特許第6143998号(P6143998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6143998口腔内のプラークを検出するデバイス及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6143998
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】口腔内のプラークを検出するデバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/04 20060101AFI20170529BHJP
   A46B 15/00 20060101ALI20170529BHJP
   A61B 1/06 20060101ALI20170529BHJP
   A61B 1/24 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A61C19/04 J
   A61C19/04 Z
   A46B15/00 K
   A61B1/06 A
   A61B1/24
【請求項の数】8
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2010-285620(P2010-285620)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2011-131057(P2011-131057A)
(43)【公開日】2011年7月7日
【審査請求日】2013年11月21日
【審判番号】不服2015-21475(P2015-21475/J1)
【審判請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】12/645,542
(32)【優先日】2009年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506105814
【氏名又は名称】ジヨンソン・アンド・ジヨンソン・コンシユーマー・インコーポレーテツド
【氏名又は名称原語表記】Johnson & Johnson Consumer Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】カート・ビナー
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 高木 彰
【審判官】 平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−521714(JP,A)
【文献】 特開2007−167266(JP,A)
【文献】 特開2009−172051(JP,A)
【文献】 特表2000−503117(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C19/04
A46B15/00
A61B1/06
A61B1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光剤が適用された口腔の表面上のプラークを検出するデバイスであって、
前記口腔の前記表面上に入射放射線を指向させる放射線源であって、前記入射放射線は、450から500nmのピーク波長を有する、放射線源と、
前記入射放射線が前記口腔の前記表面に当たることにより反射される反射光と、前記口腔の前記表面上の前記蛍光剤から発散され、520から530nmのピーク波長を有する蛍光発光を収集する集光器と、
前記収集された蛍光発光の第1の部分及び前記収集された反射光の第2の部分を前記デバイス内に同時に搬送する第1の光学経路と、
前記収集された蛍光発光の第2の部分及び前記収集された反射光の第1の部分を前記デバイス内に同時に搬送する第2の光学経路と、
第2の光学フィルターであって光学的光信号電気信号に変換する前に、前記反射光の第2の部分と前記蛍光発光の第1の部分とが前記第2の光学フィルターを通して搬送され、前記第2の光学フィルターは515nm未満の波長の光を除去する、第2の光学フィルターと、
前記蛍光発光の前記第1の部分の前記光学的光信号を前記電気信号に変換する第1の手段と、
前記反射光の前記第1の部分及び前記蛍光発光の第2の部分の前記光学的光信号を前記電気信号に変換する第2の手段と、
前記口腔の表面と前記放射線源との間の距離に関わらない補償プラーク値をもたらす修正された電気信号を提供するために、前記第2の手段からの前記電気信号を考慮するように、前記第1の手段からの前記電気信号を変更することにより、前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号を数学的に操作する手段と、
を備え、
前記電気信号を数学的に操作する手段は、
前記第2の手段からの前記電気信号と前記第1の手段からの前記電気信号との関係式を、被覆された物体の表面からの既知の距離範囲における各信号の強度を測定または計算することにより、設定された範囲の量のプラークにおいて、実験的に決定し、
実際に取得された前記第2の手段からの前記電気信号と、実際に取得された前記第1の手段からの前記電気信号とを、前記実験的に決定された関係式に対応づけ、
該関係式に基づいて、基準となる距離における前記第1の手段からの前記電気信号を求め、
対応する前記関係式と、基準となる距離における前記第1の手段からの前記電気信号と、実際に取得された前記第1の手段からの前記電気信号とを用いて、前記補償プラーク値をもたらす前記修正された電気信号を提供する、デバイス。
【請求項2】
前記集光器が光ファイバーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記光学経路が光ファイバーを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記光学経路が前記光ファイバーを含む、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記反射光及び蛍光発光の前記光学的光信号を前記電気信号に変換する前記手段が、光変換器を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号を増幅又は調整する手段を更に備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記放射線源と前記口腔の前記表面の間に、第1の光学フィルターを更に備え、前記入射放射線が前記口腔の前記表面に当たる前に、前記入射放射線が前記第1の光学フィルターを通過する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号を数学的に操作する前記手段がデータ処理装置を含み、前記データ処理装置は、前記電気信号の操作前に、前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号をアナログフォーマットからデジタルフォーマットに変換するアナログ−デジタル変換器を更に含む、請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラークに結合する蛍光剤により処理されている口腔内の表面、例えば歯及び歯ぐき上のプラークを検出し、また補償プラーク値を決定するデバイス及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的沈着物は、一般に、例えば一般に歯科衛生において望ましくないと考えられている、プラーク、細菌、歯石、及び結石等の生物起源の物質の沈着物を指す。歯科プラークは、一部は細菌の活性により生成され、又は歯、歯ぐき、舌若しくは頬上の食物沈着物からの汚染により生成された、例えば歯等の口腔の表面上の複雑な有機沈着物である。プラークは、虫歯、歯周病及びう蝕の進行の望ましくない前駆体である。
【0003】
口腔内のプラーク沈着物は、例えば歯ブラシ(手動又は動力)、糸ようじ、つまようじ又は口腔洗浄機を使用してそれらを除去する前に検出することが望ましく、これは歯科洗浄努力が集中されるべき領域が、検出により示されるためである。このような沈着物は、その位置で/インビボで、歯、歯ぐき、舌又は頬上で検出することが困難な場合がある。歯科プラークを検出することは、特に重要である。プラークを検出するために蛍光測定を用いることが公知であり、この蛍光測定では、入射放射線を口腔の表面に指向させ、生物学的沈着物の存在に関連した特徴を有する蛍光発光が前記表面から放射され、蛍光発光を検出する。
【0004】
最先端技術において、歯科プラークを検出する2つの一般的方法が存在し、それぞれ、一次蛍光を使用し、ここで歯科プラーク又は他の歯科物質自体の蛍光を監視し、また二次蛍光を使用し、ここでプラークを有することが疑われる口腔内の表面を歯科プラークに優位に結合する蛍光標識材料で処理し、蛍光標識材料が結合した口腔表面上の標識材料の蛍光発光を検出して歯科プラークの存在を示す。また光ファイバーの束を有する歯ブラシヘッドも公知であり、光ファイバーは歯ブラシヘッドを通して延びて、入射放射線を試験歯表面に指向させ、また試験歯表面から放射された放射線を収集する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのような方法の必要条件は、入射放射線を検査下の口腔表面に指向させることと、結果として生じる口腔表面からの蛍光発光放射線を収集することである。放射線の振幅は、表面上に位置する生物学的沈着物の量の関数であり、また光源及び検出器の表面からの距離である。その結果、検出される実際のプラーク値は、そのような因子に応じて変動するため、口腔表面上のプラークの状態を正確に表さない可能性があるプラーク値を生じる。口腔表面上の生物学的沈着物の量を測定する際の、放射線源及び/又はセンサーと口腔表面との間の距離を補償する公知のデバイスは知られていない。
【0006】
本明細書に記載し、特許請求する本発明による口腔内プラークの検出のためのデバイス及び方法は、入射放射線源及び/又は光学センサーと、検査されている口腔表面との間の距離を補償し、それにより補償プラーク値を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による口腔内のプラークの検出方法は、口腔の表面を入射放射線に当てることを含み、入射放射線が当たる表面は、その表面に適用されたプラークに結合可能な蛍光剤を含む。入射放射線表面に当たることにより、第1のピーク波長を有する反射光と、蛍光剤から発散される第2のピーク波長を有する蛍光発光とが提供される。入射放射線が表面に当たることから得られる蛍光発光の第1の部分は第1の集光器により収集され、光学経路により、第1の蛍光発光の光信号を蛍光発光の第1の部分の電気信号に変換する第1の手段に搬送され、ここで蛍光発光の第1の部分の光学的光信号は、蛍光発光の第1の部分の電気信号に変換される。反射光の第1の部分は、第2の集光器により収集され、反射光の第1の部分の光学的光信号を反射光の第1の部分の電気信号に変換する第2の手段に搬送され、ここで反射光の第1の部分の光学的光信号は、反射光の第1の部分の電気信号に変換される。次に、蛍光発光の第1の部分と反射光の第1の部分との電気信号が数学的に操作されて補償プラーク値を提供し、補償プラーク値という用語は本明細書にて以下に定義及び記載する通りである。
【0008】
本発明は、蛍光剤が適用された口腔の表面上のプラークを検出するデバイスにも関し、そのようなデバイスは、入射放射線を口腔の表面上に指向させる放射線源と、反射光及び蛍光発光を収集する第1の集光器及び第2の集光器と、反射光及び蛍光発光をデバイス内に搬送する光学経路と、反射光及び蛍光発光の光学的光信号を電気信号に変換する手段と、電気信号を数学的に操作して補償プラーク値を決定する手段とを含み、補償プラーク値という用語は本明細書にて以下に記載及び定義される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明のプラーク検出デバイス及び方法の作動原理の概略図。
図2】本発明の実施形態の歯ブラシヘッドの剛毛面の実施形態の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
口腔表面上のプラークを検出するデバイス及び方法を提供する。本デバイスは、口腔内の表面上に入射放射線を指向させる放射線源を備える。放射線源は、典型的には約450〜約500ナノメートルのピーク波長を有する光を提供してもよいが、範囲は検査される口腔の表面に適用される特定の蛍光剤に応じて変動し得る。デバイスは、場合により、検査される口腔の表面に当たる前に、入射放射線を濾過するフィルターを備えてもよい。デバイスは、入射放射線を口腔表面に当てて得られる反射光及び蛍光発光を収集する集光器も備える。所定の実施形態において、集光器は、光ファイバー又は繊維を含み得る。デバイスはまた、収集された反射光及び蛍光発光をデバイス内に搬送する光学経路も備える。所定の実施形態において、光学経路は光ファイバーを含み得る。そのようなものとして、光ファイバーは反射光及び蛍光発光の収集及び搬送の両方の役割を果たし得る。
【0011】
デバイスは、反射光及び蛍光発光の光学的光信号を感知する電気構成要素を更に備える。一実施形態において、反射光及び蛍光発光の光学的光信号は、連続して、しかし本質的には同時に感知又は検出される。本質的に同時にとは、測定値が正確に同時に取得されなくとも、反射光と蛍光光との検出の時間における差異が非常に小さく、それぞれの検出が同時の読み取りを近似することを意味する。デバイスは、光学的光信号を電気信号に変換する手段、例えば変換器を更に備える。デバイスは、電気信号を増幅し又は調整することにより、より滑らかな若しくは平均化された信号を提供し、又はノイズが低減された信号を提供する手段を更に備える。デバイスはデータ処理装置も備え、そのデータ処理装置は、電気信号をアナログフォーマットからデジタルフォーマットに変換するアナログ−デジタル変換器を含んでもよい。次に、処理装置は、内部反復装置iterative internals)に引き継がれた反射光及び蛍光発光の電気信号を数学的に操作し、補償プラーク値を決定する。収集された蛍光発光の値は、集光器と、検査されている口腔の表面との間の距離を考慮に入れて補償される。そのようなものとして、プラーク値は、任意の所定の瞬間/読み取り値における集光器と口腔表面との間の距離の関数として決定される。プラーク値を距離の関数として決定する結果、かように決定された補償プラーク値は、放射線源と口腔表面との間の実際の距離に関わらず実質的に同一である。実質的に同一であるとは、任意の所定の距離において決定された補償プラーク値が、統計的に同一であることを意味する。デバイスは、歯ブラシ(手動又は電動)、糸ようじ、つまようじ若しくは口腔洗浄機等の口腔洗浄デバイスの構成要素として、又はその口腔洗浄デバイスと組み合わせて使用することができる。
【0012】
本発明のプラークの検出方法及びプラーク検出デバイスは、口腔内の表面上、例えば歯及び歯ぐき上に存在するプラークに結合可能な蛍光剤の使用を含む。加えて、この蛍光剤は、特定の波長の入射放射線により照射された際に蛍光発光を提供することができる。例えばフルオレセイン又はその塩、例えばフルオレセインナトリウムは公知の蛍光剤であり、練り歯磨き、歯磨きジェル、又は蛍光剤を含有する洗口剤等の好適な媒質中に分散されてもよい。蛍光剤は、最初に口腔を蛍光剤で濯ぎ、又は蛍光剤を含有する練り歯磨き若しくは歯磨きジェルを適用することにより、適用することができる。口腔表面上のプラークは、その表面上のプラークの量に比例する蛍光剤の量を保持する。フルオレセインは蛍光剤の1つの例であるが、フルオレセインと類似した、プラークに結合する他の薬剤が公知である。本発明の方法及びデバイスに使用される入射放射線の特定の波長は、選択される特定の蛍光剤に応じて変動するであろう。
【0013】
図1は、本発明によるプラーク検出の方法及びデバイスの作動原理の概略図である。図示される特定の実施形態は歯ブラシであるが、本発明により、口腔内で使用される他のデバイスも想定される。図2は、ブラシヘッドの剛毛側から見た、本発明による歯ブラシヘッドの平面図である。図示する実施形態において、図1で第1の破線矩形として示される歯ブラシヘッド部分14は、歯の洗浄のための従来の剛毛房26に加えて、放射線源22と、口腔表面入射放射線が当たることにより生じる反射光33及び蛍光発光34を搬送する光ファイバー24a及び24bとを含む。ヘッド14は、放射線源に応じて第1の光学フィルター42も含み得る。
【0014】
図1で第2の破線矩形として示される電気ハウジング18は、本明細書で上述したような、そのハウジング内に配置されるプラーク検出デバイスの他の電気的構成要素を収容するであろう。いくつかの実施形態において、電気ハウジング18は、プラーク検出デバイスの取っ手部分、例えば歯ブラシ取っ手内に存在してもよい。図示した実施形態では、光ファイバー24a及び24bは、ヘッド14から電気ハウジング18内に延びる。ハウジング18は、そのハウジング内に収容された第2の光学フィルター44、第1の光変換器46、第2の光変換器48、第1の増幅器52、第2の増幅器54、データ処理装置56、及び電気構成要素を作動させる電源50も含む。
【0015】
図1は、口腔の代表的な表面、例えば上面62及び側面64を有する歯60も示す。図1は、歯60の上面62に指向されたプラーク検出デバイス10を示しているが、歯60の上面62及び側面64の両方が入射放射線に当たり得ることを理解するべきである。加えて使用者の歯磨き技術に応じて、複数の歯60の上面62及び側面64において同時に入射放射線に当たり得る。プラーク検出デバイスは、口腔内の他の表面、例えば歯ぐき、舌又は頬等に指向されることもできる。
【0016】
作動時、プラーク検出デバイスを使用する前に口腔を蛍光標識物質、即ち蛍光剤で処理し、その蛍光剤は歯科プラークに優先的に結合し、入射放射線に暴露された際に蛍光発光を生成する。入射放射線のピーク波長は、選択される特定の蛍光剤に応じて変動する。フルオレセイン又はその塩、例えばフルオレセインナトリウムを使用する実施形態では、入射放射線は約450〜約500ナノメートルの範囲のピーク波長を有し得る。口腔内に配置された後、放射線源22は約450〜約500ナノメートル(nm)、又は約470ナノメートルのピーク波長の光を放射する。光は第1の光学フィルター42を通過してもよく、そのフィルターは、約510nmを超える波長を有する光を実質的に全て除去する。図示するように、放射線源22からの入射放射線32は歯60の上面62に指向されるが、上述したように、入射放射線は口腔の複数の表面、例えば歯に当たることができる。表面に当たると、入射放射線は歯60上に位置するプラークに結合した蛍光剤と相互作用する。次に、蛍光剤は約520〜約530ナノメートルのピーク波長を有する蛍光発光34を生成する。蛍光剤により提供される蛍光発光34の第1の部分は光ファイバー24aにより収集され、光ファイバー24aによりデバイス内へ搬送されて、更に数学的に処理される。これに付随して反射光33の第2の部分が同時に収集され、蛍光発光34の第1の部分と共に搬送される。蛍光発光34は第2の光学フィルター44を通過し、そのフィルターは約515nm未満の波長の光を実質的に全部除去して、反射光が基本的にデータ処理装置56へ全く通過されないことを確実にする。今濾過された蛍光発光34は、光学的光信号を電気信号に変換するフォトダイオードの形態の第1の光変換器46を通過する。電気信号は第1の増幅器52を通過して、データ処理装置56へ通過されている電気信号が増大される。
【0017】
反射光の第1の部分は光ファイバー24bにより収集され、光ファイバー24bにより搬送されて、更に数学的に処理される。これに付随して蛍光発光34の第2の部分が同時に収集され、反射光の第1の部分と共に搬送される。蛍光発光34の第2の部分と反射光の第1の部分とは、光学的光信号を電気信号に変換するフォトダイオードの形態の第2の光変換器48を通して搬送される。第2の光変換器48に通過させる前に、蛍光発光を実質的に全部除去する光学フィルターを提供することは任意であるが、図示した実施形態では、蛍光発光の第2の部分と反射光の第1の部分とはいずれも、それらが第2の光変換器48を通過する前に濾過されず、これはこれらの信号が放射線源22から歯60の表面への距離を測定するのに使用されるためである。未濾過の電気信号は第2の増幅器54を通過して、データ処理装置56に通過されている電気信号が増大される。
【0018】
プラーク検出デバイス10内で使用され得る電子部品としては、Taos TSL12S−LFフォトダイオード、Opamp Analog AD8544ARZ増幅器、Semrock蛍光フィルター(FF01−500−LP、FF01−475/64)、及びAtmel ATMEGA8L−8AUマイクロプロセッサが挙げられる。
【0019】
データ処理装置56は、第1の光変換器46及び第2の光変換器48からの入力の数学的操作を実行する。数学的操作において、濾過された蛍光発光34から得られた電気信号は、光ファイバー24b、即ち集光器の先端から歯60の表面に対する距離の決定に使用し得る未濾過電気信号から受信した電気信号を考慮して変更される。2つの信号の間の関係は、被覆された物体の表面からの既知の距離における各信号の強度を測定することにより実験的に決定される。数学的操作の結果は修正された電気信号であり、その信号は補償プラーク値をもたらし、補償プラーク値という用語は、下記に記載及び定義される通りである。
【0020】
図2は、本発明のプラーク検出デバイスの第1の実施形態の平面図である。図示するように、プラーク検出デバイス10は、取っ手部分12及びヘッド部分14を有する歯ブラシの形態を有する。図2は、プラーク検出デバイス10の剛毛面16を示す。ヘッド部分14の剛毛面16は略楕円形として示されるが、剛毛面16は三角形、四角形、矩形、台形及び他の多角形、又は円形、長円形、三日月形、デルタ字形(deltoid)、星形若しくは他の曲線形であってもよいことが重要である。
【0021】
放射線源22、集光器及び搬送器24、並びに洗浄房26は、剛毛面16上に配置されている。発光ダイオード(LED)等の発光体の形態を有する放射線源22は、入射励起放射線を、洗浄するべき歯の表面に指向させる。一般に光ファイバーの形態を有する集光器及び搬送器24は、歯から放射される蛍光発光を収集する。光ファイバーは、シリカ等のガラスから形成されてもよいが、フルオロジルコネート、フルオロアルミネート、及びカルゴゲナイドガラス等の他の材料から形成されてもよく、またプラスチック光ファイバー(POF)の形態を有してもよい。
【0022】
洗浄房26は歯の表面の洗浄を最適にする様式で、剛毛面16上に配置されたおよそ20〜50個の個々の剛毛から形成されている。図1は、剛毛面16上の房26の1つの配置を示す。剛毛面16上の房26のこの配置は、本発明の範囲を限定するものではないことを理解するべきである。典型的な房は、直径がおよそ1.6mm(0.063インチ)であり、およそ2mm2(0.079インチ2)の断面積を有する。一般的に使用される剛毛の直径は、柔らかい剛毛で0.15mm(0.006インチ)、中程度の剛毛で0.2mm(0.008インチ)、及び固い剛毛で0.25mm(0.010インチ)である。
【0023】
上述した方法による歯上のう蝕、プラーク又は細菌感染の認識における一般的な問題は、検出した蛍光発光に日光又は人工的な室内照明が破壊的に重畳し得ることに見出される。この環境光は歯60により反射される可能性があり、それにより光ファイバー24a及び24bに収集される。.本発明による検出領域内に存在する環境光のスペクトル領域は、背景信号、即ちノイズを生じ、これはプラーク検出の感度を制限する。
【0024】
この問題は、放射線源22により生成される入射放射線32が周期的に変調される本発明により効果的に解決される。このケースでは、蛍光発光34は、短時間の励起状態により、励起放射線の強度に事実上同時に追従する。対照的に、環境光は周期的に変調されず、検出される発光34に、一定の構成成分として単独で重畳する。発光34の評価のために、対応する周波数で変調された放射線のみが検出信号として使用され、かつ評価される。この方法で、環境光の一定の構成成分が、ある程度濾去され、プラークは事実上、環境光とは独立に検出される。しかしながら、環境光は電源電圧(mains voltage)の周波数により僅かに変調されるため、電源電圧周波数とは際だって異なる周波数、好ましくは100Hz〜200kHzの範囲内に存在する周波数を、入射放射線32のための変調周波数として選択する必要がある。
【0025】
口腔内のプラーク検出のためのデバイスは、口腔の健康を追跡する口腔ケアシステムの一部として又はそのシステムと組み合わせて使用することもできる。そのようなシステムは、洗浄操作の前又は後に、歯、歯ぐき、舌又は頬の表面上のプラークレベルを記録することができ、またある時間に亘りプラークのレベルを追跡し、その結果を使用者又は歯の手入れの専門家に報告することができる。
【0026】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より良く理解され得る。
【実施例】
【0027】
実施例1:補償プラーク値の決定
手動歯ブラシのヘッドを、ヘッドの外側に向いた青色LEDを挿入することにより、LEDからの光が歯表面に照射できるように改造して、原型プラーク検出歯ブラシを形成した。LEDを、同様に青色LEDにより照射される領域内に先端が向いた12個の光ファイバー繊維のアレイで包囲した。光ファイバーは歯ブラシのネックを通過し、歯ブラシの取っ手部分内に収容された一対の光センサー(Taos TSL12S−LF)に至っていた。ファイバーを2つのグループに分けた。1つのグループは515nmを超える波長のみ通過できる光学フィルター(Semrock FF01−500/LP)を通した一方、第2のグループは全部の波長を通過させ、即ち光学フィルターは全く使用されなかった。濾過された光はプラーク値を表した一方、未濾過の光は、集光器、即ち光ファイバーの先端と、歯の表面との間の距離の解釈に使用された。光センサーの出力は増幅器(アナログデバイスAD8544ARZ)に接続され、その増幅器は8ビット・マイクロコントローラ(Atmel ATMEGA8L−8AU)に接続されていた。マイクロコントローラは、2つの10ビット・アナログ−デジタル変換器を含み、その変換器は、マイクロコントローラ内で情報をデジタルフォーマットで操作できるようにする。
【0028】
この装置を用いて、蛍光材料を含有する模擬プラーク材料で被覆したTypodent歯モデルを使用して、実験を行った。プラークがヒトの口腔内で成長する方法を近似して、歯表面上に人工プラークを塗布した。実験は、距離とプラーク値との間の関係を形成できるように、例えば光ファイバー繊維の先端を歯表面からの様々な距離に配置することから構成された。
【0029】
原型デバイスを以下のパラメータの組で操作した。
・500Hz(0.002秒)でサンプリング、連続して4つの測定値を反復連続的に取得。
・出力データ値当たり全20個のデータポイントを平均。
・原型をクロック速度が7MHzである8ビット・マイクロコントローラにより作動
RS232対応の読み出しデータを表計算ソフト(spreadsheet)への落とし込み、及び
・周辺光の補償。
【0030】
原型デバイスを、歯表面モデルの表面から0〜10mmの距離に配置した。読み取りを距離LEDオン、距離LEDオフ、プラークLEDオン、及びプラークLEDオフにより取得した。ここで、「距離LEDオン」は、LEDをオンにしたときの第2の光変換器48が出力する電気信号の値である。また、「距離LEDオフ」は、LEDをオフにしたときの第2の光変換器48が出力する電気信号の値である。また、「プラークLEDオン」は、LEDをオンにしたときの第1の光変換器46が出力する電気信号の値である。また、「プラークLEDオフ」は、LEDをオフにしたときの第1の光変換器46が出力する電気信号の値である。各距離におけるプラーク及び距離に関する信号の値であるプラーク関連信号値、距離関連信号値を、以下を使用して計算した。
プラーク関連信号値=プラークLEDオン−プラークLEDオフ (I)
距離関連信号値=距離LEDオン−距離LEDオフ (II)
【0031】
表Iは、LEDオン、プラークLEDオフ、プラーク関連信号値、距離LEDオン、距離LEDオフ、距離関連信号値に関する測定値/計算値を示す。
【表1】
【0032】
縦列A(プラーク関連信号値)の値を、縦列B(距離関連信号値)に対してプロットした。得られた線を、直線式に曲線適合した。
プラーク関連信号値=1.304×距離関連信号値−66.61 (III)
【0033】
歯表面モデルの表面から距離1mmのプラーク関連信号値が226であったため、補償プラークの値は、以下を使用して決定した。
補償プラーク=226+(1.304×距離関連信号値−66.61)/プラーク関連信号値 (IV)
【0034】
表IIは、距離に対する補償プラークの計算値を示す。
【表2】
【0035】
表は、補償プラークの平均計算値が、距離に関わらず227.02であり、標準偏差は0.012(0.05%)であることを示す。したがって、プラーク読み取り値は、集光器から歯モデルの表面迄の距離を考慮に入れて補償されている。
【0036】
〔実施の態様〕
(1) 口腔内のプラークの検出方法であって、
前記口腔の表面を入射放射線に当てることであって、前記表面は該表面に適用されたプラークに結合可能な蛍光剤を含み、前記当てることが、第1の波長を有する反射光と、前記蛍光剤から発散する、第2の波長を有する蛍光発光とを提供する、ことと、
前記当てることにより生じた前記蛍光発光の第1の部分を収集し、かつ、前記第1の蛍光発光の光信号を前記蛍光発光の前記第1の部分の電気信号に変換する第1の手段に搬送して、前記蛍光発光の前記第1の部分の前記光信号を前記蛍光発光の前記第1の部分の前記電気信号に変換することと、
前記反射光の第1の部分を収集し、かつ、前記反射光の前記第1の部分の光信号を前記反射光の前記第1の部分の電気信号に変換する第2の手段に搬送して、前記反射光の前記第1の部分の前記光信号を前記反射光の前記第1の部分の前記電気信号に変換することと、
前記蛍光発光の前記第1の部分及び前記反射光の前記第1の部分の前記電気信号を数学的に操作して補償プラーク値を提供することと、
を含む、方法。
(2) 前記蛍光剤がフルオレセイン又はその塩を含み、前記入射放射線が約450〜約500ナノメートルのピーク波長を有する、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記入射放射線が、前記表面と当てる前に、第1の光学フィルターを通過する、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記入射放射線が約470ナノメートルの波長を有する、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記蛍光発光の前記光信号を前記蛍光発光の前記電気信号に変換する前に、前記反射光の第2の部分が前記蛍光発光の前記第1の部分と同時に収集され、かつ第2の光学フィルターを通して搬送され、前記第2のフィルターは約515ナノメートル未満の波長を有する光を除去する、実施態様1に記載の方法。
(6) 前記蛍光発光及び前記反射光の前記電気信号が、前記数学的操作の前に増幅される、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記蛍光発光及び前記反射光の前記電気信号が、前記数学的操作の前にデジタルフォーマットに変換される、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記蛍光発光の第2の部分が、前記反射光の前記第1の部分と同時に搬送される、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記蛍光発光及び反射光の前記第1の部分の前記搬送が、実質的に同時である、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記蛍光発光が、約520〜約530ナノメートルのピーク波長を含む、実施態様1に記載の方法。
【0037】
(11) 前記反射光及び前記蛍光発光が、光ファイバーにより収集及び搬送される、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記蛍光発光の前記光信号を前記蛍光発光の前記電気信号に変換する前に、前記反射光の前記第1の部分が、第3の光学フィルターを通して前記蛍光発光の前記第2の部分と同時に搬送され、前記第3のフィルターは約515ナノメートルを超える波長を有する光を除去する、実施態様7に記載の方法。
(13) 前記補償プラーク値が、前記蛍光発光の前記収集地点と、前記口腔の前記表面との間の距離の関数として決定される、実施態様1に記載の方法。
(14) 口腔の表面上のプラークを検出するデバイスであって、
前記口腔の前記表面上に入射放射線を指向させる放射線源と、
反射光及び蛍光発光を収集する集光器と、
前記収集された反射光及び前記収集された蛍光発光を前記デバイス内に搬送する光学経路と、
前記反射光及び前記蛍光発光の光学的光信号を電気信号に変換する手段と、
前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号を数学的に操作して、補償プラーク値を決定する手段と、
を備える、デバイス。
(15) 前記集光器が光ファイバーを含む、実施態様14に記載のデバイス。
(16) 前記光学経路が光ファイバーを含む、実施態様14に記載のデバイス。
(17) 前記光学経路が前記光ファイバーを含む、実施態様15に記載のデバイス。
(18) 前記反射光及び蛍光発光の前記光学的光信号を前記電気信号に変換する前記手段が、光変換器を含む、実施態様14に記載のデバイス。
(19) 前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号を増幅又は調整する手段を更に備える、実施態様14に記載のデバイス。
(20) 第1の光学フィルターを更に備え、前記表面に当たる前に、前記入射放射線が前記第1の光学フィルターを通過する、実施態様14に記載のデバイス。
【0038】
(21) 第2の光学フィルターを更に備え、前記光学的光信号を前記電気信号に変換する前に、前記反射光の第2の部分と前記蛍光発光の第1の部分とが前記第2の光学フィルターを通して搬送される、実施態様14に記載のデバイス。
(22) 第3の光学フィルターを更に備え、前記光学的光信号を前記電気信号に変換する前に、前記反射光の第1の部分と前記蛍光発光の第2の部分とが前記第3の光学フィルターを通して搬送される、実施態様14に記載のデバイス。
(23) 前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号を数学的に操作する前記手段がデータ処理装置を含み、前記データ処理装置は、前記電気信号の操作前に、前記反射光及び前記蛍光発光の前記電気信号をアナログフォーマットからデジタルフォーマットに変換するアナログ−デジタル変換器を更に含む、実施態様14に記載のデバイス。
図1
図2