(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144105
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】花弁保護シート
(51)【国際特許分類】
A01G 9/12 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
A01G9/12 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-99295(P2013-99295)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-217327(P2014-217327A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年5月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】592093958
【氏名又は名称】酒井化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】東井 清彦
【審査官】
坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3132798(JP,U)
【文献】
実開昭59−156451(JP,U)
【文献】
実開平6−61049(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
花弁を載置するベースシートと、このベースシートに形成され花茎を挿通させる花茎挿通孔と、この花茎挿通孔から前記ベースシートの周縁まで伸びるスリットとを有する花弁保護シートであって、
前記ベースシートは、発泡樹脂で形成された発泡シートと、この発泡シートの少なくとも一方の表面上に前記発泡シートとは別に形成され、前記花弁との摩擦を低減して前記花弁が前記ベースシートの上を滑らかに滑る滑り層とを有し、
前記スリットの幅を花茎が挿通できる寸法とするとともに、前記スリットに連通する前記花茎挿通孔の孔径を前記スリットの幅よりも大きくしたこと、
を特徴とする花弁保護シート。
【請求項2】
前記ベースシートの前記滑り層を形成した面に、さらに滑り性向上のための凹凸を複数形成したことを特徴とする請求項1に記載の花弁保護シート。
【請求項3】
前記ベースシート及び前記滑り層の表面から裏面まで貫通する通気孔を複数形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の花弁保護シート。
【請求項4】
前記花茎挿通孔の孔径を前記スリットの幅の2〜4倍としたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の花弁保護シート。
【請求項5】
前記発泡シートを発泡ポリエチレンで形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の花弁保護シート。
【請求項6】
前記発泡シートの少なくとも一面に樹脂フィルムを貼着して前記滑り層を形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の花弁保護シート。
【請求項7】
前記凹凸を網目状又はドット状に形成したことを特徴とする請求項1〜6のいずいれかに記載の花弁保護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菊などの花の栽培を行う際に、輪台と花弁との間に介在して花弁を支持・保護する花弁保護シートに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の花弁保護シートは、花弁の成長中に花弁が輪台の間に侵入したり、輸送中や強い風等で輪台と花弁とが擦れて傷まないようにすることを目的として、輪台の上に載置して使用される。
このような花弁保護シートとしては、円形又は矩形のベースシートの中心に花茎が通る花茎貫挿通孔を有し、この花茎挿通孔から周縁に向けて一条の切れ目を形成したものが知られている(特許文献1,2参照)。
上記特許文献1,2に記載の花弁保護シートは、花弁保護シートの上面に伸長した花弁を傷めることなく取り外しを行うことが難しいことから、このような問題点を解決しようとした花弁保護シートも提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−156451号公報
【特許文献2】実開平6−61049号公報号公報
【特許文献3】実用新案登録第3132798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献3に記載の花弁保護シートは、ベースシートに複数本の分離線を形成していて、この分離線でベースシートを破ることで花弁保護シートを花から取り外すようにしていることから、花弁保護シートは一回の使い切りであり繰り返し使用することはできない。また、ベースシートを破らずに花弁保護シートを花から取り外そうとすると、花弁を傷めてしまうおそれがある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、花からの取り外しが極めて容易で花弁を傷めるおそれもなく、かつ、繰り返し使用が可能な花弁保護シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の花弁保護シートは、請求項1に記載するように、花弁を載置するベースシートと、このベースシートに形成され花茎を挿通させる花茎挿通孔と、この花茎挿通孔から前記ベースシートの周縁まで伸びるスリットとを有する花弁保護シートであって、前記ベースシートは、発泡樹脂で形成された発泡シートと
、この発泡シートの少なくとも一方の
表面上に前記発泡シートとは別に形成され、前記
花弁との摩擦を低減して花弁が前記ベースシートの上を滑らかに滑るようにする滑り層とを有し、前記スリットの幅を花茎が挿通できる寸法とするとともに、前記スリットに連通する前記花茎挿通孔の孔径を前記スリットの幅よりも大きくした構成としてある。
請求項2に記載するように、前記ベースシートの前記滑り層を形成した面に、さらに滑り性向上のための凹凸を複数形成してもよい。
【0006】
前記ベースシート及び前記滑り層には、請求項3に記載するように、表面から裏面まで貫通する通気孔を複数形成するとよい。
請求項4に記載するように、前記花茎挿通孔の孔径は前記スリットの幅の2.5〜3倍とするとよい。
前記発泡シートは、発泡倍率8倍〜40倍程度の発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等の発泡プラスチックを使用することができるが、この中でも請求項5に記載するように発泡ポリエチレンで形成するのがよい。また、請求項6に記載するように前記発泡シートの少なくとも一面に樹脂フィルムを貼着して前記滑り層を形成してもよい。
また、滑り性向上のために形成する前記凹凸は、請求項7に記載するように網目状又はドット状に密に形成するとよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の花弁保護シートは、ベースシートの上面に滑り性を高める滑り層を形成したうえに、さらに滑り性を高めるために網目状又はドット状に多数の凹凸を形成することで、花弁が花弁保護シートの上を滑らかに滑ることができ、花弁保護シートを取り外す際に花弁との摩擦を低減して花弁の傷付きを防止することができる。特に、花弁や花弁保護シートが湿っていたり濡れていたりする場合にも、花弁と花弁保護シートが密着しないので、花を移動させる際や花弁保護シートを取り外す際に花弁を傷めるおそれが小さくなる。
また、スリットの幅を茎径が挿通できる大きさとしていて、花茎挿通孔の孔径をこれより大きくしているので、花弁保護シートを引っ張るだけで容易に花から花弁保護シートを取り外すことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の包装体の好適な実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
[第一の実施形態]
【0009】
図1は、本発明の花弁保護シートの一実施形態を示す平面図、
図2は
図1の花弁保護シートの部分拡大断面図である。
花弁保護シート1は円形状のベースシート2を主たる構成部材とする。このベースシート2の中心には、花弁Pの花茎Sが挿通する花茎挿通孔4が貫通形成されている。また、この花茎挿通孔4からベースシート2の外周縁に向けてスリット5が切り込み形成されている。さらに、ベースシート2には、通気孔3が複数の貫通形成されている。
【0010】
スリット5は、花茎挿通孔4から外周縁にかけて平行で、その幅は花茎Sが挿通できる寸法とする。花茎Sの寸法は個体によって多少大きさが異なるため、想定される最大径の花茎Sの寸法に合わせるとよい。例えば、菊花の場合、茎径は最大でも10mm程度であるから、スリット5の幅は10mmとすればよい。
【0011】
花茎挿通孔4の大きさは、薬剤散布等がしやすい大きさとし、茎径の2〜4倍程度とするのがよい。例えば菊花の場合は、20mm〜40mm程度が好適である。
ベースシート2の直径は花弁の大きさに合わせればよいが、例えば花弁が菊の場合は、外径200〜250mm程度、厚さは1mm〜2mm程度とするのがよい。
【0012】
図2に示すように、ベースシート2は、発泡倍率8倍〜40倍程度で発泡させた発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリプロピレン等の発泡プラスチックで形成された発泡シート2aと、この発泡シート2aの表面に貼着された樹脂フィルム2bとから構成される。樹脂フィルム2bは発泡シート2aへの接着性が良く、花弁に対して滑り性の高いものが好ましく、例えば、高密度ポリエチレンフィルムを好適に用いることができる。発泡シート2aへの樹脂フィルム2bの貼着は接着剤による接着や熱融着によって行うことができる。
なお、リサイクル等を考慮すれば発泡シート2aと樹脂フィルム2bは同種の材料で形成するのがよく、例えば発泡シート2aを発泡ポリエチレンで形成し、樹脂フィルム2bをポリエチレンで形成するとよい。
【0013】
発泡シート2aの樹脂フィルム2bを貼着した面には、花弁との摩擦をさらに低減するために、網状又はドット状に多数の凹部2cを形成する。凹部2cは、例えば、形成しようとする凹部2cに合わせて多数の突起が形成されたエンボス加工やデボス加工等で行うことができる。
凹部2cの大きさ及び深さは、引っ掛かりを生じさせずに摩擦抵抗を軽減させて滑り性を向上させることができるものであれば特に限定されない。例えば、ベースシート2の厚みに対して1/2〜1/5程度の深さを有する凹部2cを、1〜数個/cm
2もしくは十〜数十個/cm
2の密度で形成してもよい。
なお、凹部2cのエンボス又はデボス加工に加熱ローラを用いることで、発泡シート2sへの樹脂フィルム2bの貼着と凹部2cの形成とを同時に行うことが可能である。
【0014】
上記構成の花弁保護シート1の使用方法を、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
まず、蕾が開きかけた一番外側の弁が伸びだした頃、花首の数cm下に輪台7を取付ける。そして、この輪台7の上に花弁保護シート1を載置する。輪台7から花弁保護シート1が脱落したり、位置がずれたりしないように、例えば
図3に示すようにベースシート2のスリット5の部分を適当な寸法で重ね合わせ、花弁保護シート1を傘状にして重ね合わせ部分をクリップ6等で固定してもよい。また、特に図示はしないが、スリット5の部分でクリップ6等により輪台7に花弁保護シートを直接固定するようにしてもよい。
【0015】
花弁保護シート1の上面はフィルム2b及び凹部2cにより滑り性が高いので、花弁は花弁保護シート1の上面を滑るように伸長する。クリップ5は、花弁が伸長を開始した適当な時期を見計らって取り外すとよい。花弁保護シート1は輪台7と花弁Pとの間に配置されているので、花の輸送中や強い風等により輪台7と花弁Pとが擦れて花弁が傷むことがなく、かつ、花弁保護シート1と花弁Pとの滑り性が高いので、花弁Pが花弁保護シート1と擦れて傷むこともない。また、花弁や花弁保護シート1の表面が湿っていたり濡れていたりしても、多数形成した凹部2cが花弁と花弁保護シート1との密着を抑制するので、花を移動する際や花弁保護シート1を取り外す際に花弁Pを傷めるおそれが小さい。
【0016】
花弁保護シート1を取り外すときの手順を
図4に示す。
クリップ5を取り外すことで、(a)に示すように花弁保護シート1は平面状になり、スリット5の反対側から花弁保護シート1を(b)の矢印方向に引っ張ることで、花弁が花弁保護シート1上を滑りながら、花弁保護シート1が移動を開始する。そして、花茎Sがスリット5に沿って相対的に移動しながら、(c)に示すように花弁P及び花茎Sが花弁保護シート1から脱出する。花弁保護シート1を花弁の満開頃まで使用しても、取り外しの際に花弁に傷みを生じさせることはない。
【0017】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の花弁保護シートは上記の説明に限定されない。
例えば、花弁挿通孔4はベースシート2の中心に穿設するものとして説明したが、輪台7と花弁Pとの接触を防止し、かつ、花弁保護シート1で花弁Pを支持できる範囲内で、花弁挿通孔4をベースシート2の中心位置からずらすことができる。
また、滑り層の形成は樹脂フィルム2bの貼着によるものに限らず、例えば滑り性を高める塗料やその他のコーティングを発泡シート2aの表面に塗布等してもよいし、発泡シート2aの表面を滑り層として形成してもよい。
また、上記の説明では凹部2cを形成するとして説明したが、凸部を形成するものとしてもよく、凹部と凸部を交互に形成するものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明の花弁保護シートは、菊のように輪台等によって花弁を支持する必要のある花の保護に広範に適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の花弁保護シートの一実施形態を示す平面図である。
【
図2】
図1の花弁保護シートの部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の花弁保護シートの使用方法を説明する図で、傘状にして輪台に載置した状態を示す斜視図である。
【
図4】本発明の花弁保護シートの使用方法を説明する図で、花から花弁保護シートを取り外すときの手順を説明する平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 花弁保護シート
2 ベースシート
2a 発泡シート
2b 樹脂フィルム
2c 凹部
3 通気孔
4 花弁挿通孔
5 スリット
6 クリップ
7 輪台
P 花弁
S 花茎