特許第6144071号(P6144071)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144071
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】縦型旋盤
(51)【国際特許分類】
   B23B 9/06 20060101AFI20170529BHJP
   B23B 9/12 20060101ALI20170529BHJP
   B23B 3/32 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   B23B9/06
   B23B9/12
   B23B3/32
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-36849(P2013-36849)
(22)【出願日】2013年2月27日
(65)【公開番号】特開2014-161976(P2014-161976A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2016年2月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115646
【弁理士】
【氏名又は名称】東口 倫昭
(74)【代理人】
【識別番号】100115657
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 素子
(72)【発明者】
【氏名】鈴山 惠史
(72)【発明者】
【氏名】熊崎 信也
(72)【発明者】
【氏名】古川 和也
(72)【発明者】
【氏名】長井 修
【審査官】 永石 哲也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭57−181501(JP,U)
【文献】 特開昭56−056304(JP,A)
【文献】 特開2004−160643(JP,A)
【文献】 特開2002−126905(JP,A)
【文献】 特開2002−028801(JP,A)
【文献】 特開平06−218602(JP,A)
【文献】 英国特許出願公告第00461915(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 9/06
B23B 9/12
B23B 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラムと、
該コラムに配置され、主軸台と、該主軸台に上下方向に対向して配置される芯押台と、を有し、該主軸台と該芯押台との間にワークが取り付けられる、複数のワーク取付部と、
該ワーク取付部に対応して所定の角度を割出可能なタレットを有する、複数の工具台と、
複数の該工具台に共用の工具台駆動部と、
を備え、
上下方向に対して交差する方向のうち、複数の該工具台が並ぶ方向を左右方向として、
該工具台駆動部は、複数の該工具台を該上下方向かつ互いに同じ方向に同時に駆動するZ軸駆動部と、複数の該工具台を該左右方向かつ互いに異なる方向に駆動するX軸駆動部と、を有し、
該X軸駆動部は、ボールねじ部を有し、
該ボールねじ部は、該左右方向に延在するシャフトと、一対のナットと、を有し、
該シャフトは、螺旋方向かつ互いに反対方向に延在する一対のねじ部を有し、
一対の該ナットのうち、一方の該ナットは一方の該ねじ部に、他方の該ナットは他方の該ねじ部に、各々螺合し、
一対の該工具台のうち、一方の該工具台は一方の該ナットに、他方の該工具台は他方の該ナットに、各々連動する縦型旋盤。
【請求項2】
前記タレットの角度は、該タレットに取り付けられた工具で前記ワークを加工可能な加工位置と、該工具で該ワークを加工不可能な休止位置と、に切替可能である請求項1に記載の縦型旋盤。
【請求項3】
前記加工位置と前記休止位置とは、前記タレットの周方向に交互に配置されている請求項2に記載の縦型旋盤。
【請求項4】
複数の前記ワーク取付部、複数の前記工具台に共用の加工プログラムと、
該加工プログラムを用いて、複数の前記ワークを同時に加工する制御装置と、
を備える請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の縦型旋盤。
【請求項5】
複数の前記主軸台に共用の主軸台駆動部を備える請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の縦型旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の主軸台を備える縦型旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、二つの主軸台を備える横型旋盤が開示されている。同文献記載の横型旋盤によると、同時に二つのワークを加工することができる。ところが、ワークは、チャックと芯押台との間に、水平方向に保持されている。このため、ワークを加工する際、工具の刃先と、ワークの加工対象部分と、の間に、ワークの切り粉が進入しやすい。
【0003】
この点、特許文献2には、二つの主軸台を備える縦型旋盤が開示されている。同文献記載の縦型旋盤によると、ワークの切り粉は、自重により落下する。このため、ワークを加工する際、工具の刃先と、ワークの加工対象部分と、の間に、ワークの切り粉が進入しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭53−115489号公報
【特許文献2】特開2002−126905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の段落[0026]、段落[0027]に記載されているように、同文献記載の縦型旋盤によると、加工時に、ワークが、主軸台のチャックにより、吊り下げられている。すなわち、同文献記載の縦型旋盤には、ワークを押圧する芯押台が配置されていない。このため、短く軽いワーク(例えばリングワーク)の加工は容易である一方、長く重いワーク(例えばシャフトワーク)の加工は困難である。そこで、本発明は、シャフトワークであっても、高精度、高能率に加工が可能であり、かつ切り粉はけに優れ、省スペースな縦型旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)上記課題を解決するため、本発明の縦型旋盤は、コラムと、該コラムに配置され、主軸台と、該主軸台に上下方向に対向して配置される芯押台と、を有し、該主軸台と該芯押台との間にワークが取り付けられる、複数のワーク取付部と、該ワーク取付部に対応して所定の角度を割出可能なタレットを有する、複数の工具台と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の縦型旋盤によると、主軸台と芯押台との間にワークを取り付けることができる。このため、シャフトワーク(勿論、本発明の縦型旋盤で加工可能なワークは、シャフトワークに限定されない。)であっても、簡単に、ワーク取付部にワークを取り付けることができる。したがって、シャフトワークであっても、容易に加工を行うことができる。
【0008】
チャックを有する主軸台が芯押台の下側に配置されている場合(勿論、主軸台が芯押台の上側に配置されている場合も本構成に含まれる。)、固定側の主軸台に具備されたチャックにワークを載せるような形で、ワーク取付部にワークを容易に取り付けることができる。さらには、縦型旋盤の設備の単位面積あたりに換算すると、高能率に、かつ容易に、シャフトワークを加工することができる。
【0009】
また、本発明の縦型旋盤によると、ワークの切り粉は、自重により落下する。このため、ワークを加工する際、工具の刃先と、ワークの加工対象部分と、の間に、ワークの切り粉が進入しにくい。
【0010】
また、本発明の縦型旋盤によると、複数のワーク取付部、および各ワーク取付部に対応した工具台が、同一の頑強なコラムに配置されている。このため、縦型旋盤の設備の単位面積あたり高能率に、かつ高精度に、シャフトワークを加工することができる。
【0011】
(2)好ましくは、上記(1)の構成において、複数の前記ワーク取付部、複数の前記工具台に共用の加工プログラムと、該加工プログラムを用いて、複数の前記ワークを同時に加工する制御装置と、を備える構成とする方がよい。本構成によると、複数のワークの加工を、共用の加工プログラムで実行することができる。
【0012】
(3)好ましくは、上記(1)または(2)の構成において、複数の前記主軸台に共用の主軸台駆動部を備える構成とする方がよい。特許文献2に記載の縦型旋盤によると、二つの主軸を各々回転させるために、二つのモータが必要である。このため、部品点数が多く、構造が複雑である。この点、本構成によると、複数の主軸台の主軸を、共用の主軸台駆動部により、駆動することができる。このため、複数の主軸を別々の主軸台駆動部により駆動する場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、構造が簡単になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、シャフトワークであっても、高精度、高能率に加工が可能であり、かつ切り粉はけに優れ、省スペースな縦型旋盤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の縦型旋盤の一実施形態となる縦型旋盤の斜視図である。
図2】同縦型旋盤のブロック図である。
図3】同縦型旋盤の分解斜視図である。
図4】同縦型旋盤の透過上面図である。
図5】同縦型旋盤の前面図である。
図6】左右一対のワークを同時に加工する場合の同縦型旋盤の透過上面図である。
図7】単一のワークを加工する場合の同縦型旋盤の透過上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の縦型旋盤の実施の形態について説明する。
【0016】
<縦型旋盤の構成>
まず、本実施形態の縦型旋盤の構成について説明する。図1に、本実施形態の縦型旋盤の斜視図を示す。図2に、同縦型旋盤のブロック図を示す。図3に、同縦型旋盤の分解斜視図を示す。図4に、同縦型旋盤の透過上面図を示す。図5に、同縦型旋盤の前面図を示す。
【0017】
図1図5に示すように、本実施形態の縦型旋盤1は、左右一対のワーク取付部2L、2Rと、左右一対の工具台3L、3Rと、主軸台駆動部4と、工具台駆動部5と、芯押台駆動部6と、制御装置7と、コラム8と、表示装置9と、を備えている。
【0018】
[コラム8]
コラム8は、ベース(図略)の上側に配置されている。コラム8は、上下方向に延在している。後述するように、コラム8の前面には、工具台駆動部5のZ軸下スライド502と、芯押台駆動部6の左右一対のZ軸下スライド611L、611Rと、主軸台20L、20Rと、が配置されている。
【0019】
[主軸台駆動部4]
主軸台駆動部4は、主軸モータ40と、動力伝達機構41と、を備えている。主軸モータ40は、本発明の「駆動装置」の概念に含まれる。主軸モータ40は、コラム8の下側に配置されている。動力伝達機構41は、駆動プーリ410と、左右一対の従動プーリ411L、411Rと、ベルト412と、を備えている。
【0020】
図5に示すように、駆動プーリ410は、主軸モータ40の出力軸400に連結されている。後述するように、従動プーリ411L、411Rは、主軸200L、200Rに連結されている。ベルト412は、無端環状を呈している。ベルト412は、駆動プーリ410、従動プーリ411L、411Rに張設されている。
【0021】
主軸モータ40の駆動力は、ベルト412を介して、駆動プーリ410から従動プーリ411L、411Rに伝達される。駆動プーリ410(つまり出力軸400)と、従動プーリ411L、411R(つまり主軸200L、200R)と、は同じ方向に回転する。
【0022】
[工具台駆動部5]
工具台駆動部5は、Z軸駆動部50と、X軸駆動部51と、を備えている。Z軸駆動部50は、Z軸モータ500と、Z軸動力伝達機構501と、を備えている。Z軸動力伝達機構501は、Z軸下スライド502と、Z軸スライド503と、ボールねじ部513と、を備えている。Z軸下スライド502は、コラム8の前面に配置されている。Z軸下スライド502は、上下方向に延在している。Z軸スライド503は、Z軸下スライド502に、上下方向に摺動可能に取り付けられている。ボールねじ部は、Z軸モータ500と、Z軸スライド503と、を連結している。Z軸モータ500の駆動力により、Z軸スライド503は、上下方向に移動可能である。
【0023】
X軸駆動部51は、X軸モータ510と、X軸動力伝達機構511と、を備えている。図5に透過して示すように、X軸動力伝達機構511は、左右一対のX軸スライド512L、512Rと、ボールねじ部513と、を備えている。左右一対のX軸スライド512L、512Rは、Z軸スライド503に、左右方向に摺動可能に取り付けられている。ボールねじ部513は、X軸モータ510と、左右一対のX軸スライド512L、512Rと、を連結している。X軸モータ510の駆動力により、左右一対のX軸スライド512L、512Rは、左右方向かつ反対方向に移動可能である。すなわち、ボールねじ部513は、シャフト514と、左右一対のナット516L、516Rと、を備えている。シャフト514は、左右方向に延在している。シャフト514の左側半分には、ねじ部515Lが配置されている。シャフト514の右側半分には、ねじ部515Rが配置されている。ねじ部515Lの螺旋方向と、ねじ部515Rの螺旋方向と、は互いに反対方向である。ナット516Lは、ねじ部515Lに螺合されている。ナット516Rは、ねじ部515Rに螺合されている。X軸スライド512Lは、ナット516Lに固定されている。X軸スライド512Rは、ナット516Rに固定されている。X軸モータ510を駆動すると、左右一対のX軸スライド512L、512Rは、X軸スライド512L、512R間の間隔を拡げる方向、または狭める方向に、同時に移動する。
【0024】
[芯押台駆動部6]
図2に示すように、芯押台駆動部6は、油圧ポンプ60と、動力伝達機構61と、を備えている。動力伝達機構61は、圧力制御弁610と、一対の油圧シリンダ(図略)と、左右一対のZ軸下スライド611L、611Rと、左右一対のZ軸スライド612L、612Rと、を備えている。
【0025】
左右一対のZ軸下スライド611L、611Rは、各々、コラム8の前面に配置されている。左右一対のZ軸下スライド611L、611Rは、各々、上下方向に延在している。左右一対のZ軸下スライド611L、611Rは、Z軸下スライド502の左右両側に配置されている。
【0026】
Z軸スライド612Lは、Z軸下スライド611Lに、上下方向に摺動可能に取り付けられている。Z軸スライド612Rは、Z軸下スライド611Rに、上下方向に摺動可能に取り付けられている。油圧ポンプ60の油圧は、圧力制御弁610、一対の油圧シリンダを介して、Z軸スライド612L、612Rに伝達される。油圧により、Z軸スライド612L、612Rは、各々、上下方向に移動可能である。
【0027】
[ワーク取付部2L、2R]
左右一対のワーク取付部2L、2Rは、Z軸下スライド502の左右両側に配置されている。ワーク取付部2Lは、主軸台20Lと、芯押台21Lと、を備えている。主軸台20Lは、コラム8の前面に配置されている。主軸台20Lは、主軸200Lと、チャック201Lと、を備えている。主軸200Lは、上下方向に延在している。主軸200Lは、従動プーリ411Lに連結されている。このため、主軸200Lは、主軸モータ40の駆動力により、自身の軸周りに回転可能である。チャック201Lは、主軸200Lに連結されている。図1に一点鎖線で示すように、チャック201Lは、上下方向に延在するシャフト状のワーク(シャフトワーク)WLの下端を、把持可能である。
【0028】
芯押台21Lは、Z軸スライド612Lに固定されている。このため、芯押台21Lは、油圧ポンプ60の油圧により、上下方向に移動可能である。芯押台21Lは、主軸台20Lの上側に配置されている。芯押台21Lは、ワークWLの上端を、押圧可能である。
【0029】
ワーク取付部2Rの構成は、ワーク取付部2Lの構成と同様である。ワーク取付部2Rは、主軸台20Rと、芯押台21Rと、を備えている。主軸台20Rは、主軸200Rと、チャック201Rと、を備えている。ワーク取付部2Rには、ワークWRが取り付けられている。
【0030】
[工具台3L、3R]
工具台3Lは、X軸スライド512Lに固定されている。工具台3Rは、X軸スライド512Rに固定されている。このため、工具台3L、3Rは、X軸モータ510の駆動力により、左右方向に移動可能である。ただし、工具台3L、3Rの移動方向は、互いに反対方向である。
【0031】
工具台3Lは、工具台本体30Lと、タレット31Lと、を備えている。工具台本体30Lは、X軸スライド512Lに固定されている。工具台本体30Lの内部には、角度割出モータ300Lが収容されている。タレット31Lは、工具台本体30Lの下側に配置されている。タレット31Lの外周縁には、最大六つの工具TLを、取り付けることができる。すなわち、タレット31Lは、いわゆる六頭タレットである。角度割出モータ300Lは、タレット31Lを、水平面内において、所定の角度ずつ回転可能である。
【0032】
工具台3Rの構成は、工具台3Lの構成と同様である。工具台3Rは、工具台本体30Rと、タレット31Rと、を備えている。タレット31Rには、工具TRを取り付けることができる。角度割出モータ300Rは、タレット31Rを、所定の角度ずつ回転可能である。
【0033】
図4に示すように、左側のタレット31Lの場合、工具TL(ワークWLに最も近い工具TL)の刃先と、ワークWLの外周面(加工対象部分)と、が左右方向に並んでいる。タレット31Lを左側に動かすと、工具TLの刃先がワークWLの外周面に当接する。この位置が、タレット31Lの加工位置P1である。一方、右側のタレット31Rの場合、工具TR(ワークWLに最も近い工具TR)の刃先と、ワークWRの外周面(加工対象部分)と、が左右方向に並んでいない。タレット31Rを右側に動かしても、工具TRの刃先がワークWRの外周面に当接しない。この位置(加工位置P1から角度θ1(例えば30°)だけずれた位置)が、タレット31Rの休止位置P2である。このように、タレット31L、31Rは、各々、加工位置P1と休止位置P2とに切り替えることができる。
【0034】
[制御装置7、表示装置9]
図2に示すように、制御装置7は、記憶部70と、演算部71と、入出力インターフェイス72と、複数の駆動回路と、を備えている。記憶部70には、加工プログラムが格納されている。加工プログラムは、一対の工具台3L、3Rに共用である。演算部71は、加工プログラムを実行可能である。入出力インターフェイス72は、複数の駆動回路を介して、主軸モータ40、Z軸モータ500、X軸モータ510、一対の角度割出モータ300L、300R、油圧ポンプ60、圧力制御弁610に、電気的に接続されている。また、入出力インターフェイス72は、表示装置9に電気的に接続されている。表示装置9は、いわゆるタッチパネルである。表示装置9には、縦型旋盤1の状態が表示される。また、作業者は、表示装置9を介して、縦型旋盤1に指示を入力する。
【0035】
<縦型旋盤の動き>
次に、本実施形態の縦型旋盤の動きについて説明する。
【0036】
[左右一対のワークを同時に加工する場合]
図6に、左右一対のワークを同時に加工する場合の本実施形態の縦型旋盤の透過上面図を示す。まず、作業者は、図2に示す表示装置9のタッチボタン(図略)を介して、制御装置7に、左右一対のタレット31L、31Rの位置(加工位置P1、休止位置P2)に関する指示を入力する。演算部71は、作業者からの指示に従って、角度割出モータ300L、300Rを駆動する。すなわち、左右一対のタレット31L、31Rを、共に加工位置P1に設定する。つまり、工具TLとワークWL、および工具TRとワークWRを、左右方向に対向させる。
【0037】
次に、図2に示す制御装置7の演算部71は、記憶部70に格納されている加工プログラムを実行する。まず、演算部71は、主軸モータ40を駆動する。なお、ワークWLは、既にチャック201Lと芯押台21Lとの間に取り付けられている。並びに、ワークWRは、既にチャック201Rと芯押台21Rとの間に取り付けられている。主軸モータ40の駆動力は、動力伝達機構41を介して、左右一対の主軸200L、200Rに、伝達される。当該駆動力により、左右一対の主軸200L、200Rは、同じ方向に回転する。すなわち、左右一対のワークWL、WRは、同じ方向に回転する。
【0038】
続いて、図2に示す制御装置7の演算部71は、記憶部70の加工プログラムに従って、X軸モータ510を駆動する。X軸モータ510の駆動力は、X軸動力伝達機構511を介して、左右一対のタレット31L、31Rに、伝達される。当該駆動力により、タレット31Lは左側に、タレット31Rは右側に、各々移動する。図6に示すように、工具TLの刃先は、回転しているワークWLの外周面に当接する。並びに、工具TRの刃先は、回転しているワークWRの外周面に当接する。
【0039】
それから、図2に示す制御装置7の演算部71は、記憶部70の加工プログラムに従って、Z軸モータ500、X軸モータ510を駆動する。すなわち、左右一対の工具TL、TRを左右対称の軌道で動かすことにより、左右一対のワークWL、WRを同時に加工する。
【0040】
[単一のワークを加工する場合]
図7に、単一のワークを加工する場合の本実施形態の縦型旋盤の透過上面図を示す。なお、図7に示すのは、左側のワークWLの加工対象部分を加工する場合である。まず、作業者は、図2に示す表示装置9のタッチボタンを介して、制御装置7に、左右一対のタレット31L、31Rの位置(加工位置P1、休止位置P2)に関する指示を入力する。演算部71は、作業者からの指示に従って、角度割出モータ300L、300Rを駆動する。すなわち、左側のタレット31Lを、加工位置P1に設定する。また、右側のタレット31Rを、休止位置P2に設定する。続いて、作業者は、図2に示す表示装置9のタッチボタンを介して、制御装置7に、これからワークWLを加工する工具TLの刃先摩耗に関する補正値を、入力する。
【0041】
次に、図2に示す制御装置7の演算部71は、記憶部70に格納されている加工プログラムを実行する。これ以降の縦型旋盤1の動きは、上述した、左右一対のワークWL、WRを同時に加工する場合と、同様である。
【0042】
なお、右側のワークWRの加工対象部分を加工する場合は、左側のタレット31Lを、休止位置P2に設定する。また、右側のタレット31Rを、加工位置P1に設定する。そして、制御装置7に、工具TRの刃先摩耗に関する補正値を、入力する。
【0043】
なお、一対のワークWL、WRの加工基準(同時加工、個別加工の判断基準)としては、一例として、工具TL、TRの刃先の摩耗量が挙げられる。すなわち、工具TL、TRが摩耗している場合、工具TL、TRの刃先の軌道(ワークWL、WRの加工対象部分に対する、工具TL、TRの加工ポイントの軌道)が、理想的な軌道からずれることになる。工具TL、TRの刃先の摩耗量のうち、より大きい方の摩耗量が、ワークWL、WRの加工対象部分の寸法公差以内である場合、左右一対のワークWL、WRを同時に加工することができる。
【0044】
一方、工具TL、TRの刃先の摩耗量のうち、いずれか一方の摩耗量が、ワークWL、WRの加工対象部分の寸法公差を超過している場合、摩耗量が寸法公差が超過していない方のワークWL、WRのみを、個別に加工することができる。
【0045】
また、工具TL、TRが新品である場合(摩耗していない場合)であっても、タレット31L、31Rに対する工具TL、TRの取付誤差が、ワークWL、WRの加工対象部分の寸法公差を超過している場合、ワークWL、WRを、個別に加工することができる。
【0046】
<作用効果>
次に、本実施形態の縦型旋盤の作用効果について説明する。本実施形態の縦型旋盤1によると、図1に示すように、主軸台20L、20Rと芯押台21L、21Rとの間にワークWL、WRを取り付けることができる。このため、シャフト状のワークWL、WRであっても、簡単に、ワーク取付部2L、2RにワークWL、WRを取り付けることができる。したがって、シャフト状のワークWL、WRであっても、容易に加工を行うことができる。
【0047】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、ワークWL、WRの切り粉は、自重により落下する。このため、ワークWL、WRを加工する際、工具TL、TRの刃先と、ワークWL、WRの加工対象部分と、の間に、ワークWL、WRの切り粉が進入しにくい。また、本実施形態の縦型旋盤1によると、複数のワーク取付部2L、2R、および各ワーク取付部2L、2Rに対応した工具台3L、3Rが、同一の頑強なコラム8に配置されている。このため、縦型旋盤1の設備の単位面積あたり高能率に、かつ高精度に、ワークWL、WRを加工することができる。
【0048】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、図2に示す記憶部70に、一対のワークWL、WRに共用の加工プログラムが格納されている。すなわち、加工プログラムにより、一対の工具TL、TRは、左右対象の軌道を描いて、ワークWL、WRを同時に加工することができる。
【0049】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、図2に示すように、一対の主軸200L、200Rを、共用の主軸台駆動部4により、駆動することができる。このため、一対の主軸200L、200Rを別々の主軸台駆動部4により駆動する場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、構造が簡単になる。
【0050】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、図2に示すように、一対の工具台本体30L、30Rを共用の工具台駆動部5により、駆動することができる。このため、一対の工具台本体30L、30Rを別々の工具台駆動部5により駆動する場合と比較して、部品点数が少なくなる。また、構造が簡単になる。
【0051】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、図1に示すように、芯押台21L、21Rよりも重い主軸台20L、20Rが、芯押台21L、21Rの下側に配置されている。このため、静剛性、動剛性が高くなる。また、チャック201L、201Rに対するワークWL、WRの着脱が容易である。すなわち、主軸台20L、20Rに具備されたチャック201L、201RにワークWL、WRを載せるような形で、ワーク取付部2L、2RにワークWL、WRを容易に取り付けることができる。さらには、縦型旋盤1の設備の単位面積あたりに換算すると、高能率に、かつ容易に、ワークWL、WRを加工することができる。
【0052】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、図4に示すように、タレット31L、31Rの角度を、各々独立して、加工位置P1、休止位置P2に切り替えることができる。このため、図6図7に示すように、共用の加工プログラムにより一対の工具TL、TRが左右対称の軌道で動く場合であっても、ワークWL、WR加工前に、加工したいワークWL、WRに関するタレット31L、31Rを加工位置P1に、加工したくないワークWL、WRに関するタレット31L、31Rを休止位置P2に切り替えておけば、加工したいワークWL、WRだけを選択的に加工することができる。
【0053】
また、本実施形態の縦型旋盤1によると、図2に示すように、Z軸モータ500を用いて、一対の工具台3L、3Rを、上下方向(Z軸方向)かつ同方向に、動かすことができる。並びに、X軸モータ510を用いて、一対の工具台3L、3Rを、左右方向(X軸方向)かつ反対方向に、動かすことができる。
【0054】
<その他>
以上、本発明の縦型旋盤の実施の形態について説明した。しかしながら、実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することも可能である。
【0055】
上記実施形態においては、図2に示す制御装置7の記憶部70に加工プログラムを格納したが、縦型旋盤1の機外の制御装置の記憶部70に加工プログラムを格納してもよい。すなわち、加工プログラムを、外部接続された機器から実行してもよい。また、ワーク取付部2L、2R、工具台3L、3Rの配置数は特に限定しない。ワーク取付部2L、2Rの配置数と工具台3L、3Rの配置数とは、同数である方がよい。
【0056】
タレット31L、31Rの工具ホルダ数、工具TL、TRの配置数は特に限定しない。タレット31L、31Rの加工位置P1、休止位置P2の設定方法は特に限定しない。例えば、図4に示すように、六頭のタレット31L、31Rに、30°ずつ加工位置P1と休止位置P2とを交互に配置してもよい。また、六頭のタレット31L、31Rに、60°ずつ加工位置P1と休止位置P2とを交互に配置してもよい。この場合、単一のタレット31L、31Rの六つの工具ホルダに対して、工具TL、TRは、一つおきに配置されることになる。ワークWL、WRの種類は特に限定しない。ワーク取付部2L、2Rに着脱可能であればよい。
【0057】
上記実施形態においては、ベース上にコラム8を配置した縦型旋盤1として、本発明の縦型旋盤を具現化した。しかしながら、本発明の縦型旋盤は、ベースとコラムとを一体化したベッド形式の縦型旋盤としても、具現化することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:縦型旋盤。
2L:ワーク取付部、20L:主軸台、200L:主軸、201L:チャック、21L:芯押台、2R:ワーク取付部、20R:主軸台、200R:主軸、201R:チャック、21R:芯押台。
3L:工具台、30L:工具台本体、300L:角度割出モータ、31L:タレット、3R:工具台、30R:工具台本体、300R:角度割出モータ、31R:タレット。
4:主軸台駆動部、40:主軸モータ(駆動装置)、400:出力軸、41:動力伝達機構、410:駆動プーリ、411L:従動プーリ、411R:従動プーリ、412:ベルト。
5:工具台駆動部、50:Z軸駆動部、500:Z軸モータ、501:Z軸動力伝達機構、502:Z軸下スライド、503:Z軸スライド、51:X軸駆動部、510:X軸モータ、511:X軸動力伝達機構、512L:X軸スライド、512R:X軸スライド、513:ボールねじ部、514:シャフト、515L:ねじ部、515R:ねじ部、516L:ナット、516R:ナット。
6:芯押台駆動部、60:油圧ポンプ、61:動力伝達機構、610:圧力制御弁、611L:Z軸下スライド、611R:Z軸下スライド、612L:Z軸スライド、612R:Z軸スライド。
7:制御装置、70:記憶部、71:演算部、72:入出力インターフェイス。
8:コラム。
9:表示装置。
θ1:角度、P1:加工位置、P2:休止位置、TL:工具、TR:工具、WL:ワーク、WR:ワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7