【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示の態様において、発生したエアロゾルをユーザに対して経口又は経鼻送出するように構成されたエアロゾル発生システムが提供され、本システムは、
エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させる加熱要素と、
加熱要素に接続された電力源と、
加熱要素及び電力源に接続され、加熱要素の作動を制御するように構成され、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段を含むか又はそれに接続される、コントローラと、
検出された加熱要素を通過する空気流の変化及び加熱要素の作動に関連するデータを記録するための、コントローラに接続された第1のデータ記憶手段と、
データベースを含み空気流の変化及び加熱要素の作動に関連するデータをユーザに送出されたエアロゾルの特性に関連付ける第2のデータ記憶手段と、
ユーザに送出されたエアロゾルの特性をユーザに知らせるための、第2のデータ記憶手段に接続されたディスプレイ等の指示手段と、
を備える。
【0007】
指示手段は、所定の期間内にユーザに送出された特定の化合物の量といった、ユーザに送出されたエアロゾルの特性に関する詳細情報を表示することができるディスプレイとすることができる。しかしながら、指示手段は、より簡易的なものとすること、及び所定期間内の特定の化合物の消費量が閾値を超えた場合に作動する聴覚又は視覚警報とすることができる。閾値はユーザが設定できる。以下に説明するように、指示手段は、加熱要素を含むエアロゾル発生装置上に設けること、又はエアロゾル発生装置からデータが送信される二次装置上に設けることができる。
【0008】
本明細書で用いる場合、ユーザに「送出される」エアロゾルは、使用時にユーザが吸入するエアロゾルを意味する。本明細書で用いる場合、吸入することは、口又は鼻を経由して人体に取り込むことを意味し、エアロゾルがユーザの肺に取り込まれる状態を含み、また、エアロゾルがユーザの人体から排出される前にユーザの口腔又は鼻腔にのみ吸い込まれる状態を含む。
【0009】
第1のデータ記憶手段は、検出された空気流もしくはユーザ吸煙又は吸入の変化を記録するように構成できる。第1のデータ記憶手段は、ユーザ吸煙の回数又は各吸煙時間を記録することができる。また、第1のデータ記憶手段は、加熱要素の温度及び各吸煙の間に供給される電力を記録するように構成することができる。第1のデータ記憶手段は、必要に応じてコントローラから入手できる何らかのデータを記録することができる。
【0010】
データベースは、特定のタイプのエアロゾル形成基材に特有のデータを含むことができる。従って、システムは、装置に収容されたエアロゾル形成基材を識別するための識別手段を備えることができる。識別手段は、エアロゾル形成基材上の標識を読み取るための光学式スキャナ、又はエアロゾル形成基材の抵抗特性といった電気的特性を検出するように構成された電子回路を含むことができる。代替的に又は追加的に、システムは、消費者が装置に収容されたエアロゾル形成基材を識別するデータを入力することができるユーザインタフェースを含むことができる。エアロゾル発生要素の作動に関するデータは、加熱要素の温度又は加熱要素に供給された電力を含むことができる。この情報、並びに空気流量データ、随意的に基材の識別情報は、第2のデータ記憶手段に記憶されたデータと比較して、ユーザに送出されたエアロゾルの特性を表すデータを抽出するようになっている。ユーザに送出されたエアロゾルの特性は、特定の化合物の量を含むことができる。
【0011】
データベースは、特定の基材に関して、特定の状態の下でシステムが送出する特定の化合物の量を含むことができる。データベースは、エアロゾル発生装置を作動させる温度及び空気流量等の特定のパラメータを、システムが送出した特定の化合物の量に関連付ける関係式を含むことができる。化合物の量及び関係式は、実験データから導き出すこと又は外挿することができる。
【0012】
システムは、電気式喫煙システムとすることができる。電気式喫煙システムの場合、第2のデータ記憶手段は、標準喫煙マシンを利用して、種々の喫煙レジメの下、及び管理された喫煙環境及び特定のエアロゾル形成基材に関する管理された湿度の下での喫煙セッションに得られる情報を記憶することができる。この実験的に得られたデータは、空気流の変化及び加熱器の作動に由来する、可能性のある主流煙の吸入容量を外挿するために使用することができる。標準喫煙マシンを用いた喫煙レジメは、例えば、標準ISOレジメ又はカナダインテンスレジメ(Canadian intense regime)とすることができる。
【0013】
喫煙システムにおいて、第2のデータ記憶手段に記憶されたデータは、限定されるものではないが、送出されたエアロゾル内に含まれる以下の化合物の量を含むことができる。すなわち、アセトアルデヒド、アセトアミド、アセトン、アクロレイン、アクリルアミド、アクリロニトリル、4−アミノビフェニル、1−アミノナフタリン、2−アミノナフタリン、アンモニア、アナバシン、o−アニシジン、ヒ素、A−α−C(2−アミノ−9H−ピリド[2,3−b]インドール)、ベンズ[a]アントラセン、ベンズ[j]アセアントリレン、ベンゼン、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、ベンゾ[b]フラン、ベンゾ[a]ピレン、ベンゾ[c]フェナントレン、ベリリウム、1,3−ブタジエン、カドミウム、コーヒー酸、一酸化炭素、カテコール、塩素化ダイオキシン/フラン、クロム、クリセン、コバルト、クレゾール(o−,m−,及びp−クレゾール)、クロトンアルデヒド、シクロペンタ[c,d]ピレン、ジベンズ[a,h]アントラセン、ジベンゾ[a,e]ピレン、ジベンゾ[a,h]ピレン、ジベンゾ[a,i]ピレン、ジベンゾ[a,l]ピレン、2,6−ジメチルアニリン、カルバミン酸エチル(ウレタン)、エチルベンゼン、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、フラン、Glu−P−1(2−アミノ−6−メチルジピリド[1,2−a:3’,2’−d]イミダゾール)、Glu−P−2(2−アミノジピリド[1,2−a:3’,2’−d]イミダゾール)、ヒドラジン、シアン化水素、インデノ[1,2,3−cd]ピレン、IQ(2−アミノ−3−メチルイミダゾ[4,5−f]キノリン)、イソプレーン、鉛、MeA−α−C(2−アミノ−3−メチル)−9H−ピリド[2,3−b]インドール)、水銀、メチルエチルケトン、5−メチルクリセン、4−(メチルニトロソアミン)−1−(3−ピリジル)−1−ブタノン(NNK)、ナフタレン、ニッケル、ニコチン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、2−ニトロプロパン、N−ニトロソジエタノールアミン(NDELA)、N−ニトロソジエチルアミン、N−ニトロソジメチルアミン(NDMA)、N−ニトロソメチルエチルアミン、N−ニトロソモルホリン(NMOR)、N−ニトロソノルニコチン(NNN)、N−ニトロソピペリジン(NPIP)、N−ニトロソピロリジン(NPYR)、N−ニトロソサルコシン(NSAR)、ノルニコチン、フェノール、PhIP(2−アミノ−1−メチル−6−フェニルイミダゾ[4,5−b]ピリジン)、ポロニウム−210、プロピオンアルデヒド、酸化プロピレン、キノリン、セレン、スチレン、o−トルイジン、トルエン、Trp−P−1(3−アミノ−1,4−ジメチル−5H−ピリド[4,3−b]インドール)、Trp−P−2(1−メチル−3−アミノ−5H−ピリド[4,3−b]インドール)、ウラン−235、ウラン−238、酢酸ビニル、又は塩化ビニルである。
【0014】
システムは、該システムの全ての構成要素を含む単一のエアロゾル発生装置を備えることができる。もしくは、システムは、エアロゾル発生装置と、該エアロゾル発生装置が直接的に又は間接的に結合又は接続する1つ又はそれ以上の二次装置とを備えることができ、1つ又はそれ以上の二次装置はシステムの一部の構成要素を備える。従って、システムが単一の装置を備える場合、第2のデータ記憶手段又はディスプレイ、又は第2のデータ記憶手段及びディスプレイは、加熱要素及び電力源と一緒に単一のハウジングに収容される。第1のデータ記憶手段及び第2のデータ記憶手段は、単一の物理メモリの各部分とすることができる。別の実施形態において、第2のデータ記憶手段又はディスプレイ、又は第2のデータ記憶手段及びディスプレイは、1つ又はそれ以上の二次装置の一部とすることができる。例えば、ラップトップコンピュータはシステムの一部とすることができ、エアロゾル発生装置に接続可能である。ラップトップコンピュータは第2のデータ記憶手段及びディスプレイを含むことができ、第1のデータ記憶手段からのデータと、第2のデータ記憶手段の中のデータとを比較することができる。
【0015】
本明細書で用いる場合、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基材と相互作用してエアロゾルを発生させる装置を意味する。エアロゾル発生装置は、外部電源又はエアロゾル発生装置の一部をなす内蔵電源とすることができる電源を備えることができる。
【0016】
1つ又はそれ以上の二次装置は、エアロゾル発生装置の電力源を充電するようになった充電装置とすることができる。代替的に又は追加的に、1つ又はそれ以上の二次装置は、ラップトップコンピュータ又はディスクトップコンピュータ、携帯電話、又は他の消費者向け装置を備えることができる。1つの実施形態において、第2のデータ記憶手段は、エアロゾル発生装置又は他の二次装置が通信ネットワーク経由で接続することができるリモートサーバを含むことができる。ユーザに送出されたエアロゾルの特性をサーバから受信するために、ユーザは、加熱要素を通過する空気流の検出値及び加熱要素の作動に関連するデータ(本明細書では使用データと呼ぶ)をリモートサーバに送信することを要求される場合がある。これにより、集団レベル統計のために用いることができる使用データの中央記憶装置を、システム設計の改善のために利用すること、及び臨床研究に利用することが可能になる。
【0017】
データは、何らかの適切な方法で、システム内の異なる装置の間で転送することができる。例えば、USB接続等の有線接続を用いることができる。もしくは、無線接続を用いることができる。また、データは、インターネット等の通信ネットワーク経由で転送される。1つの実施形態において、エアロゾル発生装置は、該エアロゾル発生装置が再充電される度に、データを第1のデータ記憶手段からバッテリ充電装置内の第2のデータ記憶手段に転送するように構成できる。
【0018】
第1及び第2のデータ記憶手段としてRAM又はフラッシュメモリ等の任意の適切なメモリを用いることができる。
【0019】
エアロゾル形成基材の識別情報又は1つ又はそれ以上の特性値は、使用データの記録の前又は後で提示することができる。以下に説明するように、識別情報又は1つ又はそれ以上のエアロゾル形成基材の特性値は、システムのユーザからのデータ入力によって提供すること、又は自動基材検出プロセスの結果として提示することができる。
【0020】
所定期間内にシステムから閾値量の1つ又はそれ以上の化合物をユーザに送出したと推定される場合、システムは警報を提示するように構成することができる。異なる化合物及び異なる期間に関して複数の閾値を設定することができる。警報は、加熱要素を含むエアロゾル発生装置上に提示すること、又は1つ又はそれ以上の二次装置上に提示することができる。警報は、単純な視覚又は聴覚信号とすること、又は表示画面上のより詳細な情報表示とすることができる。警報は、特定の化合物の消費量が所定の制限値又は所定の用量に達したことを警告するために提示される。
【0021】
記録データが同じユーザからの過去の記録データに必ず適合するように、ユーザパスワード又はユーザ名をシステムのユーザインタフェースに入力することができる。もしくは、システムが、第2のデータ記憶手段が設けられた1つ又はそれ以上の二次装置を含む場合、各エアロゾル発生装置は固有のユーザが使用しているという仮定を行うことができ、装置識別子は、使用データ内に又はエアロゾル発生装置から転送された他のデータ内に含むことができる。
【0022】
本明細書に開示の第2の態様において、エアロゾル送出データを電気加熱式エアロゾル発生装置のエンドユーザに提示する方法が提供され、本装置は、加熱要素及び該加熱要素に電力を供給する電源と、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段とを備え、この方法は、
加熱要素を通過する空気流の変化の検出値及び加熱要素の作動に関連するデータを記録する段階と、
空気流の変化の検出値及び加熱要素の作動に関連するデータに基づいて、ユーザに送出されたエアロゾルの特性をデータベースから抽出する段階と、
抽出したユーザに送出されたエアロゾルの特性を指示する、例えば表示する段階と、
を含む。
【0023】
本方法は、装置に収容されたエアロゾル形成基材の少なくとも1つの特性を検出又は提示する段階をさらに含むことができ、抽出する段階は、装置に収容されたエアロゾル形成基材の少なくとも1つの特性に基づくこともできる。抽出されたユーザに送出されたエアロゾルの特性は、特定の化合物の量を含むことができる。エアロゾル発生装置は喫煙装置とすることができる。
【0024】
本明細書に開示の第3の態様において、コンピュータ又は他の適切な処理装置上で実行される場合に第2の態様の方法又は少なくとも抽出する段階及び指示する段階を実施する、コンピュータプログラムが提供される。
【0025】
本明細書に開示の第4の態様において、コンピュータ又は他の適切な処理装置上で実行される場合に、第2の態様の方法又は少なくとも抽出する段階及び指示する段階を実施するコンピュータ実行可能命令を保持するコンピュータ可読記憶媒体が提供される。
【0026】
コンピュータ実行可能命令は、エアロゾル発生装置を接続できる、パーソナルコンピュータ又は携帯電話等の携帯用コンピューティング装置又は他の処理装置用のアプリケーションプログラム又はコンピュータプログラムとして提供することができる。アプリケーションプログラム又はコンピュータプログラムは、インターネット等の通信ネットワーク経由でユーザがダウンロードできる。コンピュータ実行可能命令はデータベースを含むこと、又は遠隔装置に格納されたデータベースにアクセスする手段を含むことができる。
【0027】
本開示の第5の態様において、発生したエアロゾルをユーザに対して経口又は経鼻送出するように構成されたエアロゾル発生装置が提供され、本装置は、
エアロゾル形成基材を加熱してエアロゾルを発生させる加熱要素と、
加熱要素に接続された電力源と、
加熱要素及び電力源に接続され、加熱要素の作動を制御するように構成されて、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段を含むか又はそれに接続されるコントローラと、
コントローラに接続され、加熱要素を通過する空気流の変化の検出値及び加熱要素に関連するデータを記録する第1のデータ記憶手段と、
第1のデータ記憶手段からのデータを外部装置に出力することを可能にするデータ出力手段と、
を備える。
【0028】
本開示の第6の態様において、キットが提供され、本キットは、加熱要素及び該加熱要素に電力を供給する電源と、加熱要素を通過する空気流の変化を検出する手段とを含む電気加熱式エアロゾル発生装置と、コンピュータ実行可能命令又は該コンピュータ実行可能命令を遠隔装置からダウンロード可能とするコードを保持するコンピュータ可読記憶媒体とを備え、コンピュータ実行可能命令は、コンピュータ又は他の適切な処理装置で実行される場合に、第2の態様の方法又は少なくとも抽出する段階及び指示する段階を実施する。
【0029】
本開示の全ての態様において、加熱器を通過する空気流の変化を検出する手段は、コントローラに接続されたマイクロフォン又は熱電対等の専用の流量センサとすることができる。もしくは、コントローラは、電力源から加熱要素へ供給される電力を制御して加熱要素を目標温度に維持するように構成すること、及び加熱要素の温度又は加熱要素へ供給される電力の変化を監視して加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。
【0030】
コントローラは、所定の閾値に基づいて、又はシュミットトリガ等の制御ループに基づいて、検出した空気流の変化がユーザの吸煙によるものか否かを評価する。例えば、1つの実施形態において、コントローラは、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するために、加熱要素の温度と目標温度との差が閾値を超えるか否かを監視するように構成することができる。コントローラは、加熱要素の温度と目標温度との差が閾値を所定期間にわたって又は所定の測定繰り返し回数にわたって超えるか否かを監視して、ユーザ吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。これにより、温度の短期間の変動がユーザ吸入の誤った検出につながることはない。
【0031】
別の実施形態において、コントローラは、加熱要素に供給される電力と予想電力レベルとの間の差を監視して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。代替的に又は追加的に、コントローラは、温度の変化速度又は供給される電力変化速度を閾値と比較して、ユーザの吸入を示す加熱要素を通過する空気流の変化を検出するように構成することができる。
【0032】
コントローラは、加熱器を通過する空気流の変化が検出される場合に目標温度を調整するように構成することができる。空気流が増大すると、より多くの酸素が基材と接触する状態になる。これにより所定の温度で基材が燃焼する可能性が高くなる。基材が燃焼することは望ましくない。従って、基材が燃焼する可能性を低くするために、空気流の増大が検出される場合には目標温度を下げることができる。代替的に又は追加的に、コントローラは、加熱要素を通過する空気流の変化が検出される場合には加熱要素に供給される電力を調整するように構成することができる。一般に、加熱要素を通過する空気流は加熱要素を冷却するよう作用する。加熱要素に対する電力はこの冷却作用を補償するために一時的に高くすることができる。
【0033】
1つの実施形態において、コントローラは、加熱要素の電気抵抗の測定値に基づいて加熱要素の温度を監視するように構成することができる。これにより、加熱要素の温度を追加の検出ハードウェアを必要とせずに検出できる。加熱要素の温度は、数ミリ秒毎といった所定の時間間隔で監視することができる。これは、連続して行うこと又は電力が加熱要素に供給される期間にのみ行うことができる。
【0034】
コントローラは、リセットするように、つまり検出温度と目標温度との差が閾値以下の場合に、次のユーザ吸煙を検出できる状態になるように構成することができる。コントローラは、検出温度と目標温度との差が所定時間又は測定繰り返し回数にわたって閾値未満であることを必要とするように構成することができる。いくつかの実施形態において、コントローラは、電力源から加熱要素に供給される電力又は加熱要素に供給されるエネルギの測定値を、電力又はエネルギの測定閾値と比較して、加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の存在を検出するように、又は加熱要素に近接するエアロゾル形成基材の材料特性を検出するように構成することができる。電力又はエネルギの測定値は、所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる平均電力、電力又はエネルギの変化速度、又は所定期間にわたる又は所定の測定繰り返し回数にわたる累積測定値を含む、任意の電力又はエネルギの測定値とすることができる。
【0035】
1つの実施形態において、エネルギ測定値は、所定期間にわたる正規化エネルギである。他の実施形態において、エネルギ測定値は、所定期間にわたる正規化エネルギの減少速度である。加熱要素を目標温度に到達させて維持するのに必要な電力又はエネルギ量は、加熱要素からの熱損失率に依存する。これは加熱要素を取り巻く環境に大きく依存する。基材が加熱要素に近接するか又は接触する場合、このことは加熱要素に近接する基材が存在しない状况と比較して、加熱要素からの熱損失率に影響を及ぼすことになる。1つの実施形態において、装置は、加熱要素と接触した状態でエアロゾル形成基材を収容するように構成される。従って、加熱要素は、熱伝導によって基材に熱を奪われる。装置は、使用時に基材が加熱要素を取り囲むように構成することができる。
【0036】
コントローラは、電力又はエネルギの測定値が電力又はエネルギの閾値測定値未満の場合に、電力源から加熱要素への電力供給をゼロに低減するように構成することができる。加熱要素の温度を目標温度に維持するのに必要なエネルギ量が期待量未満の場合、これは装置内にエアロゾル形成基材が存在しないこと、又は装置内にすでに使用した基材のような不適切な基材が存在することに起因する可能性がある。一般的に、すでに使用した基材は、新しい基材よりも水分含量が少なく、エアロゾル生成物の含有量も少ないので、加熱要素からのエネルギの引き込みが少ないはずである。いずれの場合も、一般に加熱器への電力供給を停止することが好ましい。
【0037】
本開示の全ての態様において、電力源は、ガス、化学的又は電気的電源といった任意の適切な電源とすることができる。電源はバッテリとすることができる。1つの実施形態において、電源はリチウムイオンバッテリである。代替的に、電源は、ニッケル水素バッテリ、ニッケルカドミウムバッテリ、又は例えば、リチウムコバルト、リン酸鉄リチウム又はリチウムポリマーバッテリ等のリチウム系バッテリとすることができる。電力は、加熱要素に対してパルス信号で供給することができる。加熱要素に供給される電力量は、電力信号のデューティサイクル又はパルス幅を変えることで調整できる。
【0038】
加熱要素は、単一の加熱要素を備えることができる。代替的に、加熱要素は、2つ以上の加熱要素を備えることができる。単一の加熱要素又は複数の加熱要素は、エアロゾル形成基材を最も効率的に加熱するように適切に配置することができる。
【0039】
加熱要素は、電気抵抗材料を含むことができる。適切な電気抵抗材料としては、限定されるものではないが、ドープセラミックスのような半導体、導電性セラミックス(例えば、二珪化モリブデン)、炭素、グラファイト、金属、金属合金、及びセラミック材料及び金属材料から作られる複合材料を挙げることができる。このような複合材料は、ドープ又は非ドープセラミックスを含むことができる。適切なドープセラミックスの例としてはドープ炭化ケイ素を挙げることができる。適切な金属の例としては、チタニウム、ジルコニウム、タンタル、金、銀、及び白金族金属を挙げることができる。適切な金属合金の例としては、ステンレス鋼、ニッケル−、コバルト−、クロム−、アルミニウム−チタニウム−ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオビウム−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、錫−、ガリウム−、マンガン、金−、及び鉄含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timetal(登録商標)、及び鉄−マンガン−アルミニウムベースの合金をベースにした超合金を挙げることができる。複合材料において、随意的にエネルギ伝達の動力学及び所要の外部物理化学的特性に基づいて、電気抵抗材料は、絶縁材料に埋め込むこと、封入すること、又はそれでコーティングすること、又はその逆とすることができる。セラミック及び/又は絶縁材料は、例えば、酸化アルミニウム又はジルコニア酸化物(ZrO
2)を含むことができる。代替的に、電気加熱器は、赤外線加熱要素、光学的ソース、又は誘導加熱要素を含むことができる。
【0040】
加熱要素は任意の適切な形態とすることができる。例えば、加熱要素は、加熱ブレードの形態とすることができる。代替的に、加熱要素は、異なる導電性部分を有するケーシング又は基材、又は電気抵抗材料の管体の形態とすることができる。代替的に、すでに説明したようにエアロゾル形成基材の中心を貫通する1つ又はそれ以上の加熱ニードル又はロッドとすることができる。代替的に、加熱要素は、円板型(端部)加熱器、又は円板型加熱器を加熱ニードル又はロッドに組み合わせたものとすることができる。別の例として、例えば、Ni−Cr(ニッケル−クロム)、白金、タングステン、又は合金ワイヤである加熱ワイヤ又はフィラメント、又は加熱プレートを含む。随意的に、加熱要素は、硬質担体材料上に堆積させることができる。このような1つの実施形態において、加熱要素は、温度と抵抗率との間で所定の関連性を有する金属を用いて形成することができる。このような例示的な装置において、セラミック材料のような適切な絶縁材料上に金属トラックを形成し、次にガラスのような他の絶縁材料でサンドイッチすることができる。このようにして形成された加熱要素は、作動時に加熱器を加熱すると共に温度を監視するために使用することができる。
【0041】
加熱要素は、エアロゾル形成基材を熱伝導で加熱することができる。加熱要素は、少なくとも部分的に基材、又は基材が堆積された担体に接触することができる。代替的に、加熱要素からの熱は、熱伝導要素によって基材に伝達することができる。
【0042】
代替的に、加熱要素は、使用時にシステムを通って引き込まれる流入周囲空気に熱を伝達することができ、さらに加熱された空気は対流によってエアロゾル形成基材を加熱することができ。周囲空気は、エアロゾル形成基材を通過する前に加熱することができる。
【0043】
1つの実施形態において、エアロゾル形成基材からエアロゾルを生成するために、加熱要素に対して該加熱要素が約250℃から440℃の間の温度に達するまで電力が供給される。約250℃から440℃の間の温度に達するように加熱要素の加熱を制御するために、任意の適切な温度センサ及び制御回路を用いることができ、1つ又はそれ以上の追加の加熱要素の使用を含む。このことはタバコ及びシガレットラッパーの燃焼温度が800℃に達する従来のシガレットとは対照的である。
【0044】
エアロゾル形成基材は、喫煙物品に含めることができる。作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、完全にエアロゾル発生システム内に収容される。この場合、ユーザはエアロゾル発生システムのマウスピース上で吸煙することができる。代替的に、作動時、エアロゾル形成基材を含む喫煙物品は、エアロゾル発生システム内に部分的に収容することができる。この場合、ユーザは喫煙物品上で直接吸煙することができる。
【0045】
喫煙物品は、ほぼ円筒形とすることができる。喫煙物品は、ほぼ細長い形状とすることができる。喫煙物品は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ円筒形とすることができる。エアロゾル形成基材は、ほぼ細長い形状とすることができる。また、エアロゾル形成基材は、全長及び該全長にほぼ直交する外周を有することができる。エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生装置のスライド容器内に収容することができ、エアロゾル形成基材の全長がエアロゾル発生装置の空気流の方向にほぼ平行となっている。
【0046】
喫煙物品の全長は約30mmから約100mmとすることができる。喫煙物品の外径は約5mmから約12mmとすることができる。喫煙物品はフィルタプラグを備えることができる。フィルタプラグは喫煙物品の下流端に設けることができる。フィルタプラグは、セルロースアセテートフィルタプラグとすることができる。1つの実施形態においてフィルタプラグの長さは約7mmであるが、約5mmから約10mmの長さをもつことができる。
【0047】
1つの実施形態において、喫煙物品の全長は約45mmである。喫煙物品の外径は約7.2mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の長さは約10mmとすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材の長さは約12mmとすることができる。さらに、エアロゾル形成基材の外径は約5mmから約12mmである。喫煙物品は外側紙ラッパーを含むことができる。さらに、喫煙物品は、エアロゾル形成基材とフィルタプラグとの間に離隔距離を含むことができる。離隔距離は約18mmとすることができるが、約5mmから約25mmの範囲とすることができる。
【0048】
本明細書で用いる場合、用語「エアロゾル形成基材」は、エアロゾルを生じることができる揮発性化合物を放出できる基材を意味する。揮発性化合物は、エアロゾル形成基材を加熱又は燃やすことで放出させることができる。エアロゾル形成基材はニコチンを含むことができる。
【0049】
エアロゾル形成基材は、固形のエアロゾル形成基材とすることができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、固形及び液体成分を含むことができる。エアロゾル形成基材は、加熱時に基材から放出された揮発性タバコ香味化合物を含有する、タバコ含有材料を含むことができる。代替的に、エアロゾル形成基材は、非タバコ材料を含むことができる。エアロゾル形成基材は、高濃度で安定したエアロゾルの生成を助長するエアロゾル生成物をさらに含むことができる。適切なエアロゾル生成物の例はグリセリン及びプロピレングリコールである。
【0050】
エアロゾル形成基材が固形エアロゾル形成基材である場合、固形エアロゾル形成基材は、例えば、1つ又はそれ以上の、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートを含むことができ、これらは1つ又はそれ以上のハーブ葉、タバコ葉、タバコ茎の断片、再構成タバコ、均質化タバコ、押し出しタバコ、及び膨張タバコを含むことができる。固形エアロゾル形成基材は、容器に入っていない形態とすること、又は適切な容器又はカートリッジで提供することができる。随意的に、固形エアロゾル形成基材は、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むことができ、基材の加熱時に放出されることになる。また、固形エアロゾル形成基材は、例えば、追加のタバコ又は非タバコ揮発性香味化合物を含むカプセルを有することができ、このカプセルは、固形エアロゾル形成基材の加熱時に溶融する。
【0051】
本明細書で用いる場合、均質化タバコは凝集粒子状タバコで形成された材料から成り、シートの形態とすることができる。均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は、乾燥重量ベースで5%よりも多い。代替的に、均質化タバコ材料のエアロゾル生成物の含有量は乾燥重量ベースで5%から30%の間とすることができる。均質化タバコ材料シートは、タバコ葉身及びタバコ葉柄の一方又は両方を破砕又は粉砕することで得られる凝集粒子状タバコで形成することができる。代替的に又は追加的に、均質化タバコ材料シートは、例えば、タバコの処理時、搬送時、及び配送時に生じる1つ又はそれ以上のタバコの灰、タバコの粉末、及び他の粒子状タバコ副生成物を含むことができる。均質化タバコ材料シートは、粒子状タバコの凝集を助けるために、タバコ内因性のバインダである1つ又はそれ以上の内因性バインダ、タバコ外因性のバインダである1つ又はそれ以上の外因性バインダ、又はこれらの組み合わせを含むことができる。代替的に又は追加的に、限定されるものではないが、均質化タバコ材料シートは、タバコ及び非タバコ繊維、エアロゾル生成物、湿潤剤、可塑剤、香味料、増量剤、水性溶媒又は非水溶媒、及びこれらの組み合わせを含む他の添加物を含むことができる。
【0052】
特に好ましい実施形態において、エアロゾル形成基材は、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含む。本明細書で用いる場合、用語「皺寄せシート」は、複数のほぼ平行な隆起部又は皺部を有するシートを指す。好ましくは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合、ほぼ平行な隆起部又は皺部は、エアロゾル発生物品の長手方向軸に沿って又はそれに平行に延在する。これは、エアロゾル形成基材を形成するために、好都合に均質化タバコ材料の皺寄せシートのギャザー寄せを助長する。しかしながら、代替的に又は追加的に、エアロゾル発生物品内に包含する均質化タバコ材料の皺寄せシートは、エアロゾル発生物品が組み立てられた場合に、エアロゾル発生物品の長手方向軸線に対して鋭角又は鈍角でもって配置されるほぼ平行な複数の隆起部又は波形部を有することができることを理解されたい。特定の実施形態において、エアロゾル形成基材は、全表面上にほぼ均一に凹凸を付けた均質化タバコ材料のギャザー付きシートを含むことができる。例えば、エアロゾル形成基材は、シートの幅を横切ってほぼ均一に離間した複数のほぼ平行な隆起部又は波形部を備える、均質化タバコ材料のギャザー付きの皺寄せシートを含むことができる。
【0053】
随意的に、固形エアロゾル形成基材は、熱的に安定した担体上に設けること又はそれに組み込むことができる。担体は、粉体、粒体、ペレット、細断片、スパゲティ、ストリップ、又はシートの形態とすることができる。代替的に、担体は、その内面、外面、又は内面及び外面の両面に堆積された薄層の固形基材を有する管状担体とすることができる。このような管状担体は、例えば、紙又は紙状材料、不織布炭素繊維マット、低質量の目の荒いメッシュの金属スクリーン、又は有孔金属箔、又は耐熱性ポリマーマトリクスの形を成すことができる。
【0054】
固形エアロゾル形成基材は、例えば、シート、発泡体、ゲル、又はスラリーの形態で担体表面に堆積することができる。固形エアロゾル形成基材は、担体の全表面に堆積すること、又は代替的に使用時に不均一な香味送出をもたらすために所定のパターンで堆積することができる。
【0055】
前述の固形エアロゾル形成基材を参照したが、他の実施形態において当業者には他の形態のエアロゾル形成基材を利用できることは明らかである。例えば、エアロゾル形成基材は液体エアロゾル形成基材とすることができる。液体エアロゾル形成基材を設ける場合、エアロゾル発生装置は、液体を保管する手段を備えることが好ましい。例えば、液体エアロゾル形成基材は、容器内に保管することができる。代替的に又は追加的に、液体エアロゾル形成基材は、多孔性担体材料内に吸収することができる。多孔性担体材料は、何らかの適切な吸収プラグ又は吸収体で作られており、例えば、発泡金属又はプラスチック材料、ポリプロピレン、テリレン、ナイロン繊維、又はセラミックである。液体エアロゾル形成基材は、エアロゾル発生システムの使用前に多孔性担体材内に保持すること、又は代替的に、液体エアロゾル形成基材材料は、使用中又は直前に多孔性担体材料内に放出することができる。例えば、液体エアロゾル形成基材は、カプセル内に設けることができる。カプセルの殻は、加熱されると溶けて液体エアロゾル形成基材を多孔性担体材料内に放出することが好ましい。随意的に、カプセルは、液体エアロゾル形成基材と一緒に固形エアロゾル形成基材を含むことができる。
【0056】
代替的に、担体は、タバコ成分が組み込まれた不織布又は繊維束とすることができる。不織布又は繊維束は、例えば、炭素繊維、天然セルロース繊維、又はセルロース誘導体繊維を含むことができる。
【0057】
エアロゾル発生システムは空気入口を備えることができる。エアロゾル発生システムは空気出口を備えることができる。エアロゾル発生システムは、所望の特性を有するエアロゾルを形成可能とするための凝縮チャンバを備えることができる。
【0058】
各実施形態は、以下に添付図面を参照して例示的に詳細に説明される。