【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、N≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に向けてデータを送信するための、M≧1個の送信アンテナを具備する送信装置に使用される無線送信方法に関するものであって、前記データは、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信され、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、前記送信装置はNステップを実行し、ステップ番号pは、p=0,1,…,N-1である、無線送信方法であって、前記方法は、
− 符号化データベクトル
【0008】
【数1】
【0009】
へ、N個の実数要素を有するデータベクトルX
(l)の符号化をするステップ(E1_p)であって、ここで、A
(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0010】
【数2】
【0011】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、ステップと、
【0012】
− 副搬送波lについて前記送信装置を前記受信装置にリンクするMIMOチャネルの伝送行列の推定
【0013】
【数3】
【0014】
を使用するとともに、n番目の受信アンテナ上に、前記符号化データベクトルW
(l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、前記副搬送波lでM個の送信アンテナのそれぞれによって前記符号化データベクトルW
(l,p)を送信するステップ(E2_p)であって、ここで、n=1,2,…,N、であるステップと、
を含む。
【0015】
相関的に、本発明は、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信されたデータを受信するためのN≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に使用される無線受信方法に関するものである。前記無線受信方法は、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、
a) 前記受信装置は、第1に、下記のサブステップを含む、Nステップを実行するステップであって、ステップ番号pは、p=0,1,…,N-1である、ステップと、
− OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の実数要素を有する受信ベクトルY
(l,p)を判断するステップ(R1_p)であって、N番目の要素、ここで、n=1,2,…,N、は、前記N番目の受信アンテナで受信された副搬送波lに関連するシンボルに等しい、ステップと、
− 符号化受信ベクトル
【0016】
【数4】
【0017】
へ前記受信ベクトルY
(l,p)を符号化するステップ(R2_p)であって、ここで、A
(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0018】
【数5】
【0019】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、ステップと、
b) 前記受信装置が復号化可能ベクトル
【0020】
【数6】
【0021】
を算出する(R3)ステップと、
c) 前記受信装置がT
(l)=S
(l)・F
(l)の数式のように復号化データベクトルT
(l)を算出するステップであって、
ここで、S
(l)=(R
(l))
-1であるとともに、R
(l)は、前記副搬送波lについての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列であり、
F
(l)=R
(l)・X
(l)+B
(l)
によって定義され、ここで、B
(l)は熱雑音項である。
【0022】
また、本発明は、上記の無線送信方法の各ステップを含むとともに、上記の無線受信方法の各ステップを含み、前記ステップ番号pが、前記送信装置と前記受信装置との間で同期する、ここで、p=0,1,…,N-1である、ことを特徴とする無線通信方法、に関するものである。
【0023】
また、復号化されたシンボル間での干渉がなく、伝送されたデータベクトルX
(l)と等しくなるように、復号化データベクトルT
(l)が得られる、と(理論的に)示すことができる。上記で説明したように得られる復号化データベクトル
(l)は、(チャンネル歪みがなく)データベクトルX
(l)と等しくなるように、送信装置から受信装置へ向けて送信される。
【0024】
したがって、上記で説明した方法は、時間反転によるプレコーディングを使用して本発明で特定されるように符号化/復号化を結合する。本発明に係るこの結合は、OFDM/OQAM変調の利点から、特にスペクトル効率について、利益を得ることを可能にする。データの1つの実施要素を伝送するために、平均して、副搬送波ごとの伝送に、N実数要素を含む、前記ベクトルX
(l)のN個の異なるコードが、連続して伝送されることに留意されたい。さらに、本発明は、MIMOシステムの空間的ダイバーシティを利用することが可能になる。最終的に、前記受信方法の実施では、好都合に、送信アンテナまたは受信アンテナの数に拘わらず、受信装置のレベルにおいて比較的に低い複雑さを必要とする。特に、実行されるべき数学的操作(行列の循環、行列積、および、まれに行列反転)は、低い複雑さである。
【0025】
比較するために、C.Lele, P. Siohan and R. Legouable による「The Alamouti Scheme with CDMA-OFDM/OQAM(Eurasip Journal on Advances in Signal Processing, No. 8, 2010)」と題された論文を参照する。この論文では、2つの送信アンテナと1つの受信アンテナを含む、MISOシステムへのOFDM/OQAM変調の適用(the initials standing for "Multiple Input Single Output)を提案している。この技術は、「Alamoutiコード」と呼ばれる、特定のコードに基づいている。ここで、この技術は、シンボル間で干渉を起こし(より正確には、実数領域でのシンボル間の直交性を容認するが、虚数領域でのシンボル間の直交性は容認しない)、そのような干渉の除去は簡易な方法ではできない。より多くの受信アンテナ(MIMOのケースで)を使用した場合、前記処理は、この技術によって生ずる干渉を除去する必要のために、より複雑となる。
【0026】
この点において、本発明に係る結合は、非常に有利であり、時間反転によるプレコーディングを使用した符号化/復号化(「Alamoutiコード」とは完全に異なっている)は、送信アンテナまたは受信アンテナの数に拘わらず、復号化後に得られたシンボル間の干渉を回避することができる。
【0027】
特定の特性に従い、前記符号化ベクトルA
(l)、全ての要素が他の要素に相互に等しくなる。変形例として、受信アンテナの数が偶数である場合、前記符号化ベクトルA
(l)は、偶数インデックスの成分が相互に等しく、且つ、奇数インデックスの成分が相互に等しいとともに前記偶数インデックスの成分の反対である。
【0028】
これらの形態によれば、上記の2つの変形例において、等価チャネルR
(l)の行例は循環行列であるとともに、したがって、まったく複雑でない要件において、その逆を実施することもできる。
【0029】
相関的に、本発明は、各種の装置に関するものである。
【0030】
前記装置に関するものとして、M≧1個の送信アンテナを具備する無線送信装置であって、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって、N≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に向けてデータを送信するための手段を有する無線送信装置が挙げられる。前記無線送信装置は、特に、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、さらに、
− 符号化データベクトルへ
【0031】
【数7】
【0032】
へ、p=0,1,…,N-1について、N実数要素を有するデータベクトルX
(l)の符号化するための手段であって、ここで、A
(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0033】
【数8】
【0034】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、符号化するための手段と、
【0035】
− 副搬送波lについて前記無線送信装置を前記無線受信装置にリンクするMIMOチャネルの伝送行列の推定
【0036】
【数9】
【0037】
を使用するとともに、n番目の受信アンテナ上に、前記符号化データベクトルW
(l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、前記副搬送波lでM個の送信アンテナのそれぞれによって前記符号化データベクトルW
(l,p)を、p=0,1,…,N-1、について、送信するための手段であって、n=1,2,…,N,である、手段と、を有する。
【0038】
また、本発明は、第2に、N≧2個の受信アンテナを具備する無線受信装置であって、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信されたデータを受信するための手段を有する無線受信装置に関するものである。前記無線受信装置は、特に、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、さらに、
− OFDM/OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の実数要素を有する受信ベクトルY
(l,p)を判断するための手段であって、N番目の要素、ここで、n=1,2,…,N、は、前記N番目の受信アンテナで受信された副搬送波lに関連するシンボルに等しい、手段と、
− 符号化受信ベクトル
【0039】
【数10】
【0040】
へ前記受信ベクトルY
(l,p)を符号化するための手段であって、ここで、A
(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0041】
【数11】
【0042】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、手段と、
− 復号化可能ベクトル
【0043】
【数12】
【0044】
を算出するための手段と、
【0045】
− 下記数式のように復号化データベクトルT
(l)を算出するための手段であって、ここで、S
(l)=(R
(l))
-1であるとともに、R
(l)は、前記副搬送波lについての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列であり、
F
(l)=R
(l)・X
(l)+B
(l)
によって定義され、ここで、B
(l)は熱雑音項である、手段と、を有する。
【0046】
これらの装置によって得られる利点は、上記で簡素に説明した対応する方法によって得られる利点と本質的に同一である。
【0047】
これらの装置は、ソフトウェア命令のコンテキストおよび/または電子回路のコンテキストで実施することが可能である、ことに留意されたい。
【0048】
また、本発明は、上記の無線送信装置と上記の無線受信装置を有するとともに、前記無線送信装置および前記無線受信装置は、相互に同期することができる構成となっている、無線通信システムに関するものである。
【0049】
また、本発明は、通信ネットワークからダウンロード可能なコンピュータプログラム、および/または、コンピュータによって読み取り可能な媒体に保存されるコンピュータプログラム、および/または、マイクロプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム、を提供する、ことを目的としている。このコンピュータプログラムは、特に、上記された無線送信方法の各ステップ、または、上記された無線受信方法の各ステップ、または、上記された無線通信方法の各ステップ、をコンピュータ上で実行するための命令を有する。
【0050】
このコンピュータプログラムによて得られる利点は、上記の対応方法で得られる利点と本質的に同一である。
【0051】
本発明の他の特徴および利点は、単なる例示であって、下記で詳細に説明される特定の実施形態によってより明らかとなる。本発明についての図面の簡単な説明を以下に示す。