【実施例】
【0092】
以下の実験において、L−グルタミン酸、グルタミン酸Na及びアスパラギン酸Naは味の素社から入手したものを、L−アスパラギン酸は米国ajinomoto社から入手したものを使用した。また、D−グルタミン酸及びD−アスパラギン酸は広島和光社から入手したものを使用した。また、食塩は日本海水社から入手した「精製塩」を、塩化カリウムは富田製薬社から入手した「塩化カリウム(顆粒)」を使用した。
【0093】
実験1
(試料)
水500g中に市販の合わせ出汁の素(天然だしの素パック かね七株式会社)1パック(8g)を加え、沸騰まで加熱し、沸騰したら中火で5分間煮出して、合わせ出汁を作成した。
【0094】
合わせ出汁に、0.55重量%となる量の食塩(NaCl)と、該食塩とモル等量となる量(0.70重量%)の塩化カリウム(KCl)を添加した。すなわち、この試料における食塩相当量は1.1重量%である。この試料をベース(試料A)とした。
【0095】
そのベースにおいて塩化カリウムに対してグルタミン酸を7重量%(試料B)、35重量%(試料C)、グルタミン酸Naを7重量%(試料D)、35重量%(試料E)となる量含有する試料をそれぞれ作成し、パネル6名で評価した。
【0096】
評価する際には、同様の合わせ出汁に、1.1重量%となる量の食塩(NaCl)を添加した試料(食塩100%試料)も作成し、試料A〜試料Eについて「食塩100%試料に近いか」「異味」「旨味」「酸味」について、VASを用いて評価し、結果については二元配置分散分析で解析を行った。
【0097】
(結果)
【表1】
【0098】
(考察)
異味について、グルタミン酸Naを添加した試料D, EはコントロールA(異味有り)と有意差がなかった。一方で、グルタミン酸を添加した試料B, Cは、コントロールAの異味を有意に低減したことが確認された。
【0099】
このことから、グルタミン酸Naが塩化カリウムの異味を低減する効果を有していないのに対して、グルタミン酸は異味低減効果を有していると結論付けられる。
【0100】
酸味は、グルタミン酸を添加した試料B, Cが有意差有りで強いことが確認された。
【0101】
「食塩100%試料に近いか」の質問では、食塩100%試料の味に最も近いと評価されたのは、グルタミン酸を塩化カリウムに対して7重量%添加した試料Bであった。グルタミン酸を塩化カリウムに対して35重量%添加した試料Cは、有意差有りで近くないと評価された。このことから、グルタミン酸の添加量としては、塩化カリウムに対して7重量%のほうが35重量%よりも好ましいと結論付けられる。
【0102】
実験2
実験1と同様に調製した合わせ出汁に、0.55重量%となる量の食塩(NaCl)、該食塩とモル等量となる量(0.70重量%)の塩化カリウム(KCl)、及びグルタミン酸等の他の成分を表2に示す量添加した試料(実施例1〜17と比較例1〜9)を作成し、官能評価を行った。表2に示す配合量の単位はいずれも重量%である。なお、実施例1は実験1の試料Bと、比較例1は実験1の試料Aと、比較例2は実験1の試料Cと、比較例4は実験1の試料Dと、比較例5は実験1の試料Eと、それぞれ同一の配合である。
【0103】
官能評価は、塩化カリウムの異味が消えているかどうか、不自然な酸味が付与されていなかどうかについて、パネル4名で評価した。
【0104】
結果は以下の通り。
【表2-1】
【0105】
【表2-2】
【0106】
実験3:カレー
表3に示す配合に従いカレールウを作成した。
【0107】
フライパンで油を熱してから小麦粉を入れて炒めた。キツネ色(130℃達温)になったら、フライパンを火から下ろしてその余熱でカレーパウダーを加えて炒めた。こうしてカレールウを得た。
【0108】
次いで表4に示す配合に従いカレー1〜3を作成した。まず、肉と野菜を適当な大きさに切り、玉葱、肉、イモ、人参の順に油で炒めた。炒めた後、水を入れて煮込んだ。
【0109】
カレールウを煮込みでのばし、各材料と一緒に弱火で煮込んで食塩と砂糖で調味した。
【表3】
【表4】
【0110】
炊き上げ後のカレー1〜3の評価結果は以下の通りであった。
【0111】
カレー1(NaClのみ):旨味, 酸味が欲しい味のバランスだが、風味として問題無し。
【0112】
カレー2(NaCl:KCl=1:1(モル比)):旨味などの味がまとめて抜け落ちており、中盤以降ぐらいから舌の裏の両脇あたりに異味を感じ、後まで引きずる。
【0113】
カレー3(NaCl:KCl=1:1(モル比),グルタミン酸とアルパラギン酸がKClに対してそれぞれ3.5重量%):味の抜け落ちはあるが、異味は消えている。
【0114】
122℃25分間のレトルト加熱殺菌処理後のカレー1〜3の評価結果は以下の通りであった。
【0115】
カレー1(NaClのみ):炊き上げ前と同様の傾向で足したい味はあるが、風味として問題無し。
【0116】
カレー2(NaCl:KCl=1:1(モル比)):旨味などの味がまとめて抜け落ちており、中盤以降から舌の裏の両脇あたりに異味を感じ、後まで引きずる。
【0117】
カレー3(NaCl:KCl=1:1(モル比),グルタミン酸とアルパラギン酸がKClに対してそれぞれ3.5重量%):味の抜け落ちはあるが、異味は消えている。
【0118】
実験4:シチュー
表5に示す配合に従いシチュー用のルウを作成した。フライパンでバターを熱してから小麦粉を入れて炒めた。粉臭さが消えてクッキー臭がしたとき終点とした(品温130℃くらい)。次いで氷水で冷やした。
【0119】
得られたルウを用いて表6に示す配合に従いベシャメルを作成した。まず、バターの溶解温度以上、小麦粉の糊化温度以下になるようにルウと牛乳を合わせて混ぜた。粉臭さが消え、ソースに照りが出たら、パッセして完成させた。収量は1600gであった。
【0120】
次いで、表7に示す配合に従いシチュー1〜3を作成した。鶏肉と野菜を適当な大きさに切り、まず鶏肉をフライパンで炒めた。炒めたフライパンで玉葱、じゃがいも、人参を炒めた。鍋に各具材、ベシャメルを加え、お湯(グルタミン酸, アスパラギン酸はこの中に)で伸ばして、食塩、塩化カリウム、胡椒により調味して完成させた。
【0121】
【表5】
【表6】
【表7】
【0122】
炊き上げ後のシチュー1〜3の評価結果は以下の通りであった。
【0123】
シチュー1(NaClのみ):問題無し。
【0124】
シチュー2(NaCl:KCl=1:1(モル比)):旨味などの味がまとめて抜け落ち、中盤以降ぐらいから舌の裏の両脇あたりに異味を感じる。カレーよりも明らかに強い。
【0125】
シチュー3(NaCl:KCl=1:1(モル比),グルタミン酸とアルパラギン酸がKClに対してそれぞれ3.5重量%): 旨味などの味の抜け落ちはあるが、異味は消えている。
【0126】
122℃25分間のレトルト加熱殺菌処理後のシチュー1〜3の評価結果は以下の通りであった。
【0127】
シチュー1(NaClのみ): レトルト殺菌による褐変の風味が乗っているが問題無し。
【0128】
シチュー2(NaCl:KCl=1:1(モル比)): 旨味などの抜け落ちは同様。炊き上げ前よりも少し異味は減少しているが、数口食べ続けると異味が蓄積されてくる。
【0129】
シチュー3(NaCl:KCl=1:1(モル比),グルタミン酸とアルパラギン酸がKClに対してそれぞれ3.5重量%):旨味などの抜け落ちは同様。食べ続けても異味は出てこない。
【0130】
実験5:ラーメンスープ
表8に示す配合に従い鶏ダシを作成した。まず水中に鶏肉を加え、強火で加熱し、沸騰させて灰汁を取った。灰汁を取った後、青ねぎを加えて弱火で煮込んだ。1.5時間煮込み、味が出たのち、漉し、鶏ダシを得た。収量は2250gであった。
【0131】
得られた鶏ダシと他の材料とを表9に示す配合に従い全て混ぜ合わせてラーメンスープ1〜3を完成させた。
【0132】
【表8】
【表9】
【0133】
ラーメンスープ1〜3の評価結果は以下の通りであった。
【0134】
スープ1(NaClのみ):問題無し。
【0135】
スープ2(NaCl:KCl=1:1(モル比)):旨味などの抜け落ちはシチュー, カレーと同様。鶏ダシの香りも弱まっている。舌の裏の両脇あたりに異味を感じ、後まで引きずる。
【0136】
スープ3(NaCl:KCl=1:1(モル比),グルタミン酸とアルパラギン酸がKClに対してそれぞれ3.5重量%):旨味などの抜け落ちは同様。異味は感じられず、少し塩味が強くなったように感じる。また鶏ダシの風味も強く感じる。
【0137】
実験6:食用塩(フライドポテト)
表10に示す配合に従い各材料を混ぜ合わせ食用塩1〜3を作成した。
【表10】
【0138】
食用塩1〜3を、揚げたフライドポテトに付けて食べた。評価結果は以下の通りであった。
【0139】
食用塩1(NaClのみ):問題無し。
【0140】
食用塩2(NaCl:KCl=1:1(モル比)):食べられないことは無いが、食べ続けると異味が蓄積されてくる。沢山食べられない。
【0141】
食用塩3(NaCl:KCl=1:1(モル比),グルタミン酸とアルパラギン酸がKClに対してそれぞれ3.5重量%):異味が消えている。抵抗無く食べられる。
【0142】
実験7:レトルトカレー
表11に示す配合に従い小麦粉ルウを作成した。
【0143】
60℃で溶かしたラードに小麦粉を加え、130℃達温まで加熱した。達温後に、カレーパウダーを加えて余熱で炒めた。こうして小麦粉ルウを得た。
【0144】
次いで表12に示す配合に従いレトルトカレーを作成した。まず、ボイル牛肉、人参、ジャガイモを除いた表12の原料を計量、混合して得られた混合物を95℃達温まで加熱した。加熱が終わったソースとボイル牛肉、人参、ジャガイモをレトルトパウチに充填し、122℃25分レトルト殺菌をした後、評価を行った。評価結果を表12に示す。
【0145】
なお配合を示す表中の数値は、特に断りのない限り質量(単位:g)を意味する。下記の実験8〜14での表についても同様である。
【0146】
また、表中の「酢酸, 乳酸量/塩化ナトリウム」とは、塩化ナトリウム相当量(1重量部)に対する酢酸及び乳酸の合計量の比率を意味する。
【0147】
【表11】
【0148】
【表12-1】
【0149】
【表12-2】
【0150】
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は 酸味が強すぎる。
【0151】
実験8:レトルトシチュー
表13に示す配合に従いレトルトシチューを作成した。まず、ボイル鶏肉、人参、ジャガイモを除いた表13に示す原料を計量、混合して得られた混合物を95℃達温まで加熱した。加熱が終わったソースとボイル鶏肉、人参、ジャガイモをレトルトパウチに充填し、122℃25分レトルト殺菌をした後、評価を行った。評価結果を表13に示す。
【0152】
【表13-1】
【0153】
【表13-2】
【0154】
表13中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は 酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は 酸味が強すぎる。
【0155】
実験9:ルウカレー
以下の手順によりルウカレーを調製した。
【0156】
表14に示す原料を混合して第一配合を調製し、それを用いて表15に示す種配合を調製した。表16に示す原料を混合して混合粉体を調製した。表17に示す原料を混合し、115℃達温まで30分間加熱して小麦粉ルウを調製した。
【0157】
表18に示す仕上げ配合に従ってルウを調製した。牛脂豚脂混合油脂、小麦粉ルウを投入して95℃まで達温させた。95℃になった後、カレーパウダー、種配合、混合粉体を投入した。105℃達温で加熱を完了した。加熱された混合物を冷却固化して得られたルウ40gに対して、お湯300gを加え、火にかけて溶解し、沸騰するまで加熱したものを評価した。評価結果を表19に示す。
【0158】
【表14】
【0159】
【表15】
【0160】
【表16】
【0161】
【表17】
【0162】
【表18】
【0163】
【表19】
【0164】
表18、19中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は 酸味が強すぎる。
【0165】
実験10:ルウシチュー
以下の手順によりルウシチューを調製した。
【0166】
表20、21に示す原料を混合して第一配合、第二配合を調製し、それらを用いて表22に示す種配合を調製した。表23に示す原料を計量、混合して混合粉体を調製した。表24に示す原料を115℃達温まで30分間加熱して小麦粉ルウを調製した。
【0167】
表25に示す仕上げ配合に従ってルウを調製した。小麦ルウ、牛脂豚脂混合油脂を投入し、80℃達温まで加熱した。加熱された混合物を冷却固化して得られたルウ48gに対して、お湯300gを加え、火にかけて溶解し、沸騰まで加熱したものを評価した。評価結果を表26に示す。
【0168】
【表20】
【0169】
【表21】
【0170】
【表22】
【0171】
【表23】
【0172】
【表24】
【0173】
【表25】
【0174】
【表26】
【0175】
表25、26中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は、酸味が強すぎる。
【0176】
実験11:粉末スープ
表27に示す全ての原料を混合し粉末スープを調製した。
【0177】
得られた粉末スープ10gを350mlの沸騰したお湯に添加してスープを調製し、評価を行った。評価結果を表28に示す。
【0178】
【表27】
【0179】
【表28】
【0180】
表27,28中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は、酸味が強すぎる。
【0181】
実験12:スナック(フライドポテト)
油を180℃前後に熱し、凍ったままのポテトシューストリングを入れた。約3分間、ポテトがキツネ色になるまで加熱して、表29に示す配合のフライドポテトを調製した。
【0182】
表30に示す原料を袋の中で混ぜ合わせ、分散させてフリカケを調製した。
【0183】
表31に示す配合に従ってフライドポテトとフリカケを袋の中に入れ振り混ぜて。着味されたフライドポテトを調製し、評価を行った。評価結果を表32に示す。
【0184】
【表29】
【0185】
【表30】
【0186】
【表31】
【0187】
【表32】
【0188】
表31,32中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は、酸味が強すぎる。
【0189】
実験13:調味塩
表33に示す全ての原料を混合し調味塩を調製し、評価を行った。評価結果を表34に示す。
【0190】
【表33】
【0191】
【表34】
【0192】
表33,34中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は、酸味が強すぎる。
【0193】
実験14:液体調味料(和風ドレッシング)
表35に示す全ての原料を混合し、混合物を80℃達温まで加熱し、冷却して和風ドレッシングを調製した。和風ドレッシングの評価を行った。評価結果を表36に示す。
【0194】
【表35】
【0195】
【表36】
【0196】
表35,36中の評価指標:
◎…塩味(先味〜後味)全体をバランス良く補うことができている。
○…塩味(先味〜後味)全体を補うことができている。
△…形としては少し足りないが塩味全体を補うことが出来ている 又は、酸味があるが許容範囲。
×…塩味が足りない 又は、酸味が強すぎる。
【0197】
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。