチル次いで1:1から1:4のDCM:酢酸エチルへの濃度勾配)でフラッシュした。生成物が溶離した時点で、酢酸エチルをカラムを通してフラッシュした。次いで30:1のDCM:MeOHは残りの生成物(8.83g)を溶離した。混合したフラクションを、同一の条件を用いてBiotage40Mで再度フラッシュして、さらに2.99gを得、これを合わせて(5R)−tert−ブチル4−(7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(11.82g、56.38%収率)を茶褐色発泡体として得た。LC/MS(APCI+)m/z335.1[M+H]+。
【0228】
工程8:DMSO(5.45ml、76.8mmol)のDCM(50mL)溶液を、塩化オキサリル(3.35ml、38.4mmol)のDCM(150mL)−78℃溶液に添加用漏斗により滴下添加した。反応混合物を35分間撹拌し、次いで(5R)−tert−ブチル4−(7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(9.17g、27.4mmol)のDCM(80mL)溶液を添加用漏斗によりゆっくり加えた。反応混合物を−78℃でさらに1時間撹拌し、その後トリエチルアミン(18.0ml、129mmol)を無溶媒で混合物に加えた。次いで反応混合物を室温に加温し、次いで30分間撹拌した。H
2Oを加えた。混合物をDCM(3×200mL)で抽出し、合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、真空で濃縮した。粗製物をシリカゲル(Biotage65M)上で(カラムを約800mLの4:1のDCM:EtOAcで、次いで生成物が溶離するまで1:1のDCM:酢酸エチルへの濃度勾配で、次いで生成物を溶離した1:4のDCM:EtOAcでフラッシュした。)精製して、(R)−tert−ブチル4−(5−メチル−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(7.5g、82.3%収率)を茶褐色発泡体として得た。発泡体をDCM/ヘキサン類から濃縮(3回)し、超薄茶褐色発泡体を得た。HPLC>95面積%。LC/MS(APCI+)m/z333[M+H]+。
【0229】
工程9:トリエチルアミン(4.33ml、31.1mmol、使用前に30分窒素で脱気した)およびギ酸(1.36ml、36.1mmol、使用前に30分窒素で脱気した)を、(R)−tert−ブチル4−(5−メチル−7−オキソ−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(9.75g、29.3mmol)のDCM(210mL、使用前に30分窒素で脱気した)溶液に加えた。混合物を5分間撹拌し、次いでRu触媒(0.0933g、0.147mmol)を加えた。反応物を窒素の正圧下終夜(18時間)撹拌した。反応混合物を濃縮乾固し、高真空で乾燥した。フラッシュした1:1のDCM:酢酸エチル500mL、次いで生成物まで(2スポット)1:4のDCM:酢酸エチル、次いで酢酸エチル単体への濃度勾配、次いで残りの生成物を溶離した25:1のDCM:MeOHを取り込んだBiotage65M上で、不純物をフラッシュした。フラクションを合わせ、回転蒸発器上で濃縮した。残渣をDCM/ヘキサン類から再度濃縮して、tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(主)とtert−ブチル4−((5R,7S)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(副)との混合物(9.35g、95.3%収率)をベージュ色発泡体として得た。LC/MS(APCI+)m/z335[M+H]+.
1H NMR(CDCl
3)は、カルビノールメチンの積分により88%deを示す。
【0230】
工程10:4−ニトロベンゾイルクロリド(4.27g、23.0mmol)を、tert−ブチル4−((5R,7S)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(7.0g、20.9mmol)およびトリエチルアミン(4.38ml、31.4mmol)のDCM(110mL)0℃溶液に加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌し、その後飽和NaHCO
3を加えた。混合物を10分撹拌し、次いでDCMで抽出した。合わせた抽出物を乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮した。粗製物をBiotage65M上でフラッシュした(3:1のヘキサン類:酢酸エチルは粗製物を取り込み、次いで2:1のヘキサン類:酢酸エチルはtert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレートおよび少量の混合フラクションを溶離した)。次いで、1:2のヘキサン類:酢酸エチルを用いてtert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレートを溶離した。生成物を含むフラクションを回転蒸発器により濃縮して、tert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(8.55g、84.5%収率)を黄色発泡体として得た。LC/MS(APCI+)m/z484[M+H]+.
1H NMR(CDCl
3)は単一のジアステレオマーを示す。他のジアステレオマーを含むフラクションを回転蒸発器により濃縮して、tert−ブチル4−((5R,7S)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(0.356g、3.52%収率)を茶褐色発泡体として得た。LC/MS(APCI+)m/z484[M+H]+。
【0231】
工程11:LiOH−H
2O(0.499g、11.9mmol)を、tert−ブチル4−((5R,7R)−5−メチル−7−(4−ニトロベンゾイルオキシ)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(2.30g、4.76mmol)の2:1 THF:H
2O(40mL)0℃溶液に加えた。反応混合物を室温に加温し、1時間撹拌した。回転蒸発器によりTHFを除去し、飽和NaHCO
3を加え、混合物を酢酸エチルで抽出した。合わせた抽出物を飽和NaHCO
3で(1回)洗浄し、乾燥(Na
2SO
4)し、濾過し、濃縮して、tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(1.59g、100.0%収率)を黄色発泡体として得た。処理後のHPLCは生成物が>98面積%純度であった。LC/MS(APCI+)m/z335[M+H]+.tert−ブチル4−((5R,7S)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレートを同様の方法を用いて調製した。
【0232】
工程12:4MのHCl/ジオキサン(11.2ml、44.9mmol)を、tert−ブチル4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−カルボキシレート(0.600g、1.79mmol)のジオキサン(15mL)溶液に加えた。反応混合物を窒素下室温で終夜(20時間)撹拌した。混合物を濃縮乾固し、高真空ライン上で乾燥した。粗製物をエーテルに懸濁し、超音波処理し、5分間撹拌した。窒素圧で中間のガラス漏斗を通して固体を濾取し、エーテルで濯ぎ、窒素圧下乾燥し、さらに高真空ライン上で乾燥して、(5R,7R)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩(0.440g、79.8%収率)を黄色粉体として得た。LC/MS(APCI+)m/z235.(5R,7S)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩を同様の方法を用いて調製した。
【0233】
工程13:メチル2−(4−クロロフェニル)アセテート(36.7g、199mmol)およびパラホルムアルデヒド(6.27g、209mmol)をDMSO(400mL)に溶解/懸濁し、NaOMe(537mg、9.94mmol)で処理した。混合物を室温で2時間撹拌すると、粗製物のTLC分析により完結した。反応物を氷冷水(700mL、白色乳濁液)に注ぎ入れ、1MのHCl溶液を加えて中和した。水層を酢酸エチル(3回)で抽出し、有機物を合わせた。有機層を水(2回)、ブライン(1回)で洗浄し、分離し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、粗生成物を黄色油として得た。シリカゲルを有する大きなガラス製フィルター上に残渣を仕込み、出発物/オレフィンを収集するまで9:1のヘキサン類:酢酸エチルで溶離した。次いで純粋な所望の生成物が完全に溶離されるまでプラグを1:1のヘキサン類:酢酸エチルで溶離した。濃縮した純粋なフラクションより、メチル2−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロパノエートを無色油として得た(39.4g、92%)。
【0234】
工程14:メチル2−(4−クロロフェニル)−3−ヒドロキシプロパノエート(39.4g、184mmol)をDCM(500mL)に溶解し、TEA(64.0mL、459mmol)で処理した。溶液を0℃に冷却し、MsCl(15.6mL、202mmol)でゆっくり処理し、次いで30分間撹拌すると、TLC分析により完結した。溶液を1NのHCl溶液で分配し、水層をDCMで1回抽出した。合わせた有機層を1NのHCl溶液でさらに1回洗浄し、分離し、希薄NaHCO
3溶液で洗浄し、分離した。有機層をMgSO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、オレンジ色油を得た。シリカゲルのプラグを有する大きなガラス製フィルター上に残渣を仕込み、9:1のヘキサン類:酢酸エチルで溶離して、TLC分析により純粋な所望の生成物を得た。純粋なフラクションを濃縮して、メチル2−(4−クロロフェニル)アクリレートを無色油として得た(30.8g、85%)。このメチル2−(4−クロロフェニル)アクリレート(500mg、2.54mmol)をTHF(1.35mL)溶液として、i−PrNH2(217μL、2.54mmol)のTHF(5.0mL)撹拌溶液に0℃で加えた。反応物を室温で終夜撹拌すると、LCMS分析により完結した。Boc2O(584μL、2.54mmol)をピペットを介して撹拌しながらアミンに加えた。反応物を終夜撹拌すると、混合物のLCMSおよびTLC分析により完結した。溶液を真空で濃縮して、メチル3−(tert−ブトキシカルボニル(イソプロピル)アミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパノエートを無色油として得た(854mg、94%)。LC/MS(APCI+)m/z256.1[M−Boc]+。
【0235】
工程15:メチル3−(tert−ブトキシカルボニル(イソプロピル)アミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパノエート(133g、374mmol)をTHF(1.0L)に溶解し、KOTMS(56.0g、392mmol)で室温にて処理した。混合物を終夜撹拌すると、粗製物のLCMS分析により完結した。混合物を真空で濃縮して、湿潤発泡体を得、これを終夜真空乾燥して、カリウム3−(tert−ブトキシカルボニル(イソプロピル)アミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパノエートを白色固体として得た(148.7g、105%)。LC/MS(APCI+)m/z242.1[M−Boc−K]+。
【0236】
工程16:カリウム3−(tert−ブトキシカルボニル(イソプロピル)アミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパノエート(77.2g、203mmol)をTHF(515mL)に溶解し、塩化ピバロイル(26.3mL、213mmol)で室温にて処理した。混合物を3時間撹拌して、混合無水物を生成した。(S)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(46.1g、260mmol)をTHF(600mL)に溶解し、分離フラスコ中−78℃に冷却した。溶液をn−BuLi(ヘキサン類中2.50M溶液102mL、254mmol)で処理し、1時間撹拌した。調製した無水物溶液をカヌーレを介して撹拌しながらLi−オキサゾリジノンに加え、混合物を室温に終夜加温した。飽和塩化アンモニウム溶液を加えて混合物をクエンチし、次いでさらに水と酢酸エチルとの間で分配した。水層を数回抽出し、有機物を合わせた。有機層を水、次いでブラインで洗浄し、分離し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮した。クロマトグラフィー(4:1のヘキサン類:酢酸エチルで溶離したシリカゲル)により残渣を精製/分割(ジアステレオマー)して、完全に分割されたジアステレオマーを粘稠性油として得た:tert−ブチル(R)−3−((S)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピル(イソプロピル)カルバメート(12.16g、酸ラセミ体の1/2に基づいて24%)およびtert−ブチル(S)−3−((S)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピル(イソプロピル)カルバメート(39.14g、酸ラセミ体の1/2に基づいて77%)。LC/MS(APCI+)m/z401.2[M−Boc]+。
【0237】
工程17:LiOH−H
2O(168mg、4.00mmol)を、溶解するまでTHF(30mL)と水(15mL)との撹拌溶液に室温で加えた。混合物を過酸化水素(水中35重量%溶液658μL、8.00mmol)で処理し、室温で10分間撹拌した。反応物を氷浴中0℃に冷却し、tert−ブチル(S)−3−((S)−4−ベンジル−2−オキソオキサゾリジン−3−イル)−2−(4−クロロフェニル)−3−オキソプロピル(イソプロピル)カルバメート(1.00g、2.00mmol)をTHF(15mL)溶液として添加用漏斗により10分かけて滴下添加した。混合物を室温で終夜撹拌すると、粗製物のLCMS分析により完結した。反応物を0℃に冷却し、次いで添加用漏斗により1MのNa
2SO
3(9.00mL)溶液で10分かけて処理した。添加完了後、混合物を室温に10分間加温した。混合物を濃縮してTHFを除去し、次いで水で希釈した。水層を酢酸エチルで2回洗浄した(廃棄した)。水層を酢酸エチルで分配し、次いで1MのHClで撹拌しながらpHが2〜3になるまで滴下処理した。水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機物を合わせた。有機物をブラインで洗浄し、分離し、MgSO
4で乾燥し、濾過し、真空で濃縮した。無色のオイル状生成物を高真空下に1時間乾燥して、(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル(イソプロピル)アミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸を粘稠性油/発泡体として得た(685mg、100%)。LC/MS(APCI+)m/z242.1[M−Boc]+。
【0238】
工程18:(5R,7R)−5−メチル−4−(ピペラジン−1−イル)−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−7−オール二塩酸塩(2.92g、9.51mmol)および(S)−3−(tert−ブトキシカルボニル(イソプロピル)アミノ)−2−(4−クロロフェニル)プロパン酸(3.25g、9.51mmol)のDCM(40mL)およびDIEA(5.0mL、28.7mmol)溶液を室温で10分間撹拌した。HBTU(3.61g、9.51mmol)を混合物に加えた。混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を除去し、残渣を酢酸エチル(500mL)に溶解し、水(6×100mL)で洗浄した。有機相を乾燥し、濃縮した。EtOAc−DCM/MeOH(20:1)により溶離したカラムクロマトグラフィーに残渣を供して、tert−ブチル(S)−2−(4−クロロフェニル)−3−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−オキソプロピル(イソプロピル)カルバメート(3.68g、69%)を得た。LC/MS(APCI+)m/z558.2[M+H]+。
【0239】
工程19:tert−ブチル(S)−2−(4−クロロフェニル)−3−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−オキソプロピル(イソプロピル)カルバメート(2.50g、4.48mmol)をジオキサン(22.4mL)に溶解し、ジオキサン中4MのHCl(22.4mL、89.6mmol)で室温にて処理した。得られた溶液を終夜撹拌すると、粗製物のLCMS分析により完結した。溶液を真空で濃縮して、ゲル状物を得、これを最少量のメタノール(10mL)に溶解した。溶液をピペットを介して撹拌したエーテル(300mL)に移して、所望の生成物の白色沈殿物を得た。約半量滴下した際、黄色ゲル状物に白色沈殿物が融解した。物質を真空で濃縮して、黄色ゲル状物を得、これを減圧下に終夜放置して、(S)−2−(4−クロロフェニル)−1−(4−((5R,7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−3−(イソプロピルアミノ)プロパン−1−オン二塩酸塩を薄黄色粉体として得た(2.14g、90%)。
1H NMR(D
2O、400MHz)δ 8.39(s、1H)、7.37−7.35(d、J=8.4Hz、2H)、7.23−7.20(d、J=8.4Hz、2H)、5.29−5.25(m、1H)、4.33−4.29(m、1H)、4.14−4.10(m、1H)、3.89−3.19(m、11H)、2.23−2.17(m、1H)、2.08−1.99(m、1H)、1.20−1.18(m、6H)、0.98−0.96(d、J=6.8Hz、3H).MS(APCI+)[M+H]
+458。
【0240】
表1に示される実施例3〜9はまた上述された方法に従って作成することができる。
【0241】
実施例10
(S)−2−(4−シクロプロピルフェニル)−1−(4−((5R、7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−2−((S)−ピロリジン−2−イル)エタノン
【0242】
工程1:THF中のシクロプロピルマグネシウムブロミド(64.0mL、32.00mmol)をTHF中の亜鉛(II)塩化物(64.00mL、32.00mmol)の溶液で処理した。混合物を20分間環境温度で撹拌した。2−(4−ブロモフェニル)アセトニトリル(5.228g、26.67mmol)及びビス[トリ−t−ブチルホスフィン]パラジウム(0.6814、1.333mmol)をTHF(2mL)中の溶液として添加した。反応物を12時間、窒素下で環境温度で撹拌した。この反応は飽和NH4Clでクエンチし、塩化メチレンで希釈し、分離した。水層を塩化メチレン(2×)で洗浄し、次いで混合性の有機層を水(3×)で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、真空中で濃縮した。粗生成物を、25:1ヘキサン/酢酸エチルで溶出するSiO2上でのクロマトグラフィーに付し、2−(4−シクロプロピルフェニル)アセトニトリル(2.76g、66%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ 7.20(d、J=8.2、2H)、7.07(d、J=8.2、2H)、3.70(s、2H)、1.94−1.85(m、1H)、1.01−0.95(m、2H)、0.71−0.66(m、2H)。
【0243】
工程2:メタノール(65mL)を0℃に冷却し、HCl(g)で飽和させた。この溶液を、メタノール中で2−(4−シクロプロピルフェニル)アセトニトリル(2.76g、17.56mmol)の溶液(6mL)で処理した。反応混合物を、CaSO4を含有する乾燥チューブ下で一晩加熱還流した。反応物を冷却し、真空中で濃縮した。粗混合物を酢酸エチルおよび水に再懸濁し、次いで分離した。有機層を、飽和NaHCO
3、飽和NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、真空下で濃縮し、メチル2−(4−シクロプロピルフェニル)アセテートを油として得た(3.10g、93%)。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ 7.16(d、J=8.3、2H)、7.02(d、2H)、3.68(s、3H)、3.58(s、2H)、1.92−1.83(m、1H)、0.97−0.91(m、2H)、0.70−0.64(m、2H)。
【0244】
工程3:メチル2−(4−シクロプロピルフェニル)アセテート(3.10g、16.30mmol)を、THF/MeOH/水(2:2:1、80mL)の混合物に溶解し、その溶液を、水酸化リチウム水和物(0.8548g、20.37mmol)で処理した。次いで、混合物を4時間、環境温度で攪拌した。反応混合物を3NのHClを用いて4のpHに中和し、真空下で濃縮した。固形物を酢酸エチルおよび水に再溶解した。pHを3NのHClを用いて約4から約3のpHに再調整した。次いで層を分離した。水層を酢酸エチル(2×)で洗浄した。次いで、混合性有機層を、飽和NaClで洗浄しNa
2SO
4で乾燥し、濃縮し、2−(4−シクロプロピルフェニル)酢酸(2.82g、98%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ 7.16(d、J=8.2、2H)、7.03(d、2H)、3.60(s、2H)、1.92−1.83(m、1H)、098−0.91(m、2H)、0.70−0.64(m、2H)。
【0245】
工程4:2−(4−シクロプロピルフェニル)酢酸(2.82g、16.003mmol)をトルエン中(14mL)で(R)−4−ベンジルオキサゾリジン−2−オン(3.4030g、19.204mmol)と混合した。この懸濁液をトリエチルアミン(6.6917mL、48.010mmol)で処理し、その後80℃に加熱した。溶液をトルエン(3.5mL)中の塩化ピバロイルの溶液(1.9893mL、16.003mmol)で滴下処理した。反応は、80℃で一晩加熱した。反応物を冷却し、2NのHClで洗浄し、次いで分離した。水層をトルエンで洗浄し、次いで混合性有機層を、2NのHCl、水、飽和NaHCO
3(2X)、飽和NaClで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥し、そして真空下で濃縮した。粗生成物を、9:1ヘキサン/酢酸エチルで溶出するSiO2上でのクロマトグラフィーに付し、(R)−4−ベンジル−3−(2−(4−シクロプロピルフェニル)アセチル)オキサゾリジン−2−オン(3.43g、64%)を得た。
1H NMR(CDCl
3、400MHz)δ 7.33−7.20(m、5H)、7.16−7.11(m、2H)、7.05(d、J=8.2、2H)、4.70−4.63(m、1H)、4.32−4.14(m、4H)、3.26(dd、J1=3.2、J2=13.3、1H)、2.75(dd、J1=9.5、J2=13.3、1H)、1.93−1.85(m、1H)、0.98−0.92(m、2H)、0.72−0.66(m、2H)。
【0246】
工程5:(S)−2−((S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−イル)−2−(4−シクロプロピルフェニル)酢酸を、(R)−4−ベンジル−3−(2−(4−シクロプロピルフェニル)アセチル)オキサゾリジン−2−オン(0.287g、26%)を用いて、実施例1に記載した手順に従って調製した。MS(ESI+)[M+H]345.7。
【0247】
工程6:(S)−tert−ブチル2−((S)−1−(4−シクロプロピルフェニル)−2−(4−((5R、7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル)ピロリジン−1−カルボキシレートを、(S)−2−((S)−1−(tert−ブトキシカルボニル)ピロリジン−2−イル)−2−(4−シクロプロピルフェニル)酢酸、(0.199g、94%)を用いて実施例3に記載した手順に従って調製した。MS(ESI+)[M+H]562.1。
【0248】
工程7:(S)−2−(4−シクロプロピルフェニル)−1−(4−((5R、7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−2−((S)−ピロリジン−2−イル)エタノンを、(S)−tert−ブチル2−((S)−1−(4−シクロプロピルフェニル)−2−(4−((5R、7R)−7−ヒドロキシ−5−メチル−6,7−ジヒドロ−5H−シクロペンタ[d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル)ピロリジン−1−カルボキシレート(0.145g、77%)を用いて実施例3に記載した手順に従って調製した。MS(ESI+)[M+H]462.2.
1H NMR(CD3OD、400MHz)δ 8.56(s、1H)、7.26(d、2H)、7.13(d、2H)、5.29(dd、1H)、5.32−5.26(dd、1H)、4.32(d、1H)、4.29−4.18(m、1H)、4.12−3.95(m、2H)、3.88−3.61(m、6H)、3.51−3.38(m、1H)、3.35−3.30(m、1H)、2.32−2.24(m、1H)、2.22−2.03(m、2H)、1.95−1.85(m、2H)、1.82−1.73(m、2H)、1.40−1.34(m、1H)、1.16(d、3H)、1.01−0.95(m、2H)、0.69−0.64(m、2H)。
【0249】
表2に示す実施例はまた、上述の方法に従って行うことができる。
【0250】
実施例14 インビトロ細胞増殖アッセイ
実施例2の化合物の特定の化学療法剤との組合せのインビトロ有効性は、Promega Corp., Madison, WIから市販されている発光細胞生存アッセイであるCellTiter−Glo(登録商標)によって測定した。この均質なアッセイ方法は、甲虫類ルシフェラーゼの組換え発現に基づき(米国特許第5583024号;米国特許第5674713号;米国特許第5700670号)、代謝的に活性な細胞の指標である、存在するATPの定量化に基づいて、培養物中の生細胞の数を決定する(Crouch et al (1993) J. Immunol. Meth. 160:81-88;米国特許第6602677号)。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイは、96か384のウェルフォーマットにて実行し、自動化ハイスループットスクリーニング(HTS)に準じた(Cree et al (1995) AntiCancer Drugs 6:398-404)。均一なアッセイ手順は、血清添加培地中で培養した細胞に単一試薬(CellTiter−Glo(登録商標)試薬)を直接添加することを含む。細胞洗浄、培地の除去および複数のピペッティング工程は必要ない。システムは、試薬の添加及び混合の10分後に384−ウェルフォーマット中僅か15細胞/ウェルを検出した。
【0251】
均質な「添加混合測定(add-mix-measure)」フォーマットにより細胞の溶解と存在するATPの量と比例した発光シグナルの生成が生じる。ATPの量は培養物中に存在する細胞の数に正比例する。CellTiter−Glo(登録商標)アッセイは、用いた細胞の種類及び培地に応じて、ルシフェラーゼ反応によって生成される「増殖タイプ(glow−type)」の発光シグナルを生成する。このシグナルは一般に5時間を超える半減期を有する。生細胞は相対的な発光単位(RLU)に反映される。基質であるカブトムシルシフェリンは、組み換えホタルルシフェラーゼによって酸化的に脱炭酸され、ATPがAMPに付随して転換され、光子が生成する。半減期の延長により試薬の注入を行う必要がなくなり、複数のプレートの連続的な又はバッチモード処理に柔軟性が生じる。この細胞増殖アッセイは、様々なマルチウェルフォーマット、例えば96又は384のウェルフォーマットと共に用いられる。データは、ルミノメーター又はCCDカメラ撮像装置によって記録されてよい。発光出力は、時間と共に測定される相対的な光単位(RLU)として表される。
【0252】
実施例2の化合物および化学療法剤との組合せの抗増殖作用は、CellTiter−Glo(登録商標)アッセイによって測定した。EC
50値は、試験化合物およびそれらの組み合わせに対して確立された。インビトロの細胞効力活性の範囲は、約100nMから約10μMであった。代表的な組合せのデータは、
図16〜20に提供される。
図16のデータは、多数の癌の種類に対して、代表的な組み合わせが相加又は相乗的活性を提供することを示す。
図17は、5FU/Cによる実施例2の併用効果がAKT経路の活性化と関連していることを示している。
図18は、胃の株における、実施例2と5−FU/シスプラチンの併用の活性を示す。
図19は、式Iに対する最小単剤応答を有したPTEN欠損株において、実施例2とドセタキセルの併用が最大効果を示すことを示している。
図20は、実施例2とドセタキセルの併用がPTEN正常細胞株においてより弱いことを示している。
【0253】
実施例15 インビボ腫瘍異種移植片有効性
本発明の併用の有効性は、齧歯動物の癌細胞の同種異系移植片又は異種移植片を着床させて、腫瘍を併用にて処置することによってインビボで測定されてよい。細胞株、腫瘍細胞中の特定の変異の有無、実施例2の化合物と化学療法剤の投与、投薬計画及び他の要因に応じて、結果が変わりうることは予測される。被検体マウスを、薬剤(一又は複数)又は対照(ビヒクル)にて処置し、数週間以上モニターし、腫瘍倍加までの時間、ログ細胞障害及び腫瘍抑制を測定した。
【0254】
このモデルで試験された本発明代表的組み合わせの結果が図に示される。このモデルで試験された本発明代表的組み合わせの結果が
図1〜9に示される。
図1は、LuCap35V原発性前立腺腫瘍における実施例2の化合物及びドセタキセルについて結果を示す。
図2は、PC3−NCI前立腺腫瘍における断続的に経口(PO)又は腹腔内(IP)投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについての結果を示す。
図3は、PC3−NCI前立腺腫瘍における経口投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについての結果を示す。
図4は、MCF7−neo/HER2腫瘍における断続的に腹腔内投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについての結果を示す。
図5は、MCF7−neo/HER2乳房腫瘍における経口投与された実施例2の化合物及びドセタキセルについての結果を示す。
図6は、MAXF401乳腺腫瘍における実施例2の化合物及びドセタキセルについて結果を示す。
図7は、SKOV3卵巣腫瘍における実施例2の化合物及びドセタキセルについて結果を示す。
図8は、SKOV3卵巣腫瘍における実施例2の化合物及びシスプラチンについて結果を示す。
図9は、IGROV−1卵巣腫瘍における経口投与された実施例2の化合物及びカルボプラチンについての結果を示す。
図10は、H2122 NCI−NSCL腫瘍における実施例2の化合物及び2.5mg/kgでのGDC−0973について結果を示す。
図11は、NCI−H2122 NSCLC腫瘍における実施例2の化合物及び5.0mg/kgでのGDC−0973について結果を示す。
図12は、NCI−H2122 NSCLC腫瘍における実施例2の化合物及び7.5mg/kgでのGDC−0973について結果を示す。
図13は、LuCap35V腫瘍における実施例2の化合物及びMDV3100について結果を示す。
【0255】
図14は、乳癌モデルにおけるGDC−0068とB20−4.1.1(マウスアバスチン)の組み合わせの結果を示す。
図15は、NCI−H2122(Kras変異)腫瘍における実施例2の化合物及びタルセバについて結果を示す。
【0256】
実施例16 インビトロ細胞生存率(有効性)実験
ベムラフェニブのGDC−0068との組合せのインビトロ有効性は、Promega Corp., Madison, WIから市販されている発光細胞生存アッセイであるCellTiter−Glo(登録商標)によって測定した。この均質なアッセイ方法は、代謝的に活性な細胞の指標である、存在するATPの定量化に基づいて、培養物中の生細胞の数を決定する(Crouch et al (1993) J. Immunol.Meth.160:81-88)。細胞の生存におけるGDC−0068とベムラフェニブの役割を確認するために、細胞死検出ELISAプラスキット(Roche, Mannheim, Germany)を使用して、細胞質ヒストン関連DNA断片の量を定量した。両方のアッセイを、96か384のウェルフォーマットにて実行し、アッセイを自動化ハイスループットスクリーニング(HTS)を受けるようにした(Cree et al (1995) AntiCancer Drugs 6:398-404)。幾つかの例において、GDC−0068を含むベムラフェニブの個人的に測定されたEC
50の値は組み合わせEC
50値と比較され、コンビネーションインデックススコアがChou及びTalalayの方法により計算される(Chou, T. and Talalay, P. (1984) Adv.Enzyme Regul.22:27-55)。相乗作用の強さは、公開さランキングシステムを用いてスコアリングされる。ベムラフェニブ耐性細胞は、耐性を獲得するためにベムラフェニブの濃度を増やした親のA375細胞を増殖することにより調製した(Su, F., et alCancer Res.(2012) 72:969-978)。
【0257】
図のデータは、代表的な組み合わせが、個別にそれぞれの薬剤の投与に比べて改善された結果を提供することを示している。例えば、LuCap35V原発性ヒト前立腺腫瘍モデルにおいて、実施例2およびドセタキセルの組み合わせは腫瘍の退縮をもたらしたが、何れかの化合物の単剤は、腫瘍うっ血のみを生じた(
図1)。更に、実施例2及びシスプラチンの組合せは、SKOV3卵巣ヒト腫瘍モデルにおける何れかの単剤のみよりも大きな腫瘍増殖の阻害をもたらした(
図7)。
【0258】
本発明の特定の組み合わせは、特定の癌表現型に対して改善された効果を与えることが決定されている。例えば、本発明の特定の組み合わせは、PTENの変異(あるいは低いか又は欠損状態)、AKTの変異(あるいは高pAKT発現又は増幅レベル)、PI3Kの変異、またはHer2/ErbB2増幅又は変異と関連付けられた癌に対して改善された効果を提供する。従って、本明細書に記載される特定の組合せは、これらのタイプの癌に対して特に有用であり得る。例えば、胃癌において、PTENの損失は、本発明の特定の組み合わせ(例えば、5−FU/シスプラチンと式Iの化合物)により良好な有効性を予測し、前立腺癌において強い作用は、PTEN欠損株において、式Iの化合物とドセタキセルの組合せについて観察された。別の例では、胃癌において、PTENが低いことは、本発明の特定の組み合わせ(例えば、5−FU/シスプラチンと式Iの化合物)により良好な有効性を予測し、前立腺癌において強い作用は、PTENが低い株において、式Iの化合物とドセタキセルの組合せについて観察された。
【0259】
PTENが欠損(又は低い)状態は、当技術分野で知られている任意の適切な手段によって測定することができる。一例では、IHCが使用される。別法として、ウエスタンブロット分析を用いることができる。PTENに対するする抗体は市販されている(Cell Signaling Technology, Beverly, MA, Cascade Biosciences, Winchester, MA)。PTENの状態についてのIHCおよびウェスタンブロット分析の事例手順は、Neshat, M. S. et al. Enhanced sensitivity of PTEN-deficient tumors to inhibition of FRAP/mTOR, Proc. Natl Acad. Sci. USA 98, 10314-10319 (2001)及びPerren, A., et. al. Immunohistochemical Evidence of Loss of PTEN Expression in Primary Ductal Adenocarcinomas of the Breast, American Journal of Pathology, Vol. 155, No. 4, October 1999で説明されている。更に、AKT変異、PI3Kの変異、及びHer2/ErbB2増幅に関連付けられている癌は、当技術分野で知られている技術を用いて同定することができる。
【0260】
与えられたサンプルにおいて、非活性化又は非リン酸化AKTのレベルと比較した、AKTの活性化又はリン酸化(pAKT)のレベルは、当技術分野で公知の方法により測定することができる。pAKTの状態は比率(例えば、腫瘍細胞におけるpAKT量を同じタイプの非腫瘍性細胞におけるpAKTの量で割る)又は減算(例えば、腫瘍細胞におけるpAKT量から同じタイプの非腫瘍性細胞におけるpAKTの量を引く)を単位として表すことができる。pAKTプロファイルはまた、AKTリン酸化の下流標的(例えば、pGSK又はPRAS40)の量を測定することによって経路の活性化のレベルを単位として表現することができる。高いpAKTは、ベースライン値よりも高いサンプルの全体的なAKTの活性化又はリン酸化レベルを意味する。一例では、ベースライン値は、特定の細胞型のpAKTの基礎レベルである。別の例では、ベースライン値は、例えば、非癌性又は細胞について、サンプル細胞の特定の集団におけるpAKTの普通のレベル又は平均レベルである。別の例では、高pAKTは、同じ哺乳動物又は患者集団の何れかに由来する同じタイプの正常で健常な(例えば、非腫瘍)細胞の平均と比較した場合、細胞内でリン酸化又は活性化AKTを過剰発現するか又は過剰に増幅された腫瘍細胞を指す。pAKTプロファイルは、特に、転移性又は切除不能なメラノーマなどベムラフェニブ耐性癌患者において、特定のPI3k/AKTキナーゼ経路阻害剤の有効性を予測するための例えばFOXO3a局在化プロファイル、又はベムラフェニブと式Iの化合物の特定の組み合わせの有効性を予測するために例えばBRAF V600E変異状態など他のマーカーと組み合わせて使用することもできる。組織サンプルでpAKTを測定するためのキットが市販されている(例えば、リン酸化Akt(Thr308)STAR ELISAキット、EMDミリポア)。
【0261】
特定の態様において、本発明は、PTENの変異又は発現の欠損、AKTの変異又は増幅、PI3Kの変異又は増幅、又はHer2/ErbB2の増幅と関連付けられている癌を有する患者を、患者へ本発明の組み合わせを投与することを含み治療するための方法を提供する。別の態様において、本発明は、患者の癌がPTENの変異又は発現の欠損、AKTの変異又は増幅、PI3Kの変異又は増幅、又はHer2/ErbB2の増幅と関連付けられているかを決定することを含む、本発明の組み合わせで治療することができる癌を有する患者を同定するための方法を提供し、ここで、PTENの変異又は発現の欠損、AKTの変異又は増幅、PI3Kの変異又は増幅、又はHer2/ErbB2の増幅と患者の癌との関連は、本発明の組合せで治療することができる癌を示す。更なる態様において、本発明は、本発明の組み合わせで識別された患者を治療することを更に含む方法を提供する。
【0262】
更に、多くの修正及び変更が当業者には容易に明らかになるであろうゆえ、上述のように示されている厳密な構成及びプロセスに本発明を限定することは望ましくない。従って、全ての適切な修正及び均等物は、添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあると考えることができる。