特許第6143784号(P6143784)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニムの特許一覧

特許6143784消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム
<>
  • 特許6143784-消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム 図000003
  • 特許6143784-消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム 図000004
  • 特許6143784-消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム 図000005
  • 特許6143784-消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム 図000006
  • 特許6143784-消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム 図000007
  • 特許6143784-消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143784
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】消費量を監視及びフィードバックするエアロゾル発生システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20170529BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A61M15/06 C
【請求項の数】15
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-549492(P2014-549492)
(86)(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公表番号】特表2015-507477(P2015-507477A)
(43)【公表日】2015年3月12日
(86)【国際出願番号】EP2012077066
(87)【国際公開番号】WO2013098398
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2015年12月18日
(31)【優先権主張番号】11196227.0
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】11196240.3
(32)【優先日】2011年12月30日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】12162894.5
(32)【優先日】2012年4月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】タロン パスカル
(72)【発明者】
【氏名】フロラック ディオニシウス
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−524835(JP,A)
【文献】 特表2011−515093(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/133091(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0265806(US,A1)
【文献】 米国特許第05269327(US,A)
【文献】 特許第3258657(JP,B2)
【文献】 特表2012−517229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F47/00
A61M15/06
A61M11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発生したエアロゾルをユーザに経口又は経鼻送出するように構成されたエアロゾル発生システムであって、
エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させる加熱要素と、
前記加熱要素に接続された電力源と、
前記加熱要素及び前記電力源に接続され、前記加熱要素の作動を制御するように構成され、前記加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段を含むか又はそれに接続される、コントローラと、
検出された前記加熱要素を通過する空気流の変化及び前記加熱要素の作動に関連するデータを記録するための、前記コントローラに接続された第1のデータ記憶手段と、
データベースを含み空気流の変化及び前記加熱要素の作動に関連するデータを前記ユーザに送出されたエアロゾルの特性に関連付ける第2のデータ記憶手段と、
前記ユーザに送出されたエアロゾルの特性をユーザに知らせるための、第2のデータ記憶手段に接続されたディスプレイ等の指示手段と、
を備える、エアロゾル発生システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記電力源から前記加熱要素に供給される電力を制御して前記加熱要素を目標温度に維持するように構成され、さらに加熱要素の温度の変化又は前記加熱要素に供給される前記電力の変化を監視して加熱要素を通過する空気流量の変化を検出するように構成された、請求項1に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記加熱要素に供給される電力の測定値又は前記電力源から前記加熱要素に供給されるエネルギの測定値を、電力又はエネルギの測定値の閾値と比較して、前記加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在、又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を検出する、請求項1又は2に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項4】
前記データベースは、特定のタイプのエアロゾル形成基材に特有のデータを含む、請求項1から3のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項5】
前記装置に収容されたエアロゾル形成基材を識別するための識別手段、又はユーザが前記装置に収容されたエアロゾル形成基材を識別するためのデータを入力することを可能にするユーザインタフェースをさらに備える、請求項4に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項6】
前記エアロゾル発生要素の作動に関する前記データは、前記加熱要素の温度又は前記加熱要素に供給される電力を含む、請求項1から5のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項7】
ハウジングを備え、前記第2のデータ記憶手段又は前記ディスプレイ、又は第2のデータ記憶手段及び前記ディスプレイは、前記加熱要素及び前記電力源のうちの少なくとも一方と一緒に該ハウジング内に収容される、請求項1から6のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項8】
前記システムは、エアロゾル発生装置と、前記エアロゾル発生装置が直接的に又は間接的に接続することができる1つ又はそれ以上の二次装置とを備え、前記第2のデータ記憶手段及び前記ディスプレイは、前記1つ又はそれ以上の二次装置の一部である、請求項1から6のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項9】
前記二次装置は、前記エアロゾル発生装置の前記電力源を充電するように構成された充電装置である、請求項8に記載のエアロゾル発生システム。
【請求項10】
前記ユーザに送出されたエアロゾルの特性は、特定の化合物の量を含む、請求項1から9のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項11】
前記システムは、電気式喫煙装置である、請求項1から10のいずれかに記載のエアロゾル発生システム。
【請求項12】
電気加熱式エアロゾル発生装置のエンドユーザにエアロゾル送出データを提示する方法であって、前記装置は、加熱要素と該加熱要素に電力を供給するための電源と、前記加熱要素を通過する空気流量の変化を検出する手段とを備え、該方法は、
前記加熱要素を通過する空気流量の変化の検出値と、前記加熱要素の作動に関するデータとを第1のデータベースに記録する段階と、
前記第1のデータベースからの前記加熱要素を通過する空気流量の変化の検出値と前記加熱要素の作動に関するデータとに基づいて、空気流量の変化及び前記加熱要素の作動に関連するデータを前記ユーザに送出されたエアロゾルの特性に関連付ける第2のデータベースから、前記ユーザに送出されたエアロゾルの特性を抽出する段階と、
前記ユーザに送出されたエアロゾルの前記抽出した特性を、前記第2のデータベースに接続された指示手段を用いて指示する段階と、
を含む方法。
【請求項13】
前記装置に収容された前記エアロゾル形成基材の少なくとも1つの特性を検出する段階又は提示する段階をさらに含み、前記抽出する段階が、前記装置に収容された前記エアロゾル形成基材の前記少なくとも1つの特性に基づいている、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抽出された前記ユーザに送出されたエアロゾルの特性は、特定の化合物の量を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ又は他の適切な処理装置で実行される場合、請求項12から14のいずれかに記載の方法を実行する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、エアロゾル発生システムに関し、詳細には、喫煙装置等のユーザ吸入用エアロゾル発生装置を含むシステムに関する。本明細書は、装置の使用を監視して、ユーザにエアロゾルの消費量又は特定のエアロゾル成分の消費量の指標値を提示する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の着火端シガレットは、吸煙時に800℃を超える場合もある温度で生じるタバコ及びラッパーの燃焼の結果として煙を送出する。この温度では、タバコは、熱分解及び燃焼によって熱的に劣化する。燃焼熱は、タバコから種々のガス状燃焼生成物及び留出物を放出及び発生させる。生成物は、シガレットを通って引き込まれて冷却及び凝縮して、喫煙に付随する味覚及び臭いを含む煙を形成するようになっている。燃焼温度において、味覚及び臭いだけでなく多くの望ましくない化合物が発生する。
【0003】
電気加熱式喫煙装置が知られており、これは本質的にエアロゾル発生装置であり、従来の着火端シガレットよりも低い温度で作動する。このような電気式喫煙装置の例が国際公開特許第2009/118085号に開示されている。国際公開特許第2009/118085号には、エアロゾル形成基材を加熱要素で加熱してエアロゾルを発生するようになった電気式喫煙装置が開示されている。加熱要素の温度は、所定の温度範囲になるように制御され、他の所望の揮発性化合物の放出時に基材から不所望の揮発性化合物が確実に発生及び放出しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開特許第2009/118085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エアロゾル又はエアロゾル内のニコチン等の特定の化合物の消費量に関する情報をユーザに提示することができるエアロゾル発生システムを提供することが望まれる。これにより、ユーザは、これらの消費量を上手く把握して調節することができる。また、臨床研究及び集団レベル統計のために、システムの使用及びエアロゾルの消費量データを収集することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示の態様において、発生したエアロゾルをユーザに対して経口又は経鼻送出するように構成されたエアロゾル発生システムが提供され、本システムは、
エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させる加熱要素と、
加熱要素に接続された電力源と、
加熱要素及び電力源に接続され、加熱要素の作動を制御するように構成され、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段を含むか又はそれに接続される、コントローラと、
検出された加熱要素を通過する空気流の変化及び加熱要素の作動に関連するデータを記録するための、コントローラに接続された第1のデータ記憶手段と、
データベースを含み空気流の変化及び加熱要素の作動に関連するデータをユーザに送出されたエアロゾルの特性に関連付ける第2のデータ記憶手段と、
ユーザに送出されたエアロゾルの特性をユーザに知らせるための、第2のデータ記憶手段に接続されたディスプレイ等の指示手段と、
を備える。
【0007】
指示手段は、所定の期間内にユーザに送出された特定の化合物の量といった、ユーザに送出されたエアロゾルの特性に関する詳細情報を表示することができるディスプレイとすることができる。しかしながら、指示手段は、より簡易的なものとすること、及び所定期間内の特定の化合物の消費量が閾値を超えた場合に作動する聴覚又は視覚警報とすることができる。閾値はユーザが設定できる。以下に説明するように、指示手段は、加熱要素を含むエアロゾル発生装置上に設けること、又はエアロゾル発生装置からデータが送信される二次装置上に設けることができる。
【0008】
本明細書で用いる場合、ユーザに「送出される」エアロゾルは、使用時にユーザが吸入するエアロゾルを意味する。本明細書で用いる場合、吸入することは、口又は鼻を経由して人体に取り込むことを意味し、エアロゾルがユーザの肺に取り込まれる状態を含み、また、エアロゾルがユーザの人体から排出される前にユーザの口腔又は鼻腔にのみ吸い込まれる状態を含む。
【0009】
第1のデータ記憶手段は、検出された空気流もしくはユーザ吸煙又は吸入の変化を記録するように構成できる。第1のデータ記憶手段は、ユーザ吸煙の回数又は各吸煙時間を記録することができる。また、第1のデータ記憶手段は、加熱要素の温度及び各吸煙の間に供給される電力を記録するように構成することができる。第1のデータ記憶手段は、必要に応じてコントローラから入手できる何らかのデータを記録することができる。
【0010】
データベースは、特定のタイプのエアロゾル形成基材に特有のデータを含むことができる。従って、システムは、装置に収容されたエアロゾル形成基材を識別するための識別手段を備えることができる。識別手段は、エアロゾル形成基材上の標識を読み取るための光学式スキャナ、又はエアロゾル形成基材の抵抗特性といった電気的特性を検出するように構成された電子回路を含むことができる。代替的に又は追加的に、システムは、消費者が装置に収容されたエアロゾル形成基材を識別するデータを入力することができるユーザインタフェースを含むことができる。エアロゾル発生要素の作動に関するデータは、加熱要素の温度又は加熱要素に供給された電力を含むことができる。この情報、並びに空気流量データ、随意的に基材の識別情報は、第2のデータ記憶手段に記憶されたデータと比較して、ユーザに送出されたエアロゾルの特性を表すデータを抽出するようになっている。ユーザに送出されたエアロゾルの特性は、特定の化合物の量を含むことができる。
【0011】
データベースは、特定の基材に関して、特定の状態の下でシステムが送出する特定の化合物の量を含むことができる。データベースは、エアロゾル発生装置を作動させる温度及び空気流量等の特定のパラメータを、システムが送出した特定の化合物の量に関連付ける関係式を含むことができる。化合物の量及び関係式は、実験データから導き出すこと又は外挿することができる。
【0012】
システムは、電気式喫煙システムとすることができる。電気式喫煙システムの場合、第2のデータ記憶手段は、標準喫煙マシンを利用して、種々の喫煙レジメの下、及び管理された喫煙環境及び特定のエアロゾル形成基材に関する管理された湿度の下での喫煙セッションに得られる情報を記憶することができる。この実験的に得られたデータは、空気流の変化及び加熱器の作動に由来する、可能性のある主流煙の吸入容量を外挿するために使用することができる。標準喫煙マシンを用いた喫煙レジメは、例えば、標準ISOレジメ又はカナダインテンスレジメ(Canadian intense regime)とすることができる。
【0013】
喫煙システムにおいて、第2のデータ記憶手段に記憶されたデータは、限定されるものではないが、送出されたエアロゾル内に含まれる以下の化合物の量を含むことができる。すなわち、アセトアルデヒド、アセトアミド、アセトン、アクロレイン、アクリルアミド、アクリロニトリル、4−アミノビフェニル、1−アミノナフタリン、2−アミノナフタリン、アンモニア、アナバシン、o−アニシジン、ヒ素、A−α−C(2−アミノ−9H−ピリド[2,3−b]インドール)、ベンズ[a]アントラセン、ベンズ[j]アセアントリレン、ベンゼン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベリリウム、1,3−ブタジエン、カドミウム、コーヒー酸、一酸化炭素、カテコール、塩素化ダイオキシン/フラン、クロム、クリセン、コバルト、クレゾール(o−,m−,及びp−クレゾール)、クロトンアルデヒド、シクロペンタ[c,d]ピレン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ジベンゾ[a,e]ピレン、ジベンゾ[a,h]ピレン、ジベンゾ[a,i]ピレン、ジベンゾ[a,l]ピレン、2,6−ジメチルアニリン、カルバミン酸エチル(ウレタン)、エチルベンゼン、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、フラン、Glu−P−1(2−アミノ−6−メチルジピリド[1,2−a:3’,2’−d]イミダゾール)、Glu−P−2(2−アミノジピリド[1,2−a:3’,2’−d]イミダゾール)、ヒドラジン、シアン化水素、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、IQ(2−アミノ−3−メチルイミダゾ[4,5−f]キノリン)、イソプレーン、鉛、MeA−α−C(2−アミノ−3−メチル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール)、水銀、メチルエチルケトン、5−メチルクリセン、4−(メチルニトロソアミン)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)、ナフタレン、ニッケル、ニコチン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、2−ニトロプロパン、N−ニトロソジエタノールアミン(NDELA)、N−ニトロソジエチルアミン、N−ニトロソジメチルアミン(NDMA)、N−ニトロソメチルエチルアミン、N−ニトロソモルホリン(NMOR)、N−ニトロソノルニコチン(NNN)、N−ニトロソピペリジン(NPIP)、N−ニトロソピロリジン(NPYR)、N−ニトロソサルコシン(NSAR)、ノルニコチン、フェノール、PhIP(2−アミノ−1−メチル−6−フェニルイミダゾ[4,5−b]ピリジン)、ポロニウム−210、プロピオンアルデヒド、酸化プロピレン、キノリン、セレン、スチレン、o−トルイジン、トルエン、Trp−P−1(3−アミノ−1,4−ジメチル−5H−ピリド[4,3−b]インドール)、Trp−P−2(1−メチル−3−アミノ−5H−ピリド[4,3−b]インドール)、ウラン−235、ウラン−238、酢酸ビニル、又は塩化ビニルである。
【0014】
システムは、該システムの全ての構成要素を含む単一のエアロゾル発生装置を備えることができる。もしくは、システムは、エアロゾル発生装置と、該エアロゾル発生装置が直接的に又は間接的に結合又は接続する1つ又はそれ以上の二次装置とを備えることができ、1つ又はそれ以上の二次装置はシステムの一部の構成要素を備える。従って、システムが単一の装置を備える場合、第2のデータ記憶手段又はディスプレイ、又は第2のデータ記憶手段及びディスプレイは、加熱要素及び電力源と一緒に単一のハウジングに収容される。第1のデータ記憶手段及び第2のデータ記憶手段は、単一の物理メモリの各部分とすることができる。別の実施形態において、第2のデータ記憶手段又はディスプレイ、又は第2のデータ記憶手段及びディスプレイは、1つ又はそれ以上の二次装置の一部とすることができる。例えば、ラップトップコンピュータはシステムの一部とすることができ、エアロゾル発生装置に接続可能である。ラップトップコンピュータは第2のデータ記憶手段及びディスプレイを含むことができ、第1のデータ記憶手段からのデータと、第2のデータ記憶手段の中のデータとを比較することができる。
【0015】
本明細書で用いる場合、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを発生させる装置を意味する。エアロゾル発生装置は、外部電源又はエアロゾル発生装置の一部をなす内蔵電源とすることができる電源を備えることができる。
【0016】
1つ又はそれ以上の二次装置は、エアロゾル発生装置の電力源を充電するようになった充電装置とすることができる。代替的に又は追加的に、1つ又はそれ以上の二次装置は、ラップトップコンピュータ又はディスクトップコンピュータ、携帯電話、又は他の消費者向け装置を備えることができる。1つの実施形態において、第2のデータ記憶手段は、エアロゾル発生装置又は他の二次装置が通信ネットワーク経由で接続することができるリモートサーバを含むことができる。ユーザに送出されたエアロゾルの特性をサーバから受信するために、ユーザは、加熱要素を通過する空気流の検出値及び加熱要素の作動に関連するデータ(本明細書では使用データと呼ぶ)をリモートサーバに送信することを要求される場合がある。これにより、集団レベル統計のために用いることができる使用データの中央記憶装置を、システム設計の改善のために利用すること、及び臨床研究に利用することが可能になる。
【0017】
データは、何らかの適切な方法で、システム内の異なる装置の間で転送することができる。例えば、USB接続等の有線接続を用いることができる。もしくは、無線接続を用いることができる。また、データは、インターネット等の通信ネットワーク経由で転送される。1つの実施形態において、エアロゾル発生装置は、該エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを第1のデータ記憶手段からバッテリ充電装置内の第2のデータ記憶手段に転送するように構成できる。
【0018】
第1及び第2のデータ記憶手段としてRAM又はフラッシュメモリ等の任意の適切なメモリを用いることができる。
【0019】
エアロゾル形成基材の識別情報又は1つ又はそれ以上の特性値は、使用データの記録の前又は後で提示することができる。以下に説明するように、識別情報又は1つ又はそれ以上のエアロゾル形成基材の特性値は、システムのユーザからのデータ入力によって提供すること、又は自動基材検出プロセスの結果として提示することができる。
【0020】
所定期間内にシステムから閾値量の1つ又はそれ以上の化合物をユーザに送出したと推定される場合、システムは警報を提示するように構成することができる。異なる化合物及び異なる期間に関して複数の閾値を設定することができる。警報は、加熱要素を含むエアロゾル発生装置上に提示すること、又は1つ又はそれ以上の二次装置上に提示することができる。警報は、単純な視覚又は聴覚信号とすること、又は表示画面上のより詳細な情報表示とすることができる。警報は、特定の化合物の消費量が所定の制限値又は所定の用量に達したことを警告するために提示される。
【0021】
記録データが同じユーザからの過去の記録データに必ず適合するように、ユーザパスワード又はユーザ名をシステムのユーザインタフェースに入力することができる。もしくは、システムが、第2のデータ記憶手段が設けられた1つ又はそれ以上の二次装置を含む場合、各エアロゾル発生装置は固有のユーザが使用しているという仮定を行うことができ、装置識別子は、使用データ内に又はエアロゾル発生装置から転送された他のデータ内に含むことができる。
【0022】
本明細書に開示の第2の態様において、エアロゾル送出データを電気加熱式エアロゾル発生装置のエンドユーザに提示する方法が提供され、本装置は、加熱要素及び該加熱要素に電力を供給する電源と、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段とを備え、この方法は、
加熱要素を通過する空気流の変化の検出値及び加熱要素の作動に関連するデータを記録する段階と、
空気流の変化の検出値及び加熱要素の作動に関連するデータに基づいて、ユーザに送出されたエアロゾルの特性をデータベースから抽出する段階と、
抽出したユーザに送出されたエアロゾルの特性を指示する、例えば表示する段階と、
を含む。
【0023】
本方法は、装置に収容されたエアロゾル形成基材の少なくとも1つの特性を検出又は提示する段階をさらに含むことができ、抽出する段階は、装置に収容されたエアロゾル形成基材の少なくとも1つの特性に基づくこともできる。抽出されたユーザに送出されたエアロゾルの特性は、特定の化合物の量を含むことができる。エアロゾル発生装置は喫煙装置とすることができる。
【0024】
本明細書に開示の第3の態様において、コンピュータ又は他の適切な処理装置上で実行される場合に第2の態様の方法又は少なくとも抽出する段階及び指示する段階を実施する、コンピュータプログラムが提供される。
【0025】
本明細書に開示の第4の態様において、コンピュータ又は他の適切な処理装置上で実行される場合に、第2の態様の方法又は少なくとも抽出する段階及び指示する段階を実施するコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0026】
コンピュータ実行可能命令は、エアロゾル発生装置を接続できる、パーソナルコンピュータ又は携帯電話等の携帯用コンピューティング装置又は他の処理装置用のアプリケーションプログラム又はコンピュータプログラムとして提供することができる。アプリケーションプログラム又はコンピュータプログラムは、インターネット等の通信ネットワーク経由でユーザがダウンロードできる。コンピュータ実行可能命令はデータベースを含むこと、又は遠隔装置に格納されたデータベースにアクセスする手段を含むことができる。
【0027】
本開示の第5の態様において、発生したエアロゾルをユーザに対して経口又は経鼻送出するように構成されたエアロゾル発生装置が提供され、本装置は、
エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させる加熱要素と、
加熱要素に接続された電力源と、
加熱要素及び電力源に接続され、加熱要素の作動を制御するように構成されて、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段を含むか又はそれに接続されるコントローラと、
コントローラに接続され、加熱要素を通過する空気流の変化の検出値及び加熱要素に関連するデータを記録する第1のデータ記憶手段と、
第1のデータ記憶手段からのデータを外部装置に出力することを可能にするデータ出力手段と、
を備える。
【0028】
本開示の第6の態様において、キットが提供され、本キットは、加熱要素及び該加熱要素に電力を供給する電源と、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段とを含む電気加熱式エアロゾル発生装置と、コンピュータ実行可能命令又は該コンピュータ実行可能命令を遠隔装置からダウンロード可能とするコードを保持するコンピュータ可読記憶媒体とを備え、コンピュータ実行可能命令は、コンピュータ又は他の適切な処理装置で実行される場合に、第2の態様の方法又は少なくとも抽出する段階及び指示する段階を実施する。
【0029】
本開示の全ての態様において、加熱器を通過する空気流の変化を検出する手段は、コントローラに接続されたマイクロフォン又は熱電対等の専用の流量センサとすることができる。もしくは、コントローラは、電力源から加熱要素へ供給される電力を制御して加熱要素を目標温度に維持するように構成すること、及び加熱要素の温度又は加熱要素へ供給される電力の変化を監視して加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。
【0030】
コントローラは、所定の閾値に基づいて、又はシュミットトリガ等の制御ループに基づいて、検出した空気流の変化がユーザの吸煙によるものか否かを評価する。例えば、1つの実施形態において、コントローラは、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するために、加熱要素の温度と目標温度との差が閾値を超えるか否かを監視するように構成することができる。コントローラは、加熱要素の温度と目標温度との差が閾値を所定期間にわたって又は所定の測定繰り返し回数にわたって超えるか否かを監視して、ユーザ吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。これにより、温度の短期間の変動がユーザ吸入の誤った検出につながることはない。
【0031】
別の実施形態において、コントローラは、加熱要素に供給される電力と予想電力レベルとの間の差を監視して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。代替的に又は追加的に、コントローラは、温度の変化速度又は供給される電力変化速度を閾値と比較して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。
【0032】
コントローラは、加熱器を通過する空気流の変化が検出される場合に目標温度を調整するように構成することができる。空気流が増大すると、より多くの酸素が基材と接触する状態になる。これにより所定の温度で基材が燃焼する可能性が高くなる。基材が燃焼することは望ましくない。従って、基材が燃焼する可能性を低くするために、空気流の増大が検出される場合には目標温度を下げることができる。代替的に又は追加的に、コントローラは、加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合には加熱要素に供給される電力を調整するように構成することができる。一般に、加熱要素を通過する空気流は加熱要素を冷却するよう作用する。加熱要素に対する電力はこの冷却作用を補償するために一時的に高くすることができる。
【0033】
1つの実施形態において、コントローラは、加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて加熱要素の温度を監視するように構成することができる。これにより、加熱要素の温度を追加の検出ハードウェアを必要とせずに検出できる。加熱要素の温度は、数ミリ秒毎といった所定の時間間隔で監視することができる。これは、連続して行うこと又は電力が加熱要素に供給される期間にのみ行うことができる。
【0034】
コントローラは、リセットするように、つまり検出温度と目標温度との差が閾値以下の場合に、次のユーザ吸煙を検出できる状態になるように構成することができる。コントローラは、検出温度と目標温度との差が所定時間又は測定繰り返し回数にわたって閾値未満であることを必要とするように構成することができる。いくつかの実施形態において、コントローラは、電力源から加熱要素に供給される電力又は加熱要素に供給されるエネルギの測定値を、電力又はエネルギの測定閾値と比較して、加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在を検出するように、又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を検出するように構成することができる。電力又はエネルギの測定値は、所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる平均電力、電力又はエネルギの変化速度、又は所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる累積測定値を含む、任意の電力又はエネルギの測定値とすることができる。
【0035】
1つの実施形態において、エネルギ測定値は、所定期間にわたる正規化エネルギである。他の実施形態において、エネルギ測定値は、所定期間にわたる正規化エネルギの減少速度である。加熱要素を目標温度に到達させて維持するのに必要な電力又はエネルギ量は、加熱要素からの熱損失率に依存する。これは加熱要素を取り巻く環境に大きく依存する。基材が加熱要素に近接するか又は接触する場合、このことは加熱要素に近接する基材が存在しない状况と比較して、加熱要素からの熱損失率に影響を及ぼすことになる。1つの実施形態において、装置は、加熱要素と接触した状態でエアロゾル形成基材を収容するように構成される。従って、加熱要素は、熱伝導によって基材に熱を奪われる。装置は、使用時に基材が加熱要素を取り囲むように構成することができる。
【0036】
コントローラは、電力又はエネルギの測定値が電力又はエネルギの閾値測定値未満の場合に、電力源から加熱要素への電力供給をゼロに低減するように構成することができる。加熱要素の温度を目標温度に維持するのに必要なエネルギ量が期待量未満の場合、これは装置内にエアロゾル形成基材が存在しないこと、又は装置内にすでに使用した基材のような不適切な基材が存在することに起因する可能性がある。一般的に、すでに使用した基材は、新しい基材よりも水分含量が少なく、エアロゾル生成物の含有量も少ないので、加熱要素からのエネルギの引き込みが少ないはずである。いずれの場合も、一般に加熱器への電力供給を停止することが好ましい。
【0037】
本開示の全ての態様において、電力源は、ガス、化学的又は電気的電源といった任意の適切な電源とすることができる。電源はバッテリとすることができる。1つの実施形態において、電源はリチウムイオンバッテリである。代替的に、電源は、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、又は例えば、リチウムコバルト、リン酸鉄リチウム又はリチウムポリマーバッテリ等のリチウム系バッテリとすることができる。電力は、加熱要素に対してパルス信号で供給することができる。加熱要素に供給される電力量は、電力信号のデューティサイクル又はパルス幅を変えることで調整できる。
【0038】
加熱要素は、単一の加熱要素を備えることができる。代替的に、加熱要素は、2つ以上の加熱要素を備えることができる。単一の加熱要素又は複数の加熱要素は、エアロゾル形成基材を最も効率的に加熱するように適切に配置することができる。
【0039】
加熱要素は、電気抵抗材料を含むことができる。適切な電気抵抗材料としては、限定されるものではないが、ドープセラミックスのような半導体、導電性セラミックス(例えば、二珪化モリブデン)、炭素、グラファイト、金属、金属合金、及びセラミック材料及び金属材料から作られる複合材料を挙げることができる。このような複合材料は、ドープ又は非ドープセラミックスを含むことができる。適切なドープセラミックスの例としてはドープ炭化ケイ素を挙げることができる。適切な金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、金、銀、及び白金族金属を挙げることができる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル−、コバルト−、クロム−、アルミニウム−チタニウム−ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオビウム−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、錫−、ガリウム−、マンガン、金−、及び鉄含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timetal(登録商標)、及び鉄−マンガン−アルミニウムベースの合金をベースにした超合金を挙げることができる。複合材料において、随意的にエネルギ伝達の動力学及び所要の外部物理化学的特性に基づいて、電気抵抗材料は、絶縁材料に埋め込むこと、封入すること、又はそれでコーティングすること、又はその逆とすることができる。セラミック及び/又は絶縁材料は、例えば、酸化アルミニウム又はジルコニア酸化物(ZrO2)を含むことができる。代替的に、電気加熱器は、赤外線加熱要素、光学的ソース、又は誘導加熱要素を含むことができる。
【0040】
加熱要素は任意の適切な形態とすることができる。例えば、加熱要素は、加熱ブレードの形態とすることができる。代替的に、加熱要素は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基材、又は電気抵抗材料の管体の形態とすることができる。代替的に、すでに説明したようにエアロゾル形成基材の中心を貫通する1つ又はそれ以上の加熱ニードル又はロッドとすることができる。代替的に、加熱要素は、円板型(端部)加熱器、又は円板型加熱器を加熱ニードル又はロッドに組み合わせたものとすることができる。別の例として、例えば、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、白金、タングステン、又は合金ワイヤである加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートを含む。随意的に、加熱要素は、硬質担体材料上に堆積させることができる。このような1つの実施形態において、加熱要素は、温度と抵抗率との間で所定の関連性を有する金属を用いて形成することができる。このような例示的な装置において、セラミック材料のような適切な絶縁材料上に金属トラックを形成し、次にガラスのような他の絶縁材料でサンドイッチすることができる。このようにして形成された加熱要素は、作動時に加熱器を加熱すると共に温度を監視するために使用することができる。
【0041】
加熱要素は、エアロゾル形成基材を熱伝導で加熱することができる。加熱要素は、少なくとも部分的に基材、又は基材が堆積された担体に接触することができる。代替的に、加熱要素からの熱は、熱伝導要素によって基材に伝達することができる。
【0042】
代替的に、加熱要素は、使用時にシステムを通って引き込まれる流入周囲空気に熱を伝達することができ、さらに加熱された空気は対流によってエアロゾル形成基材を加熱することができ。周囲空気は、エアロゾル形成基材を通過する前に加熱することができる。
【0043】
1つの実施形態において、エアロゾル形成基材からエアロゾルを生成するために、加熱要素に対して該加熱要素が約250℃から440℃の間の温度に達するまで電力が供給される。約250℃から440℃の間の温度に達するように加熱要素の加熱を制御するために、任意の適切な温度センサ及び制御回路を用いることができ、1つ又はそれ以上の追加の加熱要素の使用を含む。このことはタバコ及びシガレットラッパーの燃焼温度が800℃に達する従来のシガレットとは対照的である。
【0044】
エアロゾル形成基材は、喫煙物品に含めることができる。作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、完全にエアロゾル発生システム内に収容される。この場合、ユーザはエアロゾル発生システムのマウスピース上で吸煙することができる。代替的に、作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、エアロゾル発生システム内に部分的に収容することができる。この場合、ユーザは喫煙物品上で直接吸煙することができる。
【0045】
喫煙物品は、ほぼ円筒形とすることができる。喫煙物品は、ほぼ細長い形状とすることができる。喫煙物品は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ円筒形とすることができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ細長い形状とすることができる。また、エアロゾル形成基材は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置のスライド容器内に収容することができ、エアロゾル形成基材の全長がエアロゾル発生装置の空気流の方向にほぼ平行となっている。
【0046】
喫煙物品の全長は約30mmから約100mmとすることができる。喫煙物品の外径は約5mmから約12mmとすることができる。喫煙物品はフィルタプラグを備えることができる。フィルタプラグは喫煙物品の下流端に設けることができる。フィルタプラグは、セルロースアセテートフィルタプラグとすることができる。1つの実施形態においてフィルタプラグの長さは約7mmであるが、約5mmから約10mmの長さをもつことができる。
【0047】
1つの実施形態において、喫煙物品の全長は約45mmである。喫煙物品の外径は約7.2mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の長さは約10mmとすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材の長さは約12mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の外径は約5mmから約12mmである。喫煙物品は外側紙ラッパーを含むことができる。さらに、喫煙物品は、エアロゾル形成基材とフィルタプラグとの間に離隔距離を含むことができる。離隔距離は約18mmとすることができるが、約5mmから約25mmの範囲とすることができる。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル形成基材」は、エアロゾルを生じることができる揮発性化合物を放出できる基材を意味する。揮発性化合物は、エアロゾル形成基材を加熱又は燃やすことで放出させることができる。エアロゾル形成基材はニコチンを含むことができる。
【0049】
エアロゾル形成基材は、固形のエアロゾル形成基材とすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、固形及び液体成分を含むことができる。エアロゾル形成基材は、加熱時に基材から放出された揮発性タバコ香味化合物を含有する、タバコ含有材料を含むことができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、非タバコ材料を含むことができる。エアロゾル形成基材は、高濃度で安定したエアロゾルの生成を助長するエアロゾル生成物をさらに含むことができる。適切なエアロゾル生成物の例はグリセリン及びプロピレングリコールである。
【0050】
エアロゾル形成基材が固形エアロゾル形成基材である場合、固形エアロゾル形成基材は、例えば、1つ又はそれ以上の、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートを含むことができ、これらは1つ又はそれ以上のハーブ葉、タバコ葉、タバコ茎の断片、再構成タバコ、均質化タバコ、押し出しタバコ、及び膨張タバコを含むことができる。固形エアロゾル形成基材は、容器に入っていない形態とすること、又は適切な容器又はカートリッジで提供することができる。随意的に、固形エアロゾル形成基材は、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むことができ、基材の加熱時に放出されることになる。また、固形エアロゾル形成基材は、例えば、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むカプセルを有することができ、このカプセルは、固形エアロゾル形成基材の加熱時に溶融する。
【0051】
本明細書で用いる場合、均質化タバコは凝集粒子状タバコで形成された材料から成り、シートの形態とすることができる。均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は、乾燥重量ベースで5%よりも多い。代替的に、均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は乾燥重量ベースで5%から30%の間とすることができる。均質化タバコ材料シートは、タバコ葉身及びタバコ葉柄の一方又は両方を破砕又は粉砕することで得られる凝集粒子状タバコで形成することができる。代替的に又は追加的に、均質化タバコ材料シートは、例えば、タバコの処理時、搬送時、及び配送時に生じる1つ又はそれ以上のタバコの灰、タバコの粉末、及び他の粒子状タバコ副生成物を含むことができる。均質化タバコ材料シートは、粒子状タバコの凝集を助けるために、タバコ内因性のバインダである1つ又はそれ以上の内因性バインダ、タバコ外因性のバインダである1つ又はそれ以上の外因性バインダ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。代替的に又は追加的に、限定されるものではないが、均質化タバコ材料シートは、タバコ及び非タバコ繊維、エアロゾル生成物、湿潤剤、可塑剤、香味料、増量剤、水性溶媒又は非水溶媒、及びこれらの組み合わせを含む他の添加物を含むことができる。
【0052】
特に好ましい実施形態において、エアロゾル形成基材は、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含む。本明細書で用いる場合、用語「皺寄せシート」は、複数のほぼ平行な隆起部又は皺部を有するシートを指す。好ましくは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合、ほぼ平行な隆起部又は皺部は、エアロゾル発生物品の長手方向軸に沿って又はそれに平行に延在する。これは、エアロゾル形成基材を形成するために、好都合に均質化タバコ材料の皺寄せシートのギャザー寄せを助長する。しかしながら、代替的に又は追加的に、エアロゾル発生物品内に包含する均質化タバコ材料の皺寄せシートは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合に、エアロゾル発生物品の長手方向軸線に対して鋭角又は鈍角でもって配置されるほぼ平行な複数の隆起部又は波形部を有することができることを理解されたい。特定の実施形態において、エアロゾル形成基材は、全表面上にほぼ均一に凹凸を付けた均質化タバコ材料のギャザー付きシートを含むことができる。例えば、エアロゾル形成基材は、シートの幅を横切ってほぼ均一に離間した複数のほぼ平行な隆起部又は波形部を備える、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含むことができる。
【0053】
随意的に、固形エアロゾル形成基材は、熱的に安定した担体上に設けること又はそれに組み込むことができる。担体は、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートの形態とすることができる。代替的に、担体は、その内面、外面、又は内面及び外面の両面に堆積された薄層の固形基材を有する管状担体とすることができる。このような管状担体は、例えば、紙又は紙状材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の荒いメッシュの金属スクリーン、又は有孔金属箔、又は耐熱性ポリマーマトリクスの形を成すことができる。
【0054】
固形エアロゾル形成基材は、例えば、シート、発泡体、ゲル、又はスラリーの形態で担体表面に堆積することができる。固形エアロゾル形成基材は、担体の全表面に堆積すること、又は代替的に使用時に不均一な香味送出をもたらすために所定のパターンで堆積することができる。
【0055】
前述の固形エアロゾル形成基材を参照したが、他の実施形態において当業者には他の形態のエアロゾル形成基材を利用できることは明らかである。例えば、エアロゾル形成基材は液体エアロゾル形成基材とすることができる。液体エアロゾル形成基材を設ける場合、エアロゾル発生装置は、液体を保管する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基材は、容器内に保管することができる。代替的に又は追加的に、液体エアロゾル形成基材は、多孔性担体材料内に吸収することができる。多孔性担体材料は、何らかの適切な吸収プラグ又は吸収体で作られており、例えば、発泡金属又はプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維、又はセラミックである。液体エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生システムの使用前に多孔性担体材内に保持すること、又は代替的に、液体エアロゾル形成基材材料は、使用中又は直前に多孔性担体材料内に放出することができる。例えば、液体エアロゾル形成基材は、カプセル内に設けることができる。カプセルの殻は、加熱されると溶けて液体エアロゾル形成基材を多孔性担体材料内に放出することが好ましい。随意的に、カプセルは、液体エアロゾル形成基材と一緒に固形エアロゾル形成基材を含むことができる。
【0056】
代替的に、担体は、タバコ成分が組み込まれた不織布又は繊維束とすることができる。不織布又は繊維束は、例えば、炭素繊維、天然セルロース繊維、又はセルロース誘導体繊維を含むことができる。
【0057】
エアロゾル発生システムは空気入口を備えることができる。エアロゾル発生システムは空気出口を備えることができる。エアロゾル発生システムは、所望の特性を有するエアロゾルを形成可能とするための凝縮チャンバを備えることができる。
【0058】
各実施形態は、以下に添付図面を参照して例示的に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】1つの実施形態によるエアロゾル発生装置の基本的な要素を示す概略図である。
図2】1つの実施形態の制御要素を示す概略図である。
図3】他の実施形態によるユーザ吸煙時の加熱器の温度変化及び供給電力を示すグラフである。
図4】さらに他の実施形態によるユーザ吸煙が行われたか否かを判定する制御シーケンスを示す。
図5】加熱要素に隣接する基材が新しい場合、古い場合、又は存在しない場合の温度を目標レベルに維持するために加熱要素に供給する必要がある正規化エネルギの差異を示す。
図6】適切な基材が装置に存在するか否かを判定するための制御シーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
図1には1つの実施形態のエアロゾル発生装置100の内部が簡易的に示されている。詳細には、エアロゾル発生装置100の各構成要素は、縮尺通りには示されていない。図1を単純化するために、本明細書で説明する実施形態の理解に無関係な構成要素は省略されている。
【0061】
エアロゾル発生装置100は、ハウジング10及び例えばシガレットであるエアロゾル形成基材2を備える。エアロゾル形成基材2は、ハウジング10内部に押し込まれて加熱要素20に熱的に近接した状態になる。エアロゾル形成基材2は、異なる温度でさまざまな揮発性化合物を放出することになる。エアロゾル形成基材2から放出されるいくつかの揮発性化合物は、加熱プロセスを通してのみ放出される。各揮発性化合物は、特有の放出温度以上で放出されることになる。エアロゾル発生装置100の最大作動温度を一部の揮発性化合物の放出温度未満に制御することで、これらの煙成分の放出又は形成を避けることができる。
【0062】
さらに、エアロゾル発生装置100は、例えば、ハウジング10内に設けられる充電式リチウムイオンバッテリである電気エネルギ供給部40を含む。エアロゾル発生装置100は、加熱要素20、電気エネルギ供給部40、エアロゾル形成基材検出部32、及びユーザインタフェース36に接続するコントローラ30をさらに含み、ユーザインタフェース36は、ユーザに対して装置100に関する情報を伝える、例えば図形表示部又はLED表示ランプを組み合わせたものである。エアロゾル形成基材検出部32は、加熱要素20に熱的に近接した状態のエアロゾル形成基材2の存在及び識別情報を検出して、エアロゾル形成基材2の存在をコントローラ30に信号で伝えることができる。この基材検出部は随意的である。
【0063】
コントローラ30はユーザインタフェース36を制御して、例えば、バッテリ電力、温度、エアロゾル形成基材2の状態、他のメッセージ、又はこれらの組み合わせ等のシステム情報を表示するようになっている。
【0064】
さらに、コントローラ30は、加熱要素20の最大温度を制御する。加熱要素の温度は、専用の温度センサで検出することができる。代替的に、他の実施形態において、加熱要素の温度は、電気抵抗率を監視することで検出することができる。ワイヤの所定長さの電気抵抗率はその温度に依存する。抵抗率ρは温度が高くなると大きくなる。実際の抵抗率ρ特性は、加熱要素20の正確な合金成分及び幾何学的構造に応じて変化することになり、コントローラは実験的に決定した関係性を利用することができる。従って、所定時間の抵抗率ρの知識を利用して、加熱要素20の実際の作動温度を推測することができる。
【0065】
加熱要素の抵抗はR=V/Iであり、Vは加熱要素の両端の電圧、Iは加熱要素20を通過する電流である。抵抗Rは、加熱要素20の構成並びの温度に左右され、以下の関係式で表すことができ、
R=ρ(T)*L/S 式(1)
ρ(T)は温度に依存する抵抗率、Lは加熱要素20の長さ、Sは加熱要素20の断面積である。L及びSは、加熱要素20の所定の構成では一定であり測定可能である。従って、所定の加熱要素デザインに関して、Rはρ(T)に比例する。
【0066】
加熱要素の抵抗率ρ(T)は、以下の多項式で表すことができ、
ρ(T)=ρ0*(1+α1T+α22) 式(2)
ρ0は基準温度T0での抵抗率、α1及びα2は多項式係数である。
【0067】
従って、加熱要素20の長さ及び断面積が分かると、加熱要素の電圧V及び電流Iを測定することで、所定温度での抵抗R、従って抵抗率ρを決定することができる。温度は、使用する加熱要素に関する特有の抵抗率−温度の関係性のルックアップテーブルから単純に得ること、又は前述の多項式の値を求めることで得ることができる。1つの実施形態において、このプロセスはタバコに適用できる温度範囲における1つ又はそれ以上の、好ましくは2つの直線近似で、抵抗率ρ−温度曲線を表すことで単純化することができる。このことは温度の評価を単純化するが、これは計算資源が限られるコントローラ30に望ましいものである。
【0068】
図2は、図1の装置並びに他のシステム構成要素を含むシステムの制御要素を示すブロック図である。システムは、エアロゾル発生装置100、二次装置58、及び随意的に1つ又はそれ以上の遠隔装置60を含む。エアロゾル発生装置100は図1に示すものと同じであるが、図2にはエアロゾル発生装置の制御要素のみが示されている。以下に説明するように、二次装置58及び1つ又はそれ以上の遠隔装置60は、エアロゾル発生装置からの使用データを、エアロゾル発生装置の使用をユーザに送出されたエアロゾルの特性に関連付けるデータベース57内に格納された実験に基づく使用データと比較するように作動する。ユーザに送出されたエアロゾルの特性は、二次装置58のディスプレイ59上に表示すること、又はエアロゾル発生装置又は外部装置60のディスプレイ上に表示することができる。
【0069】
図2を参照すると、コントローラ30は、測定ユニット50及び制御ユニット52を含む。測定ユニットは、加熱要素20の抵抗Rを決定するように構成される。測定ユニット50は、抵抗測定値を制御ユニット52に送る。次に、制御ユニット52は、トグルスイッチ54によってバッテリ40から加熱要素20への電力供給を制御する。コントローラは、マイクロプロセッサ並びに別個の電子制御回路を備えることができる。1つの実施形態において、マイクロプロセッサは、内部クロック等の標準的な機能及び他の機能を含むことができる。
【0070】
温度を制御するために、エアロゾル発生装置100の目標作動温度を選択する。この選択は、放出するはずの又は放出すべきではない揮発性化合物の放出温度に基づく。次に、この所定値を制御ユニット52に記憶する。制御ユニット52は不揮発性メモリ56を含む。
【0071】
コントローラ30は、バッテリから加熱要素20への供給電気エネルギを制御することで加熱要素20の加熱を制御する。コントローラ30は、エアロゾル形成基材検出部32がエアロゾル形成基材20を検出してユーザが装置を作動させた場合のみ加熱要素20への電力供給を可能にする。スイッチ54を切替えることで、電力はパルス信号として供給される。制御ユニット52は、この信号のパルス幅又はデューティサイクルを調節して加熱要素に供給されるエネルギ量を変更する。1つの実施形態において、デューティサイクルは60−80%に制限することができる。これにより追加の安全機能がもたらされ、基材が燃焼温度を超える温度に達するといったようなユーザが偶発的に加熱器の補償温度を上昇させるのを防止できる。
【0072】
使用時、コントローラ30は、加熱要素20の抵抗率ρを測定する。次に、コントローラ30は、加熱要素20の抵抗率を、測定した抵抗率ρをルックアップデーブルと比較することで、実際の加熱要素の作動温度に変換する。これは、測定ユニット50内で行うこと、又は制御ユニット52が行うことができる。次のステップでは、コントローラ30は、得られた実際の作動温度を目標作動温度と比較する。代替的に、加熱プロファイルの温度値は、抵抗値に予め変換され、コントローラは温度の代わりに抵抗を調節するようになっており、これにより抵抗を温度に変換する喫煙体験時の実時間計算を回避することができる。
【0073】
実際の作動温度が目標作動温度以下の場合、制御ユニット52は、加熱要素20の実際の作動温度を上昇させるために加熱要素20に追加の電気エネルギを供給する。実際の作動温度が目標作動温度を超える場合、制御ユニット52は、実際の作動温度を目標作動温度に戻すために加熱要素20に供給される電気エネルギを低減する。
【0074】
制御ユニットは、単純な温度自動調節フィードバックループ又は比例、積分、微分(PID)制御技術といった何らかの適切な制御技術を実行して温度を調節することができる。
【0075】
加熱要素20の温度は、供給される電力だけに影響されるものではない。加熱要素20を通過する空気流は加熱要素を冷却してその温度を低下させる。この冷却作用は、装置を通過する空気流の変化を検出するために利用することができる。加熱要素の温度及びその電気抵抗は、制御ユニット52が加熱要素を目標温度に戻す前に空気流が増えると低下することになる。
【0076】
図3は、図1に示すタイプのエアロゾル発生装置の使用時の加熱要素の温度及び供給電力の典型的な漸進的変化を示す。供給電力のレベルは実線61で示し、加熱要素の温度は実線62で示す。目標温度は点線64で示す。
【0077】
使用開始の初期には、加熱要素を迅速に目標温度まで上昇させるために高出力が必要である。目標温度に到達すると、加熱要素を目標温度に維持するのに必要なレベルまで供給電力を下げる。しかしながら、ユーザが基材2を吸煙する場合、空気は加熱要素を通って吸い込まれてこれを目標温度以下に冷却する。このことは、図3に特徴部66として示されている。加熱要素20を目標温度に戻すために、供給電力には図3に特徴部68で示す対応するスパイクが与えられる。このパターンは、装置の使用中、本実施例では4回の吸煙が行われる喫煙セッション中に繰り返される。
【0078】
温度又は電力の一時的な変化、又は温度又は電力の変化速度を検出することで、ユーザの吸煙又は他の空気流イベントを検出できる。図4は、シュミットトリガ・デバウンス法を用いた制御プロセスの実施例を示し、制御ユニット52内で用いて、吸煙が発生したときを判定するようになっている。図4のプロセスは、加熱要素の温度変化の検出に基づいている。ステップ400において、初期値0に設定された任意の状態変数を元の値の4分の3に変更する。ステップ410において、加熱要素の温度と目標温度との間の差分であるデルタ値を決定する。ステップ400及び410は逆の順番で又は並行して実行することができる。ステップ415において、このデルタ値をデルタ閾値と比較する。デルタ値がデルタ閾値よりも大きい場合には、ステップ425に進む前に状態変数を4分の1だけ増加させる。これはステップ420に示されている。デルタ値が閾値未満の場合には、状態変数を変更せずプロセスはステップ425に進む。次に、状態変数を状態閾値と比較する。使用する状態閾値の値は、装置が吸煙状態にある時に決定されるか又は非吸煙状態にある時に決定されるかに応じて異なる。ステップ430において、制御ユニットは、装置が吸煙状態にあるか又は非吸煙状態にあるかを決定する。最初に、つまり第1回目の制御サイクルにおいて、装置は非吸煙状態にあると仮定する。
【0079】
装置が非吸煙状態にある場合、ステップ440において、状態変数をHIGH状態閾値と比較する。状態変数がHIGH状態閾値よりも大きい場合、装置が吸煙状態にあると決定する。そうでない場合、非吸煙状態のままであると決定する。いずれの場合も、プロセスはステップ460に進み、その後ステップ400に戻る。
【0080】
装置が吸煙状態にある場合、ステップ450において、状態変数をLOW状態閾値と比較する。状態変数がLOW状態閾値よりも小さい場合、装置が非吸煙状態にあると決定する。そうでない場合、吸煙状態のままであると決定する。いずれの場合も、プロセスはステップ460に進み、その後ステップ400に戻る。
【0081】
HIGH及びLOW閾値の値は直接、プロセスが非吸煙状態と吸煙状態との間を遷移するのに必要なサイクル数に影響を与える。このようにして、ユーザの吸煙に起因しないシステムの温度及びノイズの短期間の変動を吸煙と検出するのを防止できる。短期間の変動は有効に除去される。しかしながら、所要のサイクル回数は、装置が加熱要素に供給する電力を増やすことで温度の低下を補償する前に吸煙検出過渡期が生じ得るように選択することが望ましい。代替的に、コントローラは、吸煙が生じたか否かの判定を行う間には補償プロセスを中断することができる。1つの実施例において、LOW=0.06及びHIGH=0.94であり、このことは、デルタ値がデルタ閾値よりも大きかった場合に、システムが非吸煙から吸煙に進むために、少なくとも10回の繰り返しを経験する必要があるであろうことを意味する。
【0082】
図4に示すシステムは、吸煙カウントと、コントローラがクロックを含む場合には各吸煙が生じた時間の表示とを行うために用いることができる。また、吸煙状態及び非吸煙状態は、目標温度を動的に制御するために用いることができる。空気流が増えるとより多くの酸素が基材に接触する状態になる。これにより所定の温度で基材が燃焼する可能性が高くなる。基材の燃焼は望ましくない。従って、吸煙状態が検出された場合、基材の燃焼可能性を低くするために目標温度を低くすることができる。次に、非吸煙状態が検出された場合には目標温度を元の値に戻すことができる。
【0083】
図4に示すプロセスは、吸煙検出プロセスの1つの実施例にすぎない。例えば、図4に示したものと類似のプロセスは、測定値としての供給電力を用いて又は温度変化率又は供給電力変化率を用いて実行することができる。また、図4に示したものと類似のプロセスを用いることが可能であるが、別々のHIGH及びLOW閾値の代わりに単一の状態閾値のみを用いることも可能である。
【0084】
また、システムは、予期された基材が存在するか否かを自動的に検出することができる。加熱要素が目標温度に到達してそれを目標温度に維持するのに必要なエネルギ量は、加熱要素20に近接して基材材料2が存在するか否か、及び基材の特性によって決まる。図5は、時間の関数で加熱要素に供給される正規化エネルギの漸進的な変化を示す。曲線70は新しい基材が装置内に存在する場合の正規化エネルギであり、曲線72は基材が装置内に無い場合の正規化エネルギである。正規化エネルギは、初期エネルギ測定値に対して正規化された一定期間内に供給されるエネルギである。エネルギの正規化測定は、外気温度、空気流量、及び湿度等の環境状態の影響を最小にする。
【0085】
いずれの場合も、加熱要素に供給される電力は加熱要素を目標温度に上げるための初期の高電力期間に続いて時間と共に単調に減少することが分かる。しかしながら、図5は、T=10秒において装置内の新しい基材に供給されるエネルギ量は、装置内に基材が無い場合のエネルギ量の約2倍であることを示している。新しい基材と既に加熱された基材との間に供給エネルギの差は小さいがそれでも検出可能である。1つの実施形態において、正規化エネルギの差はT=5秒で測定することができ、基材が存在するか否かを正確に判定することができる。
【0086】
コントローラは、所定時間に至るまでに加熱要素に供給される正規化エネルギを計算することができ、これから予期された又は適切な基材が装置内に存在するか否かを判定することができる。
【0087】
図6は、基材が装置内に存在するか否かを判定するために制御ユニット52が実行する制御プロセスの実施例を示す。このプロセスは、ループプロセスでありステップ600で始まる。ステップ610において、ラウンド数(round number)を増加させる。プロセスの開始時には、ラウンド数はゼロに設定される。制御ループが通過する度にラウンド数はステップ610で増加される。ステップ620においてプロセスはラウンド数に基づいて分岐する。最初のループでラウンド数が1に等しい場合、プロセスはステップ630に進む。ステップ630において、初期エネルギ、つまり、加熱器にここまで供給したエネルギをエネルギとして設定する。この初期エネルギは、その後のエネルギ測定値を正規化するために利用する。次に、プロセスはステップ640に進みステップ610に戻る。その後のラウンドは、判定ラウンドに達するまでステップ620からステップ640に直接進む。各ラウンドは、一定の時間間隔、例えば2秒毎に実行することができる。判定ラウンドは、コントローラが正規化エネルギを予期値又は閾値と比較して基材が存在するか否かを判定するように構成される時間に対応する。正規化エネルギの閾値は図5において破線74で示される。本実施例において、判定ラウンドは、5番目のラウンドであり、装置の作動から10秒後に発生する。判定ラウンドにおいて、プロセスは、ステップ620からステップ650に進む。ステップ650において、正規化エネルギは、装置がスイッチオンになった以降に供給されるエネルギを初期エネルギに判定ラウンド数(本実施例では5)を乗算したもので除算することで計算される。次にステップ660において計算した正規化エネルギを閾値と比較する。正規化エネルギが閾値を超える場合には、制御ユニットは適切な基材が存在すると判定し、装置は継続して使用できる。正規化エネルギが閾値を超えない場合、制御ユニットは基材が存在しない(又は不適切な基材が存在する)と判定し、制御ユニットは、スイッチ54を開放することで加熱要素への電力供給を防止する。
【0088】
図6に示すプロセスは、エアロゾル発生装置内に適切な基材が存在するか否かを判定するためのプロセスの1つの実施例にすぎない。加熱要素に供給される電力又はエネルギの他の測定値を用いることができ、正規化又は非正規化データを用いることができる。また、判定を行う時間は選択事項である。必要であれば早期に対応策をとるための早期判定の利点は、信頼できる結果を得るための要件とバランスをとる必要がある。
【0089】
電力又はエネルギの測定値は、複数の閾値と比較することができる。これは、別のタイプの基材を区別するために、又は基材が不適切であることと何らかの基材が無いこととを区別するために有用であろう。
【0090】
エアロゾル発生装置の動的制御で有用であることは勿論のこと、コントローラ30が決定した吸煙検出データ及び基材検出データは、解析目的で有用であろう。特に、吸煙検出データは、加熱要素の温度及び/又は加熱要素に供給される電力に関するデータ(本明細書では総称して使用データと呼ぶ)と共に、使用データを異なる使用シナリオの下で装置が送出するエアロゾルの特性に関連付ける、記憶された実験的に導出されたデータと比較することができる。送出されるエアロゾルの特性は、ユーザにエアロゾル及び該エアロゾルの主要成分の消費量のフィードバックとして提示することができる。また、エアロゾルの特性は、ある期間にわたって複数の異なるユーザから収集することができ、その後に解析できる集団レベルデータセットを提示するようになっている。
【0091】
使用データを異なる使用シナリオの下で装置が送出するエアロゾルの特性に関連付ける、記憶された実験的に導出されたデータは、データベースに格納することができ、エアロゾル発生装置に又はエアロゾル発生装置を接続できる二次装置に収容することができる。二次装置は、ラップトップコンピュータ又は携帯電話等の何らかの処理装置とすることができる。1つの実施形態において、二次装置は、エアロゾル発生装置内のバッテリを再充電するための充電装置である。
【0092】
当業者であれば、実際のユーザデータと実験的に導出されたデータとを正確に比較するために追加の環境データが必要である限りにおいて、制御ユニット52は、このような環境データを提供するために追加の検出機能を含むことができることを理解できるはずである。例えば、制御ユニット52は湿度センサ55を含むことができ、湿度データは、外部装置58に最終的に提供されるデータの一部として組み込むことができる。代替的に又は追加的に、センサ55は外気温度センサとすることができる。
【0093】
また、装置の使用は、外部装置58、60で解析して、どの実験的に導出したデータが、例えば吸入長さ及び頻度並びに吸入回数に関する使用様式に最も近いかを判定することができる。次に、使用様式に最も適合する実験的に導出したデータは、追加の解析及び表示のベースとして用いることができる。
【0094】
図2は、ディスプレイ59を含む外部二次装置58に対するコントローラ30の接続を示す。吸煙の回数及び時間データは、他の取り込んだ使用データと一緒に外部装置58にエクスポートすることができ、さらに二次装置58から他の外部処理又はデータ記憶装置60に送り込むことができる。エアロゾル発生装置は、何らかの適切なデータ出力手段を含むことができる。例えば、エアロゾル発生装置は、コントローラ30又はメモリ56に接続された無線装置、又はコントローラ30又はメモリ56に接続されたユニバーサルシリアルバス(USB)ソケットを含むことができる。代替的に、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを適切なデータ接続部経由でメモリからバッテリ充電装置の外部メモリに送るように構成することができる。バッテリ充電装置は、長期の吸煙データを記憶するために大容量メモリを備えることができ、後で適切なデータ処理装置又は通信ネットワークに接続することができる。さらに、データ並びにコントローラ30に関する命令は、コントローラ30が外部装置58に接続される場合に例えば制御ユニット52にアップロードすることができる。
【0095】
また、追加のデータは、エアロゾル発生装置100の作動時に収集して、外部装置58に送ることができる。このようなデータは、例えば、エアロゾル発生装置の製造番号又は他の識別情報、喫煙セッションの開始時間、喫煙セッションの終了時間、及び喫煙セッションを終了する理由に関する情報を含むことができる。
【0096】
1つの実施形態において、エアロゾル発生装置100に関連する製造番号又は他の識別情報、又は追跡情報は、コントローラ30内に格納することができる。例えば、このような追跡情報はメモリ56内に記憶することができる。エアロゾル発生装置100は、充電又はデータ送信目的で常に同じ外部装置58に接続される訳ではないので、この追跡情報は、外部処理又はデータ記憶装置60にエクスポートすること、及びユーザの行動のより完全な実態を提示するために収集することができる。製造番号又は他の識別情報により、装置からの使用データを以前に記憶した同じ装置からの使用データと関連付けることができる。
【0097】
当業者であれば、喫煙セッションの開始及び終了といったエアロゾル発生装置の作動時間の情報は、本明細書に記載の方法及び装置を用いて取り込むことができることを理解できるはずである。例えば、コントローラ30又は制御ユニット52のクロック機能を用いて、喫煙セッションの開始時間を取り込んでコントローラ30に記憶することができる。同様に、加熱要素20への電力供給を停止することでユーザ又はエアロゾル発生装置100がセッションを終了した場合に終了時間を記録することができる。この開始時間及び終了時間の正確さは、何らかのロス又は不正確さを訂正するために、より正確な時間が外部装置58によってコントローラ30にアップロードされる場合に高めることができる。例えば、コントローラ30を外部装置58に接続する間に、装置58は、コントローラ30の内部クロック機能部に問い合わせして、受信した時間値を外部装置58もしくは1つ又はそれ以上の外部処理又はデータ記憶装置60の内部にクロックと比較して、コントローラ30に更新したクロック信号を供給する。また、喫煙セッション又はエアロゾル発生装置100の動作が終了する理由を特定するか又は取り込むことができる。例えば、制御ユニット52は、喫煙セッション又は動作の終了に関する種々の理由が包含されたルックアップテーブルを有することができる。このような理由の例示的なリストを以下に提示する。
【0098】
【0099】
前記の表は、動作又は喫煙セッションが終了する可能性のある複数の例示的な理由を提示する。当業者であれば、コントローラ30が含む測定ユニット50及び制御ユニット52が提示する種々の指示を利用いて、単独で、又はコントローラ30が加熱要素20の加熱を制御することに応答して記録された指示と組み合わせて、コントローラ30は、エアロゾル発生装置100の動作又は喫煙セッションが終了する理由に関するセッションコードを割り当てることが可能であることを理解できるはずである。前述の方法及び装置を用いて利用可能なデータから決定できる他の理由は、当業者であれば理解できるはずであり、本明細書及び本明細書に記載の例示的な実施形態の範囲又は精神から逸脱することなく、本明細書に記載の方法及び装置を用いて実行することができる。
【0100】
本明細書に記載のエアロゾル発生装置100は加熱要素20の温度を正確に制御でき、データはコントローラ30並びにコントローラ30内に設けられるユニット50及び52が収集することができるので、送出可能なエアロゾルのユーザの消費量は正確に近似することができ、セッションの間の装置100の実際の使用に関する正確なプロファイルを取得することができる。
【0101】
1つの例示的な実施形態において、コントローラ30が取り込んだ使用データは、ユーザによる装置100の使用をさらにもっと把握するために、管理されたセッションの間に決定したデータと比較することができる。例えば、最初に管理された環境条件の下で喫煙マシンを用いてデータを収集し、吸煙回数、吸煙容量、吸煙間隔、及び加熱要素の抵抗率等のデータを測定することで、データベース57は、例えば、実験条件の下で提供されるニコチン又は他の送出物のレベルを提示するように構成することができる。次に、このような実験データは、実際の使用時にコントローラ30が収集したデータと比較することができ、例えば、ユーザがどれだけの送出物を吸入したかに関する情報を決定するために利用される。図2に示す1つの実施形態において、このような実験データを包含するデータベース57は、1つ又はそれ以上の遠隔装置60に格納することができ、データの追加の比較及び処理は、1つ又はそれ以上の装置60で行うことができる。例えば、遠隔装置60は、インターネット経由で接続してアクセス可能な、エアロゾル発生装置の製造業者が運用する1つ又はそれ以上のサーバとすることができる。代替的に、データベース57は、図2の点線で示すように、外部装置58の内部に配置することができる。
【0102】
データベース57は、複数の異なるタイプのエアロゾル形成基材及び複数の異なるタイプのエアロゾル発生装置に関するデータを含むことができる。基材のタイプ及び装置のタイプの指示は、喫煙セッションの前又は喫煙セッションの後でユーザが提供することができ、エアロゾル発生装置又は二次装置の1つに入力することができる。代替的に、基材のタイプ又は装置のタイプの指示は、使用データの一部としてエアロゾル発生装置が自動的に提供することができる。
【0103】
データベースに記憶されたデータは、特定の作動条件で送出されたエアロゾル内に含まれる以下の化合物の量を含むことができる。すなわち、アセトアルデヒド、アセトアミド、アセトン、アクロレイン、アクリルアミド、アクリロニトリル、4−アミノビフェニル、1−アミノナフタリン、2−アミノナフタリン、アンモニア、アナバシン、o−アニシジン、ヒ素、A−α−C(2−アミノ−9H−ピリド[2,3−b]インドール)、ベンズ[a]アントラセン、ベンズ[j]アセアントリレン、ベンゼン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベリリウム、1,3−ブタジエン、カドミウム、コーヒー酸、一酸化炭素、カテコール、塩素化ダイオキシン/フラン、クロム、クリセン、コバルト、クレゾール(o−,m−,及びp−クレゾール)、クロトンアルデヒド、シクロペンタ[c,d]ピレン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ジベンゾ[a,e]ピレン、ジベンゾ[a,h]ピレン、ジベンゾ[a,i]ピレン、ジベンゾ[a,l]ピレン、2,6−ジメチルアニリン、カルバミン酸エチル(ウレタン)、エチルベンゼン、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、フラン、Glu−P−1(2−アミノ−6−メチルジピリド[1,2−a:3’,2’−d]イミダゾール)、Glu−P−2(2−アミノジピリド[1,2−a:3’,2’−d]イミダゾール)、ヒドラジン、シアン化水素、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、IQ(2−アミノ−3−メチルイミダゾ[4,5−f]キノリン)、イソプレーン、鉛、MeA−α−C(2−アミノ−3−メチル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール)、水銀、メチルエチルケトン、5−メチルクリセン、4−(メチルニトロソアミン)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)、ナフタレン、ニッケル、ニコチン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、2−ニトロプロパン、N−ニトロソジエタノールアミン(NDELA)、N−ニトロソジエチルアミン、N−ニトロソジメチルアミン(NDMA)、N−ニトロソメチルエチルアミン、N−ニトロソモルホリン(NMOR)、N−ニトロソノルニコチン(NNN)、N−ニトロソピペリジン(NPIP)、N−ニトロソピロリジン(NPYR)、N−ニトロソサルコシン(NSAR)、ノルニコチン、フェノール、PhIP(2−アミノ−1−メチル−6−フェニルイミダゾ[4,5−b]ピリジン)、ポロニウム−210、プロピオンアルデヒド、酸化プロピレン、キノリン、セレン、スチレン、o−トルイジン、トルエン、Trp−P−1(3−アミノ−1,4−ジメチル−5H−ピリド[4,3−b]インドール)、Trp−P−2(1−メチル−3−アミノ−5H−ピリド[4,3−b]インドール)、ウラン−235、ウラン−238、酢酸ビニル、又は塩化ビニルである。
【0104】
ユーザに送出されたエアロゾルの特性に関する情報は、エアロゾル発生装置100に表示すること、又は携帯電話、充電装置、遠隔外部装置60等の二次装置58のディスプレイ59に表示することができる。
【0105】
当業者であれば、本明細書に記載の方法及び装置を用いて、実験データに対する比較を可能にすること及びエアロゾル発生装置100のユーザ操作に関する種々の属性を正確に近似することで、任意の所望の情報を取り込むことができる。
【0106】
前述の例示的な実施形態は限定的ではない。当業者には、前述の例示的な実施形態に鑑みて前述の例示的な実施形態と一貫性のある他の実施形態が明らかになるはずである。
【符号の説明】
【0107】
20 加熱要素
30 コントローラ
40 電気エネルギ供給部
50 測定ユニット
52 制御ユニット
55 湿度センサ
56 不揮発性メモリ
57 データベース
58 二次装置
59 ディスプレイ
60 遠隔装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6