(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144144
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】地盤改良機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
E02D3/12 102
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-158814(P2013-158814)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-30978(P2015-30978A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年6月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】児玉 敦史
【審査官】
小池 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−203659(JP,A)
【文献】
特開平07−233524(JP,A)
【文献】
特開2002−167747(JP,A)
【文献】
特開2006−045967(JP,A)
【文献】
米国特許第05890844(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E21B 1/00−49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機に立設したリーダに、スクリューシャフトを回転駆動するスクリュー駆動装置を昇降可能に設け、該スクリューシャフトの上端に地盤改良剤の注入ホースをスイベルジョイントを介して接続した地盤改良機において、
前記スクリュー駆動装置に設けられた伸縮ロッドと、
該伸縮ロッドと前記スイベルジョイントとを連結する連結部材とを有し、
前記伸縮ロッドは、径の異なる複数のパイプを同軸に摺動可能に連結して伸縮可能に形成され、最外部の大径パイプが前記スクリュー駆動装置に固定され、最内部の小径パイプの上端に前記大径パイプと同じ外径の大径部が設けられるとともに、該大径部の上部には、大径部の外径よりも大きい鍔部材が設けられ、
前記伸縮ロッドは、前記連結部材に設けられた前記大径部の外径より大きく、かつ、鍔部材の外径よりも小さい内径を有する挿通孔に挿通されるとともに、
前記連結部材に、前記鍔部材の上面が当接することにより前記伸縮ロッドの上部側への伸びを防ぐ伸び止め部材が、前記挿通孔を跨ぐように立設されていることを特徴とする地盤改良機。
【請求項2】
前記伸び止め部材は、一本の棒材をコ字状に折り曲げることにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。
【請求項3】
前記伸び止め部材は、板材をコ字状に組合せたことにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の地盤改良機。
【請求項4】
前記伸び止め部材と前記鍔部材との間に緩衝プレートを設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の地盤改良機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良機に関し、詳しくは、スイベルジョイントからスクリューシャフトを介して掘削した穴に地盤改良剤を注入する地盤改良機に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良機は、リーダに沿って昇降可能に設けたスクリュー駆動装置で中空のスクリューシャフトを回転させ、スクリューシャフト下端の掘削具にて掘削作業を行うとともに、バッチャプラントから注入ホースを介して圧送される地盤改良剤をスクリューシャフトの上端に設けたスイベルジョイントからスクリューシャフト内に注入し、掘削具の先端から掘削した穴内に地盤改良剤を注入しながら撹拌し、地盤改良剤を硬化させて地盤の改良作業を行っている。
【0003】
この種の地盤改良機において、作業中に、スクリューシャフトの回転によってスイベルジョイントがつれ回りするのを防止するために、径の異なる複数のパイプを摺動可能に連結して伸縮可能な状態としたテレスコピック構造の回り止め部材を採用しており、最外部の大径パイプをスクリュー駆動装置に固定するとともに、最内部の小径パイプの上端にアームの一端を固定し、このアームでスイベルジョイントを保持している。このようなテレスコピック構造の回り止め部材の各パイプには、縮めたときに重なり合う位置にロックピン挿通孔を設け、ロックピンを挿通することにより、輸送中等に誤って伸びないようにしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−203659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるように、回り止め部材をロックピンにより伸び止めした場合、作業時にロックピンを外さなければいけないという作業性が悪いだけでなく、作業時に誤ってロックピンを挿入したまま回り止め部材を伸ばしてロックピンを曲げってしまったり、作業中に取り外したロックピンを紛失したりするといった問題が生じる可能性があった。
【0006】
そこで、本発明は、作業中のスイベルジョイントのつれ回りを防止するためにテレスコピック構造の回り止め部材を使用する場合でも、簡単な構造で輸送時の伸び止めをすることができ、作業時の安全性、作業性の向上を図ることができる地盤改良機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の地盤改良機は、作業機に立設したリーダに、スクリューシャフトを回転駆動するスクリュー駆動装置を昇降可能に設け、該スクリューシャフトの上端に地盤改良剤の注入ホースをスイベルジョイントを介して接続した地盤改良機において、前記スクリュー駆動装置に設けられた伸縮ロッドと、該伸縮ロッドと前記スイベルジョイントとを連結する連結部材とを有し、前記伸縮ロッドは、径の異なる複数のパイプを同軸に摺動可能に連結して伸縮可能に形成され、最外部の大径パイプが前記スクリュー駆動装置に固定され、最内部の小径パイプの上端に前記大径パイプと同じ外径の大径部が設けられるとともに、該大径部の上部には、大径部の外径よりも大きい鍔部材が設けられ、前記伸縮ロッドは、前記連結部材に設けられた前記大径部の外径より大きく、かつ、鍔部材の外径よりも小さい内径を有する挿通孔に挿通されるとともに、前記連結部材に、前記鍔部材の上面が当接することにより前記伸縮ロッドの上部側への伸びを防ぐ伸び止め部材が、前記挿通孔を跨ぐように立設されていることを特徴としている。
【0008】
また、前記伸び止め部材は、一本の棒材をコ字状に折り曲げることにより形成されたり、板材をコ字状に組合せたことにより形成されたりすることが好ましく、前記伸び止め部材と前記鍔部材との間に緩衝プレートを設けることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の地盤改良機によれば、伸縮ロッドが挿入される挿通孔を跨ぐように伸び止め部材が立設され、伸び止め部材と鍔部材の上面が当接することにより、輸送時の伸び止めが確実に行われるとともに、伸び止め部材がスイベルジョイントとほぼ同じ高さであることから、作業時の高さ制限等にも影響は及ばさない。また、伸び止め部材を一本の棒材を折り曲げたり、板材をコ字状に組合せたりといった簡単な構造で形成することができるから、製造がしやすい。また、緩衝プレートを伸び止め部材と鍔部材との間に設けることにより、長時間の輸送等でも伸縮ロッドや伸び止め部材が破損するといった問題はなく、必要に応じて緩衝プレートのみを交換すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の地盤改良機の第1形態例を示す側面図である。
【
図3】同じく伸縮ロッドが伸長した状態を示す要部の正面図である。
【
図4】同じく伸縮ロッドが短縮した状態を示す要部の正面図である。
【
図5】同じく伸縮ロッド及び伸び止め部材の断面図である。
【
図7】本発明の第2形態例を示す地盤改良機の伸縮ロッド及び伸び止め部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図6は、本発明の第1形態例を示すもので、地盤改良機1は、走行部2の上に旋回可能に設けられたベースマシン3と、該ベースマシン3の前部に起伏可能に設けられたリーダ4と、該リーダ4を後方から支持するバックステー5と、前記リーダ4に昇降可能に設けられたスクリュー駆動装置6と、リーダ4の下端に設けられたスクリューガイド7と、図示しないバッチャプラントから圧送される地盤改良剤を注入ホース8からスクリューシャフト9内に注入するスイベルジョイント10と、該スイベルジョイント10のつれ回りを防止するための回り止め部材となる伸縮ロッド11とを備えている。
【0012】
また、スクリューシャフト9の上端には、伸縮ロッド11とスイベルジョイント10とを連結する連結部材12と、注入ホース8のスイベルジョイントへの導入部を保持するホース保持部材13とが、平面視V字状に一体に設けられている。
【0013】
スクリューシャフト9は、リーダ4より長尺で、内部軸方向に地盤改良剤の注入孔を有するパイプ状のものであって、下端には掘削具9aと撹拌具9bとが設けられ、長さ方向中央部と上端部とには、スクリュー駆動装置6に係合する角軸部9c,9dがそれぞれ設けられている。
【0014】
伸縮ロッド11は、径の異なる3本のパイプ11a,11b,11cを同軸に摺動可能に連結し、前記スクリューシャフト9に沿って上方に伸縮可能な状態としたテレスコピック構造に形成されており、最外部の大径パイプ11aの下部がブラケット6aを介して前記スクリュー駆動装置6の側面に固定される。また、前記大径パイプ11aと同じ外径を有する大径部14の上端に、該大径部14の外径より大径の鍔部材15が一体に形成され、該鍔部材15は最内部の小径パイプ11cの上端にボルト16により固設されている。
【0015】
また、連結部材12は、前記伸縮ロッド11の大径パイプ11a及び前記大径部14が挿通可能な内径を有する挿通孔17を有するとともに、該挿通孔17を跨ぐように伸び止め部材18が立設されており、該伸び止め部材18によって伸縮ロッド11が上方へ抜け出ることが防止されている。鍔部材15の上部には、鍔部材15と伸び止め部材18が当接する際の衝撃をやわらげるための緩衝プレート21が、ボルト22によって設けられている。
【0016】
伸び止め部材18は、両端部に雄ネジ部を設けた一本の棒材をコ字状に折り曲げることにより形成され、両端部を連結部材12の伸び止め部材挿通孔19,19に挿通し、雄ネジ部にナット20,20を締結することにより固定されている。
【0017】
また、挿通孔17の上下開口端内周面には、開口端側が拡開した円錐面からなるガイド面17a,17bがそれぞれ設けられているとともに、大径パイプ11aの上端外周面及び大径部14の下端外周面には、それぞれ先端側が小径となる円錐面からなるガイド面11d及び14aが設けられている。
【0018】
このように形成した地盤改良機1により、リーダ4より長尺のスクリューシャフト9を使用して地盤改良を行う手順に基づいて前記伸縮ロッド11及び連結部材12の動きを説明する。まず、作業開始前は、
図1,2に示すように、スクリュー駆動装置6はリーダ4の上端に配置され、スクリューシャフト9の中間部の角軸部9cがスクリュー駆動装置6に係合し、スクリューシャフト9の上部はスクリュー駆動装置6の上方に大きく突出した状態、下端の掘削具9aは地面から上昇した状態となっている。
【0019】
このとき、スクリューシャフト9の上端に接続されたスイベルジョイント10の高さに応じて連結部材12が上昇した位置になり、これに伴って伸縮ロッド11も最大に伸長した状態となっている。また、伸縮ロッド11は、中段及び上段のパイプ11b,11cの自重によって短縮する方向に力が作用しているが、
図3に示すように、連結部材12の挿通孔17の上側開口部周囲が鍔部材15の下面に当接していることによって伸長状態が維持される。
【0020】
この状態でスクリュー駆動装置6を作動させてスクリューシャフト9を回転駆動するとともに、スクリュー駆動装置6をリーダ4に沿って下降させ、同時に注入ホース8からスイベルジョイント10を介してスクリューシャフト9内に地盤改良剤を注入する。このとき、伸縮ロッド11は、スクリュー駆動装置6及びスクリューシャフト9と共に下降するので、伸長状態を保ったままの状態となっている。
【0021】
スクリュー駆動装置6をリーダ4の下端に下降させた後、スクリュー駆動装置6及び地盤改良剤の注入を停止して角軸部9cとスクリュー駆動装置6との係合状態を解除し、スクリューシャフト9の上端部の角軸部9dと係合する位置までスクリュー駆動装置6を上昇させる。スクリュー駆動装置6は、スクリューシャフト9との係合状態を解除した状態で上昇するため、スクリュー駆動装置6の上昇に伴ってスクリューシャフト9の突出量が減少し、スクリュー駆動装置6とスイベルジョイント10との距離が次第に短くなる。
【0022】
これに伴って伸縮ロッド11が縮まっていき、中段及び上段のパイプ11b,11cは共に大径パイプ11a内に収まった状態になり、小径パイプ11cの上端に設けられた大径部14の下端が大径パイプ11aの上端に当接することによって、
図4に示すように伸縮ロッド11が最も短縮した状態になる。
【0023】
また、輸送時状態にするには、スクリューシャフト9の下部側を取り外したうえで、バックステー5を短縮させて、リーダ4を横に倒す。その際に、
図4に示すような伸縮ロッド11の短縮状態を維持したまま、スクリュー駆動装置6がリーダ4に設けられている。このような構成にすることにより、輸送中に伸縮ロッド11の小径パイプ11cが上側に伸びようとしても、伸び止め部材と鍔部材に設けられた緩衝プレートが当接するので、それ以上は伸びないため、安全な輸送が可能となる。
【0024】
図7は、本発明の第2形態例を示し、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。本形態例の伸び止め部材30は、挿通孔17の周囲に対向して立設された一対の側面板31,31と、両側面板を繋ぐように設けられた天井板32とから形成されている。また、緩衝プレート33は、天井板32の下面にボルト34によって固定されている。このように形成することにより、連結部材12に伸び止め部材挿通孔ほどの孔を設ける必要はなく、側面板31を固定するためのボルト穴を設ける程度で十分である。また、天井板32に緩衝プレートを設けるので、既存の伸縮ロッドを用いる場合には、伸縮ロッドへの加工等を施さなくてもすむ。
【0025】
なお、連結部材12におけるスイベルジョイント10の保持位置は、つれ回りするのを防止することができれば適宜な位置に設定することができる。さらに、連結部材12とホース保持部材13を平面視V字状に一体になったものを用いたが、連結部材12の昇降に伴って注入ホース8を保持することができれば、位置や形状を任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0026】
1…地盤改良機、2…走行部、3…ベースマシン、4…リーダ、5…バックステー、6…スクリュー駆動装置、6a…ブラケット、7…スクリューガイド、8…注入ホース、9…スクリューシャフト、9a…掘削具、9b…撹拌具、9c,9d…角軸部、10…スイベルジョイント、11…伸縮ロッド、11a,11b,11c…パイプ,12…連結部材、13…ホース保持部材、14…大径部、15…鍔部材、16…ボルト、17…挿通孔、18…伸び止め部材、19…伸び止め部材挿通孔、20…ナット、21…緩衝プレート、22…ボルト、30…伸び止め部材、31…側面板、32…天井板、33…緩衝プレート、34…ボルト