(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144104
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】配水池
(51)【国際特許分類】
E03B 11/00 20060101AFI20170529BHJP
B65D 88/10 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
E03B11/00 B
B65D88/10 A
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-98823(P2013-98823)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-218830(P2014-218830A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】595106512
【氏名又は名称】明新工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】林 徳臣
(72)【発明者】
【氏名】中家 康▲隆▼
(72)【発明者】
【氏名】遠山 友博
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−177790(JP,A)
【文献】
特開平05−113053(JP,A)
【文献】
特開平08−133383(JP,A)
【文献】
実開昭63−166992(JP,U)
【文献】
米国特許第01864931(US,A)
【文献】
国際公開第93/007072(WO,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第00298181(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03B 11/00
B65D 88/00−88/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼製の矩形の配水池であって、
円筒面の一部が鉛直に延びて水平断面が円弧形状とされる壁板、及び、前記壁板の幅方向の縁部に鉛直方向に延びて配される平面フランジ部により壁板材が形成され、
前記平面フランジ部が幅方向に隣接するように前記壁板材が多数配され、
前記壁板材の前記平面フランジ部の外側に配され前記平面フランジ部が面接合されると共に、隣接する前記平面フランジ部の間の鉛直方向に延びる隙間が裏当を有する開先となって前記平面フランジ部同士が溶接される支柱部材を備え、
隣接する前記平面フランジ部が前記支柱部材に溶接されることで、複数の前記壁板材、及び、前記支柱部材により接合ブロック材が形成され、
前記接合ブロック材が水平方向に多数並設され、前記支柱部材を介して前記壁板材同士が連結されると共に、前記接合ブロック材が鉛直方向に多数配され、前記支柱部材同士が鉛直方向で連結され、
前記接合ブロック材の前記支柱部材の端部には、鉛直方向で隣接する前記支柱部材が嵌合する嵌合部が形成され、
前記支柱部材の端部の嵌合部には、隣接する前記平面フランジ部の鉛直方向の端部の裏当て材となる継ぎ板が設けられている
ことを特徴とする配水池。
【請求項2】
請求項1に記載の配水池において、
前記支柱部材を繋ぐ梁が内部に設けられている
ことを特徴とする配水池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼製の矩形の配水池に関する。
【背景技術】
【0002】
配水池は浄水場から送り出された水を一時的に貯めておく施設で、配水量の時間変動を調整する機能を持つと共に、異常時には、断水の影響をなくす役割を果たしている。配水池としては、円筒状の貯水槽や矩形の貯水槽が適用され、鋼製の壁板材が多数接合されて構築されることが多い。
【0003】
鋼製の壁板材を用いた配水池として、円弧状水平断面を持つ壁板材の両端部に水平断面がT字状のフランジ面を有する(板材の面に直交するフランジ面を有する)板材を設け、フランジ面同士を連結して側板ユニットが作製されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された従来の技術では、壁板材の円弧状水平断面により水平方向が補強され、板材のT字状のフランジ面により鉛直方向が補強されている。このため、水圧による荷重を的確に受けることができる側壁を備えた配水池とすることができる。
【0005】
特許文献1に記載された従来の技術では、フランジ面同士を溶接する等して接合しているので、接合強度には限界があるのが現状である。このため、端部に板材を備えた壁板材に応力が集中することがなくなる反面、フランジ面同士の連結部位(溶接等)の強度により、側壁ユニット全体としては、水圧に対する耐圧性能が制約されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004―27517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、水圧に対する応力集中が抑制される壁板材により、耐圧性能が保たれた状態で側壁が構築される鋼製の矩形の配水池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の配水池は、鋼製の矩形の配水池であって、円筒面の一部が鉛直に延びて水平断面が円弧形状とされる壁板、及び、前記壁板の幅方向の縁部に鉛直方向に延びて配される平面フランジ部により壁板材が形成され、前記平面フランジ部が幅方向に隣接するように前記壁板材が多数配され、前記壁板材の前記平面フランジ部の外側に配され前記平面フランジ部が面接合されると共に、隣接する前記平面フランジ部の間の鉛直方向に延びる隙間が裏当を有する開先となって前記平面フランジ部同士が溶接される支柱部材を備え
、隣接する前記平面フランジ部が前記支柱部材に溶接されることで、複数の前記壁板材、及び、前記支柱部材により接合ブロック材が形成され、前記接合ブロック材が水平方向に多数並設され、前記支柱部材を介して前記壁板材同士が連結されると共に、前記接合ブロック材が鉛直方向に多数配され、前記支柱部材同士が鉛直方向で連結され、前記接合ブロック材の前記支柱部材の端部には、鉛直方向で隣接する前記支柱部材が嵌合する嵌合部が形成され、前記支柱部材の端部の嵌合部には、隣接する前記平面フランジ部の鉛直方向の端部の裏当て材となる継ぎ板が設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、円筒面の一部が鉛直に延びて水平断面が円弧形状とされる壁板により応力集中が抑制され、支柱部材に平面フランジ部が溶接されることにより、支柱部材の表面が裏当て材となると共に平面フランジ部の隙間が開先となって強度が保たれた状態で溶接される。
そして、複数の壁板材、及び、支柱部材により形成される接合ブロック材が水平方向、鉛直方向に多数連結されて側壁が構築される。また、鉛直方向で隣接する支柱部材が嵌合部により嵌合されるため、作業性を向上させることができ、継ぎ板により、支柱部材の端部の嵌合部の部位の裏当て材とすることができる。
【0010】
このため、水圧に対する応力集中が抑制される壁板材により、耐圧性能が保たれた状態で側壁が構築される鋼製の矩形の配水池となる。
【0016】
また、
請求項2に係る本発明の配水池は、
請求項1に記載の配水池において、前記支柱部材を繋ぐ梁が内部に設けられていることを特徴とし、梁により構造物の剛性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の鋼製の矩形の配水池は、水圧に対する応力集中が抑制される壁板材により、耐圧性能が保たれた状態で側壁を構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施例に係る配水池の全体を表す外観図である。
【
図2】本発明の一実施例に係る配水池の全体を表す側面図である。
【
図4】接合ブロック材を連結した状態の斜視図である。
【
図8】接合ブロック材の底板を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1、
図2に基づいて配水池の全体の構成を説明する。
【0020】
図1には本発明の一実施例に係る配水池の全体を表す外観であり、屋根を一部破断して示してある。また、
図2には本発明の一実施例に係る配水池の全体を表す側面を示してある。
【0021】
図示の配水池1は、鋼製の矩形の貯水槽からなる配水池1であり、複数の壁板材(後述する)、及び、支柱部材(後述する)で形成される接合ブロック材2が水平方向に多数並設されると共に、接合ブロック材2が鉛直方向に複数連結されて貯水槽の側壁3が構成されている。また、側壁と同様に、多数の接合ブロック材2により貯水槽の内部に仕切り壁4が形成され、配水池1の内部が複数室(2室)に仕切られている。
【0022】
詳細は後述するが、配水池1は、コンクリートの基礎に対して底板、及び、最下段の接合ブロック材2が固定され、図示しないピットに給水口、配水口が設けられている。また、貯水槽の内部には、鉛直方向、及び、水平方向に多数の梁材が設けられ、水平方向に延びる梁材の端部は接合ブロック材2の支柱部材(後述する)に固定されている。
【0023】
図3から
図5に基づいて接合ブロック材2、及び、接合ブロック材2が連結された側壁の構成を具体的に説明する。
【0024】
図3には壁板材、及び、支柱部材を説明するための接合ブロック材の分解斜視、
図4には接合ブロック材を連結した状態の斜視、
図5には壁板材の支柱部材への溶接部を説明するための
図4中のV―V線矢視を示してある。
【0025】
図3、
図4に示すように、接合ブロック材2は、例えば、ステンレス製の複数枚(図示例では2枚)の壁板材11を備え、2枚の壁板材11が、例えば、ステンレス製の四角筒の支柱部材12に接合されることで形成されている。壁板材11は、円筒面の一部が鉛直に延びて水平断面が円弧形状とされる矩形状の壁板15を有している。壁板15は円弧形状の内側(膨らむ方向の反対面)が貯水槽の内面とされる。
【0026】
壁板15の幅方向の縁部には平面フランジ部16が連続して形成され、平面フランジ部16は鉛直方向に延びて配されている。接合ブロック材2は、平面フランジ部16が幅方向に隣接するように壁板材11が配され、隣接する壁板材11の平面フランジ部16にわたり、支柱部材12が貯水槽の外側(壁板15の円弧が膨らんでいる側の外面側)に配されている。
【0027】
図5に示すように、支柱部材12の一面に平面フランジ部16が面接合され、隣接する前記平面フランジ部の間の鉛直方向に延びる隙間Sが形成されている。隙間Sの部位が溶接を行う母材間の溝(開先)とされ、支柱部材12の一面と一対の平面フランジ部16を溶接することで、支柱部材12の一面が裏当とされて開先溶接された状態になる。そして、壁板15の円弧が膨らんでいる側の面(表側面)と支柱部材12とは隅肉溶接により接合されている。
【0028】
接合ブロック材2の壁板15は、円筒面の一部が鉛直に延びて水平断面が円弧形状とされているので、内側からの荷重に対して応力集中が抑制された状態で支柱部材12に固定される。このため、水圧に対する応力集中を緩和することができる。そして、壁板材11は、表側面が隅肉溶接により支柱部材12に固定され、平面フランジ部16が支柱部材12に溶接されることにより、支柱部材12の表面が裏当て材となると共に平面フランジ部16の隙間が開先となって開先溶接され、十分な接合強度で溶接される。
【0029】
このため、接合ブロック材2を連結して配水池1の側壁3を構築することで、水圧に対する応力集中が抑制される壁板材11が備えられ、高い接合強度で壁板材11が接合され、耐圧性能が保たれた状態で側壁3が構築された鋼製の矩形の貯水槽からなる配水池1となる。
【0030】
図6、
図7に基づいて接合ブロック材2による側壁3の構築について説明する。
【0031】
図6には接合ブロック材により側壁が構成される状態を示してあり、
図6(a)は水平方向に連結された状態(鉛直方向には分解されている状態)、
図6(b)は水平方向及び鉛直方向に連結されて側壁が形成された状態である。また、
図7には支柱部材の嵌合部を説明する外観を示してある。
【0032】
図6に示すように、支柱部材12を介して接合ブロック材2(壁板材11、支柱部材12)を接合(開先溶接)すると共に、壁板材11の表側面を支柱部材12に隅肉溶接することにより、例えば、壁板材11を水平方向に4枚備えたブロックが構築される。ブロック同士を鉛直方向で接合することで、例えば、壁板材11を8枚備えた側壁ブロックが構築される。側壁ブロック同士を適宜接合することにより、所望の形状の矩形の鋼製の貯水槽からなる配水池1とすることができる。
【0033】
図7に示すように、支柱部材12は四角筒で構成され、上端部には、一回り小さな四角筒部21が設けられている。また、下端部には、継ぎ目部位の溶接時の裏当て材となる継ぎ板22が設けられている。ブロック同士を鉛直方向で接合する際には、上側のブロックの支柱部材12の筒内に上側のブロックの支柱部材12の四角筒部21を嵌合する(嵌合部)。
【0034】
このため、ブロック同士の鉛直方向の接合が嵌合部で案内されることになり、作業性を向上させることができる。また、継ぎ板22が継ぎ目の部位に存在することになり、四角筒の表面の裏当て材の働きを連続させることができる。
【0035】
図8、
図9に基づいてコンクリート基礎に対する底板の固定状況を説明する。
【0036】
図8には底板が備えられた接合ブロック材の外観、
図9には底板の固定状態を説明する断面を示してある。
【0037】
図8に示すように、最下段に適用される接合ブロック材2の下面には底板25が設けられている。一方、
図9に示すように、配水池1が設置されるコンクリートの基礎31には支持アンカー32が固定され、支持アンカー32の上端にナット33を介して底板25が固定されている。支持アンカー32に底板25が固定されることにより、底板25の浮き上がりが防止された状態で接合ブロック材2が基礎31に固定設置される。
【0038】
底面には多数の底板が互いに溶接により接合されて備えられている。
図は省略してあるが、多数の底板の接合部位に支持アンカーを介して支持枠が固定されている。そして、支持枠の上面で底板同士が開先溶接されて連続する底板がコンクリート基礎の上に固定されている。溶接部での浮き上がりが防止されている。
【0039】
上述した鋼製の矩形の配水池1は、接合ブロック材2の壁板15が円弧形状とされているので、内側からの荷重に対して応力集中を抑えることができる。そして、壁板材11は、支柱部材12に平面フランジ部16が溶接されることにより、支柱部材12の表面が裏当て材となると共に平面フランジ部16の隙間が開先となって開先溶接され、壁板材11同士が十分な接合強度で溶接される。
【0040】
このため、接合ブロック材2を連結して配水池1の側壁3を構築することで、水圧に対する応力集中を緩和することができると共に、高い接合強度で壁板材11が接合され、耐圧性能が保たれた状態で側壁3が構築された鋼製の矩形の配水池1となる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、鋼製の矩形の配水池の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 配水池
2 接合ブロック材
3 側壁
4 仕切り壁
11 壁板材
12 支柱部材
15 側板
16 平面フランジ部
21 四角筒部
22 継ぎ板
25 底板