特許第6143844号(P6143844)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143844マルチアンテナの受信装置を使用する無線通信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143844
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】マルチアンテナの受信装置を使用する無線通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04J 99/00 20090101AFI20170529BHJP
   H04L 27/26 20060101ALI20170529BHJP
   H04B 7/04 20170101ALI20170529BHJP
   H04B 7/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   H04J15/00
   H04L27/26 312
   H04B7/04
   H04B7/06
【請求項の数】12
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-507574(P2015-507574)
(86)(22)【出願日】2013年4月16日
(65)【公表番号】特表2015-519805(P2015-519805A)
(43)【公表日】2015年7月9日
(86)【国際出願番号】FR2013050833
(87)【国際公開番号】WO2013160582
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】1253922
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591034154
【氏名又は名称】オランジュ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ディン・トゥイー・ファン・フイ
【審査官】 岡 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−541524(JP,A)
【文献】 特表2015−519805(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0087382(US,A1)
【文献】 Nizar Zorba et al.,Spatial Diversity Scheme to Efficiently Cancel ISI and ICI in OFDM-OQAM Systems,Journal of Computer Systems, Networks, and Communications,2010年
【文献】 Miquel Payaro et al.,Performance Comparison between FBMC and OFDM in MIMO Systems under Channel Uncertainty,2010 European Wireless Conference,2010年,pp.1023-1030
【文献】 Dinh-Thuy Pahn-Huy et al.,"Make-It-Real" Precoders for MIMO OFDM/OQAM without inter carrier interference,Global Communication Conference(GLOBECOM), 2013,IEEE,2013年,pp.3920-3924
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 99/00
H04B 7/04
H04B 7/06
H04J 11/00
H04L 27/26
IEEE Xplore
CiNii
3GPP TSG RAN WG1−4
SA WG1−2
CT WG1
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に向けてデータを送信するための、M≧1個の送信アンテナを具備する送信装置に使用される無線送信方法であるとともに、前記データは、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信され、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、前記送信装置はNステップを実行し、ステップ番号pは、p=0,1,…,N-1である、無線送信方法であって、前記方法は、
− 符号化データベクトル
【数1】
へ、N個の実数要素を有するデータベクトルX(l)の符号化をするステップ(E1_p)であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【数2】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、符号化をするステップと、
− 副搬送波lについて前記送信装置を前記受信装置にリンクするMIMOチャネルの伝送行列の推定
【数3】
を使用するとともに、n番目の受信アンテナ上に、前記符号化データベクトルW(l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、前記副搬送波lでM個の送信アンテナのそれぞれによって前記符号化データベクトルW(l,p)を送信するステップ(E2_p)であって、ここで、n=1,2,…,N、であるステップと
を含む、ことを特徴とする無線送信方法。
【請求項2】
前記符号化ベクトルA(l)は、該ベクトルの全ての要素が相互に等しい、ことを特徴とする請求項1に記載の無線送信方法。
【請求項3】
前記受信アンテナNの数は偶数であり、前記符号化ベクトルA(l)は、偶数インデックスの成分が相互に等しく、且つ、奇数インデックスの成分が相互に等しいとともに前記偶数インデックスの成分の反対である、ことを特徴とする請求項1に記載の無線送信方法。
【請求項4】
L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信されたデータを受信するためのN≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に使用される無線受信方法であって、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、
a) 前記受信装置は、第1に、下記のサブステップを含む、Nステップを実行するステップであって、ステップ番号pは、p=0,1,…,N-1である、ステップと、
OFDM/OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の実数要素を有する受信ベクトルY(l,p)を判断するステップ(R1_p)であって、N番目の要素、ここで、n=1,2,…,N、は、前記N番目の受信アンテナで受信された副搬送波lに関連するシンボルに等しい、ステップと、
− 符号化受信ベクトル
【数4】
へ前記受信ベクトルY(l,p)を符号化するステップ(R2_p)であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【数5】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、ステップと、
b) 前記受信装置が復号化可能ベクトル
【数6】
を算出する(R3)ステップと、
c) 前記受信装置がT(l)=S(l)・F(l)の数式ように復号化データベクトルT(l)を算出する(R4)ステップであって、
ここで、S(l)=(R(l))-1であるとともに、R(l)は、前記副搬送波lについての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列であり、
F(l)=R(l)・X(l)+B(l)
によって定義され、ここで、B(l)は熱雑音項である、ことを特徴とする無線受信方法。
【請求項5】
前記符号化ベクトルA(l)は、該ベクトルの全ての要素が相互に等しい、ことを特徴とする請求項4に記載の無線受信方法。
【請求項6】
前記受信アンテナNの数は偶数であり、前記符号化ベクトルA(l)は、偶数インデックスの成分が相互に等しく、且つ、奇数インデックスの成分が相互に等しいとともに前記偶数インデックスの成分の反対である、ことを特徴とする請求項4に記載の無線受信方法。
【請求項7】
請求項1に記載の無線送信方法の各ステップを含むとともに、請求項4に記載の無線受信方法の各ステップを含み、前記ステップ番号pが、前記送信装置と前記受信装置との間で同期する、ここで、p=0,1,…,N-1である、ことを特徴とする無線通信方法。
【請求項8】
M≧1個の送信アンテナを具備する無線送信装置であるとともに、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって、N≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に向けてデータを送信するための手段を有する無線送信装置であって、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、前記無線送信装置は、さらに、
− 符号化データベクト
【数7】
へ、p=0,1,…,N-1について、N実数要素を有するデータベクトルX(l)の符号化するための手段であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【数8】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、符号化するための手段と、
− 副搬送波lについて前記無線送信装置を前記受信装置にリンクするMIMOチャネルの伝送行列の推定
【数9】
を使用するとともに、n番目の受信アンテナ上に、前記符号化データベクトルW(l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、前記副搬送波lでM個の送信アンテナのそれぞれによって前記符号化データベクトルW(l,p)を、p=0,1,…,N-1、について、送信するための手段であって、n=1,2,…,N,である、手段と
を備える、ことを特徴とする無線送信装置。
【請求項9】
N≧2個の受信アンテナを具備する無線受信装置であるとともに、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信されたデータを受信するための手段を有し、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、さらに、OFDM/OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の実数要素を有する受信ベクトルY(l,p)を判断するための手段であって、N番目の要素、ここで、n=1,2,…,N、は、前記N番目の受信アンテナで受信された副搬送波lに関連するシンボルに等しい、手段と、
− 符号化受信ベクトル
【数10】
へ前記受信ベクトルY(l,p)を符号化するための手段であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【数11】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、手段と、
− 復号化可能ベクトル
【数12】
を算出するための手段と、
− T(l)=S(l)・F(l) の数式のように復号化データベクトルT(l)を算出するための手段であって、ここで、S(l)=(R(l))-1であるとともに、R(l)は、前記副搬送波lについての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列であり、
F(l)=R(l)・X(l)+B(l)
によって定義され、ここで、B(l)は熱雑音項である、手段と
を有することを特徴とする無線受信装置。
【請求項10】
請求項8に記載の無線送信装置と請求項9に記載の無線受信装置を有するとともに、前記無線送信装置および前記無線受信装置は、相互に同期することができる構成となっている、ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項11】
ータを格納するための手段であって、前記データは、請求項1に記載された無線送信方法の各ステップ、または、請求項4に記載された無線受信方法の各ステップ、または、請求項7に記載された無線通信方法の各ステップ、の実行を命令するコンピュータプログラムコードを含む、データを格納するための手段。
【請求項12】
請求項1に記載された無線送信方法の各ステップ、または、請求項4に記載された無線受信方法の各ステップ、または、請求項7に記載された無線通信方法の各ステップ、を実行するための命令を有することを特徴とする、通信ネットワークからダウンロード可能なコンピュータプログラム、および/または、マイクロプロセッサによって読み取り可能な媒体に保存されるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信に関するものであり、特に、IEEE 802.11、IEEE 802.16、3GPP LTE Advanced, and DVB基準に従った無線通信に関するものである。より正確には、本発明は、1つ以上の送信アンテナを具備する送信装置と、少なくとも2つの受信アンテナを具備する受信装置とを含むデータ通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなシステムは、前記システムが1つのみの送信アンテナを具備するとき、SIMO(「Single Input Multiple Output」のイニシャルを示す)と呼ばれ、前記システムが複数の送信アンテナを具備するとき、MIMO(「Multiple Input Multiple Output」のイニシャルを示す)と呼ばれる。
【0003】
関連するSISO(「Single Input Single Output」のイニシャルを示す)システムは、1つの送信アンテナと1つの受信アンテナとを有し、SIMO/MIMOシステムの利点は、伝搬チャネルの空間ダイバーシティによって得られ、得られた送信電力に対する伝送エラーのレートを低下させることによって伝送されるデータの品質を改善する。この点に関して、前記いわゆる「空間ダイバーシティ」技術は、1つ以上の送信アンテナから全く同一のメッセージを同時に送信し、次いで、各受信アンテナで受信された各信号を適切に結合する。
【0004】
さらに、いわゆるOFDM変調(「Orthogonal Frequency Division Multiplexing」のイニシャルを示す)は、データシンボル間の干渉を効率的に低減する。さらに、OFDMは、実装することが比較的に極めて簡素であり、特に、OFDM信号変調は、逆高速フーリエ変換((IFFT)手段によって効率的な方法で実行することができ、OFDM信号の復調は、ダイレクト高速フーリエ変換手段(FFT)によって効率的な方法で実行することができる。しかしながら、OFDM変調は、非常に効率が悪いという欠点がある(「周期的な事前準備(cyclic prefix)」を使用するため)。
【0005】
他の変調方式は、「OFDM/OQAM」と呼ばれ、スペクトル効果による利点を有するように提案されているが(OFDMと比較して、如何なる周期的な事前準備を必要としないので)、非常に簡素な構成(「Offset Quadrature Amplitude Modulation」のイニシャルOQAMを示す))でシンボル間の干渉(OFDMのような)を回避する。
【0006】
特に、P. Siohanと、C. Sicletと、N. Lacailleによる「Analysis and Design of OFDM/OQAM Systems Based on Filterbank Theory」と題した論文(IEEE Transactions on Signal Processing, vol. 50 No. 5, pages 1170 to 1183, May 2002)では、IFFT手段によってOFDM/OQAM変調の実行が可能であるとともに、FFT手段によるOFDM/OQAM復調の実行が可能であることが示されている。残念ながら、この論文に示された技術は、特に、SISOシステムに関するものであり、また、SIMO/MIMOシステムの空間ダイバーシティからの利益を得ることができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、N≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に向けてデータを送信するための、M≧1個の送信アンテナを具備する送信装置に使用される無線送信方法に関するものであって、前記データは、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信され、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、前記送信装置はNステップを実行し、ステップ番号pは、p=0,1,…,N-1である、無線送信方法であって、前記方法は、
− 符号化データベクトル
【0008】
【数1】
【0009】
へ、N個の実数要素を有するデータベクトルX(l)の符号化をするステップ(E1_p)であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0010】
【数2】
【0011】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、ステップと、
【0012】
− 副搬送波lについて前記送信装置を前記受信装置にリンクするMIMOチャネルの伝送行列の推定
【0013】
【数3】
【0014】
を使用するとともに、n番目の受信アンテナ上に、前記符号化データベクトルW(l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、前記副搬送波lでM個の送信アンテナのそれぞれによって前記符号化データベクトルW(l,p)を送信するステップ(E2_p)であって、ここで、n=1,2,…,N、であるステップと、
を含む。
【0015】
相関的に、本発明は、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信されたデータを受信するためのN≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に使用される無線受信方法に関するものである。前記無線受信方法は、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、
a) 前記受信装置は、第1に、下記のサブステップを含む、Nステップを実行するステップであって、ステップ番号pは、p=0,1,…,N-1である、ステップと、
− OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の実数要素を有する受信ベクトルY(l,p)を判断するステップ(R1_p)であって、N番目の要素、ここで、n=1,2,…,N、は、前記N番目の受信アンテナで受信された副搬送波lに関連するシンボルに等しい、ステップと、
− 符号化受信ベクトル
【0016】
【数4】
【0017】
へ前記受信ベクトルY(l,p)を符号化するステップ(R2_p)であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0018】
【数5】
【0019】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、ステップと、
b) 前記受信装置が復号化可能ベクトル
【0020】
【数6】
【0021】
を算出する(R3)ステップと、
c) 前記受信装置がT(l)=S(l)・F(l)の数式のように復号化データベクトルT(l)を算出するステップであって、
ここで、S(l)=(R(l))-1であるとともに、R(l)は、前記副搬送波lについての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列であり、
F(l)=R(l)・X(l)+B(l)
によって定義され、ここで、B(l)は熱雑音項である。
【0022】
また、本発明は、上記の無線送信方法の各ステップを含むとともに、上記の無線受信方法の各ステップを含み、前記ステップ番号pが、前記送信装置と前記受信装置との間で同期する、ここで、p=0,1,…,N-1である、ことを特徴とする無線通信方法、に関するものである。
【0023】
また、復号化されたシンボル間での干渉がなく、伝送されたデータベクトルX(l)と等しくなるように、復号化データベクトルT(l)が得られる、と(理論的に)示すことができる。上記で説明したように得られる復号化データベクトル(l)は、(チャンネル歪みがなく)データベクトルX(l)と等しくなるように、送信装置から受信装置へ向けて送信される。
【0024】
したがって、上記で説明した方法は、時間反転によるプレコーディングを使用して本発明で特定されるように符号化/復号化を結合する。本発明に係るこの結合は、OFDM/OQAM変調の利点から、特にスペクトル効率について、利益を得ることを可能にする。データの1つの実施要素を伝送するために、平均して、副搬送波ごとの伝送に、N実数要素を含む、前記ベクトルX(l)のN個の異なるコードが、連続して伝送されることに留意されたい。さらに、本発明は、MIMOシステムの空間的ダイバーシティを利用することが可能になる。最終的に、前記受信方法の実施では、好都合に、送信アンテナまたは受信アンテナの数に拘わらず、受信装置のレベルにおいて比較的に低い複雑さを必要とする。特に、実行されるべき数学的操作(行列の循環、行列積、および、まれに行列反転)は、低い複雑さである。
【0025】
比較するために、C.Lele, P. Siohan and R. Legouable による「The Alamouti Scheme with CDMA-OFDM/OQAM(Eurasip Journal on Advances in Signal Processing, No. 8, 2010)」と題された論文を参照する。この論文では、2つの送信アンテナと1つの受信アンテナを含む、MISOシステムへのOFDM/OQAM変調の適用(the initials standing for "Multiple Input Single Output)を提案している。この技術は、「Alamoutiコード」と呼ばれる、特定のコードに基づいている。ここで、この技術は、シンボル間で干渉を起こし(より正確には、実数領域でのシンボル間の直交性を容認するが、虚数領域でのシンボル間の直交性は容認しない)、そのような干渉の除去は簡易な方法ではできない。より多くの受信アンテナ(MIMOのケースで)を使用した場合、前記処理は、この技術によって生ずる干渉を除去する必要のために、より複雑となる。
【0026】
この点において、本発明に係る結合は、非常に有利であり、時間反転によるプレコーディングを使用した符号化/復号化(「Alamoutiコード」とは完全に異なっている)は、送信アンテナまたは受信アンテナの数に拘わらず、復号化後に得られたシンボル間の干渉を回避することができる。
【0027】
特定の特性に従い、前記符号化ベクトルA(l)、全ての要素が他の要素に相互に等しくなる。変形例として、受信アンテナの数が偶数である場合、前記符号化ベクトルA(l)は、偶数インデックスの成分が相互に等しく、且つ、奇数インデックスの成分が相互に等しいとともに前記偶数インデックスの成分の反対である。
【0028】
これらの形態によれば、上記の2つの変形例において、等価チャネルR(l)の行例は循環行列であるとともに、したがって、まったく複雑でない要件において、その逆を実施することもできる。
【0029】
相関的に、本発明は、各種の装置に関するものである。
【0030】
前記装置に関するものとして、M≧1個の送信アンテナを具備する無線送信装置であって、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって、N≧2個の受信アンテナを具備する受信装置に向けてデータを送信するための手段を有する無線送信装置が挙げられる。前記無線送信装置は、特に、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、さらに、
− 符号化データベクトルへ
【0031】
【数7】
【0032】
へ、p=0,1,…,N-1について、N実数要素を有するデータベクトルX(l)の符号化するための手段であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0033】
【数8】
【0034】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、符号化するための手段と、
【0035】
− 副搬送波lについて前記無線送信装置を前記無線受信装置にリンクするMIMOチャネルの伝送行列の推定
【0036】
【数9】
【0037】
を使用するとともに、n番目の受信アンテナ上に、前記符号化データベクトルW(l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、前記副搬送波lでM個の送信アンテナのそれぞれによって前記符号化データベクトルW(l,p)を、p=0,1,…,N-1、について、送信するための手段であって、n=1,2,…,N,である、手段と、を有する。
【0038】
また、本発明は、第2に、N≧2個の受信アンテナを具備する無線受信装置であって、L≧1の数の副搬送波を使用するOFDM/OQAM変調手段によって送信されたデータを受信するための手段を有する無線受信装置に関するものである。前記無線受信装置は、特に、整数lの少なくとも1つの値について、ここで、0≦l≦L-1であり、さらに、
− OFDM/OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の実数要素を有する受信ベクトルY(l,p)を判断するための手段であって、N番目の要素、ここで、n=1,2,…,N、は、前記N番目の受信アンテナで受信された副搬送波lに関連するシンボルに等しい、手段と、
− 符号化受信ベクトル
【0039】
【数10】
【0040】
へ前記受信ベクトルY(l,p)を符号化するための手段であって、ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示し、
【0041】
【数11】
【0042】
は、ベクトルUの要素の位置rでの円順列を示し、ここで、r=p+c、またはr=-p+cであるとともに、cは所定の関連整数である、手段と、
− 復号化可能ベクトル
【0043】
【数12】
【0044】
を算出するための手段と、
【0045】
− 下記数式のように復号化データベクトルT(l)を算出するための手段であって、ここで、S(l)=(R(l))-1であるとともに、R(l)は、前記副搬送波lについての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列であり、
F(l)=R(l)・X(l)+B(l)
によって定義され、ここで、B(l)は熱雑音項である、手段と、を有する。
【0046】
これらの装置によって得られる利点は、上記で簡素に説明した対応する方法によって得られる利点と本質的に同一である。
【0047】
これらの装置は、ソフトウェア命令のコンテキストおよび/または電子回路のコンテキストで実施することが可能である、ことに留意されたい。
【0048】
また、本発明は、上記の無線送信装置と上記の無線受信装置を有するとともに、前記無線送信装置および前記無線受信装置は、相互に同期することができる構成となっている、無線通信システムに関するものである。
【0049】
また、本発明は、通信ネットワークからダウンロード可能なコンピュータプログラム、および/または、コンピュータによって読み取り可能な媒体に保存されるコンピュータプログラム、および/または、マイクロプロセッサによって実行可能なコンピュータプログラム、を提供する、ことを目的としている。このコンピュータプログラムは、特に、上記された無線送信方法の各ステップ、または、上記された無線受信方法の各ステップ、または、上記された無線通信方法の各ステップ、をコンピュータ上で実行するための命令を有する。
【0050】
このコンピュータプログラムによて得られる利点は、上記の対応方法で得られる利点と本質的に同一である。
【0051】
本発明の他の特徴および利点は、単なる例示であって、下記で詳細に説明される特定の実施形態によってより明らかとなる。本発明についての図面の簡単な説明を以下に示す。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1a】最新技術に係るOFDM/OQAM多重方式の変調/送信方法の第1ステップを示す。
図1b】最新技術に係るOFDM/OQAM多重方式の変調/送信方法の第2ステップを示す。
図1c】最新技術に係るOFDM/OQAM多重方式の変調/送信方法の第3ステップを示す。
図2図1a,図1b,図1cに示されたステップをまとめたものである。
図3a】最新技術に係るOFDM/OQAM多重方式の受信/復調方法の第1ステップを示す。
図3b】最新技術に係るOFDM/OQAM多重方式の受信/復調方法の第2ステップを示す。
図3c】最新技術に係るOFDM/OQAM多重方式の受信/復調方法の第3ステップを示す。
図4図3a,図3b,図3cに示されたステップをまとめたものである。
図5】本発明で使用される円順列を図式的に示したものである。
図6】本発明の実施形態に係る、符号化データベクトルを取得するための、OFDM/OQAM多重方式の副搬送波に関連付けられたデータベクトルの符号化を、図式的に示したものである。
図7】本発明の第1の実施例に係る、時間フィルタ手段によって実行される時間反転処理を使用した、1つの副搬送波による、および複数の送信アンテナの全体集合による、前記符号化データベクトルの送信を示す。
図8】本発明の第2の実施例に係る、周波数フィルタ手段によって実行される時間反転処理を使用した、1つの送信アンテナによる、および複数の副搬送波の全体集合による、前記符号化データベクトルの送信を示す。
図9】本発明の実施形態に係る、OFDM/OQAM多重方式の各副搬送波についてN実成分で受信されたベクトルについての受信装置による判断を示す。
図10】OFDM/OQAM多重方式の1つの副搬送波についての前記受信されたベクトルについての前記受信装置による符号化を示す。
図11】本発明の一実施例に係る、OFDM/OQAM多重方式の1つの副搬送波についての送信装置と受信装置との間での等価MIMOチャネルの行列の演算を示す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は、M≧1の送信アンテナを備える送信装置と、N≧1の受信アンテナを備える受信装置とを具備する無線通信システムに適用される。OFDM/OQAM変調を使用するデータ伝送では、任意数L≧1の副搬送波を使用する。
【0054】
先ず第1にOFDM/OQAM変調の原理について説明する。
【0055】
偶数Qの副搬送波を使用するOFDM変調の検討から始める。伝送された信号s(t)は、副搬送波毎に、およびシンボル時間T0=1/F0 毎に、複素数QAMデータシンボル(「直交振幅変調」に初期設定されている)を伝送している、連続した副搬送波のそれぞれの組に配置される。前記信号s(t)は、
− これらの副搬送波の一つにおける、与えられたQAMシンボルの虚数部についてのT0/2に等しい時間オフセット(temporal shift)と、
− 他の副搬送波における、同一のQAMシンボルの実数部についてのT0/2の全く同一の時間オフセットと、を含んでいる。
【0056】
この伝送された信号は、下記数式で示される。
【0057】
【数13】
【0058】
・ここで、整数lは、副搬送波の数であり、整数jは、シンボル期間の数値であり、
・実係数al,jは、下記数式(2)
【0059】
【数14】
【0060】
に示されるように、QAMシンボルcl,jの実数と虚数部に基づいて定義され、ここで、
【0061】
【数15】
【0062】
は実数部の抽出を示し、
【0063】
【数16】
【0064】
は虚数部の抽出を示す。
・位相シフトφl,jは、下記数式と同一である。
【0065】
【数17】
【0066】
・プロトタイプ関数p(t)は、実数であるとともに、対称性を持つ。
【0067】
B. Le Floch, M. AlardとC. Berrou entitledによる論文「直交周波数分割多重符号化」(Proc. IEEE, vol. 83, pages 982 to 996, June 1995)では、特にOFDM/OQAMを含む変調のカテゴリーについて開示しており、プロトタイプ関数p(t)は、幅2F0 の周波数帯域の外側のフーリエ変換がゼロとなるような方法が選択されている。上記で参照されたSiohanとSicletとLacailleの論文では、プロトタイプ関数p(t)は、時間間隔
【0068】
【数18】
【0069】
の外側がゼロとなるような方法を選択されており、ここで、λは任意の0を含まない正の整数である。時間tが、整数kによって示される長さT0/Q(QAMシンボルあたりの標本化の平均処理時間)の間隔で離散化されている場合、離散化プロトタイプ関数p[k]のサポートは、長さλである。
【0070】
SiohanとSicletとLacaille demonstrateのSISOシステムのケースでは、シンボル間または副搬送波間での干渉がないOFDM/OQAM伝送を取得するために、プロトタイプ関数p(t)は、下記数式の直交関係を満たす必要がある。
【0071】
【数19】
【0072】
ここで、アスタリスクは複素共役を示し、下記数式で示すZ変換
【0073】
【数20】
【0074】
は、プロトタイプ関数p[k]の「オーダQの多相要素」と呼ばれる。
【0075】
また、SiohanとSicletとLacailleは、OFDM/OQAM変調がIFFT手段によって有利に実装でき、OFDM/OQAM復調がFFT手段によって有利に実装できる、ことを示している。
【0076】
したがって、識別された信号は、下記数式で表される。
【0077】
【数21】
【0078】
上記の数式は下記数式のように書き直すことができる。
【0079】
【数22】
【0080】
この信号を示すために、「合成フィルタのバンク」
【0081】
【数23】
【0082】
に割り当てられている1組のQフィルタ
【0083】
【数24】
【0084】
によってそれぞれフィルタリングされたQ入力信号
【0085】
【数25】
【0086】
の一般的な総和が示されている。
【0087】
いくつかの演算がされた後、OFDM/OQAM変調/伝送は、本質的に、時間番号jの各シンボルが入力ベクトル
【0088】
【数26】
【0089】
に適用される構成である、ことは明らかである(ここで、指数「T」は、転位(transposition)を示している。)以下に動作を示す。
− 各要素al,jは、下記数式
【0090】
【数27】
【0091】
に等しいいわゆる「事前変調」要素に乗算される。
その結果、ベクトル
【0092】
【数28】
【0093】
図1a)を得る。
− このベクトル
【0094】
【数29】
【0095】
はディメンジョンQ・Qに乗算され、その結果、ベクトル
【0096】
【数30】
【0097】
図1b)が得られる。
− このベクトル
【0098】
【数31】
【0099】
の各構成要素a"l,jは、フィルタG l(z2)に乗算され、次いで、拡張係数Q/2に乗算され、最終的に(l=0を除く)要素a"l-1,jに関して要素Z-1を遅延させる。最後に、取得された信号は総和され(並列を直列に変換し、P/Sで示される)、信号s[k](図1c)が得られる。
【0100】
図2は、上記で簡素に説明されたOFDM/OQAM多重化の変調/伝送のステップをまとめたものである。受信された信号v[k]に類似の処理を適用することは可能である。復調信号y l[j]は、時間番号jのシンボルとして番号lの副搬送波から得られ、下記数式のように示すことができる。
【0101】
【数32】
【0102】
受信された信号v[k]は、「解析フィルタのバンク」hl[k]に属するQフィルタ
【0103】
【数33】
【0104】
の1組によってフィルタリングされる。
【0105】
いくつかの演算がされた後、OFDM/OQAM受信/復調は、本質的に、下記の動作が、時間番号jの各シンボルについて受信された信号v[k]に適用される構成である、ことは明らかである。前記動作は、
− 遅延要素zのアプリケーション、ここでβは整数であり、下記数式のようになり
【0106】
【数34】
【0107】
次いで、Q要素の和として得られた信号の分解(直列から並列への変換、S/Pと示す)が実行され、これらの要素(l=0を除く)に、先ず第1に、以前の要素に関する遅延要素Z-1が乗算され、次いで、要素Q/2によってデシメート(decimated)され、最後に、フィルタリングGl(z2)に掛けられ、ベクトル
【0108】
【数35】
【0109】
図3a)の要素d’l,jを得る。
− このベクトル
【0110】
【数36】
【0111】
はディメンジョンQ・QのFFTに乗算され、その結果、ベクトル
【0112】
【数37】
【0113】
図3b)が得られる。
− このベクトル
【0114】
【数38】
【0115】
の各構成要素d’l,jは、
【0116】
【数39】
【0117】
に等しいいわゆる「ポストディモジュレーション」要素によって乗算され、その結果、結局、ベクトル
【0118】
【数40】
【0119】
図3c)の実数要素d l,jを取得する。
【0120】
図4は、上記で簡素に説明されたOFDM/OQAM多重化の受信/復調のステップをまとめたものである。
【0121】
最後に、上記の数式(2)に基づいて説明する。ゼロ値が、偶数の搬送波番号lに対応するQAMシンボルについてシステマティックに選択された場合、偶数番号の搬送波を考慮する必要が全くなく、ゼロ値が、奇数の搬送波番号lに対応するQAMシンボルについてシステマティックに選択された場合、奇数番号の搬送波を考慮する必要が全くない。したがって、これらのケースの両方では、副搬送波の有効数がQ/2であり、偶数または奇数番号の搬送波となり得る。したがって、OFDM/OQAM変調を実装することに使用される副搬送波の番号(本発明のフレームワーク内のLによって示される)は、偶数または奇数のいずれかとなり得る。
【0122】
図5は、本発明で使用される円順列
【0123】
【数41】
【0124】
を図式的に示したものであり、ここで、p=0,1,…,N-1である。
長さNの任意のソースベクトル
【0125】
【数42】
【0126】
が、ターゲットベクトル
【0127】
【数43】
【0128】
に定義されることによって関連付けられる。ここで、fは数式
【0129】
【数44】
【0130】
の「循環関数」であり、cは所定の関連整数(relative integer)である。
【0131】
本発明の実施形態に係るデータ送信方法について説明する。前記データ送信方法では、符号化データがOFDM/OQAM多重化システムのL副搬送波のそれぞれで伝送される。変形例として、これらの副搬送波の1つのみ、または部分集合を考慮することが可能である。
【0132】
本実施形態では、送信装置が、各整数lについて、実行し、ここで、0≦l≦L-1であり、Nは連続したステップである(ここで、Nは受信アンテナの数である)。各ステップ番号p(ここで、p=0,1,…,N-1)は、下記のサブステップを含む。
【0133】
図6に示された、サブステップE1の間、副搬送波番号lと関連する、N成分を有するデータベクトルX(l)は、「符号化データベクトル」
【0134】
【数45】
【0135】
に変換される。ここで、A(l)は、N非ゼロ要素を有する所定の符号化ベクトルであり、記号「U.V」は、同一の長さの2つのベクトルUおよびVを項別に乗算した結果を示す。換言すれば、ベクトルUおよびVが長さΛである場合、下記数式のように定義される。
【0136】
【数46】
【0137】
したがって、符号化されたベクトルの要素は、下記数式に等しい。
【0138】
【数47】
【0139】
ここで、
【0140】
【数48】
【0141】
であり、fは上記で定義された循環関数である。
【0142】
上記のように、この符号化ベクトルA(l)を選択することが良好に可能であり、
− 全ての要素が他の要素に相互に等しくなる方法、
− または、受信アンテナの数Nが偶数であるケースにおいて、偶数インデックスの要素が相互に等しくなる方法であって、奇数インデックスの要素が相互に等しく、且つ偶数インデックスの要素とは反対となる方法、のいずれかで前記選択することができる。
【0143】
符号化ベクトルA(l)について、他の選択も自ずと可能である。
【0144】
サブステップE2_pの間、送信装置は、M送信アンテナのそれぞれで、およびOFDM/OQAM伝送における番号lの副搬送波で、受信装置について予め設定された時間反転プレコーディングを使用した符号化データベクトルW(l,p)を、伝送する。ここで、0≦l≦L-1である。
【0145】
ここで、送信アンテナによって送信された無線信号は、この送信アンテナと受信アンテナとの間の伝搬条件の関数による歪みを受ける、ことが考慮される。これらの歪みを制限するために、信号は、それら2つのアンテナ間における伝搬チャネルの特性の関数である、いわゆる「プレコーディング」係数によって事前に変形される。したがって、周波数帯域に関してこの伝搬チャネルの特性を判断する必要がある。
【0146】
既存のプレコーディング方式に対して、本発明は、技術用語「時間反転(Time Reversal)」を実装する方式として区別され、受信アンテナ上に無線電波をフォーカスさせるための複雑さと性能とイントリンシック容量とを低減することができる。時間および空間とともに伝送される信号のエネルギーをフォーカスすることによって、時間反転は、伝搬チャネルで発生する分散(dispersion)を大幅に削減することを可能にする。
【0147】
時間反転は、波動方程式の時間反転不変性に基づく、(音響波の分野で本来使用される)技術である。したがって、巻き戻し時間における直接波として、時間的に反転された波が伝播される。発生点からの短いパルスが伝搬媒質内で伝送され、受信点で受信されたこの波の一部が、前記伝搬媒質で反射される前に時間的に反転されるとき、前記波は発生点で収束し、短いパルスがリフォームされる。発生点で集められた信号は、前記発生点からオリジナルに伝送された前記信号と形状がほとんど同一である。
【0148】
時間反転技術は、特に、受信アンテナが位置している焦点でのエネルギーの集中によってチャネルの拡散を低減することによって、および、受信信号の時間的な拡散(「遅延拡散」として知られている)を低減することによって、受信アンテナによって受信された信号についての伝搬チャネルの影響を打ち消すとともに、チャネルを介して伝送され受信されたシンボルの処理を簡素化するために、無線通信ネットワークに適用される。したがって、送信アンテナによって送信された信号は、該信号が伝搬しなければならない伝搬チャネルのインパルス応答の時間反転に基づいて取得された係数を適用することによって事前に均等化される。
【0149】
この場合、本方法は、一方で、受信アンテナ数nにおいて、要素
【0150】
【数49】
【0151】
をフォーカスする必要があり、他方で、送信装置の電力に対して、送信装置と受信装置との間のデータビットレートを最大化する必要がある。伝送は、全ての送信アンテナ上で同時に実行される。
【0152】
ここで、実施例として、時間反転プレコーディングを使用した、符号化データベクトルW(l,p)についての本伝送方法のための2つの可能な変形例を示す。
【0153】
第1の変形例では、時間反転プレコーディングは、時間フィルタによって実行される。図7は、1つの副搬送波による、および複数の送信アンテナの全体集合による、本伝送方法を示す。
【0154】
m個の送信アンテナとn個の受信アンテナとの間でチャネルのインパルス応答がhnm(t)になるようにして、ここで、
【0155】
【数50】
【0156】
であり、さらに、hnm(t)の算出結果が
【0157】
【数51】
【0158】
なるようにする。
【0159】
m個の送信アンテナで送信された信号は、時間反転フィルタ
【0160】
【数52】
【0161】
によってフィルタリングされる。
【0162】
第2の変形例では、時間反転プレコーディングは、周波数フィルタによって実行される。図8は、1つの送信アンテナによる、および複数の副搬送波の全体集合による、本伝送方法を示す。
【0163】
副搬送波lにおいてm個の送信アンテナとn個の受信アンテナとの間でチャネルの伝送行列の係数が
【0164】
【数53】
【0165】
になるようするとともに、この係数の算出結果が
【0166】
【数54】
【0167】
なるようにする。
【0168】
副搬送波上のm個の送信アンテナで送信された信号は、
【0169】
【数55】
【0170】
に等しい時間反転プレコーディング係数によってフィルタリングされる。
【0171】
本発明の実施形態に係るデータ受信方法について説明する。本データ受信方法によれば、L個の副搬送波のそれぞれに関連した復号化データが取得される。変形例として、これらの副搬送波の1つのみ、または部分集合、を考慮することが可能である。
【0172】
第1に、受信装置は、Nステップ(ここで、Nは受信アンテナの数である)を実行する。ここで、送信装置および受信装置は、送信装置および受信装置に適用されたシンボル期間が同一であるような、従来技術の手段によって同期化されると仮定する。前記Nステップは、送信装置レベルおよび受信装置レベルで並列に実行される。
【0173】
各ステップ番号p(ここで、p=0,1,…,N-1)は、以下のサブステップを含む。
【0174】
図9に示されたサブステップR1_pの間、受信装置は、各副搬送波について判断し、ここで、0≦l≦L-1であり、「受信されたベクトル」Y(l,p)はN個の実数要素を有し、n番目の要素(ここで、n=1,2,…,N)はN番目の受信アンテナで受信された副搬送波に関連するシンボルと同一であり、その後、OFDM/OQAM復調および実数部の抽出がされる。
【0175】
図10に示されたサブステップR2_pの間、受信装置は、下記数式の「符号化された受信ベクトル」を取得するために、前記受信されたベクトルY(l,p)のそれぞれを符号化する。
【0176】
【数56】
【0177】
ここで、fは上記で定義された循環関数であり、A(l)は上記の符号化ベクトルである。
【0178】
1回これらのNステップが終了すると、受信装置は、図10に示すように、ステップR3の間、受信された符号化ベクトルに対応する多数の受信アンテナを介して加算された「復号化可能ベクトル」F(l)を、0≦l≦L-1について、演算する。
【0179】
【数57】
【0180】
別の表現では、
【0181】
【数58】
【0182】
最後に、ステップR4の間、受信装置は、「復号化データベクトル」
【0183】
【数59】
【0184】
を、0≦l≦L-1について、演算する。ここで、復号化行列
【0185】
【数60】
【0186】
が、送信装置と受信装置との間の等価チャネルの行列R(l)を反転することによって得られる。定義上、「等価チャネルの行列」は、
【0187】
【数61】
【0188】
のような、行列R(l)を意味すると理解される。ここで、B(l)は、熱雑音項である。
【0189】
実際、この行列R(l)は、通常、反転可能であるように示される。もちろん、行列R(l)の反転は、R(l)が対角化可能であるとき、具体的には、R(l)が循環行列であるとき、特に簡易である。ところで、循環行列は、下記の2つの実用的なケースで得られる、ことを示すことができる。
− 符号化ベクトルA(l)は、全ての要素が他の要素と等しい、
− または、受信アンテナの数Nが偶数である、ケースのいずれか。
符号化ベクトルA(l)は、偶数インデックスの成分が相互に等しく、且つ、奇数インデックスの成分が相互に等しいとともに偶数インデックスの成分の反対である。
【0190】
また、復号化されたシンボル間での干渉がなく、伝送されたデータベクトルX(l)と等しくなるように、復号化データベクトルT(l)が得られる、と(理論的に)示すことができる。
【0191】
最後に、実施形態として、行列R(l)を推定するための2つの方式について説明する。
【0192】
第1の実施例によれば、R(l)の推定は、演算によって得られる。
【0193】
この演算ベースの方式は、副搬送波lについてMIMOチャネルの伝送行例の推定
【0194】
【数62】
【0195】
を知得している受信装置を必要とする。前記推定は、従来技術によって得られることができる。
【0196】
図11に示すように、受信装置は以下のステップを実行する。
− 行列
【0197】
【数63】
【0198】
の演算、ここで、指数Hは共役転置を示す。
【0199】
− 行列
【0200】
【数64】
【0201】
の演算。
− 行列
【0202】
【数65】
【0203】
の演算。
【0204】
− 0から(N-1)までのインデックスの連続したステップN、各ステップは以下のステップを含む。
【0205】
―― 行列
【0206】
【数66】
【0207】
を演算するステップであって、n番目の列ベクトルが
【0208】
【数67】
【0209】
のn番目の列ベクトルに
【0210】
【数68】
【0211】
を適用することで得られる、ステップ。
【0212】
―― 行列
【0213】
【数69】
【0214】
を演算するステップであって、n番目の行ベクトルが
【0215】
【数70】
【0216】
のn番目の行ベクトルに
【0217】
【数71】
【0218】
を適用することで得られる、ステップと、
―― 行列
【0219】
【数72】
【0220】
の演算をするステップ。
【0221】
【数73】
【0222】
について、行列Q(l,p)は、下記数式のように構成要素を有する。
【0223】
【数74】
【0224】
結局、下記の数式が得られる。
【0225】
【数75】
【0226】
第2の実施例によれば、R(l)の推定は、パイロット信号の助けをかりて実行される測定によって得られる。
【0227】
この方式は、符号化パイロットの送信/受信についての事前のステップを必要とする。この方式の利点は、受信装置がOQAMにおける伝送行列Hを推定する(複雑な動作)必要がないことであるとともに、行列R(l)を計算する必要がないことであり、行列R(l)は受信装置によって直接的に測定される。
【0228】
送信装置および受信装置は、qが0から(N-1)までである、下記のステップを実行する。
【0229】
送信装置は、各搬送波lについて、処理し、ここで、0≦l≦L-1であり、実数データベクトルXpilot(q,l)は、N≧2の受信装置に知られており、Xpilot(q,l)(q)を除く全ての要素がゼロであり、インデックスpが0から(N-1)までの連続したN個のステップで前記処理を行い、各ステップpが、以下のステップを含む。
− 符号化ベクトル
【0230】
【数76】
【0231】
へデータベクトルXpilot(q,l)を符号化するステップと、
− n番目の受信アンテナ上にXpilot(q,l,p)のn番目の要素をフォーカスさせるように、時間反転プレコーディングを使用して、受信装置へ送信されるべき符号化ベクトルXpilot(q,l,p)を伝送するステップ。
【0232】
受信装置は、以下のステップを、各搬送波lについて、実行し、ここで、0≦l≦L-1である。
― インデックスpが0から(N-1)までの連続したN個のステップであって、各ステップpが、以下のステップを含む。
−− OQAM復調と実数部の抽出とをした後に、N個の受信アンテナにおいて受信されたシンボルで構成された受信ベクトルY(q,l,p)を判断するステップと、
−− 符号化受信ベクトル
【0233】
【数77】
【0234】
へ前記受信ベクトルY(q,l,p)を符号化するステップ。
− 復号化可能ベクトル
【0235】
【数78】
【0236】
を算出するステップ。
【0237】
最後に、受信装置は、下記数式の方法で、等価チャネルの行列R(l)の要素を算出する。
【0238】
【数79】
【0239】
ここで、0≦n≦N-1であるとともに、0≦q≦N-1である。
【0240】
R(l)が循環行列であるとき、上記で説明したように、q=0について処理Xpilot(q,l)を実行することで十分である、ことに留意されたい。R(l)の列が循環によってお互いに推定されるので、1≦q≦N-1について処理Xpilot(q,l)を実行する必要はない。
【0241】
上記で説明したように、本発明は、上記で説明した、前記無線送信の方法、または無線受信の方法、または無線通信の方法、を実行するコンピュータシステムに関する。このコンピュータシステムは、従来の方法で、メモリに記憶された信号によって制御される中央処理装置と、入力ユニットと、出力ユニットとを備える。さらに、このコンピュータシステムは、本発明に係る方法のいずれかを実現するためのための命令を含むプログラムの実行に使用できる。
【0242】
まさに、本発明は、また、コンピュータ上で実行されるときに、本発明に係る方法の各ステップを実行するための命令を含む通信ネットワークからダウンロード可能なプログラムを提供する、ことを目的としている。このコンピュータプログラムは、コンピュータによって読み取り可能に媒体に格納されることができ、また、マイクロプロセッサによって実行可能である。
【0243】
このプログラムは、如何なるコンピュータ言語も使用でき、ソースコード、オブジェクトコード、ソースコードとオブジェクトコードの間の中間体のコードの形式、または、他の所望の形式をとることができる。
【0244】
また、本発明は、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に、移動不可能に、または、部分的または全体的に移動可能に、上記で説明したようなコンピュータプログラムの命令を格納する手段を提供する、ことを目的としている。
【0245】
前記記憶媒体は、プログラムを保存できるあらゆるエンティティまたはデバイスとすることができる。例えば、前記記憶媒体は、ROMのような例えばCDROMのような記憶手段、または超小形電子回路ROM、またはハードディスクのような磁気記憶手段、またはUSBキー(USBフラッシュデバイスとして知られている)とすることができる。
【0246】
さらに、前記記憶媒体は、電気または光ケーブルを介して伝送され得る、または、無線または他の所望手段によって伝送され得る、電気的にまたは光学的に伝送可能な媒体である、としてもよい。本発明に係る前記コンピュータプログラムは、特に、インターネットタイプのネットワークを介してダウンロードされることができる。
【0247】
変形例として、前記記憶媒体は、前記プログラムが組み込まれた集積回路である、とすることができ、前記集積回路は、本発明に係る方法のいずれかを、実行するように、または前記実行において使用されるように、構成されている。
【符号の説明】
【0248】
A(l) 符号化ベクトル
F(l) 復号化可能ベクトル
W(l,p) 符号化データベクトル
X(l) データベクトル
Y(l,p) 受信ベクトル
図1a
図1b
図1c
図2
図3a
図3b
図3c
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11