特許第6144005号(P6144005)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144005糖成分を含む組成物およびフォトリソグラフィ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144005
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】糖成分を含む組成物およびフォトリソグラフィ方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/039 20060101AFI20170529BHJP
   C08F 220/26 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G03F7/039 601
   C08F220/26
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-249149(P2011-249149)
(22)【出願日】2011年11月14日
(65)【公開番号】特開2012-113303(P2012-113303A)
(43)【公開日】2012年6月14日
【審査請求日】2014年10月30日
(31)【優先権主張番号】61/413,825
(32)【優先日】2010年11月15日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ソク・オー
(72)【発明者】
【氏名】ダヤン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】コン・リュウ
(72)【発明者】
【氏名】ミンキ・リー
(72)【発明者】
【氏名】チュンイ・ウー
(72)【発明者】
【氏名】チェン−バイ・スー
【審査官】 石附 直弥
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/067898(WO,A1)
【文献】 特開2005−308827(JP,A)
【文献】 特開2007−304537(JP,A)
【文献】 特開2010−250075(JP,A)
【文献】 特開2008−268915(JP,A)
【文献】 特開2005−037777(JP,A)
【文献】 特開2011−053360(JP,A)
【文献】 特開2011−213840(JP,A)
【文献】 特開2007−304545(JP,A)
【文献】 特開2011−053430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004−7/18
CAPlus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)1種以上の樹脂
(ii)光活性成分、および
(iii)下記式から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される糖置換を含み、前記1種以上の樹脂と実質的に非混和性である1種以上の樹脂
【化1】

(式中、Rは水素もしくはメチルであり;並びに、各Rfは同じかもしくは異なっていてCFH、−CFCl、−CFCFH、−CFCFCFCFH、−CFCHおよびCFCHCHから選択される。)
を含むフォトレジスト組成物を基体上に適用し、並びに
(b)フォトレジスト層を前記フォトレジスト組成物を活性化する放射線に液浸露光する
ことを含む、フォトレジスト組成物を処理する方法。
【請求項2】
糖置換を含む1種以上の樹脂が1以上の電子吸引部分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
糖置換を含む1種以上の樹脂が1以上のフッ素基もしくはフッ素置換基を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
糖置換を含む1種以上の樹脂が、水性塩基可溶性基および/または1種以上の光酸不安定基を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(a)(i)1種以上の樹脂
(ii)光活性成分、および
(iii)前記1種以上の樹脂とは異なり、下記式から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される1以上の糖基を含む1種以上のポリマー
【化2】

(式中、Rは水素もしくはメチルであり;並びに、各Rfは同じかもしくは異なっていてCFH、−CFCl、−CFCFH、−CFCFCFCFH、−CFCHおよびCFCHCHから選択される。)
を含むフォトレジスト組成物を基体上に適用し、並びに
(b)フォトレジスト層を前記フォトレジスト組成物を活性化する放射線に液浸露光する
ことを含む、フォトレジスト組成物を処理する方法。
【請求項6】
基体上にフォトレジスト組成物の塗膜層を有する基体を含むコーティングされた基体システムであって、
前記フォトレジスト組成物が
(i)1種以上の樹脂、
(ii)光活性成分、および
(iii)下記式から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される糖置換を含む1種以上の樹脂
【化3】

(式中、Rは水素もしくはメチルであり;並びに、各Rfは同じかもしくは異なっていてCFH、−CFCl、−CFCFH、−CFCFCFCFH、−CFCHおよびCFCHCHから選択される。)
を含む、コーティングされた基体システム。
【請求項7】
液浸リソグラフィ流体がフォトレジスト塗膜層の上面に接触する請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
液浸フォトリソグラフィ露光ツールをさらに含む、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
(i)1種以上の樹脂、
(ii)光活性成分、および
(iii)下記式から選択される少なくとも1種のモノマーから誘導される糖置換を含み、前記1種以上の樹脂と実質的に非混和性である1種以上の樹脂
【化4】

(式中、Rは水素もしくはメチルであり;並びに、各Rfは同じかもしくは異なっていてCFH、−CFCl、−CFCFH、−CFCFCFCFH、−CFCHおよびCFCHCHから選択される。)
を含む、フォトレジスト組成物。
【請求項10】
前記糖置換を含む1種以上の樹脂が、糖置換を含む1種以上のターポリマー、テトラポリマーまたはペンタポリマーを含む、請求項9に記載のフォトレジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2010年11月15日に出願された米国仮特許出願第61/413,825号に対する35U.S.C.119(e)の下での優先権の利益を主張し、その出願の全内容は参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は液浸リソグラフィプロセスにおいて特に有用な新規のフォトレジスト組成物に関する。本発明の好ましいフォトレジスト組成物は1種以上の糖含有材料を含む。好ましくは、1種以上の糖含有材料はレジストの別の樹脂成分と実質的に非混和性であることができる。特に好ましい本発明のフォトレジストはアルカリ水溶液での現像の後で欠陥の低減を示しうる。
【背景技術】
【0002】
フォトレジストは像を基体に転写するために使用される感光膜である。フォトレジストの塗膜層が基体上に形成され、次いでこのフォトレジスト層がフォトマスクを通して活性化放射線源に露光される。このフォトマスクは活性化放射線に対して不透明な領域および活性化放射線に対して透明な他の領域を有する。活性化放射線への露光はそのフォトレジスト塗膜の光誘起化学変換をもたらし、それによりそのフォトレジストでコーティングされた基体にフォトマスクのパターンを転写する。露光の後で、フォトレジストは現像されて基体の選択的な処理を可能にするレリーフ像を提供する。米国特許出願公開第2006/0246373号および第2009/0197204号を参照。
【0003】
半導体産業の成長は、平均して2年ごとにIC素子の複雑さが二倍になると主張するムーアの法則によって進展している。このことは、フィーチャサイズを絶えず小さくしつつ、パターンおよび構造をリソグラフィで転写する必要性を余儀なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0246373号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0197204号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在利用可能なフォトレジストは多くの用途に適しているが、現在のレジストは、特に高性能用途、例えば、高解像1/4ミクロン以下さらには1/10ミクロン以下のフィーチャの形成において有意な欠点を示す場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、新規なフォトレジスト組成物および方法を提供する。フォトレジスト組成物は1以上の糖基を含む材料を含む。
より具体的には、本発明の好ましいフォトレジストは
(i)1種以上の樹脂、
(ii)1種以上の光酸発生剤化合物を好適に含むことができる光活性成分、並びに
(iii)糖置換を含む1種以上の材料(この材料は、場合によっては、本明細書において、「糖置換材料」もしくは「糖材料」または他の類似の語句で称される)
を含むことができる。好ましくは、糖置換を含む1種以上の材料は1種以上の樹脂と実質的に非混和性である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
好ましいフォトレジスト組成物は、場合によって置換された糖基を含む1種以上の材料を含むことができる。よって、本明細書における「糖」との言及は1種以上のサッカロース基を含む基を包含するものであると理解されるべきである。
【0008】
本発明の特に好ましいフォトレジストは、フォトレジスト組成物から形成されるレジストレリーフ像に関連する欠陥の低減を示すことができる。ある形態においては、形成されたレジストレリーフ像のライン間のマイクロ架橋が最小化もしくは回避されうる。
【0009】
本明細書において言及される場合、1種以上のフォトレジスト樹脂と実質的に非混和性の1種以上の材料は、水性アルカリ現像の際に欠陥の低減をもたらす、フォトレジストに添加されるあらゆる材料でありうる。
【0010】
本発明のフォトレジストに使用するのに好適な(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖置換材料実質的に非混和性の材料には、糖置換に加えて、ケイ素および/またはフッ素置換を含む組成物が挙げられる。
【0011】
化学増幅型フォトレジストの樹脂成分に使用される本明細書に記載される基をはじめとする、光酸不安定(photoacid−labile)エステルもしくはアセタール基のような光酸不安定基を含む(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖置換材料も好ましい。
【0012】
本発明のフォトレジストにおける使用に好ましい(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖置換材料は、フォトレジスト組成物を配合するために使用されるのと同じ有機溶媒中に可溶性であることも可能である。
【0013】
本発明のフォトレジストに使用するのに特に好ましい(実質的に非混和性の材料などの)糖材料は、フォトレジストの樹脂成分の1種以上の樹脂よりも低い表面エネルギーおよび/またはより小さい流体力学的容積も有しうる。より低い表面エネルギーは、適用されたフォトレジスト塗膜層の頂部もしくは上部へ、実質的に非混和性の材料が分離および移動するのを容易にすることができる。さらに、相対的により小さな、より高い流体力学的容積は、適用されたフォトレジスト塗膜層の上部領域へ1種以上の実質的に非混和性の材料が有効に移動するの(より高い拡散係数)を容易にすることができるので、相対的により小さな、より高い流体力学的容積も好ましい場合がある。
【0014】
本発明のフォトレジストに使用するのに好ましい(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料はフォトレジスト現像剤組成物(例えば、0.26Nのアルカリ水溶液、例えば、0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水性現像剤)に可溶性でもあり得る。よって、実質的に非混和性の材料中に、上述の光酸不安定基に加えて、他の水性塩基可溶性基、例えば、ヒドロキシル、フルオロアルコール(例えば、−C(OH)(CF)、カルボキシなどが含まれうる。
【0015】
本発明のフォトレジストに使用するのに好適な(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料は粒子の形態であってもよい。このような粒子は別個の粒子の形態、すなわち、分離しかつ別個のポリマーとして重合されるポリマーを含むことができる。このようなポリマー粒子は典型的には、線状もしくはラダーシリコンポリマーのような線状もしくはラダーポリマーからの1以上の異なる特徴を有する。例えば、このようなポリマー粒子は特定のサイズおよび低い分子量分布を有しうる。より具体的には、好ましい形態においては、本発明のフォトレジストにおいて、約5〜3000オングストローム、より好ましくは約5〜2000オングストローム、さらにより好ましくは約5〜約1000オングストローム、さらにより好ましくは約10〜約500オングストローム、さらにより好ましくは10〜50もしくは200オングストロームの平均粒子サイズ(寸法)を有する複数のポリマー粒子が使用されうる。多くの用途のために、特に好ましい粒子は約200もしくは100オングストローム未満の平均粒子サイズを有する。
【0016】
本発明のフォトレジストに使用するのに好適な追加の(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料はSi内容物、例えば、シルセスキオキサン材料、SiO基を有する材料などを有することができる。好ましい実質的に非混和性のケイ素含有材料には、多面体オリゴマーシルセスキオキサンも挙げられる。
【0017】
本発明のリソグラフィシステムの好ましい像形成波長には、サブ−300nm波長、例えば、248nm、およびサブ−200nm波長、例えば、193nmが挙げられる。本発明の特に好ましいフォトレジストは、1種以上の(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料に加えて、光活性成分(例えば、1種以上の光酸発生剤化合物)および以下の中から選択される1種以上の樹脂を含むことができる:
1)248nmでの像形成に特に好適な化学増幅ポジ型レジストを提供できる、酸不安定基を含むフェノール系樹脂。この種の特に好ましい樹脂には、以下のものが挙げられる:i)ビニルフェノールおよびアクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、ここにおいて、重合されたアクリル酸アルキル単位は光酸の存在下でデブロッキング(deblocking)反応を受けうる。光酸誘起デブロッキング反応を受けうる代表的なアクリル酸アルキルには、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、および光酸誘起反応を受けうる他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートが挙げられ、例えば、米国特許第6,042,997号および第5,492,793号におけるポリマーが挙げられ、これら文献は参照によって本明細書に組み込まれる:ii)ビニルフェノール、場合によって置換されている(ヒドロキシもしくはカルボキシ環置換基を含まない)ビニルフェニル(例えばスチレン)、および上記ポリマーi)で記載されたデブロッキング基を有するもののようなアクリル酸アルキルの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第6,042,997号に記載されたポリマー、この文献は参照によって本明細書に組み込まれる:およびiii)光酸と反応しうるアセタールもしくはケタール部分を含む繰り返し単位、および場合によってフェニルもしくはフェノール性基のような芳香族繰り返し単位を含むポリマー;このようなポリマーは、米国特許第5,929,176号および第6,090,526号に記載されており、これら文献は参照によって本明細書に組み込まれる:並びにi)および/またはii)および/またはiii)のブレンド。
【0018】
2)ジアゾナフトキノン光活性化合物と一緒にI線およびG線フォトレジストにおいて使用されうるポリ(ビニルフェノール)およびノボラック樹脂のような、酸不安定基を含まないフェノール系樹脂、これは米国特許第4983492号、第5130410号、第5216111号、および第5529880号に記載されている。
【0019】
3)サブ−200nmの波長、例えば、193nmで像形成するのに特に好適な化学増幅ポジ型レジストを提供できる、フェニルもしくは他の芳香族基を実質的にもしくは完全に含まない樹脂。この種の特に好ましい樹脂には以下のものが挙げられる:i)芳香族でない環式オレフィン(環内二重結合)、例えば、場合によって置換されたノルボルネンの重合単位を含むポリマー、例えば、米国特許第5,843,624号および第6,048,664号に記載されたポリマー:ii)アクリル酸アルキル単位、例えば、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸メチルアダマンチル、メタクリル酸メチルアダマンチル、並びに他の非環式アルキルおよび脂環式アクリラートを含むポリマー;このようなポリマーは米国特許第6,057,083号;欧州特許出願公開第EP01008913A1号およびEP00930542A1号;および系属中の米国特許出願第09/143,462号に記載されており、これら文献は全て参照によって本明細書に組み込まれる:およびiii)重合された酸無水物単位、特に重合された無水マレイン酸および/または無水イタコン酸単位を含むポリマー、例えば、欧州特許出願公開第EP01008913A1号および米国特許第6,048,662号(これら両文献は参照によって本明細書に組み込まれる)に開示されるポリマー:並びにi)および/またはii)および/またはiii)のブレンド。
【0020】
4)ヘテロ原子、特に酸素および/または硫黄を含む繰り返し単位(ただし、酸無水物以外、すなわち、この単位はケト環原子を含まない)を含み、好ましくは、芳香族単位を実質的にもしくは完全に含まない樹脂。好ましくは、ヘテロ脂環式単位が樹脂骨格に縮合され、さらに好ましいのは、樹脂が、ノルボルネン基の重合により提供されるような縮合炭素脂環式単位、および/または無水マレイン酸もしくは無水イタコン酸の重合により提供されるような酸無水物単位を含むものである。このような樹脂は国際出願PCT/US01/14914号および米国特許出願第09/567,634号に開示されている。
【0021】
5)ポリ(シルセスキオキサン)などをはじめとする、Si置換を含み、かつ下塗り層と共に使用されうる樹脂。このような樹脂は米国特許第6803171号に開示されている。
【0022】
6)フッ素置換を含む樹脂(フルオロポリマー)、例えば、テトラフルオロエチレン、フッ素化芳香族基、例えば、フルオロ−スチレン化合物、ヘキサフルオロアルコール部分を含む化合物などの重合により提供されうるようなフッ素置換を含む樹脂。このような樹脂の例は、例えば、国際出願PCT/US99/21912号に開示されている。
【0023】
本発明の好ましいフォトレジストには、化学増幅ポジ型およびネガ型フォトレジストの両方が挙げられる。典型的に好ましい化学増幅ポジ型レジストは、光酸不安定エステルもしくはアセタール基のような光酸不安定基を含む1種以上の樹脂を含む。
【0024】
本発明は、本発明のフォトレジストを使用してフォトレジストレリーフ像を形成する方法、および本発明のフォトレジストを使用して電子デバイスを製造する方法をさらに提供する。本発明は、本発明のフォトレジスト組成物でコーティングされた基体を含む新規の製造物品も提供する。
本発明の他の形態が以下に開示される。
【0025】
上述のように、本発明の特に好ましいフォトレジストは水性アルカリ現像の後での欠点の低減を示すことができる。この欠点の低減には、現像の際にフォトレジストが除かれた領域に残留する有機物質の低減、並びに像形成されたレジストラインもしくは他のフィーチャ間のマイクロ架橋の低減が挙げられうる。
【0026】
上述のように、レジスト樹脂成分と実質的に非混和性である本発明のフォトレジストの好適な材料は単純な試験によって容易に特定されうる。特に、本明細書において言及される場合、好ましい実質的に非混和性の材料は、同じ方法で処理される同じフォトレジストシステムに関連するが、候補となる実質的に非混和性の材料が存在しない比較のフォトレジストと比べて、水性アルカリ現像による欠陥の発生および量の低減をもたらすことができる。欠陥の評価(またはその不存在)は走査型電子顕微鏡検査によりなされうる。液浸流体中のフォトレジスト材料の検出は米国特許出願公開第2006/0246373号の実施例2に記載されるように行われることができ、フォトレジストを露光する前および後での液浸流体の質量分析を含む。この分析において、液浸流体は試験されるフォトレジスト組成物層に露光中約60秒間直接接触する。好ましくは1種以上の実質的に非混和性の材料の添加は、このような実質的に非混和性の材料を使用しない同じフォトレジストと比較して、液浸流体中に存在するフォトレジスト材料(質量分析で検出される様な酸または有機物質)の少なくとも10パーセントの低減をもたらし、より好ましくは、1種以上の実質的に非混和性の材料は、実質的に非混和性の材料を含まない同じフォトレジストと比較して、液浸流体中に存在するフォトレジスト材料(酸および/または有機物質)の少なくとも20、50、または100、200、500、または1000パーセントの低減をもたらす。
【0027】
本発明の好ましいフォトレジストは、米国特許出願公開第2006/0246373号の実施例2に記載される分析方法によって、露光中60秒間に、脱イオン水または他のオーバーコート液浸流体に漏出する光酸発生剤材料を、結果的に1.6×E−10(モル/cm/秒)未満にすることができる。
【0028】
本発明の好ましいフォトレジストは好ましい水接触角を有することができる。本明細書で言及される場合、静的、後退、前進、および転落(sliding)、現像剤静的のような水接触角は、バーネット(Burnett)ら、J.Vac.Sci.Techn.B,23(6)、2721−2727ページ(2005年11/12月)に開示された手順に従って決定されうる。好ましいフォトレジストは(ソフトベークによって除去される溶媒を用いてスピンコートされた層として決定される)少なくとも65°、より好ましくは少なくとも70°の後退角を有しうる。さらに、好ましい実質的に非混和性の材料は(ソフトベークによって除去される溶媒を用いてスピンコートされた層として決定される)少なくとも65°、より好ましくは少なくとも70°の後退角を有しうる。
【0029】
特に好ましい(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料は樹脂であり、高次のポリマー、例えば、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーおよびペンタポリマーが挙げられる。糖置換に加えてフッ素置換を含むこのようなポリマーが特に好ましい。好ましいフッ素置換には、ペルフルオロ基、例えば、FC−、FCCF−、およびフッ素化アルコール、例えば、(FC)C(OH)−が挙げられる。
【0030】
本発明のフォトレジストに使用するための樹脂を(典型的には、コポリマー、ターポリマー、テトラポリマーもしくはペンタポリマーを形成するための1種以上の他の糖を含まないモノマーと共に)形成する重合に特に好ましい糖モノマーには以下のものが挙げられる:
【化1】
式中、Rは水素もしくはメチルであり;並びに、各Rfは同じかもしくは異なっていて、例えば、CFH、−CFCl、−CFCFH、−CFCFCFCFH、−CFCHおよびCFCHCHから選択される。
【0031】
本発明のフォトレジストの樹脂を製造するのに使用するために特に好ましい糖モノマーには次のものが挙げられる:
【化2】
【0032】
上述のように、好適な(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料には、Si含有材料が挙げられる。特に好ましい(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料には、実質的に非混和性の材料には、ナノ構造化された組成物が挙げられ、これはハイブリッドプラスチックス(Hybrid Plastics;カリフォルニア州、ファウンテンバレイ)、シグマ/アルドリッチなどのグループから市販されている。このような材料には、有機基に包まれたSi−Oコアを有するモレキュラーシリカ;シラノール;並びにシルセスキオキサンケージ構造化合物を含むポリマーおよび樹脂を挙げることができ、このポリマーおよび樹脂は、シリコーン、スチレン系物質、アクリル系物質、脂環式物質、例えば、ノルボルネンなどであることができる。
【0033】
(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料として有用な粒子(有機粒子など)には、糖置換を有する、Si含有材料およびフッ素化材料が挙げられる。このような粒子は市販されており、または所望の場合には、1種以上のモノマーを架橋剤および開始剤化合物と一緒に反応させることにより容易に合成されることができる。反応したモノマーは、望まれる場合には、例えば、フッ素、Si基、光酸不安定基、例えば、光酸不安定エステルもしくはアセタール、他の塩基可溶性基、例えば、アルコールなどの置換を有することができる。得られるポリマー粒子にモノマーの1種が光酸不安定基を提供する複数種の異なるモノマーを用いて製造されるこのような粒子の典型的な合成については、後述の実施例1を参照。
【0034】
(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料はフォトレジスト組成物中に比較的少量で存在することができ、かつ依然として効果的な結果を提供することができる。例えば、1種以上の(実質的に非混和性の糖置換材料などの)糖材料は、流体フォトレジスト組成物の全重量を基準にして、約0.1〜20重量パーセントで好適に存在することができる。好適な量は後述の実施例においても提供される。
【0035】
論じられるように、本発明のフォトレジストの糖材料および他の成分の様々な部分。「置換される」置換基は1以上の利用可能な位置で、典型的には1、2もしくは3つの位置で、1種以上の好適な基、例えば、ハロゲン(特に、F、ClもしくはBr);シアノ;C1−8アルキル;C1−8アルコキシ;C1−8アルキルチオ;C1−8アルキルスルホニル;C2−8アルケニル;C2−8アルキニル;ヒドロキシル;ニトロ;炭素環式アリール、例えば、フェニル、ナフチル、アセナフチル、アントラセニル;アルカノイル、例えば、C1−6アルカノイル、例えば、アシルなどによって置換されうる。
【0036】
本発明のある形態においては、30〜60質量%のフッ素原子、またはさらには20質量%のフッ素原子、または70質量パーセント以下のフッ素原子を含むフッ素化界面活性剤を含むフォトレジストは除かれる。
【0037】
本発明のさらなるある形態においては、合計2種類のみの異なる繰り返し単位を含む糖含有樹脂を含むフォトレジストは除かれる。このような形態においては、3種、4種、5種もしくはそれより多い異なる繰り返し単位を含む糖含有樹脂(すなわち、糖置換基を含むターポリマー、テトラポリマー、ペンタポリマーおよびより高次の他のポリマー)を含むフォトレジストが好適である場合がある。
【0038】
本発明のさらなる他の形態においては、(RCH=CH)C(=O)OCH(CF、(式中、RはHもしくはCHである)の構造を含む重合される繰り返しを含む糖含有樹脂を含むフォトレジストは除かれる。
【0039】
本発明のさらなる他の形態においては、(RCH=CH)C(=O)OCH(シクロヘキシル)CHC(OH)(CF、(式中、RはHもしくはCHである)の構造を含む重合される繰り返しを含む糖含有樹脂を含むフォトレジストは除かれる。
【0040】
本発明のある他の形態においては、構造−NHS(O)CFの糖基を含む材料を含むフォトレジストは除かれる。
【0041】
上述のように、本発明に従った使用に好ましいフォトレジストには、ポジ型もしくはネガ型化学増幅型フォトレジスト、すなわち、光酸促進架橋反応を受けて、このレジストの塗膜層の露光領域を、未露光領域よりも低い現像剤可溶性にするネガ型レジスト組成物、並びに1以上の組成物成分の酸不安定基の光酸促進脱保護反応を受けて、このレジストの塗膜層の露光領域を、未露光領域よりも水性現像剤中でより可溶性にするポジ型レジスト組成物が挙げられる。エステルのカルボキシル酸素に共有結合された第三級非環式アルキル炭素(例えば、t−ブチル)もしくは第三級脂環式炭素(例えば、メチルアダマンチル)を含むエステル基は多くの場合、本発明のフォトレジストにおいて使用される樹脂の好ましい光酸不安定基である。アセタール光酸不安定基も好ましい場合がある。
【0042】
本発明の好ましいフォトレジストは、典型的には、樹脂成分および光活性成分を含む。好ましくは、樹脂は、レジスト組成物に水性アルカリ現像可能性を付与する官能基を有する。例えば、ヒドロキシルまたはカルボキシラートのような極性官能基を含む樹脂バインダーが好ましい。好ましくは、樹脂成分は、アルカリ水溶液でレジストを現像可能にするのに充分な量でレジスト組成物中で使用される。
【0043】
200nmを超える波長、例えば、248nmでの像形成には、フェノール系樹脂が典型的に好ましい。好ましいフェノール系樹脂はポリ(ビニルフェノール)であり、これは触媒の存在下で対応するモノマーのブロック重合、乳化重合または溶液重合によって形成されうる。ポリビニルフェノール樹脂の製造に有用なビニルフェノール類は、例えば、商業的に入手可能なクマリンまたは置換クマリンの加水分解、その後の、得られたヒドロキシケイヒ酸の脱カルボキシル化によって製造されうる。有用なビニルフェノール類は対応するヒドロキシアルキルフェノールの脱水により、または置換もしくは非置換のヒドロキシベンズアルデヒドとマロン酸との反応から得られるヒドロキシケイヒ酸の脱カルボキシル化によっても製造されうる。このようなビニルフェノール類から製造される好ましいポリビニルフェノール樹脂は約2,000〜約60,000ダルトンの分子量範囲を有する。
【0044】
また、200nmを超える波長、例えば、248nmでの像形成に好ましいものは、フェノール系単位および非フェノール系単位の双方を含むコポリマーを含む樹脂成分と光活性成分とを混合で含む化学増幅型フォトレジストである。例えば、このようなコポリマーのある好ましいグループは、実質的に、本質的に、または完全に、コポリマーの非フェノール系単位上にだけ酸不安定基を有し、特にアルキルアクリラート光酸不安定基を有し、すなわち、フェノール系−アルキルアクリラートコポリマーである。ある種の特に好ましいコポリマーバインダーは下記式の繰り返し単位xおよびyを有する:
【化3】
式中、ヒドロキシル基はコポリマー中でオルト、メタもしくはパラ位置に存在し、R’は置換もしくは非置換の1〜約18の炭素原子、より典型的には1〜約6〜8の炭素原子を有するアルキルである。ターシャリーブチルが概して好ましいR’基である。R’基は、例えば、ハロゲン(特に、F、ClまたはBr)、C1−8アルコキシ、C2−8アルケニルなどの1種以上によって場合によって置換されていてもよい。単位xおよびyはコポリマー中で規則的に交互であってよく、またはポリマー中でランダムに散在していてもよい。このようなコポリマーは容易に形成されうる。例えば、上記式の樹脂については、ビニルフェノールおよび置換もしくは非置換のアルキルアクリラート、例えば、アクリル酸t−ブチルなどが当該技術分野で知られているようにフリーラジカル条件下で縮合されうる。置換エステル部分、すなわち、アクリラート単位のR’−O−C(=O)−部分は、樹脂の酸不安定基として機能し、この樹脂を含むフォトレジストの塗膜層の露光の際に光酸誘起開裂をうけうる。好ましくは、コポリマーは約8,000〜約50,000、より好ましくは、約15,000〜約30,000のM、約3以下の分子量分布、より好ましくは、約2以下の分子量分布を有しうる。非フェノール系樹脂、例えば、アクリル酸t−ブチルまたはメタクリル酸t−ブチルのようなアクリル酸アルキルと、ビニルノルボルナニルもしくはビニルシクロへキサノール化合物のような脂環式ビニルとのコポリマーも、本発明の組成物において樹脂バインダーとして使用されうる。このようなコポリマーは、このようなフリーラジカル重合もしくは他の公知の手順によっても製造されることができ、好適には、約8,000〜約50,000のMおよび約3以下の分子量分布を有しうる。
【0045】
本発明のポジ型化学増幅型フォトレジストにおいて使用するための酸不安定デブロッキング基を有する他の好ましい樹脂は、シプレイカンパニーの欧州特許出願公開第0829766A2号(アセタールを有する樹脂およびケタール樹脂)およびシプレイカンパニーの欧州特許出願公開第EP0783136A2(1)スチレン;2)ヒドロキシスチレン;および3)酸不安定基、特にアルキルアクリラート酸不安定基、例えば、アクリル酸t−ブチル、もしくはメタクリル酸t−ブチルの単位を含むターポリマーおよび他のコポリマー)に開示されている。一般に、様々な酸不安定基、例えば、酸感受性エステル、カルボナート、エーテル、イミドなどを有する樹脂が好適であることができる。光酸不安定基はより典型的には、ポリマー骨格からペンダントであることができるが、ポリマー骨格に組み込まれた酸不安定基を有する樹脂も使用されうる。
【0046】
上述のように、サブ−200nmの波長、例えば、193nmでの像形成のために、好ましくは、実質的に、本質的にまたは完全にフェニルまたは他の芳香族基を含まない1種以上のポリマーを含むフォトレジストが使用される。例えば、サブ−200nmの像形成について、好ましいフォトレジストポリマーは約5モルパーセント未満の芳香族基を、より好ましくは、約1モル%未満または2モル%未満の芳香族基を、より好ましくは、約0.1モル%未満、0.02モル%未満、0.04モル%未満、および0.08モル%未満の芳香族基を、さらにより好ましくは約0.01モル%未満の芳香族基を含む。特に好ましいポリマーは芳香族基を完全に含まない。芳香族基はサブ−200nm放射線を非常に吸収することができ、よってこのような短い波長の放射線で像形成されるフォトレジストにおいて使用されるポリマーには望ましくない。
【0047】
実質的にまたは完全に芳香族基を含まず、本発明のPAGと配合されてサブ−200nmの像形成のためのフォトレジストを提供することが可能な好適なポリマーは欧州特許出願公開第EP930542A1号、米国特許第6,692,888号および6,680,159号(これら全てシプレイカンパニー)に開示されている。
【0048】
芳香族基を実質的にもしくは完全に含まない好適なポリマーは、好適に、メチルアダマンチルアクリラート、メチルアダマンチルメタクリラート、エチルフェンキルアクリラート、エチルフェンキルメタクリラートなどの重合により提供されうるような光酸不安定アクリラート単位のようなアクリラート単位;ノルボルネン化合物または環内炭素−炭素二重結合を有する他の脂環式化合物の重合により提供されうるような縮合非芳香族脂環式基;無水マレイン酸および/または無水イタコン酸の重合により提供されうるような酸無水物;などを含む。
【0049】
本発明の好ましいネガ型組成物は、酸への曝露により硬化し、架橋しまたは固化しうる1種以上の材料(架橋剤成分、例えば、メラミン樹脂のようなアミンベースの材料など)と、本発明の光活性成分とを含む。特に好ましいネガ型組成物はフェノール系樹脂のような樹脂バインダー、架橋剤成分および本発明の光活性成分を含む。このような組成物およびその使用は欧州特許出願公開第0164248号および第0232972号、並びに米国特許第5,128,232号(サッカレー(Thackeray)ら)に開示されている。樹脂バインダー成分として使用するのに好ましいフェノール系樹脂には、上述のようなノボラックおよびポリ(ビニルフェノール)が挙げられる。好ましい架橋剤には、アミンベースの材料、例えば、メラミン、グリコールウリル、ベンゾグアナミン−ベースの材料および尿素ベースの材料が挙げられる。メラミン−ホルムアルデヒド樹脂は、一般的に最も好ましい。このような架橋剤は商業的に入手可能であり、例えば、サイメル(Cymel)300、301および303の商品名で、サイテック(Cytec)により販売されているメラミン樹脂がある。グリコールウリル樹脂はサイテックによって、サイメル1170、1171、1172の商品名で販売されており、尿素ベースの樹脂はビートル(Beetle)60、65および80の商品名で販売されており、ベンゾグアナミン樹脂はサイメル1123および1125の商品名で販売されている。
【0050】
サブ−200nmの波長、例えば、193nmで像形成するために、好ましいネガ型フォトレジストはシプレイカンパニーへの国際公開第WO03077029号に開示されている。
【0051】
本発明のフォトレジストは他の材料も含みうる。例えば、他の任意成分の添加剤には、化学線(actinic)およびコントラスト染料、ストリエーション防止剤(anti−striation agents)、可塑剤、速度向上剤、増感剤(例えば、より長波長、例えば、I線(365nm)またはG線波長での本発明のPAGの使用のため)などが挙げられる。典型的には、比較的高濃度、例えば、レジストの乾燥成分の合計重量の5〜30重量パーセントの量などで存在することができる充填剤および染料を除いて、このような任意の添加剤は、フォトレジスト組成物中に低濃度で存在しうる。
【0052】
本発明のレジストの好ましい任意成分の添加剤は追加塩基、例えば、カプロラクタムであり、この追加塩基は現像されたレジストレリーフ像の解像度を向上させることができる。追加塩基は、比較的少量、例えばPAGに対して約1〜10重量パーセント、より典型的には1〜約5重量パーセントで好適に使用される。他の好適な塩基性添加剤には、スルホン酸アンモニウム塩、例えば、p−トルエンスルホン酸ピペリジニウム、およびp−トルエンスルホン酸ジシクロヘキシルアンモニウム;アルキルアミン、例えば、トリプロピルアミンおよびドデシルアミン;アリールアミン、例えば、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、アミノフェノール、2−(4−アミノフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0053】
本発明のレジストの樹脂成分は、典型的には、レジストの露光された塗膜層を、アルカリ水溶液などを用いて現像可能にするのに充分な量で使用される。より詳細には、樹脂バインダーは好適に、レジストの全固形分の50〜約90重量%を構成しうる。光活性成分は、レジストの塗膜層中の潜像の形成を可能にするのに充分な量で存在すべきである。より詳細には、光活性成分は、好適には、レジストの全固形分の約1〜40重量%の量で存在しうる。典型的には、より少ない量の光活性成分が化学増幅型レジストに好適であり得る。
【0054】
本発明のレジスト組成物は、活性化放射線への露光によりレジストの塗膜層中に潜像を生じさせるのに充分な量で好適に使用される光酸発生剤(すなわち、PAG)も含む。193nmおよび248nmでの像形成に好ましいPAGには、イミドスルホナート、例えば、次式の化合物が挙げられる:
【化4】
式中、Rはカンフル、アダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)およびペルフルオロアルキル、例えば、ペルフルオロ(C1−12アルキル)、特に、ペルフルオロオクタンスルホナート、ペルフルオロノナンスルホナートなどである。特に好ましいPAGはN−[(ペルフルオロオクタンスルホニル)オキシ]−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドである。
【0055】
スルホナート化合物、特にスルホナート塩も好適なPAGである。193nmおよび248nmでの像形成に好適な2種の薬剤は、次のPAG1および2である:
【化5】
【0056】
このようなスルホナート化合物は、上記PAG1の合成を詳述する欧州特許出願第96118111.2号(公開番号0783136)に開示されるように製造されうる。
【0057】
上記カンフルスルホナートグループ以外のアニオンと複合体を形成した上記2種のヨードニウム化合物も好適である。特に、好ましいアニオンには、式RSO(式中、Rはアダマンタン、アルキル(例えば、C1−12アルキル)およびペルフルオロアルキル、例えば、ペルフルオロ(C1−12アルキル))のアニオン、特にペルフルオロオクタンスルホナート、ペルフルオロブタンスルホナートなどが挙げられる。
【0058】
他の公知のPAGも、本発明に従って使用されるフォトレジストにおいて使用されうる。特に193nmの像形成について、向上した透明性を提供するためには、芳香族基を含まないPAG、例えば、上記イミドスルホナートが概して好ましい。
【0059】
本発明のフォトレジストは他の任意である材料を含むこともできる。例えば、他の任意である添加剤には、ストリエーション防止剤、可塑剤、速度向上剤などが挙げられる。このような任意である添加剤は、比較的高濃度、例えば、レジストの乾燥成分の全重量の約5〜30重量パーセントの量で存在できる充填剤および染料を除いて、典型的にはフォトレジスト組成物中に低濃度で存在できる。
【0060】
本発明に従って使用されるフォトレジストは一般的には、公知の手順に従って製造される。例えば、本発明のレジストは、フォトレジストの成分を好適な溶媒に溶解することによりコーティング組成物として製造されることができ、この好適な溶媒には、例えば、グリコールエーテル、例えば、2−メトキシエチルエーテル(ジグリム)、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート;乳酸エステル、例えば、乳酸エチルまたは乳酸メチル、乳酸エチルが好ましい;プロピオン酸エステル、特にプロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルおよびエチルエトキシプロピオナート;セロソルブエステル、例えば、メチルセロソルブアセタート;芳香族炭化水素、例えば、トルエンもしくはキシレン;またはケトン、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンおよび2−ヘプタノンが挙げられる。フォトレジストの固形分量は、典型的には、フォトレジスト組成物の全重量の5〜35重量パーセントで変化する。このような溶媒のブレンドも好適である。
【0061】
液体フォトレジスト組成物は、例えば、スピニング、ディッピング、ローラーコーティングまたは他の従来のコーティング技術によって基体に適用されうる。スピンコーティングの場合、コーティング溶液の固形分は、所望の膜厚を提供するように、使用される具体的なスピニング装置、溶液の粘度、スピナーの速度およびスピニングが行われる時間量に基づいて調節されうる。
【0062】
本発明に従って使用されるフォトレジスト組成物は、フォトレジストでのコーティングを伴うプロセスにおいて従来使用されている基体に好適に適用される。例えば、この組成物はマイクロプロセッサおよび他の集積回路部品の製造のための、シリコンウェハ、または二酸化ケイ素で覆われたシリコンウェハ上に適用されうる。アルミニウム−酸化アルミニウム、ガリウムヒ素、セラミック、石英、銅、ガラス基体なども好適に使用される。フォトレジストは反射防止層、特に有機反射防止層上にも好適に適用されうる。
【0063】
表面上へのフォトレジストのコーティングの後で、それは加熱により乾燥させられて、好ましくはフォトレジスト塗膜が粘着性でなくなるまで溶媒を除去する。
【0064】
次いで、フォトレジスト層(存在する場合には、上塗りバリア組成物層を伴う)は、液浸リソグラフィーシステム[すなわち、露光ツール(特に、投影レンズ)とフォトレジストでコーティングされた基体との間の空間が液浸流体、例えば、水もしくは、向上した屈折率の流体を提供しうる硫酸セシウムのような1種以上の添加剤と混合された水で占有されている]において露光される。好ましくは、液浸流体(例えば、水)は気泡を回避するために処理されており、例えば、水はナノバブルを回避するために脱ガスされうる。
【0065】
本明細書において「液浸露光」または他の類似の用語についての言及は、露光が、露光ツールと、塗布されたフォトレジスト組成物層との間に配置されるこのような流体層(例えば、水もしくは添加剤含有水)を用いて行われることを示す。
【0066】
次いで、フォトレジスト組成物層は、露光ツールおよびフォトレジスト組成物の成分に応じて、典型的には約1〜100mJ/cmの範囲の露光エネルギーの活性化放射線で露光され、好適にパターン形成される。本明細書において、フォトレジスト組成物を、そのフォトレジストを活性化する放射線で露光することについての言及は、その放射線が光活性成分の反応を引き起こす(例えば、光酸発生剤化合物から光酸を生じさせる)ことなどにより、フォトレジスト中に潜像を形成することができることである。
【0067】
上述のように、フォトレジスト組成物は好ましくは、短い露光波長によって、特に、サブ(sub)400nm、サブ300nmおよびサブ200nmの露光波長によって光活性化され、EUVおよび157nmだけでなく、I線(365nm)、248nmおよび193nmも特に好ましい露光波長である。
【0068】
露光の後で、組成物の膜層は、好ましくは約70℃〜約160℃の範囲の温度でベークされる。その後、この膜は、好ましくは、水性現像剤、例えば、第四級アンモニウムヒドロキシド溶液、例えば、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド溶液;様々なアミン溶液、好ましくは0.26Nのテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、例えば、エチルアミン、n−プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリエチルアミンまたはメチルジエチルアミン;アルコールアミン、例えば、ジエタノールアミンまたはトリエタノールアミン;環式アミン、例えば、ピロール、ピリジンなどでの処理によって現像される。一般に、現像は当該技術分野で認識された手順に従う。
【0069】
基体上のフォトレジスト塗膜の現像の後で、現像された基体はレジストが除かれた領域上について、例えば、当該技術分野で知られた手順に従って、レジストが除かれた基体領域を化学的にエッチングするかまたはめっきすることにより、選択的に処理されうる。マイクロエレクトロニクス基体の製造、例えば、二酸化ケイ素ウェハの製造のためには、好適なエッチング剤には、ガスエッチング剤が挙げられ、例えば、ハロゲンプラズマエッチング剤、例えば、プラズマ流れとして適用される塩素またはフッ素ベースのエッチング剤、例えばClまたはCF/CHFエッチング剤が挙げられる。このような処理の後、レジストは、公知の剥ぎ取り手順を用いて、処理された基体から除去されることができる。
【0070】
本明細書において言及される全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。次の非限定的な実施例は本発明の例示である。本明細書において言及される全ての文献は参照することによりその全体が組み込まれる。
【実施例】
【0071】
実施例1:糖含有モノマーの合成
【化6】
【0072】
ジクロロメタン20mL中にグルコール(10mmol)およびトリエチルアミン(12mmol)を溶解する。この混合物を0℃に冷却する。塩化メタクリロイル(11mmol)を滴下添加する。この混合物を0℃で2時間攪拌し、室温まで暖め、この混合物を室温で2時間攪拌する。反応混合物を濾過し、酢酸エチルで洗浄する。ロータリーエバポレータで溶媒を除去する。SiOを使用するカラムクロマトグラフィーでメタクリル酸エステルが精製される。
【0073】
【化7】
【0074】
メタクリル酸エステル(1)(1mmol)をTFA/HO 4:1混合物(32mL)に溶解する。この混合物を室温で5時間攪拌する。溶媒を除去し、この混合物をジクロロメタンに溶解し、トリエチルアミン(1.1mmol)を加える。この反応混合物を0℃に冷却し、塩化トリフルオロアセチル(5mmol)を滴下添加する。この混合物を室温で1時間攪拌する。この反応混合物を濾過し、酢酸エチルで洗浄する。ロータリーエバポレータで溶媒を除去する。SiOを使用するカラムクロマトグラフィーによって、保護されたメタクリル酸エステルが精製される。
【0075】
実施例2:糖樹脂製造
下記構造を有する糖コポリマー樹脂が下記のように製造された:
【化8】
【0076】
A.モノマーおよび開始剤混合物:上記実施例1で製造された糖モノマー約6.3g、0.7gの上記ECPMAモノマー、0.42gのTrignox−23(開始剤)および17.0gのPGMEA(溶媒)を供給バイアル中に秤量する。
B.反応器:反応器中に30gのPGMEA、85℃に維持。
C.AをBに供給:一定の供給速度で120分で、AがBに供給される。
D.保持温度:AをBに供給した後で、さらに2時間、反応器の温度が85℃に維持され、次いで、反応器の温度を室温まで自然に冷却させる。
反応器からの糖樹脂はさらに精製することなくフォトレジスト組成物に使用されうる。
【0077】
実施例3:フォトレジスト製造および処理
示された量で下記材料を混合することによりフォトレジスト組成物が製造される:
1.樹脂成分:フォトレジスト組成物の全重量を基準にして6.79重量%の量の(メタクリル酸2−メチル−2−アダマンチル/ベータ−ヒドロキシ−ガンマ−ブチロラクトンメタクリラート/メタクリル酸シアノ−ノルボルニル)のターポリマー;
2.光酸発生剤化合物:フォトレジスト組成物の全重量を基準にして0.284重量%の量のt−ブチルフェニルテトラメチレンスルホニウムペルフルオロブタンスルホナート;
3.塩基添加剤:フォトレジスト組成物の全重量を基準にして0.017重量%の量のN−アルキルカプロラクタム;
4.実質的に非混和性の添加剤:フォトレジスト組成物の全重量を基準にして0.213重量%の量の、上記実施例2で記載されるように製造された実施例2のポリマー;
5.溶媒成分:約90パーセントの流体組成物を提供するプロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート。
【0078】
このフォトレジスト組成物がシリコンウェハ上にスピンコートされ、ホットプレート上で乾燥させられ、溶媒を除き、次いで乾燥フォトレジスト層を水性液浸流体に直接接触させた液浸リソグラフィープロセスで露光される。その液浸システムにおいて、フォトレジスト層はパターン化された193nmの放射線で24.1mJ/cmの線量で露光される。
このフォトレジスト層は次いで(例えば、約120℃で)露光後ベークされ、そして0.26Nのアルカリ現像剤水溶液で現像される。
露光後ベークの後でかつ現像の前のレジスト成分の漏出を評価するために、液浸流体はレジスト中の光酸およびその光分解副生成物について、LC/質量分析(60秒の漏出時間が試験される)によって評価される。