(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144124
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】冷却ファン、電動機および電動機の回転バランス調整方法
(51)【国際特許分類】
F04D 29/34 20060101AFI20170529BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20170529BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20170529BHJP
F04D 29/64 20060101ALI20170529BHJP
H02K 7/04 20060101ALI20170529BHJP
H02K 7/14 20060101ALI20170529BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
F04D29/34 F
F04D29/66 M
F04D29/58 R
F04D29/64 F
H02K7/04
H02K7/14 A
H02K9/06 G
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-130791(P2013-130791)
(22)【出願日】2013年6月21日
(65)【公開番号】特開2015-4329(P2015-4329A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2015年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】土佐 直人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 敦
(72)【発明者】
【氏名】河野 洋祐
【審査官】
佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−188325(JP,A)
【文献】
特開2000−054986(JP,A)
【文献】
特開2012−137071(JP,A)
【文献】
特開2001−280296(JP,A)
【文献】
実開昭55−061636(JP,U)
【文献】
特開昭52−103013(JP,A)
【文献】
特開2013−15038(JP,A)
【文献】
実開昭57−180199(JP,U)
【文献】
特開2007−92569(JP,A)
【文献】
特開2007−100600(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/34
F04D 29/58
F04D 29/64
F04D 29/66
H02K 7/04
H02K 7/14
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機の回転軸に固定される樹脂製の冷却ファンにおいて、
前記回転軸に固定されるファンボスと、該ファンボスに固定されたファンベースと、該ファンベースに設けられた複数の羽根とを備え、
前記ファンベースに前記回転軸を中心とする円周方向に複数個配置された回転バランス修正用重りの取付け孔を備え、
前記ファンベースは前記回転軸と直交する方向から傾いて設置されており、
前記取付け孔の周囲に前記回転バランス修正用重りの取付け時に前記回転バランス修正用重りの姿勢を前記回転軸の方向に保持するための平面の取付け座が形成され、
所定位置の前記取付け孔に一方側から取付けられた前記回転バランス修正用重りを備えたことを特徴とする冷却ファン。
【請求項2】
請求項1に記載の冷却ファンにおいて、
前記複数の羽根は前記ファンベースの一方側の面に設けられており、前記取付け穴は前記ファンベースに周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする冷却ファン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の冷却ファンにおいて、
前記回転バランス修正用重りとしてブラインドリベットを用い、前記ブラインドリベットを前記樹脂製の冷却ファンの一方側から前記取付け孔にカシメにより取付けたことを特徴とする冷却ファン。
【請求項4】
電源供給を受けて回転磁界を発生させる固定子と、この固定子からの回転磁界によって回転する回転子と、この回転子の回転軸に固定された樹脂製冷却ファンと、この樹脂製冷却ファンを覆うファンカバーを備えた電動機において、
前記ファンカバーは電動機本体に着脱可能に取付けられ、
前記樹脂製冷却ファンは、前記回転軸に固定されるファンボスと、該ファンボスに固定されたファンベースと、該ファンベースに設けられた複数の羽根とを備え、前記ファンベースに周方向に複数個配置された回転バランス修正用重りの取付け孔を備え、前記ファンベースは前記回転軸と直交する方向から傾いて設置されており、前記取付け孔の周囲に前記回転バランス修正用重りの取付け時に前記回転バランス修正用重りの姿勢を前記回転軸の方向に保持するための平面の取付け座が形成され、所定位置の前記取付け孔に一方側から取付けられた前記回転バランス修正用重りを備えたことを特徴とする電動機。
【請求項5】
請求項4に記載の電動機において、
前記樹脂製冷却ファンは、前記複数の羽根が前記ファンベースの一方側の面に設けられており、前記取付け穴は前記ファンベースに周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする電動機。
【請求項6】
請求項4または5に記載の電動機において、
前記回転バランス修正用重りとしてブラインドリベットを用い、前記ブラインドリベットを前記樹脂製冷却ファンの一方側から前記取付け孔にカシメにより取付けたことを特徴とする電動機。
【請求項7】
電源供給を受けて回転磁界を発生させる固定子と、この固定子からの回転磁界によって回転する回転子と、この回転子の回転軸に固定された樹脂製冷却ファンと、この樹脂製冷却ファンを覆うファンカバーを備えた電動機の回転バランス調整方法において、
前記樹脂製冷却ファンは、前記回転軸に固定されるファンボスと、該ファンボスに固定されたファンベースと、該ファンベースに設けられた複数の羽根とを備え、前記ファンベースに周方向に複数個配置された回転バランス修正用重りの取付け孔を備え、前記ファンベースは前記回転軸と直交する方向から傾いて設置されており、前記取付け孔の周囲に前記回転バランス修正用重りの取付け時に前記回転バランス修正用重りの姿勢を前記回転軸の方向に保持するための平面の取付け座が形成されており、
所定位置の前記取付け孔に一方側から前記回転バランス修正用重りを挿入して前記回転バランス修正用重りを前記取付け孔に取付けることを特徴とする電動機の回転バランス調整方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電動機の回転バランス調整方法において、
前記回転子には回転バランス修正重り取付け座が設けられており、
前記回転子の前記回転バランス修正重り取付け座に重りを取付けた後、前記樹脂製冷却ファンの前記取付け孔に前記回転バランス修正用重りを取付けることを特徴とする電動機の回転バランス調整方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の電動機の回転バランス調整方法において、
前記ファンカバーを外し、前記回転子の前記回転軸に固定された状態の前記樹脂製冷却ファンに対し、前記回転バランス修正用重りを取付けることを特徴とする電動機の回転バランス調整方法。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の電動機の回転バランス調整方法において、
前記回転バランス修正用重りとしてブラインドリベットを用い、前記ブラインドリベットを所定位置の前記取付け孔に前記樹脂製冷却ファンの一方側から挿入してカシメにより取付けることを特徴とする電動機の回転バランス調整方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電動機の回転バランス調整方法において、
前記ブラインドリベットはリベット頭部をもつ管部とこの管部を貫通する芯部を備え、前記管部を前記樹脂製冷却ファンの前記取付け孔に挿入した状態で前記芯部を一方側に引き抜くことで、前記管部をカシメることを特徴とする電動機の回転バランス調整方法。
【請求項12】
請求項11に記載の電動機の回転バランス調整方法において、
前記ブラインドリベットは前記リベット頭部を工具で押さえた状態で前記芯部を一方側に引き抜くことで、前記管部をカシメることを特徴とする電動機の回転バランス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転部品全体の回転バランスを調整する冷却ファン、電動機および電動機の回転バランス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電動機は冷却する為の冷却ファンを備えられる場合が多く、材質にはリードタイムやコスト面に優位な樹脂製のものが広く使用されている。
【0003】
冷却ファンは回転子と共に回転し、冷却風を発生させ電動機を冷却するが、回転することにより大小必ず振動が発生する。電動機の振動を小さくする為には、回転する部品全体の回転バランスを修正することが必要で、標準的な電動機の場合、回転子に設けられたバランス修正用重りを取付ける為の取付け座に、バランス修正用重りを取付け、バランス修正を行い、電動機の振動を管理値以下に調整することが一般的である。
【0004】
図10〜
図14に示す一般的な電動機について説明する。1は固定子、2は回転子、3は樹脂製の外冷却ファン、4はハウジング、5はハウジング冷却フィン、6はブラケット、7は回転軸、8は軸受、9はファンカバー、11は回転軸の中心である。外冷却ファン3はファンボス12、ファンベース13、複数の羽根14を有している。回転子2の両側端面に周方向に複数配置されたバランス修正重り取付け座10が設けられ、バランスをとる所定位置にバランス調整用重り15を嵌めこみ、前記取付け座10をカシメることで回転部品のバランス修正が行なわれる。
【0005】
周囲環境保全などの観点から、電動機が発生する振動は極力小さいことが望まれ、また電動機の設置場所によっては電動機が発生する振動値に制限がある場合があり、この場合、電動機の回転部品全体のバランスを高精度に修正することで、電動機の発生する振動を指定値以下に調整する必要がある。しかしながら、電動機のバランスを高精度に修正する場合、回転子に取付けたバランス修正用重りだけでは、電動機の発生する振動を指定値以下まで調整出来ない場合がある。
【0006】
このような場合、特許文献1に示すように、回転子の両方側に配置された内冷却ファンにバランス修正用重りをねじ込んで取付けることや、冷却ファンを加工することによって、電動機の回転部品全体のバランス修正を行うことが知られている。
【0007】
また、外冷却ファンにバランス修正用重りを取付ける等を想定した場合、一般的に樹脂製冷却ファンは、バランスを修正する為のバランス修正用重りの取付けや、加工することによるバランス修正が出来るものが少ない。このため、高精度に電動機のバランスを修正する場合、外冷却ファンを鋳物製冷却ファンや鋼板製冷却ファンに変更することが考えられる。そして、
図14(a)に示すように鋳物製冷却ファンでは、外周部にキリ穴15を加工して重さを調整し、
図14(b)に示すように鋼板製冷却ファンでは、外周部にバランス調整用重り16を溶接等で取付けることで重さを調整し、電動機の回転部品全体のバランスを修正することが考えられる。
【0008】
また、特許文献2には、金属製の送風機にハトメやリベットをカシメて回転バランスを修正するものが記載され、特許文献3には、金属製の遠心ファンにバランスウェイトをねじ込むものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−33061号公報
【特許文献2】特開2012−137071号公報
【特許文献3】実開昭54−17905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記した冷却ファンの金属加工、溶接および重りのねじ込みによる回転部品全体の回転バランスを修正作業は、リードタイムやコストが増加する。また、外冷却ファンや内冷却ファンにバランス修正用重りの取付け等の加工は、冷却ファンの単体状態でないと作業が出来ないため、組上がった電動機からの冷却ファンの取外し作業、重りの取付け作業、再組立て作業、バランス検査作業が必要となり、バランス調整のために膨大な作業工数を必要とする。さらに、冷却ファンの加工、溶接および重りのねじ込みは、冷却ファンに圧力を加え変形させる恐れがあり、ファン性能に悪影響を与える恐れがある。また、ハトメやリベットのカシメ作業では、挿入側と反対側にカシメ工具が必要となり、工具が入らない狭い場所では作業ができない。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点にかんがみ、回転部品全体のバランスを修正するのに、樹脂製冷却ファンを電動機から取外すことなく、短時間で高精度なバランス修正ができ、電動機完成品に対しても容易に実施できる電動機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、電動機の回転軸に固定される樹脂製の冷却ファンにおいて、回転軸を中心とする円周方向に複数個配置された回転バランス修正用重りの取付け孔を備え、所定位置の前記取付け孔に一方側から取付けられた重りを備えたことを特徴とする。
【0013】
また、上記に記載の冷却ファンにおいて、前記回転軸に固定された状態で、前記回転バランス修正用の重りが取付けられたことを特徴とする。
【0014】
また、上記に記載の冷却ファンにおいて、前記取付け孔の周囲に取付け時の重りの姿勢を保つ平面の取付け座が形成されたことを特徴とする。
【0015】
また、上記に記載の冷却ファンにおいて、前記取付け孔は前記回転軸方向に設けられたことを特徴とする。
【0016】
また、上記に記載の冷却ファンにおいて、ファンベースと、このファンベースの一方側の面に設けられた複数の羽根とを備えてなり、前記取付け穴は前記ファンベースに周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、上記に記載の冷却ファンにおいて、前記取付け孔は前記ファンベースの外周側と内周側に周方向に等間隔に設けられたことを特徴とする。
【0018】
また、上記に記載の冷却ファンにおいて、前記回転バランス修正用の重りとしてブラインドリベットを用い、前記ブラインドリベットを前記樹脂製冷却ファンの一方側から取付け孔にカシメにより取付けたことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するために本発明は、電源供給を受けて回転磁界を発生させる固定子と、この固定子からの回転磁界によって回転する回転子と、この回転子の回転軸に固定された樹脂製冷却ファンと、この樹脂製冷却ファンを覆うファンカバーを備えた電動機において、
前記ファンカバーは電動機本体に着脱可能に取付けられ、前記樹脂製冷却ファンは周方向に複数個配置された回転バランス修正用重りの取付け孔を備え、所定位置の前記取付け孔に一方側から取付けられた重りを備えたことを特徴とする。
【0020】
また、上記に記載の電動機において、前記樹脂製冷却ファンは回転子の回転軸に固定された状態で、前記回転バランス修正用の重りが取付けられたことをとする。
【0021】
また、上記に記載の電動機において、前記取付け孔の周囲に取付け時の重りの姿勢を保つ平面の取付け座が形成されたことを特徴とする。
【0022】
また、上記に記載の電動機において、前記取付け孔は前記回転軸方向に設けられたことを特徴とする。
【0023】
また、上記に記載の電動機において、前記樹脂製冷却ファンは、ファンベースと、このファンベースの一方側の面に設けられた複数の羽根とを備えてなり、前記取付け穴は前記ファンベースに周方向に等間隔に設けられていることを特徴とする。
【0024】
また、上記に記載の電動機において、前記取付け孔は前記ファンベースの外周側と内周側に周方向に等間隔に設けられたことを特徴とする。
【0025】
また、上記に記載の電動機において、前記回転バランス修正用の重りとしてブラインドリベットを用い、前記ブラインドリベットを前記樹脂製冷却ファンの一方側から取付け孔にカシメにより取付けたことを特徴とする。
【0026】
上記課題を解決するために本発明は、電源供給を受けて回転磁界を発生させる固定子と、この固定子からの回転磁界によって回転する回転子と、この回転子の回転軸に固定された樹脂製冷却ファンと、この樹脂製冷却ファンを覆うファンカバーを備えた電動機の回転バランス調整方法において、
前記樹脂製冷却ファンは周方向に均等間隔に配置された回転バランス修正用の重りの取付け孔を備え、前記樹脂製冷却ファンの一方側から重りを挿入して前記取付け孔に取付けることを特徴とする。
【0027】
また、上記に記載の電動機の回転バランス調整方法において、前記ファンカバーを外し、回転子の回転軸に固定された状態の樹脂製冷却ファンに対し、前記回転バランス修正用の重りを取付けることを特徴とする。
【0028】
また、上記に記載の電動機の回転バランス調整方法において、前記回転バランス修正用の重りとしてブラインドリベットを用い、ブラインドリベットを所定位置の取付け孔に樹脂製冷却ファンの一方側から挿入してカシメにより取付けることを特徴とする。
【0029】
また、上記に記載の電動機の回転バランス調整方法において、前記ブラインドリベットはリベット頭部をもつ管部とこの管部を貫通する芯部を備え、前記管部を前記樹脂製冷却ファンの取付け孔に挿入した状態で前記芯部を一方側に引き抜くことで、前記管部をカシメることを特徴とする。
【0030】
また、上記に記載の電動機の回転バランス調整方法において、前記ブラインドリベットはリベット頭部を工具で押さえた状態で前記芯部を一方側に引き抜くことで、前記管部をカシメることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高精度に電動機の回転部品全体のバランスを修正する場合において、リードタイムやコスト的に優位な樹脂製冷却ファンを使用することが可能となる。また、電動機完成品に対し、バランス修正を実施する場合において、冷却ファンを取外すことなく、バランス修正が可能となり、リードタイムやコスト的を大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の実施例である電動機の一部を切り欠いて示す構造説明図。
【
図2】同じく外冷却ファンの詳細構造を示す説明図。
【
図3】同じく回転体と冷却ファンのバランス修正作業の説明図。
【
図4】同じく樹脂製冷却ファンにバランス修正が施された説明図。
【
図5】同じく外冷却ファンに固定されるリベットの斜視図。
【
図8】同じくリベット取付け穴の避けるべき位置の説明図。
【
図10】一般的な電動機の一部を切り欠いて示す構造説明図。
【
図11】同じく外冷却ファンの詳細構造を示す説明図。
【
図12】同じく回転体と冷却ファンのバランス修正作業の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。
(実施例)
図1は本発明の実施例である電動機の一部を切り欠いて示す構造説明図である。21は固定子、22は回転子、23は樹脂製の外冷却ファン、24はハウジング、25はハウジング冷却フィン、26はブラケット、27は回転軸、28は軸受、29はファンカバー、31は回転軸27の回転中心である。回転子22の両側端面に周方向には、
図3に示すように複数配置された回転バランス修正重り取付け座30が設けられ、バランスをとる所定位置にバランス調整用重りを嵌めこみ、前記取付け座30にカシメることで回転部品のバランス修正が行なわれる。このバランス修正は
図13と同様に行われる。
【0034】
外冷却ファン23は、回転軸27の後端に取付けられて回転軸と共に回転して、ハウジング24内に冷却風を吹き込む。外冷却ファン23は、後方がファンカバー29で覆われ、このカバーに設けられた開口部(図示せず)から冷却風が吸込む。ファンカバー29は単独で電動機本体から着脱可能にハウジング24またはブラケット26にネジ止めされている。
【0035】
図2に示すように、外冷却ファン23は、ファンボス32、ファンベース33、複数の羽根34を樹脂の一体成形により形成される。
図2(a)は冷却ファンの四半分の正面図で、
図2(b)は
図2(a)のC〜Fに沿う断面図である。ファンボス32は回転軸27に固定され、回転軸27の回転により外冷却ファン23が回転する。ファンベース33は回転軸27を中心とする円盤状の形状を有し、その一方側(図で左側)の面に、円周方向に均等に配置された複数の羽根34を、樹脂の一体成形により回転軸方向に立設形成される。ファンベース33には、外周位置と内周位置にそれぞれ取付け孔(貫通孔)35と36が円周方向に均等間隔で回転軸方向に複数個設けられている。取付け孔(貫通孔)35と36は、樹脂による冷却ファンの成型時に設けられる。前記取付け孔の所定孔にはファンの回転バランスを修正するための重りとしてリベットが取付けられる。
【0036】
取付け孔(貫通孔)35と36の周囲の表裏には、回転軸27の半径方向の平面部を形成するリベットの取付け座35a、36aが設けられ、この取付け座への取付け時にリベットの姿勢が回転軸方向に保持されるようにしている。リベットの取付け時は、予め回転の振動方向と振動量を測定し、その結果に基づいてリベットを取付けるべき所定位置の取付け孔を特定する。取付け座35a、36aを設けない場合はリベットが傾いて取付けられる恐れがあり、傾いて取付けられると取付け孔でのリベットの重心位置が計画と異なって、回転バランスの調整が困難となる。
【0037】
外周側のリベット取付け孔35は内周側のリベット取付け孔36と比べて、より軽量なリベットで高精度のバランス調整ができる。
図4は、特定された取付け孔35と36にリベット37が挿入固定された状態を示している。
【0038】
電動機の回転部品全体の回転バランスの調整は、まず前記回転子22の取付け座30へ重りを取付けて回転子22単体のバランスが修正され、このバランスが修正された回転子を電動機に組み込んで電動機を完成する。このように、回転子22単体のバランス修正で回転部品全体の回転バランスの修正がなされる。しかし、回転子22単体のバランス修正だけでは、電動機の発生する振動を指定値以下まで調整できない場合があり、本発明実施例では、さらに、電動機完成品に対して、その外冷却ファン23にバランス修正用の重りを取付けることで、回転部品全体の回転バランスを高精度に修正するものである。
【0039】
図5は、回転バランス修正用の重りとしてのリベットの斜視図である。40はブラインドリベット全体を示し、41は中空の管部、43は管部41の後端に一体で形成されたリベット頭部である。44は先端に管部41の内径より大きな外径の先端頭部42を備えた芯部で、リベット頭部43と反対側から管部41に挿入され、このとき先端頭部42が管部41から突出するように構成される。先端頭部42と芯部44は、くびれ部46(
図5参照)で接続されている。管部41は、リベット取付け孔(貫通孔)35、36に挿入されたとき、反対側に突き出るように、外冷却ファン23の取付け座35a、36aの厚さより長い寸法を有している。ブラインドリベット40は、アルミニウム、ステンレス等の金属製である。
【0040】
図6〜
図7にリベットの固定作業を示す。50は、リベット40を保持して取付け孔に挿入して固定するハンドガン(工具)である。ハンドガン50はリベットの芯部44を貫通する孔を有し、この孔を貫通した芯部44を掴むチャック51を内蔵する。チャック51は、芯部44を掴む面に歯部52を備え、芯部44を確実に掴んだ状態で、工具50内を矢印方向に移動するように構成される。
【0041】
ブラインドリベット40の取付けに際しては、まずファンカバー29を電動機本体から外し、ハンドガン(工具)50を回転軸方向の左方側(一方側)から外冷却ファン23に接近させる。
図6に示すように、ハンドガン50はリベット40を保持し、先端頭部42から外冷却ファン23の取付け孔(貫通孔)35、36に回転軸方向に挿入する。取付け孔35、36はファンベースに回転軸方向に設けられているので、リベット40の挿入が容易である。このとき、ハンドガン50の先端面がリベット頭部
43に当接している。次いで、ハンドガン50の先端面でリベット頭部
43を押さえた状態で、チャック51を矢印に回転軸に左方側(一方側)に引っ張り、芯部44を管部41から引き抜く。
【0042】
図7に示すように、チャック51及び芯部44の矢印方向への移動により、リベットの管部41にリベット頭部
43と先端頭部42との間に圧縮応力が作用し、リベットの管部41が軸方向に圧縮される。この圧縮により、管部41は取付け孔から突き抜けた部分が、先端頭部42により圧縮されて取付け孔の内径より大きな拡大部45を形成するように塑性変形される。くびれ部46は、他と比べて引っ張り強度が弱いので、芯部44の矢印方向への移動により拡大部45が形成された後、引きちぎられる。
【0043】
このようにして、ブラインドリベット40は、先端頭部42と拡大部45によって取付け座を両側から挟圧するようにカシメがなされ、取付け孔(貫通孔)35、36に確実に安定して取付けられる。そして、この取付けでは、ファンベースの半径方向に変形圧力を加えないので、樹脂製であっても冷却ファンが変形することがない。
【0044】
一般的なリベットは中実な金属で一方に頭部を有しており、被固定物に挿入してカシメの際には、両端に工具を当てて圧縮することにより頭部の反対側を潰してカシメている。従って、被固定物のリベットの挿入側と反対側にカシメ工具を配置する必要が生じ、工具が入らない狭い場所では、カシメ作業を行うことができない。因みに、
図1の外冷却ファン23とブラケット26の間隔は狭く、カシメ工具を入れることができない。
【0045】
本発明実施例では、上記したようにブラインドリベットを用いることにより、リベットの取付け作業を一方側から行えるので、ファンカバーが取り外されて開放された外冷却ファンの一方側から容易にリベットを取付けすることができる。
【0046】
本発明実施例の取付作業においては、ハンドガン(工具)50は、ファンカバー29が外された図の左側から外冷却ファン23に接近し、芯部44を管部41から図の左側に引き抜くことでカシメ作業を行うので、一連の取付け作業が外冷却ファン23の一側面(一方向)で行うことができ、作業能率が大幅に向上する。従って、外冷却ファンを電動機から取外すことなく、極めて短時間で正確な回転バランスの修正を行うことができる。
【0047】
また、この取付け作業において、ハンドガン50の先端面でリベット頭部
43を押さえているので、チャック51の移動時にリベット頭部
43がファンベース33に曲げ等の圧力を加えることがなく、外冷却ファン23に変形が加えられることがない。したがって、ファン全体に歪みが残ることがないため、ファンの回転時に新たな騒音を引き起こすことがない。
【0048】
取付け作業は、
図1においてファンカバー29を外し、電動機の回転軸27に固定されたままの外冷却ファン23に、一方側(電動機と反対側)からブラインドリベットを取付けることで行われる。したがって、外冷却ファン23の反対側に工具等を配置する必要がないため、取付け作業が狭い場所でも簡単に短時間で行うことができ、作業効率が大幅に改善される。また、この取付作業は、ファンカバー29を外すのみで、外冷却ファン23を電動機の回転軸27に固定したままで行い、電動機完成品を分解することもないため、リードタイムとコストを大幅に低減できる。
【0049】
次に、
図8、
図9に基づいて、取付け孔の配置について説明する。取付け孔の数量は特に制限は無いが、
図8に示すように、外周側の取付け孔35の間隔をG−1〜G−3のように、及び、内周側の取付け穴36の間隔をH−1〜H−3のように、取付け孔の間隔が等間隔ではない場合、樹脂製冷却ファン自体の重量バランスが悪くなる。
【0050】
したがって、外周側のリベット取付け孔35の間隔を
図9に示すL−1〜L−3のように、及び、内周側のリベット取付け孔36の間隔を
図9に示すM−1〜M−3のように、取付け孔の間隔を360°全周に渡って、等間隔に複数ヶ所設けるのが良い。
【0051】
また、
図8に示すように、取付け孔35の羽根34との隙間がJのように狭いと、ハンドガンが入り辛くリベット取付け作業が困難となる。このため、取付け孔35の羽根34との隙間を
図9に示すNのように、ハンドガンが入り易くてリベット取付け作業が安易となる程度の隙間を設けるのが良い。
【0052】
さらに、
図8に示すようにリベット取付け孔36のファンボス32との隙間がKのように狭いと、ハンドガンが入り辛くリベット取付け作業が困難となる。このため、リベット取付け穴36のファンボス32との隙間を
図9に示すPのように、ハンドガンが入り易くてリベット取付け作業が安易となる程度の隙間を設けるのが良い。
【0053】
さらに、リベットが傾いて取付けられることを防止すべくその姿勢を保つために、
図2(b)に示す取付け座35a、36aの両側のリベット取付け面は、互いに平行な平面とするのが良い。
【0054】
本実施例によれば、高精度に電動機のバランスを修正する場合においても、リードタイムやコスト的に優位な樹脂製冷却ファンを使用することが可能となるものである。また、電動機完成品のバランス修正を実施する場合においても、冷却ファンを取外す事無く、電動機本体を分解することなく、電動機の回転部品全体のバランス修正が可能となるものである。
【0055】
さらに、本実施例では、取付け孔35、36を貫通孔としたが、これに代えて袋穴にしても良い。この場合、ブラインドリベットの取付け時において、管部41は拡大部45が袋穴内で形成されて固定される。
【0056】
なお、上記にて説明した構成は、説明の為の実施例であり、実際の設計、製品化においては、適宜変更を加えても良いものである。
【符号の説明】
【0057】
21:固定子
22:回転子
23:冷却ファン(樹脂製冷却ファン)
24:ハウジング
25:ハウジング冷却フィン
26:ブラケット
27:回転軸
28:軸受
29:ファンカバー
30:バランス調整用重り取付け座
32:ファンボス
33:ファンベース
34:羽根
35、36:取付け孔(リベット取付け孔)
35:外周側の取付け孔
36:内周側の取付け孔
35a、36a:取付け座
37:重り(リベット)
40:リベット、ブラインドリベット
41:管部
42:先端頭部
43:リベット頭部
39:回転子
44:芯部
45:拡大部
46:くびれ部
G1〜G3:外周側の取付け孔
H1〜H3:内周側の取付け穴
J:隙間
K:隙間
L1〜L3:外周側のリベット取付け孔の間隔
M1〜M3:内周側のリベット取付け孔の間隔
N:隙間
P:隙間