特許第6144047号(P6144047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144047両サイドガイドワイヤを使用して閉塞身体血管を再疎通させるための方法と装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144047
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】両サイドガイドワイヤを使用して閉塞身体血管を再疎通させるための方法と装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   A61M25/00
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-550222(P2012-550222)
(86)(22)【出願日】2011年2月14日
(65)【公表番号】特表2013-526895(P2013-526895A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】US2011024809
(87)【国際公開番号】WO2011094767
(87)【国際公開日】20110804
【審査請求日】2014年2月14日
【審判番号】不服2016-3131(P2016-3131/J1)
【審判請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】512190413
【氏名又は名称】レトロバスキュラー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RETROVASCULAR INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】オガタ,ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】カトウ,オサム
【合議体】
【審判長】 内藤 真徳
【審判官】 長屋 陽二郎
【審判官】 橘 均憲
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0200839(US,A1)
【文献】 米国特許第5776079(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉塞した血管を再疎通させるための装置において、
頭部と尾部を備える第一ガイドワイヤ部分であって、当該第一ガイドワイヤ部分の断面積が当該第一ガイドワイヤ部分の頭部から尾部に向かって増加する、第一ガイドワイヤ部分と、
頭部と尾部を備える第二ガイドワイヤ部分であって、当該第二ガイドワイヤ部分の断面積が当該第二ガイドワイヤ部分の頭部から尾部に向かって増加する、第二ガイドワイヤ部分と
を備え、前記第一ガイドワイヤ部分の尾部が、前記第二ガイドワイヤ部分の尾部に接続され、当該装置がさらに、前記第一ガイドワイヤ部分の頭部から前記第二ガイドワイヤ部分の頭部まで少なくとも300cmの長さを有し、
前記第一ガイドワイヤ部分が閉塞血管に逆行方向に前進するよう構成され、前記第二ガイドワイヤ部分が閉塞血管に順行方向に位置決めされるように構成される、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置において、前記第一または第二ガイドワイヤ部分がコアワイヤを含むことを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置において、前記コアワイヤは、断面の縦横比が1未満であることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項2に記載の装置において、前記コアワイヤの上にストラクチュラルポリマーの層を含むことを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置において、前記第一または第二ガイドワイヤ部分の外表面が親水性コーティングでコーティングされることを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置において、前記第一および第二ガイドワイヤ部分に分割されることを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置において、前記第一ガイドワイヤ部分または前記第二ガイドワイヤ部分が延長可能であることを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置において、前記第一ガイドワイヤ部分の尾部を前記第二ガイドワイヤ部分の尾部に取り外し可能に接続するように構成された結合装置を更に備えることを特徴とする装置。
【請求項9】
閉塞した血管を再疎通させるための装置において、
頭部と尾部を備える第一ガイドワイヤ部分であって、当該第一ガイドワイヤ部分の断面積が当該第一ガイドワイヤ部分の頭部から尾部に向かって増加する、第一ガイドワイヤ部分と、
頭部と尾部を備える第二ガイドワイヤ部分であって、当該第二ガイドワイヤ部分の断面積が当該第二ガイドワイヤ部分の頭部から尾部に向かって増加する、第二ガイドワイヤ部分と
を備え、前記第一ガイドワイヤ部分の尾部が、前記第二ガイドワイヤ部分の尾部に接続され、当該装置がさらに、前記第一ガイドワイヤ部分の頭部から前記第二ガイドワイヤ部分の頭部まで少なくとも300cmの長さを有し、
前記第一ガイドワイヤ部分が閉塞血管に順行方向に前進するよう構成され、前記第二ガイドワイヤ部分が閉塞血管に逆行方向に位置決めされるように構成される、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この実施形態は一般に閉塞した身体血管の再疎通のための方法と装置に関する。特に新規の両サイドガイドワイヤを使用して、逆行方向に閉塞部を貫通し、順行方向の再疎通を可能にするものである。
【背景技術】
【0002】
慢性完全閉塞(CTO)は血管の完全な閉塞であって、迅速に治療しなければ重大な結果を招く。閉塞はアテローム様プラークまたは陳旧性血栓による。
【0003】
冠状動脈のCTOを治療する一般的な術式の1つは経皮経管冠動脈形成術(PTCA)である。一般に鼠径部に小さな切開を行う。ガイディングカテーテルをガイドワイヤ上から大腿動脈に導入し、閉塞部まで前進させる。通常、微妙な誘導によって、ガイドワイヤは狭窄部を横断することができる。次にバルーンを先端につけた血管形成カテーテルがガイドワイヤに沿って狭窄部まで前進する。バルーンは拡張され、アテロームを分離または破砕する。一般的に、その後ステントを設置する。PTCA術の一般的な手順としては同時に対側性血管に造影剤を注射し、これをバックアップしガイドワイヤを安定させたり(カテーテルを扱う追加的要員が必要になることがある)、さらにプラークを穿刺し、ガイドワイヤをドリリングまたは回転させ大きなプラークを貫通させるなどがある。大きなプラークの場合には硬い抵抗があるので、硬いワイヤを使用しなければならないことがある。しばしば、ワイヤは血管を穿刺してしまい、治療措置が必要となることがある。
【0004】
慢性冠動脈完全閉塞の経皮的手術は介入的心臓病学にとって重大な課題である。最近のデータでは慢性冠動脈閉塞の経皮的再疎通が成功すると生存率が高まり、左心室の機能が改善し、狭心症が減少し、運動負荷試験の成績も向上するという。
【0005】
しかし、CTOにおいて現在行われている血管形成術の手順が複雑なため、CTOではバイパス手術や内科的治療を行うことが多い。
【0006】
CTOにおける最も一般的な経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の失敗の原因はガイドワイヤを患部を通過させ遠位側の真腔に挿入することが困難なことである。これまで、従来のガイドワイヤが失敗した後にCTOを治療する最良の治療方法のコンセンサスはなかった。CTOのために様々な術式と特殊装置が開発されており、それには、側枝テクニック、パラレルワイヤテクニック、IVUSガイドテクニック、および逆行性アプローチを用いた内膜下トラッキングおよびリエントリ(STAR:subintimal tracking and reentry)が含まれる。しかし、これらの代替術式のいずれによってもCTOという難題に満足な結果が得られなかった。
【0007】
そこで、現行のテクニックのいくつかの短所を克服し、CTOの再疎通を単純化するために代替テクニックと装置が必要になる。再疎通が困難で時間のかかるCTOは新規CTO再疎通アプローチにより利益を受けることになる。
【発明の概要】
【0008】
開示するのは新規な両サイドガイドワイヤを使用して閉塞した身体血管を再疎通するための装置と方法の実施形態である。
【0009】
1つの実施形態では、閉塞した血管の再疎通のための装置は、頭部と尾部を有する第一ガイドワイヤと、頭部および尾部を有する第二ガイドワイヤとを備え、ここで第一ガイドワイヤの尾部は第二ガイドワイヤの尾部と結合されるように構成され、第一ガイドワイヤは閉塞血管を逆行方向に前進し、第二ガイドワイヤの頭部は閉塞血管に順行方向に位置決めされるように構成される。
【0010】
1つの特徴としては、ガイドワイヤの断面積は頭部から尾部に向かって増加する。
【0011】
1つの特徴としては、第一または第二ワイヤはコアワイヤを含む。コアワイヤはほぼ平坦な断面を有し得る。1つの態様としては、装置はコアワイヤの上にストラクチュラルポリマーの層を有する。1つの態様としては、第一または第二ガイドワイヤの外側表面は蛇行性通路での誘導を容易にするために、親水性のコーティングで覆われている。
【0012】
1つの態様としては、装置は第一および第二ガイドワイヤに分割できる。
【0013】
1つの態様としては、第一ガイドワイヤまたは第二ガイドワイヤは伸縮式である。
【0014】
1つの態様としては、第一ガイドワイヤおよび第二ガイドワイヤはそれぞれ固定された長さを有する。
【0015】
1つの実施形態では、閉塞した身体血管にガイドワイヤを位置決めする方法は第一ガイドワイヤを逆行方向に前進させることを含み、ここで第一ガイドワイヤは頭部と尾部を備え、第一ガイドワイヤの尾部は第二ガイドワイヤの尾部と結合されるように構成され、第一ガイドワイヤの頭部を閉塞部に貫通させ、第一ガイドワイヤを閉塞部を超えて前進させ、第一ガイドワイヤを閉塞部を横断させ、第一ガイドワイヤの尾部を第二ガイドワイヤの尾部と結合し、第一ガイドワイヤと第二ガイドワイヤの尾部が閉塞した身体血管から回収されるまで、結合された第一および第二ガイドワイヤを閉塞した身体血管に逆行方向に前進させ、それにより、第二ガイドワイヤの位置は第二ガイドワイヤが閉塞部を順行方向に横断する形となる。第二ガイドワイヤは頭部を有する。この方法には第一および/または第二ガイドワイヤを延長することが含まれる。さらにこの方法には第一ガイドワイヤと第二ガイドワイヤの尾部を閉塞した身体血管から回収した後に第一ガイドワイヤを第二ガイドワイヤから外すことも含まれる。
【0016】
別の実施形態では、ガイドワイヤを閉塞した身体血管に位置決めする方法はガイドワイヤを閉塞した身体血管に逆行方向に前進させることを含み、ここでガイドワイヤは第一頭部、中央部、第二頭部を有し、ガイドワイヤの断面積は中央部から第一および第二頭部に向かって減少し、閉塞部をガイドワイヤの第一頭部を使用して横断し、第一頭部と中央部の部分が閉塞された身体血管から回収されるまで、ガイドワイヤを閉塞した身体血管に逆行方向に前進させ、それにより、ガイドワイヤは閉塞部を順行方向に横断することになる。
【0017】
他の実施形態とバリエーションは以下に詳述する。
【0018】
本発明は他の利点と特徴を有しており、添付の図とともに以下の発明の詳細な説明と添付の請求項にわかりやすく示されている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明を実施するための形態には多くの細目が含まれるが、これらは本発明の範囲を限定するものでなく、本発明の様々な実施例や態様を示すものにすぎない。本発明の範囲には本明細書では詳細に触れなかった他の実施形態が含まれることを留意しなければならない。当業者には明瞭となるような様々な他の改良、変更、バリエーションは、本発明の本質および範囲から逸脱することなく、本明細書に記述される本発明の方法と装置の配置、操作方法および詳細によって得られる。
【0020】
閉塞身体血管BDLの一部の略図を図1に示す。身体血管BDLは血液が中空の管状空洞を流れる血管または動脈であり得る。身体血管BDLの中にある閉塞OCLは血流を妨害することがあり、致命的な結果を生じることもある。通常、治療手順は閉塞部に順行方向および/または逆行方向からアプローチし得る。閉塞OCLは遠位キャップDC、近位キャップPC、それらの間にある閉塞体BOを含む。順行性−逆行性アプローチの組み合わせでは、遠位キャップDCは通常、逆行方向からアプローチする。一方、近位キャップPCは通常、順行方向からアプローチする。閉塞OCLは粥状斑、陳旧性血栓、または同様な他の沈着物である。閉塞OCLを再疎通させる1つの方法にはガイドワイヤテクニックを使う方法がある。この場合、ガイドワイヤが閉塞OCLを貫通し、カテーテルが血管を再疎通させる。
【0021】
閉塞OCLのタイプと組成によっては、標準的なガイドワイヤテクニックでは閉塞OCLを貫通することは難しくなる。特に閉塞部の遠位キャップDCは線維石灰化部位を伴う稠密な線維状の組織で構成され得る。一般に、遠位キャップDCをうまく貫通するためには十分な剛性を有するガイドワイヤを使う必要がある場合もある。また一般に閉塞部の遠位キャップDCを貫通し、身体血管を再疎通させるためには十分な力が必要である場合もある。
【0022】
順行方向に閉塞部を横断する場合、遠位キャップDCを貫通し、通過し、内膜下空間SISに侵入することなく遠位側の真腔DTLに侵入することが困難であった。これは線維質の組成と共に、閉塞部の遠位キャップDCの形態が貫通を困難にしていることが多く、ガイドワイヤが遠位キャップDCの線維質内側表面で曲げられてしまうためである(図1参照)。閉塞部の遠位キャップDCを貫通することが困難なためにガイドワイヤは遠位キャップDCの内側表面からそれて、内膜下空間SISに侵入してしまう。内膜下空間SISを貫通すると身体血管壁を穿刺する恐れがあり、出血ばかりか望ましくない副作用を起こす可能性がある。さらに遠位キャップDCでなく内膜下空間SISを貫通することによってカテーテルが遠位側の真腔DTLをカテーテルが前進することが実質的に難しくなり、再疎通ができなくなる恐れがある。
【0023】
本発明の実施形態は一般に、閉塞した身体血管の再疎通のプロセスを簡単にする装置、システム、方法に関する。特に本実施形態の態様は、ガイドワイヤを再疎通のために閉塞した身体血管内に交換することなく位置決めする装置と方法を開示する。1つの実施形態では、第一ガイドワイヤが第二ガイドワイヤに結合され逆行方向で閉塞した身体血管に挿入される。第一ガイドワイヤは逆行方向から遠位キャップDCを貫通し、閉塞部を貫通して前進する。その後第一ガイドワイヤは第二ガイドワイヤの一部に沿って身体血管から回収される。この際、第二ガイドワイヤは閉塞内に順行方向にて位置決めされている。当該技術分野で周知のように、オーバーザワイヤテクニックを行い身体血管を再疎通させる。さらに、本明細書に記述した実施形態は同様に順行性アプローチにても利用できる。その際、第二ガイドワイヤに結合された第一ガイドワイヤは順行方向にて閉塞した身体血管に挿入され、術式の終了時には第二ガイドワイヤは閉塞内において逆行方向に位置決めされる。
【0024】
図2Aは両サイドガイドワイヤ装置の1つの実施形態である。装置100は第一ガイドワイヤ110および第二ガイドワイヤ130を備える。第一ガイドワイヤ110は頭部140と尾部160を備える。第二ガイドワイヤ130は頭部150と尾部170を備える。第一ガイドワイヤ110の尾部160は結合手段180により第二ガイドワイヤ130の尾部170と結合するように構成される。
【0025】
1つの実施形態では、結合手段180は第一ガイドワイヤ110と第二ガイドワイヤ130を確実にロックするようになっており、ガイドワイヤ設置術式の間に分離を防止するようになっている。さらに、任意選択により結合手段180は2つのガイドワイヤを迅速かつ容易に取り外しできるように構成してもよい。1つの実施形態では、結合手段180は第一または第二ガイドワイヤの尾部に配置されたオス部分(図示せず)と他のガイドワイヤの尾部に配置されたメス部分(図示せず)を備え得る。ここでオス部分はメス部分に挿入されるように構成される。1つの実施形態では、オス部分にスプリングを装着し、より確実にメス部分の内側に装着されるようになっている。または、結合は例えば磁石やネジの使用によるガイドワイヤの結合、接続、延長で行ってもよい。
【0026】
さらに、図2Aから分かるように、第一ガイドワイヤ110の断面積は頭部140から尾部160に向かって徐々に増加するように構成される。同様に第二ガイドワイヤ130の断面積は頭部150から尾部170に向かって徐々に増加するように構成される。こうして第一及び第二ガイドワイヤは実質的にテーパード構成を取ることになる。テーパード構成は細い頭部が効果的に血管マトリクスを横断し、閉塞部を貫通するように構成されるため有利である。一方、太い尾部は医師が術中にガイドワイヤを操作しやすいように構成される。または任意選択により第一ガイドワイヤ110および/またはガイドワイヤ130の断面積は実質的にガイドワイヤの長さ全体を通じて変化しないように構成することもできる。
【0027】
第一および第二ガイドワイヤの柔軟性がそれぞれの全長の中で変化することにも注意すべきである。1つの実施形態では、ガイドワイヤの頭部はかなり柔軟性に富み、尾部に向かうに従って柔軟性は低下する。
【0028】
本発明の別の実施形態は図2Bに示す。図2Bはシングルガイドワイヤの実施形態であり、ここでガイドワイヤ装置200は第一頭部210、中央部220、第二頭部230を備える。ガイドワイヤ200の断面積は頭部210と230で最小となり、中央部220に向かうに従って増加する。こうして図2Aに示した実施形態と類似したテーパード構成が得られる。
【0029】
図3は、本発明の1つの実施形態と図4A〜4Gに準拠したガイドワイヤデバイスを閉塞身体血管に位置決めするためのフローチャートである。ステップ310では、第一ガイドワイヤ110の頭部140が逆行方向にて閉塞身体血管BDLを貫通する(図4A)。閉塞部の位置によっては、逆行性挿入でガイドワイヤを冠血管系の細い中隔チャネルを通すよう案内することを含んでもよい。
【0030】
ステップ320では、第一ガイドワイヤ110の頭部140が閉塞部の遠位キャップDCを貫通する(図4B)。ステップ330では、第一ガイドワイヤ110が閉塞体BOを前進している(図4C)。ステップ340では、第一ガイドワイヤ110の頭部140が閉塞部の近位キャップPCを貫通し、頭部140が閉塞部OCLから突出するまで、第一ガイドワイヤ110は閉塞体BOをさらに前進する(図4D)。この時点で、第一ガイドワイヤ110の頭部140は実質的に閉塞部OCLを逆行方向に完全に横断したことになり得る。
【0031】
ステップ350では、第二ガイドワイヤ130に結合した第一ガイドワイヤ110は、閉塞身体血管BDLを貫通して前進する(図4E)。このステップで、第二ガイドワイヤ130がまだ第一ガイドワイヤ110と結合していない時には、医師は2つのガイドワイヤ(前述)をステップ350を実施する前に結合する。続いて、第一ガイドワイヤ110および第二ガイドワイヤの一部が患者の体内から回収されるまで、2つの結合されたガイドワイヤを逆行的に前進させる(図4F〜4G)。
【0032】
この時点で、第一ガイドワイヤ110全体と第二ガイドワイヤ130の尾部170が患者の体外に出る。一方、第二ガイドワイヤ130の頭部150は閉塞身体血管BDLの遠位側の真腔DTL内にとどまる。第二ガイドワイヤ130の一部は閉塞部OCLを順行方向に横断している。ステップ360では第一ガイドワイヤの尾部160と第二ガイドワイヤの尾部170は結合手段を解除することによって切り離すことができる。ステップ370では第二ガイドワイヤ130の尾部170が患者の体外に出て、第二ガイドワイヤ130の一部は閉塞部を横断している。当該技術分野で周知のようにオーバーザワイヤテクニックを順行方向で実施し、閉塞身体血管BDLを再疎通することができる。特に同時係属米国特許出願第12/150、111号明細書に開示されたCART(Controlled antegrade and retrograde tracking)テクニックとPCT国際出願PCT/US第2008/077403号明細書に開示された順行性および逆行性アプローチを無線周波数エネルギーと結合させた再疎通技術は発明者たちが同じで、参照によりこの出願に引用することができ、本発明の実施形態と組み合わせて用いることができる。上記ステップは図2Aにより構成されるガイドワイヤ装置により説明してきたが、図2Bにより構成されるガイドワイヤ装置あるいはそうしたガイドワイヤ装置の他の変型によって同じプロセスを実施できることは明らかである。
【0033】
本発明の実施形態のガイドワイヤはトルクを改善し、身体血管を通じた誘導を容易にするために様々なタイプと構成のコアワイヤを含むことができることに留意すべきである。1つの実施形態では、そうしたコアワイヤは縦横比が約1である断面を有する。別の実施形態では、コアワイヤは断面の縦横比が1未満である。1つの実施例ではコアワイヤは実質的に平坦であるように構成される。コアワイヤの素材はステンレススチール、ニチノール、エルジロイ、プラチナ、イリジウム、タンタル、チタン、コバルト、クロミウム、タングステン、それらの組み合わせ、または他の生物学的適合性のある材質が考えられる。
【0034】
任意選択により、本実施形態のガイドワイヤはコアワイヤの上に少なくとも一層のストラクチュラルポリマーを含んでもよいことを留意されたい。任意選択により、第一および/または第二ガイドワイヤは複雑な通路を誘導するために親水性のコーティングで被覆される。
【0035】
さらにガイドワイヤは固定した長さを有するように構成してもよい。図2Aのようなダブルガイドワイヤの実施形態では、第一ガイドワイヤと第二ガイドワイヤはそれぞれ約180cmの長さに構成される。任意選択により、第一および第二ガイドワイヤは異なる長さであってもよい。図2Bのようなシングルガイドワイヤの実施形態では、ガイドワイヤ装置は一方の頭部から他方の頭部まで約300cmで構成される。また、ガイドワイヤは延長できるように構成してもよい。
【0036】
上記は本発明の好適な実施形態の完全な記述であるが、様々な変型、修正、均等物を使用してもよい。従って、上記の記述は添付の請求項で定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、閉塞された身体血管を示す。
図2A図2Aは、第一ガイドワイヤが第二ガイドワイヤに尾部と尾部で結合された両サイドガイドワイヤ装置の実施形態を示す。
図2B図2Bは、2つの頭部に向かってテーパーがかかった中央部を含む両サイドガイドワイヤ装置の別の実施形態を示す。
図3図3は、両サイドガイドワイヤ装置を使用して閉塞した身体血管を再疎通する方法を示したフローチャートである。
図4A図4Aは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図4B図4Bは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図4C図4Cは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図4D図4Dは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図4E図4Eは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図4F図4Fは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図4G図4Gは、第一および第二ガイドワイヤの尾部と尾部を結合した両サイドガイドワイヤを使用した実施形態による図3の再疎通の段階を示す。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G