特許第6144008号(P6144008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144008ポリブタジエンゴム組成物、その製造方法及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144008
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】ポリブタジエンゴム組成物、その製造方法及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20170529BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20170529BHJP
   C08F 36/06 20060101ALI20170529BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20170529BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20170529BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   C08L21/00
   B60C1/00 Z
   C08F36/06
   C08K3/04
   C08K3/36
   C08L9/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-271540(P2011-271540)
(22)【出願日】2011年12月12日
(65)【公開番号】特開2013-122021(P2013-122021A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年10月31日
【審判番号】不服2016-3904(P2016-3904/J1)
【審判請求日】2016年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】宇部興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】安部 光春
(72)【発明者】
【氏名】庄田 恒志
(72)【発明者】
【氏名】大原 めぐみ
【合議体】
【審判長】 加藤 友也
【審判官】 上坊寺 宏枝
【審判官】 守安 智
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−126649(JP,A)
【文献】 特開平6−25355(JP,A)
【文献】 特開2007−2057(JP,A)
【文献】 特開2005−247899(JP,A)
【文献】 特開平3−45609(JP,A)
【文献】 特開2005−8817(JP,A)
【文献】 特開2004−106796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が180℃以上の沸騰n−ヘキサン不溶分1〜20重量%(a)と、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が47〜63、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0〜5.0、及び25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)が1.70以下の沸騰n−ヘキサン可溶分80〜99重量%(b)からなるポリブタジエン(A)3〜70重量部、並びに(A)以外のジエン系ゴム(B)30〜97重量部からなるゴム成分(A)+(B)100重量部に対し、ゴム補強剤(C)20〜80重量部を配合してなることを特徴とするポリブタジエンゴム組成物。
【請求項2】
該(A)以外のジエン系ゴム(B)が、天然ゴムまたはスチレンブタジエンゴムあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリブタジエンゴム組成物。
【請求項3】
該ゴム補強剤(C)がカーボンブラックおよび/またはシリカであることを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載のポリブタジエンゴム組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載のポリブタジエンゴム組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れかに記載のポリブタジエンゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業操作性が向上し、低燃費性と加工性のバランス、特に加工性に優れたポリブタジエンゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー化を目的とし、タイヤの転がり抵抗を低減させるため、特に従来のトレッドゴム組成物には種々の手段が取り上げられてきた。その手段として、例えば、粒子径の大きなカーボンブラックまたはシリカを配合し、それらの配合量を少なくする手法がとられていた。しかし、カーボンブラックやシリカの配合量を少なくしていくと、低発熱化は達成されても、ゴムが柔らかくなるため剛性が低下して、特に耐摩耗性が悪化するという問題があった。
【0003】
このような問題に対しては、ハイシス−1,4−ポリブタジエン(BR)のマトリックス中にシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPB)を分散させた改良ポリブタジエンゴム(VCR)を用いて、カーボンブラック配合量を低減させても低発熱性と耐摩耗性のバランスを改善する方法が提案されている(特許文献1)。また、特定の物性を持ったVCRにカーボンブラックを配合することで、耐摩耗性と動的発熱性のバランス改善が提案されている(特許文献2)。
【0004】
その後、耐摩耗性と動的発熱性のバランス改善において、沸騰n−ヘキサン可溶分の25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)が2.0〜7.0のリニアリティーの高いポリブタジエンゴムを含んだVCRを使用することで、良好な改良ポリブタジエンゴムの提供がなされている(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】特開平5−194658号公報
【特許文献2】特許第4134823号
【特許文献3】特開2010−180291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分岐度の高いポリブタジエン含んだVCRを使用することで、作業操作性が向上し、低燃費性と加工性のバランス、特に加工性に優れたポリブタジエンゴム組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
融点が180℃以上の沸騰n−ヘキサン不溶分1〜20重量%(a)と、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が20〜70、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0〜5.0、25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)が1.70以下の沸騰n−ヘキサン可溶分80〜99重量%(b)からなるポリブタジエン(A)3〜70重量部、(A)以外のジエン系ゴム(B)30〜97重量部とからなるゴム成分(A)+(B)100重量部に対し、ゴム補強剤(C)20〜80重量部を配合してなることを特徴とするポリブタジエンゴム組成物に関する。
【0008】
該(A)以外のジエン系ゴム(B)が、天然ゴムまたはスチレンブタジエンゴムあるいはそれらの混合物であることを特徴とする請求項1に記載のポリブタジエンゴム組成物に関する。
【0009】
該ゴム補強剤(C)がカーボンブラックおよび/またはホワイトカーボンであることを特徴とする請求項1乃至2の何れかに記載のポリブタジエンゴム組成物に関する。
【0010】
前記のポリブタジエンゴム組成物の製造方法に関する。
【0011】
前記のポリブタジエンゴム組成物を用いたタイヤに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、低燃費性かつ加工性に優れたポリブタジエンゴム組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリブタジエン組成物の(A)は、実質的に沸騰n−ヘキサン不溶分(a)と沸騰n−ヘキサン可溶分(b)からなる。
【0014】
ここで、n−ヘキサン不溶分とは、ポリブタジエンゴムを沸騰n−ヘキサン中で還流したときに不溶分として回収される部分をいい、沸騰n−ヘキサン可溶分は、ポリブタジエンゴムを沸騰n−ヘキサン中で還流したときにn−ヘキサンに溶解する部分である。
この沸騰n−ヘキサン不溶分は、ポリブタジエン組成物の(A)成分のシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(SPB)成分に相当する。
【0015】
沸騰n−ヘキサン不溶分の割合は1〜20重量%であり、好ましくは5〜15重量%であり、特に好ましくは7〜11重量%の範囲である。沸騰n−ヘキサン不溶分の割合が上記よりも少ないと、カーボンブラックなどのフィラーを低減する高剛性の効果が期待できない。
一方、沸騰n−ヘキサン不溶分の割合が上記よりも多い場合は、配合物粘度が高くなり加工性が悪化する場合もあり好ましくない。
【0016】
沸騰n−ヘキサン不溶分は、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンそのもの、及び/又はシンジオタクチック−1,2−構造を主要な構造とするポリブタジエンを主成分とするものである。
【0017】
沸騰n−ヘキサン不溶分の融点は180℃以上、好ましくは190℃以上である。
融点が上記範囲より低いとカーボンブラックなどのゴム補強剤フィラーを低減する高剛性の効果が期待できないため好ましくない。
【0018】
沸騰n−ヘキサン可溶分は、ハイシス−1,4−ポリブタジエンそのもの、及び/又はハイシス−1,4構造を主要な構造とするポリブタジエンを主成分とするものである。
シス−1,4構造の割合は、分子中80mol%以上であり、好ましくは90mol%以上、特に好ましくは95mol%以上である。80%未満であると、低発熱性が低下するから好ましくない。
【0019】
沸騰n−ヘキサン可溶分の100℃におけるML1+4は、20〜70の範囲が好ましく、40〜65の範囲がより好ましく、47〜63が特に好ましい。
100℃におけるML1+4が上記範囲より低いと、低燃費性が低下するので好ましくない。一方、上記範囲よりも大きいと、配合物粘度が高くなり、作業操作性が悪くなり、加工性もより悪くなるという問題がある。
【0020】
沸騰n−ヘキサン可溶分の25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)は、30〜250の範囲が好ましく、40〜230がより好ましく、50〜200が特に好ましい。
【0021】
沸騰n−ヘキサン可溶分の25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)が1.75未満、好ましくは1.70未満、特に好ましくは1.68未満である。
当該範囲より大きいと、低燃費性と加工性のバランスが悪くなるので好ましくない。
本願発明は、このマトリックス成分、すなわち沸騰n−ヘキサン不溶分の25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)と100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)を1.75未満の領域に既定した点に特徴がある。
【0022】
沸騰n−ヘキサン可溶分の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)は、2.0〜5.0、好ましくは2.5〜4.5、特に好ましくは2.7〜4.0の範囲である。2.0未満であると、耐摩耗性の改善効果が期待できない場合があり好ましくない。一方、5.0を超えると、低発熱性が低下するという問題がある。
【0023】
上記のポリブタジエン(A)成分は、二段重合法によって製造できる。二段重合法とは、1,3−ブタジエンを二段階に分けて重合する方法であり、第1段階でシス−1,4−重合を行ってハイシス−1、4−ポリブタジエン(沸騰n−ヘキサン可溶分)を得、次いで重合を停止することなく引き続いてシンジオタクチック−1,2重合触媒を投入し、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(沸騰n−ヘキサン不溶分)を合成し、沸騰n−ヘキサン不溶分が沸騰n−ヘキサン可溶分中に分散したポリブタジエンゴムを得るというものである。又、この逆に、第1段階でシンジオタクチック−1,2重合を行い、第2段階でシス−1,4重合を行ってもよい。
【0024】
シス−1,4重合触媒及びシンジオタクチック−1,2重合触媒には、各々公知のものを用いることができる。
【0025】
シス−1,4重合触媒の例としては、ジエチルアルミニウムクロライド−コバルト系触媒やトリアルキルアルミニウム−三弗化硼素−ニッケル系触媒、ジエチルアルムニウムクロライド−ニッケル系触媒、トリエチルアルミニウム−四沃化チタニウム系触媒、等のチーグラー・ナッタ系触媒、及びトリエチルアルミニウム−有機酸ネオジウム−ルイス酸系触媒等のランタノイド元素系触媒等が挙げられる。
【0026】
シンジオタクチック−1,2重合触媒の例としては、可溶性コバルト−有機アルミニウム化合物−二硫化炭素系触媒、可溶性コバルト−有機アルミニウム化合物−二硫化炭素系触媒、ニトリル化合物系触媒、等が挙げられる。重合度、重合触媒等の重合条件も公知の方法に従って適宜設定することができる。
【0027】
本発明のポリブタジエンは、この他、ブレンド法によっても製造できる。
【0028】
ブレンド法は、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンとハイシス−1,4−ポリブタジエンとを予め別々に重合してからブレンドするという方法であるが、各々を溶液の状態でブレンドする溶液ブレンド法の他、バンバリーミキサーや押出混練機等で溶融、混練する溶融ブレンド法も可能である。又、二段重合法で合成したポリブタジエンゴムに、ハイシス−1,4−ポリブタジエンやシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエンをブレンドしてもよい。
【0029】
本発明の(B)成分である、上記の(A)成分以外のジエン系ゴムとしては、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、ポリイソプレン、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を挙げることができる。これらの中でもNRあるいはSBRが好ましい。またNRとSBRの組み合わせで使用しても良好な結果が得られる。又、これらゴムの誘導体、例えば錫化合物で変性されたポリブタジエンゴムやこれらのゴムをエポキシ変性したものや、シラン変性、或いはマレイン化したものも用いられる。これらのゴムは単独でも、二種以上組合せて用いても良い。
【0030】
(A)成分と(B)成分の割合は、(A)3〜70重量部、(B)30〜97重量部である。
【0031】
特に(A)成分が5〜70重量部と(B)成分が30〜95重量部である場合、タイヤ用ゴム組成物として最適である。
【0032】
本発明の(C)成分のゴム補強剤としては、各種のカーボンブラックやホワイトカーボン以外に、活性化炭酸カルシウム、超微粒子珪酸マグネシウム等の無機補強剤やシンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ハイスチレン樹脂、フェノール樹脂、リグニン、変性メラミン樹脂、クマロンインデン樹脂及び石油樹脂等の有機補強剤がある。
特に好ましくは、粒子径が90nm以下、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が70ml/100g以上のカーボンブラックで、例えば、FEF,FF,GPF,SAF,ISAF,SRF,HAF等が挙げられる。
【0033】
本発明の(C)成分の混合割合はゴム成分(A)+(B)100重量部に対して、ゴム補強剤(C)20〜80重量部、好ましくは25〜70重量部である。(C)成分が上記範囲未満であると硬度が低すぎるので好ましくない。一方、80重量部を超えると、配合物粘度が高くなり加工性が悪化するという問題がある。
【0034】
本発明では、分岐度の高いポリブタジエン含んだVCRが特徴の一つであるが、それに加え、他の樹脂やカーボンブラックなどのゴム補強剤を加える前後での配合物の粘度変化(ΔML1+4)が他のゴム組成物に比べて低いと言う点が上げられる。
すなわち、融点が180℃以上の沸騰n−ヘキサン不溶分1〜20重量%(a)と、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が20〜70、分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が2.0〜5.0、25℃における5%トルエン溶液粘度(Tcp)とムーニー粘度(ML1+4)の比(Tcp/ML1+4)が1.70以下の沸騰n−ヘキサン可溶分80〜99重量%(b)からなるポリブタジエン(A)3〜70重量部を用いると、配合後の粘度増加を抑えられるため、他の物性を保持しつつ、作業操作性が向上し、低燃費性と加工性のバランス、特に加工性に良好なゴム組成物を作ることが出来る。
【0035】
一般には、素ゴムにゴム補強剤等を配合した場合、ムーニー粘度(ML1+4)が上昇するが、本発明で得られた条件の素ゴムを使用することで、他のゴム組成物に比べその上昇を抑えることができる。すなわち、ゴム補強剤等を配合する前の素ゴム状態のムーニー粘度(ML1+4)が決定されれば、ゴム組成物の物性を設計しやすく、その結果、加工性への影響を抑えることが可能となる。
【0036】
本発明のポリブタジエン組成物は、前記各成分を通常行われているバンバリー、オープンロール、ニーダー、二軸混練り機などを用いて混練りすることで得られる。
【0037】
必要に応じて、加硫剤、加硫助剤、老化防止剤、充填剤、プロセスオイル、亜鉛華、ステアリン酸など、通常ゴム業界で用いられる配合剤を混練してもよい。
【0038】
加硫剤としては、公知の加硫剤、例えば硫黄、有機過酸化物、樹脂加硫剤、酸化マグネシウムなどの金属酸化物などが用いられる。
【0039】
加硫助剤としては、公知の加硫助剤、例えばアルデヒド類、アンモニア類、アミン類、グアニジン類、チオウレア類、チアゾール類、チウラム類、ジチオカーバメイト類、キサンテート類などが用いられる。
【0040】
老化防止剤としては、アミン・ケトン系、イミダゾール系、アミン系、フェノール系、硫黄系及び燐系などが挙げられる。
【0041】
充填剤としては、炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、クレー、リサージュ、珪藻土等の無機充填剤、再生ゴム、粉末ゴム等の有機充填剤が挙げられる。
【0042】
プロセスオイルは、アロマティック系、ナフテン系、パラフィン系のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0043】
以下の実施例および比較例において、ポリブタジエンゴム及びその組成物について以下の各項目の測定は、次のようにして行った。
【0044】
(1)n−ヘキサン不溶分(HI)の融点測定
ポリブタジエンゴム25gを沸騰n−ヘキサン1000ml中で還流し、沸騰n−ヘキサン不溶分と可溶分とに分離して、n−ヘキサン不溶分の割合を得た。次いで、このn−ヘキサン不溶分をDSC50(島津製作所製)を用いて昇温速度10℃/分で得られた吸熱ピークより融点を求めた。
【0045】
(2)n−ヘキサン可溶分の重量平均分子量の測定
ポリブタジエンゴム25gを沸騰n−ヘキサン1000ml中で還流し、不溶分を分離した後、n−ヘキサン溶液を回収して、この溶液からn−ヘキサンを除去してn−ヘキサン可溶分を回収した。このn−ヘキサン可溶分をテトラヒドロフランに溶解し、GPCを用いてポリスチレン換算分子量を求め、この結果から平均分子量を測定した。
【0046】
(3)n−ヘキサン可溶分の5%トルエン溶液粘度(Tcp)
上記の方法で得られた沸騰n−ヘキサン可溶分を5%になるようにトルエンに溶解して、キャノンフェンスケ粘度計を用いて25℃で測定した。
【0047】
(4)n−ヘキサン可溶分のミクロ構造
上記の方法で得られた沸騰n−ヘキサン可溶分を赤外線スペクトルにて測定し、宇部法によってシス−1,4構造の割合を計算した。
【0048】
(5)ムーニー粘度(ML1+4,100℃)
本発明で用いているムーニー粘度(ML1+4)は、すべて(ML1+4,100℃)を意味している。
ポリブタジエンゴム及びn−ヘキサン可溶分のムーニー粘度(ML1+4,100℃)JIS K6300に規定されている測定法に従って100℃で測定した。
【0049】
(6)加硫物の硬度
JIS K6253に規定されている測定法に従ってタイプAで測定した。
【0050】
(7)加硫物の低発熱性(tanδ)
GABO社製EPLEXOR 100Nを用いて、温度70℃、周波数10Hz、動的歪み0.3%の条件で測定し、比較例1を100として指数表示した。指数が大きいほど良好である。
【0051】
(8)100%モジュラス(Mod100)の測定
エー・アンド・デイ社製テンシロン万能試験機RTG−1310を用いて、加硫操作を実施した後試験片を作製し、JISK 6251の手法により室温にて引張試験測定を行った。
【0052】
(実施例1)
内部を窒素ガスで置換した容量1.5リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン、1,3−ブタジエン、シスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC4留分の重量比が53/30/17となるよう調整した混合溶液1.0Lを仕込んだ。この溶液に水1.38mmolと二硫化炭素0.2mmolを加えて30分間攪拌後、1,5−シクロオクタジエン12.2mmolおよびジエチルアルミニウムクロライド4.14mmolを加えて5分間攪拌した。次いで、この溶液を50℃に昇温し、コバルトオクトエート0.009mmolを加えて20分間シス−1,4重合を行った。さらに重合溶液に、シンジオタクチック1,2重合触媒としてトリエチルアルミニウム5.38mmol、2分後に水を1.79mmol、次いでコバルトオクトエート0.011mmolを加えて、残余の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック1,2重合した。所定時間経過後、重合溶液に、2,4−tert−ブチル−p−クレゾール0.5gをメタノール−ベンゼン混合溶媒(50:50)に溶かした溶液を加えて、重合反応を停止した。重合反応を停止した後、重合溶液を常法に従って処理し、ポリブタジエンゴムを回収した。このポリブタジエンゴムについての上記の結果を表1に示す。
【0053】
(実施例2)
実施例1の1,5−シクロオクタジエン12.2mmolを11.4mmolに代えた以外は、同様にして行った。
【0054】
(実施例3)
実施例1の1,5−シクロオクタジエン12.2mmolを11.0mmolに代えた以外は、同様にして行った。
【0055】
(実施例4)
内部を窒素ガスで置換した容量1.5リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン、1,3−ブタジエン、シスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC4留分の重量比が53/30/17となるよう調整した混合溶液1.0Lを仕込んだ。この溶液に水1.38mmolと二硫化炭素0.2mmolを加えて30分間攪拌後、1,5−シクロオクタジエン10.8mmolおよびジエチルアルミニウムクロライド4.14mmolを加えて5分間攪拌した。次いで、この溶液を50℃に昇温し、コバルトオクトエート0.009mmolを加えて20分間シス−1,4重合を行った。さらに重合溶液に、シンジオタクチック1,2重合触媒としてトリエチルアルミニウム5.38mmol、2分後に水を1.79mmol、次いでコバルトオクトエート0.009mmolを加えて、残余の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック1,2重合した。所定時間経過後、重合溶液に、2,4−tert−ブチル−p−クレゾール0.5gをメタノール−ベンゼン混合溶媒(50:50)に溶かした溶液を加えて、重合反応を停止した。重合反応を停止した後、重合溶液を常法に従って処理し、ポリブタジエンゴムを回収した。このポリブタジエンゴムについての上記の結果を表1に示す。
【0056】
(比較例1)
内部を窒素ガスで置換した容量1.5リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン、1,3−ブタジエン、シスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC4留分の重量比が28/33/39となるよう調整した混合溶液1.0Lを仕込んだ。この溶液に水1.7mmolと二硫化炭素0.25mmolを加えて30分間攪拌後、1,5−シクロオクタジエン9.4mmolおよびジエチルアルミニウムクロライド3.0mmolを加えて5分間攪拌した。次いで、この溶液を60℃に昇温し、コバルトオクトエート0.0065mmolを加えて20分間シス−1,4重合を行った。さらに重合溶液に、シンジオタクチック1,2重合触媒としてトリエチルアルミニウム3.9mmol、2分後に水を1.3mmol、次いでコバルトオクトエート0.057mmolを加えて、残余の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック1,2重合した。所定時間経過後、重合溶液に、2,4−tert−ブチル−p−クレゾール0.5gをメタノール−ベンゼン混合溶媒(50:50)に溶かした溶液を加えて、重合反応を停止した。重合反応を停止した後、重合溶液を常法に従って処理し、ポリブタジエンゴムを回収した。このポリブタジエンゴムについての上記の結果を表1に示す。
【0057】
(比較例2)
内部を窒素ガスで置換した容量1.5リットルのオートクレーブに、シクロヘキサン、1,3−ブタジエン、シスおよびトランス−2−ブテンを主成分とするC4留分の重量比が25/40/35となるよう調整した混合溶液1.0Lを仕込んだ。この溶液に水2.22mmolを加えて30分間攪拌後、1,5−シクロオクタジエン11.0mmolおよびジエチルアルミニウムクロライド2.88mmolとトリエチルアルミ0.32mmolを予め混合した溶液を加えて5分間攪拌した。次いで、この溶液を50℃に昇温し、コバルトオクトエート0.0065mmolを加えて20分間シス−1,4重合を行った。さらに重合溶液に、シンジオタクチック1,2重合触媒としてトリエチルアルミニウム3.9mmol、二硫化炭素0.25mmol、及びコバルトオクトエート0.053mmolを加えて、残余の1,3−ブタジエンをシンジオタクチック1,2重合した。所定時間経過後、重合溶液に、2,4−tert−ブチル−p−クレゾール0.5gをメタノール−ベンゼン混合溶媒(50:50)に溶かした溶液を加えて、重合反応を停止した。重合反応を停止した後、重合溶液を常法に従って処理し、ポリブタジエンゴムを回収した。このポリブタジエンゴムについての上記の結果を表1に示す。
【0058】
(比較例3)
比較例1のシンジオタクチック1,2重合触媒としてのコバルトオクトエート0.053mmolを0.078mmolに代えた以外は、同様にして行った。
【0059】
表1に使用した配合前の素ゴムの物性を示す。なお、表1中のMLはムーニー粘度(ML1+4,100℃)、HIは沸騰n−ヘキサン不溶分、マトリックスとは沸騰n−ヘキサン可溶分のことを意味している。
【0060】
【表1】
【0061】
表1の配合前ポリブタジエンを用い、表2に示す配合処方に従って、1.7Lの試験用バンバリーミキサーを使用しNRとカーボンブラック等を混練してから加硫剤をオープンロールで混合した。次いで、温度150℃で30分間プレス加硫し、得られた加硫試験片により物性を評価した。その結果を表2に示した。
【0062】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0063】
タイヤにおけるトレッド・サイドウォールなどのタイヤ外部部材やカーカス・ベルト・ビード・チェーファーなどのタイヤ内部部材および防振ゴム・ベルト・ゴムクローラなどの工業用品に用いることができる。更に発泡剤等を加えることで履物部材にも使用できる。