(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤は、下記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンを含むものである。
【0025】
式(1)中、R
1は、水素原子、メチル基又はエチル基を表し、複数あるR
1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。これらの中でも工業的により入手し易いことからメチル基が好ましい。
【0026】
式(1)中、R
2は、下記式(2)で表される基を表し、R
2が複数ある場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【化6】
【0027】
式(2)中、R
5は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表す。接着性がより優れ、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、R
5は、炭素数が2〜4のアルキレン基が好ましい。
【0028】
式(2)中、AOは、直鎖状でも分岐鎖状でもよい炭素数2〜4のアルキレンオキシ基を表し、AOが複数ある場合は同一であっても異なっていてもよい。接着性がより優れ、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、AOは、炭素数が2又は3のアルキレンオキシ基が好ましい。
【0029】
式(2)中、R
6は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい炭素数1〜6のアルキレン基を表す。接着性がより優れ、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、R
6は、炭素数が1〜4のアルキレン基が好ましい。
【0030】
式(2)中、eは、0〜4の整数を表す。接着性がより優れ、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、eは0〜2が好ましい。
【0031】
式(2)中、fは、0又は1の整数を表す。接着性がより優れるという観点から、fは1が好ましい。
【0032】
式(2)中、Epは下記式(3)又は下記式(4)で表される基を表す。
【化7】
【化8】
【0033】
Epとしては、接着性がより優れることから、上記式(3)で表される基が好ましい。
【0034】
式(1)中、R
3は、芳香族環を有する炭素数8〜40の炭化水素基又は炭素数3〜22のアルキル基を表し、R
3が複数ある場合はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R
3が芳香族環を有する炭化水素基である場合、炭素数が40を超えると、オルガノ変性シリコーンの粘度が高くなり過ぎて取り扱いが困難となる。また、R
3がアルキル基である場合、その炭素数が22を超えると、オルガノ変性シリコーンの粘度が高くなり過ぎて取り扱いが困難となる。
【0035】
芳香族環を有する炭素数8〜40の炭化水素基としては、例えば、炭素数8〜40のアラルキル基や下記式(5)又は下記式(6)で表される基等が挙げられる。
【0037】
式(5)中、R
7は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R
8は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、gは、0〜3の整数を表す。接着性がより優れ、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、R
7は、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。また、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、gは、0又は1が好ましい。
【0039】
式(6)中、R
9は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R
10は、単結合又は炭素数1〜4のアルキレン基を表し、hは、0〜3の整数を表す。接着性がより優れ、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、R
9は、炭素数2〜4のアルキレン基が好ましい。また、オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、hは、0が好ましい。
【0040】
炭素数8〜40のアラルキル基としては、例えば、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基、フェニルへキシル基、ナフチルエチル基等が挙げられる。これらの中でも、接着性がより優れることから、フェニルエチル基、フェニルプロピル基が好ましい。
【0041】
オルガノ変性シリコーンがより製造しやすいという観点から、芳香族環を有する炭素数8〜40の炭化水素基の中では、上記アラルキル基及び式(5)で表される基が好ましく、接着性がより優れるという観点から、上記アラルキル基がより好ましい。
【0042】
炭素数3〜22のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、接着性がより優れることから、炭素数4〜12のアルキル基が好ましい。このようなアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンは、接着性がより優れるという観点から、R
3として、芳香族環を有する炭素数8〜40の炭化水素基を有していることが好ましい。更に、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンにおける芳香族環を有する炭素数8〜40の炭化水素基と炭素数3〜22のアルキル基とのモル比は100:0〜40:60が好ましい。
【0044】
式(1)中、R
4は、上述したR
1、R
2又はR
3と同様の基を表し、複数あるR
4は同一であっても異なっていてもよい。工業的に入手し易いという観点から、R
4は、R
1と同様の基が好ましく、中でもメチル基が好ましい。
【0045】
式(1)中、xは、0以上の整数を表し、y及びzはそれぞれ1以上の整数を表し、(x+y+z)は10〜200である。接着性がより優れることから、xは、5以下であることが好ましい。工業的に入手し易く、接着性及び柔軟性低下の抑制がより優れることから、(x+y+z)は40〜60であることが好ましい。
【0046】
なお、y及びzが0であると、接着性が低下する傾向にある。また、(x+y+z)が10未満であると、接着性が低下し、柔軟性低下の抑制が不十分となる傾向にあり、(x+y+z)が200を超えると、取り扱いや製造が困難となる傾向にある。
【0047】
接着性がより優れるという観点から、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンにおけるR
2で表される基とR
3で表される基とのモル比は、10:90〜60:40が好ましく、25:75〜50:50がより好ましい。
【0048】
なお、一般式(1)はブロック共重合体構造を意味するものではなく、各構造単位はランダム、ブロック或いは交互に配列していてもよい。
【0049】
上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンは、従来公知の方法で合成する事ができる。例えば、SiH基を有する原料シリコーンにヒドロシリル化反応によって置換基を導入する方法、環状オルガノシロキサンを開環重合する方法等が挙げられる。中でもSiH基を有する原料シリコーンにヒドロシリル化反応によって置換基を導入する方法が工業的により容易であり好ましい。以下、この方法について説明する。
【0050】
ヒドロシリル化反応は、必要に応じて触媒の存在下、SiH基を有する原料シリコーンにR
2又はR
3となる、ビニル基を有する不飽和化合物を段階的に或いは一度に反応させる反応である。
【0051】
原料シリコーンとしては例えば、重合度が10〜200であるメチルハドロジェンシリコーンやジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体等が挙げられる。これらの中でも工業的に入手し易いという観点から、重合度が40〜60であるメチルハイドロジェンシリコーンを用いることが好ましい。
【0052】
ビニル基を有する不飽和化合物としては以下のものが挙げられる。
【0053】
R
2となる不飽和化合物としては、例えば、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンオキシド等が挙げられる。
【0054】
R
3としての芳香族環を有する炭素数8〜40の炭化水素基となる不飽和化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、アリルフェニルエーテル、アリルナフチルエーテル、アリル−p−クミルフェニルエーテル、アリル−o−フェニルフェニルエーテル、アリル−トリ(フェニルエチル)−フェニルエーテル、アリル−トリ(2−フェニルプロピル)フェニルエーテル等が挙げられる。
【0055】
R
3としての炭素数3〜22のアルキル基となる不飽和化合物としては、例えば、炭素数3〜22のα−オレフィンが挙げられ、具体的にはプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等が挙げられる。
【0056】
反応に用いられる上記原料シリコーン及び上記不飽和化合物の使用量は、原料シリコーンのSiH基当量や数平均分子量等に応じて宜選択され得る。原料シリコーンのSiH基当量は、例えば、原料シリコーン、水酸化ナトリウム水溶液及びアルコールとの反応により発生する水素の量により求めることができる。数平均分子量は、例えば、原料シリコーンにα−オレフィンをヒドロシリル化反応により導入して得られるアルキル変性シリコーンの数平均分子量により求めることができる。アルキル変性シリコーンの数平均分子量は、例えば、GPCを用い、ポリエチレングリコール換算法により求めることができる。
【0057】
ヒドロシリル化反応の反応温度と温度に特に制限はなく適宜調整することができる。反応温度としては、例えば10〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、反応時間としては、例えば、反応温度が50〜150℃の時、6〜12時間である。無溶媒下でも反応は進行するが溶媒を使用してもよい。溶媒としては、例えば、ジオキサン、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、酢酸ブチル等が使用される。
【0058】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤は、上述の特定の構造を有するオルガノ変性シリコーンを用いることにより、強化繊維束となる合成繊維束に集束性だけではなく、優れた接着性をも付与することができ、更に合成繊維束の柔軟性低下を十分抑制することができる。
【0059】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤においては、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンをそのままサイジング剤として用いてもよいし、有機溶剤、水又は有機溶剤と水との混合液に分散、溶解させてサイジング剤とすることもできる。有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール又はグリコールエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類やトルエン等を使用することができる。
【0060】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤における上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンの含有量は、サイジング剤の安定性や粘度、用いるオルガノ変性シリコーンに応じて適宜調整することができるが、50〜100質量%という量が挙げられる。
【0061】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤に添加され得る他の成分としては、例えば、各種界面活性剤や各種平滑剤、酸化防止剤、難燃剤、抗菌剤、消泡剤が挙げられる。また、強化繊維束の耐摩擦性の向上やマトリックス樹脂の含浸性の向上のためにポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及び上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーン以外のエポキシ樹脂等の樹脂等が添加されていてもよい。これらの添加成分は1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
特に、界面活性剤は、本実施形態の合成繊維用サイジング剤の溶媒又は分散媒に水を使用する場合、乳化剤として用いることによって乳化を効率よく実施することができる。界面活性剤としては、特に限定されず、公知のものを適宜選択して使用することができ、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0063】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤を製造する方法としては、特に限定はなく、公知の方法を採用できる。例えば、有機溶剤と上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンを混合撹拌して調製することもできるし、必要に応じてさらに水やその他の成分と混合撹拌し調製することもできる。
【0064】
次に、本発明に係る強化繊維束について説明する。
【0065】
本実施形態の強化繊維束は、合成繊維束と、該合成繊維束に付着させた上記本実施形態の合成繊維用サイジング剤とを有する。本実施形態の強化繊維束は、繊維強化複合材に用いられる合成繊維束に上記本実施形態の合成繊維用サイジング剤を処理して得ることができ、マトリックス樹脂を補強し、繊維強化複合材を得るために用いられる。
【0066】
処理はサイジング剤を合成繊維束に付着させることにより行われる。本実施形態の合成繊維用サイジング剤によれば、合成繊維束に集束性を付与する、いわゆる糊剤としての働きだけでなく、マトリックス樹脂との優れた接着性の付与と合成繊維束の柔軟性の十分な維持を達成できる。
【0067】
合成繊維束へのサイジング剤の付着量は適宜選択でき、例えば、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンの付着量が合成繊維束の質量を基準として0.05〜10質量%となる量が好ましく、0.1〜5質量%となる量がより好ましい。
【0068】
サイジング剤の付着量が、上記オルガノ変性シリコーンの付着量が合成繊維束に対して0.05質量%未満となる量であると、接着性が不十分となる傾向にあり、また、合成繊維束の集束性が不足し取扱い性が悪くなることがある。一方、10質量%を超えると、付与量に見合う効果が得られにくくなり、コスト的に不利となる傾向にある。
【0069】
本実施形態のサイジング剤を合成繊維束に付着させる方法に特に制限はなく、キスローラー法、ローラー浸漬法、スプレー法、Dip法、その他公知の方法で付着させることができる。また、付着させる際は、本実施形態のサイジング剤をそのまま上記方法等により付着させてもよいし、サイジング剤を含む処理液を調製し、その処理液を上記方法等により付着させてもよい。
【0070】
処理液の濃度としては、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンの濃度が0.5〜60質量%となる濃度が挙げられる。また、処理液に用いられる溶媒としては前述の有機溶剤や水などが挙げられる。
【0071】
サイジング剤を合成繊維束に付着させた後の乾燥方法に特に制限はなく、例えば、加熱ローラー、熱風、熱板等で、90〜300℃の温度で10秒〜10分間、より好適には100〜250℃の温度で30秒〜4分間、加熱乾燥する方法が挙げられる。
【0072】
また、本発明の効果を阻害しない範囲で、ビニルエステル樹脂、前記オルガノシリコーン以外のエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂や、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、アクリル系樹脂などの熱可塑性樹脂を合成繊維束に付着させてもよい。
【0073】
本実施形態の合成繊維用サイジング剤を適用し得る合成繊維束の種類としては、繊維強化複合材に用いられる合成繊維であれば特に制限はなく、例えば炭素繊維、ガラス繊維、セラミック繊維などの各種無機繊維、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリアリレート繊維、ポリアセタール繊維、PBO繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリケトン繊維などの各種有機繊維が挙げられる。
【0074】
上記の中でも、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンとの親和性がより良く、マトリックス樹脂との接着性がより向上するという観点から炭素繊維が好ましい。炭素繊維の形態としては特に限定されず、例えばポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系あるいはピッチ系等の公知の炭素繊維フィラメントが数千から数万本束になったものを挙げることができる。本実施形態においては、加熱炭素化処理を経て十分に炭素化された炭素繊維の束に、本実施形態の合成繊維用サイジング剤を付着させることが好ましい。そのような炭素繊維としては、質量比で90%以上が炭素で構成されるものであることが更に好ましい。
【0075】
本実施形態の強化繊維束の使用形態としては、例えば、束、織物、編物、組み紐、ウェブ、マットおよびチョップド等の形態が挙げられ、目的や使用方法により適宜選択され得る。
【0076】
本実施形態の強化繊維束によれば、本実施形態のサイジング剤により処理されているため、マトリックス樹脂との親和性が良好となり十分な接着性が得られ、強度に優れた繊維強化複合材を得ることができる。また、本実施形態の強化繊維束は、合成繊維の柔軟性が十分維持され得るものであることから、ロールの巻取り性や取扱い性に優れる。
【0077】
次に、本発明に係る繊維強化複合材について説明する。
【0078】
本実施形態の繊維強化複合材は、マトリックス樹脂と、上記本実施形態の強化繊維束を含むものである。
【0079】
マトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよいが、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンとの親和性がより良く、強化繊維束との接着性がより向上するという観点から熱硬化性樹脂が好ましい。
【0080】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネートエステル樹脂およびビスマレイミド樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。
【0081】
これらの中でも、上記一般式(1)で表されるオルガノ変性シリコーンとの親和性がより良く、接着性向上がより優れるという観点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型、グリシジルエステル型、グリシジルアミン型、脂環型のいずれも用いることができる。具体的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型、フェノールノボラック型、アミノフェノール、アニリン型等が使用される。
【0082】
本実施形態の繊維強化複合材の製造方法としては、特に限定はなく、従来公知の方法を採用することができる。
【0083】
マトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である場合、例えば、マトリックス樹脂を本実施形態の繊維強化束に含浸させた後、加熱硬化する方法や本実施形態の強化繊維束にマトリックス樹脂を含浸したプリプレグを作成し、プリプレグを積層後、その積層物に圧力を付与しながらマトリックス樹脂を加熱硬化させる方法等が挙げられる。
【0084】
これら方法においては、マトリックス樹脂の主剤と硬化剤の2液を使用直前に混合して使用することが好ましい。
【0085】
本実施形態の強化繊維束は、例えば上述の形態で用いられ、目的や使用方法により適宜選択され得る。
【0086】
また、上記のプリプレグも、本実施形態の繊維強化複合材の一態様に含まれるが、その作成方法としては、マトリックス樹脂をメチルエチルケトンやメタノール等の溶媒に溶解して低粘度化し、本実施形態の強化繊維束に含浸させるウェット法や、加熱により低粘度化し、本実施形態の強化繊維束に含浸させるホットメルト法(ドライ法)等が挙げられる。この場合、本実施形態の強化繊維束の合成繊維は炭素繊維であることが好ましい。
【0087】
また、マトリックス樹脂が熱可塑性樹脂である場合、例えば、射出成形、ブロー成形、回転成形、押出成形、プレス成形、トランスファー成形、およびフィラメントワインディング成形などの成形方法によって成形する方法が挙げられる。これらの中でも生産性の観点で射出成形が好ましく用いられる。これらの成形において、本実施形態の強化繊維束は成形材料としてペレットやプリプレグ等の形態で用いられるが、これらのペレットやプリプレグも本実施形態の繊維強化複合材の一態様に含まれる。
【0088】
射出成形に用いられるペレットは、一般的には、熱可塑性樹脂とチョップド繊維もしくは連続繊維を押出機中で混練し、押出し、ペレタイズすることによって得られたものを指す。また、上記ペレットには、長繊維ペレットも含まれる。長繊維ペレットとは特公昭63−37694号公報に示されるような、繊維がペレットの長手方向にほぼ平行に配列し、ペレット中の繊維長さがペレット長さと同一もしくはそれ以上であるものを指す。この場合、熱可塑性樹脂は、強化繊維束中に含浸されていても被覆されていてもよい。
【0089】
本実施形態の繊維強化複合材中における本実施形態の強化繊維束の含有量は、特に限定はなく、強化繊維束の繊維の種類、形態、マトリックス樹脂の種類などにより適宜選択すればよいが、マトリックス樹脂と強化繊維束の総質量に対して5〜70質量%という量が挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
【0091】
[サイジング剤及び強化繊維束の製造]
原料シリコーンとして、下記式で表されるメチルハイドロジェンシリコーンを用意した。
【0092】
【化11】
【0093】
また、合成繊維束として、市販の炭素繊維(製品名:TR50S15L、三菱レイヨン(株)社製、繊維引張り強度:4900MPa)をアセトンで洗い、付着しているサイジング剤を取り除いたものを炭素繊維束として用意した。
【0094】
(実施例1)
撹拌機、温度計、還流冷却機、窒素ガス導入管及び滴下ロートを備えた反応容器に原料シリコーン(63g)を入れ、窒素を気流し温度が65℃になるまで加熱しながら均一となるまで混合した。ヒドロシリル化触媒として、塩化白金(IV)のエチレングリコールモノブチルエーテル・トルエン混合溶液を、系内の反応物に対し白金濃度が5ppmとなるように添加した。反応物の温度が120℃となったところで、0.9モルのα−メチルスチレン(106.2g)を滴下し、120℃で1時間、反応させた。
【0095】
その後、0.1モルのアリルグリシジルエーテル(11.4g)を滴下し、120℃で3時間、反応させ、付加反応を完結させた。付加反応完了の確認は、得られたオルガノ変性シリコーンのFT−IR分析を行い、原料シリコーンのSiH基由来の吸収スペクトルが消失したことを確認することで行った。
【0096】
得られたオルガノ変性シリコーンとアセトンを混合し、オルガノ変性シリコーン濃度が10質量%のサイジング剤を得た。
【0097】
得られたサイジング剤を炭素繊維束にDip処理し、絞った後、100℃で3分間熱風乾燥させて、上記オルガノ変性シリコーン付着量が炭素繊維束の質量を基準として2質量%である強化炭素繊維束を得た。
【0098】
(実施例2〜6)
原料シリコーンと反応させるビニル基を有する不飽和化合物を表1又は2のように替えたこと以外は実施例1と同様にして、オルガノ変性シリコーンを得た。また、得られたオルガノ変性シリコーンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、サイジング剤及び強化炭素繊維束を得た。
【0099】
(比較例1)
原料シリコーンと反応させるビニル基を有する不飽和化合物を表2のように替えたこと以外は実施例1と同様にして、オルガノ変性シリコーンを得た。また、得られたオルガノ変性シリコーンを用いたこと以外は実施例1と同様にして、サイジング剤及び強化炭素繊維束を得た。
【0100】
(比較例2)
実施例1におけるオルガノ変性シリコーンに替えて、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:jER828、三菱化学(株)社製、分子量約370、下記式で表される化合物)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、サイジング剤及び強化炭素繊維束を得た。
【0101】
【化12】
【0102】
(比較例3)
実施例1におけるオルガノ変性シリコーンに替えて、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(製品名:エポトートYDPN−638、新日鐵化学(株)社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、サイジング剤及び強化炭素繊維束を得た。
【0103】
(比較例4)
実施例1におけるオルガノ変性シリコーンに替えて、エポキシ変性シリコーン(製品名:X−22−343、官能基当量:525g/mol、信越化学工業(株)社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、サイジング剤及び強化炭素繊維束を得た。
【0104】
(比較例5)
エポキシ変性シリコーン(製品名:X−22−343、官能基当量:525g/mol、信越化学工業(株)社製)とアルキルアラルキル変性シリコーン(製品名:X−22−1877、信越化学工業(株)社製)とを質量比50:50で混合した。実施例1におけるオルガノ変性シリコーンに替えて、この混合物を用いたこと以外は実施例1と同様にして、サイジング剤及び強化炭素繊維束を得た。
【0105】
(比較例6)
サイジング剤を処理せずに炭素繊維束を用いた。
【0106】
[性能評価]
上記で得られた強化炭素繊維束について、集束性、接着性及び柔軟性を以下の方法で評価した。結果を表1〜表3に示す。
【0107】
<集束性>
まず、長さ50cmの強化繊維束の上端を固定し、下端に50gの荷重を掛けて吊るした。次いで下端から約20cmの所を鋭利な鋏で切断し、吊るし残った方の強化繊維束の断面の最大径を測定した。最大径が小さい程、集束性が良好であることを示す。
【0108】
<接着性>
強化繊維束とマトリックス樹脂との接着性について、単繊維埋め込み(フラグメンテーション)法により測定した界面剪断強度を用いて評価した。界面剪断強度が高いほど、接着性が優れることを示す。具体的には以下の手順により行った。
【0109】
まず、得られた強化繊維束から単繊維1本を抜き出し、これをマトリックス樹脂中に包埋させて試験片を作製した。この試験片に、繊維の破断伸度より大きな伸張を付与した(引張試験の実施)。マトリックス樹脂内で破断した単繊維上の破断数を偏光顕微鏡にて読み取り、その破断数と単繊維長から各破断繊維長の平均値(平均繊維長)を求め、次式から界面剪断強度を算出した。
臨界繊維長(mm)=4×平均繊維長(mm)/3
界面剪断強度(MPa)=繊維引張り強度(MPa)×(繊維直径(mm)/2)×臨界繊維長(mm)
【0110】
なお、繊維引張り強度とは繊維の固有物性値であり、実施例に用いた炭素繊維束の繊維引張り強度は前述のとおり4900MPaである。また、試験片作製に用いたマトリックス樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(製品名:jER828、三菱化学(株)社製)を100部、硬化剤としてジシアンジアミドを8部、硬化促進剤として3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレアを4部の割合で混合し、これを、単繊維1本を固定した型枠に流し込み、120℃の温度で1時間、硬化させたものである。引張試験は温度20℃、湿度65%で行い、試験片が破断しない範囲内(伸度5%)で伸張を付与した。
【0111】
<柔軟性>
JIS L 1096(2010)のE法(ハンドルオメータ法)に用いられるハンドルオメータ(熊谷理機工業(株)社製)を用いて、強化繊維束を上から押圧した時の抵抗力を測定し、柔軟性を評価した。なお、測定は、スロット幅を20mmに設定し、長さ30cmの強化繊維束の中央に荷重をかけ、3回行った。それらの平均値を表に示す。数値が小さい程、柔軟であることを示す。
【0112】
【表1】
【0113】
【表2】
【0114】
【表3】
【0115】
表1および表2の結果から分かるように本発明のサイジング剤は、強化炭素繊維束の柔軟性の十分な維持とマトリックス樹脂との優れた接着性の付与を同時に達成することができる。