特許第6144134号(P6144134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6144134携帯通信端末、認証処理装置及び認証システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144134
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】携帯通信端末、認証処理装置及び認証システム
(51)【国際特許分類】
   G07B 15/00 20110101AFI20170529BHJP
   G07C 9/00 20060101ALI20170529BHJP
   H04B 13/00 20060101ALI20170529BHJP
   G06K 17/00 20060101ALI20170529BHJP
【FI】
   G07B15/00 B
   G07B15/00 501
   G07C9/00 Z
   H04B13/00
   G06K17/00
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-146880(P2013-146880)
(22)【出願日】2013年7月12日
(65)【公開番号】特開2015-18511(P2015-18511A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 章嘉
【審査官】 望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−191535(JP,A)
【文献】 特開2004−070487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
G07C 9/00
H04B 13/00
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ID情報を記録する記録部と、
無線送信された認証用情報を受信する受信部と、
前記記録部に記録されたID情報及び前記受信部で受信した認証用情報を、認証処理装置との間で人体通信が確立されると、人体を介して前記認証処理装置に送信する人体通信送信部と、
を有し、
前記認証用情報は、前記認証処理装置の手前の所定範囲に送信され、前記人体通信の確立前に前記受信部によって受信された情報である
携帯通信端末。
【請求項2】
前記認証用情報は、人体によって遮られるように調整された超音波信号、ミリ波信号又はテラヘルツ波信号として送信されたものである、請求項1に記載の携帯通信端末。
【請求項3】
前記認証用情報は、前記認証処理装置又はその関連装置から送信されたものである、請求項1又は2に記載の携帯通信端末。
【請求項4】
ICカードが着脱自在なカード装着部と、
前記カード装着部に装着されたICカードのID情報を読み取る情報読取部と、
を有し、
前記記録部は、前記情報読取部で読み取ったICカードのID情報を記録する、
請求項1〜3のいずれか一つに記載の携帯通信端末。
【請求項5】
前記記録部は、前記ID情報に加えて、前記受信部で受信した認証用情報を記録する、
請求項1〜4のいずれか一つ記載の携帯通信端末。
【請求項6】
前記認証用情報は、前記人体通信送信部を起動させる起動信号としての機能を有する、
請求項1〜5のいずれか一つに記載の携帯通信端末。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の携帯通信端末の前記人体通信送信部から送信されたID情報及び認証用情報を受信する人体通信受信部と、
前記人体通信受信部で受信したID情報及び認証用情報に基づいて認証処理を行い、その結果に応じた制御信号を出力する認証処理部と、
前記認証処理部から出力された制御信号によって作動制御される被制御要素と、
を有する、認証処理装置。
【請求項8】
前記認証用情報を前記所定範囲に無線送信する情報送信部をさらに有し、
前記認証処理部は、前記認証処理において、前記情報送信部から送信した認証用情報と前記人体通信受信部で受信した認証用情報との照合を行う、
請求項7に記載の認証処理装置。
【請求項9】
前記情報送信部は、前記認証用情報を、人体によって遮られるように調整された超音波信号、ミリ波信号、又はテラヘルツ波信号として送信する、請求項8に記載の認証処理装置。
【請求項10】
前記被制御要素は、閉状態において利用者の通行を阻止するゲートであり、
前記認証処理部は、前記認証処理によって前記携帯通信端末を保持する利用者の通行の許否を判定し、当該利用者の通行を許可する場合に、前記ゲートを開放する開放信号を出力する、請求項7〜9のいずれか一つに記載の認証処理装置。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の携帯通信端末と、
記認証用情報を前記所定範囲に無線送信する情報送信手段と、
前記携帯通信端末の前記人体通信送信部から送信されたID情報及び認証用情報を受信する人体通信受信手段と、
前記人体通信受信手段で受信したID情報及び認証用情報に基づいて認証処理を実行し、その結果に応じた制御信号を出力する認証処理手段と、
前記認証処理手段から出力された制御信号によって作動制御される被制御要素と、
を含む、認証システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体通信が可能な携帯通信端末、人体通信によって携帯通信端末から受信した情報に基づいて認証処理を実行する認証処理装置、及び、これらを含む認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術の一例として、特許文献1には、外部装置としての自動改札機と、この自動改札機と人体通信を行う人体通信端末とが記載されている。特許文献1において、前記人体通信端末は、無線通信媒体(RFIDカード)が装備されると、当該無線通信媒体が記憶する媒体情報を読み取って記憶し、記憶した媒体情報を、人体を介して前記自動改札機に無線送信する。また、前記自動改札機は、前記人体通信端末から媒体情報を受信して通行判定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−191535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の技術では、次のような課題がある。
すなわち、前記人体通信端末は、単に装備された無線通信媒体の媒体情報を無線送信するだけであるので、例えば何らかの情報を付加することによって前記通行判定などの認証処理をより厳密に行おうとした場合に、その対応が難しい。
また、前記人体通信端末を保持しない先行者に、前記人体通信端末を保持した後続者が接近してその電界が結合してしまうと、前記後続者の保持する前記人体通信端末からの媒体情報に基づいて、本来であれば許可されないはずの前記先行者による通行が許可されてしまうこと、換言すれば、電界結合による誤認証が発生するおそれもある。
【0005】
そこで、本発明は、人体通信を用いた認証処理において、上述のような従来の課題に対処可能な、携帯通信端末、認証処理装置及びこれらを含む認証システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、携帯通信端末は、ID情報を記録する記録部と、無線送信された認証用情報を受信する受信部と、前記記録部に記録されたID情報及び前記受信部で受信した認証用情報を、認証処理装置との間で人体通信が確立されると、人体を介して前記認証処理装置に送信する人体通信送信部と、を有し、前記認証用情報は、前記認証処理装置の手前の所定範囲に送信され、前記人体通信の確立前に前記受信部によって受信された情報である
【0007】
本発明の他の側面によると、認証処理装置は、前記携帯通信端末の前記人体通信送信部から送信されたID情報及び認証用情報を受信する人体通信受信部と、前記人体通信受信部で受信したID情報及び認証用情報に基づいて認証処理を行い、その結果に応じた制御信号を出力する認証処理部と、前記認証処理部から出力された制御信号によって作動制御される被制御要素と、を有する。
【0008】
本発明のさらに他の側面によると、認証システムは、前記携帯通信端末と、前記認証用情報を前記所定範囲に無線送信する情報送信手段と、前記携帯通信端末の前記人体通信送信部から送信されたID情報及び認証用情報を受信する人体通信受信手段と、前記人体通信受信手段で受信したID情報及び認証用情報に基づいて認証処理を実行し、その結果に応じた制御信号を出力する認証処理手段と、前記認証処理手段から出力された制御信号によって作動制御される被制御要素と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
前記携帯通信端末は、記録部に記録されたID情報及び受信部で受信した認証用情報を人体通信で認証処理装置に送信する。このため、認証処理装置にて所定の認証処理のために使用する情報を認証用情報として容易に付加することができ、例えばセキュリティ性の向上を図ることが可能となる。
また、例えば、前記認証処理装置又はその関連装置が前記認証処理装置の手前の所定範囲に向けて前記認証用情報を無線送信することで、前記認証処理装置において、上述したような電界結合による誤認証の発生を抑制することができる。
【0010】
前記認証処理装置及び前記認証システムは、前記携帯通信端末から人体通信で送信されたID情報及び認証用情報を受信して、これらの情報に基づいて認証処理を行い、その結果に応じた制御信号を被制御要素に出力する。したがって、前記携帯通信端末との併用によって、認証処理におけるセキュリティ性の向上や電界結合による誤認証の発生の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態による認証システム(ゲート装置及び携帯通信端末)の概略構成を示す図である。
図2】前記携帯通信端末の外観の概略を示す図である。
図3】前記携帯通信端末を構成するICカードホルダの電気的構成を示すブロック図である。
図4】前記認証システムの作用を説明するための図である。
図5】前記認証システムの作用を説明するための図である。
図6】前記認証システムの作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態による認証システムの概略構成を示している。図1(a)は、認証システムの概略構成の平面図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A断面図である。この認証システムは、ゲート装置(認証処理装置)1と、利用者2の保持する携帯通信端末3とを含み、ゲート装置1が携帯通信端末3からの情報に基づいて認証処理を行うものである。
【0013】
図1において、ゲート装置1は、所定の通路に配設されて利用者2の通行を規制する。ゲート装置1は、利用者2の保持する携帯通信端末3との間で利用者2の人体を通じた通信を確立し、携帯通信端末3から所定の情報を受信する。そして、ゲート装置1は、携帯通信端末3から人体通信を介して受信した前記所定の情報に基づいて認証処理を行って利用者2の通行の許否を判定する。
なお、図1は、利用者2が矢印B方向に通行する場合を示しており、図中左側がゲート装置1の入口側であり、図中右側がゲート装置1の出口側となっている。
【0014】
本実施形態において、ゲート装置1は、超音波スピーカ(情報送信部)11と、電極マット(人体通信受信部)12と、開閉式のゲート(被制御要素)13と、認証処理部14と、警報器15と、を有している。
【0015】
超音波スピーカ11は、ゲート装置1(の認証処理部14)で使用する認証用情報を超音波信号として送信する。超音波は指向性が高いため、比較的狭い範囲に絞って前記認証用情報を送信することが可能である。そこで、本実施形態において、超音波スピーカ11は、ゲート装置1の入口手前の所定範囲に向けて前記認証用情報としての超音波信号を送信する。好ましくは、超音波スピーカ11は、ゲート装置1に向かってくる利用者2がゲート装置1の入口手前まで近づいたとき(例えば、後述する電極マット12の直前の位置に来たとき)に当該利用者2の保持する携帯通信端末3が受信するように、前記認証用情報(超音波信号)を送信する。さらに言えば、超音波スピーカ11は、前後に接近した複数の(ここでは二人の)利用者2がゲート装置1に近づいてくる場合においてはその先頭の利用者2の保持する携帯通信端末3のみが受信可能なように、その送信範囲、出力及び/又は波形等が調整された前記認証用情報(超音波信号)を送信する。
なお、前記認証用情報は、ゲート装置1が利用者の通行の許否を判定するために使用する情報であればよく、その形式や内容等は問わない。
【0016】
電極マット12は、ゲート装置1の入口の通路面に設置又は埋設されている。そして、携帯通信端末3を保持する利用者2がこの電極マット12を踏むことによって、利用者2の人体を介してゲート装置1と携帯通信端末3と間で人体通信が行われる。この人体通信を通じてゲート装置1は携帯通信端末3から所定の情報を受信する。本実施形態において、携帯通信端末3から受信する所定の情報は、携帯通信端末3の人体通信送信部33から送信される情報であり、携帯通信端末3に記録されているID情報及び超音波スピーカ11が送信した前記認証用信号を含む(この点については後述する)。
【0017】
ゲート13は、通常は閉状態となっていて利用者2の通行を阻止する。そして、ゲート13は、利用者2の通行が許可された場合に開放され、これにより、利用者2がゲート装置1を通行することが可能となる。なお、ゲート13の作動は、認証処理部14によって制御される。
【0018】
認証処理部14は、人体通信を通じて携帯通信端末3から受信した前記所定の情報(ID情報及び認証用信号)に基づいて認証処理を行って利用者2の通行の許否を判定する。具体的には、認証処理部14は、ID情報の照合及び認証用情報の照合を行って利用者2の通行の許否を判定する。例えば、認証処理部14は、携帯通信端末3から受信したID情報が事前に登録されているID情報と一致する場合や有効なものである場合であって、かつ、携帯通信端末3から受信した認証用情報が超音波スピーカ11から送信した認証用情報と一致する場合に、当該携帯通信端末3を保持する利用者2の通行を許可する。それ以外の場合、例えばID情報及び/又は認証用情報が受信されない場合には、認証処理部14は利用者2の通行を許可しない。
【0019】
そして、認証処理部14は、前記認証処理(照合)の結果、利用者2の通行を許可する場合にはゲート13に開放信号を出力してゲート13を開放し、その後、図示省略したセンサなどによって利用者2がゲート13を通過したことを確認するとゲート13に閉鎖信号を出力してゲート13を閉鎖する。一方、認証処理部14は、利用者2の通行を許可しない場合には、ゲート13を作動させずに閉状態を維持する。また、認証処理部14は、必要に応じて、警報器15に作動信号を出力して警報灯(図示省略)を点灯させ及び/又は警報音を発生させる。例えば、認証処理部14は、携帯通信端末3からID情報は受信されたが前記認証用情報は受信されなかったような場合に、警報器15に警報灯(図示省略)を点灯させ及び/又は警報音を発生させるようにすることができる。
【0020】
図2は、携帯通信端末3の外観の概略を示している。
図2に示すように、本実施形態における携帯通信端末3は、ICカードホルダ31と、ICカードホルダ31に装着されたICカード32とによって構成されている。
ICカードホルダ31には、ICカード32を着脱自在なスリット(カード装着部)31aが形成されており、ICカードホルダ31の内部には、スリット31aから挿入されたICカード32を収容するカード収容部31bが設けられている。
【0021】
図3は、ICカードホルダ31の電気的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、ICカードホルダ31は、ICカードリーダ(情報読取部)311と、超音波受信部312と、演算処理部(CPU)313と、メモリ(記録部)314と、人体通信送信部315と、バッテリ316と、を含む。
【0022】
ICカードリーダ311は、ICカードホルダ31に装着されたICカード32からそのID情報を読み取り、読み取ったID情報をCPU313に送信する。例えば、図示省略したセンサなどによってICカード32の装着をCPU313が検知すると、CPU313はICカードリーダ311に所定の制御信号を出力し、これにより、ICカードリーダ311がICカード31からID情報を読み取るように構成することができる。
【0023】
超音波受信部312は、外部から送信された超音波信号を受信して処理する。超音波受信部312は、超音波マイク312aと、超音波通信処理部312bとを有する。本実施形態において、超音波マイク312aは、ゲート装置1の超音波スピーカ11から送信された前記認証用情報としての超音波信号を受信し、受信した超音波信号を超音波通信処理部312bに転送する。超音波通信処理部312bは、超音波マイク312aから転送された超音波信号を処理して前記認証用情報を抽出し、抽出した前記認証用情報をCPU313に送信する。
【0024】
CPU313は、ICカードリーダ311で読み取ったICカード32のID情報、及び、超音波受信部312で受信(抽出)した前記認証用情報を受信(入力)し、これらをメモリ314に記録する。また、CPU313は、携帯通信端末3(ICカードホルダ31及びICカード32)を保持する利用者2が人体通信用の電極に触れると、より具体的には、利用者2がゲート装置1の電極マット12を踏むことによってゲート装置1と携帯通信端末3との間で通信が確立すると、メモリ314から前記ID情報及び前記認証用情報を読み出して人体通信送信部315に送信する。
【0025】
人体通信送信部315は、人体通信データを生成して送信するものであり、電界通信処理部315aと、電極部315bとを有する。利用者2がゲート装置1の電極マット12を踏むことで電極マット12と電極部315bとが利用者2の人体を介して接続し、これにより、ゲート装置1と携帯通信端末3との間で通信が確立する。
【0026】
電界通信処理部315aは、CPU313から受信した前記ID情報及び前記認証用情報を人体通信データに変換して電極部315bに送信する。これにより、前記ID情報及び前記認証用情報を含む人体通信データが、電極部315b及び利用者2の人体を介してゲート装置1(の電極マット12)へと送信される。そして、上述したように、ゲート装置1の認証処理部14において認証処理が行われる。
なお、メモリ314に記録した前記認証用情報は、超音波受信部312がこれを受信してから所定時間が経過したとき又は人体通信送信部315によってゲート装置1に送信されたときに、例えばCPU313によって消去される。
【0027】
次に、図4図6を参照して本実施形態による認証システムの作用を説明する。なお、以下の説明において、各利用者の保持する携帯通信端末3のID情報は、ゲート装置1に事前に登録されているものとする。
【0028】
図4は、携帯通信端末3を保持する一人の利用者2がゲート装置1に向かってきた場合を示している。なお、複数の利用者2がある程度の間隔をあけてゲート装置1に向かってきた場合についても同様である。この場合、図4(a)に示すように、利用者2がゲート装置1に入口手前の所定位置(電極マット11の直前の位置)まで来ると、利用者2の保持する携帯通信端末3が超音波スピーカ11から送信された前記認証用情報(超音波信号)を受信する。そして、図4(b)に示すように、利用者2がさらに進んで電極マット12を踏むと、ゲート装置1は、携帯通信端末3からそのID情報及び前記認証用情報を含む人体通信データを受信する。これにより、ゲート装置1はゲート13を開放し、利用者2はゲート装置1を通行することが可能となる。
【0029】
図5は、通行(前後)方向に互いに接近した二人の利用者2A、2Bがゲート装置1に近づいてきた場合を示している。ここでは、先行の利用者2Aは携帯通信端末3を保持しておらず、後続の利用者2Bのみが携帯通信端末3を保持している。なお、「通行(前後)方向に互いに接近」とは、上述したような電界結合が生じる程度に両者の距離が近いことをいう。
【0030】
この場合、図5(a)に示すように、ゲート装置1の入口手前において、超音波スピーカ11から送信された認証用情報は先行の利用者2Aによって遮られてしまうため、後続の利用者2Bの保持する携帯通信端末3は前記認証用情報を受信できない。
【0031】
したがって、図5(b)に示すように、先行の利用者2Aが電極マット12を踏んだときに、ゲート装置1が、たとえ電界結合によって後続の利用者2Bの保持する携帯通信端末3との間で人体通信を行ったとしても、ゲート装置1は、超音波スピーカ11から送信した認証用情報を受信しない。このため、ゲート装置1(の認証処理部14)は、先行の利用者2Aの通行を許可せず、ゲート13を開放しない。また、この場合、ゲート装置1は、警報器15に警報灯を点灯させ及び/又は警報音を発生させる。
【0032】
前記警報灯の点灯及び/又は前記警報音の発生によって、通行を許可されない先行の利用者2Aがゲート装置1から外れると、図5(c)に示すように、後続の利用者2Bの保持する携帯通信端末3は、ゲート装置1の超音波スピーカ11から送信された認証用情報を受信できるようになる。そして、後続の利用者2Bが電極マット12を踏むことによって、ゲート装置1は、後続の利用者2Bの保持する携帯通信端末3からそのID情報及び前記認証用情報を含む人体通信データを受信してゲート13を開放する。これにより、後続の利用者2Bはゲート装置1を通行することが可能となる。
【0033】
図6は、通行(前後)方向に互いに接近した二人の利用者2C、2Dがゲート装置1に近づいてきた場合を示している。ここでは、先行の利用者2C及び後続の利用者2Dの双方が携帯通信端末3を保持している。
この場合、図6(a)に示すように、ゲート装置1の入口手前において、超音波スピーカ11から送信された認証用情報は、先行の利用者2Cの保持する携帯通信端末3によって受信されるが、図5(a)の場合と同様、先行の利用者2Cによって遮られてしまうため、後続の利用者2Dの保持する携帯通信端末3よっては受信されない。
【0034】
次いで、図6(b)に示すように、まず先行の利用者2Cが電極マット12を踏むと、ゲート装置1は、先行の利用者2Cの保持する携帯通信端末3からそのID情報及び前記認証用情報を含む人体通信データを受信してゲート13を開放する。これにより、先行の利用者2Cはゲート装置1を通行することが可能となり、先行の利用者2Cは、さらにゲート装置1内に進入する。
【0035】
すると、図6(c)に示すように、後続の利用者2Dの保持する携帯通信端末3がゲート装置1の超音波スピーカ11から送信された認証用情報を受信可能な状態となる。そして、後続の利用者2Dが電極マット12を踏むことにより、ゲート装置1は、後続の利用者2Dの保持する携帯通信端末3からそのID情報及び前記認証用情報を含む人体通信データを受信してゲート13を開放する(開放状態を維持する)。これにより、後続の利用者2Dもゲート装置1を通行することが可能となる。
【0036】
ここで、先行の利用者2Cが電極マット12を踏んだときに電界結合が生じると、ゲート装置1は二つのID情報と一つの認証用情報を受信することになる。すなわち、先行の利用者2Cの保持する携帯通信端末3から送信されたID情報及び前記認証用情報と、後続の利用者2Dの保持する携帯通信端末3から送信されたID情報である。このような場合には、携帯通信端末3を保持する二人の利用者が接近していることが予測されるので、ゲート装置1は、認証処理部14における通行の許否判定を通常よりも遅らせるようにしてもよい。すなわち、二つのID情報と一つの認証用情報を受信したときには、後続の利用者の保持する携帯通信端末3が前記認証用情報を受信するのを待って(例えば、図6(c)の状態となるのを待って)、通行の許否判定を行うようにする。このようにすれば、ゲート装置1は、二つのID情報と二つの認証用情報を受信することができ、これによって、二人の利用者2C、2Dの通行を同時に許可することも可能となる。
【0037】
また、この場合において、ゲート装置1(の超音波スピーカ11)は、利用者2Cと利用者2Dとに送信する認証用情報を異ならせるように構成されてもよい。例えば、ゲート装置1は、超音波スピーカ11から第1の認証用情報を送信した後に携帯通信端末3から第1の認証用情報を受信した場合には、超音波スピーカ11から第2の認証用情報を送信するようにする。このようにすると、ゲート装置1において、先行者及び後続者の保持する携帯通信端末3のそれぞれから認証用情報を受信したことが明らかとなり、先行者と後続者の特定を容易に行うことができ、また、認証用情報の変化によって利用者の連続通行があったことやその数などを容易に把握することができる。
【0038】
このように、本実施形態において、ゲート装置1は、自身の入口手前の所定範囲に向けて認証用情報としての超音波信号を送信し、この送信された認証用情報を、ゲート装置1に向かってくる利用者2の保持する携帯通信端末3が受信する。そして、携帯通信端末3は、利用者2がゲート装置1の電極マット12を踏むことによって、メモリ314に記録されたID情報及び受信した前記認証用情報を利用者2の人体を介してゲート装置1に送信し、ゲート装置1は、携帯通信端末3から受信したID情報及び認証用情報に基づいて当該携帯通信端末3を保持する利用者2の通行の許否を判定する。
【0039】
これにより、ゲート装置1は、利用者2による能動的な動作を必要とすることなく、利用者2の通行の許否を判定し、その判定結果に応じてゲート13の開閉を制御することができる。すなわち、利用者2は単に携帯通信端末3を保持していればよく、非常に便宜である。また、ゲート装置1における利用者2の通行の許否判定において、ID情報だけでなく、ゲート装置1の入口手前の所定範囲に向けて送信される認証用情報を用いるようにしたので、上述したように、電界結合による誤認証、すなわち、ゲート装置1が、携帯通信端末3を保持する後続者の接近によって携帯通信端末3を保持しない先行者の通行を許可してしまうことを抑制できる。
【0040】
以上、本発明の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に制限されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて更なる変形等が可能であることはもちろんである。以下のいくつか例示しておく。
【0041】
例えば、上述の実施形態において、利用者2が保持する携帯通信端末3は、ICカードホルダ31と、ICカードホルダ31に装着されたICカード32とによって構成されている。このような構成によれば、既存のICカードを利用することができると共に、利用者2の変更などに容易に対応できるので便宜である。
しかし、これに限るものではなく、携帯通信端末3は、そのID情報を記録すると共に超音波信号として送信された認証用情報を受信し、これらの情報(ID情報及び認証用情報)を利用者2の人体を介してゲート装置1に送信できる構成のものであればよい。
【0042】
また、前記認証用情報は、必ずしもゲート装置1から送信される必要はなく、その関連装置などから送信されるものであってもよい。
さらに、ゲート装置1又はその関連装置から送信される認証用情報は、比較的狭い範囲に絞って送信できるものであればよく、超音波信号以外の信号を用いることもできる。具体的には、指向性及び/又は直進性が高く、且つ短距離通信に適した無線信号、例えば、ミリ波信号やテラヘルツ波信号を用いることができる。すなわち、ゲート装置1又はその関連装置は、前記認証用情報をミリ波信号又はテラヘルツ波信号として送信するようにしてもよい。この場合には、例えば、ゲート装置1における超音波スピーカ11及びICカードホルダ31における超音波マイク312aを、ミリ波(テラヘルツ波)送受信アンテナに変更すればよい。
【0043】
つまり、携帯通信端末3は、そのID情報を記録する記録部と、無線送信された認証用情報を受信する受信部と、を有し、前記記録部に記録されたID情報及び前記受信部で受信した認証用情報を、人体を介してゲート装置1(認証処理装置)に送信可能な構成とすることができる。そして、好ましくは、前記認証用情報が、超音波信号、ミリ波信号又はテラヘルツ波信号として送信され、また、前記認証処理装置又はその関連装置から前記認証処理装置の手前の所定範囲に向けて送信される。
【0044】
なお、携帯通信端末3をこのような構成とすることにより、当該携帯通信端末3を用いた認証処理、換言すれば、人体通信を利用した認証処理において、上述したような電界結合による誤認証を抑制できるだけではなく、これに加えて又はこれとは別に、セキュリティ性の向上などの様々な改良を施すことも容易に行えるようになる。例えば、ゲート装置1等の認証処理装置とは別の場所で認証用情報を無線送信して携帯通信端末3に受信させるようにすれば、利用者2は、認証処理装置における認証処理に先立って前記別の場所に立ち寄らなければならず、これによって、セキュリティ性等を高めることが可能となる。この場合において、無線送信される認証用情報を、有効期限(時間、期間)付きの認証用情報とすれば、さらにセキュリティ性を高めることができる。
【0045】
また、上述の実施形態において、携帯通信端末3は、そのID情報を記録すると共に超音波信号として送信された認証用情報を受信し、これらの情報(ID情報及び認証用情報)を利用者2の人体を介してゲート装置1に送信している。
しかし、これに限るものではなく、携帯通信端末3は、前記認証用情報を受信したときに人体通信が可能となるように構成されてもよい。すなわち、前記認証用情報が、携帯通信端末3の人体通信送信部315を起動させる(人体通信可能な状態とする)起動信号としての機能を有するように構成する。この場合、ICカードホルダ31において、人体通信送信部315は、通常、スリープ状態(非アクティブ状態)にあり、超音波受信部312から前記認証用情報を受信したときにCPU313が人体通信送信部315をアクティブ状態とするように構成することができる。
このようにすれば、ゲート装置1と携帯通信端末3との間での不用な通信を抑制することができる。さらに、前記認証用信号と前記起動信号とを別々に無線送信するように構成すれば、電界結合による誤認証をさらに効果的に抑制することができる。
【符号の説明】
【0046】
1…ゲート装置(認証処理装置)、2…利用者、3…携帯通信端末、11…超音波スピーカ(情報送信部)、12…電極マット(人体通信受信部)、13…ゲート(被制御要素)、14…認証処理部、31…ICカードホルダ、31a…スリット(カード装着部)、32…ICカード、311…ICカードリーダ(情報読取部)、312…超音波受信部(受信部)、312a…超音波マイク、312b…超音波通信処理部、313…演算処理部CPU、314…メモリ(記録部)、315…人体通信送信部、315a…電界通信処理部、315b…電極部、316…バッテリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6