特許第6143863号(P6143863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143863
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】二酸化合物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 51/06 20060101AFI20170529BHJP
   C07C 55/02 20060101ALI20170529BHJP
   C07C 55/10 20060101ALI20170529BHJP
   C07C 57/145 20060101ALI20170529BHJP
   C07C 63/16 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C07C51/06
   C07C55/02
   C07C55/10
   C07C57/145
   C07C63/16
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-522022(P2015-522022)
(86)(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公表番号】特表2015-522594(P2015-522594A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】EP2013063363
(87)【国際公開番号】WO2014012754
(87)【国際公開日】20140123
【審査請求日】2016年5月24日
(31)【優先権主張番号】1256996
(32)【優先日】2012年7月19日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508076598
【氏名又は名称】ロディア オペレーションズ
【氏名又は名称原語表記】RHODIA OPERATIONS
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ロラン・ジャコ
(72)【発明者】
【氏名】ブシュラ・リュール
【審査官】 前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−056624(JP,A)
【文献】 特開2006−104099(JP,A)
【文献】 特表2011−500541(JP,A)
【文献】 特開2008−094884(JP,A)
【文献】 特表2010−513404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/00
C07C 55/00
C07C 57/00
C07C 63/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を存在させずに160℃〜220℃の温度において実施される、少なくとも1つの環状イミド化合物の加水分解反応工程を含む、少なくとも1つのジカルボン酸化合物を製造する方法。
【請求項2】
前記イミド化合物が、一般式(I)
【化1】
の化合物または化合物の混合物であり、前記ジカルボン酸化合物が、一般式(II)
【化2】
の化合物または化合物の混合物であり、式中、−A−は、2〜12の炭素原子を含む鎖状または分岐、飽和または不飽和二価炭化水素系を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記−A−が、2〜6の炭素原子を含む飽和二価炭化水素系を表す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記−A−が、−CH2−CH2−CH(CH3)−および−CH2−CH(CH2CH3)−からなる群から選択される、請求項2および3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
式(I)の前記イミド化合物が、2−メチルグルタルイミド、2−エチルコハク酸イミドおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の前記ジカルボン酸化合物が、2−メチルグルタル酸、2−エチルコハク酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項2〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
グループ−A−が、2〜6の炭素原子を含む不飽和二価炭化水素系を表す、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記加水分解反応工程前に、少なくとも1つのイミド化合物を水と接触させて、前記イミド化合物と水の混合物を得る工程を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
接触工程後、前記水と前記イミド化合物のモル比は、10〜100である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記加水分解工程を170℃〜200℃の温度で行う、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記加水分解反応工程の時間は30分〜6時間である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記加水分解反応はアンモニアを生成し、前記アンモニアを除去する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記アンモニアを窒素によるストリッピングまたは水蒸気エントレインメントにより除去する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
形成された前記ジカルボン酸化合物を回収する工程を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
蒸留により得られた前記ジカルボン酸化合物を精製する工程を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化合物を製造する方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、加水分解反応を用いて、二酸化合物を製造する方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、2−メチルグルタル酸(MGAとしても知られている)および2−エチルコハク酸(ESAとしても知られている)等の分岐二酸化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
MGAは、化学工業部門において将来有望である。ナイロンの製造に用いられているアジピン酸の代わりになり得る官能性を持つ混合物である。ポリウレタン、可塑剤および洗剤製造のためのモノマーとして、または溶媒としてアジピン酸の代わりとして用いることができる。
【0005】
過剰の塩基性ヒドロキシル化合物を存在させてジニトリル化合物の加水分解により、二酸化合物を調製し、得られたカルボキシル塩を鉱酸と反応させて、二酸化合物を回収することは公知である。
【0006】
過剰の強鉱酸を存在させてジニトリル化合物の加水分解により二酸化合物を調製することも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
大量の試薬を用いる他に、これらの方法には、品質向上不可の副生成物を大量に生成し、その処理と分解が必要となる、という欠点がある。
【0008】
上述の欠点のない二酸化合物を製造する改善された方法が求められている。
【0009】
本発明の目的の一つは、変換度および収率が、優れていないにしても、先行技術の方法と同等で、工業的規模で容易に実施でき、かつ安価な、二酸化合物を製造する方法を提案することである。
【0010】
本発明の他の目的は、環境に有害な廃液または副生成物を大量に発生しない方法を提案することである。
【0011】
本発明の他の目的は、副産物を容易に回収でき、その品質を向上させる方法を提案することである。
【0012】
本発明の他の目的は、ブタジエンのヒドロシアン化の副産物の品質を向上させる清浄な方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的を達成するための本発明の対象は、少なくとも1つのイミド化合物の加水分解工程を含む、少なくとも1つの二酸化合物を製造する方法である。
【0014】
本発明は、触媒を存在させずに実施される、少なくとも1つのイミド化合物の加水分解反応工程を含む、少なくとも1つの二酸化合物を製造する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
反応A→Bにおいて、反応終了時の試薬Aの変換度τ(A)は、最初に導入されたAのモル数n0(A)と反応終了時に残ったAのモル数n(A)との差の、最初に導入されたAのモル数n0(A)に対する比により定義される。
【数1】
【0016】
反応A→Bにおいて、反応終了時に形成された生成物Bの収率η(B)は、形成されたBのモル数n(B)の、最初に導入された試薬Aのモル数n0(A)に対する比により定義される。
【数2】
【0017】
反応A→Bにおいて、反応終了時に形成された生成物Bの選択度S(B)は、反応終了時の生成物Bのモル数n(B)の、消費された限定試薬Aのモル数n0(A)−n(A)に対する比により定義される。
【数3】
【0018】
本特許出願において、「二酸化合物」という用語は、2つのカルボン酸官能基(−C(O)OH)を含む有機化学化合物を意味する。二酸化合物は、好ましくは、C4〜C20化合物である。同じ化合物内の2つのカルボン酸官能基は、好ましくは、少なくとも2つの炭素原子、典型的には、2つまたは3つの炭素原子により分離されている。すなわち、2つのカルボン酸官能基は、同じ炭素原子に位置していない。
【0019】
二酸化合物は、任意選択により、反応媒体中の、加水分解反応から誘導されるアンモニアの存在のために、アンモニウムモノカルボキシレートの形態にある。
【0020】
かかる化合物は、ポリウレタン製造のためのモノマーとして特に有用である。
【0021】
本特許出願において、「イミド化合物」という用語は、環状イミド官能基(−C(O)−NH−C(O)−)、すなわち、環に含まれるイミド官能基を含む複素環有機化学化合物を意味する。イミド化合物は、好ましくは、C4〜C20化合物である。好ましくは、イミド化合物の複素環は、典型的には、2〜12の炭素原子と、イミド官能基の窒素原子からなる。
【0022】
一実施形態によれば、イミド化合物は、以下の一般式(I)
【化1】
の化合物または化合物の混合物であり、二酸化合物は、以下の一般式(II)
【化2】
の化合物または化合物の混合物であって、式中、ラジカル−A−は、2〜12の炭素原子を含む鎖状または分岐、飽和または不飽和二価炭化水素系ラジカルを表す。
【0023】
ラジカル−A−は、典型的に、平均で少なくとも2つの炭素原子、好ましくは、2〜6、有利には、2〜4、好ましくは、4つの炭素原子を含む二価アルキレン基である。
【0024】
イミド化合物は、例えば、式(I)の異なる化合物の混合物であり、様々なラジカル−A−は、好ましくは、同数の炭素原子を含む異性体ラジカルである。
【0025】
式(I)の化合物の混合物を用いると、本方法のある用途において有利であることが分かる。
【0026】
このように、本発明の方法は、単一のイミド化合物または異性体であってもなくてもよいイミド化合物の混合物を用いて行うことができる。
【0027】
好ましくは、ラジカル−A−は分岐している。好ましくは、ラジカル−A−は飽和している。
【0028】
他の実施形態によれば、ラジカル−A−は鎖状である。
【0029】
他の実施形態によれば、ラジカル−A−は不飽和である。
【0030】
好ましくは、ラジカル−A−は非置換炭化水素系ラジカル、すなわち、炭素と水素原子のみからなるラジカルである。
【0031】
一実施形態によれば、ラジカル−A−は、窒素、酸素または硫黄原子等のヘテロ原子を含む側鎖で置換された鎖状アルキル鎖である。ラジカル−A−は、−CN、−OH、−O(C1〜C6)アルキル、フェニルおよび−Oフェニル基およびハロゲンにより形成された基から選択される1つ以上の側鎖で置換されていてよい。
【0032】
一実施形態によれば、ラジカル−A−は、2〜6の炭素原子を含む飽和二価炭化水素系ラジカル、特に、C2〜C6アルキレンラジカル、好ましくは分岐した一般式−C48を表す。
【0033】
本実施形態によれば、ラジカル−A−は、−CH2−CH2−CH(CH3)−および−CH2−CH(CH2CH3)−ラジカルからなる群から選択される。
【0034】
一実施形態によれば、本発明の方法は、2−メチルグルタルイミド、2−エチルスクシンイミドおよびこれらの混合物を用いて実施してよい。
【0035】
本実施形態によれば、2−メチルグルタル酸、2−エチルコハク酸およびこれらの混合物がそれぞれ得られる。
【0036】
特に、分岐イミド化合物、具体的には、
− 70モル%〜95モル%、好ましくは、75モル%〜90モル%の2−メチルグルタルイミド、
− 5モル%〜30モル%、好ましくは、5モル%〜20モル%の2−エチルスクシンイミド
を含む材料組成物を用いることができる。
【0037】
一実施形態によれば、式(I)の出発イミドは、メチルグルタロニトリル(MGN)から得られる、またはブタジエンの二重ヒドロシアン化によりアジポニトリルを製造する方法から誘導されるジニトリルの混合物から得られる2−メチルグルタルイミド(MGI)である。この混合物は、好ましくは、分岐ジニトリル(2−メチルグルタロニトリルおよび2−エチルスクシノニトリル)をアジポニトリルから分離する蒸留分に対応する。
【0038】
このジニトリルの混合物は、概して、重量基準で以下の組成を有する。
− 2−メチルグルタロニトリル:70%〜95%、好ましくは、80%〜85%、
− 2−エチルスクシノニトリル:5%〜30%、好ましくは、8%〜12%、
− アジポニトリル:0%〜10%、好ましくは、1%〜5%、
様々な不純物に相当する100%までの残部。
【0039】
式(I)の出発イミド化合物、特に、それが2−メチルグルタルイミド(MGI)であるときは、2−メチルグルタロニトリル(MGN)から、または上述したジニトリルの混合物から、例えば、MGNまたはジニトリルの混合物と酸の反応プロセスにより得られる。水と、例えば、酸化チタンタイプの触媒を存在させた、MGNまたはジニトリルの混合物の加水分解プロセスによっても得ることができる。
【0040】
一実施形態によれば、典型的に、この材料組成で出発して、本発明の方法により、2−メチルグルタル酸、2−エチルコハク酸およびこれらの混合物を得ることができる。
【0041】
一実施形態によれば、ラジカル−A−は、好ましくは、エチレニルラジカルと、o−フェニレンラジカルからなる群から選択される2〜6の炭素原子を含む不飽和二価炭化水素系ラジカルを表す。
【0042】
「エチレニルラジカル」という用語は、式
【化3】
のラジカルを意味する。
【0043】
「o−フェニレンラジカル」という用語は、式
【化4】
のラジカルを意味する。
【0044】
一実施形態によれば、本発明の方法は、マレイミドまたはフタルイミドを用いて実施される。
【0045】
本実施形態によれば、本発明の方法によって、それぞれ、マレイン酸とフタル酸を得ることができる。
【0046】
本発明はまた、本方法により得ることのできる、または直接得られる材料組成を含む生成物にも関する。本発明はまた、これらの生成物または材料組成の、特に、溶媒、共溶媒、モノマーおよび合成中間体としての使用にも関する。
【0047】
本発明によれば、イミド化合物は、加水分解されて、水分子との反応により、二酸化合物となる。二酸化合物は、イミド化合物の加水分解生成物と言われている。
【0048】
より具体的には、出発イミド化合物は、イミド化合物のイミド官能基の加水分解により二酸化合物へと加水分解される。イミド官能基の加水分解により、イミド化合物の複素環の開環がなされる。
【0049】
このように、各二酸化合物の2つのカルボン酸官能基の炭素原子は、対応のイミド化合物のイミド官能基の炭素原子に対応する。
【0050】
イミド化合物の加水分解反応と複素環の開環中、アンモニア分子が形成される。
【0051】
概略的には、本発明の方法におけるイミド化合物の二酸化合物への加水分解反応は、以下のように表される。
【化5】
【0052】
反応媒体において、得られる二酸化合物は、任意選択により、アンモニウムモノカルボキシレートの形態にある。
【化6】
【0053】
本発明の方法の加水分解反応工程は、水の存在下、好ましくは、水の存在下のみで実質的に行われる。
【0054】
本発明の方法の加水分解反応工程は、触媒を存在させずに行われる。
【0055】
本発明によれば、イミド化合物は、いかなる量であっても触媒を存在させたイミド化合物なしで二酸化合物へと加水分解される。このように、微粒子材料または固定床に担持された均一系触媒または不均一系触媒は用いられない。
【0056】
本特許出願において、「触媒」という用語は、化学反応、たとえば、加水分解反応を促進する化合物を意味する。
【0057】
本特許出願のために、触媒は、試薬に対して準化学量論(典型的に、5モル%未満)で用いられる。
【0058】
酸性または塩基性触媒であってよい。
【0059】
「酸性触媒」という用語は、ルイス酸に含まれる酸性触媒を意味し、文献、特に、Jerry March、Advanced Organic Chemistry、第3版、John Wiley&Sons、1985年、227頁以下参照、に定義されている。
【0060】
「塩基性触媒」という用語は、ルイス塩基に含まれる塩基性触媒を意味し、文献、特に、Jerry March、Advanced Organic Chemistry、第3版、John Wiley&Sons、1985年、227頁以下参照、に定義されている。
【0061】
「触媒」という用語は、特に、アルカリ金属、アルカリ土類金属および/またはランタノイド水酸化物および/または酸化物に基づく不均一系触媒を意味する。特に、アルミナ、酸化チタン、マグネシア(MgO)、Mg(OH)2、CaO、Ca(OH)2、BaO、Ba(OH)2、ヘテロポリ酸、ペンタシルおよびフォージャサイト型のゼオライト、クレイ、金属ホスフェート、シリカ/アルミナ混合物等であってよい。特に、原子価状態IVでない、アルカリ土類金属および/または希土類金属酸化物、加水分解物および塩基性塩、ならびにこれを含有する鉱物から選択される触媒であってよい。
【0062】
「酸性触媒」という用語はまた、塩酸、硫酸または硝酸の水溶液等、強酸の水溶液も意味する。
【0063】
「塩基性触媒」という用語はまた、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム溶液等の強塩基の水溶液も意味する。
【0064】
本発明者らは、意外にも、イミド化合物の二酸化合物への加水分解反応が、触媒の存在を必要としないということを知見した。本発明者らは、さらに意外にも、触媒を用いる方法と同等の変換度、収率および反応時間を得ることのできる、触媒を用いない方法を知見した。
【0065】
一実施形態によれば、本発明による方法の他の利点は、通常、分離、処理および分解させる必要のある塩を生成しないということである。
【0066】
具体的には、本実施形態によれば、イミド化合物の加水分解により形成されたアンモニアは、形成されている最中に徐々にガス状形態で、かつ/または反応終了時に、蒸留により除去することができる。本方法の詳細な態様については後述する。
【0067】
一実施形態によれば、本発明による方法は、加水分解反応工程の前、少なくとも1つのイミド化合物を水と接触させて、イミド化合物と水の混合物を得る工程を含む。
【0068】
加水分解反応の出発試薬は、このように、接触配置される。好ましくは、接触配置される試薬はイミド化合物(またはイミド化合物の混合物)と水だけである。
【0069】
接触配置の工程は、水とイミド化合物を含む混合物を調製することからなる。
【0070】
水は、溶媒と試薬の両方として作用する。
【0071】
本発明による方法の加水分解反応は、典型的に、リアクターにおいて実施され、本発明の方法の加水分解反応の反応媒体を構成する、少なくとも1つのイミド化合物と水で予め充填される。
【0072】
この混合物は、リアクターにおいて調製される、あるいは、リアクター外で調製されてから、リアクターへ導入することができる。
【0073】
イミド化合物と水の接触配置は、概して、方法の開始時に行われる。
【0074】
あるいは、一実施形態によれば、イミド化合物と水の接触配置は、特に、連続形態の方法の場合には、加水分解反応中に続けることができる。この場合、イミド化合物および/または水は、連続的にリアクターに導入される。
【0075】
一実施形態によれば、接触配置工程後、水とイミド化合物のモル比は、10〜100、好ましくは、15〜30、好ましくは、約20に等しい。
【0076】
このモル比は、リアクターに導入された水の量(モル)対イミド化合物の量(モル)の比に対応する。
【0077】
上記モル比範囲により、触媒による先行技術の方法と同様の、イミド化合物の二酸化合物への変換度を得ることができる。
【0078】
モル比が、特に、15〜30、好ましくは、約20に等しいときに、最良の変換度が得られる。
【0079】
一実施形態によれば、本発明の方法の加水分解反応工程は、160℃〜220℃の温度で実施される。
【0080】
一実施形態によれば、イミド化合物の二酸化合物への加水分解反応が生じる反応媒体の温度を160℃〜220℃に上げる。反応媒体のこの加熱は、電気加熱または熱交換流体による加熱等、業界に公知の任意の手段により行ってよい。
【0081】
反応媒体の加熱により、加水分解反応が促進され、二酸化合物を得るのに必要な時間が短縮される。
【0082】
一実施形態によれば、温度は、好ましくは、170℃〜200℃、好ましくは、約180℃に等しい。
【0083】
上記の温度範囲により、触媒による先行技術の方法と同様の、イミド化合物の二酸化合物への変換度を得ることができる。
【0084】
温度が、特に、170℃〜200℃、好ましくは、約180℃に等しいときに、最良の変換度が得られる。
【0085】
上述した本発明による方法の実施形態により、高度の変換度および/または高選択性を得る、かつ/または望ましくない副生成物の形成を制限することができる。
【0086】
加水分解反応工程は、典型的に、液相で実施される。
【0087】
すなわち、反応媒体は、この工程中、液体のままである。
【0088】
加水分解反応を加熱により実施するとき、特に、水の蒸発により圧力が生成される。
【0089】
好ましくは、加水分解反応は、1〜50バール、好ましくは、自己圧力で行われる。すなわち、リアクター中の圧力は、反応媒体の加熱によってのみ生成される。
【0090】
一実施形態によれば、リアクターは、蒸気およびガス状形態のその他化合物、特に、形成されたアンモニアを逃がす弁等、圧力を監視制御する手段を備えている。
【0091】
本発明の方法は、反応中、リアクターの内側と外側の間で物質の交換のない密閉システムで行うことができる。
【0092】
本発明の方法は、典型的には、圧力制御手段を介する、またはリアクターを時折開けることにより、反応中、リアクターの内側と外側の物質を交換可能な開放システムで行うことができる。
【0093】
本発明の方法によれば、加水分解反応工程の時間は、概して、30分〜6時間、好ましくは、2時間〜4時間である。
【0094】
本発明の方法によって、触媒を用いた先行技術の方法と同等の反応時間で十分な変換度が得られる。
【0095】
イミド化合物の加水分解反応中、アンモニアが形成される。
【0096】
本発明の方法は、アンモニアの除去を可能とする開放システムで行うのが好ましい。
【0097】
具体的には、密閉システムだと、アンモニアが反応媒体から除去されず、形成された二酸化合物は、水に溶解したアンモニウムモノカルボキシレートの形態で主に見られる。
【化7】
【0098】
本発明の有利な実施形態によれば、方法後に得られるアンモニウムモノカルボキシレートの割合が減じる。
【0099】
後述するように、有利な実施形態によれば、アンモニアの後の蒸留により、アンモニウムモノカルボキシレートの二酸形態への変換が可能である。
【0100】
本発明の方法の一実施形態によれば、加水分解反応により生成されるアンモニアが、反応媒体から、連続的または時折、任意選択により繰り返し、除去される。
【0101】
本実施形態の利点は、媒体中のアンモニア濃度が減じ、平衡をシフトすることにより加水分解反応を促すことである。
【0102】
さらに、これによって、アンモニウムモノカルボキシレート形態の二酸化合物の割合が減じ、酸形態の二酸化合物の割合が増える。
【0103】
本発明の一変形によれば、アンモニアは、水蒸気の同伴により除去される。
【0104】
この変形によれば、水蒸気の同伴により、ガス状形態で、アンモニアはリアクターから引かれる。この変形により、アンモニアを連続的に除去することができる。
【0105】
アンモニアは、特に、圧力を一定に保つことができ、圧力がある値を超えるとガスを逃がし、必要に応じて、逃がした後の液化が可能な好適なデバイスを用いて引かれる。このデバイスは、リアクターから管によって分離することができる。
【0106】
アンモニアの除去に伴い、ガス状形態の水も同時も除去される。水の同時除去を制限しようとするのが好ましい。このためには、例えば、デバイスリアクターを分離する管に沿ってガスを冷却して、水を少なくとも部分的に液化し、それをリアクターに戻すことができる。除去されたガスは回収および再利用され、必要に応じて、アンモニアと水が分離される。分離後、加水分解工程を行うために水を再利用することができる。水はまた、リアクターに連続的に再注入することもでき、蒸発して、アンモニアを同伴した水を新たなものにする。
【0107】
他の変形によれば、アンモニアは、窒素によるストリッピングにより除去される。
【0108】
「窒素によるストリッピング」とは、窒素で洗い流す、すなわち、ガス状形態のアンモニアを同伴するために、加圧下の窒素ストリームを、加水分解反応を行っているリアクターに通過させる工程を意味する。「リアクターを通る」という用語は、リアクターのヘッドスペースおよび/または反応媒体を意味する。これは、ある意味、ガス/液体抽出である。
【0109】
窒素によるストリッピング工程は、方法中1回以上、好ましくは、少なくとも2回行う。
【0110】
あるいは、典型的には、開放システムにおいて方法を実施する場合、窒素によるストリッピングは、反応媒体に注入される窒素フローを制御することにより、加水分解反応中、連続的に行うことができる。
【0111】
このように、ガス状形態で除去されたアンモニアは、有利には、凝縮により回収されて、品質を向上させることができる。
【0112】
除去されたアンモニアは、典型的に、アンモニアを含有するガスを冷蔵管に通過させることにより回収することができる。
【0113】
回収されたアンモニアは、直接、品質向上する、または、例えば、蒸留により精製して、残留水を分離して、例えば、硝酸またはシアン化水素を調製するプロセスにおいて、品質の向上したアンモニアを得ることができる。
【0114】
加水分解反応が完了すると、イミド化合物の加水分解の生成物が、形成された二酸化合物の回収工程中に回収される。
【0115】
概して、水、任意選択により、部分的にアンモニウムモノカルボキシレートの形態の二酸化合物、任意選択によりアンモニア、および任意選択により未反応イミド化合物を含む反応混合物が回収される。
【0116】
得られた二酸化合物は、一般的な技術により、例えば、イオン交換樹脂での処理、活性炭での処理、蒸留、結晶化または液体/液体抽出により精製することができる。
【0117】
二酸化合物は、概して、300℃を超える比較的高沸点を有する。1気圧でのMGAの沸点は特に320℃である。
【0118】
得られた二酸化合物は、好ましくは、蒸留工程中に精製される。
【0119】
蒸留により得られた二酸化合物のこの精製工程によって、水、未反応試薬、また、加水分解反応の副生成物、特に、形成されたアンモニア等の二酸化合物でない化合物の全てまたは一部をガス状形態で除去することができる。
【0120】
この工程によってまた、アンモニアを除去することにより、アンモニウムモノカルボキシレート形態の化合物を酸形態の化合物へ変換することができる。
【0121】
この工程の利点は、アンモニウムモノカルボキシレート形態の化合物の割合を減じ、酸形態の化合物の割合を増やすということである。
【0122】
一実施形態によれば、MGIの加水分解により得られた混合物は、プレート蒸留または充填蒸留塔またはその他好適な機器を備えたボイラーに入れられる。そのシステムに0.1〜70ミリバール、典型的に、0.7ミリバールの減圧をかける。ボイラー中の混合物は、140℃〜200℃、好ましくは、145℃〜180℃の塔頂温度まで加熱される。
【0123】
本発明の方法は、バッチ方式、不連続方式または連続方式で実施することができる。
【実施例】
【0124】
本発明の方法を、本発明を限定することなく例証する以下の実施例において説明する。
【0125】
二酸化合物および有機不純物分析のためのHPLC、電位差測定、モノカルボキシレート、二酸化合物およびアンモニア分析のためのNMRにより分析を行った。
【0126】
実施例1:MGN/ESN混合物からのMGI/ESI混合物の調製
実施例で用いるイミド化合物の混合物を、以下の重量組成を有するジニトリル化合物の混合物から出発して、以下の方法に従って得た。87%の2−メチルグルタロニトリル(MGN)、11%の2−エチルスクシノニトリル(ESN)および0.5%のアジポニトリル(ADN)。
【0127】
1ml/時のジニトリル混合物と1ml/時の水を、2つのシリンジポンプを用いて、275℃まで加熱した5mlのガラス粉の2層間に配置された4mlの酸化チタン(アナターゼ)で構成された触媒床に同時注入し、3l/時の窒素ストリームで洗い流す。6時間の反応後、97%のジニトリル変換率と、94%のイミド混合物収率が得られ、混合物は以下の重量組成を有していた。85.5質量%の2−メチルグルタルイミド(MGI)、10.8質量%の2−エチルスクシンイミド(ESI)、残部は有機不純物。
【0128】
比較例:加水分解反応に与える触媒の影響
実施例1のイミド混合物(1.0g)および大過剰の水(1等量のイミド当たり50等量の水)を続けてリアクターに入れる。
【0129】
触媒なしで試験を行う:例A。
【0130】
触媒ありで他の試験を行う:例Bは、0.1gのゼオライト13X触媒(Zeolyst Hβ)、例Cは、0.1gのMgO触媒(Aldrich)。
【0131】
リアクターを閉じた後、振とうによる攪拌なしで200℃まで加熱する。
【0132】
1時間の加熱後、温めながら(水の沸点より高い)、ヘッドスペースをパージして、形成されたアンモニアを除去する。その後、リアクターをさらに2時間加熱して、完全に冷却する前に温めながら再びパージする。
【0133】
続いて、反応媒体を濾過し、適宜、触媒を除去し、HPLCによる分析のために希釈する。
【0134】
以下の結果が得られる。
【0135】
【表1】
【0136】
ゼオライトタイプの触媒の場合、変換度は不十分である。反応は、触媒なし、またはMgO等の塩基性酸化物を存在させて行うと、変換度は90%を超える。
【0137】
触媒なしの試験で、MgO触媒ありの試験と同じ性能が得られる。
【0138】
実施例2:密閉システム(ストリッピングまたは蒸気エントレインメントなし)におけるMGIのMGAへの加水分解
実施例2A
水(72.2ml)中実施例1のイミド化合物(10.54g、80.1mmol)の混合物を、室温の密閉した300mlのオートクレーブに入れる。このシステムを機械的に攪拌しながら、窒素で3回パージする。
【0139】
8バールの自己圧力で180℃で4時間加熱する。
【0140】
反応混合物を室温で集める。得られた液体を秤量すると90.7gである。水は60℃で減圧下で蒸発させる。17.48gの粘性褐色混合物が回収される。
【0141】
この混合物は、酸形態(二酸)およびアンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のMGAおよびESAを含む。
【0142】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は97%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は80%(5%二酸および75%モノカルボキシレート)である。
【0143】
密閉システムにおいて、すなわち、アンモニアを除去する手段なしで、カルボキシレート形態のMGAが非常に多く得られる。
【0144】
実施例2B
水(72.1ml)中実施例1のイミド化合物(10.55g、80.1mmol)の混合物を、室温の密閉した300mlのオートクレーブに入れる。このシステムを機械的に攪拌しながら、窒素で3回パージする。
【0145】
8バールの自己圧力で180℃で6時間加熱する。
【0146】
反応混合物を室温で集める。得られた液体を秤量すると80.04gである。水は60℃で減圧下で蒸発させる。21.3gの粘性褐色混合物が回収される。
【0147】
この混合物は、酸形態(二酸)およびアンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のMGAおよびESAを含む。
【0148】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は96%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は84%(7%二酸および77%モノカルボキシレート)である。
【0149】
密閉システムにおいて、すなわち、アンモニアを除去する手段なしで、カルボキシレート形態のMGAが非常に多く得られる。
【0150】
実施例3:窒素によるアンモニアのストリッピングでのMGIからMGAへの加水分解
実施例3A
水(72ml)中実施例1のイミド化合物(10.55g、80.1mmol)の混合物を、室温の密閉した300mlのオートクレーブに入れる。このシステムを機械的に攪拌しながら、窒素で3回パージする。
【0151】
8バールの自己圧力で180℃で2時間加熱する。リアクターの温度を70℃まで減じ、窒素をヘッドスペースにおいて30分間循環させて、アンモニアをストリッピングする。
【0152】
同じく180℃、8バールで加熱を2時間再開する。システムを冷却し、30分間、窒素を循環させることによりアンモニアを再びストリッピングする。
【0153】
反応混合物を室温で集める。得られた液体を秤量すると77.8gである。水は60℃で減圧下で蒸発させる。13.5gの粘性褐色混合物が回収される。
【0154】
この混合物は、酸形態(二酸)およびアンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のMGAおよびESAを含む。
【0155】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は93%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は82.1%(10.6%二酸および71.5%モノカルボキシレート)である。
【0156】
実施例3B
水(72.5ml)中実施例1のイミド化合物(10.4g、79.1mmol)の混合物を、室温の密閉した300mlのオートクレーブに入れる。このシステムを機械的に攪拌しながら、窒素で3回パージする。
【0157】
14バールの自己圧力で200℃で2時間30分加熱する。リアクターの温度を70℃まで減じ、窒素をヘッドスペースにおいて30分間循環させて、アンモニアをストリッピングする。
【0158】
同じく200℃、14バールで加熱を2時間30分再開する。システムを冷却し、30分間、窒素を循環させることによりアンモニアを再びストリッピングする。
【0159】
反応混合物を室温で集める。得られた液体を秤量すると75.7gである。水は60℃で減圧下で蒸発させる。12.7gの粘性褐色混合物が回収される。
【0160】
この混合物は、酸形態(二酸)およびアンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のMGAおよびESAを含む。
【0161】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は87%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は85%(25%二酸および60%モノカルボキシレート)である。
【0162】
実施例3C
水(71.9ml)中実施例1のイミド化合物(10.7g、81.4mmol)の混合物を、室温の密閉した300mlのオートクレーブに入れる。このシステムを機械的に攪拌しながら、窒素で3回パージする。
【0163】
8バールの自己圧力で180℃で3時間加熱する。リアクターの温度を70℃まで減じ、窒素をヘッドスペースにおいて30分間循環させて、アンモニアをストリッピングする。
【0164】
同じく180℃、8バールで加熱を3時間再開する。システムを冷却し、30分間、窒素を循環させることによりアンモニアを再びストリッピングする。
【0165】
反応混合物を室温で集める。得られた緑色の液体を秤量すると79.7gである。
【0166】
この混合物は、酸形態(二酸)およびアンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のMGAおよびESAを含む。
【0167】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は93%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は83%(8%二酸および75%モノカルボキシレート)である。
【0168】
得られた回収された液体を、凝縮器とトラップを備えたボイラーに入れ、2ミリバールの低真空下で165℃のボイラー温度で蒸留する。
【0169】
ボイラーの中身(二酸)およびトラップの中身(アンモニウム塩)を電位差滴定により分析する。
【0170】
【表2】
【0171】
水、MGI、MGAおよびMGAアンモニウムモノカルボキシレートを含有する反応混合物の蒸留によって、MGAアンモニウム塩をMGAへ変換し、アンモニアを除去し、かつ二酸形態のMGAの収率も増やすことができる。
【0172】
実施例4:水蒸気でのアンモニアの連続エントレインメントによるMGIのMGAへの加水分解
水(72.6ml)中実施例1のイミド化合物(10.6g、80.7mmol)の混合物を、室温の密閉した300mlのオートクレーブに入れる。このシステムを機械的に攪拌しながら、窒素で3回パージする。
【0173】
16バールの自己圧力で200℃で5時間加熱する。HPLCポンプを用いて水を連続的に添加する(約0.5〜1ml/分)。
【0174】
形成されたアンモニアを水蒸気でエントレインする。水出口速度をマイクロメーター弁により手動で調整する。圧力は、試験中、徐々に減少する。アンモニアは、酸性化水を含むフラスコとフェノールフタレインのスパチュラ先端にトラップされて、酸性媒体の塩基性媒体への通過を可視化する。
【0175】
反応混合物を室温で集める。
【0176】
得られた液体を秤量すると124.9gである。
【0177】
この混合物は、酸形態(二酸)およびアンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のMGAおよびESAを含む。
【0178】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は96%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は78%(42%二酸および36%モノカルボキシレート)である。
【0179】
水蒸気での連続エントレインメントにより、等量のMGAモノカルボキシレートとの混合物として酸形態のMGAが得られる。
【0180】
反応混合物およびトラップ中のアンモニアの量も、出発MGIの量に対して分析する。
【0181】
【表3】
【0182】
水蒸気の連続エントレインメントによって、反応媒体から大量のアンモニアを除去することができる。
【0183】
実施例5:窒素によるストリッピングと水蒸気による連続エントレインメントの影響
実施例2A、2B、3A、3B、3Cおよび4の結果から、窒素によるストリッピングと水蒸気による連続エントレインメントの二酸化合物の収率に与える影響が明らかに示されている。
【0184】
【表4】
【0185】
高選択性S(二酸+モノカルボキシレート)は、イミド化合物の加水分解反応によって、二酸化合物(二酸形態またはモノカルボキシレート形態)が実質的に得られることを示している。
【0186】
実施例6:H2O/イミドモル比の影響
密閉システムにおいて、水のモル数と導入したイミドのモル数の比を変えて試験を行った。
【0187】
【表5】
【0188】
最良の収率はモル比が約20に等しいときである。
【0189】
実施例7:連続システムにおけるMGIからMGAへの加水分解
実施例1のイミド化合物の16質量%での混合物の水溶液を、0.36ml/分の流量で、加熱システムを備えた20ml管形リアクターに熱交換流体を介して連続的に導入する。反応温度は210℃で、反応出口圧力は20バールに調整する。この温度での滞留時間は約1時間である。
【0190】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は90%であり、二酸+モノカルボキシレートの収率は83%(17%二酸および66%モノカルボキシレート)である。
【0191】
実施例8:密閉システムにおけるスクシンイミドのコハク酸への加水分解
0.71gのスクシンイミド(Aldrich)および6.0gの水を10mlの密閉オートクレーブに室温で入れる。4時間、200℃で自己圧力で加熱する。
【0192】
反応混合物を室温で集める。得られた褐色液体を秤量すると6.21gである。水を減圧下、60℃で蒸発させる。
【0193】
この混合物は、アンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のコハク酸を実質的に含む。
【0194】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は91%であり、モノカルボキシレートに対する選択性は96%である。
【0195】
実施例9:密閉システムにおけるフタルイミドのフタル酸への加水分解
1.01gのフタルイミド(Aldrich)および6.05gの水を10mlの密閉オートクレーブに室温で入れる。4時間、200℃で自己圧力で加熱する。
【0196】
反応混合物を室温で集める。得られた褐色液体を秤量すると7.06gである。水を減圧下、60℃で蒸発させる。
【0197】
この混合物は、アンモニウム塩(モノカルボキシレート)形態のフタル酸を実質的に含む。
【0198】
HPLCおよび電位差滴定による分析から、変換度は90%であり、二酸+モノカルボキシレートに対する選択性は92%(2%二酸および90%モノカルボキシレート)である。