(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144163
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】軒樋継手及び軒樋の接続構造
(51)【国際特許分類】
E04D 13/068 20060101AFI20170529BHJP
【FI】
E04D13/068 501B
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-189812(P2013-189812)
(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公開番号】特開2015-55117(P2015-55117A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146835
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 義文
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100119091
【弁理士】
【氏名又は名称】豊山 おぎ
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸二
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−301574(JP,A)
【文献】
特開平10−317612(JP,A)
【文献】
特開2005−248534(JP,A)
【文献】
特開2002−349027(JP,A)
【文献】
特開平09−105208(JP,A)
【文献】
実開平06−028049(JP,U)
【文献】
特開2002−129713(JP,A)
【文献】
特開平09−302863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒樋の端部間の内側に跨って配置され、上流側の前記軒樋から下流側の前記軒樋に向かって流れる雨水の流路を形成する樋状体を備え、
前記樋状体の内底面に、前記内底面における前記上流側の軒樋側の端縁から前記下流側の軒樋側の端縁まで連続する凹溝が形成されており、
前記凹溝の幅方向の少なくとも片側の端縁に、立上り壁が設けられていることを特徴とする軒樋継手。
【請求項2】
前記樋状体の前記凹溝に、屈曲部または湾曲部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の軒樋継手。
【請求項3】
前記立上り壁が前記凹溝の前記幅方向の両端縁に設けられ、前記両端縁に設けられた前記立上り壁の上部間に上壁が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軒樋継手。
【請求項4】
前記上壁に少なくとも一の貫通孔が設けられていることを特徴とする請求項3記載の軒樋継手。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の軒樋継手を用いて軒樋を接続させたことを特徴とする軒樋の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軒樋継手及び軒樋の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
軒樋は、所定の長さ寸法で成形又は切断された複数のものを軒樋継手によって直線状に接続させたり、略直交する方向に接続させたりして、家屋等の軒先の直線部又はコーナー部に設置される。
従来より、軒樋の接続構造としては、長手方向に隣接するよう配置させた上流側の軒樋と下流側の軒樋との各端部の内側に軒樋継手を配置させて2つの軒樋を接続する方法が知られている。この軒樋継手の内側には、雨水の流路が形成され、上流側の軒樋内の雨水は、軒樋継手の雨水の流路を通って下流側の軒樋側に流されるようになっている。
【0003】
しかし、軒樋の内側に軒樋継手を配置した場合、上流側の軒樋の内底面と軒樋継手の内底面との間に、軒樋継手の底部の厚さ分だけ段差ができる。そうすると、上流側の軒樋内の軒樋継手との間の段差部において雨水が残留し得るため、残留した雨水により藻やコケが生えることが懸念されることがあった。
【0004】
そこで、軒樋継手の底部に、両方の軒樋側に開口する孔部を設け、上流側の軒樋における残留雨水を毛細管作用で孔部内に吸引し、下流側の軒樋側に流すようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4797799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の軒樋継手の場合、毛細管作用により上流側の軒樋における段差部の残留雨水を軒樋継手の底部に設けた孔部へ吸引することができるようにするため、孔部の直径を非常に小さくする必要がある。
しかし、孔部の直径を小さくすると孔部が塵埃類により容易に目詰まりしてしまうため、上流側の軒樋における段差部の残留雨水を、下流側の軒樋側に流すことが困難又は不可能となり、依然として上流側の軒樋における段差部の雨水が残留するおそれがある。したがって、従来の孔部を備えた軒樋継手では、上記課題を解決するのに十分ではなかった。
【0007】
本発明は、上流側の軒樋における軒樋継手との段差部の残留雨水を下流側の軒樋側に円滑に流すことができる軒樋継手を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、軒樋の端部間の内側に跨って配置され、上流側の前記軒樋から下流側の前記軒樋に向かって流れる雨水の流路を形成する樋状体を備え、前記樋状体の内底面に、前記内底面における前記上流側の軒樋側の端縁から前記下流側の軒樋側の端縁まで連続する凹溝が形成されて
おり、前記凹溝の幅方向の少なくとも片側の端縁に、立上り壁が設けられていることを特徴としている。
本発明に係る軒樋継手によれば、上流側の軒樋における軒樋継手との段差部に残留した雨水が、樋状体の凹溝を通過して下流側の軒樋側に円滑に流される。
また、凹溝を横切るようにして凹溝上に被せられた枯葉等の一部が、立上り壁によって持ち上げられるので、凹溝が枯葉等で閉塞されるのを抑制することができる。
【0009】
本発明に係る軒樋継手は、前記樋状体の前記凹溝に、屈曲部または湾曲部が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、凹溝を全長に亘って直線状に形成した場合に比べて、凹溝を設けた底面を形成する部分、及び樋状体の強度を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る軒樋継手は、前記立上り壁が前記凹溝の前記幅方向の両端縁に設けられ、前記両端縁に設けられた前記立上り壁の上部間に上壁が設けられていてもよい。
この構成によれば、凹溝を形成した部分、立上り壁、及び樋状体の強度向上を図ることができる。
【0012】
本発明に係る軒樋継手は、前記上壁に少なくとも一の貫通孔が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、上壁の貫通孔を通して空気が流動するので、凹溝を流れる残留雨水の流動を促進することができる。
【0013】
本発明に係る軒樋の接続構造は、上記いずれかに記載の軒樋継手を用いて軒樋を接続させたことを特徴とする。
この構成によれば、上記いずれかの作用又は機能を有する軒樋の接続構造とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上流側の軒樋における軒樋継手との段差部の残留雨水を下流側の軒樋側に円滑に流すことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る軒樋継手と、上流側の軒樋と、下流側の軒樋と、曲がりタイプの軒樋継手とにより接続される軒樋の接続構造の例を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る軒樋継手を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る軒樋継手を
図2の矢印Aから視た側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る軒樋継手の変形例1を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る軒樋継手を
図4の矢印Bから視た側面図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る軒樋継手の変形例2を示す斜視図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る軒樋継手を
図6の矢印Cから視た側面図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る軒樋継手の変形例3を示す斜視図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る軒樋継手を
図8の矢印Dから視た側面図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係る軒樋継手の変形例4を示す斜視図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る軒樋継手を
図10の矢印Eから視た側面図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係る軒樋継手の変形例4の他の例の底板面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る実施形態の軒樋継手について、図面を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態の軒樋の接続構造Xは、軒樋継手1と、上流側の軒樋2と下流側の軒樋3とを備えている。
【0017】
軒樋継手1は、軒樋2,3の各端部4,5の内側に跨って配置され、上流側の軒樋2から下流側の軒樋3に向かって流れる雨水の流路を形成する断面略U字状の樋状体6を備えている。樋状体6の底板7おける内底面8には、内底面8における上流側の軒樋2側の端縁9から下流側の軒樋3側の端縁10まで連続する残留雨水の流路である凹溝11が形成されている。
なお、図中の符号12は、軒先の出隅又は入隅に用いられる曲がりタイプの軒樋継手を示す。本発明は、この曲がりタイプの軒樋継手12にも適用することができる。
【0018】
軒樋継手1の樋状体6は、
図2に示すように、断面が略U字状かつ多角形に形成され、その内部空間は雨水の流路となっている。
この樋状体6は、建物の鼻隠板(図示せず)に接近させかつ鼻隠板に対向させて配置される後方側板13と、後方側板13から離間する前方側板14と、後方側板13の下端部と前方側板14の下端部とを連結する底板7とを有している。
【0019】
凹溝11は、底板7の内底面8における幅方向中間部に形成されている。後方側板13には、凹凸部15、舌片16等が設けられている。
凹溝11の底部17の肉厚は、
図3に示すように、その両側の部分より薄く形成されている。凹溝11の両側面には、外側に向かって広がる方向に傾斜する傾斜面が設けられている。
【0020】
本実施形態においては、凹溝11は所定の幅寸法で直線状に形成されている。ここでは、凹溝11の幅寸法は、内底面8における雨水の流れる方向と直交する方向の幅の約1/4に形成されているが、1/4以上又は1/4以下でもよい。凹溝11の底部17の厚さ寸法は、凹溝11の両側の部分の厚さ寸法の略1/2に形成されているが、1/2以下又は1/2以上でもよい。
【0021】
図1の上流側の軒樋2及び下流側の軒樋3は内部空間を有する断面多角形の略U字状に形成されている。これらの軒樋2及び3は、軒樋継手1と同様に、後方側板18、前方側板19及び底板20を有している。曲がりタイプの軒樋継手12の場合は、全体的にL字状に形成され、その断面は多角形のU字状に形成されている。
【0022】
次に、この軒樋継手1の作用について説明する。
図1に示すように、上流側の軒樋2と下流側の軒樋3とを接続する場合は、軒樋継手1の一端部を上流側の軒樋2における端部4の内側に嵌合させ、軒樋継手1の他端部を下流側の軒樋3における端部5の内側に嵌合させる。これにより、上流側の軒樋2と下流側の軒樋3とが接続され、上流側の軒樋2内の雨水が軒樋継手1を経由して下流側の軒樋3側に流される。
【0023】
このように、上流側の軒樋2と下流側の軒樋3とが、両軒樋2,3の内側に配置された軒樋継手1で接続された状態では、上流側の軒樋2における端部の内面に、軒樋継手1の底板7の厚さ分だけ段差ができる。従って、従来の技術では、上流側の軒樋2内における上記段差部に雨水が残留し易くなる。
【0024】
本実施形態の軒樋継手1によれば、凹溝11において底板7が薄肉に形成されているため、上流側の軒樋2における上記段差部に残留した雨水が、軒樋継手1における凹溝11を通って下流側の軒樋3側に円滑に流されやすくなる。従って、上流側の軒樋2における上記段差部に残留した雨水により前記段差部において藻やコケが生えることを防止することができるという効果が得られる。
また、凹溝11は、従来の軒樋継手のように毛細管作用により雨水を吸水するものではないので、横断面積(残留雨水の流路面積)を比較的大きくすることができる。従って、凹溝11が砂等で閉塞されるのを防止することができるという効果が得られる。
【0025】
次に、軒樋継手1の変形例1〜4について説明する。以下の説明において、
図2及び
図3と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0026】
(変形例1)
図4及び
図5は、変形例1の樋状体21を示す。この樋状体21においては、底板7の内底面8に凹溝22が設けられている。凹溝22の幅方向(すなわち凹溝22において残留雨水が流れる方向と直交する方向)の両端縁に、立上り壁23,23が設けられている。
【0027】
この構成によれば、底板7及び樋状体21の強度向上を図ることができる。また、凹溝22を横切るようにして凹溝22上に被せられた枯葉等の一部が、立上り壁23により持ち上げられるので、凹溝22が枯葉等により閉塞されるのを抑制できる。
なお、立上り壁23は、凹溝22の片側の端縁にのみ設けることもできる。
【0028】
(変形例2)
図6及び
図7は、変形例2の樋状体24を示す。この樋状体24においては、底板7の内底面8に凹溝25が設けられている。凹溝25の幅方向の両端縁には、凹溝25の全長に亘って立上り壁26、26が設けられている。立上り壁26,26の上部間、本実施形態では上端部間に上壁27が設けられている。上壁27には、矩形の貫通孔28が、互いに間隔を空けて複数形成されている。
【0029】
この構成によれば、立上り壁26、底板7及び樋状体24の強度向上を図ることができる。また、上壁27に形成された貫通孔28を通して空気が流通するので、凹溝25を流れる残留雨水の流動を促進することができる。
【0030】
(変形例3)
図8及び
図9は、変形例3の樋状体29を示す。この樋状体29においては、底板7の内底面8における後方側板13寄りの位置、及び前方側板14寄りの位置に、それぞれ凹溝30が設けられている。本実施形態では、凹溝30は、後方側板13及び前方側板14の内面から所定の幅寸法で設けられている。
図9に示すように、後方側板13側に形成された凹溝30及び前方側板14側に形成された凹溝30の各端縁には、それぞれ立上り壁31が設けられている。
【0031】
この構成によれば、樋状体29の底板7における内底面8に、二つの凹溝30が互いに離間して形成されているので、凹溝30が枯葉等により閉塞されるリスクを分散することができる。
なお、上記変形例1から3において、立上り壁23,26,31は凹溝22,25,30に沿ってその全長に亘って設けられているが、立上り壁23,26,31は、長手方向に部分的に又は間欠的に複数設けることもできる。
【0032】
(変形例4)
図10,
図11は、変形例4の樋状体32を示す。この樋状体32の底板7における内底面8には、二つの凹溝33,33が設けられている。
凹溝33における長手方向のこれらの凹溝33,33は、間隔を空けて平行に形成さている。凹溝33は、一つだけ形成されていても又は互いに間隔を空けて三つ以上形成されていてもよい。
【0033】
この構成による場合でも、樋状体29の底板7における内底面8に、二つの凹溝33が互いに離間して形成されているので、凹溝33が枯葉等により閉塞されるリスクを分散することができるという効果が得られる。
また、凹溝33が形成されていることにより、前方壁部19及び後方壁部18を内部空間側に撓ませ易くなる。したがって、軒樋継手1を軒樋2,3の端部4,5に接着剤を塗布して接続する際に、塗布された接着剤がかき取られ難くなるため、止水不良を防止することができるという効果が得られる。
【0034】
更に、この変形例4の凹溝33,33は、
図12に示すように、樋状体32の延在方向に対して交差するように、かつ凹溝33,33同士が互いに交叉するように形成されていてもよい。具体的には、中間部には、一の屈曲部34が設けられている。屈曲部34は、二以上設けることができる。屈曲部34に代えて、湾曲部とされていてもよい。
この構成によれば、凹溝33が樋状体33の延在方向に沿って直線状に形成されている場合に比べて、底板7及び樋状体32の強度向上を図ることができる。
なお、同様の理由から、上記実施例及び変形例1から3で示した凹溝11,22,30等も、
図12に示すように蛇行して形成されていてもよい。
【0035】
以上、本発明の軒樋継手1の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態で示した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
すなわち、上記実施形態は、直線状の軒樋継手1を例として説明したが、本発明の軒樋継手1の凹溝11,22,25,30,33、立上り壁23,26,31及び上壁27等は、曲がりタイプの軒樋継手等に適用することもできる。
【0036】
また、上記実施形態の軒樋継手1は、断面が多角形状の軒樋2,3に適用する場合について説明したが、半円弧状等の軒樋に適用することもできる。
また、上記の実施形態又はその変形例では、凹溝11,22,30,30等が一又は二つ設けられた構成となっているが、凹溝は三つ以上設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 軒樋継手, 2 上流側の軒樋, 3 下流側の軒樋, 6 樋状体, 8 内底面, 9,10 内底面の端縁, 11 凹溝, 21 変形例1の樋状体, 22 凹溝, , 23 立上り壁, 24 変形例2の樋状体, 25 凹溝, 26 立上り壁, 27 上壁, 28 貫通孔, 29 変形例3の樋状体, 30 凹溝, 31 立上り壁, 32 変形例4の樋状体, 33 凹溝, 34 屈曲部