(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143859
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】研磨物品
(51)【国際特許分類】
B24D 11/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
B24D11/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-520203(P2015-520203)
(86)(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公表番号】特表2015-525681(P2015-525681A)
(43)【公表日】2015年9月7日
(86)【国際出願番号】US2013043209
(87)【国際公開番号】WO2014003953
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】61/665,004
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ウー, エドワード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ムニョス, ジュアン エー.
(72)【発明者】
【氏名】フェードロワ, ナターリヤ ヴイ.
(72)【発明者】
【氏名】オーランド, マーク ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】スタディナー, チャールズ ジェイ., ザ フォース
(72)【発明者】
【氏名】マナー, ニコラス ビー.
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−505145(JP,A)
【文献】
特表2010−533592(JP,A)
【文献】
特表2002−532274(JP,A)
【文献】
特開昭63−278766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 11/00
B24D 3/00
B24B 37/24
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏材の第1の主表面に取り付けられた構造化研磨層であって、架橋結合剤中の研磨粒子から形成される複数の研磨複合体を含む構造化研磨層と、
接着層によって前記裏材の第2の主表面に取り付けられた不織布層であって、
12デニール以上であり、不織布層の51重量%以上の繊維である大径繊維と、
9デニール以下であり、不織布層の49重量%以下の繊維である小径繊維と、を含む不織布層と、
前記構造化研磨層の中央孔及び複数の周辺孔であって、
前記中央孔が8mm〜20mmの最大直径を有し、
前記中央孔及び前記複数の周辺孔の総開口面積が140mm2以上である、前記構造化研磨層の中央孔及び複数の周辺孔と、を含む、研磨物品。
【請求項2】
前記研磨粒子のサイズが30マイクロメートル以下であり、前記複数の研磨複合体の数が1平方cmあたり150超である、請求項1に記載の研磨物品。
【請求項3】
前記不織布層の厚さが1.5mm〜4.4mmである、請求項1又は2に記載の研磨物品。
【請求項4】
前記不織布層の坪量が80〜300gsmである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の研磨物品。
【請求項5】
塗装層又はクリアコート層などの高分子コーティングを研磨する方法であって、
水性流体の存在下での研磨実施中に請求項1〜4のいずれか一項に記載の研磨物品と前記高分子コーティングとの間に相対的な動きを加える工程を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
クリアコート又は塗面の欠陥の除去は、塗面の輪郭が大きくなるほど難しくなることがある。塗面に対してより追従性を有する、発泡体で裏打ちされた研磨物品の製造は可能である。しかしながら、これらの発泡体で裏打ちされた研磨物品は発泡体のコストのため高価になる場合もあり、発泡体の使用が目的とする用途に有用であることを必ずしも保証するものではない。
【0002】
[概要]
本発明者らは、クリアコート及び塗面での使用を目的とする、改良された研磨物品が、発泡層を特別な構造の不織布層に替え、中央孔及び複数の周辺孔を含めることにより実現できると判断した。不織布層は、欠陥を除去する際に必要な追従性を確保するように設計され、十分な開口構造を備えているので、研磨物品をフックでバックアップパッドに取り付けるためのループ層として使用できる。このように、不織布の追従性と嵩高さのバランスを保つことにより、発泡体で裏打ちされた研磨物品の発泡層を取り替え、ループ層を取り替えるという、2つの機能を提供することができ、それによってコストを削減できる。また、中央孔と複数の周辺孔の両方を含むことにより、改良された研磨物品は発泡体で裏打ちされた従来の研磨物品より著しく性能を向上させることができる。
【0003】
したがって、一態様では本発明は、
裏材の第1の主表面に取り付けられた構造化研磨層であって、架橋結合剤中の研磨粒子から形成される複数の研磨複合体を含む構造化研磨層と、
接着層によって裏材の第2の主表面に取り付けられた不織布層であって、
12デニール以上であり、不織布層の51重量%以上の繊維である大径繊維と、
9デニール以下であり、不織布層の49重量%以下の繊維である小径繊維と、を含む不織布層と、
構造化研磨層の中央孔及び複数の周辺孔であって、
中央孔が8mm〜20mmの最大直径を有し、
中央孔及び複数の周辺孔の総開口面積が140mm
2以上である、構造化研磨層の中央孔及び複数の周辺孔と、
を含む、研磨物品にある。
【図面の簡単な説明】
【0004】
明細書及び図中で繰り返し使用される参照記号は、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図する。
【
図1】クリアコート及び塗面の欠陥を除去するのに有用な研磨物品の平面図である。
【
図2】2−2で切断された、
図1の研磨物品の部分断面図である。
【0005】
[定義]
本明細書で使用するとき、「含む」、「有する」、及び「包含する」という単語の変形形態は、法律的に同意義でありかつ制約されない。したがって、記載される要素、機能、工程、又は限定以外に、更なる記載されない要素、機能、工程、又は限定が存在し得る。
【0006】
[詳細な説明]
図1及び2を参照すると、研磨物品100は、裏材110の第1の主表面125に配置され、固定された構造化研磨層120を含む。研磨物品は更に、裏材の第2の主表面127を不織布層300に固定する研磨層200を含む。中央孔400及び複数の周辺孔410も表示される。研磨複合体の高さは不織布層の厚みより著しく小さくなることもあるので、
図2は必ずしも縮尺どおりではない。
【0007】
構造化研磨物品は、それと合わせて使用してよい支持パッドの形状に応じて、例えば円形(例えば、ディスク)、楕円径、方形(例えば、シート)など任意の形状であってもよい。構造化研磨物品は扇形の縁部を有してもよい。それぞれの構成要素は次のセクションでより詳細に記載される。
【0008】
構造化研磨層及び裏材
構造化研磨層120は成形された研磨複合体135を含む。成形されたそれぞれの研磨複合体135は米国特許出願公開第2011/0065362号に記載されているように、砥粒140と、任意の粉砕助剤粒子145と、高分子結合剤150中に分散された任意の界面活性剤と、を含む。いくつかの実施形態において、成形されたそれぞれの研磨複合体はその総重量に基づいて2.5重量パーセント〜3.5重量パーセントの非イオンポリエーテル界面活性剤を含有する。
【0009】
本明細書で使用される「成形された研磨複合体」という用語は、研磨粒子と、結合剤と、を含有し、意図的に非ランダム形状(例えば、錐体、隆起部など)に形成され、規則的な境界によって、典型的に特徴付けられる物体を指す。例示の成形方法としては、鋳造及び硬化方法、エンボス加工、並びに鋳造が挙げられる。成形された研磨複合体は既定のパターン(例えば、配列のように)に従って基材に配置できる。いくつかの実施形態において、成形された研磨複合体は「精密に成形された」研磨複合体である。これは、精密に成形された研磨複合体の形状が、明確に規定された辺縁によって画定され、結合された比較的滑らかな表面を有する側面によって規定されることを意味する。辺縁は、異なる側面の交点によって規定される明確な端点を有する明確な辺長を有する。この精度は、精密に成形された研磨複合体を形成するための複数のモールドキャビティを有する生産用金型を使用することによって頻繁に実現できる。「境界とする」及び「境界」という用語は、各研磨複合体の実際の三次元形状を区切って画定する各複合体の露出面及び縁部を指す。これらの境界は、研磨物品の断面を走査型電子顕微鏡において観察する際、容易に視認及び識別される。これらの境界は、複合体同士がその基部において共通の境界に沿って互いに接するような場合であっても、1つの精密に成形された研磨複合体を別の精密に成形された研磨複合体から分離し、区別するものである。これと比較して、精密な形状を有さない研磨複合体では、境界及び辺縁は明確に規定されない(例えば、研磨複合体が硬化完了前に垂れてしまうような場合)。
【0010】
精密に成形された、又は成形された研磨複合体は、研磨層の露出面における隆起機構又は陥凹部の少なくとも1つをもたらす任意の三次元形状であってよい。有用な形状としては、例えば、立方体、角柱、角錐(例えば、四角錐又は六角錐)、切頭角錐、円錐、円錐台形が挙げられる。異なる形状及び/又は大きさの研磨複合体の組み合わせを使用してもよい。構造化研磨材の研磨層は、連続的なものであっても不連続的なものであってもよい。
【0011】
精密に成形された研磨複合体を有する構造化研磨物品及びその製造方法に関する更なる詳細は、米国特許第5,152,917号(Pieperら)、同第5,435,816号(Spurgeonら)、同第5,672,097号(Hoopman)、同第5,681,217号(Hoopmanら)、同第5,454,844号(Hibbardら)、同第5,851,247号(Stoetzelら)、同第6,139,594号(Kincaidら)、同第8,080,073号(David)、同第2009/0017727号(Pribyl)、同第2010/0255254号(Culler)、同第2011/0065362号(Woo)に見出され得る。特に、米国特許公開第2011/0065362号の段落[0014]〜段落[0060]は参照することにより本明細書に援用される。
【0012】
典型的には、成形研磨複合体は、所定のパターン又は配列に従って裏材の上に配置されるが、これは必須ではない。成形研磨複合体は、研磨層の表面をポリシングすることで工作物の表面の一部が窪むように配置されてもよい。
【0013】
精密仕上げ用途では、研磨層中の成形研磨複合体の密度は、典型的に、1平方インチあたり少なくとも1,000、10,000、又は更に少なくとも20,000の研磨複合体(例えば、1平方センチメートルあたり少なくとも150、1,500、又は更に7,800の研磨複合体)から、1平方インチあたり50,000、70,000、又は更に100,000(1平方センチメートルあたり7,800、11,000、又は更に15,000までの研磨複合体を含む)までの範囲であるが、より大きい又はより小さい密度の研磨複合体も使用できる。
【0014】
個々の成形研磨複合体は高分子結合剤中に分散している研磨砥粒を含有する。研磨材分野で既知である任意の砥粒を研磨複合体に含んでよい。有用な砥粒の例としては、酸化アルミニウム、溶融酸化アルミニウム、熱処理酸化アルミニウム、セラミック酸化アルミニウム、炭化ケイ素、緑色炭化ケイ素、アルミナ−ジルコニア、セリア、酸化鉄、ガーネット、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、及びこれらの組み合わせが挙げられる。修復及び仕上げ用途の場合、有用な砥粒径のサイズは、典型的には、少なくとも0.01、1、3又は5マイクロメートルから、35、100、250、500、又は1,500マイクロメートルと同等までの平均粒径の範囲であるが、この範囲外の粒径のサイズも使用してよい。3〜7マイクロメートルの範囲の粒径に対応する研磨材業界指定の公称等級を有する炭化ケイ素研磨粒子が、典型的に好ましい。典型的には、研磨粒子は、成形研磨複合体の総重量に基づいて50〜70重量パーセントの量で研磨複合体中に含まれるが、他の量を用いてもよい。
【0015】
成形研磨複合体は、所望により、例えば、分散剤、充填剤、顔料、研削助剤、光開始剤、固化剤、硬化剤、安定剤、酸化防止剤、及び光安定剤などの更なる成分を含有してもよい。
【0016】
有用な裏材としては、例えば、紙、布地、フィルム裏材が挙げられる。好適なフィルム裏材としては、高分子フィルム及び下塗りされた高分子フィルム、特に研磨剤分野で用いられるものが挙げられる。有用な高分子フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム(例えば、エチレン−アクリル酸コポリマーで下塗りされたポリエチレンテレフタレート)、ポリオレフィンフィルム(例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンフィルム)、及び弾性ポリウレタンフィルムが挙げられる。フィルム裏材は、2枚の高分子フィルムの積層体であってもよい。フィルムの形成に使用できるエラストマーポリウレタンの例としては、商標名ESTANEとして、B.F.Goodrich and Co.(Cleveland,OH)から入手できるものが挙げられ、これらは、米国特許第2,871,218号(Schollenberger)、同第3,645,835号(Hodgson)、同第4,595,001号(Potterら)、同第5,088,483号(Heinecke)、同第6,838,589号(Liedtkeら)、及び米国再発行特許第33,353号(Heinecke)に記載されている。感圧性接着剤でコーティングされたポリウレタンエラストマーフィルムは、商標名TEGADERMとして3M Companyから市販されている。有用な高分子フィルムは、一般的に、厚さ約0.02〜約0.5ミリメートル、例えば、厚さ0.02ミリメートル〜0.1ミリメートルであるが、これは必須ではない。
【0017】
接着層
好適な接着材を使用して裏材110を不織布層300に接合する。一般に、耐水性接着剤は、研磨物品が湿性仕上げ用途に使用できるように利用される。
【0018】
好適な接着剤の種類としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、フェノール系接着剤、尿素−ホルムアルデヒド接着剤、エポキシ接着剤、アクリレート接着剤などが挙げられるが、これらに限定されない。このような接着剤の特定の例としては、Noveon,Inc.(Cleveland,Ohio)から商標名「HYCAR」として入手できるラテックス アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)及びラテックス系アクリル接着剤、Resolution Performance Products(Houston,Tex)から入手できる「EPI−REZ WD 510」及びHuntsman Performance Chemicals(Houston,Tex)から入手できる「JEFFAMINE T403」などの2液性エポキシ、並びにAir Products and Chemical Corporation(Allentown,Pa)から入手できる「VERSALINK P−1000」、及びDow Chemical Companyから入手できる「ISONATE 143L」、Crompton Corp.(Middlebury,Conn)から入手できる「RIBBON FLOW」ウレタンエラストマーなどの2液性反応ポリウレタン接着剤、並びにBemis Associates,Inc.(Shirley,Mass)から商標名「BEMIS 4200」として入手できるポリアミドホットメルト接着剤シートが挙げられる。
【0019】
不織布層
不織布ウェブは繊維の交絡ウェブを含んでよい。繊維は連続繊維、ステープルファイバー、又はこれらの組み合わせを含んでよい。例えば、不織布ウェブは、少なくとも約20ミリメートル(mm)、少なくとも約30mm、又は少なくとも約40mm、かつ約110mm未満、約85mm、又は約65mm未満の長さを有するステープルファイバーを含んでもよいが、より短い繊維及びより長い繊維(例えば、連続繊維)も有用である場合がある。
【0020】
必要な追従性を有し、フック層への取り付けを可能にするために、大径繊維と小径繊維の2種類の繊維径が混合される。大径繊維は嵩を増やし、一体性をもたらし、不織布層の望ましい圧縮と一体性を可能にする。しかしながら、これは、バックアップパッドのフックとの係合にはあまり適さない。好ましいフック係合を実現するために、小径繊維が使用される。加えて、大径繊維及び小径繊維の重量パーセントが制御される。
【0021】
ある実施形態では、12デニール(13.3デシテックス)以上の大径繊維が使用され、不織布層の少なくとも51重量%が大径繊維から形成される。大径繊維と組み合わせて、9デニール(10デシテックス)以下の小径繊維が使用され、不織布層の49重量%以下が小径繊維から形成される。別の実施形態では、14デニール(15.6デシテックス)以上の大径繊維が使用され、不織布層の少なくとも65重量%が大径繊維から形成される。大径繊維と組み合わせて、7デニール(7.8デシテックス)以下の小径繊維が使用され、不織布層の35重量%以下が小径繊維から形成される。別の実施形態では、15デニール(16.7デシテックス)以上の大径繊維が使用され、不織布層の少なくとも70重量%が大径繊維から形成される。より長い直径の繊維との組み合わせで、4デニール(4.4デシテックス)以下の直径の繊維が使用され、30重量%以下の不織布層がより短い直径の繊維から形成される。
【0022】
必要な追従性と一体性を更にもたらすために、ある一定の密度の、選定された厚みの不織布層が典型的に使用される。厚さは1.5mm以上かつ4.4mm以下である。厚さは、3.5インチ(8.9cm)のプラテン直径を使用し、0.5ポンド(227グラム)の負荷のもとで試験された。不織布層の重さは19グレイン/24平方インチ(80gsm)以上かつ71グレイン/24平方インチ(300gsm)以下である。
【0023】
不織布ウェブは、例えば、従来のエアレイド、カード、スティッチボンド、スパンボンド、ウェットレイド、及び/又はメルトブローン手順により製造され得る。エアレイド不織繊維ウェブは、例えば、Rando Machine Company(Macedon,New York)から市販されている商品名「RANDO WEBBER」として入手可能なもののような設備を用いて調製することができる。
【0024】
不織布ウェブに好適な繊維としては、天然繊維、合成繊維、天然繊維、並びに天然繊維及び/又は合成繊維の混合物が挙げられる。合成繊維の例としては、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン(例えば、ヘキサメチレンアジポアミド、ポリカプロラクタム)、ポリプロピレン、アクリロニトリル(すなわち、アクリル)、レーヨン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニリデン−塩化ビニルコポリマー、及び塩化ビニル−アクリロニトリルコポリマーから製造されるものが挙げられる。好適な天然繊維の例としては、綿、羊毛、黄麻、及び麻布が挙げられる。繊維は、未使用材料又は、例えば、裁断、カーペット製造、繊維製造、若しくは繊維加工から再生された、回収材料若しくは屑材料によるものであってよい。繊維は、均質であってもよく、又は2成分繊維(例えば、共紡糸芯鞘型繊維)のような複合体であってもよい。繊維は、伸張されていてもよく、けん縮されていてもよいが、スパンボンドプロセスによって形成されるような連続フィラメントでもよい。繊維の組み合わせを使用してもよい。
【0025】
研磨物品、研磨ホイールでの使用に適する不織布とその製造方法に関する更なる詳細は、例えば、米国特許第2,958,593号(Hooverら)、同第5,591,239号(Larsonら)、同第6,017,831号(Beradsleyら)と米国特許出願公開第2006/0041065(A1)号(Barber、Jr.)に見出すことができる。
【0026】
いくつかの実施形態において、不織布層の厚みはカレンダー操作又は押圧操作を使用することにより調整できる。カレンダー操作は、適切なニップ荷重(圧)を使用して加熱又は非加熱ロールを使用して実行して、余分な嵩を除去したり、又は望ましい追従性をもたらすには不織布層の密度を増加させ過ぎることなく望ましい厚みを生成できる。
【0027】
しばしば、不織布ウェブ、特にニードルタックプロセスによって作製された不織布ウェブにプレボンド樹脂を適用することが有用である。プレボンド樹脂は、例えば、処理中の不織布ウェブの一体性を維持するために役立つ。プレボンド樹脂の例としては、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、にかわ、アクリル樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本方式で用いられるプレボンド樹脂の量は、典型的には、架橋接点で繊維同士を接着するのに見合った最小量に調節されている。不織布ウェブが熱接着性繊維を含む場合、不織布ウェブの熱接着もまた、処理中のウェブの一体性を維持するのを助けることができる。
【0028】
不織布研磨物品の製造における当業者は、本発明の特定の実施形態に使用されるプレボンド樹脂の選定、量、適用方法、化学成分は、不織布の繊維重量、繊維密度、繊維の種類、完成した研磨物品の所望の性質や意図される最終用途を含む様々な要素によって異なり得ることを理解するであろう。一般に、プレボンド樹脂は、例えば1平方メートルあたり約10グラム〜600グラム(乾燥付加重量)、好ましくは少なくとも10〜30g/m
2の目付量範囲で比較的薄いコーティングとして不織布に適用することができる。
【0029】
プレボンド樹脂は不織布の繊維を相互に結合させるために、任意の既知の方法で不織布に適用してよい。プレボンド樹脂の好ましい適用方法は、例えば、従来のツーロールコーターを使用するなどロールコーティングによるものである。なお、他の方法もまた有用である。コーティング後、プレボンド樹脂は硬化されて、不織布上にコーティングされたプレボンドをもたらす(すなわちプレボンドされた不織布)ことができる。硬化は、一般にプレボンド樹脂の化学的同一性とその硬化機構に応じて選定された方法によって実施できる。プレボンド樹脂を硬化させるために使用できる条件の例としては、化学組成を硬化させる、重合させる、架橋させる、あるいは硬化させる又は凝固させる条件として知られている条件、例えば、昇温、紫外線、他の放射線、冷却などが挙げられる。
【0030】
孔
研磨物品は、少なくとも構造化研磨層を貫通する中央孔及び複数の周辺孔を含む。裏材及び/又は不織布層の多孔性によっては、孔が研磨物品の各層を貫通する必要はない。典型的には、製造しやすくするために、孔は打抜き又はレーザーによって研磨物品の各層を完全に貫通する。孔は正方形、三角形、六角形、楕円形、円形、溝穴付き、曲線状又はそれらの組み合わせなどの任意の所望の形状でよいが、典型的には孔は円形である。
【0031】
概ね、中央孔は8mm〜20mm又は9mm〜15mmの直径又は最大寸法を有するが、他の大きさも有用である。複数の周辺孔は多くの異なるパターンに配置することができる。周辺孔の数は、それらの場所と配置にともなって異なり得る。概ね、放射状スポーク、グリッドパターン、又は円形パターンとして配置されるであろう。周辺孔は概ね、0.1mm〜10mm又は0.2mm〜4mmの直径又は最大寸法を有し、その数は4〜200又は6〜160である。周辺孔の直径が大きくなると、典型的には、それらの必要数はより少なくなる。最終的に、研磨物品の最良の切除力と持続期間を得るために、全孔の総開口面積は概ね、140mm
2以上、150mm
2以上、又は160mm
2以上、又は180mm
2以上である。
【0032】
中央孔は、不織布層から被削面上に水性液体を分散させ、削りくず(研削屑)を蓄積させ、ディスク表面と工作物との間の相対的な動きがより少ないことがある、ディスク中心部に削りくずが蓄積するのを防ぐのに役立つと考えられる。周辺孔はまた水性液体を分散させ、削りくずを蓄積させ、ディスク表面の削りくずの蓄積を防止すると考えられる。後述の実施例に示されるとおり、中心孔及び複数の周辺孔の両方を使用すると、単独で使用した場合のそれぞれ又は孔のない研磨物品よりも、著しく優れた研磨物品仕上げ性能が実現した。
【0033】
研磨物品の使用方法
工作物は任意の材料を含んでよく、任意の形状を有してよい。好適な材料の例としては、セラミック、塗料、熱可塑性又は熱硬化性ポリマー、高分子コーティング、多結晶ケイ素、木材、大理石、及びこれらの組み合わせが挙げられる。基材形態の例としては、成型物品及び/又は成形物品(例えば、光学レンズ、自動車の車体パネル、艇体、カウンター、及び流し台)、ウェハ、シート、並びにブロックが挙げられる。本開示による方法は、自動車用塗料及びクリアコート(例えば、自動車用クリアコート)のような高分子材料の補修及び/又はポリシングに特に有用であり、その例としては、ポリアクリル酸−ポリオール−ポリイソシアネート組成物(例えば、米国特許第5,286,782号(Lambら)に記載される)、ヒドロキシ官能性アクリル酸−ポリオール−ポリイソシアネート組成物(例えば、米国特許第5,354,797号(Andersonら))、ポリイソシアネート−カーボネート−メラミン組成物(例えば、米国特許第6,544,593号(Nagataら))、及び高固形分ポリシロキサン組成物(例えば、米国特許第6,428,898号(Barsottiら)に記載される)が挙げられる。1つの好適なクリアコートは、架橋ポリマー中に分散しているナノサイズのシリカ粒子を含む。このクリアコートの例は、PPG Industries(Pittsburgh,PA)からCERAMICLEARとして入手可能である。本開示による修復及び/又は艶出しされ得る他の好適な材料としては、船舶用ゲル状塗料、ポリカーボネートレンズ、合成材料で作製されたカウンター及び流し台、例えば、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE)によってDUPONT CORIANとして販売されているものが挙げられる。
【0034】
本開示による研磨物品の典型的な使用では、研磨層は工作物の表面と摩擦接触して、次いで、研磨物品又は工作物のうちの少なくとも一方を他方に対して移動させて、工作物の少なくとも一部を研磨する。表面の削りくず(すなわち工作物の研磨中に生じる浮遊塵及び破片)の除去を促進するために、プロセスは水性流体の存在下で実施される。本明細書で使用するとき、用語「水性」は、少なくとも30重量パーセントの水を含有することを意味する。典型的に、液体は、少なくとも90又は更には少なくとも95重量パーセントの水を含む。例えば、液体は、公営の水道水又は井戸水を含んでもよい(又は、公営の水道水若しくは井戸水からなってもよい)。
【0035】
必要に応じて、水性流体は、水に加えて、例えば、水混和性有機溶媒(例えば、エタノール、2−エトキシエタノールなどのアルコール、並びにプロピレングリコール及び/又はジグリムなどのポリエーテルなどのポリオールを含む)、界面活性剤、及び研削助剤などの更なる成分を含有してもよい。実際には、水性流体は、工作物、研磨層、又はこれら両方の表面に塗布してもよい。
【0036】
構造化研磨物品は、手作業によって、又は例えば、研磨分野で既知の任意の方法を用いて電気若しくは空気駆動式モータなどの機械的手段によって、工作物に対して移動させることができる。構造化研磨物品は(例えば、ディスクでは一般的な方法であるように)バックアップパッドに対して取り外し可能に固定してよい。
【0037】
一旦構造化研磨物品を用いて研磨が完了したら、典型的に、工作物を(例えば、水で)すすいで、研磨プロセス中に生じる残渣を除去する。すすぎ後、工作物は、例えば、バフ研磨パッドと共にポリシングコンパウンドを用いて更にポリシングしてもよい。このような任意のポリシングコンパウンドは、典型的に、液体溶媒中に研磨微粒子(例えば、100マイクロメートル未満、50マイクロメートル未満、又は更には25マイクロメートル未満の平均粒径を有する)を含有する。ポリシングコンパウンド及びプロセスに関する更なる詳細は、例えば、米国特許出願公開第2003/0032368号(Hara)に記載される。
【実施例】
【0038】
本開示の目的及び利点を以下の非限定的な実施例で更に例示する。これらの実施例において列挙されるその特定の材料及び量、並びに他の条件及び詳細は、本開示を過度に制限しないと解釈されるべきである。特に記載のない限り、実施例及び本明細書の残りの部分における全ての部、パーセント、及び比率は、重量による。
【0039】
材料
【0040】
【表1】
【0041】
B1の調製
エアレイド不織材ウェブは、75重量%の15デニール×長さ40mmのナイロン6と25重量%の6デニール×長さ38.1mmのナイロン66との配合物で調製した。ウェブは、3mm/分のライン速度と290/分のストローク速度でニードルタックした。針入度は10mmであり、ウェブは80Psi(552kPa)圧のもと218℃でカレンダー加工した。ウェブは更に、75重量%のPMアセテート(Dow Chemical Company(Midland,Michigan))、19%のDairen BL 16(Chemtura Corporation(Middlebury,Michigan))、6重量%、及び42.33体積%の固体K450(アミノ硬化剤組成物(Royce Associates(East Rutherford,New Jersey)))の混合物で14g/平方メートルの乾燥付加重量まで更にロールコートした。コーティングされたウェブは、160℃に設定した強制対流オーブンで5分間加熱し、コーティングを硬化させた。結果として生じるコーティングされた硬化不織布ウェブは、厚さ約2.4mm、約155g/平方メートルの重さであった。
【0042】
実施例1〜7、実施例9、及び比較例A〜E
実施例1〜7、実施例9、比較例A〜Hは、研磨物品の有効性に関して、裏材、研磨構造、中央孔の有無と直径、及び周辺孔の数を変化させる効果を示している。
【0043】
実施例1
実施例1の研磨物品は、3.5インチ×3.5インチ(8.9cm×8.9cm)シートのAS2を3.5インチ×3.5インチ(8.9cm×8.9cm)のB1に5ポンド(2.3Kg)の負荷を加えるハンドローラーを用いて接着することにより調製した。0.18ミリメートル直径の153個の孔の放射状配列と14ミリメートル直径の中央孔は、Coherent Pulsed CO
2レーザー(モデルE−400(波長10.6マイクロメートル、スポットサイズ240マイクロメートル、走査速度350mm/s、反復速度25kHz、120ワットエネルギーで15%の衝撃係数(6マイクロ秒パルス幅)、4パス)を使用して切り取った。3インチ(7.6cm)の円形ディスクは、同一のレーザー装置を使用して1000m/s(反復率25kHz、48.8ワットで10%の衝撃係数(4マイクロ秒パルス幅)、6パス)で切り取った。
【0044】
実施例2〜7と実施例9
実施例2〜実施例7及び実施例9の研磨物品は、
図2に示されるとおり、孔の配列の数、サイズ、14mmの中央孔の有無を除いて、実施例1の研磨物品と同様に調整した。
【0045】
比較例A
比較例Aの研磨物品は、フックループアタッチメントシステムを使用した、3インチ(7.6cm)の発泡体裏打ちディスクであり、孔は備えていない。厚さは2.82mm、重量は419gsmであった。この物品は、3M(Saint Paul,Minnesota)から「443SA」として市販されている。
【0046】
比較例B
比較例Bの研磨物品は、中央孔を備えていなかったことを除いて、比較例1と同様に調製した。
【0047】
比較例C
比較例Cの研磨物品は、周辺孔の放射状配列を備えていなかったことを除いて、比較例1と同様に調製した。
【0048】
比較例D
比較例Dの研磨物品は、小さい孔の直径が0.26mmに増加したことを除いて、比較例Bと同様に調製した。
【0049】
比較例E
比較例Eの研磨物品は、小さい孔の直径が0.35mmに増加したことを除いて、比較例Bと同様に調製した。
【0050】
ポリシング試験手順
18インチ×24インチ(46cm×61cm)の自動車用ベースコート/カラーコート/クリアコート(Dupont RK8148)試験パネル(ACT Laboratories(Hillsdale,Michigan)から入手)を、9インチ×12インチ(23cm×30cm)の4象限に分割した。各象限は、ソフトディスクパッド(3M(Saint Paul,Minnesota)から入手した「3M Clean Sanding 20428」(3インチ×3/4インチ×1/4−20EXT(7.6cm×1.9cm×1/4−20EXT)))に装着したランダムオービットサンダー(3M(Saint Paul,Minnesota)から入手した「3M Elite Series 28494」(3インチ(7.6cm)、非真空式、軌道3/16インチ(0.48cm))を使用して、実施例の研磨ディスクの1つで研磨した。使用空気圧力は90psi(345KPa)に維持した。ディスクパッドに実施例のディスクを装着した後、ディスク及び試験パネルの選定した象限の両方を脱イオン水で湿らせた。研磨アセンブリは選定した試験パネル象限に接するように配置し、始動させた。サンダーは、最初に選定した試験象限の周囲を摩耗させるように移動させ、次いで、左から右、右から左のパターンで横方向に移動しながら下向きに動かして、それぞれ前のパスの50%を重複させ、最終的には、上から下、下から上のパターンで右方向に動かして、それぞれ前の各パスの50%を重複させる。各象限に対して、合計研磨時間は約1.5分であった。研磨残留物は柔らかい布で拭いて除去した。各実施例の研磨ディスクは負荷の検査を実施した。
【0051】
研磨の次に、全て3M(Saint Paul,Minnesota)から入手できる、ディスクパッド(「20350 Hookit(商標)Clean Sanding Low Profile Disc Pad」(3インチ×1/2インチ×1/4−20 EXT(7.6cm×1.27cm×1/4−20 EXT)))に装着した空気圧バッファ(「28333 Buffer」)、バフリングパッド(「Finesse−it(商標)Buffing Pad 25135」(3 3/4インチ、灰色の発泡体))と、極細目ポリッシュ(「Finesse−it(商標)06002 Polish,Extra Fine」)で各パネルの試験領域を艶出しする。バッファには圧縮空気(90psi、345KPa)が供給され、バフィングパッドは薄い均一の艶出しコーティングを施して調整してからディスクパッドに装着した。ポリッシュは試験領域に適用し、装着したバフィングパッドの表面を使用して磨き、分散させた。バッファは、試験領域に接して配置し、始動させた。前述の研磨工程に記載されている周辺及び横断パターンは擦り傷が除去されるまで繰り返した。各試験領域で新しいバフィングパッドを使用した。残留したポリッシュは柔らかい布で拭いて除去した。各試験領域に「激しい」擦り傷がないか、またパネルの試験領域の水平特性(「オレンジピール」の減少)を検査した。
【0052】
【表2】
【0053】
表2の結果を見直すと、複数の周辺孔(比較B)のみの使用、又は中央孔(比較C)のみの使用は3倍の切除率及び2.5倍の持続期間を有したが、発泡体裏打ち研磨物品(比較A)と比較すると、試験パネルの仕上げ又はポリシングは不良(不適正)であった。しかしながら、中央孔及び複数の周辺孔の両方を含めることにより、実施例の3倍の切除率及び2.5倍の持続期間をもたらしつつ、仕上げの問題を解決した。加えて、孔の開口面積が大きくなると、優れた仕上げをもたらす研磨ディスクの性能が向上し、試験パネルに優れた仕上げをもたらすことが可能になる。最終的に、上記の不織布層は、以前の発泡体裏材と比較して切除率を3倍にし、持続期間を2.5倍にするという性能の増加に著しく寄与したと考えられる。発泡体から不織布に適合層を替えることにより性能3倍になることは、まったく驚くべきことであり予想外であった。
【0054】
実施例8、比較例F、及び比較例G
実施例8、比較例F、及び比較例Gは、中央孔のサイズが研磨物品の性能に寄与することを示す。
【0055】
実施例8
実施例8の研磨物品は、中央孔が直径10mmであったことを除いて、実施例5と同様に調製した。
【0056】
比較例F
比較例Fの研磨物品は、中央孔を備えていなかったことを除いて、実施例5と同様に調製した。
【0057】
比較例G
比較例Gの研磨物品は、中央孔が直径5mmであったことを除いて、実施例5と同様に調製した。
【0058】
実施例8、比較例H、及び比較例Gはポリシング試験に従って試験し、実施例5と比較した。結果を表3に示す。表を参照すると、直径5mmの中央孔は必要な仕上げをもたらさなかった。直径10mmの中央孔は適正な仕上げをもたらし、直径14mmの中央孔は良好な仕上げをもたらした。
【0059】
【表3】
【0060】
当業者は、より具体的に添付の請求項に記載した本開示の趣旨及び範囲から逸脱せずに、本開示への他の修正及び変更を行うことが可能である。異なる実施形態の態様を異なる実施形態の他の態様と部分的若しくは全体的に互換すること又は組み合わせることが可能である点は理解されるであろう。特許証のための上記の出願において引用された、参照文献、特許、又は特許出願はいずれも一貫性を有するようにそれらの全容を本明細書に援用する。これらの援用文献の一部と本明細書との間に不一致又は矛盾がある場合、上記の説明文における情報が優先するものとする。特許請求される開示内容を当業者が実行することを可能ならしめるために示される上記の説明文は、「特許請求の範囲」及びその全ての均等物によって規定される本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。