特許第6143876号(P6143876)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143876優れた機械的特性を保持する、タイガーストライプが改善した又は発生しないPP化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143876
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】優れた機械的特性を保持する、タイガーストライプが改善した又は発生しないPP化合物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/14 20060101AFI20170529BHJP
   C08F 210/06 20060101ALI20170529BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20170529BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C08L23/14
   C08F210/06
   C08K3/34
   B29C45/00
【請求項の数】18
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2015-544285(P2015-544285)
(86)(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公表番号】特表2015-537087(P2015-537087A)
(43)【公表日】2015年12月24日
(86)【国際出願番号】CN2012001601
(87)【国際公開番号】WO2014082188
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2015年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】514288646
【氏名又は名称】ボルージュ コンパウンディング シャンハイ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(72)【発明者】
【氏名】ジュ ジャンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ジエンドン
(72)【発明者】
【氏名】チェン シイ ピン
【審査官】 久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−105163(JP,A)
【文献】 特開2012−117005(JP,A)
【文献】 特開2001−288331(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/102050(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/025584(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08F 210/00−210/18
B29C 45/00−45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) ISO1133に従って測定される20.0g/10minから80.0g/10minのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して40.0wt%〜60.0wt%、
b) ISO1133に従って測定される0.05g/10minから0.5g/10minのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して3.0wt%〜20.0wt%、
c) 弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して少なくとも50.0wt%のエチレン単位含量を有する前記弾性エチレンコポリマー(EE)を、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜20.0wt%、
d) 高密度ポリエチレン(HDPE)を、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜10.0wt%、及び
e) 無機充填剤(F)をポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して15.0wt%〜25.0wt%、
を含むポリプロピレン組成物(PP)であって、
i) 第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の量が、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して、66.6wt%から95.2wt%までの範囲内であり、
ii) 第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の量が、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して4.8wt%から33.4wt%までの範囲内であり、
第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)が、
a’) ISO16152(25℃)に従って測定される、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して9.0wt%から20.0wt%の低温キシレン可溶性分(XCS)画分、
b’) 第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して3.0wt%から8.0wt%のエチレン含量、
c’) 3.0dl/gから4.0dl/gの固有粘度(IV)を有する非晶質(AM)相、及び
d’) 第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の非晶質(AM)画分の全重量に対して30.0wt%から37.0wt%のエチレン含量を有する非晶質(AM)相
を有する、
上記ポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項2】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)が、
a) ISO1133に従って測定される20.0g/10minから75.0g/10minのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又は
b) ISO16152(25℃)に従って測定される、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の全重量に対して15.0wt%から25.0wt%の低温キシレン可溶性分(XCS)画分、及び/又は
c) 第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の全重量に対して15.0wt%未満のエチレン含量、及び/又は
d) 2.0dl/gから3.0dl/gの固有粘度(IV)を有する非晶質(AM)相、及び/又は
e) 第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の非晶質(AM)相の全重量に対して33.0wt%から40.0wt%のエチレン含量を有する非晶質(AM)相
を有する、請求項1に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項3】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)が、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)及び前記マトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)を有し、かつ/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)が、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)及び前記マトリックス(PM2)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM2)を有する、請求項1又は2に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項4】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)が、
a) ISO1133に従って測定される30.0g/10minから250.0g/10minのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又は
b) ISO16152(25℃)に従って測定される、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の全重量に対して0.8wt%から3.0wt%の低温キシレン可溶性分(XCS)画分
を有する、請求項3に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項5】
第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)が、
a) ISO1133に従って測定される0.1g/10minから3.0g/10minのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又は
b) ISO16152(25℃)に従って測定される、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の全重量に対して2.0wt%未満の低温キシレン可溶性分(XCS)画分
を有する、請求項1又は3に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項6】
弾性エチレンコポリマー(EE)が、
a) エチレン単位及びC〜C12α−オレフィンから選択されるコモノマー単位を含み、かつ/又は
b) 弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して50.0wt%から75.0wt%のエチレン単位含量を有し、かつ/又は
c) ISO1133に従って測定される0.25g/10minから30.0g/10minのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する、
請求項1に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項7】
高密度ポリエチレン(HDPE)が、
a) ISO1133に従って測定される0.2g/10minから15.0g/10minのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)、及び/又は
b) 少なくとも930kg/mの密度
を有する、請求項1又は6に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項8】
無機充填剤(F)が、
a) タルク、雲母、炭酸カルシウム、珪藻土、ウォラストナイト及びカオリンからなる群より選択され、かつ/又は
b) 0.65μmから20μmの平均粒子径d50を有する、
請求項1〜7のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項9】
a) ISO178に従って測定される少なくとも1500MPaの曲げ弾性率、及び/又は
b)ISO180(1A;+23℃)に従って測定される30kJ/mより高いノッチ付きアイゾット衝撃強さ
を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項10】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)がα−核形成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物(PP)。
【請求項11】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)がα−核形成されている、請求項10に記載のポリプロピレン組成物(PP)
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物(PP)を含む、前記ポリプロピレン組成物(PP)からなる物品。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物(PP)からなる、請求項12に記載の物品。
【請求項14】
成形物品である、請求項12に記載の物品。
【請求項15】
射出成形物品である、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
成形物品を製造するための、請求項1〜11のいずれか1項に記載のポリプロピレン組成物(PP)の使用。
【請求項17】
射出成形物品を製造するための、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
請求項12又は13に記載の物品の製造における、前記物品の表面のタイガーストライプを減少させるためのポリプロピレン組成物(PP)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン組成物(PP)、前記ポリプロピレン組成物(PP)を含む物品並びに成形物品を製造するための前記ポリプロピレン組成物の使用及び物品の表面のタイガーストライプ(tiger stripe)を減少させるための前記ポリプロピレン組成物(PP)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、バンパー、ドアパネル、ダッシュボード又はドア外装材といった自動車部品用のポリマーは、一般にポリプロピレンが好まれる。特に、異相プロピレンコポリマーは、剛性と良好な衝撃挙動を兼ね備えているため適している。異相プロピレンコポリマーは当技術分野において周知であり、ポリプロピレンホモポリマー又はランダムポリプロピレンコポリマーのいずれかであるマトリックスを含み、その中に弾性コポリマーが分散している。つまり、ポリプロピレンマトリックスは、マトリックスの一部ではない(微細に)分散した介在物(inclusion)を含有し、前記介在物はエラストマーを含有する。介在物という用語は、マトリックスと介在物が異相プロピレンコポリマー中で異なる相を形成し、前記介在物が、例えば、高解像度顕微鏡、例えば電子顕微鏡若しくは原子間力顕微鏡などで見えることを示す。
【0003】
市販されているポリプロピレンは、剛性と耐衝撃性の非常に良好なバランスを実現しているものの、そのような系の全体としてのプロファイル要件は絶えず厳しくなるものである。例えば、ポリプロピレンは通常、射出成形されて、自動車用品及び家庭用品といった所望の物品となる。しかしながら、こうした物品は、例えば自動車バンパー、ドアパネル、ダッシュボード又はドア外装材など比較的大型であるため、ポリプロピレン樹脂の長い流路が必要とされることが原因で、光学的不規則性が生じることが多い。
【0004】
そのような表面欠陥は、タイガーストライプ、フローマーク又はフローラインとしても知られており、これらは射出成形中に、メルトフローの方向に対して垂直な帯状の光沢の強い部分と弱い部分として連続して交互に現れるため、表面の美しさを劣化させる。
【0005】
この点に関して、例えばDE19754061など、他の物理的特性の良好なバランスを保ちながらこれらの表面欠陥を回避するための多くの試みがなされてきた。しかしながら、タイガーストライプの発生を十分に防ぐことができないか、又はポリマー組成物の機械的特性が満足できるものではないかのいずれかであるということが明らかとなった。
【0006】
よって、タイガーストライプの発生をさらに減少させることが当技術分野において依然として必要である。それに加えて、タイガーストライプの発生を減少させる必要があるだけでなく、衝撃/剛性挙動などの機械的特性を非常に高いレベルに保つことも必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、製造される物品の表面にタイガーストライプを全く示さないか、ごくわずかなタイガーストライプしか示さないポリプロピレン組成物を提供することである。それに加えて、タイガーストライプを示さないだけでなく、優れたバランスの剛性/衝撃挙動などの機械的特性も保持するポリプロピレン組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の及び他の目的は、本発明の主題により解決される。
【0009】
本発明の特定の知見は、メルトフローレートMFRが異なり、特定の量で存在する2種の異相プロピレンコポリマーの組合せを含むポリプロピレン組成物(PP)を提供することである。
【0010】
本発明の第1の側面によれば、
a)20.0g/10minから80.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、及び
b)0.05g/10minから2.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)
を含むポリプロピレン組成物(PP)であって、
i)第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の量が、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して66.6wt%から95.2wt%までの範囲内であり、
ii)第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の量が、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して4.8wt%から33.4wt%までの範囲内である、
上記ポリプロピレン組成物(PP)が提供される。
【0011】
驚くべきことに、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、製造される物品の表面にタイガーストライプを全く示さないか、ごくわずかなタイガーストライプしか示さないことが見いだされた。さらに、本発明のポリプロピレン組成物(PP)のパーツは、タイガーストライプを示さないだけでなく、先行技術製品と同等の高いレベルにある、剛性及び衝撃挙動といった重要な機械的特性も有する。
【0012】
本発明の目的のために、以下の用語は以下の意味を有することが理解されるべきである。
【0013】
「異相」という表現は、弾性コポリマーがマトリックス中に(微細に)分散していることを示す。言い換えると、弾性プロピレンコポリマーはマトリックス中に介在物を形成している。よって、マトリックスは、マトリックスの一部ではない(微細に)分散した介在物を含有し、前記介在物は、弾性プロピレンコポリマーを含有する。本発明の「介在物」という用語は、好ましくは、マトリックスと介在物が異相プロピレンコポリマー中で異なる相を形成し、前記介在物が、例えば、高解像度顕微鏡、例えば電子顕微鏡若しくは原子間力顕微鏡などで見えることを示す。
【0014】
最終組成物は、おそらく複雑な構造をしている。例えば、異相プロピレンコポリマーのマトリックスは、組成物のマトリックスである連続又は不連続相を形成し、その中で、弾性コポリマー及び任意の添加剤が一緒に又は個々に、マトリックス中に分散している介在物を形成している可能性がある。
【0015】
本発明の別の側面によれば、前記ポリプロピレン組成物(PP)を含む、好ましくは前記ポリプロピレン組成物(PP)からなる物品が提供される。物品は成形物品、好ましくは射出成形物品であることが好ましい。本発明のなおさらなる側面は、成形物品、好ましくは射出成形物品を製造するための前記ポリプロピレン組成物(PP)の使用に関する。本発明のなおさらなる側面は、物品の表面のタイガーストライプを減少させるための前記ポリプロピレン組成物(PP)の物品の製造における使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において本発明のポリプロピレン組成物(PP)の好ましい実施形態又は技術的詳細が参照される場合、これらの好ましい実施形態又は技術的詳細は、ポリプロピレン組成物(PP)を含む本発明の物品並びに成形物品を製造するための本発明のポリプロピレン組成物(PP)の使用及び物品の表面のタイガーストライプを減少させるための本発明のポリプロピレン組成物(PP)の物品における使用にも関することが理解されるべきである。
【0017】
本発明の実施形態の1つによれば、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、a)20.0g/10minから75.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又はb)第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の全重量に対して15.0wt%から25.0wt%までの低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)、及び/又はc)第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の全重量に対して15.0wt%未満のエチレン含量、及び/又はd)2.0dl/gから3.0dl/gまでの固有粘度(IV)を有する非晶質(AM)相、及び/又はe)第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の非晶質(AM)相の全重量に対して33.0wt%から40.0wt%のエチレン含量を有する非晶質(AM)相を有する。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、a)0.1g/10minから2.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又はb)第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して9.0wt%から20.0wt%までの低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)、及び/又はc)第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して3.0wt%から8.0wt%までのエチレン含量、及び/又はd)3.0dl/gから4.0dl/gまでの固有粘度(IV)を有する非晶質(AM)相、及び/又はe)第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の非晶質(AM)相の全重量に対して30.0wt%から37.0wt%のエチレン含量を有する非晶質(AM)相を有する。
【0019】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)及び前記マトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)を有し、かつ/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)及び前記マトリックス(PM2)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM2)を有する。第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)は、a)30.0g/10minから250.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又はb)第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の全重量に対して0.8wt%から3.0wt%までの低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)を有することが好ましい。第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)が、a)0.1g/10minから3.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)、及び/又はb)第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の全重量に対して2.0wt%未満の低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)を有することもまた好ましい。
【0020】
本発明の実施形態の1つによれば、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して40.0wt%〜60.0wt%の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して3.0wt%〜20.0wt%の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜20.0wt%の弾性エチレンコポリマー(EE)であって、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して少なくとも50.0wt%のエチレン単位含量を有する前記弾性エチレンコポリマー(EE)、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜10.0wt%の高密度ポリエチレン(HDPE)、及びポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して15.0wt%〜25.0wt%の無機充填剤(F)を含む。EE、HDPE及びFを含有する組成物は、タイガーストライプを示すことなく、優れたバランスの剛性/衝撃挙動などの優れた機械的特性を示すことができる。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、弾性エチレンコポリマー(EE)は、a)エチレン単位及びC〜C12α−オレフィンから選択されるコモノマー単位を含み、かつ/又はb)弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して50.0wt%から75.0wt%までのエチレン単位含量を有し、かつ/又はc)0.25g/10minから30.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0022】
本発明のさらに別の実施形態によれば、高密度ポリエチレン(HDPE)は、0.2g/10minから15.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)、及び/又は少なくとも930kg/mの密度を有する。
【0023】
本発明の実施形態の1つによれば、無機充填剤(F)は、タルク、雲母、炭酸カルシウム、珪藻土、ウォラストナイト及びカオリンからなる群より選択され、かつ/又は0.65μmから20μmまでの平均粒子径d50を有する
【0024】
本発明の別の実施形態によれば、ポリプロピレン組成物(PP)は、a)少なくとも1500MPaの曲げ弾性率、及び/又はb)30kJ/mより高いノッチ付きアイゾット衝撃強さ(23℃)を有する。
【0025】
本発明のさらに別の実施形態によれば、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)がα−核形成されており、好ましくは第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)がα−核形成されている。
【0026】
以下に、本発明をより詳細に記述する。
【0027】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を含む。さらに、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、ISO1133に従って測定される20.0g/10minから80.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、ISO1133に従って測定される0.05g/10minから2.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。それに加えて、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の量は66.6wt%から95.2wt%までの範囲内であり、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の量は4.8wt%から33.4wt%までの範囲内である。
【0028】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は好ましくは、高い剛性、すなわち少なくとも1,500MPaの、好ましくは1,500MPaから2,700MPaまで、より好ましくは1,600MPaから2,600MPaまでの曲げ弾性率を特徴とする。例えば、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、1,700MPaから2,500MPaまで、例えば1,720MPaから2,500MPaまでの曲げ弾性率を特徴とする。
【0029】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、15MPaより高い、より好ましくは17MPaより高い、最も好ましくは17MPaより高く30MPaまでの引張強さを有する。
【0030】
加えて、又はあるいは、衝撃強さもまた高めであるべきである。よって、ポリプロピレン組成物(PP)は好ましくは、30kJ/mより高い、より好ましくは40kJ/m以上のノッチ付きアイゾット衝撃強さ(+23℃)を特徴とすることが好ましい。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は好ましくは、40kJ/mから60kJ/mまで又は45kJ/mから55kJ/mまでの範囲内のノッチ付きアイゾット衝撃強さ(+23℃)を特徴とする。
【0031】
ポリプロピレン組成物(PP)は好ましくは、少なくとも1500MPaの曲げ弾性率、及び/又は30kJ/mより高いノッチ付きアイゾット衝撃強さ(+23℃)を有することが好ましい。本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、少なくとも1500MPaの曲げ弾性率、及び30kJ/mより高いノッチ付きアイゾット衝撃強さ(+23℃)を有する。
【0032】
ポリプロピレン組成物(PP)は特に、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)により規定される。
【0033】
したがって、全ての成分を以下により詳細に規定する。
【0034】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、好ましくは、本明細書において規定されているポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)がマトリックスを構成し、その中に弾性プロピレンコポリマー(AM1)が分散している異相系である。
【0035】
したがって、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、プロピレンの他にコモノマーも含む。好ましくは、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、プロピレンの他にエチレン及び/又はC〜C12α−オレフィンを含む。したがって本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)という用語は、
(a)プロピレン
並びに
(b)エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン
に由来する単位を含み、好ましくは前記単位からなるポリプロピレンと理解される。
【0036】
よって、本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、すなわち、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特に前記モノマーからなる。より具体的には、本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、プロピレンの他に、エチレン及び/又は1−ブテンに由来する単位を含む。好ましい実施形態において、本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、プロピレン及びエチレンに由来する単位のみを含む。なおより好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(AM1)のみがエチレンコモノマーを含有する。
【0037】
よって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレンモノマー単位並びにエチレン及び/又はC〜C12α−オレフィンから選択されるコモノマー単位を含むことが好ましい。例えば、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレンモノマー単位及びエチレンコモノマー単位を含む。
【0038】
したがって、弾性プロピレンコポリマー(AM1)は好ましくはエチレンプロピレンゴム(EPR)であり、弾性プロピレンコポリマー(AM1)が分散しているマトリックスはポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)である。
【0039】
ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、好ましくは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の全重量に対して15.0wt%未満、好ましくは12.0wt%未満、より好ましくは3.0wt%から10.0wt%まで、最も好ましくは5.0wt%から10.0wt%までのコモノマー含量、好ましくはエチレン含量を有することが好ましい。
【0040】
ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分(23℃)は、好ましくは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の全重量に対して15.0wt%から25.0wt%まで、好ましくは18.0wt%から22.0wt%まで、最も好ましくは18.0wt%から20wt%までである。
【0041】
加えて、又はあるいは、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、20.0g/10minから80.0g/10minまで、好ましくは20.0g/10minから75.0g/10minまで、より好ましくは20.0g/10minから60.0g/10minまで、最も好ましくは30.0g/10minから50.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、30.0g/10minから40.0g/10minまで又は35.0g/10minから40.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0042】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を構成するポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)は、プロピレンホモポリマーである。換言すると、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)のコモノマー含量は、0.5wt%又はそれ未満、より好ましくは0.3wt%又はそれ未満、最も好ましくは0.1wt%以下である。重量パーセントは、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の全重量に対するものである。
【0043】
言い換えると、本発明の全体にわたって使用されるポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)という表現は、実質的にプロピレン単位からなる、すなわち99.5wt%又はそれを超えるプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態において、ポリプロピレンホモポリマー中でプロピレン単位のみが検出可能である。
【0044】
さらに、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を構成するポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分は少なめであることが好ましい。したがって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)は、好ましくは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の全重量に対して0.8wt%から3.0wt%まで、より好ましくは1.0wt%から3.0wt%まで、最も好ましくは1.3wt%から2.5wt%までである。例えば、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の全重量に対して1.4wt%から2.3wt%までである。
【0045】
加えて、又はあるいは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を構成するポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)は、高めのメルトフローレートを有する。したがって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)は、30.0g/10minから250.0g/10minまで、好ましくは40.0から160.0g/10minまで、より好ましくは80.0g/10minから120.0g/10minまで、さらにより好ましくは90.0g/10minから110.0g/10minまで、最も好ましくは95.0g/10minから105.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0046】
ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のさらなる必須の成分は、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)である。
【0047】
弾性プロピレンコポリマー(AM1)において使用されるコモノマーに関して、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)について示されている情報が参照される。したがって、弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特に前記モノマーからなる。より具体的には、弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレンの他に、エチレン及び/又は1−ブテンに由来する単位を含む。よって、特に好ましい実施形態において、弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレン及びエチレンに由来する単位のみを含む。
【0048】
よって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレンモノマー単位並びにエチレン及び/又はC〜〜C12α−オレフィンから選択されるコモノマー単位を含むことが好ましい。例えば、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM1)は、プロピレンモノマー単位及びエチレンコモノマー単位を含む。
【0049】
弾性プロピレンコポリマー(AM1)の大部分は周囲温度でキシレン中に可溶性(XCS含量;すなわち低温キシレン可溶性分含量)であるため、第1の異相ポリプロピレン組成物(HPP1)のXCS含量は、弾性プロピレンコポリマー(AM1)、すなわち非晶質相の量と関連するが、必ずしも正確に同じということではない。例えば、弾性プロピレンコポリマー(AM1)はまた、結晶性であり、そのため低温キシレン中に不溶性であるであろう、エチレン濃度が非常に高い部分を含んでもよい。
【0050】
本発明の実施形態の1つによれば、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、2.0dl/gから3.0dl/gまで、好ましくは2.0dl/gから2.7dl/gまでの固有粘度(IV)を有する非晶質(AM)相を有する。
【0051】
弾性プロピレンコポリマー(AM1)中のコモノマー含量、好ましくはエチレン含量は、比較的低い。したがって、実施形態の1つにおいて、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の非晶質画分のコモノマー含量、より好ましくはエチレン含量は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の非晶質(AM)相の全重量に対して33.0wt%から40.0wt%まで、好ましくは33.0wt%から38.0wt%まで、最も好ましくは34.0wt%から38.0wt%までである。
【0052】
あるいは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、20.0g/10minから80.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有するプロピレンホモポリマー又はランダムプロピレンコポリマー又はブロックプロピレンコポリマーである。
【0053】
第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)と同じように、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)もまた、本明細書において規定されているポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)がマトリックスを構成し、その中に弾性プロピレンコポリマー(AM2)が分散している異相系である。
【0054】
したがって、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、プロピレンの他にコモノマーも含む。好ましくは、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、プロピレンの他に、エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィンを含む。したがって本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)という用語は、
(a)プロピレン
並びに
(b)エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン
に由来する単位を含み、好ましくは前記単位からなるポリプロピレンと理解される。
【0055】
よって、本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)、すなわち、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特に前記モノマーからなる。より具体的には、本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、プロピレンの他に、エチレン及び/又は1−ブテンに由来する単位を含む。好ましい実施形態において、本発明の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、エチレン及びプロピレンに由来する単位のみを含む。なおより好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(AM2)のみがエチレンコモノマーを含有する。
【0056】
よって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM2)は、プロピレンモノマー単位並びにエチレン及び/又はC〜C12α−オレフィンから選択されるコモノマー単位を含むことが好ましい。例えば、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM2)は、プロピレンモノマー単位及びエチレンコモノマー単位を含む。
【0057】
したがって、弾性プロピレンコポリマー(AM2)は好ましくはエチレンプロピレンエラストマーであり、弾性プロピレンコポリマー(AM2)が分散しているマトリックスはポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)である。
【0058】
ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、好ましくは、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して3.0wt%から8.0wt%まで、好ましくは3.0wt%から7.0wt%まで、より好ましくは4.0wt%から6.0wt%まで、最も好ましくは4.1wt%から5.1wt%までのコモノマー含量、好ましくはエチレン含量を有することが好ましい。
【0059】
本発明の実施形態の1つにおいて、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して9.0wt%から20.0wt%まで、好ましくは10.0wt%から15.0wt%まで、最も好ましくは12.0wt%から14.0wt%までの低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)を有する。
【0060】
加えて、又はあるいは、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、0.05g/10minから2.0g/10minまで、好ましくは0.1g/10minから2.0g/10minまで、より好ましくは0.2g/10minから1.0g/10minまで、最も好ましくは0.2g/10minから0.5g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、0.2g/10minから0.3g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0061】
よって、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)のメルトフローレートMFRが第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)とは異なることは本発明の具体的な要件の1つである。本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は20.0g/10minから80.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、ポリプロピレン組成物(PP)の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は0.05g/10minから2.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、20.0g/10minから75.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有し、ポリプロピレン組成物(PP)の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は0.2g/10minから0.5g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有する。
【0062】
第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を構成するポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)は、プロピレンホモポリマーである。換言すると、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)のコモノマー含量は、0.5wt%又はそれ未満、より好ましくは0.3wt%又はそれ未満、最も好ましくは0.1wt%以下である。重量パーセントは、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の全重量に対するものである。
【0063】
言い換えると、本発明の全体にわたって使用されるポリプロピレンホモポリマー又はポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)という表現は、実質的にプロピレン単位からなる、すなわち99.5wt%又はそれを超えるプロピレン単位からなるポリプロピレンに関する。好ましい実施形態において、ポリプロピレンホモポリマー中でプロピレン単位のみが検出可能である。
【0064】
さらに、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を構成するポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分は、少なめであることが好ましい。したがって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)は、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の全重量に対して2.0wt%未満、好ましくは0.1wt%から2.0wt%まで、より好ましくは0.5wt%から2.0wt%までである。例えば、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の低温キシレン可溶性分(XCS)画分(25℃)は、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の全重量に対して1.0wt%から2.0wt%までである。
【0065】
加えて、又はあるいは、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を構成するポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)もまた低めのメルトフローレートを有する。したがって、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)は、0.1g/10minから3.0g/10minまで、好ましくは0.1g/10minから2.0g/10minまで、より好ましくは0.1g/10minから1.0g/10minまで、最も好ましくは0.1g/10minから0.5g/10minまでのメルトフローレートMFR(230℃、2.16kg)を有することが好ましい。
【0066】
ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)のさらなる必須の成分は、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)中に分散している弾性プロピレンコポリマー(AM2)である。
【0067】
弾性プロピレンコポリマー(AM2)において使用されるコモノマーに関して、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)について示されている情報が参照される。したがって、弾性プロピレンコポリマー(AM2)は、プロピレンと共重合可能なモノマー、例えば、エチレン及び/又はC〜C12α−オレフィン、特にエチレン及び/又はC〜Cα−オレフィン、例えば、1−ブテン及び/又は1−ヘキセンなどのコモノマーを含む。好ましくは、弾性プロピレンコポリマー(AM2)は、エチレン、1−ブテン及び1−ヘキセンからなる群からのプロピレンと共重合可能なモノマーを含み、特に前記モノマーからなる。より具体的には、弾性プロピレンコポリマー(AM2)は、プロピレンの他に、エチレン及び/又は1−ブテンに由来する単位を含む。よって、特に好ましい実施形態において、弾性プロピレンコポリマー(AM2)は、プロピレン及びエチレンに由来する単位のみを含む。
【0068】
本発明の実施形態の1つによれば、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、3.0dl/gから4.0dl/gまで、好ましくは3.5dl/gから4.0dl/gまでの固有粘度(IV)を有する非晶質(AM)相を含む。
【0069】
本発明の実施形態の1つにおいて、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の非晶質(AM)相のコモノマー含量、より好ましくはエチレン含量は、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の非晶質(AM)相の全重量に対して30.0wt%から37.0wt%まで、好ましくは30.0wt%から35.0wt%までである。
【0070】
上記で示したように、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)が特定の量で提供されることは本発明の要件の1つである。
【0071】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して66.6wt%から95.2wt%までの範囲内の量の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を含み、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の量は4.8wt%から33.4wt%までの範囲内であることが好ましい。
【0072】
例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して70.0wt%から95.0wt%までの量の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び5.0wt%から30.0wt%までの量の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を含む。あるいは、ポリプロピレン組成物(PP)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して80.0wt%から95.0wt%までの量の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び5.0wt%から20.0wt%までの量の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の全重量に対して85.0wt%から95.0wt%まで、例えば90.0wt%から95.0wt%までの量の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、及び5.0wt%から15.0wt%まで、例えば5.0wt%から10.0wt%までの量の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を含む。
【0073】
加えて、又はあるいは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)と第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の重量比[(HPP1)/(HPP2)]は、20/1から2/1までの範囲内、より好ましくは15/1から3/1までの範囲内、最も好ましくは12/1から3/1までの範囲内である。
【0074】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、通常の添加剤、例えば酸捕捉剤、酸化防止剤、核形成剤、光安定剤、スリップ剤、及び/又は顔料をさらに含むことが好ましい。好ましくは、無機充填剤を除いた添加剤の量は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して7.0wt%を超えないものとし、より好ましくは5.0wt%を超えないものとする。
【0075】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の重量に対して40.0wt%〜60.0wt%の量の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び3.0wt%〜20.0wt%の量の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を含む。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の重量に対して45.0wt%〜55.0wt%の量の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び3.0wt%〜15.0wt%の量の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を含む。
【0076】
好ましくは、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、衝撃特性を改善するために、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の次に、弾性エチレンコポリマー(EE)をさらに含んでもよい。弾性エチレンコポリマー(EE)は、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の弾性プロピレンコポリマー(AM1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の弾性プロピレンコポリマー(AM2)とは(化学的に)異なることに留意すべきである。
【0077】
弾性エチレンコポリマー(EE)は、エチレン単位及びC〜C12α−オレフィンから選択されるコモノマー単位、特にエチレン単位並びにC〜Cα−オレフィンから選択されるコモノマー単位、例えば1−ブテン及び/又は1−ヘキセン及び/又は1−オクテンを含む。好ましくは、弾性エチレンコポリマー(EE)は、エチレン単位並びに1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンから選択されるコモノマー単位を含み、特に前記単位からなる。より具体的には、弾性エチレンコポリマー(EE)は、エチレンの他に、1−ブテン及び/又は1−オクテンに由来する単位を含む。よって、特に好ましい実施形態において、弾性エチレンコポリマー(EE)は、エチレン及び1−オクテンに由来する単位のみを含む。
【0078】
弾性エチレンコポリマー(EE)中のエチレン含量は比較的高い。したがって、好ましい実施形態において、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する弾性エチレンコポリマー(EE)のエチレン含量は、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して少なくとも50.0wt%、好ましくは50.0wt%から75.0wt%までである。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する弾性エチレンコポリマー(EE)のエチレン含量は、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して60.0wt%から70.0wt%まで、例えば65.0wt%から70.0wt%までである。
【0079】
加えて、又はあるいは、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する弾性エチレンコポリマー(EE)は、0.25g/10minから30.0g/10minまで、好ましくは0.25g/10minから20.0g/10minまで、より好ましくは0.25g/10minから15.0g/10minまで、最も好ましくは0.25g/10minから10.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0080】
したがって、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する弾性エチレンコポリマー(EE)は好ましくは、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して少なくとも50.0wt%のエチレン含量、及び0.25g/10minから30.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する弾性エチレン−1−オクテンコポリマーであることが好ましい。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する弾性エチレンコポリマー(EE)は、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して65.0wt%から70.0wt%までのエチレン含量、及び0.25g/10minから10.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する弾性エチレン−1−オクテンコポリマーである。
【0081】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜20.0wt%の量の弾性エチレンコポリマー(EE)を含む。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜15.0wt%の量又は5.0wt%〜10.0wt%の量の弾性エチレンコポリマー(EE)を含む。
【0082】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)はまた、本発明のポリプロピレン組成物(PP)から成形される物品の表面の耐擦り傷性(anti−scratch property)を改善するために、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)及び任意の弾性エチレンコポリマー(EE)の次に、高密度ポリエチレン(HDPE)も含んでもよい。高密度ポリエチレン(HDPE)は、ポリプロピレン組成物(PP)を構成する第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)の弾性プロピレンコポリマー(AM1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の弾性プロピレンコポリマー(AM2)及び任意の弾性エチレンコポリマー(EE)とは(化学的に)異なる。
【0083】
本発明により使用される高密度ポリエチレン(HDPE)は、当技術分野において周知であり、市販されている。
【0084】
高密度ポリエチレン(HDPE)は、好ましくは、0.2g/10minから15.0g/10minまで、好ましくは0.5g/10minから10.0g/10minまで、より好ましくは1.0g/10minから10.0g/10minまで、最も好ましくは5.0g/10minから10.0g/10minまでのメルトフローレートMFR(190℃、2.16kg)を有する。
【0085】
高密度ポリエチレン(HDPE)は通常、少なくとも930kg/m、好ましくは930から970kg/mまで、より好ましくは930から950kg/mまでの密度を有する。
【0086】
本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜10.0wt%の量の高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5wt%〜8wt%の量の高密度ポリエチレン(HDPE)を含む。
【0087】
所望のレベルの剛性に達するために、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、好ましくは、選択された量の無機充填剤(F)を含む。したがって、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、好ましくは、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して15.0wt%〜25.0wt%の量の無機充填剤(F)を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、好ましくは、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して15.0wt%〜20.0wt%の量の無機充填剤を含む。
【0088】
本発明の実施形態の1つによれば、無機充填剤(F)は、タルク、雲母、炭酸カルシウム、珪藻土、ウォラストナイト及びカオリンからなる群より選択される。例えば、無機充填剤(F)はタルクである。
【0089】
本発明の実施形態の1つにおいて、無機充填剤(F)は0.65μmから20μmまでの平均粒子径d50を有する。
【0090】
例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、無機充填剤(F)としてタルクを含む。本発明の実施形態の1つによれば、ポリプロピレン組成物(PP)に使用される無機充填剤は、0.65μmから20μmまでの平均粒子径d50を有するタルクである。
【0091】
よって、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、好ましくは、
a)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して40.0wt%〜60.0wt%の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、
b)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して3.0wt%〜20.0wt%の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)、
c)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜20.0wt%の弾性エチレンコポリマー(EE)であって、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して少なくとも50.0wt%のエチレン単位含量を有する前記弾性エチレンコポリマー(EE)、
d)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜10.0wt%の高密度ポリエチレン(HDPE)、及び
e)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して15.0wt%〜25.0wt%の無機充填剤(F)
を含む。
【0092】
例えば、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、好ましくは、
a)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して45.0wt%〜55.0wt%の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、
b)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して3.0wt%〜15.0wt%の第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)、
c)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜15.0wt%の弾性エチレンコポリマー(EE)であって、弾性エチレンコポリマー(EE)の全重量に対して少なくとも50.0wt%のエチレン単位含量を有する前記弾性エチレンコポリマー(EE)、
d)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して5.0wt%〜8.0wt%の高密度ポリエチレン(HDPE)、及び
e)ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して15.0wt%〜20.0wt%の無機充填剤(F)
を含む。
【0093】
好ましくは、本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、酸捕捉剤、酸化防止剤、核形成剤、光安定剤、紫外線安定剤、スリップ剤、擦り傷防止剤(例えば有機ケイ素化合物)、分散剤及び着色剤からなる群より選択される少なくとも1種の通常の添加剤をさらに含んでもよい。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、酸化防止剤、紫外線安定剤、擦り傷防止剤(例えば有機ケイ素化合物)、分散剤及び着色剤などの添加剤をさらに含む。好ましくは無機充填剤(F)を除いたこれらの添加剤の量は、本発明のポリプロピレン組成物(PP)中で、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して14.0wt%を超えず、例えば11.0wt%以下とする。本発明の実施形態の1つにおいて、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して3.0wt%から11.0wt%までの量、好ましくは3.0wt%から8.0wt%までの量で、酸化防止剤、紫外線安定剤、擦り傷防止剤(例えば有機ケイ素化合物)、分散剤及び着色剤を添加剤として含む。
【0094】
好ましい擦り傷防止剤は有機ケイ素化合物である。例えば、ポリプロピレン組成物(PP)は、ポリプロピレン組成物(PP)の全重量に対して3.0wt%以下の量、好ましくは1.0wt%から2.0wt%まで、より好ましくは約1.0wt%の量の擦り傷防止剤、例えば有機ケイ素化合物を含む。
【0095】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)は、好ましくはα−核形成剤を含有する。さらにより好ましくは、本発明はβ−核形成剤を含まない。本発明によれば、核形成剤は、無機充填剤(F)とは異なる核形成剤と理解される。したがって、核形成剤は好ましくは、
(i)モノカルボン酸及びポリカルボン酸の塩、例えば安息香酸ナトリウム又はtert−ブチル安息香酸アルミニウム、並びに
(ii)ジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)及びC〜Cアルキル置換ジベンジリデンソルビトール誘導体、例えばメチルジベンジリデンソルビトール、エチルジベンジリデンソルビトール又はジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)など、又は置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールなど、並びに
(iii)リン酸のジエステルの塩、例えばナトリウム2,2‘−メチレンビス(4,6,−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート又はアルミニウム−ヒドロキシ−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフェート]、並びに
(iv)ビニルシクロアルカンポリマー及びビニルアルカンポリマー(上記で論じた通り)、並びに
(v)それらの混合物
からなる群より選択される。
【0096】
そのような添加剤は一般に市販されており、例えば、Hans Zweifelの「Plastic Additives Handbook」(第5版、2001)に記述されている。
【0097】
最も好ましくは、α−核形成剤は第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)(よってポリプロピレン組成物(PP))を構成する。したがって異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は異相プロピレンコポリマー(HPP2)(よってポリプロピレン組成物(PP))のα−核形成剤含量は、好ましくは5.0wt%までである。好ましい実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は異相プロピレンコポリマー(HPP2)(よってポリプロピレン組成物(PP))は、3000ppm以下、より好ましくは1ppmから2000ppmの、特にジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール)、ジベンジリデンソルビトール誘導体、好ましくはジメチルジベンジリデンソルビトール(例えば1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール)、又は置換ノニトール誘導体、例えば1,2,3,−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−O−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールなど、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、及びそれらの混合物からなる群より選択されるα−核形成剤を含有する。
【0098】
好ましい実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は異相プロピレンコポリマー(HPP2)(よってポリプロピレン組成物(PP))は、ビニルシクロアルカン、例えばビニルシクロヘキサン(VCH)のポリマー及び/又はビニルアルカンポリマーをα−核形成剤として含有する。好ましくはこの実施形態において、異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、ビニルシクロアルカン、例えばビニルシクロヘキサン(VCH)のポリマー及び/又はビニルアルカンポリマー、好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)を含有する。好ましくは、ビニルシクロアルカンは、BNT技術により異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は異相プロピレンコポリマー(HPP2)中(よってポリプロピレン組成物(PP)中)に導入されているビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーである。この好ましい実施形態においてより好ましくは、異相プロピレンコポリマー(HPP1)中のビニルシクロアルカンの、例えばビニルシクロヘキサン(VCH)のポリマー及び/又はビニルアルカンポリマー、より好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーの量は500ppm以下、より好ましくは1ppmから200ppm、最も好ましくは5ppmから100ppmであり、異相プロピレンコポリマー(HPP2)中のビニルシクロアルカンの、例えばビニルシクロヘキサン(VCH)のポリマー及び/又はビニルアルカンポリマー、より好ましくはビニルシクロヘキサン(VCH)ポリマーの量は500ppm以下、より好ましくは1ppmから200ppm、最も好ましくは5ppmから100ppmである。したがって、ポリプロピレン組成物(PP)は、500ppm以下、より好ましくは1ppmから200ppm、最も好ましくは5ppmから100ppmを含有することが好ましい。
【0099】
BNT技術に関して、国際出願WO99/24478、WO99/24479及び特にWO00/68315が参照される。この技術によれば、触媒系、好ましくはチーグラー・ナッタプロ触媒は、特に、特別なチーグラー・ナッタプロ触媒、外部供与体及び共触媒を含む触媒系の存在下においてビニル化合物を重合させることにより修飾することができ、前記ビニル化合物は、式:
CH=CH−CHR
(式中、R及びRは一緒に、5員又は6員の飽和、不飽和又は芳香族環を形成しているか、又は独立に、1個から4個の炭素原子を含むアルキル基を表す。)を有し、修飾された触媒を、本発明の異相ポリプロピレン組成物、すなわち異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は異相プロピレンコポリマー(HPP2)、最も好ましくは異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び異相プロピレンコポリマー(HPP2)の製造に使用する。重合したビニル化合物は、α−核形成剤として作用する。触媒の修飾工程におけるビニル化合物と固体触媒成分の重量比は、好ましくは5(5:1)まで、好ましくは3(3:1)まで、最も好ましくは0.5(1:2)から2(2:1)までである。最も好ましいビニル化合物はビニルシクロヘキサン(VCH)である。
【0100】
本発明の別の側面によれば、ポリプロピレン組成物(PP)は、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)、任意の弾性エチレンコポリマー(EE)、任意の高密度ポリエチレン(HDPE)、任意の無機充填剤(F)及びさらなる任意の添加剤と押出機中でブレンドすること、及び押出機中の、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)並びに任意の弾性エチレンコポリマー(EE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無機充填剤(F)及びさらなる添加剤の得られたブレンドを押出することにより製造される。「ブレンドすること」という用語は、本発明によれば、少なくとも2種の異なる既存の材料、すなわち第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)並びに任意の弾性エチレンコポリマー(EE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無機充填剤(F)及びさらなる添加剤からブレンドを提供するという行為を指す。
【0101】
本発明の組成物の個々の成分をブレンドするために、すなわち第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)を第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)並びに任意の弾性エチレンコポリマー(EE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、無機充填剤(F)及びさらなる添加剤とブレンドするために、従来のコンパウンド又はブレンド装置、例えばBanburyミキサー、2本ロールゴムロール機、Bussコニーダー又は二軸スクリュー押出機を使用することができる。押出機から回収されるポリマー材料は通常、ペレットの形態である。次いでこれらのペレットは好ましくは、例えば射出成形によりさらに処理されて、本発明の組成物の物品及び製品となる。
【0102】
ブレンド装置における滞留時間又は押出機のスクリュー速度は、十分に高度な均質化が達成されるように選択しなければならない。
【0103】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)を製造するために使用される全ての成分は公知であり、市販されている。したがって、それらの製造もまた周知である。例えば、本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は好ましくは、互いに独立に、当技術分野において公知である逐次重合プロセスにおいて、すなわち多段階プロセスにおいて製造され、対応するマトリックス(ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)及びポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2))は、互いに独立に、少なくとも1つのスラリー反応器において製造され、続いて弾性コポリマー(弾性プロピレンコポリマー(AM1)及び弾性プロピレンコポリマー(AM2))は、互いに独立に、少なくとも1つのすなわち1つ又は2つの気相反応器において製造される。
【0104】
より具体的には、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)は、少なくとも1つの反応器を有する少なくとも1つの反応器系においてポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)を製造すること、前記ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)を、少なくとも1つの反応器を有する後続の反応器系に移し、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM1)の存在下において弾性プロピレンコポリマー(AM1)を製造することにより得られる。
【0105】
加えて、又はあるいは、第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、少なくとも1つの反応器を有する少なくとも1つの反応器系においてポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)を製造すること、前記ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)を、少なくとも1つの反応器を有する後続の反応器系に移し、ポリプロピレンホモポリマーマトリックス(PM2)の存在下において弾性プロピレンコポリマー(AM2)を製造することにより得られる。
【0106】
よって、重合系のそれぞれは、1又は2以上の従来の撹拌型スラリー反応器及び/又は1又は2以上の気相反応器を有することができる。好ましくは、使用される反応器は、ループ反応器及び気相反応器の群から選択され、特に、プロセスは少なくとも1つのループ反応器及び少なくとも1つの気相反応器を用いる。各タイプのいくつかの反応器、例えば1つのループ反応器及び2つ又は3つの気相反応器、又は2つのループ反応器及び1つ又は2つの気相反応器を、直列に使用することもまた可能である。
【0107】
好ましくは、第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)の製造方法は、チーグラー・ナッタプロ触媒、外部供与体及び共触媒を含む、下記に詳細に記述されている選択された触媒系を用いる前重合も含む。
【0108】
好ましい実施形態において、前重合は、液体プロピレン中のバルクスラリー重合として行い、すなわち、液相は主としてプロピレンを含み、そこに少量の他の反応物及び任意に不活性成分が溶解している。
【0109】
前重合反応は通常、0℃から50℃、好ましくは10℃から45℃まで、より好ましくは15℃から40℃までの温度で行う。
【0110】
前重合反応器中の圧力は重要ではないが、反応混合物を液相中に維持するのに十分に高くなければならない。よって、圧力は、20barから100barまで、例えば30barから70barであってよい。
【0111】
触媒成分は、好ましくはすべて前重合工程に導入される。しかしながら、固体触媒成分(i)及び共触媒(ii)を別々に供給することができる場合、共触媒の一部のみを前重合段階中に導入し、残りの部分をその後の重合段階中に導入することが可能である。そのような場合にもまた、十分な重合反応が得られる程度の共触媒を前重合段階中に導入することが必要である。
【0112】
前重合段階に別の成分を添加することも可能である。よって、当技術分野において公知のように、プレポリマーの分子量を調節するために前重合段階に水素を添加してもよい。さらに、粒子同士が又は粒子が反応器の内壁に付着するのを防ぐために、帯電防止添加剤を使用してもよい。
【0113】
前重合条件及び反応パラメータの厳密な制御は、当業者の技能の範囲内である。
【0114】
スラリー反応器とは、バルク又はスラリー状態で稼働し、ポリマーが粒子状形態をとる、連続的若しくは単純バッチ撹拌槽型反応器又はループ反応器などの任意の反応器のことをいう。「バルク」とは、少なくとも60.0wt%のモノマーを含む反応媒体中での重合を意味する。好ましい実施形態によれば、スラリー反応器はバルクループ反応器を含む。
【0115】
「気相反応器」は、任意の機械混合式反応器又は流動床反応器を意味する。好ましくは、気相反応器は、ガス速度が少なくとも0.2m/secである機械撹拌式流動床反応器を含む。
【0116】
本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)を製造するための特に好ましい実施形態は、1つのループ反応器と1つ又は2つの気相反応器の組合せ、又は2つのループ反応器と1つ又は2つの気相反応器の組合せのいずれかを有するプロセスにおいて重合を行うことを含む。
【0117】
好ましい多段階プロセスは、スラリー−気相プロセス、例えばBorealisにより開発され、Borstar(登録商標)技術として知られているものなどである。この点で、EP0887379A1、WO92/12182、WO2004/000899、WO2004/111095、WO99/24478、WO99/24479及びWO00/68315が参照される。これらは、参照により本明細書に援用される。
【0118】
さらなる適したスラリー−気相プロセスは、BasellのSpheripol(登録商標)プロセスである。
【0119】
好ましくは、本発明の第1の異相プロピレンコポリマー(HPP1)及び/又は第2の異相プロピレンコポリマー(HPP2)は、好ましくはSpheripol(登録商標)又はBorstar(登録商標)−PPプロセスにおいて、下記に詳細に記述されている特別な外部供与体と組み合わせて特別なチーグラー・ナッタプロ触媒を使用することにより製造される。
【0120】
そのため、好ましい多段階プロセスの1つは以下の工程を含み得る:
− 第1のスラリー反応器中及び任意に第2のスラリー反応器中で、両スラリー反応器とも同じ重合条件を使用して、特別なチーグラー・ナッタプロ触媒(i)、外部供与体(iii)及び共触媒(ii)を含む、例えば下記に詳細に記述されている選択された触媒系の存在下において、ポリプロピレンマトリックスを製造する工程、
− スラリー反応器生成物を、少なくとも1つの第1の気相反応器、例えば1つの気相反応器又は直列に接続された第1及び第2の気相反応器中に移す工程、
− 前記少なくとも第1の気相反応器中で、ポリプロピレンマトリックスの存在下及び触媒系の存在下において、弾性コポリマーを製造する工程、
− さらに加工するためにポリマー生成物を回収する工程。
【0121】
上述の好ましいスラリー−気相プロセスに関し、プロセス条件についての以下の全般的な情報を示すことができる。
【0122】
温度は、好ましくは40℃から110℃まで、好ましくは50℃から100℃の間、特に60℃から90℃の間であり、圧力は20barから80barまでの範囲内、好ましくは30barから60barであり、任意選択で、それ自体公知の方法で分子量を制御するために水素を添加する。
【0123】
好ましくはループ反応器中で行われる、スラリー重合の反応生成物を、次いで、後続の気相反応器に移す。ここで、温度は、好ましくは、50℃から130℃までの範囲内、より好ましくは60℃から100℃であり、圧力は5barから50barまでの範囲内、好ましくは8barから35barであり、やはり任意選択で、それ自体公知の方法で分子量を制御するために水素を添加する。
【0124】
平均滞留時間は、上記で特定した反応器ゾーンにおいて変えることができる。実施形態の1つにおいて、スラリー反応器、例えばループ反応器中の平均滞留時間は、0.5時間から5時間までの範囲内、例えば0.5時間から2時間であり、一方、気相反応器中の平均滞留時間は一般に、1時間から8時間までである。
【0125】
所望であれば、重合は、スラリー、好ましくはループ反応器において超臨界条件下で、及び/又は気相反応器中で凝縮モードとして、公知の方法で行ってもよい。
【0126】
本発明によれば、異相ポリプロピレンは好ましくは、低級アルコールとフタル酸エステルのエステル交換生成物を含有するチーグラー・ナッタプロ触媒を成分(i)として含む触媒系の存在下において、上記の多段階重合プロセスにより得られる。
【0127】
本発明により使用されるプロ触媒は、
a)噴霧結晶化した(spray crystallized)又はエマルジョン凝固させた(emulsion solidified)、MgClとC〜Cアルコールの付加物をTiClと反応させること、
b)段階a)の生成物を式(I)のフタル酸ジアルキル
【化1】
(式中、R’及びR’は独立に、少なくともCアルキルである。)
と、前記C〜Cアルコールと前記式(I)のフタル酸ジアルキルのエステル交換が起こる条件下で反応させて内部供与体を形成すること、
c)段階b)の生成物を洗浄すること、又は
d)任意に、工程c)の生成物をさらにTiClと反応させること
により製造される。
【0128】
プロ触媒は、例えば、特許出願WO87/07620、WO92/19653、WO92/19658及びEP0491566において規定されている通り製造される。これらの文書の内容は、参照により本明細書に含まれる。
【0129】
まず、式MgCl*nROHのMgClとC〜Cアルコールの付加物(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1から6である。)を形成する。好ましくはアルコールとしてエタノールを使用する。
【0130】
付加物をまず溶融させ、次いで噴霧結晶化又はエマルジョン凝固させ、これを触媒担体として使用する。
【0131】
次の工程で、噴霧結晶化又はエマルジョン凝固させた、式MgCl*nROHの付加物(式中、Rはメチル又はエチル、好ましくはエチルであり、nは1から6である。)をTiClと接触させて、チタン処理した(titanised)担体を形成し、その後、以下の工程を行う。
前記チタン処理担体に、
(i)R’及びR’が独立に、少なくともCアルキル、例えば少なくともCアルキルである、式(I)のフタル酸ジアルキル、
又は好ましくは
(ii)R’及びR’は同じであり、少なくともCアルキル例えば少なくともCアルキルである、式(I)のフタル酸ジアルキル、
又はより好ましくは
(iii)フタル酸プロピルヘキシル(PrHP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジ−イソ−デシル(DIDP)、及びフタル酸ジトリデシル(DTDP)からなる群より選択される式(I)のフタル酸ジアルキル、いっそうより好ましくは、フタル酸ジオクチル(DOP)、例えばフタル酸ジ−イソ−オクチル又はフタル酸ジエチルヘキシル、特にフタル酸ジエチルヘキシルである式(I)のフタル酸ジアルキル
を添加して、第1の生成物を形成する工程、
前記第1の生成物を、適したエステル交換条件、すなわち100℃を超える、好ましくは100℃から150℃の間、より好ましくは130℃から150℃の間の温度に供し、その結果、前記メタノール又はエタノールが、前記式(I)のフタル酸ジアルキルの前記エステル基とエステル交換されて、好ましくは少なくとも80mol%、より好ましくは90mol%、最も好ましくは95mol%の式(II)のフタル酸ジアルキル
【化2】
(式中、R及びRはメチル又はエチル、好ましくはエチルである。)
を形成する工程であって、式(II)のフタル酸ジアルキル(dialkylphthalat)が内部供与体である、上記工程、及び
前記エステル交換生成物をプロ触媒組成物(成分(i))として回収する工程。
【0132】
式MgCl*nROHの付加物(式中、Rはメチル又はエチルであり、nは1から6である。)は、好ましい実施形態において、溶融し、次いで溶融物を好ましくは、冷却された溶媒又は冷却された気体中に気体により注入し、それにより付加物を、例えばWO87/07620に記述されているような形態学的に好都合な形態に結晶化させる。
【0133】
WO92/19658及びWO92/19653において記述されているように、この結晶化した付加物を、好ましくは触媒担体として使用し、本発明において有用なプロ触媒に反応させる。
【0134】
触媒残渣は抽出により除去されるため、エステルアルコールに由来する基が変化した、チタン処理担体と内部供与体の付加物が得られる。
【0135】
十分なチタンが担体上に残存する場合、これはプロ触媒の活性元素として作用する。
【0136】
そうでなければ、十分なチタン濃度、よって活性を確実にするために、上記の処理の後にチタン処理(titanization)を繰り返す。
【0137】
好ましくは本発明により使用されるプロ触媒は、2.5wt%以下、好ましくは2.2%wt%以下、より好ましくは2.0wt%以下のチタンを含有する。その供与体含量は、好ましくは4wt%から12wt%の間、より好ましくは6wt%から10wt%の間である。
【0138】
より好ましくは、本発明により使用されるプロ触媒は、アルコールとしてエタノール及び式(I)のフタル酸ジアルキルとしてフタル酸ジオクチル(DOP)を使用し、内部供与体化合物としてフタル酸ジエチル(DEP)を得ることにより製造されたものである。
【0139】
なおより好ましくは、本発明により使用される触媒は、特にWO92/19658に従って式(I)のフタル酸ジアルキルとしてフタル酸ジオクチルを使用した、実施例の項において記述されている触媒である。
【0140】
さらなる実施形態において、チーグラー・ナッタプロ触媒は、特別なチーグラー・ナッタプロ触媒、外部供与体及び共触媒を含む触媒系の存在下においてビニル化合物を重合させることにより修飾することができ、前記ビニル化合物は、式:
CH=CH−CHR
(式中、R及びRは一緒に、5員又は6員の飽和、不飽和又は芳香族の環を形成しているか、又は独立に、1個から4個の炭素原子を含むアルキル基を表す。)を有し、修飾された触媒を、本発明の異相ポリプロピレン組成物の製造に使用する。重合したビニル化合物は、α−核形成剤として作用することができる。この修飾は、特に異相ポリプロピレン(H−PP1)の製造に使用される。
【0141】
触媒の修飾については、触媒の修飾に関する反応条件に関して並びに重合反応に関して参照により本明細書に援用される、国際出願WO99/24478、WO99/24479及び特にWO00/68315が参照される。
【0142】
本発明の異相ポリプロピレンを製造するために、使用される触媒系は、好ましくは、特別なチーグラー・ナッタプロ触媒に加えて、成分(ii)として有機金属共触媒を含む。
【0143】
したがって、トリエチルアルミニウム(TEA)などのトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムクロリド及びアルキルアルミニウムセスキクロリドからなる群より共触媒を選択することが好ましい。
【0144】
使用される触媒系の成分(iii)は、式(IIIa)又は(IIIb)により表される外部供与体である。式(IIIa)は、
Si(OCH (IIIa)
(式中、Rは、3個から12個の炭素原子を有する分枝状アルキル基、好ましくは3個から6個の炭素原子を有する分枝状アルキル基、又は4個から12個の炭素原子を有するシクロアルキル、好ましくは5個から8個の炭素原子を有するシクロアルキルを表す。)により規定される。
【0145】
は、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群より選択されることが特に好ましい。
【0146】
式(IIIb)は、
Si(OCHCH(NR) (IIIb)
(式中、R及びRは、同じであるか又は異なることができ、1個から12個の炭素原子を有する炭化水素基を表す。)により規定される。
【0147】
及びRは、1個から12個の炭素原子を有する直鎖状脂肪族炭化水素基、1個から12個の炭素原子を有する分枝状脂肪族炭化水素基及び1個から12個の炭素原子を有する環状脂肪族炭化水素基からなる群より独立に選択される。R及びRは、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、オクチル、デカニル、イソプロピル、イソブチル、イソペンチル、tert−ブチル、tert−アミル、ネオペンチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル及びシクロヘプチルからなる群より独立に選択されることが特に好ましい。
【0148】
より好ましくは、R及びRは両方とも同じであり、いっそうより好ましくはR及びRは両方ともエチル基である。
【0149】
より好ましくは、式(IIIb)の外部供与体はジエチルアミノトリエトキシシランである。
【0150】
最も好ましくは、外部供与体は式(IIIa)のもの、例えばジシクロペンチルジメトキシシラン[Si(OCH(シクロ−ペンチル)]又はジイソプロピルジメトキシシラン[Si(OCH(CH(CH]である。
【0151】
本発明のポリプロピレン組成物は、広範な用途に適している。特に、本発明のポリプロピレン組成物は、タイガーストライプを示すことなく優れたバランスの剛性/衝撃挙動などの機械的特性を保持していることが好ましい。
【0152】
本発明のポリプロピレン組成物(PP)に関して得られる非常に良好な結果を考慮すれば、前記ポリプロピレン組成物(PP)は、成形物品の製造に特に適している。よって、本発明の別の側面は、上記で規定したポリプロピレン組成物(PP)を含む物品に関する。
【0153】
例えば、物品は、物品の全重量に対して少なくとも60.0wt%、より好ましくは少なくとも80.0wt%、最も好ましくは少なくとも95.0wt%の量のポリプロピレン組成物(PP)を含む。本発明の実施形態の1つにおいて、物品は本発明のポリプロピレン組成物(PP)からなる。
【0154】
物品は成形物品、好ましくは射出成形物品であることが好ましい。そのような射出成形物品の好ましい例は、自動車産業又は家庭用品産業における用途のための大型部品である。例えば、本発明は、自動車用品、特に自動車内装及び外装、例えばバンパー、ボディパネル、スポイラー、ダッシュボード及び/又はドアパネルに関する。
【0155】
したがって、本発明は特に、少なくとも60.0wt%、より好ましくは少なくとも80.0wt%、いっそうより好ましくは少なくとも95.0wt%の本発明のポリプロピレン組成物(PP)を含む、例えば前記ポリプロピレン組成物(PP)からなる、自動車用品、特に自動車内装及び外装、例えばバンパー、ボディパネル、スポイラー、ダッシュボード、ドアパネルなど、特にバンパー及び/又はドアパネルに関する。
【0156】
したがって、本発明のさらなる側面は、成形物品を製造するための、上記で規定したポリプロピレン組成物(PP)の使用に関する。上記で規定したポリプロピレン組成物(PP)は、射出成形物品の製造に使用されることが好ましい。
【0157】
本発明のなおさらなる側面は、本発明のポリプロピレン組成物(PP)を含む、好ましくは前記ポリプロピレン組成物(PP)からなる物品の表面のタイガーストライプを減少させるための、上記で規定したポリプロピレン組成物(PP)の使用である。
【0158】
次に、下記に示す実施例によりさらに詳細に本発明を記述する。
【実施例】
【0159】
以下の用語の定義及び決定方法は、別段の規定がない限り、下記の実施例だけでなく上記の本発明の一般的な記述にも適用される。
【0160】
A.定義/測定方法
以下の用語の定義及び決定方法は、別段の規定がない限り、下記の実施例だけでなく上記の本発明の一般的な記述にも適用される。
【0161】
密度は、ISO1183−1−方法A(2004)に従って測定する。試料の製造は、ISO1872−2:2007に従って圧縮成形することにより行う。
【0162】
平均粒子径d50(レーザー回折)は、ISO13320−1に従ってレーザー回折(Mastersizer)により決定される粒子径分布[質量パーセント]から計算する。
【0163】
MFR(230℃)は、ISO1133(230℃、2.16kg荷重)に従って測定する。
【0164】
MFR(190℃)は、ISO1133(190℃、2.16kg荷重)に従って測定する。
【0165】
低温キシレン可溶性分(XCS、wt%):低温キシレン可溶性分(XCS)の含量は、23℃で、ISO6427に従って決定する。
【0166】
非晶質含量(AM)は、上記の低温キシレン可溶性画分(XCS)を分離させ、非晶質部分をアセトンで沈殿させることにより測定する。沈澱物を濾過し、90℃の真空オーブン中で乾燥させた。
AM%=(100×m×v)/(m×v
(式中
「AM%」は非晶質画分であり、
「m」は初期ポリマー量(g)であり、
「m」は沈殿物の重量(g)であり、
「v」は初期体積(ml)であり、
「v」は分析した試料の体積(ml)である。)
【0167】
固有粘度は、DIN ISO1628/1(1999年10月)(デカリン中、135℃)に従って測定する。
【0168】
引張強さ;引張破壊ひずみ(tensile strain at break)(又は破壊伸び(elongation at break))は、EN ISO1873−2において記述されている通り射出成形された試験片(ドッグボーン型、4mm厚さ)を使用して、ISO527−2(クロスヘッド速度=50mm/min;23℃)に従って測定する。
【0169】
曲げ弾性率は、ISO294−1:1996に従って製造された80×10×4mmの射出成形試験片において、ISO178に従って3点曲げで決定する。
【0170】
ノッチ付きアイゾット衝撃強さは、EN ISO1873−2において記述されている通り射出成形された試験片(80×10×4mm)を使用することにより、ISO180/1Aに従って23℃で決定する。
【0171】
コモノマー含量、特にエチレン含量は、13C−NMRで較正したフーリエ変換赤外分光法(FTIR)を用いて測定する。ポリプロピレン中のエチレン含量を測定する場合、試料の薄フィルム(厚さ約250μm)をホットプレス法により製造する。Perkin Elmer FTIR1600分光器を用いて、プロピレン−エチレン−コポリマーでは720cm−1及び733cm−1の吸収ピーク面積を測定した。プロピレン−1−ブテン−コポリマーは、767cm−1において評価した。方法は、13C−NMRにより測定したエチレン含量データにより較正した。「IR−Spektroskopie fuer Anwender」;WILEY−VCH、1997及び「Validierung in der Analytik」、WILEY−VCH、1997も参照されたい。
【0172】
タイガーストライプ:タイガーストライプの発生しやすさは、30mm/sの射出速度で射出成形機械を使用して、押し出された化合物を射出成形することにより製造された356(L)×70(W)×2(T)mmのサイズの黒色シート上について目視で評価する。黒色シートの表面のタイガーストライプを、40Wの蛍光灯の光源下で肉眼により決定する。「発生なし(eliminated)」とは、試験条件下でシート表面全体にわたっていかなるタイガーストライプもないシートのことをいう。「目立つ」は、試験条件下でタイガーストライプが試験シートの表面に現れることを意味する。「目立たない」は、試験条件下で試験シートの表面にわずかなタイガーストライプが発生するが目立つわけではないことを意味する。
【0173】
B.実施例
ポリマー(HPP1a)、(HPP1b)、(HPP1c)、(HPP1d)及び(HPP2)を、前重合反応器、1つのスラリーループ反応器及び2つの気相反応器を有するBorstarパイロットプラントにおいて製造した。ループ反応器及び第1の気相反応器においてマトリックスを製造した後、第2の気相反応器において弾性相を製造する。
【0174】
重合プロセスにおいて使用した触媒は、以下の通り製造された。まず、0.1molのMgCl×3EtOHを、不活性条件下において大気圧で、反応器中の250mlのデカンに懸濁した。溶液を、−15℃の温度まで冷却し、温度を前記レベルに維持しながら、300mlの冷TiClを加えた。次いで、スラリーの温度をゆっくりと20℃まで上昇させた。この温度で、0.02molのフタル酸ジオクチル(DOP)をスラリーに添加した。フタル酸エステルの添加後、温度を90分の間に135℃まで上げ、スラリーを60分間静置した。次いで、さらに300mlのTiClを加え、温度を120分間135℃に保った。この後、触媒を液体から濾過し、80℃の300mlのヘプタンで6回洗浄した。次いで、固体触媒成分を濾過し、乾燥した。触媒及びその製造概念は、例えば特許公報EP491566、EP591224及びEP586390に概して記述されている。共触媒としてトリエチル−アルミニウム(TEAL)及び供与体としてジシクロペンチルジメトキシシラン(D供与体)を使用した。アルミニウムと供与体の比を表1に示す。
【0175】
重合の前に、触媒を、最終ポリマー中のポリ(ビニルシクロヘキサン)(PVCH)の濃度200ppmを達成する量のビニルシクロヘキサンと前重合させた。それぞれのプロセスは、EP1028984及びEP1183307に記述されている。
【0176】
【表1】
【0177】
実施例1から10の組成物を、表2にまとめた配合表に基づいてCoperion STS−35二軸スクリュー押出機を使用して製造する。
【0178】
【表2】
【0179】
100wt%までの残部は、通常の添加剤、例えば酸化防止剤及び紫外線安定剤である。
【0180】
EE:Dow Chemical Company(Shanghai、中国)の市販の製品「POE8150」である。これは、エチレン含量が61wt%、MFR(190℃、2.16kg)が0.5g/10min、密度が0.868g/cmの、エチレン及びオクテンの弾性コポリマーである。
HDPE:密度が0.95g/cm、MFR(190℃、2.16kg)が7.5g/10minの、Panjin Petrochem.Co.(Panjin、Liaoning、中国)から入手可能な市販のポリエチレン製品「HD5070EA」である。
F:d50が0.65μmの、IMI Fabi China製の市販のタルク「HTP Ultra 5」である。
P:Shanghai Yuchengcanxing Plastic Material Ltd.(Shanghai、中国)製の市販の顔料「CMB899−Black 9557」である。
AC:MFR(230℃、2.16kg)が2.5g/10minの、Borealis AG製の市販のポリプロピレン粉末「HC001A−B1」である。
【0181】
本発明のポリプロピレン組成物を含む実施例の製造のために、Coperion STS−35二軸スクリュー押出機(Coperion(Nanjing)Corporation(中国)から入手可能)を35mmの直径で使用する。二軸スクリュー押出機を400rpmの平均回転速度で、190℃〜235℃のゾーンの温度プロファイルで作動させる。押出機のL/Dは44である。各ゾーンの温度、本発明の実施例の組成物を製造するための押出機の処理量及びスクリュー速度を表3に列挙する。
【0182】
【表3】
【0183】
TZ ゾーンの温度
TD ダイの温度
MT 溶融温度
T 処理量
SS スクリュー速度
V 真空度
【0184】
押出機の各ゾーンの温度、処理量及びスクリュー速度は能動パラメータであり、押出機の制御盤で設定する。溶融温度(ダイ中の溶融物の温度)及び押出機のトルクは、押出機の制御盤に示される受動パラメータである。真空ポンプはゾーン9に位置し、押出機内部に−0.01MPaの真空を生成する。
【0185】
ACを、さらなる添加剤(擦り傷防止剤、酸化防止剤及び紫外線安定剤)のための担体及び分散剤として使用する。AC及びさらなる添加剤を予混合し、次いで、得られる混合物を、HPP1a/HPP1b/HPP1c/HPP1d、HPP2、EE、HDPE及びPと一緒に押出機のゾーン1に位置するフィーダー1から押出機中に供給する。Fを、押出機のゾーン3に位置するサイドフィーダーから押出機中に供給する。押出機の内容物を加熱し、押出機のゾーン1〜11を通して混合し、押出機のダイヘッドを通して造粒する。
【0186】
引張特性、曲げ特性、及び衝撃特性(例えばノッチ付きアイゾット、23℃)などの機械的特性の測定に使用する標準成形試験片、及び「タイガーストライプ」を測定するための成形シートを製造するために、Engel Machinery(Shanghai)Ltdから入手可能な射出成形機械Victory120を使用する。射出成形機は、単軸スクリュー可塑化部及び射出部を有する。単軸スクリュー可塑化部は3つの加熱ゾーンを有する。射出部はノズル及び金型を有する。機械的特性を測定するための標準試験試料の製造では、金型は、必要に応じて、上記で述べた試験方法において示されているように1つの側端に小さな「V」ノッチ付きの、ドッグボーン型又は長方形型の内部中空キャビティを有する標準金型である。
【0187】
上記の通り押出機から得られたIE1からIE10の各組成物のペレットを、射出成形機中に供給する。ペレットを3つの加熱ゾーンにおいて加熱し、溶融し、混合し、次いで、ノズルから金型中に注入して、機械的特性を測定するための「V」ノッチ付きの「ドッグボーン」型又は長方形型の試験試料を形成する。
【0188】
上記した射出成形機械をまた使用して、「タイガーストライプ」を測定するための成形試料シートを製造するが、金型を356(L)mm×70(W)mm×2(T)mmの寸法の長方形シートを製造するために適した金型と置き換える。金型の内部中空キャビティの寸法及び形状は、「タイガーストライプ」を試験するためのシートの鏡像に相当する。
【0189】
上記の通り押出機において得られた各実施例の組成物のペレットを、射出成形機中に供給する。ペレットを3つの加熱ゾーンにおいて加熱し、溶融し、混合し、次いでノズルを通して金型の中空キャビティ中に注入して、「タイガーストライプ」を試験するためのシートを得る。
【0190】
各実施例の機械的特性を測定するための成形試験片の射出成形に関する加工パラメータを表4に列挙する。
【0191】
【表4】
【0192】
各実施例の「タイガーストライプ」を測定するためのシートの射出成形についての加工パラメータを表5に列挙する。
【0193】
【表5】
【0194】
成形試験片の機械的特性及び成形シートの「タイガーストライプ」を上記の方法に従って測定し、表6に示す。先行技術配合物である比較例1(CE1)及び比較例2(CE2)の機械的及び光学的特性(タイガーストライプ)プロファイルもまた、表6(6a〜6b)にまとめる。先行技術の製品(CE1及びCE2)の機械的及び光学特性もまた、実施例1から10に使用されたものと同じ方法に従って試験する。
【0195】
【表6】
【0196】
【表7】
【0197】
E 発生なし
C 目立つ
UC 目立たない
【0198】
CE1は、67wt%の異相プロピレンコポリマー、8wt%のHDPE、及び20wt%のタルク、及びバランスのとれた添加剤(balanced additive)を含む市販の製品であり、異相プロピレンコポリマーは18g/10minのMFR(230℃、2.16kg)、20%のエチレン含量、30wt%のXCS、29wt%のAMを有し、異相プロピレンコポリマーのAMは69wt%のエチレン含量を有する。
CE2は、Pret Composites Co.Ltd(Shanghai、中国)の市販の製品「C3322T−2」であり、60g/10minより高いMFR(230℃、2.16kg)を有するポリプロピレン、C2〜C8エラストマーコポリマー、HDPE、タルク、及びバランスのとれた添加剤を含む。
【0199】
比較例CE1及びCE2と比較して、本発明の実施例ではタイガーストライプの発生がなかったことが表6a及び6bから分かる。
さらに、EE、HDPE及びFを含む本発明の実施例は、例えばノッチ付き衝撃強さ、剛性並びに引張強さといった機械的特性のバランスが優れており、これは、同様の成分を含有する比較例CE1及びCE2と比較しても保持されているか、又はより優れている。