特許第6144135号(P6144135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144135
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】形材用牽引装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 35/02 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
   B21C35/02
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-148299(P2013-148299)
(22)【出願日】2013年7月17日
(65)【公開番号】特開2015-20180(P2015-20180A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年2月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】新井 克彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 雄一
【審査官】 酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−303622(JP,A)
【文献】 特開平08−066721(JP,A)
【文献】 特開昭57−094420(JP,A)
【文献】 米国特許第04307597(US,A)
【文献】 特開昭52−040459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出用ダイスを通過した形材(W)を牽引するための形材用牽引装置(10)において、
前記形材(W)の端部(Wa)を把持する把持部(12)と、前記把持部(12)を支持して前記形材(W)の牽引方向に移動する本体部(14)と、
前記本体部(14)の上側部分を前記牽引方向に案内する上側ガイドレール(16)と、前記本体部(14)の下側部分を前記牽引方向に案内する下側ガイドレール(18)とを備え、
前記把持部(12)は、前記上側ガイドレール(16)と前記下側ガイドレール(18)の間の高さに位置して、前記本体部(14)に支持されていることを特徴とする形材用牽引装置。
【請求項2】
前記本体部(14)には、上側ガイドレール(16)の表面を前記牽引方向に転がる上側車輪(50,52)と、下側ガイドレール(18)の表面を前記牽引方向に転がる下側車輪(54,56,58)と、前記本体部(14)を前記上側及び下側ガイドレール(16,18)に沿って駆動する駆動機構(60,62,64)とを備え、
前記駆動機構(60,62,64)の駆動源が、前記本体部(14)に設けられたサーボモータ(60)であり、前記形材(W)の牽引速度が前記サーボモータ(60)によって制御される請求項1記載の形材用牽引装置。
【請求項3】
前記上側車輪(50,52)及び前記下側車輪(54,56,58)は、それぞれ、前記本体部(14)の前後方向に離れた位置に一対に設けられている請求項2記載の形材用牽引装置。
【請求項4】
前記駆動機構(60,62,64)は、前記サーボモータ(60)によって回転駆動されるピニオン(62)と、前記下側ガイドレール(18)に沿って設けられ、表面に前記ピニオン(62)と噛み合う歯が形成されたラック(64)とを有し、
前記ピニオン(62)の回転軸は、前後方向に一対に設けられた前記下側車輪(50,52)の間の位置に設けられている請求項3記載の形材用牽引装置。
【請求項5】
前記把持部(12)は、位置調節機構(48)を介して前記本体部(14)に支持され、前記位置調節機構(48)により前記本体部(14)に対する高さ位置を調節可能に設けられた請求項1乃至4のいずれか記載の形材用牽引装置
【請求項6】
前記把持部(12)には、前記形材(W)の端部の下面を保持する下側ジョー(28)と、前記下側ジョー(28)の上方に配された上側ジョー(36)とが設けられ、前記上側及び下側ジョー(28,36)の間に前記形材(W)の端部を挟むことによって前記形材(W)を把持する請求項5記載の形材用牽引装置。
【請求項7】
前記把持部(12)には、前記上側及び下側ジョー(28,36)による前記形材(W)の把持を解除するとき、前記形材(W)を上方から下方または下方から上方に向けて押圧する引き離し機構(44)が設けられている請求項6記載の形材用牽引装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出用ダイスを通過し押し出し成形されたアルミニウム等の長尺材である形材を牽引するための形材用牽引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、形材の端部を把持するプラージョーと、プラージョーを上端部で支持するプラー本体と、プラー本体の下側部分を牽引方向に案内するレールと、プラー本体をチェーン駆動により牽引方向に移動させる牽引駆動源とを備えた押出材用牽引装置があった。この押出材用牽引装置には、所定の流体シリンダと検出手段とが設けられ、プラー本体の走行抵抗の変動や大小、形材にかかる張力の如何にかかわらず、形材に常に一定の張力を掛けてこれを牽引できるように、牽引速度が自動制御されるものである。
【0003】
また、押し出し機から押し出された形材の先端部を保持する構造として、特許文献2に開示されている押出用プラー装置があった。この装置は、アームの先端部に、形材の端部下面を受けるジョーが取り付けられると共に、該ジョーが受けた形材の端部をジョーとの協働によりチャックする爪を備え、アームは、後端部が枢支され、該枢支部を中心に上下方向に揺動し、ジョーの受け面の高さを調節することができるものである。この押出用プラー装置は、押出用ダイスの押出中心高さと、ジョーと爪でチャックされた形材の中心高さとを一致させる調節を行うことで、形材先端部の折れ曲がりが防止され、押出後の後面設備における形材の搬送やストレッチなどにおけるトラブルの発生を防止することができ、形材の断面形状を安定化することができる。
【0004】
その他、形材を牽引する牽引装置の構造として、特許文献3に開示されているように、押出装置から押し出される形材の先端部をチャックして、押出方向前方に設けられたラックアンドピニンオン機構により、形材を牽引する装置もある。この牽引装置は、ラックアンドピニオン機構が、押し出される形材の中心方向前方に位置した簡易なものであり、形材をその長手方向の中心で牽引している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−111919号公報
【特許文献2】特開平7−80541号公報
【特許文献3】特開2006−289470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の押出材用牽引装置の場合、形材を牽引するとき、プラー本体の上側部分に取り付けられたプラージョーには、押出機側に張力が掛かる。一方、プラー本体は、その下側部分に設けられたレールに沿って、プラー本体の下側部分に取り付けられたチェーンにより牽引方向に引っ張られる。従って、プラー本体には、牽引方向の前後に傾けるモーメントが作用する。これによって、プラー本体の下側部分のみに設けられた車輪には大きな走行抵抗が生じ、負荷の変動も生じ易く走行が不安定になり、大きな駆動力を要するものであった。さらに、プラー本体の牽引を、チェーンを介してモータ等の駆動源により行っているので、駆動機構が複雑化しエネルギーの損失も大きいものであり、細かい駆動制御を行うことができないものであった。そのため、所定の流体シリンダや検出手段を付設する等して、複雑な張力制御を行う必要があり、装置全体の構造も複雑なものとなっていた。また、形材を牽引した後に、次の牽引のためにプラー本体がレール上を戻る速度も、迅速性に欠け、生産効率の向上の妨げとなっていた。
【0007】
特許文献2の押出用プラー装置は、形材の先端部のチャック部分の構造を開示するもので、牽引駆動装置については開示していない。さらに、ジョーの受け面の高さは、アームの揺動により変更するので、受け面の傾きが変化し、形材の端部を保持する面が牽引方向である水平方向に一致せず、ジョーと爪による把持強度も不安定になりやすいという問題があった。
【0008】
特許文献3に開示された牽引装置のラックアンドピニオン機構の場合、形材の押出方向の中心にラックアンドピニオン機構を設けたものであり、大きな牽引力を必要とする形材の場合、牽引装置も大型となるため、牽引のための駆動機構を形材の中心に配置する構成を取ることが難しいという問題があった。
【0009】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、形材を安定に水平方向に牽引することができ、牽引速度や張力を良好に制御でき、生産性の向上にも寄与する形材用牽引装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、押出用ダイスを通過した形材を牽引するための形材用牽引装置であって、前記形材の端部を把持する把持部と、前記把持部を支持して前記形材の牽引方向に移動する本体部と、前記本体部の上側部分を前記牽引方向に案内する上側ガイドレールと、前記本体部の下側部分を前記牽引方向に案内する下側ガイドレールとを備え、前記把持部は、前記上側ガイドレールと前記下側ガイドレールの間の高さに位置して、前記本体部に支持されている形材用牽引装置である。
【0011】
前記本体部には、上側ガイドレールの表面を前記牽引方向に転がる上側車輪と、下側ガイドレールの表面を前記牽引方向に転がる下側車輪と、前記本体部を前記上側及び下側ガイドレールに沿って駆動する駆動機構とを備え、前記駆動機構の駆動源は前記本体部に設けられたサーボモータであり、前記形材の牽引速度が、前記サーボモータによって制御される構成であるものである。この場合、前記上側車輪及び前記下側車輪は、それぞれ、前記本体部の前後方向に離れた位置に一対に設けられていることが好ましい。さらに、前記駆動機構は、前記サーボモータによって回転駆動されるピニオンと、前記下側ガイドレールに沿って設けられ、表面に前記ピニオンと噛み合う歯が形成されたラックとを有し、前記ピニオンの回転軸は、前後方向に一対に設けられた前記下側車輪の間の位置に設けられた構成にすることが好ましい。また、前記把持部は、位置調節機構を介して前記本体部に支持され、前記位置調節機構により前記本体部に対する高さ位置を調節可能に設けられている。
【0012】
前記把持部には、前記形材の端部の下面を保持する下側ジョーと、前記下側ジョーの上方に配された上側ジョーとが設けられ、前記上側及び下側ジョーの間に前記形材の端部を挟むことによって前記形材を把持する構成にすることができる。この場合、前記把持部には、前記上側及び下側ジョーによる前記形材の把持を解除するとき、前記形材を上方から下方または下方から上方に向けて押圧する引き離し機構が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の形材用牽引装置によれば、本体部の上側部分が上側ガイドレールに案内され、下側部分が下側ガイドレールに案内されるので、本体部が移動して形材を牽引する際、本体部に掛かるモーメントを上下のガイドレールで受けて走行を安定化し、大きな牽引力が掛かっても走行抵抗が少ないものである。従って、所定の牽引速度や張力を維持する制御が容易である。また、駆動を本体部に設けたサーボモータにより行っているので、きめ細かな制御が可能であるとともに、牽引時の迅速な加速及び牽引後の迅速な戻りを可能とし、生産効率の向上に貢献する。
【0014】
また、所定の位置調節機構を設けることにより、把持部の水平性を維持したままで把持部の高さを調節できるので、形材の端部を水平に把持し、正確に水平方向に牽引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の形材用牽引装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2】この実施形態の形材用牽引装置の背面図である。
図3】この実施形態の形材用牽引装置の右側面図である。
図4】この実施形態の形材用牽引装置が有する把持部を示す正面図である。
図5図4の把持部の上側及び下側ジョーの部分を示す斜視図(a)、右側面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の形材用牽引装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の形材用牽引装置10は、図1図3に示すように、押出用ダイスを通過した形材Wの端部Waを把持する把持部12、把持部12を支持して形材Wの牽引方向に移動する本体部14、本体部14の上側部分を牽引方向に案内する上側ガイドレール16、及び本体部14の下側部分を牽引方向に案内する下側ガイドレール18を備えている。以下、水平面に対する鉛直方向を上方向または下方向とし、水平方向であって形材Wの牽引方向を前方向または後方向、上下方向及び前後方向に直交する方向を左方向または右方向とする。上下方向は高さ方向でもある。
【0017】
把持部12は、図3他に示すように、形材Wの端部Waを把持するヘッド部分20と、ヘッド部分12を支持するフレーム体22とで構成されている。把持部12による形材(W)の把持を行う上下方向での位置は、安定な牽引を行うために、上側ガイドレール16と下側ガイドレール18との間に位置する。ここで、形材Wは、1本のみを牽引する場合の他、複数本を把持して牽引する場合もあり、形材Wの形状や大きさにより設定される押出用ダイスの形状により、牽引する形材Wの本数が決まる。
【0018】
フレーム体22は、牽引方向に略水平に配された主フレーム22aを有し、主フレーム22aの先端部にヘッド部分20が取り付けられている。主フレーム22aの中央部は、図1図4他に示すように、所定長さの横フレーム22bを介して縦板24aに取り付けられ、主フレーム22aの基端部も同様に、横フレーム22cを介して別の縦板24aに取り付けられている。2つの縦板24aのほぼ中間の位置に縦板24bが配され、縦板24bと両側の各縦板24aとが取付用フレーム22eで連結されている。縦板24aは、後述する本体部14の可動部材26bに取り付けられ、縦板24bは、後述する本体部14のボールネジ装置27に取り付けられる。主フレーム22a、横フレーム22b,22c、2つの取付用フレーム22e、縦板24a,24bは、各部が複数の補強用フレーム22dによってトラス状に連結され、強固なフレーム体22を構成している。
【0019】
ヘッド部20には、形材Wの端部Waの下面を保持する下側ジョー28が設けられている。下側ジョー28は、図5に示すように、左右に開閉する一対のL字状部材で構成され、閉じた状態で、内側の底面28aに形材Wの端部Waの下面が当接する。下側ジョー28の開閉動作は、フレーム体22に取り付けられた電動シリンダ等の第一駆動装置30によって駆動され、第一ロッド32を介して歯車34を回転させることによって行われる。
【0020】
下側ジョー28の底面28aの上方には、複数のノコギリ歯状の板部材を平行に並べ、下向きに広い凹凸面を形成した上側ジョー36が設けられている。上側ジョー36の基端部は、主フレーム22aの先端部に設けられた軸部33に回動自在に軸支されている。上側ジョー36の回動は、フレーム体22に取り付けられた電動シリンダ等の第二駆動装置38によって駆動され、第二ロッド40を介してレバー42を変位させることによって行われる。
【0021】
さらに、軸部33の下面側の位置に、上側ジョー36の幅方向に配された棒状の押圧部材44aが設けられている。押圧部材44aは、両端部が一対の支持部材44bの先端部に支持され、支持部材44bの基端部が軸部33に回動自在に軸支されている。押圧部材44a及び支持部材44bは、上側ジョー36と同様に、第二駆動装置38によって駆動され、形材Wを取り外す際の引き離し機構44として働く。具体的には、上側及び下側ジョー36,28による形材Wの把持を解除するとき、押圧部材44aが形材Wを上方から下方に押圧し、上側ジョー36の歯に食い込んだ形材Wを上側ジョー36から引き離す動作を行う。
【0022】
上側ガイドレール16と下側ガイドレール18は、ほぼ断面の輪郭が正方形の長いレールであり、形材Wの牽引方向に敷設されている。なお、図示しないが、引き離し機構44による押圧が下方から上方に向けて行うものであってもよい。
【0023】
本体部14は、図2図3に示すように、上側部分が上側ガイドレール16に案内され、下側部分が下側ガイドレール18に案内されて移動する。本体部14の上側部分の側部に、ボールネジ装置27が垂直に立設されている。ボールネジ装置27を挟んで牽引方向の前後の2箇所には、ガイド用フレーム26aが垂直に立設され、各ガイド用フレーム26aの側面に、上下方向にスライドする可動部材26bが取り付けられている。上記の把持部12は、縦板24bがボールネジ装置27のナットに固定され、2つの縦板24aが可動部材26bに固定されて、本体部14に支持される。ボールネジ装置27のネジ軸の回転は、ボールネジ装置27の上端部に取り付けたサーボモータ46によって駆動され、ナットの上下方向の位置を制御することによって、把持部12の高さを調節することができる。すなわち、ボールネジ装置27、ガイド用フレーム26a、可動部材26bが、把持部12の位置調節機構48として構成されている。この位置調節機構48により、把持部12は上下方向に平行に移動し、把持部12の姿勢は、調節前と調節後で同じ姿勢のままの状態で高さ調節が可能である。
【0024】
本体部14の上側部分には、上側ガイドレール16の下面を牽引方向に転がる前後2つの縦車輪50と、上側ガイドレール16の一方の側面であって、把持部12が設けられた側とは反対の側面に接して、牽引方向に転がる前後2つの横車輪52が設けられている。
【0025】
本体部14の下側部分にも、下側ガイドレール18の上面を牽引方向に転がる前後2つの縦車輪54と、下側ガイドレール18の一方の側面であって把持部12が設けられた側とは反対の側面に接して、牽引方向に転がる前後2つの横車輪56と、下側ガイドレール18の他方の側面であって把持部12が設けられた側の側面に接して、牽引方向に転がる前後2つの横車輪58とが設けられている。本体部14の下側部分には、本体部14を上下側ガイドレール16,18に沿って各車輪50,52,54,56,58により走行するための大型のサーボモータ60が設けられている。
【0026】
サーボモータ60の回転軸には、図示しない歯車機構を介して、本体部14の駆動用のピニオン62が回転可能に連結されている。ピニオン62は、下側ガイドレール18に沿って固定され背面側に歯が形成されたラック64と噛み合い、本体部14を上下側ガイドレール16,18に沿って移動させる。ラック64を挟んでピニオン62の反対側には、ラック64の背面側に接して、ピニオン62とラック64の噛み合いを支持する支持ローラを内蔵した支持部材65が設けられている。
【0027】
本体部14には、サーボモータ60に隣接して、緊急時に本体部14の移動を止める緊急ブレーキ装置61が設けられている。緊急ブレーキ装置61は、停電等でサーボモータ60への給電が停止した場合に、下側ガイドレール18やラック64に接触して制動動作を行う装置である。
【0028】
次に、形材用牽引装置10が形材Wの端部Waを把持して牽引する動作について説明する。まず、形材用牽引装置10を押出用ダイスの近傍に配し、形材Wをヘッド部分20で把持する前に、位置調節機構48を駆動して把持部12の高さ位置を調節し、ヘッド部分20で把持した形材Wの中心高さが押出用ダイスの押出中心高さと一致するようにする。このとき、下側ジョー36の底面28aの高さ底面28aの角度が水平に維持された状態で変更されるので、特許文献2に開示された従来の押出用プラー装置のように、保持する面が形材Wの押出方向と異なってしまう問題は生じない。
【0029】
押出用ダイスを通過した複数の形材Wの端部Waをヘッド部分20で把持するとき、左右に開いている下側ジョー28を閉じて内側の底面28aで形材Wの端部Waの下面を保持し、その後、上側ジョー36を回動させて凹凸面を端部Waの上面に強く押し当てて挟むことによって、形材Wを把持する。
【0030】
把持部12が形材Wを把持すると、本体部14のサーボモータ60を駆動して形材Wを牽引する。本体部14の上側部分は重い把持部12を支持しているので、把持部12と反対側にある横車輪52が上側ガイドレール16の側面に強く接触して本体部14の姿勢を保持し、横車輪52及び縦車輪50が上側ガイドレール16の表面から離れることなくスムーズに転がる。したがって、本体部12の上側部分は、上側ガイドレール16に沿って円滑に案内される。本体部14の下側部分については、横車輪58,56が下側ガイドレール18の左右側面をしっかり挟持し、横車輪58,56及び縦車輪54が下側ガイドレール18の表面から離れることなくスムーズに転がる。したがって、本体部12の下側部分も、下側ガイドレール18に沿って円滑に案内される。特に、上側及び下側部分がそれぞれ円滑に移動するので、本体部14に掛かるモーメントに対して、各車輪50,52,54,56,58が上側下側レール16,18に接して、姿勢を維持し、特許文献1に開示された従来の押出材用牽引装置のように本体部の傾きや、車輪への大きな負荷変動等の問題は発生しない。
【0031】
ヘッド部20は、把持を解除するとき、上側ジョー36を下側ジョー28から離す方向に移動させると共に、引き離し機構44の押圧部材44aを下側ジョー28の方向に移動させる。上側ジョー36のノコギリ歯状の凹凸面は形材Wの表面に食い込むので、形材Wが凹凸面から離れにくいが、押圧部材44aが形材Wを下側ジョー28の方向に押圧することで、形材Wの端部Waが上側ジョー36から確実に引き離される。そして、下側ジョー28を左右に開くことによって、形材Wの端部Waを開放する。
【0032】
形材用牽引装置10の移動は、サーボモータ60を制御することによって自在に調節でき、往路の移動速度(牽引速度)は比較的低速に精密調整し、復路の移動速度(戻りの速度)は高速化することも容易である。戻りの速度を高速化すれば、次の形材Wの牽引作業を素早く開始できるので、複数回の牽引作業を効率よく行うことができる。
【0033】
以上説明したように、この実施形態の形材用牽引装置10によれば、本体部14の上側部分が上側ガイドレール16に案内され、下側部分が下側ガイドレール18に案内されるので、形材Wを牽引するとき、本体部14の姿勢が安定し、移動抵抗が小さく、牽引速度や張力の制御を精密行うことができ、制御も容易である。
【0034】
また、位置調節機構48が設けられ、把持部12の水平性を維持したまま把持部12の高さを調節することができ、形材Wの端部Waを水平に把持し、正確に水平方向に牽引することができる。このため、異なる形状の形材Wを牽引する際に、牽引方向の中心位置の高さが変わっても、形材Wへの把持を行う姿勢は同じようにでき、高さ調節による牽引状態の変化が少ないものになる。
【0035】
なお、本発明の形材用牽引装置は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、把持部のヘッド部分の構造は、上側及び下側ジョーの間に形材の端部を挟持する構造に限定されず、複数の形材を各々適宜ジョーと爪で把持する構造でも良く、複数本をまとめて保持する構造でも良い。
【0036】
本体部の上側部分と下側部分に設ける車輪の数や取り付け位置は変更してもよい。例えば、本体部が前後方向に長い場合は、車輪の数を増やしたり、前後方向の取り付けピッチを広くしたりするとよい。また、上記実施形態が有する複数の動力源(電動シリンダ、サーボモータ等)や動力伝達機構(リンク機構等)は一例に過ぎず、形材用牽引装置の規模や必要なパワーに応じて自由に選択することができる。
【0037】
上記実施形態の引き離し機構は、下側ジョーの表面に形材が食い込む場合は、引き離し機構は、下側ジョー側に設けられていても良く、両方に設けられていても良い。
【符号の説明】
【0038】
10 形材用牽引装置
12 把持部
14 本体部
16 上側ガイドレール
18 下側ガイドレール
20 ヘッド部分
22 フレーム体
28 下側ジョー
36 上側ジョー
44 引き離し機構
48 位置調節機構
50,54 縦車輪
52,56,58 横車輪
60 サーボモータ
62 ピニオン
64 ラック
W 形材
Wa 端部
図1
図2
図3
図4
図5