特許第6144088号(P6144088)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144088
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】タンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/02 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   B65D90/02 N
   B65D90/02 G
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-73596(P2013-73596)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196140(P2014-196140A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】391017296
【氏名又は名称】ダイライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】特許業務法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小原 省一
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭51−020732(JP,B1)
【文献】 特開昭59−114019(JP,A)
【文献】 米国特許第03025992(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 88/00−90/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の胴部の外周面が、その外径が軸方向の全長に亙り一定な円筒面であり、且つ、この胴部の内周面が、上端から下端へ向かうに従って、その内径が直線的或いは曲線的に小さくなった内径変化面であり、前記胴部の径方向に関する厚さ寸法が、下方へ向かうに従って連続的に大きくなっているタンクの製造方法であって、
中空状の金型の内側に粉末状の熱可塑性樹脂を入れた状態で、この金型を回転させると共に加熱して、溶融した熱可塑性樹脂を前記金型の内面に溶着させる回転成形により成形する際に、前記金型の内周面の上端寄り部分では、前記熱可塑性樹脂を溶融させる量を少なくし、この金型の内周面の上端から下方に進むに従って、前記熱可塑性樹脂を溶融させる量を徐々に増やしていく事を特徴とするタンクの製造方法。
【請求項2】
中空状の胴部の内周面のうちの、上端から軸方向中間部に掛けての部分が、下方に向かうに従ってその内径寸法が小さくなった内径変化面であり、前記胴部のうちの、この内径変化面部分に整合する部分の厚さ寸法が、下方に向かうに従って大きくなっており、
前記胴部の内周面のうちの、前記内径変化面の下方部分である残部の内径寸法が、この内径変化面部分の下端部の内径寸法よりも大きく、
前記胴部のうちの、この残部と整合する部分の厚さ寸法がこの内径変化面部分の下端部に整合する位置の厚さ寸法よりも小さく、
前記胴部の、前記残部と整合する位置の外周面に外嵌された中空状の補強枠とを備えたタンクの製造方法であって、
前記胴部を、中空状の金型の内側に熱可塑性樹脂を入れた状態で、この金型を回転させると共に加熱して、溶融した熱可塑性樹脂を前記金型の内面に溶着させる回転成形により成形する事を特徴とするタンクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種薬品や水等の液体を貯溜しておく為に使用される合成樹脂製のタンクの製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等で各種薬品や水等の液体(内容液)を貯溜しておく為の大型のタンクが使用されている。図3は、特許文献1に記載された、従来構造のタンク1の構造を示している。このタンク1は、合成樹脂製で円筒状の胴部2と、この胴部2の下側開口部を塞ぐ底部3と、この胴部2の上側開口部を塞ぐ天板部4とを一体に成形して成る。又、このタンク1の天板部4に形成された開口部には、取り外し可能なキャップ5が組み付けられている。尚、本明細書及び特許請求の範囲に於いて、胴部とは、タンクの内側に貯溜する内容液の周囲を囲む側壁部の事を言う。
【0003】
又、上述の様なタンク1を、合成樹脂の回転成形により造る事が、例えば非特許文献1に記載されている様に、従来から行われている。この様な回転成形では、図4(a)に示す様な金型6を使用する。この金型6は、上方のみが開口した有底円筒状の金型本体7と、この金型本体7の開口部を塞ぐ為の蓋体8とから成る。又、この様な金型6は、この金型本体7とこの蓋体8とを組み付けた状態で、成形する前記タンク1の外面形状に見合う内面形状を有する。以下、前記非特許文献1に記載された回転成形によるタンクの製造方法に就いて、簡単に説明する。
【0004】
回転成形により前記タンク1を製造するには、先ず、図4(a)に示す様に、前記金型本体7の内側に粉末状の、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂9(図4に梨地で示す部分)を入れる。次いで、回転成形の方法の1例として図4(b)に示す様に、前記金型本体7の開口部を前記蓋体8で塞いだ状態の金型6を、回転成形装置10に、X軸及びY軸回りの回転が可能な状態で組み付けると共に、この金型6の周囲にこの回転成形装置10を構成する加熱器11を配置する。
【0005】
前記加熱器11は、径方向ガスバーナ12と、上側ガスバーナ15と、下側ガスバーナ17とを備えている。このうちの径方向ガスバーナ12は、前記金型本体7の軸方向寸法とほぼ同じ長さ寸法を有している。又、この径方向ガスバーナ12は、この金型6の外周面と所定の間隔を空けた状態で設けられている。この様な径方向ガスバーナ12は、その軸方向(図4の上下方向)の複数箇所に径方向炎口14を有している。そして、これら各径方向炎口14から前記金型6の外周面に向けて、炎を放出できる{図4(b)の矢印α参照}。
【0006】
又、前記上側ガスバーナ15は、前記金型6の外径寸法のほぼ半分の長さ寸法を有しており、前記金型6(蓋体8)の上面と所定の間隔を空けた状態で設けられている。この様な上側ガスバーナ15は、その軸方向(図4の左右方向)の複数箇所に上側炎口16を有しており、これら各上側炎口16から前記金型6の上面に向けて、炎を放出できる{図4(b)の矢印β参照}。
更に、前記下側ガスバーナ17は、前記金型6の外径寸法のほぼ半分の長さ寸法を有しており、前記金型6(金型本体7)の下面と所定の間隔を空けた状態で設けられている。この様な下側ガスバーナ17は、その軸方向(図4の左右方向)の複数箇所に下側炎口18を有しており、これら各下側炎口18から前記金型6(金型本体7)の下面に向けて、炎を放出できる{図4(b)の矢印γ参照}。
【0007】
尚、この様な各ガスバーナ12、15、17は、前記金型6の前記X軸を中心とした回転に対して、この金型6と連れ回り可能な状態で設けられている。一方、前記金型6の前記Y軸を中心とした回転に対しては、この金型6と連れ回り不能な状態で設けられている。要するに、前記各ガスバーナ12、15、17は、前記X軸回りに前記金型6と同期して回転するが、前記Y軸回りには回転しない。尚、上述の例の場合、前記金型を前記各ガスバーナ12、15、17により加熱しているが、別の方法として例えば、金型を炉の中に入れて加熱する、所謂炉方式により行う事もできる。
【0008】
上述の様な状態で回転成形装置10に組み付けられた前記金型6を、この回転成形装置10の金型回転手段(図示省略)により、前記X軸及びY軸を中心に回転させると共に、前記各ガスバーナ12、15、17により前記金型6を、その内部の温度が前記熱可塑性樹脂9の融点以上になるまで加熱する。すると、この金型6の内側にある熱可塑性樹脂9が溶融する。この様に溶融した熱可塑性樹脂9は、その流動性が低く、前記金型6の内面或いは近くに存在する既に溶融した他の熱可塑性樹脂9と溶着してその場(溶融した位置)に留まる。一方、溶融していない熱可塑性樹脂9は、この金型6の回転に伴い、この金型6の内側で移動する。この様に前記金型6を回転させながら加熱する作業を、総ての熱可塑性樹脂9が溶融(溶着)するまで続ける。
【0009】
次いで、図4(c)に示す様に、前記金型6を冷却して、この金型6の内側で溶融している熱可塑性樹脂9を固化させる。尚、冷却方法として、例えば、図4(b)に示す状態で、前記各ガスバーナ12、15、17の炎の放出のみを止めて、前記金型6を回転させる事により自然放熱させる方法、或いは、冷却時間を短縮したい場合には、冷却水等により水冷する方法を採用できる。
そして、上述の冷却作業が終了した後、図4(d)に示す様に、前記金型本体7から前記蓋体8を外して、前記タンク1を取り出す。
上述の様にして成形したタンク1の外周面及び内周面は、それぞれの径方向寸法が、軸方向の全長に亙り一定の円筒面状である。従って、前記タンク1の胴部2に関する、径方向に関する厚さ及び剛性は、軸方向の全長に亙り一定である。
【0010】
ところで、上述のタンクは、使用状態に於いて、その内側に貯溜した液体から受ける液圧に耐える為の剛性が必要となる。そこで、従来から、図5〜6に示す様な方法で前記タンクの胴部の剛性を確保する事が行われている。このうちの図5に示す構造の場合、回転成形により成形した合成樹脂製のタンク1aの胴部2aを、軸方向の全長に亙り金属製の補強枠19により補強している。この補強枠19は、例えば、一般構造用圧延鋼材(SS材)或いはステンレス鋼材(SUS材)等から成る鋼板を曲げ成形すると共に溶接して、その全体を円筒状としたものである。そして、この補強枠19を、前記タンク1aの胴部2aの外周面に外嵌している。この様な従来構造のタンク1aの場合、前記補強枠19で前記タンク1aの胴部2aの剛性を補う事ができる。この為、この胴部2aの径方向に関する厚さ寸法を小さくして、熱可塑性樹脂の材料コストの低減、及び、回転成形による前記タンク1aの加工時間の短縮を図れる。但し、前記補強枠19の材料コスト及び加工コストが嵩んでしまう。
【0011】
一方、前記図6に示す構造の場合、回転成形により成形した合成樹脂製のタンク1bのみで構成している。従って、このタンク1bの胴部2bの剛性を確保する為に、この胴部2bの径方向に関する厚さ寸法H2bを、前記図5に示すタンク1aの胴部2aの径方向に関する厚さ寸法H2aよりも大きくしている(H2b>H2a)。この様な従来構造のタンク1bの場合、前記補強枠19を設けた構造と比べて、この補強枠19に掛かる分のコストを抑える事ができる。但し、熱可塑性樹脂の材料コスト及び回転成形による加工時間が長くなってしまい、加工コストが嵩んでしまう。
【0012】
尚、前述の構造のタンク1a、1bにしても、その使用状態に於いて、これら各タンク1a、1bには、その内側に貯溜した液体からその深さに比例した液圧が加わる。従って、これら各タンク1a、1bの胴部2a、2bは、これら各胴部2a、2bの下側程大きい剛性が求められる。この様な事情を考慮して、上述の様な従来構造のタンク1a、1bの場合、前記各胴部2a、2bの下端部が必要とする剛性に合わせて、これら各胴部2a、2bの径方向に関する厚さ寸法(剛性)を決定している。この為、これら各胴部2a、2bの上端部の剛性は、当該部分に加わる液圧に耐える為に必要な剛性に対して、過剰になってしまう。この様に、前記各胴部2a、2bの下部に合わせて、これら各胴部2a、2b全体の剛性を決定する場合、この下部以外の部分の剛性が過剰になり、その分だけ材料コストが嵩んでしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2004−196325号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】ダイライト株式会社のホームページ、“技術情報:回転成形”、[online]、[平成25年3月15日検索]、インターネット<URL:http://www.dailite.co.jp/04_tex/01_seikei_kaiten.html>
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、回転成形により成形するタンクの胴部の軸方向各部分の剛性を、この胴部の内側にある液体から当該各部分に加わる液圧に対して、過剰にならない様に設計する事により、余計な材料コストが掛かる事なく、且つ、加工時間を短縮できるタンクの構造を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のタンクの製造方法のうち、請求項1に記載したタンクの製造方法の対象となるタンクは、中空状の胴部の外周面が、その外径が軸方向の全長に亙り一定な円筒面であり、且つ、この胴部の内周面が、上端から下端へ向かうに従って、その内径寸法が直線的或いは曲線的に小さくなった内径変化面であり、前記胴部の軸方向に関する厚さ寸法が、下方へ向かうに従って連続的に大きくなっている。尚、内径変化面とは、その内径寸法が、下方に進む程、直線的或いは曲線的に小さくなる何れの形状をも含む。又、前記胴部の上端寄り部分は、最低限の厚さ寸法を確保する為の設計の都合上、その内径寸法及び厚さ寸法が変化しない部分が形成される場合があるが、この様な部分が形成されている場合には、当該部分よりも下方側に前記内径変化面を形成する。
そして、請求項1に記載した発明の場合、上述の様な構成を有するタンクを、中空状の金型の内側に粉末状の熱可塑性樹脂を入れた状態で、この金型を回転させると共に加熱して、溶融した熱可塑性樹脂を前記金型の内面に溶着させる回転成形により成形する。この際に、前記金型の内周面の上端寄り部分では、前記熱可塑性樹脂を溶融させる量を少なくし、この金型の内周面の上端から下方に進むに従って、前記熱可塑性樹脂を溶融させる量を徐々に増やす。
【0017】
一方、請求項2に記載したタンクの製造方法の対象となるタンクは、中空状の胴部の内周面のうちの、上端から軸方向中間部に掛けての部分が、下方に向かうに従ってその内径寸法が小さくなった内径変化面であり、前記胴部のうちの、この内径変化面部分に整合する部分の厚さ寸法が、下方に向かうに従って大きくなっている。
又、前記胴部の内周面のうちの、前記内径変化面部分の下方に在る残部の内径寸法が、この内径変化面部分の下端部の内径寸法よりも大きく、前記胴部のうちの、この残部と整合する部分の厚さ寸法がこの内径変化面部分の下端部に整合する位置の厚さ寸法よりも小さい。
更に、前記胴部の、前記残部と整合する位置の外周面に、中空筒状の補強枠を外嵌している。
【発明の効果】
【0018】
上述の様に構成する本発明によれば、余計な材料コストが掛かる事なく、且つ、回転成形による加工時間を短縮できる。
即ち、請求項1に記載した発明の場合、対象となるタンクの胴部の内周面が、下方に向かうに従ってその内径寸法が小さくなると共に、この胴部の軸方向各部の厚さ寸法が、下方に向かうに従って大きくなる。従って、この胴部の軸方向各部の剛性は、下方に向かうに従って大きくなる。この為、前記胴部の軸方向各部の剛性を、当該部分が液体から受ける液圧の大きさとの関係で適切に設定する事ができる。この結果、前述した従来構造の様に、前記胴部の上端部等の剛性が、当該部分に加わる液圧に対して過剰になる事がなく、余計な材料コストが掛かる事がない。又、使用する材料を少なくできる為、回転成形による加工時間を短縮できる。
【0019】
又、請求項2に記載した発明の場合、対象となるタンクの胴部の下端寄り部分の厚さ寸法を、当該部分の上部の厚さ寸法よりも小さくしている。即ち、請求項1に記載した発明の対象となるタンクの場合と比べて、前記胴部の下端寄り部分の材料の量を少なくできる。この為、材料コストの低減及び回転成形による加工時間の短縮を図れる。尚、この様な請求項2に記載した発明の場合、対象となるタンクを構成する胴部の下端寄り部分の剛性を補う為に、当該部分の外側に補強枠を設けている為、この補強枠のコストが別途必要となるが、製造に掛かる総コストは、前述した従来構造のタンクの製造コストよりも低く抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態の第1例を示す、タンクの断面図。
図2】本発明の実施の形態の第2例を示す、タンクの断面図。
図3】従来構造のタンクの構造を示す側面図。
図4】回転成形によりタンクを成形する工程を説明する為の模式図。
図5】従来構造のタンクの剛性を確保する為の構造の1例を示すタンクの断面図。
図6】同じく、別例を示すタンクの断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
[実施の形態の第1例]
図1は請求項1に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例のタンク1cは、前述の従来構造の各タンク1、1a、1bと同様に、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)等の熱可塑性樹脂製で、円筒状の胴部2cと、同じくこの胴部2cの下側開口部を塞ぐ円板状の底部3aと、同じく上側開口部を塞ぐ円板状の天板部4aとを、回転成形により一体に成形して成る。尚、この天板部4aには、キャップ5(図5参照)を組み付ける為の開口部(図示省略)を形成している。
【0022】
ところで、前記タンク1cの使用状態に於いて、前記胴部2cの軸方向各部が、その内側に存在する液体から受ける液圧の大きさは、当該部分の深さ(液体の液面からの距離)に比例する。従って、この液圧は、前記胴部2cの内面(傾斜面20)の下端部で最も大きくなる。そこで、本例の場合、この胴部2cの軸方向各部の径方向に関する厚さ寸法H2c(剛性)を、使用状態に於いて、当該部分に掛かる液圧に基づいて設定している。
【0023】
具体的には、本例のタンク1cに於いては、前記胴部2cの外周面を、その外径寸法D2cが軸方向(図1の上下方向)の全長に亙り一定な円筒面としている。一方、前記胴部2cの内周面を、その内径寸法d2cが下方に向かうに従って小さくなる方向に直線的(或いは曲線的)に傾斜した、特許請求の範囲に記載した内径変化面に相当する傾斜面20としている。この様にして、前記胴部2cの軸方向各部の径方向に関する厚さ寸法H2cを、下方へ向かうに従って大きくしている。
【0024】
次に、上述の様な本例のタンク1cの製造方法に就いて簡単に説明する。本例のタンク1cは、前述の図4に示した回転成形により成形する。但し、本例の場合、図4(b)の工程、即ち、金型6を、回転成形装置の金型回転手段によりX軸及びY軸を中心に回転させると共に、各ガスバーナ12、15、17で加熱する工程を工夫している。
【0025】
具体的には、熱可塑性樹脂の、溶融すると金型6の内面或いは近くに存在する既に溶融した他の熱可塑性樹脂と溶着して、その場(溶融した位置)に留まると言った性質を利用して本例のタンク1cを成形する。即ち、前記金型回転手段或いは前記各ガスバーナ12、15、17等の加工条件を制御する事により、例えば、前記金型6の内周面の上端寄り部分では、前記熱可塑性樹脂を溶融させる量を少なくし、この金型6の内周面の上端から下方に進むに従って、当該各部分で溶融させる前記熱可塑性樹脂の量を徐々に増やしていく。すると、上述の様な性質により、前記熱可塑性樹脂は、溶融した位置に溶着して留まる為、この熱可塑性樹脂を多く溶融させた位置ほど、その径方向に関する厚さ寸法は大きくなる。この様にして、総ての熱可塑性樹脂を溶融(溶着)させた後、前述した従来の製造方法と同様に、前記金型6を冷却して、この金型6の内側で溶融している熱可塑性樹脂を固化させる。そして、この冷却作業が終了した後、図4(d)に示す様に、前記金型本体7から前記蓋体8を外して、前記タンク1cを取り出す。
【0026】
上述の様に構成する本例のタンク1cによれば、余計な材料コストが掛かる事なく、且つ、回転成形による加工時間を短縮できる。
即ち、本例の場合、前記タンク1cの胴部2cの内周面が、下方に向かうに従ってその内径寸法が小さくなると共に、この胴部2cの軸方向各部の厚さ寸法が、下方に向かうに従って大きくなる。従って、この胴部2cの軸方向各部の剛性は、下方に向かうに従って大きくなる。この為、この胴部2cの軸方向各部分の剛性を、当該部分が液体から受ける液圧の大きさとの関係で適切に設計する事ができる。この結果、前述した従来構造の各タンク1、1a、1bの様に、胴部2、2a、2bの上端部等の剛性が、当該部分に加わる液圧に対して過剰になる事がなく、余計な材料コストが掛かる事がない。
又、本例のタンク1cの場合、タンクの質量(使用する材料の量)を、同じ使用条件(例えば、内容液の比重等)を想定して作られた、従来構造のタンクの質量(使用する熱可塑性樹脂の量)と比べて小さく(少なく)できる。この結果、回転成形による加工時間を短縮できる。
【0027】
[実施の形態の第2例]
図2は請求項2に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例のタンク1dの場合、前述の実施の形態の第1例のタンク1cの胴部2cと同様に、胴部2dの外周面を、その外径寸法D2dが軸方向(図2の上下方向)の全長に亙り一定な円筒面としている。一方、前記胴部2dの内周面を、傾斜面20aと、この傾斜面20aの下方に設けられた円筒面21と、これら両面20a、21とを連続させる連続面22とにより構成している。尚、前記傾斜面20が特許請求の範囲に記載した内径変化面に相当し、この円筒面21と連続面22とが同じく残部に相当する部分である。
【0028】
このうちの傾斜面20aは、前記胴部2dの内周面のうちの、上端から軸方向中間部(全長の約2/3の位置)に掛けて形成されており、下方に向かうに従ってその内径寸法d20aが小さくなる方向に直線的に傾斜している。又、前記胴部2dの前記傾斜面20aに整合する部分の厚さ寸法H20aは、下方に向かうに従って大きくなる。尚、この様な傾斜面20aの下端の軸方向位置は、本例の場合に限定されるものではない。使用する熱可塑性樹脂や後述する補強枠19aの種類等に基づいて、最も低コストで製造できる様な位置を適宜設計的に決定する。
又、前記円筒面21は、前記胴部2dの内周面のうちの、軸方向中間部(全長の約2/3の位置)から下端部に掛けて形成されている。又、前記円筒面21の内径寸法d21、及び、前記胴部2dのこの円筒面21と整合する位置の径方向に関する厚さ寸法H21、は全長に亙り一定であり、本例の場合には、前記胴部2dの上端部に於ける内径寸法及び厚さ寸法とほぼ同じである。尚、この様な円筒面21の上端の軸方向位置は、本例の場合に限定されるものではない。使用する熱可塑性樹脂や後述する補強枠19aの種類等に基づいて、最も低コストで製造できる様な位置を適宜設計的に決定する。
又、前記連続面22は、前記傾斜面20aの下端と、前記円筒面21の上端とを連続する傾斜面であり、その内径寸法d22が、下方に向かうに従って大きくなる。又、前記胴部2cのこの連続面22と整合する位置の径方向に関する厚さ寸法H22は、下方に向かうに従って小さくなる。
【0029】
更に、本例のタンク1dの場合、前記胴部2dのうちの、前記円筒面21及び前記連続面22と整合する位置の外周面に、金属製で円筒状の補強枠19aを外嵌している。この補強枠19aは、内周面及び外周面が何れも円筒面であり、軸方向の全長に亙り一定の径方向の厚さ寸法を有する。尚、この補強枠19aは、前述の従来構造と同様に、例えば、板状の一般構造用圧延鋼材(SS材)或いはステンレス鋼材(SUS材)等の鋼板を曲げ成形すると共に溶接して、その全体を円筒状としたものである。
上述の様に構成する本例のタンク1dの場合、このタンク1dの胴部2dの剛性(胴部2dの軸方向各部の厚さ寸法)を、この胴部2dの下端寄り部分を前記補強枠19aにより補強した状態で、前記胴部2cの軸方向各部に掛かる液圧との関係で適切な大きさに設定している。
【0030】
上述の様に、本例のタンク1dの場合、前述した実施の形態の第1例のタンク1cと比べて、前記胴部2dの下端寄り部分(連続面22及び円筒面21に整合する部分)の厚さ寸法が小さい。この為、前述の実施の形態の第1例のタンク1cと比べて、前記胴部2dを構成する熱可塑性樹脂の量を少なくできる。この様に本例のタンク1dの構造によれば、材料コストの低減及び加工時間の短縮を図れる。尚、本例のタンク1dの場合、前記胴部2dの下端寄り部分の剛性を補う為に、当該部分の外周面に前記補強枠19aを設けている為、この補強枠19aのコストが別途必要となる。但し、製造に掛かる総コストは、前述した従来構造のタンクの製造コストよりも抑えられる。この様な本例のタンク1dは、この補強枠19aのコストが掛かっても、回転成形による加工時間を短縮したい場合に適している。
【0031】
尚、本例のタンク1dを製造する方法も、前述の実施の形態の第1例のタンク1cの製造方法と同様に、回転成形装置の金型回転手段或いは各ガスバーナ12、15、17(図4参照)等の加工条件を制御する事により行う。具体的には、例えば、前記傾斜面20aを成形する際には、前記金型6の内周面の上端から下方に向かうに従って溶融させる前記熱可塑性樹脂の量を徐々に増やす様にする。又、前記連続面22を成形する際には、この連続面22の上端に相当する部分から下方に向かうに従って溶融させる前記熱可塑性樹脂の量を徐々に減らす様にする。更に、前記円筒面21を成形する際には、この円筒部21の全長に亙り、溶融させる前記熱可塑性樹脂の量を一定にする。その他の製造方法は前述した実施の形態の第1例の場合と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明を実施する場合に、対象となるタンクを構成する胴部の外周面の形状は円筒面に限定されるものではない。又、前述した実施の形態の第1例の構造の胴部の内周面、及び、実施の形態の第2例の胴部のうちの傾斜面の形状(軸方向長さ、傾斜角度等)は、使用条件、加工条件等を考慮して適宜設計的に決定するものである。
【符号の説明】
【0033】
1、1a、1b、1c、1d タンク
2、2a、2b、2c、2d 胴部
3、3a 底部
4、4a 天板部
5 キャップ
6 金型
7 金型本体
8 蓋体
9 熱可塑性樹脂
10 回転成形装置
11 加熱器
12 径方向ガスバーナ
13 上側ガスバーナ
14 径方向炎口
15 上側ガスバーナ
16 上側炎口
17 下側ガスバーナ
18 下側炎口
19、19a 補強枠
20、20a 傾斜面
21 円筒面
22 連続面
図1
図2
図3
図4
図5
図6