特許第6144114号(P6144114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144114中性子捕捉療法装置、及び被照射体の位置補正方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144114
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】中性子捕捉療法装置、及び被照射体の位置補正方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20170529BHJP
   G21K 5/02 20060101ALI20170529BHJP
   G21K 5/00 20060101ALI20170529BHJP
   G01T 1/29 20060101ALI20170529BHJP
   G21K 1/04 20060101ALI20170529BHJP
   H05H 3/06 20060101ALI20170529BHJP
   G01T 3/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   A61N5/10 M
   A61N5/10 H
   G21K5/02 N
   G21K5/00 R
   G01T1/29 C
   G01T1/29 B
   G21K1/04 R
   H05H3/06
   G01T3/06
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-108342(P2013-108342)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-226331(P2014-226331A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2015年12月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 康
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0309242(US,A1)
【文献】 特開2013−061295(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/014671(WO,A1)
【文献】 特表2012−506734(JP,A)
【文献】 特表2009−502245(JP,A)
【文献】 特開2012−194146(JP,A)
【文献】 T. Matsumoto et al.,A new monitoring system for the thermal neutron fluence rate and gamma dose rate in boron neutron ca,Physics in Medicine and Biology,Institute of Physics,1988年 4月,Vol. 33, No. 4,p. 427-435
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性子線を被照射体に照射する中性子捕捉療法装置であって、
前記中性子線を生成する中性子線発生部と、
前記中性子線発生部が生成した前記中性子線を前記被照射体に向かって照射する中性子線照射部と、
前記中性子線照射部が前記中性子線を前記被照射体に照射している際に前記被照射体の姿勢を検出する姿勢検出部と、
前記姿勢検出部が検出した前記被照射体の姿勢に応じて、前記中性子線照射部に対する前記被照射体の位置を補正する位置補正部と、を備え、
前記姿勢検出部は、前記中性子線照射部が照射した前記中性子線を検出可能な第1の中性子線検出部を備えており、
前記第1の中性子線検出部は前記被照射体に貼り付けられ、前記位置補正部は、前記姿勢検出部の前記第1の中性子線検出部で検出する中性子線の状態の変化に基づき、被照射体の位置を補正することを特徴とする中性子捕捉療法装置。
【請求項2】
前記被照射体は、前記中性子線照射部に対して移動可能な治療台上で載置されており、
前記位置補正部は、前記治療台を移動させることによって前記被照射体の位置を補正することを特徴とする請求項1に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項3】
前記姿勢検出部は、前記中性子線照射部が照射した前記中性子線を検出可能な第2の中性子線検出部を備えており、
前記第2の中性子線検出部は、前記被照射体の周囲で固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項4】
前記中性子線発生部は、荷電粒子線を出射する加速器と、前記荷電粒子線が照射されることによって前記中性子線を生成するターゲットとを備えており、
前記ターゲットに照射される前記荷電粒子線の電流を検出する電流モニタを更に備えたことを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の中性子捕捉療法装置。
【請求項5】
前記中性子線照射部は、前記中性子線の照射野を整形するための開口を備えたコリメータを有しており、
前記コリメータにおける前記中性子線の出口と前記中性子線発生部との間には、前記中性子線発生部で生成した前記中性子線を検出可能な第3の中性子線検出部が設けられていることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の中性子捕捉療法装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性子線を被照射体に照射する中性子捕捉療法装置、及び被照射体の位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中性子線の照射によってがん細胞を死滅させる中性子捕捉療法として、硼素化合物を用いた硼素中性子捕捉療法(BNCT:Boron Neutron Capture Therapy)が知られている。硼素中性子捕捉療法では、硼素を含む薬剤を患者に投与してがん細胞が存在する部位に硼素を集積させ、この硼素が集積した部位に中性子線を照射してがん細胞を死滅させる。
【0003】
このような中性子捕捉療法で用いられる中性子捕捉療法装置として、特許文献1には、照射対象に向けて中性子線を出射する中性子出射装置と、中性子出射装置から出射された中性子線を照射対象まで誘導する真空導管と、中性子線を集束し中性子線の指向性を高めるコリメータとを備えた治療用中性子照射装置が記載されている。特許文献1の治療用中性子照射装置では、照射対象に中性子線の試験照射を行う試験照射工程が行われ、この試験照射工程では、照射対象に試験的に中性子線の照射を行うと共に中性子線の照射を行ったときの実際の放射化量を測定する。具体的には、照射対象における標的部位の表面及び深部に中性子測定用の金線を装着し、一定時間中性子線の照射を行った後に金線を引き抜くと共に、金線の放射化量を測定することによって、試験照射工程を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−233168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、中性子捕捉療法における中性子線の照射時間は、他の放射線治療における放射線の照射時間と比較して長い傾向がある。すなわち、他の放射線治療では放射線の照射時間が数分程度であるのに対し、中性子捕捉療法では中性子線の照射時間が数十分から一時間程度である。また、中性子捕捉療法で治療を精度よく行うためには、中性子線の照射時に被照射体を治療台上で拘束する必要がある。
【0006】
このように、中性子捕捉療法では被照射体に対する中性子線の照射時間が長く、且つ、中性子線の照射中は患者を治療台上で拘束しなければならないので、長時間患者を拘束することとなり患者に苦痛を与えてしまうという問題がある。また、患者に苦痛を与えないために患者を拘束せずに治療を行うことも考えられるが、中性子線の照射中に患者が動いてしまう可能性がある。このように中性子線の照射中に患者が動くと、患者に照射される中性子線の線量が変化してしまうので、治療の精度が低下する可能性がある。
【0007】
このような問題に鑑み、本発明は、中性子線の照射中に患者が動いても治療の精度低下を抑制できる中性子捕捉療法装置、及び患者(被照射体)の位置補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の中性子捕捉療法装置は、中性子線を被照射体に照射する中性子捕捉療法装置であって、中性子線を生成する中性子線発生部と、中性子線発生部が生成した中性子線を被照射体に向かって照射する中性子線照射部と、中性子線照射部が中性子線を被照射体に照射している際に被照射体の姿勢を検出する姿勢検出部と、姿勢検出部が検出した被照射体の姿勢に応じて、中性子線照射部に対する被照射体の位置を補正する位置補正部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の中性子捕捉療法装置によれば、中性子線の照射中に姿勢検出部が被照射体の姿勢を検出すると共に、被照射体の姿勢に応じて位置補正部が被照射体の位置を補正する。よって、中性子線の照射中に被照射体が動いたとしても、姿勢検出部が被照射体の動きを検出すると共に位置補正部が被照射体の位置を補正するので、中性子線照射部に対する患部付近の位置ずれを抑制させることが可能となる。従って、中性子線の照射中に被照射体が動いても被照射体に照射する中性子線の線量が変化しにくくなるので、治療の精度低下を抑制させることができる。
【0010】
また、被照射体は、中性子線照射部に対して移動可能な治療台上で載置されており、位置補正部は、治療台を移動させることによって被照射体の位置を補正してもよい。このように位置補正部が治療台を移動させて被照射体の位置を補正することによって、例えば治療台を自動的に移動させたり遠隔操作で治療台を移動させたりすることが可能となるので、被照射体の位置補正を容易に行うことができる。
【0011】
また、姿勢検出部は、中性子線照射部が照射した中性子線を検出可能な第1の中性子線検出部を備えており、第1の中性子線検出部は、被照射体に貼り付けられてもよい。ところで、中性子線の照射中に被照射体が動くと被照射体付近における中性子線の線量が変化する。よって、上記のように第1の中性子線検出部を被照射体に貼り付けて中性子線の線量を検出すれば、中性子線の線量の変化を検出することで被照射体の姿勢変化を検出することができる。従って、中性子線照射時における被照射体の動きを検出することができ、被照射体が動いたときに被照射体の位置補正を行うことができるので、治療の精度低下を防止することができる。
【0012】
また、姿勢検出部は、中性子線照射部が照射した中性子線を検出可能な第2の中性子線検出部を備えており、第2の中性子線検出部は、被照射体の周囲で固定されていてもよい。このように第2の中性子線検出部を被照射体の周囲で固定させておけば、被照射体の周囲における中性子線の線量を検出することによって、中性子線照射時における被照射体の動きを検出することができる。
【0013】
また、中性子線発生部は、荷電粒子線を出射する加速器と、荷電粒子線が照射されることによって中性子線を生成するターゲットとを備えており、ターゲットに照射される荷電粒子線の電流を検出する電流モニタを更に備えていてもよい。ところで、被照射体近傍における中性子線の線量の変化を検出して被照射体の姿勢変化を検出する場合、この中性子線の変化が中性子線発生部の不具合に起因するものであるときに被照射体の姿勢変化を誤って検出してしまう可能性がある。しかしながら、本発明のように、ターゲットに照射される荷電粒子線の電流を検出する電流モニタを備えていれば、荷電粒子線の電流変化を検出することで中性子線発生部の不具合を検知することができる。よって、被照射体近傍における中性子線の線量が変化し且つ電流モニタの検出値が変化した場合には、被照射体近傍における中性子線の線量が変化した原因を中性子線発生部の不具合と特定することができる。従って、電流モニタで電流変化を検出することにより、被照射体の動きを誤検知する可能性を低減させることができる。
【0014】
また、中性子線照射部は、中性子線の照射野を整形するための開口を備えたコリメータを有しており、コリメータにおける中性子線の出口と中性子線発生部との間には、中性子線発生部で生成した中性子線を検出可能な第3の中性子線検出部が設けられていてもよい。このように、中性子線発生部で生成した中性子線を検出可能な第3の中性子線検出部を備えていれば、中性子線発生部で生成した中性子線を検出することで中性子線発生部の不具合を検知することができる。よって、被照射体近傍における中性子線の線量を検出して被照射体の姿勢を検出する場合において、被照射体近傍における中性子線の線量が変化し且つ第3の中性子線検出部における検出値が変化したときには、被照射体近傍における中性子線の線量が変化した原因を中性子線発生部の不具合と特定することができる。従って、第3の中性子線検出部が中性子線発生部側における中性子線の線量を検出することにより、被照射体の動きを誤検知する可能性を低減させることができる。
【0015】
本発明に係る被照射体の位置補正方法は、中性子線を被照射体に照射する中性子捕捉療法装置を用いて行う被照射体の位置補正方法であって、中性子線を生成する中性子線発生ステップと、中性子線発生ステップで生成した中性子線を被照射体に向かって照射する中性子線照射ステップと、中性子線が被照射体に照射されている際に被照射体の姿勢を検出する姿勢検出ステップと、姿勢検出ステップで検出された被照射体の姿勢に応じて被照射体の位置を補正する位置補正ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る被照射体の位置補正方法によれば、中性子線の照射中に姿勢検出ステップで被照射体の姿勢を検出すると共に位置補正ステップで被照射体の位置を補正する。よって、中性子線の照射中に被照射体が動いたとしても、被照射体の動きが検出されると共に被照射体の位置が補正されるので、中性子線照射部に対する患部付近の位置ずれを抑制することが可能となる。従って、中性子線の照射中に被照射体が動いても被照射体に照射する中性子線の状態が変化しにくくなるので、治療の精度低下を抑制させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、中性子線の照射中に患者が動いても治療の精度低下を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態の中性子捕捉療法装置の配置を示す図である。
図2図1の中性子捕捉療法装置における中性子線照射部近傍を示す図である。
図3図1の中性子捕捉療法装置における治療台を示す斜視図である。
図4】シンチレーション検出器を示す図である。
図5】第2実施形態の中性子捕捉療法装置における中性子線照射部近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る中性子捕捉療法装置及び被照射体の位置補正方法の実施形態について詳細に説明する。
【0020】
(第1実施形態)
図1及び図2に示されるように、硼素中性子捕捉療法を用いたがん治療を行う中性子捕捉療法装置1は、硼素(10B)が投与された患者(被照射体)Sの硼素が集積した部位に中性子線を照射してがん治療を行う装置である。中性子捕捉療法装置1は、治療台3に拘束された患者Sに中性子線Nを照射して患者Sのがん治療を行う照射室2を有しており、照射室2内には患者Sを撮影するためのカメラ4が配置されている。このカメラ4は、例えばCCDカメラである。
【0021】
患者Sを治療台3に拘束する等の準備作業は、照射室2外の準備室(不図示)で実施され、患者Sが拘束された治療台3が準備室から照射室2に移動される。また、中性子捕捉療法装置1は、治療用の中性子線Nを発生させる中性子線発生部10と、照射室2内で治療台3に拘束された患者Sに中性子線Nを照射させる中性子線照射部20とを備えている。
【0022】
中性子線発生部10は、荷電粒子線Lを作り出すサイクロトロン11と、サイクロトロン11が作り出した荷電粒子線Lを輸送するビーム輸送路12と、荷電粒子線Lを走査してターゲットTに対する荷電粒子線Lの照射制御を行う荷電粒子線走査部13と、荷電粒子線Lの電流を測定する電流モニタ16とを備えている。サイクロトロン11及びビーム輸送路12は、略長方形状を成す荷電粒子線生成室14の室内に配置されており、この荷電粒子線生成室14は、コンクリート製の遮蔽壁Wで覆われた閉鎖空間である。また、荷電粒子線走査部13は例えば荷電粒子線LのターゲットTに対する照射位置を制御し、電流モニタ16はターゲットTに照射される荷電粒子線Lの電流を測定する。
【0023】
サイクロトロン11は、陽子等の荷電粒子を加速して陽子線等の荷電粒子線Lを生成する加速器である。このサイクロトロン11は、例えば、ビーム半径が40mmであり、60kW(=30MeV×2mA)の荷電粒子線Lを生成する能力を有している。なお、サイクロトロン11に代えて、シンクロトロン、シンクロサイクロトロン又はライナック等の他の加速器を用いてもよい。
【0024】
ビーム輸送路12の一端は、サイクロトロン11に接続されている。ビーム輸送路12は、荷電粒子線Lを調整するビーム調整部15を備えている。ビーム調整部15は、荷電粒子線Lの軸を調整する水平型ステアリング及び水平垂直型ステアリングと、荷電粒子線Lの発散を抑制する四重極電磁石と、荷電粒子線Lを整形する四方向スリット等を有している。なお、ビーム輸送路12は荷電粒子線Lを輸送する機能を有していればよく、ビーム調整部15は無くてもよい。
【0025】
ビーム輸送路12によって輸送された荷電粒子線Lは、荷電粒子線走査部13によって照射位置を制御されてターゲットTに照射される。なお、荷電粒子線走査部13を省略して、常にターゲットTの同じ箇所に荷電粒子線Lを照射するようにしてもよい。ターゲットTは、荷電粒子線Lが照射されることによって中性子線Nを発生させる。ターゲットTは、例えば、ベリリウム(Be)、リチウム(Li)、タンタル(Ta)又はタングステン(W)で構成されており、直径160mmの円板状を成している。ターゲットTが発生させた中性子線Nは、中性子線照射部20によって照射室2内の患者Sに向かって照射される。
【0026】
中性子線照射部20は、ターゲットTから出射された中性子線Nを減速する減速材21と、中性子線N及びガンマ線等の放射線が外部に放出されないように遮蔽する遮蔽体22とを備えており、この減速材21と遮蔽体22とでモデレータが構成されている。
【0027】
減速材21は例えば異なる複数の材料から成る積層構造とされており、減速材21の材料は荷電粒子線Lのエネルギー等の諸条件によって適宜選択される。具体的には、例えばサイクロトロン11からの出力が30MeVの陽子線でありターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材21の材料は鉛、鉄、アルミニウム又はフッ化カルシウムとすることができる。また、サイクロトロン11からの出力が11MeVの陽子線でありターゲットTとしてベリリウムターゲットを用いる場合には、減速材21の材料は重水(D2O)又はフッ化鉛とすることができる。
【0028】
遮蔽体22は、減速材21を囲むように設けられており、中性子線N、及び中性子線Nの発生に伴って生じたガンマ線等の放射線が遮蔽体22の外部に放出されないように遮蔽する機能を有する。遮蔽体22は、荷電粒子線生成室14と照射室2とを隔てる壁W1に少なくともその一部が埋め込まれている。また、照射室2と遮蔽体22との間には、照射室2の側壁面の一部を成す壁体23が設けられている。壁体23には、中性子線Nの出力口となるコリメータ取付部23aが設けられている。このコリメータ取付部23aには、中性子線Nの照射野を規定するためのコリメータ31が固定されている。
【0029】
以上の中性子線照射部20では、荷電粒子線LがターゲットTに照射され、これに伴いターゲットTが中性子線Nを発生させる。ターゲットTによって発生した中性子線Nは、減速材21内を通過している際に減速され、減速材21から出射された中性子線Nは、コリメータ31を通過して治療台3上の患者Sに照射される。ここで、中性子線Nとしては、比較的エネルギーが低い熱中性子線又は熱外中性子線を用いることができる。
【0030】
治療台3は、中性子捕捉療法で用いられる載置台として機能し、患者Sを載置したまま準備室(不図示)から照射室2へ移動可能となっている。治療台3は、治療台3の土台を構成する土台部32と、土台部32を床面上で移動可能とするキャスタ33と、患者Sを載置するための天板34と、天板34を土台部32に対して相対的に移動させるためのロボットアーム35とを備えている。
【0031】
図3に示されるように、土台部32は、直方体状の基礎部32aと、基礎部32aの上部に位置しロボットアーム35を支持する直方体状の支持部32bとを備えている。平面視において支持部32bは基礎部32aの内部に収まっており、支持部32bの上面にロボットアーム35が固定されている。キャスタ33は、基礎部32aの下部に4個取り付けられている。ここで、キャスタ33に対してモータ等の駆動力を与えるようにしてもよく、この場合キャスタ33を容易に床面上で転動させることができるので水平方向への治療台3の移動が容易になる。
【0032】
ロボットアーム35は、天板34を土台部32に対して相対的に移動させるためのものであり、天板34の上に拘束された患者Sをコリメータ31に対して相対移動可能となっている。ロボットアーム35は、土台部32の上面に配置された昇降部35aと、一端側が昇降部35aに対して鉛直回転軸線A1回りに回転可能に設けられた第1のアーム部35bと、第1のアーム部35bの他端側に対して鉛直回転軸線A2回りに回転可能に設けられた第2のアーム部35cとを備えている。このようにロボットアーム35は、水平方向に離間した2つの鉛直回転軸線A1,A2を有している。
【0033】
天板34は、平面視において長方形状となっており、天板34の長手方向の長さは、患者Sが天板34の上に体を横たえることが可能な長さ(例えば2m)となっている。天板34は、ロボットアーム35が移動及び回転することによって土台部32に対する位置を三次元的に調整可能となっている。天板34は、第2のアーム部35cに対して鉛直回転軸線A3回りに回転可能に取り付けられている。また、天板34には、患者Sを天板34上で拘束するための拘束具(不図示)が設けられていてもよい。
【0034】
また、上述したロボットアーム35では、第1のアーム部35bを昇降部35aに対して鉛直回転軸線A1回りに回転させ、第2のアーム部35cを第1のアーム部35bに対して鉛直回転軸線A2回りに回転させ、天板34を第2のアーム部35cに対して鉛直回転軸線A3回りに回転させることにより、水平面内において所望の位置に天板34を移動させることができる。更に、昇降部35aを土台部32の支持部32bに対して上下動させることにより、天板34を土台部32に対して鉛直方向に移動させることができる。このように、土台部32に対して天板34を三次元的に移動させることができるので、コリメータ31に対する患者Sの姿勢の自由度を高めることが可能となっている。
【0035】
天板34上で拘束された患者Sに対しては、コリメータ31の開口31aを通過した中性子線Nが照射される。コリメータ31は、例えば略直方体状となっており、その中央部に中性子線Nの照射範囲を規定するための開口31aを有している。コリメータ31の外形形状は壁体23におけるコリメータ取付部23aの内面形状に対応しており、コリメータ31は壁体23のコリメータ取付部23aに嵌った状態で固定されている。
【0036】
ところで、以上のように構成される中性子捕捉療法装置1を用いて行う中性子捕捉療法では、他の放射線を用いて治療を行う場合の放射線の照射時間と比較して患者Sに対する中性子線Nの照射時間が長く、且つ、中性子線Nの照射中は患者Sを治療台3上で拘束する必要がある。このように、長時間患者Sを治療台3上で拘束することとなるので、患者Sに苦痛を与えてしまうことがある。また、患者Sに苦痛を与えないために患者Sを拘束せずに治療を行うことも考えられるが、中性子線Nの照射中に患者Sの患部が動いてしまう可能性がある。中性子線Nの照射中に患者Sの患部が動くと、患者Sに照射する中性子線Nの線量が変化してしまうので、治療計画通りの中性子線Nの照射を行えず、治療の精度が低下する可能性がある。
【0037】
そこで、上述した各問題を解消するために、中性子捕捉療法装置1では、治療台3上における患者Sの姿勢を検出する姿勢検出部40と、中性子線照射部20に対する患者Sの位置を補正する位置補正部50とを備えている。姿勢検出部40及び位置補正部50は、例えば、照射室2とは別室のモニタリングルーム(不図示)内に設けられたコンピュータに内蔵されているソフトウェアであり、姿勢検出部40による患者Sの姿勢検出と位置補正部50による患者Sの位置補正とを自動的に行えるようになっている。
【0038】
図2及び図4に示されるように、姿勢検出部40は、シンチレーション検出器(第1の中性子線検出部)41に接続されている。シンチレーション検出器41は、入射された中性子線Nを光に変換するシンチレータ41aと、シンチレータ41aからの光を伝達するライトガイド41bと、ライトガイド41bによって伝達された光を光電変換して電気信号Eを出力する光検出器41cとを備えている。
【0039】
シンチレータ41aは、シンチレータ41aに入射した中性子線Nを光に変換する蛍光体であり、入射した中性子線Nの量に応じて内部結晶が励起状態となりシンチレーション光を発生させる。シンチレータ41aは、例えば、患者Sの頭部にテープで貼り付けられ、患者Sの頭部に照射された中性子線Nを受けて発光する。ライトガイド41bは、例えば、フレキシブルな光ファイバの束で構成されており、照射室2から別室のモニタリングルームにまで延びている。ライトガイド41bは、シンチレータ41aで発生した光をモニタリングルーム内の光検出器41cに伝達させる。光検出器41cは、ライトガイド41bからの光を検出すると共に電気信号Eを姿勢検出部40に出力する。光検出器41cとしては、例えば光電管や光電子増倍管等を用いることができる。
【0040】
姿勢検出部40は、光検出器41cから電気信号Eを受けることによって、治療台3上に載置された患者Sの姿勢を検出する。すなわち、治療台3上で患者Sが動くとシンチレータ41a周辺の中性子場が変動するので、シンチレータ41aの光信号と電気信号Eが変化する。また、姿勢検出部40は、シンチレータ41a周辺における中性子場の状態と患者Sの姿勢状態とを対応付けたデータを予め保持しているので、シンチレータ41aが検出した中性子場の状態から患者Sの姿勢を特定できるようになっている。よって、姿勢検出部40は、中性子場の変動に伴う電気信号Eの変化を検出することによって患者Sの患部付近の動きを検出し、患者Sの患部付近の動きを検出すると患者Sの患部付近の動きを検出した旨の信号を位置補正部50に出力する。
【0041】
また、姿勢検出部40には、上述した電流モニタ16から、荷電粒子線Lの電流に関する信号が出力される。姿勢検出部40は、電流モニタ16から電流に関する信号が変化した旨の信号を受けていないときは、上記のように患者Sの姿勢を検出する。しかし、姿勢検出部40は、電流モニタ16から電流が変化した旨の信号を受けたときは、中性子線発生部10に不具合が発生したものとして、患者Sの姿勢検出を停止すると共に中性子線発生部10による中性子線Nの出力を停止させる。
【0042】
位置補正部50は、患者Sの患部付近の動きを検出した旨の信号を姿勢検出部40から受けると、治療台3のロボットアーム35における昇降部35a(図3参照)と、第1及び第2のアーム部35b,35cに信号を出力して、昇降部35a及びアーム部35b,35cを駆動させることにより中性子線照射部20に対する患者Sの位置を補正する。このとき、位置補正部50は、患者Sが動くことによって変化した患者Sに照射される中性子線Nの線量を元に戻すように患者Sの位置補正を行う。すなわち、位置補正部50は、中性子線照射部20に対する患者Sの位置を補正して、治療計画通りの中性子線Nが患者Sの患部に照射されるように患者Sの位置を制御する。
【0043】
次に、中性子捕捉療法装置1における患者Sの位置補正方法について詳細に説明する。以下では、患者Sの患部(がん細胞)が患者Sの頭部内に存在するものとして説明する。まず、患者Sを治療台3に載置する等の準備作業を照射室2とは別室の準備室(不図示)で行う。そして、患者Sを載置した治療台3を照射室2内に移動した後には、ロボットアーム35を駆動することにより、患者Sの頭部がコリメータ31の開口31aに近接し中性子線Nの照射位置が患者Sの患部に位置するように、コリメータ31に対する患者Sの位置合わせを行う。その後、中性子線Nを患者Sに照射して治療を開始する。なお、患者Sの患部が患者Sの頭部内に存在する場合は、上記のように患者Sの頭部をコリメータ31に接するように患者Sの位置決めを行うが、患部が他の部位に存在する場合には、その部位をコリメータ31に接するように患者Sの位置決めを行う。
【0044】
具体的には、図1に示されるようにサイクロトロン11が荷電粒子線Lを発生させて、この荷電粒子線Lをビーム輸送路12及び荷電粒子線走査部13を介してターゲットTに照射させる。そして、図2に示されるようにターゲットTが中性子線Nを発生させる(中性子線発生ステップ)。ターゲットTで発生した中性子線Nは、減速材21で減速されてからコリメータ31の開口31aで照射範囲が規定された後に患者Sに向かって照射される(中性子線照射ステップ)。
【0045】
このように患者Sに向かって中性子線Nが照射されている時に治療台3上で患者Sが動くと、それに伴ってシンチレータ41a周辺における中性子場が変動するので、シンチレーション検出器41から出力される電気信号E(図4参照)が変化する。姿勢検出部40は、上記電気信号Eの変化を検出することで患者Sの姿勢を検出する(姿勢検出ステップ)。
【0046】
そして、姿勢検出部40が患者Sの姿勢を検出すると、位置補正部50は、姿勢検出部40が検出した患者Sの姿勢に応じて、ロボットアーム35の昇降部35a及びアーム部35b,35cを駆動させることにより中性子線照射部20に対する患者Sの位置補正を行う(位置補正ステップ)。この位置補正では、例えば、中性子線照射部20に対するシンチレータ41aの位置が正規の位置(治療計画通りの線量を患者Sに照射できる位置)よりも下側にずれることによってシンチレーション検出器41から出力される電気信号Eが変化した場合には、昇降部35aによって患者Sを上方に移動させる。このように、中性子線Nの照射中には、治療計画通りの中性子線Nが患者Sに照射されるように、姿勢検出部40による患者Sの姿勢検出と位置補正部50による患者Sの位置補正とが行われる。
【0047】
以上、中性子捕捉療法装置1及び中性子捕捉療法装置1を用いた患者Sの位置補正方法によれば、中性子線Nの照射中に姿勢検出部40が患者Sの姿勢を検出すると共に、患者Sの姿勢に応じて位置補正部50が患者Sの位置を補正する。よって、中性子線Nの照射中に患者Sが動いたとしても、姿勢検出部40が患者Sの患部付近の動きを検出すると共に位置補正部50が患者Sの位置を補正するので、中性子線照射部20に対する患部付近の位置ずれを抑制することが可能となる。
【0048】
従って、中性子線Nの照射中に患者Sが動いても患者Sに照射する中性子線Nの線量が変化しにくくなるので、治療の精度低下を抑制させることができる。更に、患者Sが動いても中性子線照射部20に対する患者Sの位置が補正されるので、治療台3上で患者Sを強く拘束する必要がなくなる。従って、拘束による患者Sの苦痛を和らげることも可能となる。
【0049】
また、患者Sは、中性子線照射部20に対して移動可能な治療台3上に載置されており、位置補正部50は、治療台3のロボットアーム35を駆動することによって患者Sの位置を補正している。このように、位置補正部50による位置補正は自動化されているので、患者Sの位置補正を容易に行うことができる。また、ロボットアーム35を備えることにより、中性子線照射部20に対する患者Sの位置を三次元的に移動可能となっているので、位置補正部50による高精度な位置補正が実現されている。
【0050】
また、姿勢検出部40では、患者Sに貼り付けられたシンチレータ41aを用いて中性子線Nの状態変化を検出することによって患者Sの姿勢を検出している。シンチレータ41aは、患者Sの患部付近に貼り付けられる。よって、患者Sの患部の位置が変わると確実にシンチレータ41a周辺の中性子場が変動するので、姿勢検出部40は患者Sの患部付近の位置の変化を検出することができる。このように、中性子線N照射時における患者Sの患部付近の動きを検出することができ、患者Sが動いたときに患者Sの位置補正を行うことができるので、治療の精度低下を防止することができる。
【0051】
また、中性子捕捉療法装置1では、ターゲットTに照射される荷電粒子線Lの電流を測定する電流モニタ16を備えているので、荷電粒子線Lの電流変化を測定することで中性子線発生部10の不具合を検知することができる。よって、シンチレーション検出器41から出力される電気信号Eが変化し且つ電流モニタ16の検出値が変化した場合には、シンチレーション検出器41から出力される電気信号Eが変化した原因を中性子線発生部10の不具合と特定することができる。従って、電流モニタ16で電流変化を測定することにより、姿勢検出部40が患者Sの患部付近の動きを誤検知する可能性を低減させることができる。
【0052】
(第2実施形態)
図5に示されるように、第2実施形態の中性子捕捉療法装置61が第1実施形態の中性子捕捉療法装置1と異なる点として、シンチレータ41aが患者Sに貼り付けられたシンチレーション検出器41に代えてシンチレータ71a,81aが患者Sの周囲で固定されたシンチレーション検出器(第2の中性子線検出部)71,81を用いた点と、電流モニタ16に代えてシンチレーション検出器(第3の中性子線検出部)101を用いた点が挙げられる。よって、以下では第1実施形態と重複する説明を省略し、シンチレーション検出器71,81,101について重点的に説明する。
【0053】
シンチレーション検出器71,81は、主として患者Sから反射又は散乱された中性子線Nを測定する。シンチレーション検出器71は、第1実施形態のシンチレーション検出器41と同様、シンチレータ71aと、ライトガイド71bと、光検出器71cとを備えている。シンチレーション検出器71が第1実施形態のシンチレーション検出器41と異なる点として、シンチレータ71aが患者Sの頭部付近に位置する支持部37で固定されている点が挙げられる。支持部37は、天板34から上方に延在するように天板34の側面に取り付けられている。
【0054】
シンチレーション検出器81は、第1実施形態のシンチレーション検出器41と同様、シンチレータ81aと、ライトガイド81bと、光検出器81cとを備えている。シンチレーション検出器81が第1実施形態のシンチレーション検出器41と異なる点は、シンチレータ81aが患者Sの頭部付近における天板34の側面に取り付けられている点である。
【0055】
また、シンチレーション検出器101も、第1実施形態のシンチレーション検出器41と同様、シンチレータ101aと、ライトガイド101bと、光検出器101cとを備えている。シンチレーション検出器101は、患者Sに照射された中性子線Nではなく、中性子線発生部10が発生させた中性子線Nを測定するために設けられている。
【0056】
シンチレータ101aは、コリメータ31の開口31aと連通する遮蔽体22の開口22aに形成された孔部22b内で固定されており、モデレータの孔部22b内で埋まった状態で固定されている。このシンチレータ101aは、ターゲットTが発生させた中性子線Nを測定する。ライトガイド101bはシンチレータ101aから遮蔽体22の外部に向かって延びており、例えば、照射室2の室外のモニタリングルーム内に設けられた光検出器101cに接続されている。光検出器101cは、シンチレータ101aによる中性子線Nの検出に伴って電気信号E3を姿勢検出部90に出力する。姿勢検出部90は、光検出器101cから電気信号E3を受けることによって、中性子線発生部10が発生させた(中性子線発生部10から照射された)中性子線Nの線量を測定できるようになっている。
【0057】
姿勢検出部90は、第1実施形態の姿勢検出部40と同様に、各光検出器71c,81cから電気信号E1,E2を受けて患者Sの姿勢を検出し、患者Sの患部付近の動きを検出すると患者Sの患部付近の動きを検出した旨の信号を位置補正部50に出力する。なお、姿勢検出部90における患者Sの姿勢検出方法は、第1実施形態の姿勢検出部40における患者Sの姿勢検出方法と同じであるため詳細な説明を省略する。
【0058】
また、姿勢検出部90は、中性子線発生部10から照射される中性子線Nの線量が変化した旨の信号をシンチレーション検出器101から受けていないときは患者Sの姿勢を検出する。しかし、姿勢検出部90は、中性子線発生部10から照射される中性子線Nの線量が変化した旨の信号をシンチレーション検出器101から受けたときは、中性子線発生部10に不具合が発生したものとして、患者Sの姿勢検出を停止すると共に中性子線発生部10による中性子線Nの出力を停止させる。
【0059】
以上、中性子捕捉療法装置61及び中性子捕捉療法装置61を用いた患者Sの位置補正方法によれば、中性子線Nの照射中に姿勢検出部90が患者Sの姿勢を検出すると共に、患者Sの姿勢に応じて位置補正部50が患者Sの位置を補正する。よって、中性子線Nの照射中に患者Sが動いたとしても、姿勢検出部90が患者Sの患部付近の動きを検出すると共に位置補正部50が患者Sの位置を補正するので、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0060】
また、中性子捕捉療法装置61において、シンチレーション検出器71,81は、患者Sの周囲で固定されているので、患者Sの周囲における中性子線Nの線量を測定することによって中性子線Nの照射時における患者Sの患部付近の動きを検出することができる。また、各シンチレータ71a,81aは患者Sの周囲で固定されているので、患者Sが動いても各シンチレータ71a,81aが剥がれ落ちることはない。更に、患者Sの周囲に複数のシンチレータ71a,81aが固定されているので、患者Sから反射又は散乱した中性子線Nを複数の箇所で検出することが可能となる。よって、患者S周辺の中性子場を立体的に検出することができるので、患者Sの動きの検出精度、及び患者Sの位置補正の精度を向上させることができる。
【0061】
また、中性子捕捉療法装置61では、中性子線発生部10が発生させた中性子線Nを測定可能なシンチレーション検出器101を備えているので、中性子線発生部10が発生させた(中性子線発生部10から照射された)中性子線Nを測定することで中性子線発生部10の不具合を検知することができる。よって、患者S近傍における中性子線Nの線量を測定して患者Sの姿勢を検出する場合において、患者S近傍における中性子線Nの線量が変化し且つシンチレーション検出器101から出力される電気信号E3が変化したときには、患者S近傍における中性子線Nの線量が変化した原因を中性子線発生部10の不具合と特定することができる。従って、シンチレーション検出器101が中性子線発生部10から照射された中性子線Nの線量を測定することにより、姿勢検出部90が患者Sの動きを誤検知する可能性を低減させることができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形したものであってもよい。
【0063】
上記実施形態では、位置補正部50が治療台3のロボットアーム35を駆動させて中性子線照射部20に対する患者Sの位置補正を行ったが、患者Sの位置補正方法は上記実施形態に限定されない。例えば、音声で患者Sに姿勢の修正を促すことで患者Sの位置補正を行ってもよい。更に、患者Sの位置補正に加えて、患者Sに対する中性子線Nの照射時間や照射位置を変更してもよい。
【0064】
また、上記実施形態ではシンチレーション検出器41,71,81で患者Sの姿勢を検出したが、患者Sの姿勢検出方法も上記に限定されない。例えば、照射室2内のカメラ4で患者Sの姿勢を検出してもよいし、又は光モニタで患者Sの姿勢を検出してもよい。
【0065】
また、第1実施形態のシンチレータ41aは患者Sに貼り付けられ、第2実施形態のシンチレータ71a,81aは患者Sの周囲で固定されていたが、これらのシンチレータ41a,71a,81aを同時に用いることも可能である。また、第1実施形態の電流モニタ16を第2実施形態の中性子捕捉療法装置61に設けてもよいし、第2実施形態のシンチレーション検出器101を第1実施形態の中性子捕捉療法装置1に設けてもよい。更に、シンチレーション検出器41,71,81に代えて、別の中性子線検出器を用いてもよい。
【0066】
また、第1実施形態のシンチレータ41aは患者Sの頭部以外の箇所に貼り付けられていてもよく、シンチレータ41aを貼り付ける手段もテープに限定されない。すなわち、シンチレータ41aを例えば粘着シールで患者Sに貼り付けてもよい。更に、患者Sに装着されたヘッドギア等にシンチレータ41aを貼り付けてもよく、このように間接的に患者Sに貼り付けてもよい。
【0067】
また、第2実施形態のシンチレータ71a,81aの取付位置も上記実施形態に限定されない。すなわち、第2実施形態のシンチレータ71a,81aは患者Sの周囲であればどこに固定されていてもよく、例えば照射室2の壁に固定されていてもよい。また、上記実施形態におけるシンチレータの個数や配置態様は適宜変更可能である。
【0068】
また、第2実施形態のシンチレータ101aは、遮蔽体22の開口22aに形成された孔部22b内で固定されていた。しかしながら、このシンチレータ101aの配置位置も上記に限定されず、ターゲットTからコリメータ31における中性子線Nの出口までの間であればどこに配置されていてもよい。
【0069】
また、患者Sは治療台3上で横たえるように載置されたが、患者Sは座った状態で載置されてもよい。更に、治療台3、中性子線発生部10及び中性子線照射部20の構成や中性子捕捉療法装置1内における各装置の配置を適宜変更することも可能である。
【0070】
また、患者Sを拘束せず治療台3上に載置するだけとしてもよく、更に、治療台3上で患者Sを軽度に拘束してもよい。ここで、軽度に拘束とは、患者Sが身体をある程度動かすことができる程度に患者Sを拘束することであり、例えば、患者Sが治療台3上から落下しない程度に隙間を設けて患者Sの胴を拘束バンドで巻くこと等が挙げられる。
【符号の説明】
【0071】
1…中性子捕捉療法装置、3…治療台、10…中性子線発生部、11…サイクロトロン(加速器)、16…電流モニタ、20…中性子線照射部、31…コリメータ、31a…開口、40,90…姿勢検出部、41…シンチレーション検出器(第1の中性子線検出部)、41a,71a,81a,101a…シンチレータ、50…位置補正部、71,81…シンチレーション検出器(第2の中性子線検出部)、101…シンチレーション検出器(第3の中性子線検出部)、L…荷電粒子線、N…中性子線、S…患者(被照射体)、T…ターゲット。
図1
図2
図3
図4
図5