特許第6144166号(P6144166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6144166
(24)【登録日】2017年5月19日
(45)【発行日】2017年6月7日
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 8/10 20060101AFI20170529BHJP
   F21V 7/00 20060101ALI20170529BHJP
   F21V 5/04 20060101ALI20170529BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20170529BHJP
【FI】
   F21S8/10 371
   F21S8/10 385
   F21V7/00 570
   F21V5/04 600
   F21Y115:10
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-192671(P2013-192671)
(22)【出願日】2013年9月18日
(65)【公開番号】特開2015-60679(P2015-60679A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今関 規文
(72)【発明者】
【氏名】三浦 直樹
【審査官】 丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−146376(JP,A)
【文献】 特開2005−142132(JP,A)
【文献】 特開2013−182825(JP,A)
【文献】 特開平7−65607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 8/10 − 8/12
F21V 5/04
F21V 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けるランプハウジングと、ランプハウジングの前面を覆うレンズカバーと、前記ランプハウジングと前記レンズカバーとで囲まれた灯室内に設けた少なくとも一つの光源ユニットと、前記光源ユニットと前記レンズカバーの間に設けたインナーレンズユニットとを有する車両用灯具であって、
前記インナーレンズユニットは、前記光源ユニット側から出射した光が入射する入射面となる光源ユニット側表面と、当該光源ユニット側表面の反対側の表面であって出射面となるレンズカバー側表面を備えた第1インナーレンズと、、
前記第1インナーレンズのレンズカバー側表面に沿って設けられた半透過鏡と、を備え、
前記光源ユニット側表面には、複数列のシリンドリカル状プリズム列が第1の方向に延びて規則的に並んで形成されており、
前記レンズカバー側表面には、シリンドリカル状プリズム列が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びて規則的に並んで形成されており、
前記シリンドリカル状プリズム列は、円筒形の屈折面を持つプリズムレンズ素子またはプリズム列方向と直交する断面が円筒形に近似可能な5面以上の多角形断面を持つ多面体屈折面を有する多面体プリズムレンズ素子が複数並んだプリズム列であり、
前記光源ユニット側表面および前記レンズカバー側表面に形成されたシリンドリカル状プリズム列は、前記2つの表面の夫々の表面に形成されたシリンドリカル状プリズム列が、前記多面体プリズムレンズ素子であり、
前記光源ユニットは、複数のLED光源を設けた基板および前記基板表面に設けた第1の反射面を有しており、
前記第1の反射面と前記第1インナーレンズが対向して配置されるとともに、前記第1の反射面と前記第1インナーレンズとで挟まれた空間の周囲には前記第1の反射面と前記第1インナーレンズを結ぶ方向に延びる第2の反射面が形成されており、
前記インナーレンズユニットとレンズカバーの間には、前記レンズカバーの出射面および前記半透過鏡を結ぶ方向に延びる全反射面を有する導光部材が設けられている、
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
車体に取り付けるランプハウジングと、ランプハウジングの前面を覆うレンズカバーと、前記ランプハウジングと前記レンズカバーとで囲まれた灯室内に設けた少なくとも一つの光源ユニットと、前記光源ユニットと前記レンズカバーの間に設けたインナーレンズユニットとを有する車両用灯具であって、
前記インナーレンズユニットは、前記光源ユニット側から出射した光が入射する入射面となる光源ユニット側表面と、当該光源ユニット側表面の反対側の表面であって出射面となるレンズカバー側表面を備えた第1インナーレンズと、、
前記第1インナーレンズのレンズカバー側表面に沿って設けられた半透過鏡と、を備え、
前記光源ユニット側表面には、複数列のシリンドリカル状プリズム列が第1の方向に延びて規則的に並んで形成されており、
前記レンズカバー側表面には、シリンドリカル状プリズム列が前記第1の方向と交差する第2の方向に延びて規則的に並んで形成されており、
前記シリンドリカル状プリズム列は、円筒形の屈折面を持つプリズムレンズ素子またはプリズム列方向と直交する断面が円筒形に近似可能な5面以上の多角形断面を持つ多面体屈折面を有する多面体プリズムレンズ素子が複数並んだプリズム列であり、
前記光源ユニットは、複数のLED光源を設けた基板および前記基板表面に設けた第1の反射面を有しており、
前記基板反射面と前記第1インナーレンズが対向して配置されるとともに、前記第1の反射面と前記第1インナーレンズとで挟まれた空間の周囲には前記第1の反射面と交差する方向に延びる第2の反射面が形成されており、
前記インナーレンズユニットとレンズカバーの間には、前記レンズカバーの出射面および前記半透過鏡を結ぶ方向に延びる全反射面を有する導光部材が設けられており、
さらに、前記インナーレンズユニットは、第1インナーレンズと前記半透過鏡との間に第2インナーレンズを備えており、
前記第2インナーレンズは、前記第1インナーレンズから出射した光が入射する入射面となる第1インナーレンズ側表面と、当該第1インナーレンズ側表面の反対側の表面であって出射面となる半透過鏡側表面を備え、
前記第1インナーレンズ側表面には、複数列の前記シリンドリカル状プリズム列が前記第2の方向と交差する第3の方向に延びて規則的に並んで形成されており、
前記半透過鏡側表面には、前記シリンドリカル状プリズム列が前記第3の方向と交差する第4の方向に延びて規則的に並んで形成されており、
前記第1インナーレンズの光源ユニット側表面および前記アウターレンズ側表面、前記第2インナーレンズの前記第1インナーレンズ側表面および前記半透過鏡側表面の夫々の表面に形成されたシリンドリカル状プリズム列は、前記4つの表面のうち、少なくとも何れか3つの表面に形成されたシリンドリカル状プリズム列が、前記多面体プリズムレンズ素子であり、
前記第1インナーレンズと第2インナーレンズとは、前記3つの表面に形成されたシリンドリカル状プリズム列レンズの中で最も長いピッチよりも離れている、
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記導光部材が、前記半透過鏡の出射面に対向して配置する入射面を備えた中実部材からなる、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車、自動四輪車等の車体に取り付ける車両用灯具に関するもので、例えば、車両の後方に設けるリアコンビネーションランプ、リッドランプ、ハイマウントストップランプや、ドアミラー等の車両側方に設けるサイドターンランプ等の車両用信号灯具や、車両前方に設けるポジションランプ、車内に設ける室内灯などの各種車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用灯具として、LED(発光ダイオード)を光源とする車両用灯具が実用化されている。LEDを光源とする場合には、一般的に白熱光源バルブを光源とした場合に比べてLED光源の照射角度が狭く、複数のLEDを配置して用いることが多い。多くのLEDを用いると、車両用灯具の発光面(意匠面)を照射方向正面から観察したときに、LED光源の各々に対応する部分が明るく観察され、点光という現象が観察される。
【0003】
また、多くのLEDを光源として用いることはコストアップおよび温度上昇による性能の低下などの問題を生じる。そこで、光源として用いるLEDの総数を減じて、実際のLED使用数に比べて多くのLEDを用いているかのように観視させる車両用灯具も提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載された車両用灯具を図9図10に、レンズ面での発光状態を図11に示す。車両用灯具91は、LED92の列に直交する断面に複数の異なる屈折角を組合せて形成した多面体プリズムを列方向に沿い平行に連続させた直線状多面プリズムカット95を設けたインナーレンズ94を形成し、該レンズ94を少なくともLED92の列の正面部分以外の部分を覆うように配置した車両用灯具1とする。複数のLED92は、図11におけるX軸に沿って一列に配置され、直線状多面プリズムカット95もX軸に沿って複数個配設されている。このようにしたことで、前記直線状多面プリズムカット95により前記LED92の列方向(X)に対する直交方向(Y)にも恰もLED92が配置しているように観視される。図11においてA(1)およびA(2)は発光点であり、列方向X上の発光点(A1)に対しての直交方向Yに沿い整列する発光点A(2)が表れ、恰も前記した直交方向YにもLED92が配置されているように観視されるものとなる。
【0005】
また、光源として用いる奥行のある見え方を可能とした車両用灯具も提案されている(特許文献2)。
【0006】
特許文献2に記載された多数のLED98を備えた車両用灯具96は、図12および図13に示すように反射面97で覆った基板の開口裏側に設けた内面側LED98aと、反射面97および内面側LED98aを覆う適宜な外形とされたハーフミラーを設けたインナーレンズ99と、インナーレンズ99の外面に対して光を照射する外周部LED98bを備える。ハーフミラーを設けたインナーレンズ99と反射面97とで繰り返し反射が生じさせて立体感に富む外観として観視される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−187810号公報
【特許文献2】特開2002−25310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された車両用灯具91を観視したとき、直線状多面プリズムカット95を設けたインナーレンズ94を通して出射する発光面には、実際に使用しているLED92の数および大きさに相当する各LEDの前面で観察される明るい発光点A1と、その発光点と同じように観察されるが、実際にはLEDを設けていない位置においても発光点と近似する疑似的な発光点A2が観察される。
【0009】
すなわち、発光面全体としては、明るい発光点A1および疑似的な発光点A2が整列し、これらの発光点間に暗い非発光点領域が繰り返して存在するものとなる。したがって、発光点非発光領域との間で明るさのムラが生じており発光面全体としての均一性に劣る。
また、LEDを設けたLED列に対応する明るい発光点が発光面の中央列に位置し、中央列の発光点に比べて暗い疑似的な発光点とが異なる発光点として観察される。そのため、インナーレンズを透過して使用しているLED列を推定することができる。
そのため、車両用灯具の発光面、すなわち意匠面を観視したとき、明るさにムラのある意匠面として認識される。
【0010】
特許文献2に開示された車両用灯具95を観視したとき、ハーフミラーを設けたインナーレンズ99を用いることで、奥行き感が高まる。しかしながら、より多くの発光点を得るためには、内面側LED98aの数を増やさなければならなかった。
【0011】
そこで、本発明は、面発光、好ましくは明るさムラの少ない面発光の背景とし、その面発光の中に、微小な発光点が奥行感を持って散在する発光面を有する車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、インナーレンズの両面の夫々に複数列のシリンドリカル状プリズム列が交差するように形成し、そのシリンドリカル状プリズム列が多面体プリズムレンズ列を設けたインナーレンズユニットを用い、且つ、上記したインナーレンズとレンズカバーとの間に半透過鏡および導光部材を備えることを主要な特徴とする。
【0013】
本発明は、上記したインナーレンズのレンズカバーと反対側には、インナーレンズと対向する第1の反射面とLED光源を設けた基板を備え、第1の反射面とインナーレンズとで挟まれた空間の周囲の位置に配置した第2の反射面を備えることを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上記に記載の発明によれば、明るさムラの少ない均一性に優れた面発光の発光面とし、且つ、その発光面の中に、小さな発光点を奥行感を持って散在させることができる。これにより新規の見栄えの車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施の形態1の車両用灯具の概略水平断面図である。
図2図2は、図1のテール・ストップランプ1aを拡大して示す水平断面図である。
図3図3は、図1のインナーレンズの一方の表面に形成されたシリンドリカルプリズム列の一例を拡大して示す概略斜視図である。
図4図4は、図1のレンズユニットと光源ユニットとの関係を説明するために簡略化して図示した斜視図である。
図5図5は、レンズユニットの半透過鏡における出射面の発光状態を示す概略図である
図6図6は、光源から半透過鏡までの光線を説明するための模式的な縦断面図である。
図7図7は、第2の実施の形態の車両用灯具を示概略縦断面図である。
図8図8は、第3の実施の形態の車両用灯具の要部の原理を模式的に示す断面図である。
図9】特許文献1の車両用灯具を示す断面図である。
図10】特許文献1の車両用灯具の直線状多面プリズムカットの部分を拡大して示す斜視図である。
図11】特許文献1の車両用灯具の発光面を示す説明図である。
図12】特許文献2の車両用灯具の発光面を示す断面図である。
図13】特許文献2の車両用灯具の発光面を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について、車両用灯具の一例としてリアコンビネーションランプについて図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において特に断りがない限り「光源ユニット」とは、車両用信号灯具の機能を発揮するための光源もしくは、発光源と発光源から出射した光を反射および/または屈折させるレンズ素子などの光学系を含むものをいう。「車両ボディ」とは、エンジンや電装品等を除いた車両の骨格をなす構造物をいう。また、「前方」とは車両進行方向をいい、「後方」とは車両の進行方向と反対側の方向をいう。前照灯の場合には車両前方側に向かって光を照射し、リアコンビネーションランプならば車両後方側に向かって照射する。右側、左側、上側、下側についても同様に車両進行方向を基準とする。例えば前照灯の場合には自動車の運転者が進行方向を向いて運転姿勢とした状態を基準とした場合と等しくなる。「灯具正面」とは車両用灯具の主たる照射方向側からみた状態をいう。
【0017】
図1は、車両後方の隅部(右後方コーナー部)に設けるリアコンビネーションランプの概略水平断面図である。符号1が車両用灯具であるリアコンビネーションランプを示す。リアコンビネーションランプ1は、ランプハウジング2の前面(車両後方側)が透明なレンズカバー3で覆われており、ランプハウジング2とレンズカバー3とで囲まれた灯室4内に、光源ユニット5が配置されている。光源ユニット5はテール・ストップランプとして機能する光源ユニットである。テール・ストップランプ1aの車両側面側の灯室4内に他の機能、例えばターンランプの図示しない光源ユニットが設置されている。光源ユニット5の照射方向前方、すなわち車両後方側のにはインナーレンズユニット6(以後レンズユニットと省略する)および導光部材10が設けてある。
【0018】
図2は、図1のテール・ストップランプ1aを拡大して示す水平断面図である。
光源ユニット5は、凹形状リフレクタ21の凹部底面に設けた光源取付け孔に取り付けられている。光源取付け孔の開口側には基盤54が位置し、その反対側にソケット54aが位置するように取付けられている。基盤54上には、複数のLED光源50が搭載されている。基盤54にはLED光源と図示しない電源とを接続するための電気配線が設けてあり、電気配線はソケット54aの図示しない電極端子に接続され、LED光源50に電源を供給可能なものとしている。電気配線はリフレクタ21に設けた孔を通ってリフレクタ21の後方側に延設されている。
【0019】
LED光源50は、第1列のLED光源51と、第2列のLED光源52の2列のLED光源が設けてある。本実施形態においては、図1および図2において紙面垂直方向、すなわち灯具上下方向に延びる図示しない基盤上に、複数の第1列のLED光源51が整列し、同様に複数の第2列のLED光源52が整列した2列をなして設置されている。第1列および第2列のLED光源51、52は、いずれも赤色発光する面実装形式のLEDであり、テールランプとして機能するときには第1列のLED光源51が点灯し、ストップランプとして機能するときには第1列のLED光源51および第2列のLED光源52の双方が点灯して、車両後方をテールランプに比べてストップランプの場合には明るく照射するものとしている。
【0020】
基盤54のLED光源50を搭載した面の表面には、第1の反射面55が形成されている。第1の反射面55は、基盤54上のLED光源50を搭載する箇所を除いたLED光源搭載面上に形成されている。第1の反射面55は、酸化バリウム、酸化チタン等の高反射特性を持つセラミックス材料やガラスビーズを樹脂中に分散混合した絶縁性反射樹脂や、アルミニウム等の高反射率の金属膜を絶縁層を介して形成した金属反射膜を用いることができる。好ましくは絶縁性反射樹脂、特に、セラミックを分散混合した白色樹脂からなる塗膜からなる拡散反射面が好ましい。拡散反射面とすることで、より明るさムラを少なくすることができるからである。なお、基盤54上に図示しない実装基板を介してLED光源50を設けても良い。その場合、第1の反射面55も図示しない実装基板上に形成して、第1の反射面55の反射機能を損なわないようにすることが好ましい。
【0021】
リフレクタ21は、内面にアルミニウム等の反射膜を設けた樹脂部材より形成され、凹部の底面に光源ユニット5取付け用の光源取付け孔が形成された凹形状をなしている。リフレクタ21の底面に光源ユニット5を設置しても良い。リフレクタ21の内面、特にLED光源50からの照射光を反射する領域は、多数の領域に分割した個別反射面が集まった反射面とされ、各個別反射面による反射光が、後述するレンズユニット6に向かうように設計されている。凹部底面の反射面を底面反射面22、底面反射面22以外の反射面を側壁反射面23と呼ぶ。側壁反射面23に上記した個別反射面を形成している。光源ユニット5とレンズユニット6との間には所定の距離を隔てた空間24aが形成されている。側壁反射面23が、第1の反射面と第1インナーレンズとで挟まれた空間の周囲において、第1の反射面と第1インナーレンズを結ぶ方向に延びる第2の反射面に相当する。
【0022】
レンズユニット6は、LED光源50の照射方向前方に配置された第1インナーレンズ61および半透過鏡62を備える。第1インナーレンズ61はLED光源50側に配置される。第1インナーレンズ61の表面および裏面には、プリズム素子が形成されている。プリズム素子は、多数のシリンドリカル状プリズム7が並んだシリンドリカルプリズム列8からなる。
【0023】
シリンドリカル状プリズム7は、円筒形の屈折面を持ったシリンドリカルレンズもしくはトーリックレンズのプリズムである。シリンドリカルレンズは一方向だけの集光や発散を行うことができ、トーリックレンズはシリンドリカルレンズを円筒形の屈折面の軸方向においても曲げた形状の屈折面を持たせたもので、軸方向においても任意に、集光・発散を行うことができるレンズをいう。また、本明細書においてシリンドリカル状プリズム7は、厳密な意味での円筒形の屈折面に限らず、円筒形の屈折面に近似可能な多面体プリズムレンズ素子PPLを形成したものも含む。したがって、シリンドリカル状プリズム7には特許文献1に記載した直線状多面プリズムカット95も含まれる。また、多面体の数は少ない枚数のインナーレンズのレンズユニットが好ましく。均一発光を得るためには少なくとも5面以上が好ましい。
【0024】
図3は、一方の表面に形成されたシリンドリカルプリズム列8の一例を拡大して示すもので、軸方向Dに沿った断面においては平面で、軸方向Dに直交する方向の断面においては多角形をなす多面体プリズムレンズ素子PPLが、一定のピッチpで連続して並んで形成されている。
【0025】
第1インナーレンズ61は、アクリル、ポリカーボネートなどの透光性材料により形成されており、無色透明な板形状に成形されている。透光性光源ユニット5から出射した光が入射する入射面となる光源ユニット側表面63と、その反対側の表面であって出射面となる半透過鏡側表面64の両方の表面には、シリンドリカル状プリズム7が所定の方向に並んで一体に成形されている。図2において、光源ユニット側表面63に形成されたシリンドリカル状プリズムが紙面と平行方向に延び、半透過鏡側表面64に形成されたシリンドリカル状プリズムが紙面法線方向に延びている。
【0026】
半透過鏡62は、アクリル、PET(ポリエチレンテフタレート)、PP(ポリプロピレン)などの透光性樹脂材料により形成したシート上にアルミニウム、銀などの反射性材料が薄く形成されている。また、第1インナーレンズ61と接するように/または間隔を開けてレンズカバー3側に固定されている。光源ユニット5から出射した光が第1インナーレンズ61を通過してきた光が入射する第1インナーレンズ側表面64が入射面となり、その反対側の表面であってレンズカバー側表面66が出射面となる。また、第1インナーレンズ61と半透過鏡62との間にはシリンドリカル状プリズム間の空気を含む空気層が形成されている。なお、図2において半透過鏡62は第1インナーレンズ61と区別しやすいように斜線にてハッチングして図示している。
【0027】
導光部材10は、アクリル、ポリカーボネートなどの透光性材料により形成され中実の導光体である。また、半透過鏡62とレンズカバー3との間の空間24bにおいて、半透過鏡62よりもレンズカバー3寄りの位置に導光部材10が設置されている。半透過鏡62を通過してきた光が入射する入射面11と、その反対側の表面であってレンズカバー側に位置する出射面12と、側面13を備えた立方体形状をなしている。側面13がレンズカバー3の出射面および前記半透過鏡64を結ぶ方向に延びる全反射面に相当する。
【0028】
図4はレンズユニット6と光源ユニット5との関係を説明するために簡略化して図示したしたものである。
【0029】
図4において、第1インナーレンズ61のそれぞれの表面に形成されたシリンドリカル状プリズム列8の方向、すなわち各シリンドリカルプリズム7の軸方向Dを矢印で示している。点線で示す矢印が光源ユニット5側の表面におけるプリズム方向、実線で示す矢印が出射面側の表面におけるプリズム方向である。
【0030】
第1インナーレンズ61において、光源ユニット側表面63に設けたシリンドリカル状プリズム列8のプリズム方向D1は、鉛直方向とされ、出射面側(半透過鏡62側)表面64に設けたシリンドリカル状プリズム列8のプリズム方向D2は、プリズム方向D1と直交する水平線方向とされている。
【0031】
図5は、レンズユニット6の半透過鏡における出射面の発光状態、すなわち半透過鏡62を観察した状態を示す概略図である。図6は、本実施形態における光源ユニット5から半透過鏡62までの間の光線を説明するための模式的な縦断面図である。符合CLは光源ユニットの光軸(中心軸)である。
【0032】
本実施形態では、それぞれの表面に形成したシリンドリカル状プリズム7を次のようにしたものを用いた。ピッチpが0.5mm、シリンドリカル状プリズムに近似する円筒断面の半径が0.5mm、多面体の数が10平面(半円筒の表面を10分割した面)である。また第1インナーレンズ61と半透過鏡62は約3mmの距離を隔てて配置した。
【0033】
図6に示したように、光源ユニット5から照射された光L0は、第1インナーレンズ61に形成された両面のプリズムを通過することで、一つの光源(LED)の光であるにもかかわらず、発光点の大きさが小さく分割され、縦横に多数の光源が並んで見えるように散在して発光する。散在する発光点を図5において符号A61,A62で図示している。LEDの光軸上においては第1インナーレンズ61の出射面の中で大きな発光点A61となり、大きな発光点A61の周囲に小さな発光点A62が存在する。これらの発光点の光は半透過鏡62に向かい、一部は半透過鏡62を通過し、一部は反射する。半透過鏡62を通過して観測される発光点を図5において点線で示し、符号S61,S62,S63で示す。発光点は大別してA62の発光点からの光の一部が通過する発光点S62と、発光点A61からの光の一部が通過する発光点S61およびそれら以外の発光点S63に大別される。発光点S63は、半透過鏡62による反射光が再反射されて戻ってきた光線による発光点である。またS64は拡散反射により輝点とならずにバックグラウンドとして発光する拡散光を出射する発光面である。
【0034】
LED光源50から照射された光L0は、第1インナーレンズ61を通過する際に両面に形成したプリズム列の作用により発光点が分割してL1,L4、L5等を生じて出射する。符合L1の光線は、発光点A61となって半透過鏡62に向かい、半透過鏡62を通過した光線、すなわち発光点S61を示す。分割した光線のうち一部の光線L4はリフレクタ21の側壁反射面23にて反射する。半透過鏡62の表面にて反射された光L2は光源ユニット5側に向かって反射される。反射光L2は、光源ユニット5の表面に形成した第1の反射面55にて再度反射される。また、光源ユニット5から側壁反射面23に向かって照射された拡散光L3は、側壁反射面23にて反射した後に第1インナーレンズ61を通過する。拡散光L3は、LEDの出射光軸から傾いた方向に出射する照度の低い光である。半透過鏡62にて反射して照度が低くなった光線、拡散光L3などの光線は、反射・屈折を繰り返して拡散光を生じる。これらの拡散光がS64の出射光となる。
【0035】
発光点S61、S62,S63および拡散発光S64は、半透過鏡62に対向して配置した導光部材10の入射面11から内部に入射する。導光部材10内を導光した光は出射面12から出射する。このとき、導光部材10内を導光して進む光の一部が側壁13にて全反射するように厚みを持って形成されている。したがって、導光部材側壁13における全反射光線も出射面12から出射する。導光部材側壁13にて全反射する発光点S61、S62,S63の光線は、斜め方向から視認した場合においても発光点が観視されるようにするとともに、奥行感を高める。
【0036】
本実施の形態においては、導光部材の側壁23での全反射、反透過鏡62による一部反射、光源ユニットの第1の反射面55およびリフレクタの側壁反射面(第2の反射面)23を設けたことで、単一のLED光源50の光を分割形成した複数の発光点の一部は、繰り返し反射を行う。繰り返し反射した光線は輝点となって観視される際には、光路の長い奥行感のある光線として観視される。よって、全体として拡散発光した発光面の中に多数の輝点が奥行感をもって点在するものとなる。
【0037】
(第2の実施の形態)
図7は、第2の実施の形態の車両用灯具を示す概略縦断面図である。第2の実施の形態においては、導光部材15の厚み(奥行)を長くして、LED光源50から第1インナーレンズ61までの距離と略同一としている。具体的には、導光部材15の入射面から出射面までの奥行長およびLED光源50から第1インナーレンズ61までの長さを600mmとしている。なお、第1インナーレンズ61の厚さは、両面に形成したシリンドリカル状プリズムを含む厚さとして100μm未満であり、反透過鏡62の厚みも100μm未満である。また、ランプハウジング2の内面にアルミニウム蒸着を施して側壁反射面(第2の反射面)23が形成してある。なお、図7における符号17は、導光部材15等を取り付ける固定部材である。
【0038】
導光部材15の厚み(奥行)を厚く(長く)することで、導光部材の側面16での全反射成分を増加させることができる。また、導光部材15の厚み(奥行)と、LED光源50から第1インナーレンズ61までの距離とを略同一とすることで、導光部材の側面16での全反射による奥行感と、LED光源50と第1インナーレンズ61との間の奥行感とを、非点灯時においても等しくすることができる。導光部材の厚みを厚く形成するために射出成形にて製造しようとすると、ヒケ等を生じやすく歩留り低下を招きやすい。また、金型中に射出した後の冷却時間が増加する。それゆえ量産効率が悪く、製造コストが上昇する。それゆえ、実用的には、導光部材15の厚み(奥行)を、LED光源50から第1インナーレンズ61までの距離に対して40〜110%、好的には50〜70%とすると視認性と量産効率の双方のバランスに優れたものとすることができる。
【0039】
第2の実施形態においても、光源ユニット5から照射される光線は、発光面のほぼ全面が拡散発光する中で複数の発光点が点在して奥行感を持って発光する発光面として観察される。
【0040】
(第3の実施の形態)
図8は、第3の実施の形態の車両用灯具要部の原理を模式的に示す断面図である。第3の実施の形態においては、第1の実施の形態の第1インナーレンズ61と、半透過鏡62との間に第2のインナーレンズ70を配設している点のみが第1の実施の形態と相違する。他の構成については第1の実施の形態と同一であるので、同一の符号を付し、ここでの説明は省略する。
【0041】
第2インナーレンズ70も、アクリル、ポリカーボネートなどの透光性材料により形成されており、無色透明な板形状に成形されている。透光性光源ユニット5から出射した光が第1インナーレンズ61を通過して入射する入射面となる第1インナーレンズ側表面71と、その反対側の表面であって出射面となるレンズカバー側表面72の両方の表面には、シリンドリカル状プリズム7が所定の方向に並んで一体に成形されている。
また、第1インナーレンズ61と第2インナーレンズ62との間は空気層とされ、また両者の距離は、シリンドリカル状プリズム7のピッチpよりも長い距離を離して第1インナーレンズ61と平行に配置している。
【0042】
第2インナーレンズ70において、第1インナーレンズ側表面71に設けたシリンドリカル状プリズム列8のプリズム方向D3は、鉛直方向とされ、レンズカバー側表面72に設けたシリンドリカル状プリズム列8のプリズム方向D4は、プリズム方向D3と直交する水平線方向とされている。すなわち、第2インナーレンズ70は第1インナーレンズ61と同一のものを同方向に並べて設けている。
それぞれの表面に形成したシリンドリカル状プリズム7は、ピッチpが0.5mm、シリンドリカル状プリズムに近似する円筒断面の半径が0.5mm、多面体の数が10平面(半円筒の表面を10分割した面)である。また第1インアーレンズ61と第2インナーレンズ62とは10mmの距離を隔てて配置した。
【0043】
光源ユニット5から照射された光は、第1インナーレンズ61に形成された両面のプリズムを通過することで、一つの光源(LED)の光であるにもかかわらず、縦横に多数の光源が並んで見えるように出射する。この第1インナーレンズ61に観察される発光点が更に第2インナーレンズ70を通過することで、さらに分割され、縦横により多数の光源が並んで見えるように出射する。これにより第2インナーレンズ70の出射面(レンズカバー側表面72)を観視すると均一性な非発光点領域の中に、発光点A61に比べて小さくなった微小発光点が点在して観察される。
【0044】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態の車両用灯具に比べてより微小な発光点が多数点在するものとすることができる。また、第1の実施の形態の車両用灯具と同様に奥行感のある車両用灯具を得ることができる。
【0045】
(第3の実施の形態の変形例)
第3の実施の形態の車両用灯具1において、第1のインナーレンズ61、第2のインナーレンズ70の夫々の両面に設けたシリンドリカル状プリズムの代わりに、第1のインナーレンズ6を片面のみにシリンドリカル状プリズムが設けてあるものとし、シリンドリカル状プリズムを設けない表面を平坦面とした。この場合においても、第3の実施の形態と同様に、ほぼ全面が明るさムラの少ない均一に拡散発光する非発光点領域の中に奥行感のある発光点が点在して存在する発光面として視認される出射面を得ることができ得る。
また、第1のインナーレンズ61の両面と第2のインナーレンズ70の片面にシリンドリカル状プリズムを設け、第2のインナーレンズ70の片面をシリンドリカル状プリズムを設けない表面を平坦面とした場合においても同様であろう。
【0046】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。例えば、通常、車両用灯具の出射面側の外形形状は屈曲面として形成されている。レンズユニットを構成するインナーレンズも外形形状に対応して屈曲面として形成しても良い。屈曲面に形成するシリンドリカル状プリズムは、直線軸のシンドリカルレンズ形状ではなくその中心軸が屈曲したトーリックレンズ形状にして屈曲面に沿って形成すれば良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る車両用灯具によれば、均一性に優れた拡散面発光の発光面と、その発光面内に点在する発光点を同時に得ることができる車両用灯具を提供することが可能となる。したがって、車両の後方に設ける停止灯、方向指示灯、後退灯、イルミネーションランプ、ハイマウントストップランプなどに限らず各種車両用信号灯具に適用できる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両用灯具
1a テール・ストップランプ
2 ランプハウジング
3 レンズカバー
4 灯室
5 光源ユニット
6 レンズユニット(インナーレンズユニット)
7 シリンドリカル状プリズム
8 シリンドリカル状プリズム列
10 導光部材
11 導光部材入射面
12 導光部材出射面
13 導光部材側面
15 導光部材
16 導光部材側面
17 固定部材
21 リフレクタ
22 底面反射面
23 側壁反射面(第2の反射面)
24a、24b 空間
50 LED光源
51 第1列のLED光源
52 第2列のLED光源
54 基盤 (54…光源部)
54a ソケット
55 第1の反射面
61 第1インナーレンズ
62 半透過鏡
63 光源ユニット側表面
64 半透過鏡
65 第1インナーレンズ側表面
66 レンズカバー側表面
70 第2インナーレンズ
71 第1インナーレンズ側表面
72 レンズカバー側表面

91 車両用灯具
92 LED
94 インナーレンズ
95 直線状多面プリズムカット
96 車両用灯具
97 反射面
98 LED
98a 内面LED
98b 外周部LED
99 インナーレンズ

A1、A2、 発光点
A61、A62 発光点
S61、S62、S63 発光点
S64 拡散発光領域
D1、D2,D3,D4 プリズム方向
p ピッチ
PPL 多面体プリズムレンズ素子
L0〜L6 光線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13